(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111633
(43)【公開日】2024-08-19
(54)【発明の名称】太陽電池の検査装置
(51)【国際特許分類】
H02S 50/15 20140101AFI20240809BHJP
G01N 21/88 20060101ALI20240809BHJP
G01N 21/95 20060101ALI20240809BHJP
【FI】
H02S50/15
G01N21/88 H
G01N21/95 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023016251
(22)【出願日】2023-02-06
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100100480
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100201455
【弁理士】
【氏名又は名称】横尾 宏治
(72)【発明者】
【氏名】植木 彩水
(72)【発明者】
【氏名】高田 大智
(72)【発明者】
【氏名】中村 聡
【テーマコード(参考)】
2G051
5F151
5F251
【Fターム(参考)】
2G051AA41
2G051AB20
2G051BA01
2G051BA11
2G051BA20
2G051BB02
2G051BB03
2G051BB07
2G051CA04
2G051CA06
2G051CB01
2G051CC07
5F151BA11
5F151BA14
5F151KA10
5F251BA11
5F251BA14
5F251KA10
(57)【要約】
【課題】本発明は、太陽電池上の絶縁フィルムの位置を特定できる太陽電池の検査装置を提供する。
【解決手段】太陽電池本体と絶縁フィルムを有する太陽電池に対して、太陽電池本体と絶縁フィルムの境界部分を含む被検査部を検査するものであって、絶縁フィルムは、光を太陽電池に照射したときに、太陽電池本体での反射光に対して反射光の振動方向が変化するものであり、特定方向に偏光した光を照射可能な光照射部と、光照射部から照射された光を太陽電池側に向かって反射し、太陽電池で反射した反射光を透過するミラー部と、反射光から特定方向に対する角度が5度以内のカット方向に偏光した反射成分をカットする撮像側偏光部と、撮像側偏光部を通過した反射光を受光し、太陽電池の被検査部を含むように撮像する撮像部を有する構成とする。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池本体と絶縁フィルムを有する太陽電池に対して、前記太陽電池本体と前記絶縁フィルムの境界部分を含む被検査部を検査する太陽電池の検査装置であって、
前記絶縁フィルムは、光を前記太陽電池に照射したときに、前記太陽電池本体での反射光に対して反射光の振動方向が変化するものであり、
特定方向に偏光した光を照射可能な光照射部と、
前記光照射部から照射された光を前記太陽電池側に向かって反射し、前記太陽電池で反射した反射光を透過するミラー部と、
前記反射光から前記特定方向に対する角度が5度以内の一方向に偏光した反射成分をカットする撮像側偏光部と、
前記撮像側偏光部を通過した前記反射光を受光し、前記太陽電池の被検査部を含むように撮像する撮像部と、を有する、太陽電池の検査装置。
【請求項2】
前記撮像側偏光部は、前記反射光の前記特定方向に偏光した反射成分をカットする、請求項1に記載の太陽電池の検査装置。
【請求項3】
前記撮像側偏光部は、前記反射光から正反射成分をカットする、請求項1に記載の太陽電池の検査装置。
【請求項4】
前記絶縁フィルムは、複屈折性を有する、請求項1に記載の太陽電池の検査装置。
【請求項5】
前記太陽電池本体と前記絶縁フィルムの境界部分において複数の被検査部を検査するものであり、
前記光照射部は、個別に点灯可能な複数の発光部を有し、
前記複数の発光部は、前記複数の被検査部のそれぞれの位置に対応して配されており、
検査対象の被検査部に合わせて対応する発光部を個別に発光させる、請求項1に記載の太陽電池の検査装置。
【請求項6】
前記光照射部は、発光部と、前記発光部と前記ミラー部との間に光の進行方向を一定方向に制限する光制御部とを有する、請求項1に記載の太陽電池の検査装置。
【請求項7】
前記光照射部は、前記光制御部と前記ミラー部との間に、前記光制御部で制限された光を前記特定方向に偏光する照明側偏光部を有する、請求項6に記載の太陽電池の検査装置。
【請求項8】
前記太陽電池本体は、前記絶縁フィルムによって、一部が被覆されており、
前記撮像部が撮像した画像データから前記太陽電池本体の前記絶縁フィルムによる被覆部分が実質的に前記絶縁フィルムのみで表される撮像画像を作成する画像処理部を備える、請求項1~7のいずれか1項に記載の太陽電池の検査装置。
【請求項9】
前記撮像画像は、絶縁フィルムが単一色で表される、請求項8に記載の太陽電池の検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池の検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、裏面側のみに電極部が形成された複数の太陽電池セルが電気的に接続されたバックコンタクト型の太陽電池モジュールが知られている(例えば、特許文献1)。
例えば、特許文献1の太陽電池モジュールは、太陽電池セルの端辺同士を重ね、太陽電池セルの電極端子間をインターコネクタで接続しており(いわゆる、シングリング接続)、有効受光面積を大きくでき、従来に比べて変換効率が高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2022/107542号
【特許文献2】特開2022-122512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1のように各太陽電池セルをシングリング接続する場合、隣接する太陽電池セル間の短絡やリーク電流の発生を防止する観点から、隣接する太陽電池セル間においてインターコネクタ以外の部分で直接接触させないことが好ましい。
【0005】
そこで、本発明者は、隣接する太陽電池セルの間と太陽電池セルとインターコネクタの間に透明の絶縁フィルムを介在させた太陽電池モジュールを試作した。
試作した太陽電池モジュールでは、隣接する太陽電池セルの間と太陽電池セルとインターコネクタの間に絶縁フィルムを形成するので、太陽電池セル同士が直接接触しない。そのため、太陽電池セル間の接触による短絡やリーク電流の発生を防止でき、従来に比べて安全性と信頼性が向上した。
【0006】
ところで、試作した太陽電池モジュールを工業的に大量生産するためには、機械によって自動で生産できることが好ましい。機械によって生産するためには、絶縁フィルムが正しい位置にあるかの確認が必要となる。
【0007】
そこで、本発明者は、試作した太陽電池モジュールの生産の自動化を達成するために、特許文献2のような同軸照明とカメラを使用した検査装置によって絶縁フィルムと太陽電池セルの境界部分を検査し、絶縁フィルムが正しい位置に設けられているかを判別できるか検討した。
【0008】
しかしながら、試作した太陽電池モジュールでは、透明の絶縁フィルムを使用しているため、同軸照明から光を当てたときに、絶縁フィルムの輝度値と太陽電池セルの輝度値との差が小さく、絶縁フィルムの縁がほとんど見えない。そのため、従来の検査装置では、絶縁フィルムが太陽電池セルに正しい位置に正確に位置しているかの判断が難しい問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、太陽電池上の絶縁フィルムの位置を特定できる太陽電池の検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した課題を解決するための本発明の一つの様相は、太陽電池本体と絶縁フィルムを有する太陽電池に対して、前記太陽電池本体と前記絶縁フィルムの境界部分を含む被検査部を検査する太陽電池の検査装置であって、前記絶縁フィルムは、光を前記太陽電池に照射したときに、前記太陽電池本体での反射光に対して反射光の振動方向が変化するものであり、特定方向に偏光した光を照射可能な光照射部と、前記光照射部から照射された光を前記太陽電池側に向かって反射し、前記太陽電池で反射した反射光を透過するミラー部と、前記反射光から前記特定方向に対する角度が5度以内の一方向に偏光した反射成分をカットする撮像側偏光部と、前記撮像側偏光部を通過した前記反射光を受光し、前記太陽電池の被検査部を含むように撮像する撮像部と、を有する、太陽電池の検査装置である。
【0011】
本様相によれば、太陽電池本体での反射光は、絶縁フィルムに比べて正反射成分が多くなり、振動方向を維持したままミラー部側に反射するが、絶縁フィルムの反射光は、正反射成分と拡散反射成分があり、拡散反射成分では振動方向が変化する。
そのため、撮像側偏光部で光照射部からの照射光の偏光方向(特定方向)に近い方向の反射成分をカットすること、すなわち、太陽電池での反射光の正反射成分に近い成分をカットすることで、太陽電池本体での反射光は、撮像側偏光部を通過するときに、大部分がカットされて輝度が低下し、絶縁フィルムでの反射光は、撮像側偏光部を通過するときに、太陽電池本体での反射光に比べてカットされにくく、相対的に太陽電池本体の輝度値に対して大きくなる。
その結果、太陽電池本体に対応する部分と絶縁フィルムに対応する部分との間で輝度値の差を大きくすることができ、太陽電池本体上での絶縁フィルムの位置及び輪郭を特定できる。
【0012】
好ましい様相は、前記撮像側偏光部は、前記反射光の前記特定方向に偏光した反射成分をカットする。
【0013】
好ましい様相は、前記撮像側偏光部は、前記反射光から正反射成分をカットする。
【0014】
これらの様相によれば、太陽電池本体に対応する部分と絶縁フィルムに対応する部分との間の輝度値の差をより大きくできる。
【0015】
好ましい様相は、前記絶縁フィルムは、複屈折性を有する。
【0016】
本様相によれば、絶縁フィルムが複屈折性を有するため、絶縁フィルムを通過し絶縁フィルムと太陽電池本体との界面で反射してミラー部側に向かう反射光において振動方向が変化する。そのため、絶縁フィルムと太陽電池本体との界面での反射光は、大部分が撮像側偏光部を通過でき、絶縁フィルムに対応する部分の輝度値を相対的に太陽電池本体に対応する部分の輝度値に対してより大きくできる。
【0017】
好ましい様相は、前記太陽電池本体と前記絶縁フィルムの境界部分において複数の被検査部を検査するものであり、前記光照射部は、個別に点灯可能な複数の発光部を有し、前記複数の発光部は、前記複数の被検査部のそれぞれの位置に対応して配されており、検査対象の被検査部に合わせて対応する発光部を個別に発光させる。
【0018】
本様相によれば、対応する発光部のみを点灯させて撮像することで、被検査部に対する入射光の垂直成分を大きくできるので、太陽電池本体での拡散反射成分の割合を小さくでき、絶縁フィルムに対応する部分の輝度値に対する太陽電池本体に対応する部分の輝度値を相対的に小さくできる。
【0019】
好ましい様相は、前記光照射部は、発光部と、前記発光部と前記ミラー部との間に光の進行方向を一定方向に制限する光制御部とを有する。
【0020】
本様相によれば、被検査部に対する入射光の垂直成分を大きくできるので、太陽電池本体での拡散反射成分を小さくでき、絶縁フィルムに対応する部分の輝度値に対する太陽電池本体に対応する部分の輝度値を小さくできる。
【0021】
好ましい様相は、前記光照射部は、前記光制御部と前記ミラー部との間に、前記光制御部で制限された光を前記特定方向に偏光する照明側偏光部を有する。
【0022】
本様相によれば、発光部から照射される光の振動方向を特定方向になるように偏光できる。
【0023】
好ましい様相は、前記太陽電池本体は、前記絶縁フィルムによって、一部が被覆されており、前記撮像部が撮像した画像データから前記太陽電池本体の前記絶縁フィルムによる被覆部分が実質的に前記絶縁フィルムのみで表される撮像画像を作成する画像処理部を備える。
【0024】
ここでいう「実質的に絶縁フィルムのみで表される撮像画像」とは、撮像画像内において絶縁フィルムを透過して表される太陽電池本体の面積が撮像画像内の絶縁フィルムの面積の3%以下であることをいう。
【0025】
本様相によれば、絶縁フィルムのみ表される撮像画像が得られるので、絶縁フィルムの位置を特定することができる。
【0026】
より好ましい様相は、前記撮像画像は、絶縁フィルムが単一色で表される。
【0027】
本様相によれば、絶縁フィルムの表面形状における皺や折れの影響を受けづらく、安定して検査できる。
【発明の効果】
【0028】
本発明の太陽電池の検査装置によれば、太陽電池上の絶縁フィルムの位置を特定できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の第1実施形態の太陽電池の検査装置を概念的に示した側面図である。
【
図2】
図1の検査装置の説明図であり、(a)は検査装置のブロック図であり、(b)は同軸落射側光源部の斜視図である。
【
図3】
図1の太陽電池を用いて形成される太陽電池モジュールの説明図であり、(a)は太陽電池モジュールの断面図であり、(b)は太陽電池モジュールの要部の裏面図である。なお、理解を容易にするために(a)では受光側を下にするとともに封止材のハッチングを省略しており、(b)では封止部材及び封止材を省略している。
【
図6】
図1の検査装置を用いた検査方法における側射検査工程の光路の説明図であり、太い実線は側射側光源部からの入射光を示し、太い点線は太陽電池での反射光を示す。
【
図7】
図1の検査装置を用いた検査方法における同軸落射検査工程の光路の説明図であり、太い実線は同軸落射側光源部からの入射光を示し、太い点線は太陽電池での反射光を示す。
【
図8】
図8の同軸落射検査工程における同軸落射側光源部と太陽電池の位置関係を示す斜視図である。
【
図9】
図1の撮像部で撮像された画像であり、(a)は側射検査工程における絶縁フィルムの縁付近の画像であり、(b)は同軸落射検査工程における絶縁フィルムの縁付近の画像である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0031】
本発明の第1実施形態の太陽電池の検査装置1(以下、単に検査装置1ともいう)は、
図3に示される太陽電池モジュール200の仕掛品である太陽電池100を検査する装置であり、太陽電池100の絶縁フィルム102a,102bの位置及び輪郭を検査するものである。
検査装置1は、
図1,
図2(a)のように、同軸落射照明部2と、側射照明部3と、撮像側偏光部5と、撮像部6と、ステージ部7と、制御部8を備えている。
【0032】
(同軸落射照明部2)
同軸落射照明部2は、
図1のように、筐体部10と、光照射部14と、ミラー部15を備えている。
筐体部10は、光照射部14及びミラー部15を収容する筐体であり、上側開口部20と、下側開口部21を備えている。
上側開口部20は、撮像部6と撮像側偏光部5を挟んで上下方向に対向し、撮像部6の撮像軸P1上に位置する開口である。
下側開口部21は、ステージ部7と上下方向に対向し、撮像部6の撮像軸P1上に位置する開口である。すなわち、下側開口部21は、上下方向において上側開口部20とミラー部15を挟んで対向している。
【0033】
光照射部14は、特定方向に偏光した光を照射可能な部位であり、
図1のように、同軸落射側光源部11と、光制御部12と、照明側偏光部13を備えている。
同軸落射側光源部11は、
図2(b)のように、発光面22と裏面23を両主面とし、面状に広がりを持つ板状光源であり、発光面22側から面状に広がりを持った面状光を照射可能な面状光源である。
同軸落射側光源部11は、例えば、LEDが面状に散りばめられたLEDパネルや有機ELパネルが使用できる。
同軸落射側光源部11は、
図2(b)のように、発光面22に個別に点灯可能な複数の発光部30a~30hを備えている。
発光部30a~30hは、上下方向(縦方向Y)に延びた短冊状の発光領域であり、横方向Xに並設されている。
【0034】
光制御部12は、互いに平行なスリットを有し、同軸落射側光源部11の各発光部30a~30hから照射された光をスリットに通過させることで、光の進行方向を一定方向に制限する部位である。
すなわち、光制御部12は、光の拡散を抑制し、光を平行光に近づける部位であり、具体的には、指向性拡散フィルムたるライトコントロールフィルム(LCF)である。
光制御部12は、
図1のように、同軸落射側光源部11の発光面22と間隔を空けて対向している。
【0035】
照明側偏光部13は、光制御部12によって制限された光を特定方向に偏光し、振動方向を一方向に制限する偏光板である。
照明側偏光部13は、特定方向に偏光軸を有している。
照明側偏光部13は、
図1のように、同軸落射側光源部11とは反対側にあり、光制御部12と間隔を空けて対向している。
【0036】
ミラー部15は、同軸落射側光源部11側から照射された光を傾斜面25で太陽電池100側に向かって反射し、太陽電池100で反射した反射光を傾斜面25から撮像部6側に透過する部位である。
本実施形態のミラー部15は、入射する光の一部を反射し、一部を透過するハーフミラーであり、入射光と透過光の強さが同程度である。
ミラー部15は、
図1のように、撮像部6の撮像軸P1上に設けられ、撮像軸P1に対して傾斜した傾斜面25を有している。
【0037】
(側射照明部3)
側射照明部3は、
図1のように、第1側射側光源部40と、第2側射側光源部41を有し、各側射側光源部40,41から撮像軸P1に対して傾斜した方向から光を当てる部位である。
側射側光源部40,41は、側面視したときに撮像軸P1に対して左右対称位置に設けられており、同一位置に向かった光を照射可能となっている。
【0038】
(撮像側偏光部5)
撮像側偏光部5は、太陽電池100での反射光の特定の反射成分をカットする部位である。
本実施形態の撮像側偏光部5は、照明側偏光部13によって偏光された光の振動方向と同様の振動方向の光を遮断する偏光フィルターである。
すなわち、本実施形態の撮像側偏光部5は、照明側偏光部13の偏光軸と90度異なる偏光軸を有する偏光フィルターであり、照明側偏光部13を通過し偏光された光の振動方向と同方向の振動方向をもつ成分をカットし、それ以外の光を通過させることが可能となっている。
【0039】
(撮像部6)
撮像部6は、撮像側偏光部5を通過した反射光を受光し、太陽電池100の被検査部を撮像するカメラ部である。
【0040】
(ステージ部7)
ステージ部7は、被検査物たる太陽電池100を載置する載置台であり、太陽電池100が撮像軸P1を通過するように所定の方向に搬送することが可能となっている。
ステージ部7には、
図8から読み取れるように、同軸落射照明部2を点灯したときに、各発光部30a~30hから照射された光に対応して被照射領域50a~50hがある。
被照射領域50a~50hは、同軸落射照明部2を点灯したときに、ミラー部15側から光が入射する領域である。
【0041】
(制御部8)
制御部8は、ハードウェア構成として、各装置を制御する制御装置とデータに対する演算を行う演算装置で構成される中央処理装置と、データを記憶する記憶装置、外部からデータを入力する入力装置、外部にデータを出力する出力装置を備えたコンピュータである。
制御部8は、
図2(a)のように、同軸落射側光源部11、側射側光源部40,41、撮像部6、及びステージ部7のそれぞれと接続されている。
制御部8は、同軸落射側光源部11の各発光部30a~30hや側射側光源部40,41を個別にそれぞれ点灯及び消灯制御可能となっている。
制御部8は、図示しない画像処理部を備えており、撮像部6で撮像された画像データを取得し、画像処理して撮像画像を作成することが可能となっている。
制御部8は、太陽電池100の被検査部に合わせてステージ部7の移動速度や移動位置等を制御可能となっている。
【0042】
(太陽電池100)
太陽電池100は、検査装置1で検査される検査対象物である。
太陽電池100は、
図4,
図5のように、裏面106側に端子部110a~110d,111を備え、受光面105側に端子部を備えないバックコンタクト型の太陽電池セルである。
太陽電池100は、
図4,
図5のように、太陽電池本体101と、絶縁フィルム102a,102bを備えている。
【0043】
太陽電池本体101は、pn接合部を有した光電変換部を備え、光エネルギーを電気エネルギーに変換する部位である。
太陽電池本体101は、
図4のように、複数の第1端子部110a~110dと、第2端子部111を備えている。
太陽電池本体101は、略長方形状の板状パネルであり、縦方向Yに延びた縦辺120,121と、横方向Xに延びた横辺122,123と、縦辺121のそれぞれの端部から横辺122,123に向かって傾斜した傾斜辺124,125を有している。
太陽電池本体101は、裏面106側の面の大部分が正極及び負極を構成する金属で構成され金属面となっており、光を照射したときに、絶縁フィルム102に比べて、正反射しやすい。
【0044】
第1端子部110a~110dは、光電変換部の正極又は負極の一部をなす端子であり、配線部材201(
図3参照)と接続可能な四角形状の端子パッドである。
【0045】
第2端子部111は、第1端子部110a~110dと対をなし、光電変換部の負極又は正極の一部をなす端子であり、配線部材201と接続可能な長方形状の端子パッドである。
すなわち、第2端子部111は、第1端子部110a~110dが光電変換部の正極の一部をなす場合は、光電変換部の負極の一部をなす負極側端子であり、第1端子部110a~110dが光電変換部の負極の一部をなす場合は、光電変換部の正極の一部となる正極側端子である。
【0046】
絶縁フィルム102a,102bは、絶縁性と透明性を有した透明絶縁フィルムである。
絶縁フィルム102a,102bは、片面に粘着面をもった絶縁テープであり、太陽電池本体101に対して接着可能となっている。
本実施形態の絶縁フィルム102a,102bは、複屈折性を有しており、偏光された光が通過したときに、振動方向が変化するものである。
絶縁フィルム102a,102bの基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルフィルム、ポリエチレン等のポリオレフィンフィルムなどの樹脂フィルムが使用できる。
絶縁フィルム102a,102bの基材表面の粘着部分としては、例えば、シリコーン系粘着剤等が使用できる。
【0047】
ここで、太陽電池100の各部材の位置関係について説明する。
【0048】
太陽電池100は、
図4のように、太陽電池本体101の裏面106側に絶縁フィルム102a,102bが覆われている。
第1端子部110a~110dは、横方向Xにおいて中央よりも縦辺120側に設けられており、縦辺120に沿って間隔を空けて配されている。
本実施形態の第1端子部110a~110dは、縦方向Yに等間隔に一列に並んでいる。
第1端子部110a~110dは、
図4の拡大図のように、それぞれ一部が絶縁フィルム102aによって覆われており、残部が第1絶縁フィルム102aから露出している。
【0049】
第2端子部111は、横方向Xにおいて中央よりも縦辺121側に設けられており、縦辺121に沿って縦方向Yに帯状に延びている。
第2端子部111は、一部が第2絶縁フィルム102bによって覆われており、残部が第2絶縁フィルム102bから露出している。
【0050】
(太陽電池モジュール200)
太陽電池モジュール200は、
図3のように、複数の太陽電池100がシングリング接続されたものであり、複数の太陽電池100と、配線部材201と、封止部材202,203と、封止材204,205を備えている。
太陽電池モジュール200は、各太陽電池100の裏面106に設けられた端子部110a~110d,111が配線部材201によってそれぞれ接続されている。
具体的には、太陽電池100bは、
図3(b)のように、第1端子部110a~110dが配線部材201を介して隣接する太陽電池100cの第2端子部111と接続されており、第2端子部111が配線部材201を介して太陽電池100cとは反対側で隣接する太陽電池100aの第1端子部110a~110dと接続されている。
隣接する太陽電池100a,100bの間には、下側の太陽電池100aの第1絶縁フィルム102aが介在しており、配線部材201と太陽電池100bの間には、太陽電池100bの第2絶縁フィルム102bが介在している。
すなわち、太陽電池モジュール200では、隣接する太陽電池100,100が直接接触せず、接触による短絡やリーク電流の発生を防止している。
【0051】
続いて、本実施形態の検査装置1を用いた検査方法について説明する。
【0052】
検査装置1の検査方法は、太陽電池本体101と絶縁フィルム102a,102bの境界部分を被検査部とするものであり、側射検査工程と、同軸落射検査工程で構成されている。
検査装置1の検査方法は、側射検査工程と同軸落射検査工程のどちらの工程を先に行ってもよい。
【0053】
(側射検査工程)
側射検査工程は、側射照明部3を用いて被検査部を検査する工程である。
側射検査工程では、
図6のように、側射照明部3の各側射側光源部40,41を点灯させ、各側射側光源部40,41から太陽電池100に対して光を照射して太陽電池100を照らし、太陽電池100での反射光をミラー部15及び撮像側偏光部5を通過させて撮像部6で撮像する。そうすると、制御部8の画像処理部が撮像部6で撮像された画像データを画像処理し、
図9(a)に示されるように、絶縁フィルム102a,102bを透過して太陽電池本体101全体が見える撮像画像を生成する。
【0054】
このとき、各側射側光源部40,41での照射光は、偏光されておらず、複数の振動方向を有しており、撮像側偏光部5によってほとんどカットされない。そのため、太陽電池100の被検査部全体が反映された撮像画像が生成される。
また、
図6に示される各側射側光源部40,41の照射光の光路L1,L2は、側面視したときに、太陽電池100の裏面106に対して傾斜角度θ1,θ2で傾斜し、撮像軸P1に対しても傾斜角度(90-θ1),(90-θ2)で傾斜している。
傾斜角度θ1,θ2は、0度超過90度未満であり、10度以上60度以下であることが好ましい。
【0055】
(同軸落射工程)
同軸落射工程は、同軸落射照明部2を用いて被検査部を検査する工程である。
同軸落射工程では、
図7,
図8のように、同軸落射照明部2の同軸落射側光源部11の被検査部と対応する発光部30bを点灯させ、同軸落射側光源部11からミラー部15側に向かって照射する。
例えば、
図8のように被検査部が太陽電池本体101の第1端子部110aと絶縁フィルム102aの境界部分の場合、被検査部が属する被照射領域50bに対応する発光部30bのみを点灯し、残りの発光部30a,30c~30hを消灯する。
【0056】
同軸落射側光源部11の発光部30bからミラー部15側に向かって照射された光は、
図7のように、光制御部12,照明側偏光部13を通過してミラー部15に至り、ミラー部15で太陽電池100側に向かって反射される。
具体的には、同軸落射側光源部11の発光部30bから照射される光は、
図7のように、光制御部12を通過することで光の進行方向が一定方向に制限されて照明側偏光部13を向いた平行な光となり、照明側偏光部13を通過することで光の振動方向が特定方向に制限されてミラー部15に至り、ミラー部15で太陽電池100側に向かって反射されて太陽電池100の被検査部に至る。
【0057】
ここで、ミラー部15で太陽電池100に向かって反射された光は、被検査部である太陽電池本体101と絶縁フィルム102の境界部分に照射される。
太陽電池100に入射した光は、一部が太陽電池本体101の表面と絶縁フィルム102の表面で反射し、他の一部が絶縁フィルム102を通過し太陽電池本体101と絶縁フィルム102の界面で反射する。
太陽電池100に入射した光の一部は、太陽電池本体101の表面において大部分が正反射して正反射成分の反射光となり、振動方向が一定のまま反射する。
太陽電池100に入射した光の一部は、絶縁フィルム102の表面において一部が正反射し、残部の一部が拡散反射して正反射成分と拡散反射成分をもった反射光となる。
太陽電池100に入射した光の一部は、複屈折性を有する絶縁フィルム102を通過し、太陽電池本体101と絶縁フィルム102の界面で反射することにより、振動方向が変化した反射光として絶縁フィルム102から出射する。
【0058】
そして、太陽電池100で反射された反射光は、ミラー部15を通過して撮像側偏光部5に至り、撮像側偏光部5において正反射成分、すなわち、照明側偏光部13で制限された振動方向と同じ振動方向をもつ光成分がカットされて撮像部6に至り、撮像部6で受光して撮像される。
そうすると、撮像部6で撮像される画像データが制御部8の画像処理部によって、画像処理され、
図9(b)のように太陽電池本体101の絶縁フィルム102による被覆部分が単一色になり、実質的に絶縁フィルム102のみで表される撮像画像が生成される。
具体的には、同軸落射工程で撮像される撮像画像は、絶縁フィルム102に対応する部分全体の光量が大きくなって白くなり、絶縁フィルム102の下地部分が見えなくなる。そのため、絶縁フィルム102と太陽電池本体101の境界部分が明確となり、絶縁フィルム102の皺や折れにかかわらず、絶縁フィルム102の位置や輪郭が特定される。
【0059】
本実施形態の検査装置1によれば、太陽電池本体101での反射光は、大部分が正反射成分となり、大部分が振動方向を維持したままミラー部15側に反射するが、絶縁フィルム102の反射光は、正反射成分と拡散反射成分があり、拡散反射成分では振動方向が変化する。
そのため、撮像側偏光部5で太陽電池100での反射光の正反射成分をカットすることで、太陽電池本体101での反射光は、撮像側偏光部5を通過するときに、大部分がカットされて輝度が低下し、絶縁フィルム102での反射光は、撮像側偏光部5を通過するときに、太陽電池本体101での反射光に比べてカットされにくく、相対的に太陽電池本体101の輝度値に対して大きくなる。すなわち、太陽電池本体101に対応する部分と絶縁フィルム102に対応する部分との間で輝度値の差を大きくすることができ、露光時間を調整することで絶縁フィルム102を単一色にすることができる。その結果、太陽電池本体101上での絶縁フィルム102の位置及び輪郭を特定できる。
【0060】
本実施形態の検査装置1によれば、絶縁フィルム102が複屈折性を有するため、絶縁フィルム102を透過し、絶縁フィルム102と太陽電池本体101の界面での反射光は、絶縁フィルム102の通過に伴って振動方向がずれる。そのため、絶縁フィルム102と太陽電池本体101の界面での反射光はそのまま撮像側偏光部5を通過し、太陽電池本体101に対応する部分の輝度値と絶縁フィルム102に対応する部分での輝度値の差を大きくできる。
【0061】
本実施形態の検査装置1によれば、被検査部に対応する発光部30a~30hを個別に点灯させて撮像するので、太陽電池100の被検査部に対する光の垂直成分を大きくでき、太陽電池本体101での拡散反射成分(乱反射成分)を小さくできる。その結果、絶縁フィルム102に対応する部分に対する太陽電池本体101に対応する部分の輝度値を相対的に小さくできる。
【0062】
本実施形態の検査装置1によれば、各発光部30a~30hとミラー部15の間に光の進行方向を一定方向に制限する光制御部12が設けられているので、被検査部に対して太陽電池100の裏面106に対する直交方向に入射できる。そのため、太陽電池本体101での正反射成分を大きくでき、太陽電池本体101での拡散反射成分を小さくできる。その結果、絶縁フィルム102に対応する部分に対する太陽電池本体101に対応する部分の輝度値を小さくできる。
【0063】
本実施形態の検査装置1によれば、光制御部12とミラー部15との間に光制御部12で制限された光を特定方向に偏光する照明側偏光部13が設けられているので、各発光部30a~30hから照射される光の振動方向を特定方向になるように偏光できる。
【0064】
本実施形態の検査装置1によれば、撮像部6によって、太陽電池本体101の絶縁フィルム102による被覆部分が実質的に絶縁フィルム102のみで表される撮像画像を撮像するので、絶縁フィルム102の位置や輪郭を特定することができる。
【0065】
本実施形態の検査装置1によれば、撮像画像は、絶縁フィルム102が単一色で表されるので、絶縁フィルム102の皺や折れ等の表面形状の影響が受けにくく、安定して検査できる。
【0066】
上記した実施形態では、撮像側偏光部5は、偏光軸が照明側偏光部13の偏光軸に対して90度ずれていたが、本発明はこれに限定されるものではない。撮像側偏光部5は、太陽電池本体101での反射光を絶縁フィルム102での反射光に対して相対的に多くカットできるものであれば、偏光軸の照明側偏光部13の偏光軸に対する角度は、90度に限定されない。偏光軸の照明側偏光部13の偏光軸に対する角度は、85度以上95度以下であることが好ましい。
【0067】
上記した実施形態では、側射検査工程や同軸落射工程において一つの被検査部に対して一つの画像を撮像して検査したが、本発明はこれに限定されるものではない。側射検査工程や同軸落射工程において複数の被検査部に対して一つの画像を撮像して検査してもよいし、一つの被検査部に対して複数の画像を撮像して検査してもよい。
【0068】
上記した実施形態では、側射照明部3は、2つの側射側光源部40,41で構成されていたが、本発明はこれに限定されるものではない。側射照明部3は、1つの側射側光源部で構成されていてもよいし、3つ以上の側射側光源部で構成されていてもよい。
【0069】
上記した実施形態では、被検査部に対応する発光部30bのみ点灯したが、本発明はこれに限定されるものではない。他の発光部30a,30c~30hを適宜点灯してもよい。
【0070】
上記した実施形態では、光制御部12は、同軸落射側光源部11の発光面22と間隔を空けて対向していたが、本発明はこれに限定されるものではない。光制御部12は、同軸落射側光源部11の発光面22と接していてもよい。
【0071】
上記した実施形態では、照明側偏光部13は、光制御部12と間隔を空けて対向していたが、本発明はこれに限定されるものではない。照明側偏光部13は、光制御部12と接していてもよい。
【0072】
上記した実施形態では、同軸落射側光源部11は、発光面22に8つの発光部30a~30hを備えていたが、本発明はこれに限定されるものではない。発光面22に1つ以上7つ以下の発光部30を備えていてもよいし、9つ以上の発光部30を備えていてもよい。
【0073】
上記した実施形態は、本発明の技術的範囲に含まれる限り、各実施形態間で各構成部材を自由に置換や付加できる。
【符号の説明】
【0074】
1 検査装置
2 同軸落射照明部
5 撮像側偏光部
6 撮像部
12 光制御部
13 照明側偏光部
14 光照射部
15 ミラー部
30a~30h 発光部
100,100a~100c 太陽電池
101 太陽電池本体
102 絶縁フィルム
102a 第1絶縁フィルム
102b 第2絶縁フィルム