(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111639
(43)【公開日】2024-08-19
(54)【発明の名称】甘く香ばしい香りを有する固形組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 27/00 20160101AFI20240809BHJP
A23L 2/00 20060101ALI20240809BHJP
A23L 2/56 20060101ALI20240809BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20240809BHJP
A23F 3/16 20060101ALI20240809BHJP
【FI】
A23L27/00 C
A23L2/00 B
A23L2/56
A23L5/00 H
A23F3/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023016259
(22)【出願日】2023-02-06
(71)【出願人】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100163784
【弁理士】
【氏名又は名称】武田 健志
(72)【発明者】
【氏名】浜場 大周
(72)【発明者】
【氏名】小山内 泰亮
【テーマコード(参考)】
4B027
4B035
4B047
4B117
【Fターム(参考)】
4B027FB13
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(57)【要約】
【課題】本発明は、甘く香ばしい香りを有する固形組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】固形組成物において、2,6-ジメチルピラジン及びマルトールを含有させ、2,6-ジメチルピラジン含有量のマルトール含有量に対する重量比を3.3以下に調整する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2,6-ジメチルピラジン及びマルトールを含有し、2,6-ジメチルピラジン含有量のマルトール含有量に対する重量比が3.3以下である、固形組成物。
【請求項2】
粉末組成物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
2種類以上のデキストリンを含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
直鎖状デキストリン及び環状デキストリンを含有する、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
茶葉抽出物を含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
茶葉抽出物が、緑茶の茶葉抽出物である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
茶以外の原料を含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
酸化防止剤を含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の組成物を含有する、飲食品。
【請求項10】
飲料である、請求項9に記載の飲食品。
【請求項11】
茶飲料である、請求項9に記載の飲食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は固形組成物に関し、より具体的には、甘く香ばしい香りを有する固形組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
茶葉を加工して得られる茶飲料は、日本のみならず世界中で幅広く飲用されている。茶飲料は、ペットボトルや缶などの容器に殺菌充填された容器詰め飲料として販売されていたり、或いは、乾燥及び粉末化をして粉体の形態にし、水や湯などで溶解して飲用するものとして販売されていたりする。水や湯を利用して飲用する粉末状の茶としては、大きく分けて二種類の形態があり、一つは茶葉の抽出液を乾燥して得られるインスタント茶であり、もう一つは茶葉をそのまま粉砕して得られる粉末茶である。
【0003】
インスタント茶としては、これまでに茶の風味改善を図った技術が開示されており、例えば、茶葉抽出液の製造において同一の茶葉原料から複数回にわたって抽出操作を行って得られたインスタント茶(特許文献1)や、エタノールと水とを特定割合で含む混合溶液を用いて緑茶抽出物を精製することによってカフェイン量を低減させたインスタント茶(特許文献2)等が開示されている。また、時間経過に伴う風味劣化の抑制を目的として、グルコースやマルトース等の単糖類又は二糖類を利用したインスタント茶(特許文献3)も開示されている。粉末茶に関しては、水に対する分散性や溶解性の向上を目的として、例えば、茶葉の粉砕物を植物抽出液に分散させてから当該分散液を噴霧乾燥して得られる粉末茶(特許文献4)や、水溶液中で粉砕及び微粒化して得られる粉砕茶葉を主体とした粉末茶(特許文献5)等が開示されている。
【0004】
人々は茶飲料を飲むことでリラックスしたいとの欲求もあることから、香味面においては甘く香ばしい香りが求められている。茶飲料において甘さと香ばしさを付与する方法としては、例えば、抹茶含有飲料に対して、従来にない抹茶独自の爽快な苦味、甘さ、及び香ばしさのある豊かな風味を付与する風味改善剤が知られている(特許文献6)。また、麦茶飲料に対して甘味と香ばしさを付与する技術も知られている(特許文献7、8)。また、碾茶に特有の甘香ばしさを付香する方法も知られている(特許文献9)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-226111号公報
【特許文献2】特開2009-72188号公報
【特許文献3】特開2013-153739号公報
【特許文献4】特開2010-233559号公報
【特許文献5】特開2007-289115号公報
【特許文献6】特開2017-79668号公報
【特許文献7】特開2018-174743号公報
【特許文献8】特開2012-170375号公報
【特許文献9】特開2013-223441号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の通り、茶飲料に対して甘さや香ばしさを付与する方法はこれまでにいくつかのものが報告されており、茶飲料の分野ではそのような甘さや香ばしさの付与方法について更なる技術が求められている。そこで、本発明は、甘く香ばしい香りを有する固形組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく本発明者らは鋭意検討した結果、固形組成物におけるマルトール及び2,6-ジメチルピラジンの含有比率を特定の範囲となるように調整することによって、高級茶のような甘く香ばしい香りが感じられることを見出した。これらの知見に基づき、本発明者らは本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明は、これに限定されるものではないが、以下に関する。
(1)2,6-ジメチルピラジン及びマルトールを含有し、2,6-ジメチルピラジン含有量のマルトール含有量に対する重量比が3.3以下である、固形組成物。
(2)粉末組成物である、(1)に記載の組成物。
(3)2種類以上のデキストリンを含有する、(1)又は(2)に記載の組成物。
(4)直鎖状デキストリン及び環状デキストリンを含有する、(3)に記載の組成物。
(5)茶葉抽出物を含有する、(1)~(4)のいずれか1に記載の組成物。
(6)茶葉抽出物が、緑茶の茶葉抽出物である、(5)に記載の組成物。
(7)茶以外の原料を含有する、(1)~(6)のいずれか1に記載の組成物。
(8)酸化防止剤を含有する、(1)~(7)のいずれか1に記載の組成物。
(9)(1)~(8)のいずれか1に記載の組成物を含有する、飲食品。
(10)飲料である、(9)に記載の飲食品。
(11)茶飲料である、(9)に記載の飲食品。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、甘く香ばしい香りを有する固形組成物を提供することができる。本発明の固形組成物は、水又は湯を用いて茶飲料とすることができ、茶飲料の飲用時に甘く香ばしい香りをもたらすことができる。本発明の固形組成物は、茶飲料に対して非常に軽量であることから、輸送時の利便性に極めて優れている。
【0010】
また、本発明の固形組成物は、食品の原料としても利用することができる。茶風味を有する食品は、近年その数や種類は増加傾向にある。本発明の固形組成物は、例えば、ケーキ、カステラ、キャンディー、クッキー、ゼリー、プリン、チョコレート等の菓子類に対して、甘く香ばしい香りを付与することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の固形組成物について、以下に説明する。なお、特に断りがない限り、本明細書において用いられる「ppm」、「ppb」、及び「重量%」は、重量/重量(w/w)のppm、ppb、及び重量%をそれぞれ意味する。
【0012】
本発明の一態様は、2,6-ジメチルピラジン及びマルトールを含有し、2,6-ジメチルピラジン含有量のマルトール含有量に対する重量比が3.3以下である、固形組成物である。かかる構成を採用することにより、固形組成物から甘く香ばしい香りが呈されるようになる。本明細書において、固形組成物が呈する甘く香ばしい香りは、茶飲料の分野における「火香」とも称される。
【0013】
(2,6-ジメチルピラジン及びマルトール)
本発明の固形組成物は、2,6-ジメチルピラジンを含有する。2,6-ジメチルピラジンはピラジン類の一種であり、ナッツ様の香気を呈することが知られている。2,6-ジメチルピラジンは、化学式C6H8N2で表される有機化合物であり、そのCAS番号は5910-89-4である。
【0014】
本発明の固形組成物は、マルトールを含有する。マルトールは、松葉等の天然に存在する有機化合物であり、食品香料や食品添加物として用いられ、甘い香りを呈することが知られている。マルトールは、化学式C6H6O3で表される有機化合物であり、そのCAS番号は118-71-8である。
【0015】
本発明の固形組成物において、2,6-ジメチルピラジン含有量のマルトール含有量に対する重量比は3.3以下である。2,6-ジメチルピラジンが当該重量比でマルトールと組み合わせて存在することによって、カラメル様の甘く香ばしい香りが発揮されるようになる。
【0016】
本発明の固形組成物における2,6-ジメチルピラジン含有量のマルトール含有量に対する重量比は、好ましくは0.001以上、0.002以上、0.003以上、0.004以上、0.005以上、0.006以上、0.007以上、又は0.008以上であり、より好ましくは0.01以上である。また、本発明の固形組成物における2,6-ジメチルピラジン含有量のマルトール含有量に対する重量比は、好ましくは3.25以下、3.2以下、3.15以下、3.1以下、3.05以下、3.0以下、2.95以下、又は2.9以下であり、より好ましくは2.0以下、1.5以下、又は1.0以下である。典型的には、本発明の固形組成物における2,6-ジメチルピラジン含有量のマルトール含有量に対する重量比は、好ましくは0.001~3.25、より好ましくは0.002~3.2、さらに好ましくは0.003~3.15である。
【0017】
本発明の固形組成物における2,6-ジメチルピラジンの含有量は、特に限定されないが、例えば10ppb以上であり、好ましくは20ppb以上、30ppb以上、40ppb以上、50ppb以上、60ppb以上、70ppb以上、80ppb以上、90ppb以上、100ppb以上、又は110ppb以上である。2,6-ジメチルピラジンの含有量が前記範囲内であることにより、甘く香ばしい香りが特に十分に感じられるようになる傾向にある。固形組成物における2,6-ジメチルピラジンの含有量の上限値は、特に制限されない。当該含有量は、例えば9000ppb以下であり、好ましくは8500ppb以下、8000ppb以下、7500ppb以下、7000ppb以下、6500ppb以下、6000ppb以下、5500ppb以下、5000ppb以下、4500ppb以下、又は4000ppb以下である。本発明の固形組成物における2,6-ジメチルピラジンの含有量は、特に限定されないが、典型的には、10~9000ppb、好ましくは20~8500ppb、より好ましくは30~8000ppb、さらに好ましくは40~7500ppbである。
【0018】
また、本発明の固形組成物におけるマルトールの含有量は、特に限定されないが、例えば5.0ppm以上であり、好ましくは5.5ppm以上、6.0ppm以上、6.5ppm以上、7.0ppm以上、7.5ppm以上、8.0ppm以上、8.5ppm以上、9.0ppm以上、9.5ppm以上、又は10ppm以上であり、より好ましくは15ppm以上、又は20ppm以上である。マルトールの含有量が前記範囲内であることにより、甘く香ばしい香りが特に十分に感じられるようになる傾向にある。固形組成物におけるマルトールの含有量の上限値は、特に制限されない。当該含有量は、例えば1000ppm以下であり、好ましくは950ppm以下、900ppm以下、850ppm以下、800ppm以下、750ppm以下、700ppm以下、650ppm以下、600ppm以下、550ppm以下、又は500ppm以下である。本発明の固形組成物におけるマルトールの含有量は、特に限定されないが、典型的には、5.0~1000ppm、好ましくは5.5~950ppm、より好ましく6.0~900ppm、さらに好ましくは6.5~850ppmである。
【0019】
本発明の固形組成物において、2,6-ジメチルピラジン及びマルトールはそれぞれ精製物又は粗精製物を使用してもよいし、或いは、2,6-ジメチルピラジン及びマルトールを含む抽出物を使用してもよい。2,6-ジメチルピラジン及びマルトールを含む抽出物としては、天然由来の抽出物を用いることができ、植物抽出物及び動物抽出物のいずれも利用することができる。2,6-ジメチルピラジン及びマルトールは、後述の茶葉抽出物由来であってもよい。
【0020】
本発明において、固形組成物における2,6-ジメチルピラジン及びマルトールの含有量は、ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC/MS)を用いて測定することができる。また、その分析装置としては、GC:Agilent Technologies 7890B GC、MS:Agilent Technologies 5977Aが挙げられる。本発明の固形組成物を水に溶解した溶解液を調製して、当該溶解液を用いて各種芳香成分の含有量を測定することができる。2,6-ジメチルピラジン及びマルトールの含有量は、具体的には下記の実施例に示した条件により測定することができる。測定用サンプルに関する条件も、後述の実施例で示した通りに設定することができる。溶解液中の芳香成分の含有量を測定した後で、水に溶解した固形組成物の量から逆算して固形組成物中の芳香成分の含有量を求めることができる。
【0021】
本発明の固形組成物は、茶葉抽出物を含有することができる。ここで、本明細書において「茶葉抽出物」とは、茶葉より抽出された成分を意味する。本発明において、茶葉は、ツバキ科ツバキ属の植物(Camellia sinensis (L) O. Kuntzeなど)から得られる葉を用いることができる。本発明で使用される茶葉は、加工方法により、不発酵茶、半発酵茶、発酵茶に分類することができる。不発酵茶としては、例えば、荒茶、煎茶、玉露、かぶせ茶、碾茶、番茶、ほうじ茶、釜入り茶、茎茶、棒茶、芽茶等の緑茶が挙げられる。半発酵茶としては、例えば、鉄観音、色種、黄金桂、武夷岩茶等の烏龍茶が挙げられる。発酵茶としては、例えば、ダージリン、アッサム、スリランカ等の紅茶が挙げられる。本発明において茶葉は、1種のみを単独で使用してもよいし、複数種類の茶葉をブレンドして使用してもよい。また、茶葉としては、芳香成分が抽出可能な部位であれば特に制限されず、葉、茎など適宜使用することができ、その形態も大葉、粉状など制限されない。本発明では、特に限定されないが、好ましくは緑茶の茶葉抽出物が用いられ、より好ましくは煎茶又は番茶の茶葉抽出物が用いられる。また、茶期としては、一番茶、二番茶、三番茶、四番茶、秋冬番茶、冬春番茶、冬春秋番茶、刈番等を挙げることができ、本発明では好ましくは秋冬番茶の茶葉抽出物が用いられる。秋冬番茶は、日本国内の秋季から初冬にかけて摘採される茶葉であり、例えば、9月下旬から10月中旬にかけて摘採される茶葉を用いることができる。また、秋冬番茶は、秋芽の生育が停止した時期の秋から初冬にかけて一番茶の萌芽条件を良くする目的で整枝した茶葉を製茶したものであることが知られており、一般的には下級茶とされている(日本茶インストラクター講座、第1巻、2018、第174頁及び第183頁)。茶葉抽出物において用いられる茶葉は、焙煎処理されていることが好ましく、例えば、170℃以上及び250秒以上の条件で焙煎処理されていることが好ましい。
【0022】
本発明の固形組成物における茶葉抽出物の含有量は、特に限定されないが、例えば20~95重量%、好ましくは30~90重量%、より好ましくは35~80重量%、さらに好ましくは40~70重量%である。茶葉抽出物の含有量が前記範囲内であることによって、茶葉由来の香味を十分に感じることができる。
【0023】
(デキストリン)
本発明の固形組成物は、デキストリンを含有することができる。デキストリンは、デンプン又はグリコーゲンの加水分解により得られる炭水化物の総称である。本発明においてデキストリンは、固形組成物を形成するための賦形剤として使用することができる。本発明の固形組成物に使用されるデキストリンの種類は、特に限定されないが、1種類以上、2種類以上、3種類以上、又は4種類以上とすることができ、好ましくは2種類以上、より好ましくは3種類以上である。
【0024】
本発明の固形組成物におけるデキストリンの含有量は、特に限定されないが、デキストリンの合計含有量として、例えば5~80重量%、好ましくは10~70重量%、より好ましくは20~65重量%、さらに好ましくは30~60重量%である。本発明においてデキストリンは、市販の製造品を使用することができる。固形組成物におけるデキストリンの含有量は、当業者に公知の方法を用いて糖分析を行うことにより測定することができる。
【0025】
本発明において使用されるデキストリンとしては、特に制限されないが、直鎖状デキストリン、環状デキストリン、及びらせん状デキストリンなどが挙げられる。ここで、本明細書において「直鎖状デキストリン」とは、グルコースが直鎖状に、又は分岐鎖を有しながら鎖状に結合し、環構造及びらせん構造を形成していないデキストリンを意味する。また、本明細書において「環状デキストリン」とは、グルコースが結合して環構造を形成し、らせん構造を形成していないデキストリンを意味する。また、本明細書において「らせん状デキストリン」とは、グルコースが結合してらせん構造を形成しているデキストリンを意味する。本発明の固形組成物は、好ましくは直鎖状デキストリン及び/又は環状デキストリンを含有する。
【0026】
直鎖状デキストリンとしては、特に限定されないが、例えばDE(dextrose equivalent)1~25の直鎖状デキストリンや、重量平均分子量500~160000の直鎖状デキストリンなどを用いることができる。また、本発明では、直鎖状デキストリンは1種のみならず2種以上を組み合わせて使用することもできる。本発明において好ましい態様は、2種類の直鎖状デキストリンの使用である。直鎖状デキストリンを2種類使用する場合は、例えば、DE2~5の直鎖状デキストリンとDE16~20の直鎖状デキストリンとの組み合わせ、又は、重量平均分子量90000~140000の直鎖状デキストリンと重量平均分子量600~1200の直鎖状デキストリンとの組み合わせを利用することができる。
【0027】
直鎖状デキストリンを用いる場合、本発明の固形組成物における直鎖状デキストリンの含有量は、例えば0~65重量%、好ましくは10~60重量%、より好ましくは15~55重量%である。2種類の直鎖状デキストリンとしてDE2~5の直鎖状デキストリンとDE16~20の直鎖状デキストリンとを用いる場合、本発明の固形組成物におけるDE2~5の直鎖状デキストリンの含有量は、例えば0~60重量%、好ましくは5~50重量%、より好ましくは10~45重量%であり、DE16~20の直鎖状デキストリンの含有量は、例えば0~60重量%、好ましくは5~50重量%、より好ましくは10~45重量%である。また、DE2~5の直鎖状デキストリンとDE16~20の直鎖状デキストリンとの含有比(重量比)は、例えば4:0.5~0.5:5、好ましくは3:1~1:5、より好ましくは2:1~1:4である。
【0028】
また、2種類の直鎖状デキストリンとして重量平均分子量90000~140000の直鎖状デキストリンと重量平均分子量600~1200の直鎖状デキストリンとを用いる場合、本発明の固形組成物における重量平均分子量90000~140000の直鎖状デキストリンの含有量は、例えば0~65重量%、好ましくは10~60重量%、より好ましくは15~55重量%であり、重量平均分子量600~1200の直鎖状デキストリンの含有量は、例えば5~60重量%、好ましくは5~50重量%、より好ましくは10~45重量%である。また、重量平均分子量90000~140000の直鎖状デキストリンと重量平均分子量600~1200の直鎖状デキストリンとの含有比(重量比)は、例えば5:1~1:3、好ましくは3:1~1:2、より好ましくは2:1~1:1である。
【0029】
環状デキストリンとしては、例えばシクロデキストリンを使用することができる。本発明では、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、及びγ-シクロデキストリンのいずれも使用可能であるが、好ましくはα-シクロデキストリンが用いられる。本発明において用いられる環状デキストリンの重量平均分子量は、特に限定されないが、例えば700~1300、好ましくは800~1200、より好ましくは900~1100である。環状デキストリンを用いる場合、本発明の固形組成物における環状デキストリンの含有量は、例えば0.5~15重量%、好ましくは1~12重量%、より好ましくは3~10重量%である。
【0030】
直鎖状デキストリンと環状デキストリンとが用いられる場合、直鎖状デキストリンと環状デキストリンとの含有比(重量比)は、例えば20:1~2:1、好ましくは15:1~3:1、より好ましくは12:1~5:1である。
【0031】
本発明の固形組成物は、らせん状デキストリンを含有してもよい。本発明において用いられるらせん状デキストリンのDEは、特に限定されないが、例えば7未満、好ましくは6未満、より好ましくは5未満である。らせん状デキストリンを用いる場合、本発明の固形組成物におけるらせん状デキストリンの含有量は、例えば0~45重量%、好ましくは5~30重量%、より好ましくは10~20重量%である。また、らせん状デキストリンが用いられる場合、直鎖状デキストリンとらせん状デキストリンとの含有比(重量比)は、例えば1:3~3:1、好ましくは1:2~2:1、より好ましくは1:1.5~1.5:1である。
【0032】
(その他の芳香成分)
本発明の固形組成物は、上記の2,6-ジメチルピラジン及びマルトールに加えて、2-メチルフラン、フルフラール、2,5-ジメチルピラジン、2,3-ジメチルピラジン、2,3,5-トリメチルピラジン、1-ヒドロキシ-2-ブタノン、2-エチル-6-メチルピラジン、2-エチル-5-メチルピラジン、2-エチル-3,5-ジメチルピラジン、2-アセチルフラン、フルフリルメチルサルファイド、及びヒドロキシメチルフルフラールからなる群より選択される一以上の芳香成分をさらに含有することができる。これらの芳香成分を本発明の固形組成物に含有させることにより、甘く香ばしい香りがより一層優れたものとなる。
【0033】
本発明において、固形組成物における2-メチルフラン、フルフラール、2,5-ジメチルピラジン、2,3-ジメチルピラジン、2,3,5-トリメチルピラジン、1-ヒドロキシ-2-ブタノン、2-エチル-6-メチルピラジン、2-エチル-5-メチルピラジン、2-エチル-3,5-ジメチルピラジン、2-アセチルフラン、フルフリルメチルサルファイド、及びヒドロキシメチルフルフラールの含有量は、ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC/MS)を用いて測定することができる。具体的には、下記の実施例に示した条件により各種芳香成分の含有量を測定することができる。測定用サンプルに関する条件も、後述の実施例で示した通りに設定することができる。
【0034】
(その他の添加剤)
本発明の固形組成物は、茶以外の原料を含有していてもよい。茶以外の原料としては、例えば、重曹等が挙げられるが、特にこれらに限定されない。本発明の固形組成物における重曹の含有量は、例えば0.1~5重量%、好ましくは0.2~3重量%、より好ましくは0.3~2重量%である。
【0035】
本発明の固形組成物は、酸化防止剤を含有していてもよい。酸化防止剤としては、例えば、L-アスコルビン酸ナトリウム等が挙げられるが、特にこれらに限定されない。本発明の固形組成物における酸化防止剤の含有量は、例えば0.5~8重量%、好ましくは1~6重量%、より好ましくは1.5~4重量%である。
【0036】
本発明の固形組成物は、上記に示した各種成分に加えて、通常の飲食品に用いられる添加物、例えば、保存料、pH調整剤、甘味剤、栄養強化剤、増粘安定剤、乳化剤、食物繊維、品質安定剤などを、本発明の効果を損なわない範囲で添加することができる。
【0037】
(固形組成物)
本発明の固形組成物は、特に限定されないが、粉末状であること、すなわち粉末組成物であることが好ましい。本発明において、粉末組成物は粉末状の形態をしておいればよく、顆粒もこれに含まれる。本発明において、粉末組成物の粒子径は、特に限定されないが、例えば0.1~500μm、好ましくは1~300μm、より好ましくは10~200μmである。
【0038】
本発明の固形組成物は、飲食品(飲料及び食品)に含有させることができる。すなわち、本発明においては、上述した固形組成物を含有する飲食品を提供することができる。本発明の固形組成物は、これを液体に含有させて飲料とすることが好ましく、水又は湯などで溶解して茶飲料として飲用することが最も好ましい。この点から、本発明の固形組成物は、インスタント茶として提供することが最も好ましい。ここで、本明細書において「インスタント茶」とは、茶葉の抽出液を原料に用いた溶液を乾燥させて、デキストリン等を含有させて粉末状に加工した粉末飲料を意味する。茶飲料は、不発酵茶(緑茶など)、半発酵茶(ウーロン茶など)、発酵茶(紅茶など)を含むが、具体的には、煎茶、番茶、ほうじ茶、玉露、かぶせ茶、甜茶等の蒸し製の不発酵茶(緑茶);嬉野茶、青柳茶、各種中国茶等の釜炒茶等の不発酵茶;包種茶、鉄観音茶、ウーロン茶等の半発酵茶;紅茶、阿波番茶、プアール茶などの発酵茶等の茶類を挙げることができる。本発明の固形組成物が利用される茶飲料は、好ましくは緑茶である。すなわち、本発明の固形組成物は、インスタント緑茶として提供することができる。
【0039】
本発明の固形組成物を水又は湯などの液体に含有させる場合、溶液中のその含有量は、特に限定されないが、例えば0.01~20重量%、好ましくは0.05~10重量%、より好ましくは0.1~5.0重量%である。また、溶液中の固形組成物の含有量は、溶液中の2,6-ジメチルピラジンの含有量が、例えば0.1~90ppb、好ましくは0.2~85ppb、より好ましくは0.3~80ppb、さらに好ましくは0.4~75ppb、または、溶液中のマルトールの含有量が、例えば50~10000ppb、好ましくは55~9500ppb、より好ましくは60~9000ppb、さらに好ましくは65~8500ppbとなるように調整してもよい。
【0040】
本発明の固形組成物はまた、食品にも添加することができる。そのような食品としては、例えば、和菓子及び洋菓子を問わず、菓子類としてケーキ、カステラ、キャンディー、クッキー、ゼリー、プリン、チョコレートなど、冷菓類としてアイスクリーム、アイスキャンディー、シャーベットなど、またはスナック類などが挙げられ、パンや乳製品などにも使用することができる。本発明の固形組成物を食品に添加する場合、その添加量は食品の種類等に応じて適宜設定することができる。
【0041】
本発明の固形組成物が食品に添加される場合、その添加量は食品の種類等に応じて適宜設定することができる。本発明の固形組成物は、例えば、食品中のその含有量が0.01~20重量%、好ましくは0.05~10重量%、より好ましくは0.1~5.0重量%、さらに好ましくは0.5~5.0重量%となるように食品に添加することができる。
【0042】
また、本発明の固形組成物を食品に添加する量は、上述した芳香成分の含有量を指標にして設定することもできる。例えば、食品中の2,6-ジメチルピラジンの含有量が0.5~500ppb、好ましくは1~250ppb、より好ましくは2~200ppb、さらに好ましくは3~150ppbとなるように、本発明の固形組成物を食品に添加することができる。例えば、食品中のマルトールの含有量が0.5~10000ppb、好ましくは5~9000ppb、より好ましくは10~8000ppb、さらに好ましくは15~7000ppbとなるように、本発明の固形組成物を食品に添加することができる。
【0043】
(製造方法)
本発明の固形組成物は、(A)茶葉抽出物、2,6-ジメチルピラジン及びマルトールを含有する溶液を調製する工程、並びに(B)得られた溶液を乾燥する工程、を経て製造することができる。当該溶液には、茶葉抽出物、2,6-ジメチルピラジン及びマルトールのほかに、デキストリンなどの上述した各種成分が含まれていてもよい。いずれの成分の配合量も、本発明の効果を損なわない限りにおいて適宜設定することができ、各種成分を配合する順序も特に限定されない。また、当該溶液の溶媒としては水を用いてもよいし、あるいは茶葉の抽出液をそのまま用いてもよい。当該溶液において、2,6-ジメチルピラジン含有量のマルトール含有量に対する重量比は3.3以下であってもよいが、特に限定されるわけではなく、最終的に製造された固形組成物において当該重量比が3.3以下であればよい。
【0044】
溶液の乾燥は、当業者に従来公知の方法を用いて行うことができる。例えば、噴霧乾燥、凍結乾燥、熱風乾燥、真空乾燥などの方法が挙げられるが、本発明では噴霧乾燥を用いることが好ましい。なお、噴霧乾燥における温度や時間などの条件も特に限定されず、適宜調整することができる。
【0045】
本発明の固形組成物の製造においては、上記の工程に加えて、工程(A)で得られた溶液を濃縮する工程や、工程(A)で得られた溶液を加熱処理する工程などを含めることができる。いずれの工程も、当業者に従来公知の方法を用いて行うことができる。
【0046】
(飲食品における甘く香ばしい香りを高める方法)
以上の通り得られた本発明の固形組成物は、飲食品に添加することができ、飲食品において甘く香ばしい香りを高めることができる。したがって、本発明は、別の態様として、上記の工程を通じて得られた固形組成物を飲食品に添加する工程を含む、飲食品における甘く香ばしい香りを高める方法とすることができる。
【実施例0047】
以下に実施例に基づいて本発明の説明をするが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0048】
(1)固形組成物(粉末組成物)の作製
(1-1)茶葉
煎茶(秋冬番茶、丸紅食料株式会社)を原料とし、ドラム式焙煎装置(横山製作所、DS-2型)を用いて、ドラム回転数3r/sec、温度220℃、及び焙煎時間6分として茶葉の焙煎処理を行った。
【0049】
(1-2)茶葉抽出液
茶抽出用タンクの中に、上記の通り焙煎した煎茶(秋冬番茶)16kg、デキストリン2.38kg(CAVAMAX W6(α-CD)(α-シクロデキストリン):0.5kg、サンデック#30(直鎖状デキストリン(重量平均分子量:120000、DE:2~5)):1.88kg)、L-アスコルビン酸ナトリウム0.48kg、圧搾助剤としてKCフロック1.6kgを投入し、さらに90℃、224kgの湯を添加し、200rpmで攪拌し、20分間保持した。その後、圧搾用のろ布(材質:パイレン)で抽出残渣を受け、18Mpaの圧力を負荷して茶葉抽出液を作製した。得られた茶葉抽出液のうち190kgに対してデキストリン(TK-16(直鎖状デキストリン(DE:18)))を3.65kg添加し、混合し、次いで遠心分離により不溶性成分(茶葉)を取り除き、90℃及び30秒間の条件で殺菌処理を行った。殺菌処理の後、膜濃縮を行って(NTR-759HG-S4F(日東電工)、液温:20℃、圧力:3MPa)、溶液中の固形分濃度としてBrix値が20~30となるように茶葉抽出液を濃縮化した。
【0050】
(1-3)粉末組成物
上記の通り濃縮化された茶葉抽出液について、90℃及び45秒間の条件で殺菌処理を行った。殺菌処理後の溶液に対して噴霧乾燥機を用いて噴霧乾燥処理を行い、粉末組成物を作製した。なお、乾燥条件は、入口熱風温度を160℃とし、出口熱風温度を110℃とした。このようにして得られた粉末組成物を火香パウダーと称することとした。
【0051】
(1-4)粉末組成物の評価
上記の通り得られた粉末組成物においては、これを水に溶解したところ、カラメルを思わせるような甘く香ばしい火香が感じられた。この粉末組成物について芳香成分の分析を行ったところ、マルトール、2,6-ジメチルピラジン、2-メチルフラン、フルフラール、2,5-ジメチルピラジン、2,3-ジメチルピラジン、2,3,5-トリメチルピラジン、1-ヒドロキシ-2-ブタノン、2-エチル-6-メチルピラジン、2-エチル-5-メチルピラジン、2-エチル-3,5-ジメチルピラジン、2-アセチルフラン、フルフリルメチルサルファイド、及びヒドロキシメチルフルフラール等が検出された。各種芳香成分の中からマルトール及び2,6-ジメチルピラジンの成分に着目して、粉末組成物におけるこれらの成分の濃度を以下の通り測定した。
【0052】
<検量線>
対象とする芳香成分が10000ppmの濃度となるよう標準原液(エタノール溶媒)を作製し、それぞれの標準原液について純水で0.001、0.01、0.1、0.5、1.0ppmに調製した。各種調製液10mLを、塩化ナトリウム3gが入った20mL容量のバイアル瓶に投入して検量線サンプルとした。
【0053】
<分析サンプルの作製>
検量線の濃度範囲に入るように粉末組成物0.8gを純水100mLで溶解し、得られた溶液10mLと塩化ナトリウム3gとを20mL容量のバイアル瓶に投入し、分析サンプルを作製した。分析サンプルにおいては、10ppmに調製したボルネオール10μLを内部標準物質として添加した。
【0054】
<成分分析>
アジレント社製のガスクロマトグラフィー分析装置(GC/MS)を用いて、以下の通り粉末組成物におけるマルトール及び2,6-ジメチルピラジンの濃度を測定した。
分析装置
装置:GC:Agilent Technologies 7890B GC
MS:Agilent Technologies 5977A
HS:Gestel MPS
前処理
装置:ゲステル社マエストロ4
メソッド:MVM (no3&FEDHS)
アジテーション温度:80 ℃, 30 min
チューブ:Tenax TA, Carbon bx1000
カラム
種類:Agilent 19091N-136I HP-INNOWax
長さ:60 m
内径:0.25 mm
膜厚:0.25 μm
分析条件
メソッド
ガス流量:54.1 mL/min(注入口のトータルフロー)
1.7 mL/min(カラム内 コンスタントフロー)
昇温パターン:初期温度70 ℃ (0 min) → 240 ℃まで5 ℃/min → ポストラン260 ℃, 10 min
スプリットレス
インジェクション量:0.2 μL
【0055】
上記の測定結果として、分析サンプルにおけるマルトール及び2,6-ジメチルピラジンの濃度はそれぞれ234ppb及び5.6ppbであった。
【0056】
(2)実験例1
まず、ベースとなる粉末茶として、フラットな香味の印象があり、甘く香ばしい香りが感じられない粉末茶を得た。具体的には、茶抽出用タンクの中に、市販の煎茶(一番茶及び二番茶の混合品、丸紅食料株式会社)15kg、デキストリン3kg(CAVAMAX W6(α-CD):0.63kg、サンデック#30:2.37kg)、タンナーゼ0.6kg、重曹0.1kg、L-アスコルビン酸ナトリウム0.45kgを投入し、圧搾助剤としてKCフロック1.5kgを投入し、さらに40℃、225kgのお湯を添加し、200rpmで攪拌し、20分間保持した。その後、圧搾用のろ布(材質:パイレン)で抽出残渣を受け、18Mpaの圧力を負荷して茶葉抽出液を作製した。得られた茶葉抽出液のうち173kgに対してデキストリン(TK-16)を3.54kg(茶固形重量に対して150%)添加し、混合し、次いで遠心分離により不溶性成分(茶葉)を取り除き、90℃及び30秒間の条件で殺菌処理を行った。殺菌処理の後、膜濃縮を行って(NTR-759HG-S4F(日東電工)、液温:20℃、圧力:3MPa)、溶液中の固形分濃度としてBrix値が20~30となるように茶葉抽出液を濃縮化した。この濃縮化された茶葉抽出液ついて、90℃及び45秒間の条件で殺菌処理を行った。殺菌処理後の溶液に対して噴霧乾燥機を用いて噴霧乾燥処理を行い、ベースとなる粉末組成物を作製した。なお、乾燥条件は、入口熱風温度を160℃とし、出口熱風温度を110℃とした。このようにして得られたベースとなる粉末組成物(粉末茶)を、フラットパウダーと称することとした。フラットパウダーに関してマルトール及び2,6-ジメチルピラジンの濃度を調べたところ、いずれも濃度は0(検出限界以下)であった。
【0057】
次に、このフラットパウダーと上記の火香パウダーとを混合し、水を加えて粉末茶溶解液を作製した。また、火香パウダーのみの溶解液にマルトール及び2,6-ジメチルピラジンの標準品を添加して、両成分の最終濃度が下表の通りとなるように各種試料を調製した。
【0058】
調製した各種試料について、香味の評価に関して十分に訓練された2名のパネリストで官能評価を実施した。官能評価としては、試料において感じられるカラメル様の甘い香ばしさについて、下記の基準で評価した。評価点は0.5刻みで点数付けを行い、最終的に評価点の平均値を算出した。なお、官能評価の結果について、各パネリストの評価点が1.5以上異なることはなかった。
1:甘香ばしい香りを感じない
2:甘香ばしい香りをほのかに感じる
3:甘香ばしい香りを少し感じる
4:甘香ばしい香りを感じる
5:甘香ばしい香りを強く感じる
【0059】
【0060】
上記の結果の通り、2,6-ジメチルピラジン及びマルトールの存在によりカラメル様の甘く香ばしい香りが感じられることが示された。
【0061】
(3)実験例2
上記の通り作製した火香パウダーを用いて、2,6-ジメチルピラジン含有量のマルトール含有量に対する重量比(2,6-ジメチルピラジン/マルトール)の影響を調べた。
【0062】
火香パウダー1gに対して水100mLを加えて火香パウダーの溶解液を作製し、この溶解液にマルトール及び2,6-ジメチルピラジンの標準品を添加して、両成分の最終濃度が下表の通りとなるように各種試料を調製した。
【0063】
調製した各種試料について、香味の評価に関して十分に訓練された2名のパネリストで官能評価を実施した。官能評価としては、試料において感じられるカラメル様の甘い香ばしさについて、下記の基準で評価した。評価点は0.5刻みで点数付けを行い、最終的に評価点の平均値を算出した。なお、官能評価の結果について、各パネリストの評価点が1以上異なることはなかった。
1:甘香ばしい香りを感じない
2:甘香ばしい香りをほのかに感じる
3:甘香ばしい香りを少し感じる
4:甘香ばしい香りを感じる
5:甘香ばしい香りを強く感じる
【0064】
【0065】
上記の結果の通り、2,6-ジメチルピラジン含有量のマルトール含有量に対する重量比(2,6-ジメチルピラジン/マルトール)が所定の範囲となることによって、カラメル様の甘く香ばしい香りが感じられることが示された。