(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111630
(43)【公開日】2024-08-19
(54)【発明の名称】集合型飛行体および集合型飛行体の交替制御方法
(51)【国際特許分類】
B64U 70/20 20230101AFI20240809BHJP
B64U 10/13 20230101ALI20240809BHJP
B64U 101/60 20230101ALN20240809BHJP
【FI】
B64U70/20
B64U10/13
B64U101:60
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023016247
(22)【出願日】2023-02-06
(71)【出願人】
【識別番号】000213909
【氏名又は名称】朝日航洋株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】林 昌裕
(57)【要約】
【課題】飛行時間の遅延を低減しながら、長時間飛行、長距離飛行を可能にする。
【解決手段】集合型飛行体2は、複数の飛行体と、フレーム5と、フライトコントロール7と、を備える。複数の飛行体は、例えば、母機3aおよび子機3bを含むUAV3とすることができる。フレーム5は、UAV3を離脱可能に接続するコネクタCnを備える。フライトコントロール7は、フレーム5に接続されたUAV3を制御して、一体的に飛行させるフライトコントロール7と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の飛行体と、
前記複数の飛行体を接続するコネクタを備えるフレームと、
前記フレームに接続された前記複数の飛行体を制御して一体的に飛行させ、飛行中において、前記複数の飛行体の前記コネクタとの接続および離脱を制御する制御装置と、を備える、集合型飛行体。
【請求項2】
請求項1において、
前記複数の飛行体は、
電力または燃料によって駆動され、重量物の吊下げ能力を有する第1の飛行体と、
前記第1の飛行体に対して電力または燃料を供給可能であり、前記フレームに接続された前記第1の飛行体と一体的に飛行することで推進力を付与する第2の飛行体と、を有する、集合型飛行体。
【請求項3】
請求項2において、
前記フレームは、
前記第1の飛行体を支持する第1支持部と、
前記第2の飛行体を支持する第2支持部と、を備え、
前記第2支持部は、
前記第1支持部の外周に配置され、複数の前記コネクタが周方向に間隔を空けて設けられた環状部と、
前記環状部を前記第1支持部に接続する接続部と、を備える、集合型飛行体。
【請求項4】
請求項3において、
前記第1支持部は、前記重量物が吊り下げられる中心部と、前記中心部から放射状に配置された複数の直線部と、を備え、
前記複数の直線部のそれぞれに前記コネクタが設けられる、集合型飛行体。
【請求項5】
請求項2において、
前記フレームは、
前記第2の飛行体から供給される電力または燃料を、前記第1の飛行体に供給する供給部を備える、集合型飛行体。
【請求項6】
請求項1または2において、
前記制御装置は、
前記集合型飛翔体の飛行中に、前記複数の飛行体のそれぞれから状態情報を取得し、前記状態情報に基づいて、スタンバイ位置に待機する予備機との交替を判定する交替判定部と、
交替が判定された前記飛行体を前記コネクタから離脱させ、前記集合型飛行体に飛来した前記予備機を当該コネクタに接続させる交替制御部と、を備える、集合型飛行体。
【請求項7】
請求項6において、
前記フレームに設けられ、衛星測位システムによる位置情報を受信する受信機を備え、
前記制御装置は、前記フレーム上の前記受信機の位置から前記コネクタまでの距離情報を記憶する記憶部を備え、
前記交替制御部は、前記受信機の位置に飛来した前記予備機を、前記距離情報に基づいて、前記飛行体が離脱した前記コネクタまで移動させ、当該コネクタに接続させる、集合型飛行体。
【請求項8】
請求項6において、
前記交替制御部は、前記コネクタから前記飛行体が離脱した際に、前記コネクタに接続している残りの飛行体に対して、離脱した前記飛行体の出力を補うバックアップ制御を行う、集合型飛行体。
【請求項9】
複数の飛行体と、
前記複数の飛行体を離脱可能に接続するコネクタを備えるフレームと、
前記フレームに接続された前記複数の飛行体を制御して、一体的に飛行させる制御装置と、を備える集合型飛行体の交替制御方法であって、
前記制御装置により実行される、
前記集合型飛翔体の飛行中に、前記複数の飛行体のそれぞれから状態情報を取得し、前記状態情報に基づいて、スタンバイ位置に待機する予備機との交替を判定する交替判定ステップと、
交替が判定された前記飛行体を前記コネクタから離脱させ、前記集合型飛行体に飛来した前記予備機を当該コネクタに接続させる交替制御ステップと、を含む、交替制御方法。
【請求項10】
請求項9において、
前記交替制御ステップは、
前記制御装置から、前記予備機の制御を行う地上制御装置に対して交替要請を送信するステップと、
前記コネクタから離脱した前記飛行体の制御を、前記地上制御装置に依頼する制御依頼を送信するステップと、を含み、
前記地上制御装置により実行される、
前記交替要請に基づいて、前記スタンバイ位置に待機する前記予備機を制御して、前記集合型飛行体まで飛行させる第1の制御ステップと、
前記制御依頼に基づいて、前記コネクタから離脱した前記飛行体を制御して、前記スタンバイ位置まで飛行させる第2の制御ステップと、を含む、交替制御方法。
【請求項11】
電力または燃料によって駆動され、重量物の吊下げ能力を有する第1の飛行体と、
前記第1の飛行体に設けられたコネクタと、
前記コネクタに接続することで、前記第1の飛行体と一体的に飛行可能であり、前記コネクタを介して前記第1の飛行体に電力または燃料を供給可能な第2の飛行体と、
飛行中において、前記第2の飛行体の前記コネクタとの接続および離脱を制御する制御装置と、を有する、集合型飛行体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集合型飛行体および集合型飛行体の交替制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無人航空機等の飛行体を自律飛行させて、目的地まで貨物を輸送することが試みられている(たとえば、特許文献1参照)。
飛行体は、地上制御装置と通信を行って目的地までの運航情報を取得し、GPSに代表されるGNSS用の受信機で受信した現在位置の情報に基づいて、目的地までのルートを演算しながら飛行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
飛行体は、例えばバッテリに充電された電力により、ロータ(回転翼)を駆動して飛行する。しかしながら、バッテリの電力には限りがあるため、飛行距離および飛行時間が制限される。例えば、バッテリが消耗した場合に飛行体を中継地に降下させ、バッテリを充電することも考えられるが、離着陸エリアの確保と、バッテリの充電や交換等を行う設備の追加が必要になるため、コストの増加に繋がる。また、飛行時間の遅延にも繋がる。
【0005】
飛行体においては、コストの増加や飛行時間の遅延を低減しながら、長時間飛行および長距離飛行を可能にすることが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様における集合型飛行体は、
複数の飛行体と、
前記複数の飛行体を接続するコネクタを備えるフレームと、
前記フレームに接続された前記複数の飛行体を制御して一体的に飛行させ、飛行中において、前記複数の飛行体の前記コネクタとの接続および離脱を制御する制御装置と、を備える。
【0007】
また、本発明の別の態様は、
複数の飛行体と、
前記複数の飛行体を離脱可能に接続するコネクタを備えるフレームと、
前記フレームに接続された前記複数の飛行体を制御して、一体的に飛行させる制御装置と、を備える集合型飛行体の交替制御方法であって、
前記制御装置により実行される、
前記集合型飛翔体の飛行中に、前記複数の飛行体のそれぞれから状態情報を取得し、前記状態情報に基づいて、スタンバイ位置に待機する予備機との交替を判定する交替判定ステップと、
交替が判定された前記飛行体を前記コネクタから離脱させ、前記集合型飛行体に飛来した前記予備機を当該コネクタに接続させる交替制御ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、集合型飛行体が、コストの増加や飛行時間の遅延を低減しながら、長時間飛行および長距離飛行することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態に係る集合型飛行体のフライトシステムの概念図である。
【
図3】UAVの概略的な構成を示すブロック図である。
【
図5】フライトコントロールおよび地上制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図6】フライトコントロールの監視部の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図7】停止指示が入力された場合の、飛行制御部の処理を示すフローチャートである。
【
図8】フライトコントロールの交替制御部の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図9】地上制御装置の交替制御部の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図10】UAVと予備機の交替を説明する図である。
【
図11】予備機のコネクタへのドッキングを説明する図である。
【
図12】変形例1に係る集合型飛行体の構成を示す図である。
【
図13】変形例2に係る集合型飛行体の一例を示す図である。
【
図14】変形例2に係る集合型飛行体の別の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」と称する。)について、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る集合型飛行体のフライトシステムの概念図である。
図2は、集合型飛行体の構成を示す模式図である。
図1に示すように、集合型飛行体のフライトシステム1は、集合型飛行体2と、地上制御装置9と、を含む。
集合型飛行体2は、複数の飛行体の集合から構成されるものである。集合型飛行体2は、例えば、重量物である貨物100を輸送する目的で使用される。
集合型飛行体2は、複数の飛行体と、複数の飛行体を接続して一体的に飛行可能とするフレーム5と、地上制御装置9と通信を行いながら、集合型飛行体2の飛行を統括的に制御するフライトコントロール7(制御装置)と、を備える。
【0011】
本実施形態では、飛行体の一例として、電力で駆動される無人航空機(unmanned aerial vehicle、以降「UAV3」という)を用いる例を説明する。
図2に示すように、本実施形態において、集合型飛行体2は、母機3aおよび子機3bの2種類のUAVを備える。
母機3aは、主に集合型飛行体における揚力の発生を受け持つ。母機3aは、重量物である貨物100の吊下げ能力を有し、自立飛行または遠隔制御による単独での飛行が可能な飛行体である。ここで、吊下げ能力とは、重力物を吊り下げた状態で浮揚する力であり、浮揚力または揚力ともいうことができる。集合型飛行体2を構成する母機3aは、単数または複数とすることができるが、ここでは、集合型飛行体2が複数の母機3aを備える例を説明する。なお、母機3aの吊り下げ能力/性能および機数は、貨物100の重量や吊下げ方法、形状(密度、大きさ、長さ等)に応じて、適宜設定し、増減することができる。
子機3bは、自立飛行または遠隔制御による単独での飛行が可能な飛行体である。子機3bは、重量物の吊下げ能力は要求されず、フレーム5に接続されて母機3aと一体に飛行することで、集合型飛行体2の主に推進力(移動のための推力)および方向制御に寄与するものである。さらに、子機3bは集合型飛行体2が飛行を継続するための電力または燃料を供給することができるものである。
集合型飛行体2を構成する子機3bは単数または複数とすることができるが、ここでは集合型飛行体2が複数の子機3bを有する例を説明する。
なお、以下の説明において、UAV3の母機3aおよび子機3bを区別しない場合は、単にUAV3という。
【0012】
図3は、UAVの概略的な構成を示すブロック図である。
図3に示すように、UAV3は、回転翼であるロータ31と、各ロータ31に電力を供給するバッテリ33と、UAV3の周囲の画像を撮影可能なカメラCmと、UAV3の動作を制御するUAVコントローラ35と、を備える。
UAV3は、また、全世界測位衛星システム(Global Navigation Satellite System:GNSS)を構成する衛星から位置情報を受信可能なGNSS受信機Grと、UAV3の姿勢を検出するIMU(慣性計測装置、Inertial Measurement Unit)等の姿勢センサAsを備える。GNSS受信機Grは、一例として、GPS受信を用いることができる。
UAVコントローラ35は、フライトコントロール7および地上制御装置9と無線通信が可能である。UAVコントローラ35は、フライトコントロール7および地上制御装置9からの指示に従い、GNSS受信機Grで受信する位置情報、姿勢センサAsで検出される姿勢情報等に基づいて、UAV3の飛行を制御する。UAVコントローラ35は、各ロータ31の回転を調整することで、上昇、下降および方向転換を行うことができる。ロータ31の回転の調整には、例えば、ロータブレードのピッチ角、ロータ翅の迎え角、回転数の調整等が含まれる。
UAV3は、母機3aとして用いられる場合に要求される吊下げ能力や、子機3bとして用いられる場合に要求される推進力および給電能力等に応じて、ロータ31の数および出力、バッテリ33の容量等を適宜変更することができる。例えば、母機3aが6翅のロータを備え、子機3bが4翅のロータを備えるようにしても良い(
図2参照)。バッテリ33は、例えば、リチウムイオン電池や、鉛蓄電池等を用いることができる。図示は省略するが、バッテリ33は、充放電を管理するバッテリマネジメントシステム(BMS)と、バッテリ33の外部回路との接続および遮断を切り替えるリレー等を備える。
なお、
図3に示したUAV3はあくまで一例に過ぎない。UAV3が備える浮揚および推進手段は、特定のものに限定されず、例えば、サイクロローターやイオンブースター等を採用しても良い。
【0013】
集合型飛行体2において、各UAV3は、離脱可能にフレーム5に接続されている。
図1に示すように、フライトシステム1では、地上のスタンバイ位置に配置されるUAV3である予備機30を備える。予備機30は、母機3aおよび子機3bそれぞれに対応して用意されている。予備機30のスタンバイ位置は、例えば、集合型飛翔体2の出発地、目的地、または中継地とすることができる。
予備機30は、フレーム5からいずれかのUAV3が離脱する場合に、集合型飛行体2まで飛行し、離脱するUAV3と交替してフレーム5に接続する。フレーム5から離脱したUAV3は、スタンバイ位置まで飛行し、予備機として待機する。
UAV3の交替は、様々な目的で行うことができる。例えば、母機3aに給電を行う子機3bのバッテリ33が消耗した場合、予備機30と交替することができる。また、例えば、母機3aまたは子機3bに、モータ32の出力の低下等の不具合が生じた場合に、予備機30と交替することができる。交替したUAV3はスタンバイ位置に帰還し、バッテリ33の充電や修理等の必要な処置を受けることで、予備機30として使用することができる。
【0014】
図2に示すように、フレーム5は、母機3aを支持する第1支持部51と、子機3bを支持する第2支持部55と、を備える。
第1支持部51は、フライトコントロール7が設けられた中心部52と、中心部52の外周に放射状に配置された複数の直線部53と、を備える。中心部52は、フレーム5全体の中心に位置する。フライトコントロール7は中心部52の上面に配置されている。中心部52の下面には、集合型飛行体2が輸送する貨物100の吊り下げ部54が設けられている。貨物100は、ワイヤや固定具等を介して吊り下げ部54に接続され、集合型飛行体2から吊り下げられる形で輸送される。
図4は、フレーム5の構成を示す模式図である。
図4では、UAV3をフレーム3から取り外した状態を示している。
直線部53は、それぞれの内周側の端部が中心部52に接続し、外周側の端部には、UAV3(母機3a)とのコネクタCnが設けられている。
図3では、8つの直線部53が設けられた例を示しているが、直線部53とこれらに接続する母機3aの数は、適宜変更可能である。
【0015】
図4に示すように、第2支持部55は、第1支持部51の外周側に配置された環状部56と、環状部56を第1支持部51に接続する接続部57と、を備える。
環状部56は、第1支持部51と同心状に設けられる。
図4では、フレーム5を水平面に載置した状態で、フレーム5の中心部52を通り、鉛直線方向に沿って延びる軸をz軸と定義している。環状部56には、z軸周りの周方向に間隔を空けて、UAV3(子機3b)とのコネクタCnが複数設けられている。
接続部57は、環状部56から内周側に直線状に延びて、第1支持部51の直線部53に接続する。
図4の例では、4つの接続部57が90°間隔で配置されている。
図4では、z軸に直交し、かつ互いに直交する線分を、x軸、y軸と定義している。x軸、y軸のそれぞれに沿って、接続部57と直線部53が配置されている。すなわち、フレーム5を全体として見ると、環状部56の内周側に、接続部57および直線部53からなる直線が、十字型に交差する形で配置されている。
【0016】
図2に示すように、第1支持部51は、重量物を吊り下げる母機3aを支持するものである。そのため、剛性が比較的高い材料で構成することが望ましい。
一方、第2支持部55は、重量物が直接吊り下げられるものではないため、子機3bを支持し、子機3bの推進力を第1支持部51に伝達できるものであれば良い。そのため、第2支持部55は、第1支持部51よりも剛性が低い材料で構成しても良い。また、第2支持部55は可撓性のある材料で構成しても良い。
【0017】
図4に示すように、フレーム5のコネクタCnは、UAV3側のコネクタ(不図示)と結合することで、UAV3をフレーム5に物理的かつ電気的に接続する。コネクタCnは既知の構成を用いることができ、特定の構成に限定されない。
コネクタCnは、UAV3を、z軸に対し、x軸およびy軸の両方を包む平面(=ドローンの水辺面)が、数度~数十度の自由度で自在に傾けられるように固定する。これにより、UAV3はコネクタCnに固定された状態でも機体(UAV3)を傾けることが可能となり、集合飛行体2を方向転換させることが可能となる。さらに、UAV3は、z軸回りの全周回転が可能となるようにコネクタCnに固定されている。コネクタCnには、UAV3側のコネクタCn(不図示)と電気的に接続可能とする電極(不図示)が備えられている。また、コネクタCnは不図示の駆動機構を備え、フライトコントロール7の制御によってUAV3との接続および離脱を切り替えることができる。
【0018】
図4において、領域Aの断面図を示しているが、フレーム5は、例えば、内部が中空の筒状部材で構成することができる。フレーム5の内部には、例えばケーブル58が配設されている。ケーブル58は、例えば、フレーム5に設けられた各コネクタCn同士を接続する電力ケーブルとすることができる。電力ケーブルは、例えば、各コネクタCnに結合されたUAV3のバッテリ33同士を、並列に接続する回路を形成する。これによって、コネクタCnに接続されたUAV3のバッテリ33の間で、充放電が可能となる。各UAV3は、バッテリ33と電力ケーブル間の電力の流通および遮断を切り替えるリレーを設けている。
なお、電力ケーブルによって形成される充放電回路は特定の態様に限定されず自由に設定可能である。例えば、全てのコネクタCnを並列に接続した充放電回路を形成して良い。あるいは、コネクタ一つの母機3aとその母機3aに対して給電を行う一以上の子機3bを含むグループを複数設けて、グループごとに充放電回路を形成しても良い。
【0019】
ケーブル58は、また、各コネクタCnとフライトコントロール7を接続する通信ケーブルとすることができる。UAV3は、フライトコントロール7と無線通信が可能なものであるが、コネクタCnに接続されている間は、通信ケーブルを介してフライトコントロール7と有線通信を行っても良い。
【0020】
図4において、領域Bを上から見た図を示しているが、各コネクタCnの近傍に、コネクタCnの位置を特定するためのターゲットマークTmが設けられている。ターゲットマークTmは、フレーム5の表面の上側に面して設けられている。これによって、UAV3がコネクタCnの上方に飛来すると、UAV3のカメラCmによって、ターゲットマークTmが撮影可能である。ターゲットマークTmは、例えば、コネクタCnのz軸周りの周方向両側に設けられている。すなわち、一対のターゲットマークTmが、コネクタCnを間に挟む形で配置されている。ターゲットマークTmは、例えばUAV3のカメラCmで読み取り可能なバーコードとすることができる。UAV3がターゲットマークTmを読み取ることで、フレーム5に複数設けられた各コネクタCnを特定するための位置情報等を取得することができる。また、ターゲットマークTmの画像のサイズや、2つのターゲットマークTの画像の間隔等から、UAV3とコネクタCnのz軸方向の距離や、x軸方向およびy軸方向の位置ずれを把握することができる。
【0021】
なお、フレーム5の各コネクタCnの位置には、それぞれカメラCmおよび姿勢センサAs(
図5参照)が設けられている。各カメラCmの撮影画像と姿勢センサAsの測定値はフライトコントロール7に入力される。フライトコントロール7は、これらのデータを用いて、集合型飛行体2の姿勢の制御を行う。
【0022】
母機3aおよび子機3bがフレーム5の各コネクタCnに接続されることで、集合型飛行体2が構成される。貨物が吊り下げられた集合型飛行体2の中心部52を取り囲む母機3aは、貨物を吊り下げて浮揚される揚力を集合型飛行体2に付与する。また、貨物および母機3aの外周を囲む子機3bは、集合飛行体2が目的地まで進む推進力を集合型飛行体2に付与し、さらに集合型飛行体2の方向制御に用いられる。
なお、これはあくまで一例であり、母機3a/子機3bのいずれについても揚力/推進力を付与させても良い。
【0023】
図5は、フライトコントロール7および地上制御装置9の構成を示すブロック図である。
フライトコントロール7は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、通信I/F等を有するコンピュータにより構成することができる。CPUが、ROMに予め記憶されているプログラムを実行することで、フライトコントロール7の機能を実現する。
図5に示すように、フライトコントロール7は、飛行制御部71、監視部72、交替制御部73、給電制御部74および記憶部75を備える。
【0024】
図5に示すように、フライトコントロール7を構成するコンピュータには、GNSS受信機Gr、姿勢センサAs、カメラCm等の計器類が接続され、フライトコントロール7にはこれらが取得するデータが入力される。
図2に示すように、フライトコントロール7はフレーム5の中心部52に設置されており、フレーム5の中心部52には貨物100の吊り下げ部54が設けられている。フライトコントロール7に接続された姿勢センサAsは吊り下げ部54が設けられたフレーム5の中心部52の姿勢を検出し、カメラCmは吊り下げ部54から吊り下げられた貨物100の画像を撮影する。
【0025】
飛行制御部71は、コネクタCnに接続された各UAV3を制御することで、集合型飛行体2の飛行を制御する。
飛行制御部71は、地上制御装置9と通信を行い、随時更新される運航情報を受信する。
飛行制御部71は、受信した運航情報と、GNSS受信機Grから受信した位置情報に基づいて、目的地までの飛行ルートおよび飛行速度等を演算し、各UAV3のロータ31の回転を決定する。飛行制御部71は、また、監視部72から入力される集合型飛行体2の状態情報に基づいて、各UAV3のロータ31の回転を調整する。
【0026】
監視部72は、飛行中の集合型飛行体2の状態を監視する。監視部72は、具体的には、フレーム5、フレーム5に接続されたUAV3、およびフレーム5に吊り下げられた貨物100の状態を監視する。
監視部72は、各UAV3のUAVコントローラ35と通信を行い、UAV3の状態情報(バッテリ33の残量、バッテリ33の出力、ロータ31の回転、モータ32の状況、温度等)を定期的に取得する。
監視部72は、また、各コネクタCnおよびフライトコントロール7に設けられたカメラCmの撮影画像および姿勢センサAsの検出値を定期的に取得する。
監視部72は、取得したデータから、集合型飛行体2を構成するUAV3と、集合型飛行体2が輸送する貨物100の異常の有無を判定する。監視部72は、例えば、取得したデータを閾値と比較することで、異常の有無を判定することができる。閾値は、予め設定したものを用いても良く、あるいは、地上制御装置9から受信した運航情報等に基づいてリアルタイムで設定しても良い。
【0027】
監視部72は、異常を判定した場合、飛行制御部71、給電制御部74または交替制御部73、あるいは地上制御装置9に対して異常に対応する処理を指示する。指示の内容は、例えば、UAV3と予備機30との交替指示、UAV3の運転停止指示、UAV3の運転調整指示、集合型飛行体2の帰還要請等である。
監視部72は、例えば、UAV3のバッテリ残量を閾値と比較することで、バッテリ33の消耗を判定することができる。監視部72は、バッテリ33の消耗を判定した場合は、交替制御部73にUAV3と予備機30との交替指示を出力する。
監視部72は、例えば、UAV3の温度を閾値と比較することで、UAV3が故障により発熱しているかを判定することができる。監視部72は、UAV3の故障を判定した場合は、UAV3の運転停止の指示を回転数調整の指示を、飛行制御部71に出力する。
監視部72は、例えば、各コネクタCnの姿勢センサAsの検出値を閾値と比較することで、強風等の外乱による集合型飛行体2の姿勢の異常を判定することができる。監視部72は、集合型飛行体2の姿勢の異常を判定した場合は、UAV3の運転調整指示を、飛行制御部71に出力する。
監視部72は、フライトコントロール7のカメラCmの撮影画像から貨物100の異常を判定することができる。監視部72は、貨物100の異常を判定した場合は、地上制御装置9に出発地への帰還要請を送信する。
監視部72は、これらの例に限定されず、取得したデータに基づいて、集合型飛行体2の様々な異常を判定することができる。
監視部72の処理に用いられる各種の閾値は、予め設定され、記憶部75に記憶されたものを用いても良い。監視部72は、比較処理を行う際に、航行状況に応じて閾値を逐次決定したり、所定時間ごとに更新したりしても良い。監視部72は、例えば、スタンバイ位置までの予想飛行ルートと、そのルートを飛んだ場合の予測飛行時間に基づいて、バッテリ残量と比較する閾値を算出することができる。
【0028】
監視部72が取得したデータは、リアルタイムで地上制御装置9にも送信される。前記した閾値との比較による以上の判定処理は、地上制御装置9で行っても良い。この場合、監視部72には地上制御装置9の判定結果が送信される。監視部72は判定結果に応じて、飛行制御部71、給電制御部74および交替制御部73への指示を行っても良い。
【0029】
交替制御部73は、監視部72からUAV3の交替指示が入力されると、UAV3と予備機30との交替制御を行う。
交替制御部73は、地上制御装置9に交替要請を送信し、交替対象のUAV3のコネクタCnとの接続を解除する。交替制御部73は、コネクタCnから離脱したUAV3の制御を地上制御装置9に受け渡し、スタンバイ位置まで飛行させる。交替対象のUAV3が離脱するとその分の出力が失われるため、交替制御部73は、残りのUAV3のロータ31の回転を調整して出力を補うバックアップ制御を行う。なお、ここで出力は、UAV3の揚力および推進力のいずれか一方または両方を含むものである。
交替制御部73は、地上制御装置9に制御された予備機30が集合型飛行体2まで飛来すると、予備機30の飛行を制御して、UAV3が離脱したコネクタCnまで飛行させ、コネクタCnにドッキングさせる。
交替制御部73の詳細な処理については後述する。
【0030】
給電制御部74は、フレーム5の各コネクタCnに接続されたUAV3間で行われる給電を制御する。給電制御部74は、母機3aおよび子機3bのUAVコントローラ35から送信されるバッテリ33の残量等の情報を参照して、UAV3のバッテリ33の間で行われる充放電を統括的に管理する。給電制御部74は、例えば、各UAVコントローラ35を介して、各UAV3のバッテリ33と電力ケーブルの接続および遮断を切り替えることで、充放電を行うバッテリ33を制御することができる。
給電制御部74が行う制御は特定の態様に限定されず、自由に設定可能である。一例として、給電制御部74は、子機群から各母機/母機群に対して給電が行われるように制御することができる。給電制御部74は、例えば、バッテリ残量が低下した給電対象の母機3aと、給電可能なバッテリ残量を有する子機3bのリレーを制御して充放電回路に接続する。これにより、子機3bから放電して母機3aに充電を行うことができる。
なお、子機3bから母機3aへ給電を行う態様には必ずしも限定されず、必要に応じて子機3bが別の子機3bに対して給電を行っても良く、あるいは母機3aが子機3bに給電を行っても良い。例えば、子機3b自体に不具合はないが、コネクタCnに不具合が生じて、子機3bがコネクタCnから離脱できない場合が考えられる。このような場合に、子機3bに対して他の子機3bまたは母機3aが給電を行うことで、子機3bは飛行を継続することができる。
【0031】
記憶部75は、ROMおよびRAMから構成され、各部の処理に必要な各種のデータが格納される。また、記憶部75には、各部の処理結果が一時的に記憶される。
記憶部75には、一例として、集合型飛行体2を構成するUAV3の機体情報を記録したUAVテーブルUTが記憶されている。UAVテーブルUTは、フレーム5に接続されている母機3aおよび子機3bと、スタンバイ位置に待機している予備機30を含むものである。UAV3の機体情報は、例えば、各UAV3の識別子、種別情報(母機3a、子機3b等)、性能情報、状態情報(コネクタCnに接続中、スタンバイ中、充電中、停止中等)等を含むことができる。
記憶部75には、また、一例として、監視部72の処理に用いられる各種の閾値や、閾値を算出するためのデータが記憶される。閾値算出用のデータは、例えば、UAV3の交替を判定するために、UAV3のバッテリ残量と比較する閾値である。閾値算出用のデータは、例えば、スタンバイ位置までの予想飛行ルートと、そのルートを飛んだ場合の予測飛行時間とすることができる。
【0032】
また、記憶部75には、一例として、フレーム5の各部の位置情報を記録したPIDテーブルPTが記憶される。PIDテーブルPTは、具体的には、フレーム5に設けられた各コネクタCnの位置情報を含むものである。
図4に示すように、フレーム5の中心部52が、基準位置PID0として設定され、各コネクタCnの位置が位置PID1~PID24として設定されている。なお、
図4では、位置PID1~PID24については、「PID」を省略して、(1)~(24)の括弧つきの数字で示している。
PIDテーブルPTには、位置PID1~PID24の位置情報として、基準位置PID0からの距離情報が記録されている。距離情報は、例えば、基準位置PID0のx軸方向およびy軸方向の座標を(0,0)とした場合の、各位置の座標として記録することができる。
【0033】
また、PIDテーブルPTには、各位置PID1~PID24に設けられたコネクタCnについて、UAV3との接続状態が記録されている。接続状態として、例えば、「接続」、「離脱」、「ドッキング中」が記録される。また、PIDテーブルPTには、各コネクタCnに接続されているUAV3の識別子が記録される。これによってPIDテーブルPTとUAVテーブルUTが紐づけられる。
【0034】
地上制御装置9は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、通信I/F等を有するコンピュータにより構成することができる。CPUが、ROMに予め記憶されているプログラムを実行することで、
図5に示す各部の機能構成を実現する。
地上制御装置9は、飛行制御部91、監視部92、交替制御部93および記憶部94を備える。
記憶部94は、ROMおよびRAMから構成され、集合型飛行体2の飛行制御に必要な各種のデータが格納される。また、記憶部94には、各部の処理結果が一時的に記憶される。一例として、記憶部75には、フライトコントロール7の記憶部75と同様に、UAVテーブルUTおよびPIDテーブルPTが記憶されている。地上制御装置9およびフライトコントロール7のいずれかでUAVテーブルUTまたはPIDテーブルPTの更新が行われた場合は、他方に更新内容が送信され、他方でも更新が行われる。
【0035】
飛行制御部91は、フライトコントロール7と通信を行いながら、集合型飛行体2の飛行を制御する。飛行制御部91は、集合型飛行体2が目的地まで飛行するのに必要な航行情報を作成して、フライトコントロール7の飛行制御部91に送信する。飛行制御部91は、また、集合型飛行体2の航行中に、フライトコントロール7から位置情報を定期的に受信し、目的地までの運航情報を随時更新する。飛行制御部91は、例えば、インターネットを介して航行ルートにおける天候情報や風速情報を取得し、これらの情報に基づいて運航情報を随時更新しても良い。飛行制御部91は、航行情報および運航情報を作成する際に、例えば、ADS-BやADS-Cに代表されるADS(Automatic Dependent Surveillance)を利用して、集合型飛行体2と同じエリアを飛行中の他の飛行体の情報を取得しても良い。ADS-B(Automatic Dependent Surveillance - Broadcast)は、飛行中に自機位置の情報を無線送信することで、相互の位置把握に利用できる機器のための規格である。この場合、集合型飛行体2にADS-Bの規格に応じた機器を搭載する。ADS-C(Automatic dependent surveillance - contract)は、主に旅客機等の大型機で利用される、より広範囲をカバーするシステムである。飛行制御部91は、他にも、航空機で一般的に使用されている航空機衝突防止装置である、ACAS/TCAS(Airborne collision avoidance system/ Traffic alert and collision avoidance system)、小型機向けのTCAD(Traffic and collision alerting device)等を利用しても良い。
飛行制御部91は、また、必要に応じて、広域の航空管制システムと通信を行い、航行許可の取得や航行に必要な情報を取得することができる。
【0036】
監視部92は、フライトコントロール7の監視部72からリアルタイムで送信されるデータを用いて、集合型飛行体2を監視する。監視部92の処理は、フライトコントロール7の監視部72の処理と並行して行っても良く、あるいは、フライトコントロール7との通信状態等から、フライトコントロール7自体の異常の有無を判定しても良い。
監視部92は、異常を判定した場合、フライトコントロール7に対して異常に対応する処理を指示する。指示の内容は、例えば、UAV3の予備機30との交替指示、運転停止指示、ロータ31の回転の調整指示等である。
【0037】
交替制御部93は、フライトコントロール7の交替制御部73と連携して、UAV3と予備機30の交替を制御する。
交替制御部93は、フライトコントロール7から交替要請を受信した場合、交替対象のUAV3に対応する予備機30を制御して、スタンバイ位置から集合型飛行体2まで飛行させる。予備機30が集合型飛行体2に到着すると、予備機30の制御をフライトコントロール7に受け渡す。さらに、交替制御部73は、コネクタCnから離脱したUAV3を制御して、UAV3の位置が、集合飛行体2からあらかじめ設定された距離Dに離れるまで飛行させる。交替制御部73は、離脱したUAV3が設定した距離Dに離れると、UAV3の制御を地上制御装置9に受け渡す。地上制御装置の交代制御部93は、UAV3をスタンバイ位置まで飛行させる。交替制御部93は、必要に応じて、スタンバイ位置に帰還したUAV3に対して充電等を行わせる。
【0038】
続いて、地上制御装置9とフライトコントロール7による集合型飛行体2の飛行制御の概要を説明する。
<飛行開始時>
出発地において、フレーム5の各コネクタCnにUAV3を接続して、
図2に示す集合型飛行体2を構成する。コネクタCnへのUAVの接続は、手作業で行っても良く、あるいはUAV3を自立飛行させて行っても良い。また、フレーム5の中心部52に設けられた吊り下げ部54に、貨物100を、ワイヤや固定具等を介して接続する。また、予備機30をスタンバイ位置にセットする。この際、予備機30は完全充電の状態としておき、さらに外部電源に接続して充電状態にしておいても良い。
【0039】
地上制御装置9は、フライトコントロール7、UAV3、予備機30、フレーム5に設けられたカメラCmおよびセンサとの通信テストを行う。地上制御装置9は、UAV3が接続されたコネクタCnの総数(PIDmax)をカウントする。地上制御装置9は、PIDテーブルPTのコネクタCnの各位置PID1~PID24について、接続されたUAV3の識別子を記録し、UAVテーブルUTと紐づけを行う。地上制御装置9は、UAVテーブルUTとPIDテーブルPTの内容を、フライトコントロール7と共有する。
地上制御装置9は、目的地までの航行情報をフライトコントロール7に送信し、フライトコントロール7の飛行制御部71は、航行情報に基づいてUAV3を制御し、目的地までの飛行を開始する。
【0040】
<飛行中>
集合型飛行体2の飛行中は、フライトコントロール7の監視部72が、定期的に飛行中の集合型飛行体2の状態を監視する。
図6は、フライトコントロール7の監視部72の処理の流れを示すフローチャートである。
図6では、監視部72は、各位置PIDn(PID1~PID24)のコネクタCnに接続されたUAV3の異常の有無を順次判定する処理を示している。なお、
図6の処理は簡略化したものであり、フレーム5の中心部52(PID0)の吊り下げ部54に接続された貨物100の異常の判定処理は省略している。また、各UAV3の異常の判定についても、バッテリ33の消耗と故障の有無の判定のみを示している。
また、フローチャートでの記載は省略しているが、地上制御装置9およびフライトコントロール7のいずれか一方で、UAVテーブルUTまたはPIDテーブルPTの更新が行われた場合は、他方に更新内容が送信され、他方でもUAVテーブルUTまたはPIDテーブルPTの更新が行われる。
【0041】
図6に示すように、監視部72は、カウンターをリセットして、カウント値をn=1と初期化する(ステップS01)。
監視部72は、位置PIDnのコネクタCnに接続されたUAV3から状態情報を取得する(ステップS02)。
監視部72は、UAV3の状態情報に基づいて、UAV3の故障の有無を判定する(ステップS03)。
監視部72は、UAV3の故障有りを判定した場合は(ステップS03:Yes)、飛行制御部71に当該UAV3の停止指示を出力して(ステップS07)、ステップS05に進む。
【0042】
監視部72は、UAV3の故障を判定しなかった場合は(ステップS03:No)、ステップS04に進んで、バッテリ33の消耗の有無を判定する。
監視部72は、バッテリ33が消耗していると判定した場合(ステップS04:Yes)、交替制御部73に当該UAV3の交替指示を出力して(ステップS08)、ステップS05に進む。
監視部72は、バッテリ33が消耗していないと判定した場合(ステップS04:No)、ステップS05に進む。
監視部72は、状態確認を行ったPIDnが、総数PIDmaxに到達していない場合は(ステップS05:No)、カウンターを更新して、n=n+1とし(ステップS06)、ステップS02に戻って、次の位置PIDnのコネクタCnに接続されたUAV3の状態確認を行う。
監視部72は、状態確認を行った位置PIDnが、総数PIDmaxである場合は(ステップS05:Yes)、監視処理を終了する。
監視部72は、所定時間経過後に再びステップS01から処理を行うことで、集合型飛行体2の飛行中は、各UAV3の監視を繰り返し行う。
【0043】
図7は、停止指示が入力された場合の、飛行制御部71の処理を示すフローチャートである。
図7に示すように、飛行制御部71は、監視部72から故障が判定されたUAV3の停止指示が入力されると(ステップS101:Yes)、停止指示を地上制御装置9に通知する(ステップS102)。飛行制御部71は、地上制御装置9から承認応答を受信すると(ステップS103:Yes)、故障が判定されたUAV3のUAVコントローラ35に、運転を停止させる(ステップS104)。飛行制御部71は、残りのUAV3のUAVコントローラ35に対して、停止したUAV3の出力(揚力や推進力)を補うバックアップ制御を行う(ステップS105)。飛行制御部71は、UAVテーブルUTの状態情報を「運転停止」に書き換えて、地上制御装置9に完了を通知して(ステップS106)、処理を終了する。
【0044】
なお、図示は省略しているが、監視部72は、一定数以上のUAV3の故障を判定した場合等、集合型飛行体2の目的地までの飛行が困難と判定した場合は、飛行制御部71に、集合型飛行体2の出発地への帰還指示や、集合型飛行体2をその場で降下させる降下指示等を出力しても良い。
また、集合飛行体2が自律制御を優先した運用を行う場合は、ステップS102~ステップS103に例示したような、地上制御装置9から承認応答を得るための処理は省略しても良い。その場合も、飛行制御部71が、故障が判定されたUAV3の停止処理を終了した後に、ステップS106と同様に、地上制御装置71へ通知を行う。
【0045】
図8は、フライトコントロール7の交替制御部73の処理の流れを示すフローチャートである。
図9は、地上制御装置9の交替制御部93の処理の流れを示すフローチャートである。
図10は、UAV3と予備機30の交替を説明する図である。
図11は、予備機30のコネクタCnへのドッキングを説明する図である。
なお、
図10および
図11では、位置PID9のコネクタCnに接続されたUAV3(子機3b)を予備機30と交替する例を説明する。
【0046】
図8に示すように、交替制御部73は、監視部72からバッテリ33の消耗が判定されたUAV3の交替指示が入力されると(ステップS201:Yes)、地上制御装置9に交替要請を送信する(ステップS202)。
交替要請には、集合型飛行体2の基準位置PID0の位置情報と、交替対象のUAV3の機体情報が含まれている。
図9に示すように、地上制御装置9の交替制御部93は、交替要請を受信すると(ステップS301:Yes)、交替要請に示されているUAV3(母機3aまたは子機3b)に対応する予備機30が飛行可能かを確認して、フライトコントロール7の交替制御部73に承認応答を送信する(ステップ302)。
交替制御部93は、予備機30を制御して、集合型飛行体2に向かって飛行させる(ステップS303)。
図10の例では、地上制御部9の交替制御部93は、子機3bに対応する予備機30を制御して、フライトコントロール7の位置(PID0)まで飛行するように制御する。
【0047】
図8に示すように、フライトコントロール7の交替制御部73は、地上制御装置9から承認応答を受信すると(ステップS203:Yes)、バッテリ33の消耗が判定されたUAV3を、コネクタCnから離脱させ(ステップS204)、集合型飛行体2から距離D離れた位置まで飛行させる。交替制御部73は、残りのUAV3に対して、離脱したUAV3の出力(揚力や推進力)をバックアップするバックアップ制御を行い(ステップS205)、UAVテーブルUTおよびPIDテーブルPTを更新する。
図10の例では、交替制御部73は、位置PID9のコネクタCnから、子機3bを離脱させる、PIDテーブルPTの位置PID9のコネクタCnの接続状態を「接続」から「離脱」に書き換える。
図8に示すように、交替制御部73は、離脱したUAV3に対して、スタンバイ位置までの飛行を指示し(ステップS206)、地上制御装置9の交替制御部93に、離脱したUAV3の制御依頼を送信し(ステップS207)、予備機30の飛来を待ち受ける。
【0048】
図9に示すように、地上制御装置9の交替制御部93は、離脱したUAV3の制御依頼を受信すると(ステップS304:Yes)、当該UAV3と通信を行いながら、スタンバイ位置までの飛行を制御する(ステップS305)。
また、交替制御部93は、予備機30が集合型飛行体2に到着すると(ステップS306:Yes)、予備機30の制御依頼をフライトコントロール7に送信する(ステップS307)。
図11に示すように、交替制御部93は、集合型飛行体2の基準位置PID0の位置情報に基づいて予備機30を飛行させるため、予備機は、位置PID0に位置するフライトコントロール7(PID0)の上方に到着する。
【0049】
図8に示すように、フライトコントロール7の交替制御部73は、地上制御装置9から予備機30の制御依頼を受信すると(ステップS208:Yes)、予備機30を制御して、基準位置PID0からUAV3が離脱したコネクタCnの上方に移動させる(ステップS209)。
図11の例では、交替制御部73は、基準位置PID0から、位置PID9まで移動する。
前記したように、PIDテーブルPTには、PID9の、PID0からの距離情報が記録されている。交替制御部73は、GNSS受信機Grで受信するPID0の位置情報と、PID9の距離情報とに基づいて、PID9の位置情報を演算する。そして、交替制御部73は、演算したPID9の位置情報に基づいて、予備機30を位置PID9まで移動させる。
なお、交替制御部73は、PID9の位置情報を演算する際に、PID9のコネクタCnに設けられたカメラCmおよび姿勢センサAsから得られるデータに基づいて、位置情報の補正を行っても良い。
【0050】
図8に示すように、位置PID9の上方に移動した予備機30を下降させて、コネクタCnにドッキング(接続)させる(ステップS210)。
なお、予備機30のドッキング中は、安定してドッキングが行えるように、集合型飛行体2はその場でホバリングをしていても良い。
【0051】
具体的には、交替制御部73は、予備機30のカメラCmに、位置PID9のコネクタCnの周方向両側に設けられているターゲットマークTm(
図4参照)を読み取らせ、コネクタCnの位置情報を取得する。交替制御部73は、取得したコネクタCnの位置情報が、接続対象であるコネクタCnの位置情報と一致するかを確認する。
位置情報が一致する場合は、交替制御部73は、PIDテーブルPTの位置PID9のコネクタCnの状態を「離脱」から「ドッキング中」に書き換える。
交替制御部73は、さらに、予備機30で撮影したターゲットマークTmの画像のサイズ等から、コネクタCnに接続するまでに必要な下降距離を算出し、さらにコネクタCnと予備機30との位置ずれを修正して、予備機30とコネクタCnを接続させる。
【0052】
交替制御部73は、予備機30の接続が完了すると、他のUAV3に対するバックアップ制御を終了する(ステップS211)。
交替制御部73は、地上制御装置9に完了を通知して(ステップS212)、交替制御の処理を終了する。交替制御部73は、PIDテーブルPTおよびUAVテーブルUTの更新を行う。PIDテーブルPTの位置PID9のコネクタCnの情報を「ドッキング中」から「接続」に書き換え、接続した予備機30であるUAV3の識別子を記録して、UAVテーブルUTとの紐づけを行う。
【0053】
図9に示すように、地上制御装置9の交替制御部73は、離脱したUAV3がスタンバイ位置に帰還すると(ステップS308:Yes)、外部電源に接続して充電させ(ステップS309)、交替制御の処理を終了する。交替制御部73は、UAVテーブルUTにおける当該UAV3の状態情報を「充電中」に書き換える。なお、地上制御装置9は、UAV3の充電が完了すると、UAV3の状態情報を「スタンバイ中」に書き換える。充電が完了したUAV3は、予備機30として用いることができる。
【0054】
以上説明したように、本実施形態の集合型飛行体2は、例えば、以下の構成を有する。
(1)集合型飛行体2は、複数の飛行体と、フレーム5と、フライトコントロール7(制御装置)と、を備える。
複数の飛行体は、例えば、母機3aおよび子機3bを含むUAV3とすることができる。
フレーム5は、UAV3を離脱可能に接続するコネクタCnを備える。
フライトコントロール7は、フレーム5に接続されたUAV3を制御して、一体的に飛行させるフライトコントロール7(制御装置)と、を備える。
【0055】
例えば、UAV3が単独で飛行する場合、UAV3のバッテリ33の容量によって、飛行距離に限りがあった。バッテリ33が消耗した場合、UAV3を中継地に降下させてバッテリ33の充電を行うこともできるが、飛行時間の遅延に繋がる。
本実施形態の集合型飛行体2は、複数のUAV3をフレーム5に離脱可能に接続して、一体的に飛行させる。このように構成することで、例えば、あるUAV3のバッテリ33が消耗した場合に、そのUAV3をコネクタCnから離脱させ、予備機30と交替させることができる。そして、交替を行っている間も、残りのUAV3によって集合型飛行体2の飛行を継続することができる。また、いずれかのUAV3が故障してそのUAV3の運転を停止した場合でも、残りのUAV3によって集合型飛行体2の飛行を継続することができる。これによって、集合型飛行体2は、飛行時間の遅延を低減しながら、長距離飛行、長時間飛行をすることが可能となる。
さらに、バッテリ33の充電や交換等のために、集合型飛行体2を中継地に降下させる必要がないため、中継地エリアの確保や、充電/交換設備の不要となり、無駄なインフラの整備とそれに伴うコストの追加を回避することができる。さらに、飛行を中断してバッテリ33の充電や交換、燃料補給等を行う必要がない飛行時間の遅延を低減しながら、長距離飛行、長時間飛行をすることが可能となる。
【0056】
(2)複数のUAV3は、母機3a(第1の飛行体)と、子機3b(第2の飛行体)を有する。
母機3aは、例えば、電力によって駆動され、重量物である貨物100の輸送能力を有する。
子機3bは、例えば、母機3aに対して電力を供給可能であり、フレーム5に接続された母機3aと一体的に飛行することで、母機3aに推進力を付与する。
【0057】
貨物100の輸送能力を有するUAV3はコストが高くなる傾向がある。そこで、集合型飛行体2を構成する複数のUAV3は、貨物100の吊下げ能力を有する母機3aと、母機3aに給電可能であり、推進力を付与可能な子機3bの組み合わせで構成する。子機3bには貨物100の吊下げ能力は要求されないため、母機3aと比較してコストを抑えたものを用いることができる。これによって、UAV3のコストを抑えつつ、貨物100の長距離輸送を可能とすることができる。
なお、本実施形態の例では、母機3aは電力で駆動させるUAV3を一例として説明したが、母機3aは、燃料で駆動されるものであっても良い。その場合、子機3bは母機3aに燃料を供給可能なものであれば良く、子機3b自体は電力および燃料のいずれかまたは両方で駆動されるものであっても良い。
なお、前記したように子機3bは、吊下げ能力を要求されないものを用いることができるが、子機3bとして貨物100の吊下げ能力を有するものを用いても良い。その場合は、子機3bが接続される第2支持部55の剛性を、母機3aが接続される第1支持部51と同程度としても良い。
【0058】
(3)フレーム5は、母機3aを支持する第1支持部51と、子機3bを支持する第2支持部55と、を備える。
第2支持部55は、環状部56と、接続部57と、を備える。
環状部56は、第1支持部51の外周に配置され、複数のコネクタCnが周方向に間隔を空けて設けられている。接続部57は、環状部56を第1支持部51に接続する。
【0059】
集合型飛行体2において、重量物である貨物100を輸送する母機3aが内周に位置し、母機3aに推進力を付与する子機3bが、母機3aの外周を囲む形で配置される。これによって、集合型飛行体2のバランスが良くなり、安定して飛行することができる。さらに、第2支持部55に複数の子機3bを配置することができるので、母機3aへの給電量を増やすことができる。また、子機3bに揚力を負担させる場合には、集合型飛行体2の揚力を増加させることができる。
【0060】
(4)フレーム5の第1支持部51は、貨物100が吊り下げられる中心部52と、中心部52から放射状に配置された複数の直線部53と、を備える。
複数の直線部53のそれぞれに、UAV3とのコネクタCnが設けられる。
【0061】
中心部52に貨物100の吊り下げ部54が設けられ、貨物100を輸送する母機3aがその周囲に放射状に配置されるため、集合型飛行体2のバランスが良くなる。さらに、集合型飛行体2に複数の母機3aを配置できるので、より重量の大きい貨物100を輸送することが可能である。また、母機3aも予備機30と交替が可能となるため、安定して長距離、長時間の飛行を行うことができる。
【0062】
(5)フレーム5は、例えば、子機3bから供給される電力を、母機3aに供給する供給部を備える。供給部は、フレーム5の内部に配設されたケーブル58(電力ケーブル)とすることができる。
【0063】
これによって、子機3bから母機3aに給電する際に、子機3bが母機3aに直接接触する必要がなく、コネクタCnに接続したまま給電を行うことができるため、安定した給電が可能となる。
なお、母機3aが燃料で駆動され、子機3bから母機3aに燃料が供給される場合は、供給部は、燃料を輸送するケーブルとすることができる。
【0064】
(6)フライトコントロール7は、監視部72(交替判定部)と、交替制御部73と、を備える。
監視部72は、集合型飛翔体の飛行中に、複数のUAV3のそれぞれから状態情報を取得し、状態情報に基づいて、スタンバイ位置に待機する予備機30との交替を判定する。
交替制御部73は、交替が判定された飛行体をコネクタCnから離脱させ、集合型飛行体2に飛来した予備機30を、当該コネクタCnに接続させる。
【0065】
これによって、集合型飛行体2は、飛行中のUAV3のリアルタイムの状態に応じて予備機30との交替を判定できるため、安定した長距離輸送を行うことができる。
【0066】
(7)集合型飛行体2は、フレーム5に設けられ、GNSS(衛星測位システム)による位置情報を受信するGNSS受信機Gr(受信機)を備える。
フライトコントロール7は、フレーム5上のGNSS受信機Grの位置からコネクタCnまでの距離情報を、PIDテーブルPTとして記憶する記憶部75を備える。
フライトコントロール7の交替制御部73は、GPSGNSS受信機Grの位置に飛来した予備機30を、距離情報に基づいて、UAV3が離脱したコネクタCnまで移動させ、コネクタCnに接続させる。
【0067】
これにより、集合型飛行体2が飛行中でも、交替制御部73は、GNSS受信機Grの位置まで飛来した予備機30をコネクタCnの位置まで飛行させ、コネクタCnに容易に接続させることができる。
【0068】
(8)交替制御部73は、コネクタCnからUAV3が離脱した際に、コネクタCnに接続している残りのUAV3に対して、離脱したUAV3の出力を補うバックアップ制御を行う。
【0069】
これにより、UAV3がコネクタCnから離脱している間も、残りのUAV3によって、集合型飛行体2を安定して飛行させることができる。なお、UAV3の出力は、UAV3の揚力および推進力の少なくとも一方を含むものである。
【0070】
(9)本実施形態の集合型飛行体2の交替制御方法は、フライトコントロール7によって実行される、交替判定ステップと、交替制御ステップと、を含む。
フライトコントロール7は、交替判定ステップにおいて、集合型飛翔体の飛行中に、複数のUAV3のそれぞれから状態情報を取得し(ステップS02)、状態情報に基づいて、スタンバイ位置に待機する予備機30との交替を判定する(ステップS04)。
フライトコントロール7は、交替制御ステップにおいて、交替が判定されたUAV3をコネクタCnから離脱させ(ステップS204)、集合型飛行体2に飛来した予備機30を当該コネクタCnに接続させる(ステップS210)。
【0071】
これによって、集合型飛行体2は、飛行中のUAV3のリアルタイムの状態に応じて予備機30との交替を判定できるため、安定した長距離輸送を行うことができる。
【0072】
(10)本実施形態の集合型飛行体2の交替制御方法は、
フライトコントロール7から、予備機30の制御を行う地上制御装置9に対して交替要請を送信するステップ(ステップS202)と、
コネクタCnから離脱したUAV3の制御を、地上制御装置9に依頼する制御依頼を送信するステップ(ステップS207)と、を含む。
交替制御方法は、さらに、地上制御装置9によって実行される、第1の制御ステップと、第2の制御ステップと、を含む。
地上制御装置9は、第1の制御ステップにおいて、フライトコントロール7からの交替要請に基づいて、スタンバイ位置に待機する予備機30を制御して、集合型飛行体2まで飛行させる(ステップS301~S303)。
地上制御装置9は、第2の制御ステップにおいて、フライトコントロール7からの制御依頼に基づいて、コネクタCnから離脱したUAV3を制御して、スタンバイ位置まで飛行させる(ステップS304~S305)。
【0073】
地上制御装置9は、予備機30がスタンバイ位置から集合型飛行体2まで飛行する間を制御し、予備機30が集合型飛行体2まで飛来した段階で、フライトコントロール7に予備機30の制御を受け渡す。集合型飛行体2に設けられたフライトコントロール7が制御することで、予備機30のコネクタCnの位置まで移動と、コネクタCnへの接続をスムーズに行うことができる。
さらに、集合型飛行体2から離脱したUAV3については、例えば、集合型飛行体2に干渉しない距離Dまで飛行させた後、速やかに地上制御装置9に制御を受け渡して、スタンバイ位置まで帰還させる。これによって、集合型飛行体2の飛行を制御するフライトコントロール7の負荷を低減することができる。
【0074】
以下に、前記した実施形態の変形例を説明する。変形例の構成において、実施形態を同じ構成については同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
<変形例1>
図12は、変形例1に係る集合型飛行体2Aの構成を示す図である。
前記した実施形態では、集合型飛行体2Aのフレーム5Aに複数の母機3aが接続される例を説明した。
図12に示すように、変形例1では、集合型飛行体2Aのフレーム5Aに、1機の母機3aが接続される。さらに変形例1では、母機3aのUAVコントローラ35(
図3参照)が、地上制御装置9と通信を行いながら、集合型飛行体2Aの飛行を制御するフライトコントロール7として機能する。
フレーム5Aの、子機3bが接続される第2支持部55Aの構成は、前記した実施形態と概ね同じであるため、詳細な説明は省略する。
【0075】
図12に示すように、フレーム5Aの第1支持部51Aは、前記した実施形態の直線部53が省略されている。変形例1において、第1支持部51Aは、母機3aが接続される中心部52Aを備える。すなわち、変形例1において、中心部52Aは母機3aが接続される接続部57としての機能を備える。母機3aは、中心部52Aの上側に配置される。中心部52Aの下側には、前記した実施形態と同様に、貨物100の吊り下げ部54が設けられる。
変形例1において、フレーム5Aの第2支持部55Aの4つの接続部57Aは、それぞれ第1支持部51Aの中心部52Aに直接接続している。
【0076】
変形例1において、母機3aは、前記した実施形態と同様に、重量物である貨物100の輸送能力を有するものを用いる。変形例1では母機3aが1機のみであるため、実施形態で用いたものより高い重量物の輸送能力を有するものを用いても良い。また、フライトコントロール7として機能する母機3aのUAVコントローラ35は、演算能力が高いものを用いても良い。
子機3bは、前記した実施形態と同様に、母機3aと一体的に飛行することで推進力を付与し、母機3aが飛行するための電力または燃料を供給することができるものを用いる。
【0077】
変形例1において、母機3aのUAVコントローラ35は、フライトコントロール7として、飛行制御部71、監視部72、交替制御部73、給電制御部74および記憶部75(
図5参照)を備える。
母機3aのUAVコントローラ35が備える飛行制御部71は、地上制御装置9、子機3bのUAVコントローラ35および、コネクタCnに設けられた姿勢センサAs、カメラCm等と通信を行って、集合型飛行体2Aの飛行を制御し、集合型飛行体2Aの状態を監視し、子機3bの交替制御を行う。なお、変形例1では、母機3aが1機のみであるため、予備機30との交替は行わない。
【0078】
以上説明したように、変形例1の集合型飛行体2Aは、例えば、以下の構成を有する。
(i)フレーム5Aの第1支持部51Aは、母機3a(第1の飛行体)が配置され、貨物100が吊り下げられる中心部52Aを備える。母機3aのUAVコントローラ35は、フレーム5Aに接続されたUAV3を制御して、一体的に飛行させるフライトコントロール7(制御装置)である。
【0079】
このように構成することで、変形例1においても、前記した実施形態と同様の効果を得ることができる。例えば、あるUAV3(子機3b)のバッテリ33が消耗した場合に、そのUAV3をコネクタCnから離脱させ、予備機30と交替させることができる。そして、交替を行っている間も、残りの飛行体によって集合型飛行体2Aの飛行を継続することができる。これによって、集合型飛行体2Aは、飛行時間の遅延を低減しながら、長距離飛行することが可能となる。
さらに変形例1では、母機3aのUAVコントローラ35がフライトコントロール7として機能することで、フレーム5Aにフライトコントロール7として機能するコンピュータを別途設ける必要がなく、部品点数を削減することができる。
【0080】
なお、変形例1においても、フライトコントロール7として機能するコンピュータを、母機3aのUAVコントローラ35とは別に設けても良い。その場合、フライトコントロール7は、
図12に示すフレーム5の中心部52に設置しても良く、あるいは他の任意の箇所に設置しても良い。
【0081】
<変形例2>
図13は、変形例2に係る集合型飛行体2Bの一例を示す図である。
図14は、変形例2に係る集合型飛行体2Bの別の例を示す図である。
前記した実施形態および変形例1では、フレーム5を介して複数のUAV3を接続することで、集合型飛行体2を構成する例を説明したが、これらの態様に限定されない。変形例2では、
図13および
図14に示すように、フレームを介さず、大型の母機3aに子機3bを直接的に接続することで、集合型飛行体2Bを構成する。
【0082】
変形例2において、大型の母機3aは、集合型飛行体2Bにおいて、揚力に加えて推進力を付与するものであり、さらに集合型飛行体2Bの方向制御も行う。また、母機3aのUAVコントローラ35は、変形例1と同様に、地上制御装置9と通信を行いながら、集合型飛行体2Bの飛行を制御するフライトコントロール7として機能する。母機3aのUAVコントローラ35は、変形例1と同様の制御を行うことができる。
【0083】
母機3aの機体には、子機3bを物理的または電気的に接続するためのコネクタCnが設けられている。コネクタCnは、例えば、母機3aの機体の中心部の上面に設けることができる。子機3bは、母機3aの中心部の上面に着地することで、コネクタCnに接続することができる。
【0084】
図13の例では、母機3aに一つのコネクタCnが設けられている。
図14の例では、母機3aに複数のコネクタCnが設けられている。
図示は省略するが、母機3aの内部に、母機3aおよび子機3bを接続するためのケーブル等を配設することができる。これによって、子機3bからコネクタCnおよびケーブルを介して母機3aに給電を行う、または燃料を供給することができる。
あるいは、子機3bは、ワイヤレス給電により、コネクタCnおよびケーブルを介さずに、母機3aのバッテリ33を充電するようにしても良い。
ワイヤレス給電として、磁界共鳴方式、電磁誘導方式、静電誘導方式等の任意の方式を用いることができる。
【0085】
以上の通り、変形例2の集合型飛行体2Bは、例えば、以下の構成を有する。
(11)集合型飛行体2Bは、電力または燃料によって駆動され、重量物の吊下げ能力を有する母機3a(第1の飛行体)と、
母機3aに設けられたコネクタCnと、
コネクタCnに接続することで、母機3aと一体的に飛行可能であり、コネクタCnを介して母機3aに電力または燃料を供給可能な子機3b(第2の飛行体)と、
飛行中において、子機3bのコネクタCnとの接続および離脱を制御する母機3aのUAVコントローラ35(制御装置)と、を有する。
【0086】
このように構成することで、変形例1においても、前記した実施形態と同様の効果を得ることができる。例えば、子機3bがコネクタCnを介して母機3aに給電を行うことができる。また、子機3bのバッテリ33が消耗した場合に、その子機3bをコネクタCnから離脱させ、予備機30と交替させることができる。そして、交替を行っている間も、母機3aによって集合型飛行体2Aの飛行を継続することができる。これによって集合型飛行体2Bは、バッテリ33の充電/交換等のために中継地に降下する必要が無く、飛行時間の遅延を低減し、長時間飛行および長距離飛行が可能となる。
【0087】
<その他の変形例>
前記した実施形態では、フレーム5のコネクタCnおよびフレーム5内部に配設されたケーブル58を介して、子機3bから母機3aに給電される例を説明したが、本発明はこの態様に限定されない。
例えば、ワイヤレス給電により、フレーム5を介さずに、子機3bが母機3aのバッテリ33を充電するようにしても良い。
ワイヤレス給電として、磁界共鳴方式、電磁誘導方式、静電誘導方式等の任意の方式を用いることができる。
例えば、フライトコントロール7の給電制御部74が、子機3bをフレーム5のコネクタCnから離脱させ、給電対象の母機3aの上方に飛行させて、ワイヤレス給電を行うことができる。給電制御部74は、例えば、GNSS受信機Grで受信するフレーム5の中心部52(PID0)の位置情報と、PIDテーブルPTに記録されている、中心部52と各コネクタCnとの距離情報に基づいて、子機3bを母機3aの上方まで飛行させることができる。
【0088】
前記した実施形態では、集合型飛行体2を構成する複数の飛行体としてUAV3を用いる例を説明したが、飛行体は、UAV3に限定されない。例えば、複数の飛行体の少なくとも一部を、ロータ(回転翼)を備えたヘリコプターやプロペラ(固定翼)を備えた飛行機としても良い。さらに、複数の飛行体の少なくとも一部を、有人航空機としても良い。
【0089】
また、前記した実施形態では、集合型飛行体2が重量物として貨物100を輸送する例を説明したが、本発明はこの態様に限定されない。集合型飛行体2は、例えば、人や動物等を輸送するものであっても良い。
【0090】
また、前記した実施形態では、フレーム5の第1支持部51の中心部52に、貨物100の吊り下げ部54を設ける例を説明したが、本発明はこの態様に限定されない。吊り下げ部54は、中心部52だけでなく、例えば、第1支持部51の直線部53や、第2支持部55の接続部57等に複数設けても良い。例えば、貨物100が風力発電用ブレード等の長尺の部材であっても、これらの複数の吊り下げ部54にロープ等を介して貨物100を支持させることができる。これによって、長尺の部材を安定して支持することができるため、集合型飛行体2の飛行の安全性を高めることができる。なお、この場合は第2支持部55の接続部57も、第1支持部51と同様の剛性を有する材料で構成しても良い。
【0091】
また、前記した実施形態では、フレーム5の第1支持部51に母機3aを配置し、第2支持部55に子機3bを配置する例を説明したが、本発明はこの態様に限定されない。必要に応じて、第1支持部51に子機3bを配置しても良く、第2支持部55に母機3aを配置しても良い。例えば、前記したように、長尺の部材を輸送するために吊り下げ部54を第2支持部55にも設ける場合には、第2支持部55の吊り下げ部54が設けられた部分に、重量物の輸送能力を有する母機3aを配置することができる。
【符号の説明】
【0092】
1 フライトシステム
2 集合型飛行体
9 地上制御装置
3 UAV(飛行体)
3a 母機(第1の飛行体)
3b 子機(第2の飛行体)
30 予備機
35 制御装置
5 フレーム
51 第1支持部
52 中心部
53 直線部
54 吊り下げ部
55 第2支持部
56 環状部
57 接続部57
Cn コネクタ
7 フライトコントロール(制御装置)
72 監視部(交替判定部)
73 交替制御部
75 記憶部
UT UAVテーブル
PT PIDテーブル
100 貨物(重量物)