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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111637
(43)【公開日】2024-08-19
(54)【発明の名称】見当ズレの分析方法および分析装置
(51)【国際特許分類】
   B41F 33/14 20060101AFI20240809BHJP
   B41M 1/28 20060101ALI20240809BHJP
【FI】
B41F33/14
B41M1/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023016257
(22)【出願日】2023-02-06
(71)【出願人】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】末森 亮介
(72)【発明者】
【氏名】白坂 竜矢
(72)【発明者】
【氏名】尾関 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】石井 佑直
【テーマコード(参考)】
2C250
2H113
【Fターム(参考)】
2C250EB22
2C250EB25
2C250EB26
2C250EB28
2C250EB33
2H113AA04
2H113AA05
2H113BB10
2H113BB24
2H113CA25
(57)【要約】
【解決手段】金属缶に印刷された図柄の見当ズレの分析方法であって、金属缶に予め定められた見当マークを含む図柄を印刷する段階と、前記金属缶に前記図柄が印刷された後であって前記図柄の焼き付け前のウエット缶を印刷ラインから取り出す段階と、前記ウエット缶を見当ズレの分析装置に投入する段階と、前記分析装置が、前記図柄を撮像した画像データを取得する段階と、前記分析装置が、前記画像データに基づいて、前記ウエット缶に印刷された前記図柄のズレ量を算出する段階と、を備える分析方法を提供する。
【選択図】図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属缶に印刷された図柄の見当ズレの分析方法であって、
金属缶に予め定められた見当マークを含む図柄を印刷する段階と、
前記金属缶に前記図柄が印刷された後であって前記図柄の焼き付け前のウエット缶を印刷ラインから取り出す段階と、
前記ウエット缶を見当ズレの分析装置に投入する段階と、
前記分析装置が、前記図柄を撮像した画像データを取得する段階と、
前記分析装置が、前記画像データに基づいて、前記ウエット缶に印刷された前記図柄のズレ量を算出する段階と、
を備える分析方法。
【請求項2】
前記画像データを取得する段階は、正反射照明を用いて、前記金属缶で反射した正反射光を撮像した前記図柄の前記画像データを取得する段階を有する
請求項1に記載の分析方法。
【請求項3】
前記画像データを取得する段階は、
前記金属缶で反射した拡散反射照明からの拡散反射光を用いて撮像した前記図柄の前記画像データを取得する段階と、
前記正反射照明および前記拡散反射照明の2つの照明を用いて、前記金属缶で反射した前記正反射光および前記拡散反射光の2つの光を撮像した前記図柄の前記画像データを取得する段階と、
を有する請求項2に記載の分析方法。
【請求項4】
前記正反射照明、前記拡散反射照明または前記2つの照明のいずれか1つを用いた第1画像取得方法により第1画像データを取得する段階と、
前記正反射照明、前記拡散反射照明または前記2つの照明のうち前記第1画像取得方法と異なる照明を用いた第2画像取得方法により第2画像データを取得する段階と、
前記第1画像データと前記第2画像データとの結合データを取得する段階と、
を備える請求項3に記載の分析方法。
【請求項5】
前記拡散反射照明を用いて前記図柄を撮像する段階および前記2つの照明を用いて前記図柄を撮像する段階は、前記正反射照明を用いて前記図柄を撮像する段階の後であって、前記正反射照明を用いて取得した前記画像データに基づいて前記図柄のズレ量を算出する段階と並行して実行される
請求項3に記載の分析方法。
【請求項6】
1つのプレートシリンダにA版、B版の2つの印刷版が取り付けられた印刷装置で印刷する段階と、
前記図柄を印刷するための印刷版のA版で印刷した前記図柄を撮像する段階と、
前記図柄を印刷するための印刷版のB版で印刷した前記図柄を撮像する段階と、
前記A版の前記画像データと前記B版の前記画像データとを並べて表示する段階と
を備える請求項1から5のいずれか一項に記載の分析方法。
【請求項7】
前記図柄の予め定められた第1領域を含む前記画像データと、前記図柄のうち前記第1領域と異なる第2領域を含む前記画像データとを並べて表示する段階を備える
請求項1から5のいずれか一項に記載の分析方法。
【請求項8】
1つのプレートシリンダにA版、B版の2つの印刷版が取り付けられた印刷装置で印刷する段階と、
前記図柄を印刷するための印刷版のA版およびB版のいずれかで印刷された図柄かを判別するために設けられた前記図柄の判別領域の前記画像データを取得する段階と、
前記判別領域に印刷された目印の相異点に応じて、前記印刷版のA版およびB版のいずれかを識別する段階と、
を備える請求項1から5のいずれか一項に記載の分析方法。
【請求項9】
前記画像データから円形を含む前記見当マークの画像を取得する段階と、
取得した前記見当マークの前記画像の二値化処理、穴埋め処理およびオープニング処理によって、前記見当マークの円形部分を検出することで前記見当マークを検出する段階と、
を備える請求項1から5のいずれか一項に記載の分析方法。
【請求項10】
前記画像データから前記見当マークを検出する段階と、
検出した前記見当マークが予め定められた条件を満たさない場合に、前記図柄の見当ズレを修正するための修正画面を表示する段階と、
を備える請求項1から5のいずれか一項に記載の分析方法。
【請求項11】
前記図柄のズレ量を算出する段階は、前記ウエット缶のトリム端からの前記見当マークの距離を測定する段階を含む
請求項1から5のいずれか一項に記載の分析方法。
【請求項12】
予め定められた見当マークを含む図柄が印刷された金属缶の見当ズレを分析するための分析装置であって、
前記金属缶の内側に挿入され、前記金属缶を自転させるマンドレルと、
前記金属缶の自転中に、前記金属缶に印刷された前記図柄を撮像するための撮像部と、
前記図柄を撮像した画像データに基づいて、印刷された前記図柄のズレ量を算出するための算出部と、
を備える分析装置。
【請求項13】
前記金属缶は、前記図柄の焼き付け前であるウエット缶である
請求項12に記載の分析装置。
【請求項14】
前記金属缶に前記図柄を印刷するための印刷ラインと連結されていないオフラインの装置である
請求項12に記載の分析装置。
【請求項15】
前記金属缶に照明光を照射するための照射部を備え、
前記照射部は、前記金属缶に前記照明光を照射するための照射位置と、前記金属缶の投入時に退避するための退避位置との間で移動可能である
請求項12から14のいずれか一項に記載の分析装置。
【請求項16】
前記マンドレルは前記金属缶の内径に対して予め定められたクリアランスを有し、
前記金属缶への前記マンドレルの挿入時に前記金属缶を吸引するための吸引孔を備える
請求項12から14のいずれか一項に記載の分析装置。
【請求項17】
前記マンドレルは、前記金属缶の内側に挿入するための先端部であって、水平方向よりも下向きに延伸して設けられた先端部を有する
請求項16に記載の分析装置。
【請求項18】
前記マンドレルは、前記金属缶を取り外すための空気孔を有する
請求項17に記載の分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、見当ズレの分析方法および分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、「カラー印刷の色ずれを目視で簡単に判断できるようにする」ために、「互いに中心が一致した相似形の基準色のマークと測定色のマークとを有するカラー印刷用見当マークを用紙に印刷」することが知られている(例えば、特許文献1参照)。
[先行技術文献]
[特許文献]
特許文献1 特開2007-106042号公報
【0003】
金属缶に印刷された図柄の見当ズレをより効率的に分析することが好ましい。
【発明の概要】
【0004】
本発明の第1の態様においては、金属缶に印刷された図柄の見当ズレの分析方法であって、金属缶に予め定められた見当マークを含む図柄を印刷する段階と、前記金属缶に前記図柄が印刷された後であって前記図柄の焼き付け前のウエット缶を印刷ラインから取り出す段階と、前記ウエット缶を見当ズレの分析装置に投入する段階と、前記分析装置が、前記図柄を撮像した画像データを取得する段階と、前記分析装置が、前記画像データに基づいて、前記ウエット缶に印刷された前記図柄のズレ量を算出する段階と、を備える分析方法を提供する。
【0005】
上記分析方法において、前記画像データを取得する段階は、正反射照明を用いて、前記金属缶で反射した正反射光を撮像した前記図柄の前記画像データを取得する段階を有してよい。
【0006】
上記いずれかの分析方法において、前記画像データを取得する段階は、前記金属缶で反射した拡散反射照明からの拡散反射光を用いて撮像した前記図柄の前記画像データを取得する段階を有してよい。前記画像データを取得する段階は、前記正反射照明および前記拡散反射照明の2つの照明を用いて、前記金属缶で反射した前記正反射光および前記拡散反射光の2つの光を撮像した前記図柄の前記画像データを取得する段階を有してよい。
【0007】
上記いずれかの分析方法において、前記正反射照明、前記拡散反射照明または前記2つの照明のいずれか1つを用いた第1画像取得方法により第1画像データを取得する段階を備えてよい。前記正反射照明、前記拡散反射照明または前記2つの照明のうち前記第1画像取得方法と異なる照明を用いた第2画像取得方法により第2画像データを取得する段階を備えてよい。前記第1画像データと前記第2画像データとの結合データを取得する段階を備えてよい。
【0008】
上記いずれかの分析方法において、前記拡散反射照明を用いて前記図柄を撮像する段階および前記2つの照明を用いて前記図柄を撮像する段階は、前記正反射照明を用いて前記図柄を撮像する段階の後であって、前記正反射照明を用いて取得した前記画像データに基づいて前記図柄のズレ量を算出する段階と並行して実行されてよい。
【0009】
上記いずれかの分析方法において、1つのプレートシリンダにA版、B版の2つの印刷版が取り付けられた印刷装置で印刷する段階と、前記図柄を印刷するための印刷版のA版で印刷した前記図柄を撮像する段階と、前記図柄を印刷するための印刷版のB版で印刷した前記図柄を撮像する段階と、前記A版の前記画像データと前記B版の前記画像データとを並べて表示する段階とを備えてよい。
【0010】
上記いずれかの分析方法において、前記図柄の予め定められた第1領域を含む前記画像データと、前記図柄のうち前記第1領域と異なる第2領域を含む前記画像データとを並べて表示する段階を備えてよい。
【0011】
上記いずれかの分析方法において、1つのプレートシリンダにA版、B版の2つの印刷版が取り付けられた印刷装置で印刷する段階と、前記図柄を印刷するための印刷版のA版およびB版のいずれかで印刷された図柄かを判別するために設けられた前記図柄の判別領域の前記画像データを取得する段階と、前記判別領域に印刷された目印の相異点に応じて、前記印刷版のA版およびB版のいずれかを識別する段階と、を備えてよい。
【0012】
上記いずれかの分析方法において、前記画像データから円形を含む前記見当マークの画像を取得する段階を備えてよい。取得した前記見当マークの前記画像の二値化処理、穴埋め処理およびオープニング処理によって、前記見当マークの円形部分を検出することで前記見当マークを検出する段階を備えてよい。
【0013】
上記いずれかの分析方法において、前記画像データから前記見当マークを検出する段階を備えてよい。検出した前記見当マークが予め定められた条件を満たさない場合に、前記図柄の見当ズレを修正するための修正画面を表示する段階を備えてよい。
【0014】
上記いずれかの分析方法において、前記図柄のズレ量を算出する段階は、前記ウエット缶のトリム端からの前記見当マークの距離を測定する段階を含んでよい。
【0015】
本発明の第2の態様においては、予め定められた見当マークを含む図柄が印刷された金属缶の見当ズレを分析するための分析装置であって、前記金属缶の内側に挿入され、前記金属缶を自転させるマンドレルと、前記金属缶の自転中に、前記金属缶に印刷された前記図柄を撮像するための撮像部と、前記図柄を撮像した画像データに基づいて、印刷された前記図柄のズレ量を算出するための算出部と、を備える分析装置を提供する。
【0016】
上記いずれかの分析装置において、前記金属缶は、前記図柄の焼き付け前であるウエット缶であってよい。
【0017】
上記いずれかの分析装置は、前記金属缶に前記図柄を印刷するための印刷ラインと連結されていないオフラインの装置であってよい。
【0018】
上記いずれかの分析装置は、前記金属缶に照明光を照射するための照射部を備えてよい。前記照射部は、前記金属缶に前記照明光を照射するための照射位置と、前記金属缶の投入時に退避するための退避位置との間で移動可能であってよい。
【0019】
上記いずれかの分析装置において、前記マンドレルは前記金属缶の内径に対して予め定められたクリアランスを有してよい。前記いずれかの分析装置は、前記金属缶への前記マンドレルの挿入時に前記金属缶を吸引するための吸引孔を備えてよい。
【0020】
上記いずれかの分析装置において、前記マンドレルは、前記金属缶の内側に挿入するための先端部であって、水平方向よりも下向きに延伸して設けられた先端部を有してよい。
【0021】
上記いずれかの分析装置において、前記マンドレルは、前記金属缶を取り外すための空気孔を有してよい。
【0022】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1A】印刷システム150の概要を示すブロック図である。
図1B】分析装置100を用いた分析方法を説明するためのフローチャートの一例である。
図2A】分析装置100の構成の一例を示す。
図2B】取出し治具310の一例を示す。
図3A】判定領域320に印刷される第1見当マーク321の一例を示す。
図3B】判定領域320に印刷される第2見当マーク322の一例を示す。
図4】第2見当マーク322を撮像した画像の処理方法の一例を示す。
図5A】正反射照明21を用いた画像データの取得方法の一例を示す。
図5B】拡散反射照明22を用いた画像データの取得方法の一例を示す。
図5C】正反射照明21および拡散反射照明22を用いた画像データの取得方法の一例を示す。
図6A】金属缶300の見当ズレの分析方法の一例を示す。
図6B】金属缶300の見当ズレの分析方法の一例を示す。
図7】種類の異なる照明方法を用いて撮像した画像データの一例を示す。
図8】2種類の画像データを結合した結合データの取得方法の一例を示す。
図9】金属缶300を撮像した画像データの一例を示す。
図10A】複数の画像の比較画面を示す。
図10B】複数の画像の比較画面を示す。
図11】金属缶300に図柄を印刷するための印刷装置200の一例である。
図12】プレートシリンダ214の拡大図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0025】
図1Aは、印刷システム150の概要を示すブロック図である。印刷システム150は、印刷工程110と、乾燥工程120と、後処理工程130とを備える。本例の印刷システム150は、分析装置100と、印刷装置200と、印刷制御部140とを備える。
【0026】
印刷工程110において、印刷装置200は、金属缶300に予め定められた図柄を印刷する。金属缶300に印刷される図柄には、図柄の位置合わせをするための見当マークが含まれてよい。印刷工程110は、図柄が印刷された金属缶300に仕上げ用のニスを塗布する段階を含んでもよい。
【0027】
乾燥工程120において、図柄が印刷されたウエット缶を乾燥して、図柄を金属缶300に焼き付ける。ウエット缶とは、乾燥工程120で図柄が焼き付けられる前の金属缶300である。一方、乾燥工程120で図柄が焼き付けられた後の金属缶300をドライ缶と称する。
【0028】
後処理工程130は、金属缶300の内面を塗装するスプレー工程を含んでよく、スプレー工程後のオーブン工程を含んでよい。後処理工程130は、金属缶300の缶口を絞るネッキング工程を有してよい。後処理工程130は、金属缶300を形成するためのその他の工程を適宜有してよい。
【0029】
分析装置100は、予め定められた見当マークを含む図柄が印刷された金属缶300の見当ズレを分析する。本例の分析装置100によって分析する金属缶300は、図柄の焼き付け前であるウエット缶である。分析装置100は、ドライ缶ではなくウエット缶を分析することにより、図柄を焼き付けるためのオーブン通過のための待ち時間を削減することができる。乾燥工程120における図柄の焼き付けには3~5分程度かかる場合がある。なお、分析装置100は、撮像した際に輪郭が不鮮明になることを避けるために、仕上げ用のニス(オーバーバニッシュ)が塗布される前のウエット缶を分析してもよい。本例の分析装置100は、照射部20と、撮像部40と、算出部50とを備える。
【0030】
照射部20は、金属缶300に印刷された図柄を分析するために金属缶300に照明光を照射する。照射部20は、金属缶300の自転中に照明光を照射してよい。照射部20については後述する。
【0031】
撮像部40は、金属缶300の自転中に、金属缶300に印刷された図柄を撮像する。撮像部40は、照射部20から金属缶300に照射された照明の反射光を受光することにより、金属缶300に印刷された図柄を撮像してよい。撮像部40は、自転した金属缶300を撮像するためのラインスキャンカメラであってよい。撮像部40で撮像する画像の画素のピッチは0.005mm以上、0.030mm以下であってよい。ラインスキャンカメラを用いることで、見当ズレの分析精度が向上する。撮像部40は、金属缶300の湾曲のない全周画像を取得することができる。
【0032】
算出部50は、図柄を撮像した画像データに基づいて、各色の印刷版の印刷された図柄のズレ量を算出する。算出部50は、図柄のズレ量に基づいて、印刷装置200のプレートシリンダ214の位置を調整するための調整値を算出してよい。算出部50は、印刷装置200のインクステーション212毎に調整値を算出してよい。インクステーション212については後述する。算出部50は、印刷装置200の印刷版のA版とB版との見当ズレ量の乖離を調整するために、A版およびB版のそれぞれの版の位置を算出してもよい。算出部50は、算出した分析結果を印刷制御部140に送信してよい。
【0033】
印刷制御部140は、分析装置100からの分析結果に応じて、印刷装置200の設定値を制御する。これにより、印刷システム150は、分析装置100の分析結果に応じて、金属缶300の見当ズレを修正することができる。なお、印刷制御部140を省略して、分析装置100の分析結果に基づいて、作業者が手動で印刷装置200の設定値を変更してもよい。印刷制御部140による制御と、作業者による手動調整を併用して印刷装置200の設定値を調整してもよい。
【0034】
本例の分析装置100を用いて図柄のズレ量を算出することにより、ルーペを用いて人の感覚で図柄のズレを修正する場合と比較して、客観的に金属缶300の見当ズレを分析することができる。分析装置100が取得した分析結果を用いることにより、見当ズレの修正を自動化することができる。
【0035】
本例の分析装置100は、印刷ラインから金属缶300を取り出して、オフラインで金属缶300を分析する。インラインでの検査では、缶の自転機構の設置が困難であるので、ラインスキャンカメラを使用する代わりに複数台のエリアカメラを使用する場合がある。エリアカメラでは、湾曲した缶画像しか得られず、高精度な画像データを取得することが困難な場合がある。また、各エリアカメラの複数の画像データを分析または結合処理する必要があり、処理に時間を要する場合がある。
【0036】
本例の分析装置100は、湾曲のない画像データを取得することができるので、画像データ同士を容易に比較することができる。これにより、印刷システム150は、印刷装置200の版替え時の見当調整作業を高精度かつ高速化することができる。印刷版またはインキを変更する際に、印刷工程110が印刷ラインの停止要因となるので、見当調整作業を高速化することで印刷ラインの停止時間を短縮することができる。
【0037】
図1Bは、分析装置100を用いた分析方法を説明するためのフローチャートの一例である。本例のフローチャートは、分析方法の一例でありこれに限定されない。
【0038】
ステップS100において、金属缶300に予め定められた見当マークを含む図柄を印刷する。ステップS100での印刷は、金属缶300への図柄の試し刷りであってよい。
【0039】
ステップS102において、金属缶300に図柄が印刷された後であって図柄の焼き付け前のウエット缶を印刷ラインから取り出す。金属缶300を印刷ラインから取り出すタイミングは、任意であってよい。一例において、金属缶300は、印刷後の搬送用のピンチェーンから取り出される。複数の金属缶300が予め定められた間隔で取り出されてもよい。ウエット缶は、作業者によって手動で取り出されてもよいし、機械によって自動で取り出されてもよい。ウエット缶は、図柄の印刷面に触れないように印刷ラインから取り出される。ウエット缶は、後述する取出し治具310を用いて取り出されてよい。
【0040】
ステップS104において、ウエット缶を分析装置100に投入する。ウエット缶は、作業者によって手動で投入されてもよいし、機械によって自動で投入されてもよい。
【0041】
ステップS106において、分析装置100が、図柄を撮像した画像データを取得する。分析装置100は、金属缶300の自転中に複数の照明方法をそれぞれ用いて、金属缶300の図柄を撮像してよい。即ち、分析装置100は、任意の照明方法を用いて金属缶300を撮像した後に、別の照明方法を用いて同一の金属缶300を撮像してよい。これにより、分析装置100は、同一の金属缶300に対して複数の画像からなる画像データを取得してよい。
【0042】
ステップS108において、分析装置100が、画像データに基づいて、ウエット缶に印刷された各色の印刷版の図柄のズレ量を算出する。分析装置100は、図柄のズレ量だけでなく、その他の印刷の不具合を取得してよい。分析装置100は、図柄の色の濃淡を分析してもよいし、印刷予定通りの図柄が印刷されているか否かを判定してもよい。
【0043】
図2Aは、分析装置100の構成の一例を示す。本例の分析装置100は、筐体10と、照射部20と、マンドレル30と、撮像部40とを備える。分析装置100は、近接センサ60と、エリアセンサ65と、容器70とを備えてよい。
【0044】
分析装置100は、金属缶300に図柄を印刷するための印刷ラインと連結されていないオフラインの装置である。そのため、分析装置100は、金属缶300を自転させながら高精度に金属缶300の見当ズレを分析することができる。
【0045】
マンドレル30は、金属缶300の内側に挿入され、金属缶300を自転させる。マンドレル30を金属缶300の内径にフィットさせることにより、金属缶300の断面が真円ではなく歪んだ場合であっても、金属缶300の断面を真円に近づくように矯正することができる。これにより、金属缶300の撮像面と撮像部40との距離が安定しやすくなり、歪みの少ない画像データを取得しやすくなる。
【0046】
照射部20は、金属缶300に照明光を照射するための照射位置と、金属缶300の投入時に退避するための退避位置との間で移動可能であってよい。照射部20を退避させることにより、金属缶300の投入時の接触リスクを避けて照射部20の汚染を防止することができる。撮像部40も同様に撮像位置とは異なる位置に移動可能であってよい。
【0047】
近接センサ60は、マンドレル30に近接して設けられ、マンドレル30に挿入された金属缶300の存在の有無を検知する。近接センサ60は、金属缶300がマンドレル30に押し込まれたか否かを検知してよい。金属缶300がマンドレル30に押し込まれたことを近接センサ60が検知すると、マンドレル30が金属缶300の吸引を自動的に開始してよい。
【0048】
エリアセンサ65は、分析装置100の開口部近傍における物体の存在の有無を検知する。エリアセンサ65は、作業者の手などが侵入していないかを検知してよい。エリアセンサ65を設置することにより、分析装置100がカバーレスの場合においても、分析装置100を安全に使用することができる。
【0049】
マンドレル30は、金属缶300の内径に対して予め定められたクリアランスClを有してよい。クリアランスClを適切に設定することにより、金属缶300がつぶれることなく吸引孔34で金属缶300を吸引することができる。クリアランスC1が小さすぎると金属缶300のマンドレル30への挿入が困難になる。また、クリアランスC1が大きすぎると、金属缶300の真円度が悪い場合にマンドレルで矯正しても真円度が不十分になり、ラインスキャンカメラと撮像面との距離が安定せず、画像の精度が悪くなる。クリアランスClは、0.05mm以上、0.50mm以下であってよい。より好ましくは0.05mm以上、0.25mm以下であってよい。但し、クリアランスClの大きさは、これに限定されない。本例のマンドレル30は、先端部32と、吸引孔34と、空気孔36とを有する。
【0050】
先端部32は、金属缶300の内側に挿入される。先端部32は、水平方向よりも下向きに延伸して設けられてよい。先端部32を水平方向よりも下向きに設けることで、容器70に金属缶300を落として捨てることができる。分析装置100は、空気孔36から空気を噴射することで金属缶300を落下させてよい。これにより、作業者の手を汚すことなくウエット缶の見当ズレを分析することができる。
【0051】
吸引孔34は、金属缶300へのマンドレル30の挿入時に金属缶300を吸引する。吸引孔34は、近接センサ60で金属缶300の挿入が検知されたときに自動で空気を吸引してよい。より具体的には、吸引孔34は、近接センサ60で検出可能な位置までマンドレル30に金属缶300を押し込むと空気を吸入してよい。吸引孔34は、マンドレル30の先端部32から予め定められた距離以上挿入されたことを近接センサ60が検知した場合に、空気の吸入を開始してよい。吸引孔34の起動タイミングを適切に設定することにより金属缶300のつぶれを防止することができる。
【0052】
空気孔36は、マンドレル30の先端部32に設けられ、金属缶300を取り外すための穴である。撮像後に吸引孔34の吸引を停止し、空気孔36から空気を吐き出すことによって、自動的に金属缶300をマンドレル30から抜き取ることができる。
【0053】
なお、吸引孔34および空気孔36の位置および個数は、本例に限定されない。吸引孔34および空気孔36は共通の穴で構成されてもよい。
【0054】
分析装置100は、近接センサ60が金属缶300の挿入を検知して、エリアセンサ65が非検知になると、自動的に金属缶300の分析を開始してよい。分析装置100は、作業者が手を引き抜くと自動で撮像を開始してよい。本例の分析装置100は、作業者の手を汚すことなく安全な金属缶300の分析を実現することができる。
【0055】
図2Bは、取出し治具310の一例を示す。取出し治具310は、金属缶300の底部を吸着するための吸着部312を有する。作業者は、取出し治具310を用いることにより、焼き付け前のピンチェーンから、缶胴に触れずに金属缶300を片手で取り出すことができる。取出し治具310は、取り出した金属缶300を分析装置100のマンドレル30に直接挿入できるような長さおよび形状を有してよい。
【0056】
図3Aは、判定領域320に印刷される第1見当マーク321の一例を示す。本例の判定領域320は、7つの第1見当マーク321a~321gを含む。第1見当マーク321の個数はこれに限定されない。第1見当マーク321は、第1基準マーク91および第1印刷マーク96をそれぞれ含む。本例の第1基準マーク91および第1印刷マーク96は、十字形であるがこれに限定されない。第1基準マーク91および第1印刷マーク96は、複数ある各インクステーション212に対応している。インクステーション212の1つが第1基準マーク91に対応し、他のインクステーション212が各第1印刷マーク96に対応している。
【0057】
第1基準マーク91は、金属缶300に印刷され、見当ズレ判定の基準となる。複数の第1基準マーク91は、同一の版を用いて印刷される。即ち、複数の第1基準マーク91同士の相対的な位置関係には、見当ズレが発生していない。
【0058】
第1印刷マーク96は、第1基準マーク91との相対的な位置関係に基づいて、見当ズレを判定するために用いられる。第1印刷マーク96は、7つの第1基準マーク91に対応して、7つの第1印刷マーク96a~96gを含む。第1印刷マーク96は、第1基準マーク91と離間せずに印刷されている。第1印刷マーク96a~第1印刷マーク96gは、それぞれ異なるインクステーション212の版を用いて異なる色で印刷されてよい。第1基準マーク91と第1印刷マーク96a~第1印刷マーク96gの版のインクは、それぞれ異なっていてもよいし、一部または全部が同一であってもよい。
【0059】
なお、第1基準マーク91および第1印刷マーク96a~第1印刷マーク96gは、ブランケットに転写した後に金属缶300にまとめて印刷されてもよい。また、第1基準マーク91および第1印刷マーク96a~第1印刷マーク96gは、別々に金属缶300に印刷されてもよい。
【0060】
図3Bは、判定領域320に印刷される第2見当マーク322の一例を示す。本例の判定領域320は、7つの第2見当マーク322a~322gを含む。第2見当マーク322の個数はこれに限定されない。第2見当マーク322は、第2基準マーク92および第2印刷マーク97をそれぞれ含む。本例の第2基準マーク92および第2印刷マーク97は、円形を有するが、これに限定されない。
【0061】
第2基準マーク92は、金属缶300に印刷され、見当ズレ判定の基準となる。複数の第2基準マーク92は、同一の版によって一度に印刷される。即ち、複数の第2基準マーク92同士の相対的な位置関係には、見当ズレが発生していない。第2基準マーク92は、第1基準マーク91と同一の版によって一度に印刷されてよい。
【0062】
第2印刷マーク97は、第2基準マーク92との相対的な位置関係に基づいて、見当ズレを判定するために用いられる。第2印刷マーク97a~第2印刷マーク97gは、異なるインクステーション212の版を用いて異なる色で印刷されてよい。第2基準マーク92と第2印刷マーク97a~第2印刷マーク97gの版のインクは、それぞれ異なっていてもよいし、一部または全部が同一であってもよい。
【0063】
なお、第2基準マーク92および第2印刷マーク97a~第2印刷マーク97gは、ブランケットに転写した後に金属缶300にまとめて印刷されてよい。また、第2基準マーク92および第2印刷マーク97a~第2印刷マーク97gは、別々に金属缶300に印刷されてもよい。
【0064】
第2基準マーク92および第2印刷マーク97は、互いに離間して印刷されている。第2基準マーク92および第2印刷マーク97は、互いに完全に分離されていてもよいし、一部が連結されていてもよい。本例の第2基準マーク92および第2印刷マーク97は、互いに完全に分離されており、印刷時のインクの混濁を回避することができる。
【0065】
ここで、第2見当マーク322は、第1見当マーク321のように十字マークを重ねたものと比較して、いずれの色がずれているのかを画像処理で容易に判断することができる。また、第2見当マーク322を用いることで、印刷の太りなのか見当ズレによる太りなのかを画像処理で判断しやすくなる。一方、十字形のような第1見当マーク321を用いることにより、目視であっても見当ズレの大きさを測定しやすくなる。第1見当マーク321および第2見当マーク322を併用することで画像処理の精度を向上しつつ、目視による見当ズレの大きさの検知精度を向上することができる。
【0066】
図4は、第2見当マーク322を撮像した画像の処理方法の一例を示す。第2基準マーク92の近傍に非マーク部分99が存在する場合がある。非マーク部分99とは、金属缶300に付着した汚れであってよく、線傷等の傷であってよい。本例では、非マーク部分99の影響による誤作動を防止するために非マーク部分99を画像処理で除去する方法について説明する。
【0067】
ステップS200において画像データから円形を含む見当マークの画像を取得して、取得した画像の2値化処理を実行する。本例では、第2見当マーク322の第2基準マーク92の画像を取得している。第2基準マーク92の周囲には非マーク部分99が存在している。本例の非マーク部分99は、第2基準マーク92と連結するように存在しており、画像処理しなければ誤検出の可能性がある。
【0068】
ステップS202において、2値化処理された画像の穴埋め処理を実行している。これにより、第2基準マーク92の円の内側が穴埋めされる。
【0069】
ステップS204およびステップS206において、穴埋め処理された画像にオープニング処理を実行する。オープニング処理では、穴埋め処理された画像の収縮(ステップS204)と膨張(ステップS206)を行う。これにより、第2基準マーク92の近傍の非マーク部分99が除去される。オープニング処理後に、見当マークの円形部分を検出することで見当マークを検出することができる。見当マークの円検出時には、領域の真円度でフィルタしてもよいし、面積でフィルタしてもよい。
【0070】
このように、分析装置100は、見当マークの画像を処理することにより、自動でズレ量を算出する際の誤作動を防止することができる。本例の分析装置100は、線傷等の影響を受けにくい円検出方法によって見当マークの画像を特定することができる。
【0071】
図5Aは、正反射照明21を用いた画像データの取得方法の一例を示す。本例の分析装置100は、正反射照明21を用いて、金属缶300で反射した正反射光Lr1を撮像した図柄の画像データを取得する。本例の分析装置100は、照射部20として正反射照明21を用いるが、後述する拡散反射照明22を用いていない。正反射照明21のみを用いることで、画像処理によって、黒色、白色および灰色などの各色と下地の金属とを区別しやすくなる。
【0072】
正反射照明21は、金属缶300に予め定められた第1波長帯B1の第1照射光L1を照射する。本例の第1波長帯B1は、可視光域であるがこれに限定されない。正反射照明21は、LED等の発光素子を有してよい。正反射照明21は、撮像部40が受光する正反射光Lr1の光源として機能する。正反射光Lr1とは、予め定められた入射角で反射面に入射した光の反射光であって、入射角と同一の反射角で反射する反射光であってよい。正反射光Lr1は、ハーフミラー等を使用して光学関係を調整することで生成してもよい。
【0073】
図5Bは、拡散反射照明22を用いた画像データの取得方法の一例を示す。本例の分析装置100は、拡散反射照明22を用いて、金属缶300で反射した拡散反射光Ld2を撮像した図柄の画像データを取得する。本例の分析装置100は、照射部20として拡散反射照明22を用いるが、正反射照明21を用いていない。
【0074】
拡散反射照明22は、金属缶300に第2照射光L2を照射する。第2照射光L2は、予め定められた第2波長帯B2の照射光を含んでよい。第2波長帯B2は、第1波長帯B1と同一であってもよいし、異なっていてもよい。第1波長帯B1および第2波長帯B2は、一部が重複していてもよいし、重複していなくてもよい。本例の第2波長帯B2は可視光域であるがこれに限定されない。拡散反射照明22は、LED等の発光素子を有してよい。拡散反射照明22は、撮像部40が受光する拡散反射光Ld2の光源として機能する。拡散反射光Ld2は、反射面に入射した光のうち、正反射光以外の反射光を指してよい。
【0075】
図5Cは、正反射照明21および拡散反射照明22を用いた画像データの取得方法の一例を示す。本例の分析装置100は、2つの照明23を用いて、金属缶300で反射した正反射光Lr1および拡散反射光Ld2の2つの光を撮像した図柄の画像データを取得する。2つの照明23は、正反射照明21および拡散反射照明22を含む。
【0076】
ここで、正確に金属缶300の見当ズレを分析するためには、黒色、白色および灰色などの各色を下地の金属と区別することが好ましい。金属缶300の照明方法には、画像処理に適した方法と、目視の確認に適した方法とがある。そのため、金属缶300の照明方法は、用途に応じて使い分けられてよい。正反射照明21のみを用いて取得された画像は、画像処理によって見当ズレ量を算出するために用いられてよい。拡散反射照明22のみを用いて取得された画像および2つの照明23によって取得された画像は、図柄を目視で確認するためのモニタ表示用に用いられてよい。
【0077】
図6Aは、金属缶300の見当ズレの分析方法の一例を示す。本例では、図5A図5Cの3つの照明方法を用いて見当ズレを調整するための方法の一例を示す。金属缶300をマンドレル30に吸着させた後に、3つの照明方法を用いて画像データを取得する。撮像はラインスキャンカメラにより金属缶300を回転させながら行う。撮像の前には撮像開始点の位置合わせのための回転を行う。画像データの取得後に見当ズレ量の算出処理を実行する。見当ズレ量の算出処理は、画像データの前処理と画像処理とを含んでよい。
【0078】
図6Bは、金属缶300の見当ズレの分析方法の一例を示す。本例では、1回目の撮像の後に、見当ズレ量の算出処理を実行する点で図6Aの実施例と相違する。本例では、図6Bの実施例と相違する点について特に説明する。
【0079】
見当ズレ量の算出処理を実行する段階は、1回目の撮像の後に開始される。1回目の撮像する段階で、画像処理に適した正反射照明21を用いて図柄を撮像することにより、2回目以降の撮像を待たずに、見当ズレ量の算出処理を開始することができる。これにより、分析装置100は、見当ズレの分析時間を短縮化することができる。
【0080】
2回目以降の撮像は、見当ズレ量の算出処理を実行する段階と並行して実行されてよい。即ち、拡散反射照明22を用いて図柄を撮像する段階および2つの照明23を用いて図柄を撮像する段階は、正反射照明21を用いて図柄を撮像する段階の後であって、正反射照明21を用いて取得した画像データに基づいて図柄のズレ量を算出する段階と並行して実行されてよい。本例では、2回目の撮像と3回目の撮像によって取得された画像が目視用の画像データとして用いられる。
【0081】
図7は、種類の異なる照明方法を用いて撮像した画像データの一例を示す。本例では、正反射照明21、拡散反射照明22および2つの照明23を用いて撮像した画像データをそれぞれ示す。同一の金属缶300を撮像した場合であっても、使用する照明方法によって、取得した画像データの色が異なる場合がある。1種類の照射部20を用いては判別できない色の組み合わせが存在する。そこで、1枚のカラー画像のRGB値は1組のみであるが、複数枚のカラー画像を撮像して、同一の画像位置に対して複数のRGB値のセットを取得することにより、画像位置と色の特定精度を向上することができる。
【0082】
例えば、金色である位置Aと、黄色である位置Bを2つの照明23で撮像すると、いずれも黄色(255,255,0)であると判別してしまう場合がある。正反射照明21または拡散反射照明22を併用することで、位置Aと位置Bに異なる色が印刷されていると判別することができる。
【0083】
一方、黄色である位置Bと、白色である位置Dを正反射照明21で撮像すると、いずれも黒色(0,0,0)であると判別してしまう場合がある。拡散反射照明22または2つの照明23を併用することで、位置Bと位置Dに異なる色が印刷されていることを判別することができる。このように、複数の種類の照明を併用することで、色の特定精度を向上させて、見当ズレの分析精度を向上させることができる。
【0084】
本例の分析装置100は、3種類の照明方法を用いているが、2種類であってもよいし、4種類以上であってもよい。2種類の照明方法を用いる場合、正反射照明21と拡散反射照明22を用いた画像データを取得してよい。
【0085】
図8は、2種類の画像データを結合した結合データの取得方法の一例を示す。本例では、第1画像取得方法により取得した第1画像データと、第2画像取得方法により取得した第2画像データとを結合した結合データについて説明する。
【0086】
第1画像データは、正反射照明21、拡散反射照明22または2つの照明23のいずれか1つを用いた第1画像取得方法により取得した画像データである。第2画像データは、正反射照明21、拡散反射照明22または2つの照明23のうち、第1画像取得方法と異なる照明を用いた第2画像取得方法により取得した画像データである。
【0087】
第1画像データおよび第2画像データは、それぞれRGBの3チャンネルのデータを画素ごとに有してよい。即ち、第1画像データおよび第2画像データは、R画像、G画像およびB画像の3つの画像をそれぞれ有してよい。結合データは、画素ごとに6チャンネルのデータを有してよい。
【0088】
本例の分析装置100は、1画素あたり6チャンネル分のデータを有するので、同色領域の識別精度を向上することができる。例えば、第1画像データでは区別がつかない2つの領域に対して、第2画像データで2つの領域の区別をつけることができる場合、結合データを用いることにより2つの領域を識別することができる。アルミ下地のように他の領域と判別が付きにくい領域の判別精度を向上することができる。本例の分析装置100は、2枚の画像データを結合させて、6チャンネルのデータを取得しているが、3枚以上の画像データを結合させて、9チャンネル以上のデータを取得してもよい。
【0089】
図9は、金属缶300を撮像した画像データの一例を示す。本例の分析装置100は、トリム端350の近傍の画像データをモニタに表示している。
【0090】
分析装置100は、トリム端350を用いて判定領域320の位置を検知してよい。本例の分析装置100は、判定領域320のトリム端350からの距離Ltを測定する。具体的には、分析装置100は、トリム端350からの見当マークの距離を測定してよい。分析装置100は、トリム端350からの判定領域320の位置を検知することで、より正確に判定領域320の位置を特定できる。このように、分析装置100は、見当マーク間の見当ズレ量だけでなく、図柄全体が上下することで生じるトリム端350からのズレ量も検出することができる。分析装置100は、トリム端350と画像エッジ360との誤検出を防止するために、検出したエッジのうち最も高いエッジをトリム端350に設定してよい。なお、分析装置100は、円検出アルゴリズムを用いて第2見当マーク322の位置を検出し、第1見当マーク321および第2見当マーク322の横方向の位置を座標設定してよい。
【0091】
判別領域370は、図柄を印刷するための印刷版のA版およびB版のいずれかで印刷された図柄かを判別するために設けられる。A版およびB版で印刷状態が異なるところ、A版とB版とを区別することで、いずれの印刷版がどの程度ずれているかを検知することができる。
【0092】
分析装置100は、判別領域370に印刷された目印の相異点に応じて、印刷版のA版およびB版のいずれかを識別する。一例において、分析装置100は、目印の相異点として、目印の面積の大小、形状、色などを用いる。判別領域370は、A版が使用された場合に数字の「1」が印刷され、B版が使用された場合に数字の「2」が印刷されてよい。分析装置100は、判別領域370に印刷された面積の大小に応じてAB版を識別してよい。例えば、数字の「1」は、数字の「2」よりも面積が小さいので、判別領域370に印刷された図柄の面積が予め定められた面積よりも小さい場合にA版と判別して、予め定められた面積よりも大きい場合にB版と判別してよい。
【0093】
ネガ番号330は、金属缶300に印刷された図柄のデザインに関する情報と紐づけられてよい。デザインに関する情報には、印刷上の注意点などの図柄に固有の情報が含まれてよい。ネガ番号330から得られた情報は、画面上に表示されてもよい。ネガ番号330は、金属缶300の缶自体にも印刷とは別に印字されてよい。ネガ番号330は2次元コードまたはバーコードに変換して印字されてもよい。分析装置100は、OCRでネガ番号330を検出してデータベースと照合してよい。
【0094】
なお、分析装置100は、金属缶300に印字された個体番号を読み取り、サーバーから金属缶300に関連づけられた生産データを取得してよい。生産データは、金属缶300の印刷時に保持したマンドレルの番号を含んでよく、金属缶300が印刷されたブランケットの番号を含んでよく、印刷ラインの前工程に関連する情報を含んでよい。
【0095】
図10Aは、複数の画像の比較画面を示す。本例の分析装置100は、A版で印刷された図柄の予め定められた第1領域301を含む画像データと、B版で印刷された図柄のうち第1領域301と同じ領域を含む画像データとを並べて表示する。
【0096】
A版の第1領域301およびB版の第1領域301は、画像を比較するために同一の画面上に並べて表示されている。即ち、本例の分析装置100は、A版の画像データとB版の画像データとを並べて表示している。A版とB版の見当ズレ量は理想的には同じになるはずであるが、版付けの状態によってはA版とB版とで見当ズレ量が異なる場合がある。A版の第1領域301とB版の第1領域301とを並べて表示することで、A版とB版との乖離が検知しやすくなる。
【0097】
図10Bは、複数の画像の比較画面を示す。分析装置100は、1つの画像データの複数領域を並べて表示してもよい。即ち、第1領域301と、第1領域301とは異なる領域である第2領域302とを並べて表示してもよい。これにより、単一の金属缶300について、目視では比較の難しい複数箇所を同時に比較することができ、印刷版の歪みなどで異なる領域で見当ズレの違いが生じても正確に把握することができる。また、A版の画像データの第1領域301および第2領域302と、B版の画像データの第1領域301および第2領域302の4つの画像を並べて表示してもよい。
【0098】
なお、分析装置100は、第1領域301および第2領域302の倍率を自在に変更可能であってよい。分析装置100は、拡大率に応じて、比較を容易にするためにグリッドを表示してよい。
【0099】
なお、分析装置100は、誤検出等によって画像データから見当マークを正確に検出できない場合には手動で見当マークを検出するモードを表示してもよい。例えば、分析装置100は、検出した見当マークが予め定められた条件を満たさない場合に、図柄の見当マークの検出を修正するための修正画面を表示する。予め定められた条件を満たさない場合とは、傷または汚れなどによって見当マークを認識できない場合または誤検出される場合であってよい。分析装置100は、修正画面に入力された作業者からの指示に応じて分析結果を算出してもよい。作業者は、修正画面に基づいて、手動で印刷装置200の印刷条件を修正してもよい。分析装置100は、見当マークを用いた粗調整と作業者による微調整とを併用して見当ズレを解消してもよい。
【0100】
分析装置100は、A版とB版のそれぞれの見当ズレ量を測定し、それぞれの見当ズレ量の平均からの乖離を算出してよい。分析装置100は、A版とB版の見当ズレ量の平均値を出力してよい。分析装置100は、A版とB版との乖離を取得して、乖離が予め定められた値よりも大きい場合に、版付け状態を改善するようにアラートを出してもよい。
【0101】
なお、分析装置100は、金属缶300の見当ズレのみならず、金属缶300の印刷状態などの様々な情報を分析してよい。分析装置100は、図柄のベダ部のつぶし度合いを判別してよい。つぶしとはインキの塗布面への広がりやすさを示す。つぶしが悪いとインキの凹凸が大きくなり、下地が見えて白っぽく見えてしまう場合がある。分析装置100は、分析した情報をモニタに表示してもよいし、見当ズレの分析等のために使用してもよい。
【0102】
分析装置100は、色の濃淡の不良を判別する機能を有してよい。分析装置100は、同一の図柄について過去の生産時の画像と比較してよい。分析装置100は、色の濃淡を比較して、過去の生産時の画像との差が予め定められた基準値よりも大きい場合に異常を知らせてよい。
【0103】
また、分析装置100は、図柄の網点の掛け合わせの見当状態を判別してよく、抜き合わせの見当状態を判別してよい。図柄の細かいパターンは0.01mm単位で設計されている場合がある。分析装置100は、高解像度で図柄を分析することにより、低解像度でベタ印刷に見える場合であっても、複数色の細かいパターンで再現されていることを判別することができる。分析装置100で分析する画像データは撮像部40で撮像した解像度(画素のピッチ)が0.005mm以上、0.030mm以下の画像データであってよい。これにより、分析装置100は、網点の抜き合わせによって、見当状態で色の見え方が変わる場合であっても、見当状態を判別することができる。
【0104】
分析装置100は、画像データを色毎に抽出して比較する機能を有してよい。分析装置100は、印刷版のそれぞれの分色画像を取得してよい。A版とB版は同じデザインであるので、A版とB版の比較では印刷版の取り間違いに気づけない場合がある。分析装置100は、印刷版の分色画像と、金属缶300を撮像して得られた画像データと比較することで、印刷版の間違いを検知することができる。分色画像は、印刷版のモノクロ画像であってもよい。
【0105】
図11は、金属缶300に図柄を印刷するための印刷装置200の一例である。印刷装置200は、印刷部210および容器供給搬出部220を備え、金属缶300に予め定められた図柄を印刷する。
【0106】
印刷部210は、金属缶300に予め定められた図柄を印刷する。印刷部210は、インクステーション212と、プレートシリンダ214と、ブランケット215と、ブランケット胴217と、回転軸218とを備える。本例の印刷部210は、8種類のインクステーション212a~212hおよびプレートシリンダ214a~214hを有するが、インクの種類はこれに限定されない。
【0107】
インクステーション212は、予め定められた色のインクを貯留して、プレートシリンダ214が支持する印刷版に供給する。インクステーション212は、インクを供給するためのフォームローラを有してよい。インクステーション212は、フォームローラを介して、プレートシリンダ214が有する印刷版へインクを供給する。
【0108】
ブランケット215は、各インクステーション212により載置されたインクを移送するゴム状の部材である。ブランケット215は、ブランケット胴217の外周に支持される。ブランケット215は、回転軸218を中心としたブランケット胴217の回転に応じて、各インクステーション212と対応する位置に移送される。ブランケット215が各プレートシリンダ214の印刷版に次々に接触して、ブランケット215上にインクが載置される。
【0109】
ブランケット215は、ブランケット胴217とマンドレルターレット224との間に移送され、ブランケット胴217および金属缶300の間で押圧される。これにより、ブランケット215に載置されたインクは、金属缶300へと転写される。
【0110】
容器供給搬出部220は、シュータ222と、マンドレルターレット224と、トランスファターレット226と、バニッシュコーティング部228と、搬出経路229とを有する。金属缶300は、シュータ222を通過して、マンドレルターレット224に搬送される。
【0111】
マンドレルターレット224は、ブランケット胴217と対向して設けられる。マンドレルターレット224は、マンドレルにて金属缶300を保持して回転して、金属缶300をブランケット215と対向する位置に移動する。そして、マンドレルターレット224とブランケット胴217との間において、金属缶300が印刷される。
【0112】
その後、金属缶300は、トランスファターレット226を介して、搬出経路229に搬出される。バニッシュコーティング部228は、マンドレルターレット224に併設され、印刷処理後の金属缶300にオーバーバニッシュ(仕上げ用ニス)を塗布してよい。
【0113】
図12は、プレートシリンダ214の拡大図の一例である。プレートシリンダ214には、印刷版240が支持される。インクは、インクステーション212のインク供給機構であるフォームローラ230から、印刷版240を通じてブランケット215へと転写される。
【0114】
印刷版240は、表面上に凸部242を有する。印刷版240は、フォームローラ230等のインクステーション212におけるインク供給機構に接触し、印刷版240の凸部242にインクが付着する。インクが付着した印刷版240は、プレートシリンダ214およびブランケット胴217の回転により、ブランケット胴217の支持部219に支持されるブランケット215の表面に次々に接触する。これにより、印刷版240の凸部242に付着しているインクは、ブランケット215へと転写される。印刷版240は凸部の無い平版であってもよい。
【0115】
印刷版240は、A版である印刷版240aと、B版である印刷版240bを有する。即ち、本例の印刷装置200は、1つのプレートシリンダ214にA版とB版の2つの印刷版240が取り付けられているが、1つの印刷版240が取り付けられてもよく、3つ以上の印刷版240が取り付けられてもよい。A版とB版は同じ図柄の印刷版であってよい。
【0116】
分析装置100は、ブランケット215の不良を判別する機能を有してよい。分析装置100は、ブランケット215の異なる複数枚の画像を比較してよい。ブランケット215に不良があると12枚のブランケット215のうち1枚だけ画像データの差分が大きくなる。分析装置100は、ブランケット215間の差分を検知すると、アラートを出すなどして、ブランケットの異常を作業者に知らせてよい。
【0117】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0118】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0119】
10・・・筐体、20・・・照射部、21・・・正反射照明、22・・・拡散反射照明、23・・・2つの照明、30・・・マンドレル、32・・・先端部、34・・・吸引孔、36・・・空気孔、40・・・撮像部、50・・・算出部、60・・・近接センサ、65・・・エリアセンサ、70・・・容器、91・・・第1基準マーク、92・・・第2基準マーク、96・・・第1印刷マーク、97・・・第2印刷マーク、99・・・非マーク部分、100・・・分析装置、110・・・印刷工程、120・・・乾燥工程、130・・・後処理工程、140・・・印刷制御部、150・・・印刷システム、200・・・印刷装置、210・・・印刷部、212・・・インクステーション、214・・・プレートシリンダ、215・・・ブランケット、217・・・ブランケット胴、218・・・回転軸、219・・・支持部、220・・・容器供給搬出部、222・・・シュータ、224・・・マンドレルターレット、226・・・トランスファターレット、228・・・バニッシュコーティング部、229・・・搬出経路、230・・・フォームローラ、240・・・印刷版、242・・・凸部、300・・・金属缶、301・・・第1領域、302・・・第2領域、310・・・取出し治具、312・・・吸着部、320・・・判定領域、321・・・第1見当マーク、322・・・第2見当マーク、330・・・ネガ番号、350・・・トリム端、360・・・画像エッジ、370・・・判別領域
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11
図12