IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社神戸製鋼所の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111640
(43)【公開日】2024-08-19
(54)【発明の名称】サイドシル構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/20 20060101AFI20240809BHJP
【FI】
B62D25/20 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023016261
(22)【出願日】2023-02-06
(71)【出願人】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100218132
【弁理士】
【氏名又は名称】近田 暢朗
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 貞雄
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 憲一
(72)【発明者】
【氏名】リケッツ,アルトゥ-ル
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203AA02
3D203BB12
3D203CA25
3D203CA29
3D203CA37
3D203CA42
3D203CA43
3D203CA54
3D203CA55
3D203CA57
3D203CA67
(57)【要約】
【課題】部品点数が少なく、側突時の衝撃吸収性に優れたサイドシル構造を提供する。
【解決手段】サイドシル構造100は、外側壁111及び内側壁112を有するサイドシル本体101と、サイドシル本体101の内部で車長方向に並ぶ複数の中空部103を形成するエネルギー吸収構造体102とを備える。エネルギー吸収構造体102は、単体のブランク板130から形成されたベース部品121を有する。ベース部品121は、車長方向に並ぶ複数の貫通孔131に対して車幅方向外側で車長方向に延び、外側壁111の内面に接合される第1縦板部132と、第1縦板部132から隣接する貫通穴131の間を車幅方向に延びる複数の横板部134と、複数の横板部134それぞれから上方へ切り起こされた複数のフランジ体135とを有し、複数の横板部134及び複数のフランジ体135は、車長方向に並べられている。
【選択図】図3A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車長方向に延びるサイドシル本体と、
それぞれ前記サイドシル本体の内部で車幅方向に延び、前記車長方向に間隔をあけて並んだ複数の中空部を形成するエネルギー吸収構造体と、
を備え、
前記サイドシル本体が、前記車幅方向の外側の外側壁と、前記車幅方向の内側の内側壁と、前記外側壁及び前記内側壁の上端同士を前記車幅方向に接続する上壁と、を有し、
前記エネルギー吸収構造体が、ベース部品を有し、
前記ベース部品が、
前記車長方向に並ぶ複数の貫通孔と、
前記複数の貫通孔に対して前記車幅方向の前記外側で前記車長方向に延び、前記外側壁の内面に接合される第1縦板部と、
それぞれ前記第1縦板部から前記複数の貫通孔のうち隣接する2つの間で前記車幅方向に延び、前記車長方向に並ぶ複数の横板部と、
前記複数の横板部それぞれから上方へ切り起こされ、前記車長方向に間隔をあけて並ぶ複数のフランジ体と、
を有する、サイドシル構造。
【請求項2】
前記ベース部品が、前記サイドシル本体と同種の金属材料で成形され、
前記第1縦板部が、前記外側壁に溶接されている、
請求項1に記載のサイドシル構造。
【請求項3】
前記第1縦板部の板厚方向が、前記車幅方向に向けられ、
前記第1縦板部は、前記外側壁の前記内面に重ね合わされる、
請求項1に記載のサイドシル構造。
【請求項4】
前記ベース部品が、前記複数の貫通孔に対して前記車幅方向の前記内側で前記車長方向に延び、前記複数の横板部と連続し、前記内側壁の内面に重ね合わされる第2縦板部を更に有する、
請求項1に記載のサイドシル構造。
【請求項5】
前記複数の横板部の少なくとも1つに、上方又は下方に突出して前記車幅方向に延びるビード部が設けられている、
請求項1に記載のサイドシル構造。
【請求項6】
前記フランジ体の上端部に、タブ部が設けられており、
前記タブ部の上面が、前記上壁の内面に重ね合わされる、
請求項1に記載のサイドシル構造。
【請求項7】
前記フランジ体は、下端と上端との間に1以上の折曲げ部を有する、
請求項1に記載のサイドシル構造。
【請求項8】
前記フランジ体の各々が、前記横板部の前縁部から上方へ延びる前フランジ部と、前記横板部の後縁部から上方へ延びる後フランジ部とで構成されている、
請求項1に記載のサイドシル構造。
【請求項9】
前記前フランジ部及び前記後フランジ部は、上方に向かうにつれて前記車長方向において互いに離れるように傾斜している、
請求項8に記載のサイドシル構造。
【請求項10】
前記前フランジ部及び前記後フランジ部は、下端と上端との間に1つの折曲げ部を有し、
前記複数の筒構造の各々が、前記横板部、前記前フランジ部、前記後フランジ部、及び前記上壁によって画定され、前記車幅方向に見て六角形状の断面を有する、
請求項9に記載のサイドシル構造。
【請求項11】
前記エネルギー吸収構造体が、前記フランジ体の上部を覆う上カバー部と、前記上カバー部の側端縁から下方に延びて前記フランジ体の側部を前記車幅方向に覆う側カバー部と、を有するアウタパッチを更に有し、
前記側カバー部が、前記外側壁に溶接されており、前記上カバー部が、前記上壁に溶接されている、
請求項1に記載のサイドシル構造。
【請求項12】
前記エネルギー吸収構造体が、前記フランジ体に接合される補強部品を更に有する、
請求項1に記載のサイドシル構造。
【請求項13】
前記補強部品の前記車幅方向の前記外側の端部に、タブ部が設けられ、
前記第1縦板部の板厚方向及び前記タブ部の板厚方向が、前記車幅方向に向けられ、
前記第1縦板部及び前記タブ部が、前記外側壁の前記内面に重ねられると共に、前記外側壁と接合されている、
請求項12に記載のサイドシル構造。
【請求項14】
前記フランジ体の各々が、前記横板部の前縁部から上方へ延びる前フランジ部と、前記横板部の後縁部から上方へ延びる後フランジ部とで構成され、
前記補強部品が、
前記前フランジ部の前方に隣接する前記貫通孔を通過して上下方向に延び、前記前フランジ部の外面に接合される前壁部と、
前記後フランジ部の後方に隣接する前記貫通孔を通過して上下方向に延び、前記後フランジ部の外面に接合される後壁部と、
前記横板部よりも下方で、前記前壁部及び前記後壁部の下端同士を前記車長方向に接続するウェブ部と、を有する、
請求項12に記載のサイドシル構造。
【請求項15】
前記ウェブ部に、上方に突出して前記車幅方向に延びる底上げ部が設けられており、
前記底上げ部が、前記横板部に溶接されている、
請求項14に記載のサイドシル構造。
【請求項16】
前記エネルギー吸収構造体が、それぞれ前記車幅方向に延びると共に前記車幅方向に見て閉断面を有する複数の筒状部品を更に有し、
前記複数の筒状部品の各々が、前記横板部及び前記フランジ体の少なくともいずれかに接合されている、
請求項1に記載のサイドシル構造。
【請求項17】
前記ベース部品が、前記サイドシル本体と同種の金属材料で成形され、
前記筒状部品が、前記サイドシル本体及び前記ベース部品とは異種の金属材料で成形され、
前記ベース部品は、前記サイドシル本体に溶接されており、前記筒状部品は、前記ベース部品に機械的に接合されている、
請求項16に記載のサイドシル構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイドシル構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、車両側部構造の一部としてサイドシルを開示している。側突発生時に乗員などを保護するために、複数の中空構造が、サイドシル本体に内蔵され、車長方向に並べられている。各中空構造は、車幅方向に延び、サイドシル本体に溶接された補強材によって構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-203599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数の中空構造は、互いに独立して構成されている。そのため、サイドシルの部品点数及び組立工数が多くなる。
【0005】
そこで本発明は、部品点数又は組立工数を少なくして、側突発生時の衝撃吸収性能に優れたサイドシル構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態は、車長方向に延びるサイドシル本体と、それぞれ前記サイドシル本体の内部で車幅方向に延び、前記車長方向に間隔をあけて並んだ複数の中空部を形成するエネルギー吸収構造体と、を備え、前記サイドシル本体が、前記車幅方向の外側の外側壁と、前記車幅方向の内側の内側壁と、前記外側壁及び前記内側壁の上端同士を前記車幅方向に接続する上壁と、を有し、前記エネルギー吸収構造体が、ベース部品を有し、前記ベース部品が、前記車長方向に並ぶ複数の貫通孔と、前記複数の貫通孔に対して前記車幅方向の前記外側で前記車長方向に延び、前記外側壁の内面に接合される第1縦板部と、それぞれ前記第1縦板部から前記複数の貫通孔のうち隣接する2つの間で前記車幅方向に延び、前記車長方向に並ぶ複数の横板部と、前記複数の横板部それぞれから上方へ切り起こされ、前記車長方向に間隔をあけて並ぶ複数のフランジ体と、を有する、サイドシル構造を提供する。
【0007】
上記の構成によれば、複数の中空部を形成するエネルギー吸収構造体が、ベース部品を有する。ベース部品は、車長方向に延びる第1縦板部を有し、複数のフランジ体が、複数の横板部を介して第1縦板部に一体的に設けられる。各フランジ体は、横板部及び第1縦板部から見て上方へ延び、それにより、フランジ体、横板部、及び上壁が、サイドシル本体の内部で車幅方向に延びる中空部を画定する。複数のフランジ体及び複数の横板部は、複数の貫通孔と車長方向に交互に並べられ、複数の筒構造は、車長方向に間隔をあけて並べられる。
【0008】
側突が発生すると、その衝撃はサイドシル本体の外側壁に入力される。この外側壁が、車長方向に延びる第1縦板部と接合されている。そのため、衝撃がベース部品に流れやすく、エネルギー吸収構造体が衝撃を良好に吸収できる。エネルギー吸収構造体は、主として、単品のベース部品によって構成される。中空部1つ1つが互いに独立した別個の部品で構成される場合と対比して、エネルギー吸収構造体ひいてはサイドシル構造の部品点数及び組立工数を削減できる。また、複数の筒構造同士の間には、貫通孔が形成される。車長方向に長尺のベース部品を使用することで部品点数及び組立工数を削減できると共に、車長方向に長尺のベース部品を使用していてもサイドシル構造が軽量になる。
【0009】
前記ベース部品が、前記サイドシル本体と同種の金属材料で成形され、前記第1縦板部が、前記外側壁に溶接されていてもよい。
【0010】
上記構成によれば、例えば抵抗溶接のような作業効率が高い手法を使用してベース部品をサイドシル本体に接合できるため、サイドシル構造を簡易に製造できる。
【0011】
前記第1縦板部の板厚方向が、前記車幅方向に向けられ、前記第1縦板部は、前記外側壁の前記内面に重ね合わせられてもよい。
【0012】
上記構成によれば、第1縦壁部のサイドシル本体に対する接合強度が向上し、サイドシル構造の強度が高くなる。なお、「(2つの板状の部位が)重ね合わせられる」とは、当該2部位が板厚方向を揃えた状態で積層されていることを意味しており、2部位が直接的に面接触している場合と、別部材(例えば、パッチ部材や接着剤)が2部位間に介装されている場合との両方を含む。
【0013】
前記ベース部品が、前記複数の貫通孔に対して前記車幅方向の前記内側で前記車長方向に延び、前記複数の横板部と連続し、前記内側壁の内面に重ね合わされる第2縦板部を更に有してもよい。
【0014】
上記構成によれば、複数の横板部が、片持ち梁状ではなく、第1縦板部と第2縦板部との両方により支持される。ベース部品が、外側壁と内側壁とにより車幅方向に挟まれた状態でサイドシル本体に安定的に取り付けられる。そのため、各筒構造の強度あるいは衝撃吸収性能が向上する。
【0015】
前記複数の横板部の少なくとも1つに、上方又は下方に突出して前記車幅方向に延びるビード部が設けられていてもよい。
【0016】
上記構成によれば、横板部の剛性が向上する。
【0017】
前記フランジ体の上端部に、タブ部が設けられており、前記タブ部の上面が、前記上壁の内面に重ね合わされてもよい。
【0018】
上記構成によれば、フランジ体がタブ部を介して上壁に安定的に支持され、筒構造における衝撃吸収性能が向上する。
【0019】
前記フランジ体は、下端と上端との間に1以上の折曲げ部を有してもよい。
【0020】
上記構成によれば、フランジ体は、折曲げ部において勾配を変化させながら下端から上端へと延びる。換言すれば、フランジ体は、折曲げ部の下側の壁部分と、折曲げ部の上側の壁部分とを有し、上下方向に対する傾斜が壁部分によって異なる。外側壁に衝撃が入力されると、その衝撃は、これら複数の壁部分を介して車幅方向内側へ流れていく。そのため、エネルギー吸収構造体の衝撃吸収性能が向上する。
【0021】
前記フランジ体の各々が、前記横板部の前縁部から上方へ延びる前フランジ部と、前記横板部の後縁部から上方へ延びる後フランジ部とで構成されていてもよい。
【0022】
上記構成によれば、各筒構造が、横板部と、上壁と、横板部及び上壁を上下に繋ぐ車長方向に一対のフランジ部とによって画定される。筒構造は、車幅方向から見て閉断面を形成する。それにより、筒構造の強度あるいは衝撃吸収性能が向上する。
【0023】
前記前フランジ部及び前記後フランジ部は、上方に向かうにつれて前記車長方向において互いに離れるように傾斜していてもよい。
【0024】
上記構成によれば、横板部が車長方向において大きくなくても、筒構造の断面積が広くなる。それにより、筒構造の強度あるいは衝撃吸収性能が一層向上する。
【0025】
前記前フランジ部及び前記後フランジ部は、下端と上端との間に1つの折曲げ部を有し、前記複数の筒構造の各々が、前記横板部、前記前フランジ部、前記後フランジ部、及び前記上壁によって画定され、前記車幅方向に見て六角形状の断面を有してもよい。
【0026】
上記構成によれば、筒構造が六角形状の閉断面を有するので、各筒構造において高い強度あるいは衝撃吸収性能が得られる。
【0027】
前記エネルギー吸収構造体が、前記フランジ体の上部を覆う上カバー部と、前記上カバー部の側端縁から下方に延びて前記フランジ体の側部を前記車幅方向に覆う側カバー部と、を有するアウタパッチを更に有し、前記側カバー部が、前記外側壁に溶接されており、前記上カバー部が、前記上壁に溶接されていてもよい。
【0028】
上記構成によれば、ベース部品が、サイドシル本体に対して車幅方向にも上下方向にも接合され、エネルギー吸収構造体のサイドシル本体への接合強度が向上する。
【0029】
前記エネルギー吸収構造体が、前記フランジ体に接合される補強部品を更に有してもよい。
【0030】
上記構成によれば、補強部品により、衝撃吸収性能を必要に応じて簡便に向上させることができる。
【0031】
前記補強部品の前記車幅方向の前記外側の端部に、突出部が設けられ、前記第1縦板部の板厚方向及び前記突出部の板厚方向が、前記車幅方向に向けられ、前記第1縦板部及び前記突出部が、前記外側壁の前記内面に重ねられると共に、前記外側壁と接合されていてもよい。
【0032】
上記構成によれば、補強部品のベース部品への接合強度が向上し、また、ベース部品のサイドシル本体への接合強度が向上する。特に、側突時にエネルギー吸収構造体の横倒れを防止でき、衝撃吸収性能が向上する。なお、横倒れとは、衝突時にエネルギー吸収構造体内で局所的に大きな圧縮力が発生することによって生じる座屈を指し、横倒れの方向は、エネルギー吸収構造体の形状により、上下方向であったり車長方向であったり様々である。
【0033】
前記フランジ体の各々が、前記横板部の前縁部から上方へ延びる前フランジ部と、前記横板部の後縁部から上方へ延びる後フランジ部とで構成され、前記補強部品が、前記前フランジ部の前方に隣接する前記貫通孔を通過して上下方向に延び、前記前フランジ部の外面に接合される前壁部と、前記後フランジ部の後方に隣接する前記貫通孔を通過して上下方向に延び、前記後フランジ部の外面に接合される後壁部と、前記横板部よりも下方で、前記前壁部及び前記後壁部の下端同士を前記車長方向に接続するウェブ部と、を有してもよい。
【0034】
上記構成によれば、筒構造に、フランジ体の下方で補強部品によって画定される閉断面が追加される。それにより、エネルギー吸収構造体の強度あるいは衝撃吸収性能が向上する。
【0035】
前記ウェブ部に、上方に突出して前記車幅方向に延びる底上げ部が設けられており、前記突出部が、前記横板部に溶接されていてもよい。
【0036】
上記構成によれば、底上げ部を設けたことで補強部品の剛性が向上する。補強部品がベース部品に上下方向に接合されるため、補強部品のベース部品に対する接合強度が向上する。
【0037】
前記エネルギー吸収構造体が、それぞれ前記車幅方向に延びると共に前記車幅方向に見て閉断面を有する複数の筒状部品を更に有し、前記複数の筒状部品の各々が、前記横板部及び前記フランジ体の少なくともいずれかに接合されていてもよい。
【0038】
上記構成によれば、筒構造に、筒状部品によって画定される閉断面が追加される。それにより、エネルギー吸収構造体の強度あるいは衝撃吸収性能が向上する。
【0039】
前記ベース部品が、前記サイドシル本体と同種の金属材料で成形され、前記筒状部品が、前記サイドシル本体及び前記ベース部品とは異種の金属材料で成形され、前記ベース部品は、前記サイドシル本体に溶接されており、前記筒状部品は、前記ベース部品に機械的に接合されていてもよい。
【0040】
上記構成によれば、筒状部品とベース部品及びサイドシル本体との接合に機械的接合を適用しているため、筒状部品の材料としてサイドシル本体及びベース部品とは異種の金属材料を選択しやすい。なお、機械的接合の一例として、ボルトやリベットを用いた締結や、接着剤を使用した接着を例示できる。
【発明の効果】
【0041】
本発明によれば、部品点数又は組立工数を少なくして、側突発生時の衝撃吸収性能に優れたサイドシル構造を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】第1実施形態に係るサイドシルが適用された車両の車体の斜視図。
図2】第1実施形態に係るサイドシルの横断面図。
図3A図2のIII-III線に沿った縦断面図。
図3B図3Aの部分拡大図。
図4】第1実施形態に係るベース部品のブランク板の平面図。
図5】第1実施形態に係るエネルギー吸収構造体の斜視図。
図6】第2実施形態に係るサイドシル構造の横断面図。
図7A図6のVII-VII線に沿った横断面図。
図7B図7Aの部分拡大図。
図8】第2実施形態に係るエネルギー吸収構造体の斜視図。
図9】第3実施形態に係るサイドシルを示す横断面図。
図10A図9のX-X線に沿った横断面図。
図10B図10Aの部分拡大図。
図11】第3実施形態に係るエネルギー吸収構造体の斜視図。
図12】第4実施形態に係るサイドシルを示す横断面図。
図13A図12のXIII-XIII線に沿った横断面図。
図13B図13Aの部分拡大図。
図14】第4実施形態に係るエネルギー吸収構造体の斜視図。
図15】第5実施形態に係るサイドシルを示す横断面図。
図16A図15のXVI-XVI線に沿った横断面図。
図16B図16Aの部分拡大図。
図16C図16Bの部分拡大図。
図17】第5実施形態に係るエネルギー吸収構造体の斜視図。
図18】第6実施形態に係るサイドシルを示す横断面図。
図19A図18のXIX-XIX線に沿った横断面図。
図19B図19Aの部分拡大図。
図19C図19Bの部分拡大図。
図20】第6実施形態に係るエネルギー吸収構造体の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、図面を参照して実施形態について説明する。なお、全図を通じて同一の又は対応する要素には同一の参照符号を付して詳細な説明の重複を省略する。車長方向は前後方向と対応し、車幅方向は左右方向と対応する。車幅方向外側とは、車両の車幅中心線から遠い側であり、車幅方向の内側とは、車両の車幅中心線に近い側である。図中の×印は、スポット溶接による接合点を示す。
【0044】
(第1実施形態)
図1は、実施形態に係るサイドシル100が適用された車両1の車体2を示す。車両1は、走行用の動力源としての電気モータ(不図示)と、動力源の電源としてのバッテリ3とを備えた電気自動車又はハイブリッド車である。車体2は、車幅方向の両側下部で車長方向に延びる一対のサイドシル100を備えている。一対のサイドシル100は、左右対称である。バッテリ3は、低背直方体状の筐体に収容され、一対のサイドシル100の間に配置され、一対のサイドシル100に支持される。側突の発生による衝突エネルギーが車両1に入力された場合には、サイドシル100がこの衝撃を吸収し、それによりバッテリ3が保護される。
【0045】
図2及び図3Aを参照して、サイドシル100は、サイドシル本体101及びエネルギー吸収構造体102を備える。サイドシル本体101は、車長方向に延びる。エネルギー吸収構造体102は、サイドシル本体101の内部に設けられる。エネルギー吸収構造体102は、車長方向に間隔をあけて並んだ複数の中空部103を形成する。各中空部103は、サイドシル本体101の内部で車幅方向に延びる。
【0046】
図2を参照して、サイドシル本体101は、車幅方向外側で上下方向に延びる外側壁111と、車幅方向内側で上下方向に延びる内側壁112と、外側壁111及び内側壁112の上端同士を車幅方向に接続する上壁113と、外側壁111及び内側壁112の下端同士を車幅方向に接続する下壁114とを有する。サイドシル本体101は、車長方向から見て略長方形状の閉断面を有し、4つの壁111~114が、サイドシル本体101の内部空間を画定する。サイドシル本体101は、上壁113の車幅方向中央部から上方に延びる上フランジ115と、下壁114の車幅方向中央部から下方に延びる下フランジ116とを更に有する。
【0047】
サイドシル本体101は、主として、外サイドシル117及び内サイドシル118の2つの部品からなる。外サイドシル117及び内サイドシル118はどちらも、鋼などの鉄系金属材料で成形され、ハット形の断面を有する。
【0048】
外サイドシル117は、外側壁111としてのウェブ部、ウェブ部の上下両端からそれぞれ車幅方向内側に延びる外側上壁117a及び外側下壁117b、外側上壁117aの内端から上方に延びる外上フランジ117c、及び外側下壁117bの内端から下方に延びる外下フランジ117dを有する。外サイドシル117は、外側壁111、外側上壁117a、及び外側下壁117bによって画定される空間117eを形成する。
【0049】
これと同様にして、内サイドシル118は、内側壁112としてのウェブ部、ウェブ部の上下両端からそれぞれ車幅方向外側に延びる内側上壁118a及び内側下壁118b、内側上壁118aの外端から上方に延びる内上フランジ118c、及び内側下壁118bの外端から下方に延びる内下フランジ118dを有する。内サイドシル118は、内側壁112、内側上壁118a、及び内側下壁118bによって画定される空間118eを形成する。
【0050】
内外の上フランジ117c,118cが車幅方向に重ね合わされてスポット溶接され、内外の下フランジ117d,118dが車幅方向に重ね合わされてスポット溶接される。なお、上下どちらのスポット溶接に関しても、複数の接合点が車長方向に間隔をおいて設定される。内外の上壁117a,118aが、サイドシル本体101の全体としての上壁113を構成し、内外の下壁117b,118bが、サイドシル本体101の全体としての下壁114を構成する。内外の上フランジ117c,118cが、サイドシル本体101の全体としての上フランジ115を構成し、内外の下フランジ117d,118dが、サイドシル本体101の全体としての下フランジ116を構成する。内外の空間116e,117eが車幅方向に連なり、それにより、サイドシル本体101に上記の内部空間がもたらされる。
【0051】
図2を参照して、エネルギー吸収構造体102は、ベース部品121、アウタパッチ122、及びインナパッチ123を有する。
【0052】
ベース部品121は、単体のブランク板130(図4を参照)から形成され、車長方向に延びている。ベース部品121あるいはそのブランク板130は、サイドシル本体101と同種の金属材料(すなわち、鉄系金属材料)で成形され、全体にわたって一様な板厚を有している。アウタパッチ122及びインナパッチ123は、サイドシル本体101の内面とベース部品102との間に介在する。アウタパッチ122及びインナパッチ123は、車長方向においてサイドシル本体101と略同じ長さを有している。
【0053】
図2図3A及び図3Bを参照して、本実施形態に係るベース部品121は、複数の貫通孔131、第1縦板部132、第2縦板部133、複数の横板部134、複数のフランジ体135、及び複数のタブ部136を有する。
【0054】
複数の貫通孔131は、車長方向に並べられている。第1縦板部132は、貫通孔131に対して車幅方向外側で車長方向に延びる。第2縦板部133は、貫通孔131に対して車幅方向内側で車長方向に延びる。複数の横板部134は、車長方向に並べられている。各横板部134は、第1縦板部132から車幅方向に延び、第2縦板部133と連続する。横板部134には、1以上(貫通孔131の個数より1少ない数)の中間横板部134a、前端横板部134b、及び後端横板部134cが含まれる。各中間横板部134aは、複数の貫通孔131のうち隣接する2つの間に配置される。前端横板部134bは、前末端の貫通孔131fの前に配置され、縦板部132,133の前端同士を接続する。後端横板部134cは、後末端の貫通孔131rの後に配置され、縦板部132,133の後端同士を接続する。このように、ベース部品121は、全体として矩形枠状且つ梯子状に形成されている。
【0055】
第1縦板部132及び第2縦板部133の板厚方向は、車幅方向に向けられている。換言すれば、第1縦板部132及び第2縦板部133は、外側壁111及び内側壁112と平行に延びる。横板部134の板厚方向は、上下方向に向けられている。第1縦板部132及び第2縦板部133は、横板部134の両端部それぞれから上下方向に(本実施形態では、一例として下方)に延びている。
【0056】
図4及び図5を参照して、このような構造を有するベース部品121の成形方法について説明する。図4は、ブランク板130の平面図である。図4において、ハッチングは、穴開け加工(ピアシング)によりブランク板130から取り除かれる領域を示し、二点鎖線及び破線は、ピアシング後の曲げ加工における折曲線を示す。ブランク板130は、ベース部品121の素材であり、一様な板厚を有する板金材である。ブランク板130は、平面視で長方形状である。ブランク板130の長手方向は、ベース部品121がサイドシル100の一部となり車体2に組み込まれた状態において、車長方向に向けられる。
【0057】
まず、ブランク板130に穴開け加工(ピアシング)が施され、複数の初期貫通孔130aが形成される。形成されるべき初期貫通孔130aの個数は、完成状態における貫通孔131の個数と同数であり、ブランク板130の長手方向(車長方向と対応)に間隔をあけて形成される。
【0058】
穴開け加工では、ブランク板130に上からダイ(不図示)を押し付ける。それにより、初期貫通孔130aが形成され、ダイの輪郭が初期貫通孔130aのエッジとして転写される。このとき、ブランク板130をその長手方向に沿って間欠的に搬送し、ブランク板130の停止中にダイを昇降させるという、一連の処理が規定回数繰り返され、それにより規定個数(例えば、5個)の初期貫通孔130aが形成される。これにより、複数の初期貫通孔130aを1回の昇降動作で一斉に形成する場合と対比して、穴開け加工機のサイズを小型化でき、また、ダイに付与されるべき駆動力を軽減できる。
【0059】
なお、初期貫通孔130aは、後末端のものと、前末端のものと、中間のものとで平面視の形状が互いに異なる。中間の初期貫通孔130aは、後末端の形状と前末端の形状とを車長方向に連ねた形状となっている。そこで、ダイは、少なくとも後末端の形状に適合するものと、前末端の形状に適合するものとの2つが準備され、これら少なくとも2つのダイが、互いに独立して昇降可能に構成される。
【0060】
次に、隣接する2つの初期貫通孔130aの間で1つの横板部134が残るようにして、横板部134からフランジ体135を上方へ切り起こす。これにより、複数のフランジ体135が、複数の横板部134と一対一で対応して設けられ、車長方向に並べられる。
【0061】
本実施形態では、横板部134の前後両側で切り起こし加工が施される。各フランジ体135が、対応する横板部134の前縁部から上方へ切り起こされて延びる前フランジ部135Fと、対応する横板部134の後縁部から上方へ切り起こされて延びる後フランジ部135Rとで構成されている。横板部134の前縁部及び後縁部は、車長方向に傾斜することなく、車幅方向に平行に延びる。
【0062】
このように、フランジ体135の形成のために切り起こし加工が施されることにより、初期貫通孔130aは車長方向に広がる。これにより、適用状態のベース部品121には、穴開け加工時と比べて大きな貫通孔131が設けられる。
【0063】
前フランジ部135F及び後フランジ部135Rは、上下方向に対して車長方向に傾斜しつつ、横板部134から上方へ延びる。前フランジ部135Fと後フランジ部135Rとは、車幅方向から見て前後対称である。前フランジ部135F及び後フランジ部135Rは、上方に向かうにつれて車長方向において互いに離れるように傾斜している。前フランジ部135Fは、前方に傾斜しており、後フランジ部135Rは、後方に傾斜している。
【0064】
前フランジ部135Fは、車幅方向外側の部位に、車幅方向内側の部位に対して上方へ突出した突出部135aを有している。後フランジ部135Rについても、これと同様である。次に、突出部135aの先端部に曲げ加工が施され、フランジ体135の上端部にタブ部136が設けられる。本実施形態では、タブ部136には、前フランジ部135Fの上端部に設けられた前タブ部136Fと、後フランジ部135Rの上端部に設けられた後タブ部136Rとが含まれる。
【0065】
タブ部136の上面は、サイドシル本体101の上壁111の内面と平行に配置される(図2を参照)。ここで、上壁111のうち、外側上壁117a及びその内面は、車幅方向外側に向かうにつれて下向きに傾斜している。上記のとおり、突出部135aは、相対的に車幅方向外側の部位に形成され、これに付随して、タブ部136も、ベース部品121のなかでも車幅方向外側の部分に設けられる。タブ部136は、後述のとおり、上壁111のうち外側上壁117aの内面に支持される。
【0066】
前フランジ部135Fは、車長方向に傾斜することなく車幅方向に延びる横板部134の前縁部から上方に切り起こされる一方、タブ部136は、下傾された外側上壁117aの内面と平行である。このため、ブランク板130の平面視において、タブ部136を創生するための折曲線が、車幅方向外側から内側に向かうにつれて車長方向外側(前フランジ部135Fにとっては前側、後フランジ部135Rにとっては後側)に傾斜する。そのため、タブ部136として形成されるべき部位がベース部品121の車幅方向全体にわたれば、その分、初期貫通孔130aを車長方向に広げる必要があり、横板部134及びフランジ体135の形成可能数が減少する。そこで、突出部135a及びタブ部136が、車幅方向外側の部位に限定的に形成される。それにより、フランジ体135の高さを稼ぐことと、タブ部136を傾斜した外側上壁117aの内面と平行に配置することと、横板部134及びフランジ体135の形成可能数を確保することとを達成できる。
【0067】
アウタパッチ122及びインナパッチ123はどちらも、サイドシル本体101及びベース部品121と同種の金属材料で成形される。アウタパッチ122及びインナパッチ123は、車長方向から見てL状であり、板厚の小さいシート状である。
【0068】
アウタパッチ122は、フランジ体135の上部を覆う上カバー部151と、上カバー部151の車幅方向外端縁から下方に延びてフランジ体135の側部を覆う側カバー部152とを有する。上カバー部151は、外側上壁117aの内面及びタブ部136の上面と平行であり、外側上壁117aとフランジ体135との間に介在する。側カバー部152は、外側壁111の内面(及び第1縦板部132の側面)と平行であり、第1縦壁部132の上方で外側壁111の内面に重ねられる。インナパッチ123は、内側上壁118aの内面に接合される上カバー部156と、上カバー部156の車幅方向内端縁から下方に延びて内側壁112の内面に接合される側カバー部157とを有する。
【0069】
サイドシル100を組み立てるに際しては、まず、上記のとおり、単体のブランク板130に所要のプレス加工を施すことによって、単品としてのベース部品121が準備される。このベース部品121に、アウタパッチ122が接合される。上カバー部151がベース部品121を上から覆うと共に側カバー部152がベース部品121を車幅方向外側から覆う姿勢で、アウタパッチ122がベース部品121に設けられる。各タブ部136が、上カバー部151に重ね合わされている状態で、上カバー部151とスポット溶接される。複数の接合点が、車長方向に間隔をおいて設定される。
【0070】
このベース部品121及びアウタパッチ122を含む組立体が、外サイドシル117の内空間117eに収容される。第1縦板部132及び側カバー部152が、外側壁111の内面に突き当てられ、タブ部136及びその上側の上カバー部151が、外側上壁117aの内面に突き当てられる。この姿勢において、外サイドシル117が、ベース部品121及びアウタパッチ122と接合される。この接合にも、スポット溶接が適用される。それにより、フランジ体135が、外側上壁117aの内面に支持された状態となる。
【0071】
外側壁111は、側カバー部152及び第1縦板部131それぞれとスポット溶接され、外側上壁117aは、上カバー部151及びタブ部136とスポット溶接される。どちらのスポット溶接においても、複数の接合点が、車長方向に間隔をおいて設定される。
【0072】
次に、インナパッチ123を内サイドシル118に接合し、内サイドシル118を外サイドシル117に接合する。このとき、ベース部品121の車幅方向内側の部位は、外サイドシル117の外側上フランジ部117c及び外側下フランジ部117dに対し、車幅方向内側へ突出している。この突出している部位が、内サイドシル118の内空間118eに受容される。第2縦板部133が内側壁112の内面に突き当てられると共に、内側上フランジ部118cが外側上フランジ部117cに重ね合わされ、内側下フランジ部118dが外側下フランジ部117dに重ね合わされる。
【0073】
次いで、第2縦板部133が、内側壁112に接合される。この接合は、必ずしも冶金的接合である必要はなく、図示のとおり接着剤127が使用されてもよい。そして、上フランジ部117c,118c同士が溶接されると共に、下フランジ部117d,118d同士が溶接される。これにより、サイドシル100が完成する。
【0074】
上記のサイドシル100は、車長方向に延びるサイドシル本体101と、それぞれサイドシル本体101の内部で車幅方向に延び、車長方向に並べられた複数の中空部103を形成するエネルギー吸収構造体102と、を備える。サイドシル本体101が、車幅方向の外側の外側壁111と、車幅方向の内側の内側壁112と、外側壁111及び内側壁112の上端同士を車幅方向に接続する上壁113と、を有する。エネルギー吸収構造体102が、単体のブランク板130から形成されたベース部品121を有する。ベース部品121が、車長方向に並ぶ複数の貫通孔131と、複数の貫通孔131に対して車幅方向の外側で車長方向に延び、外側壁111の内面に接合される第1縦板部132と、それぞれ第1縦板部132から複数の貫通孔131のうち隣接する2つの間で車幅方向に延び、車長方向に並ぶ複数の横板部134と、複数の横板部134それぞれから上方へ切り起こされて上壁113の内面に支持され、車長方向に並ぶ複数のフランジ体135と、を有する。
【0075】
このように、複数の中空部103を形成するエネルギー吸収構造体102が、単体のブランク板130から形成されるベース部品121を有する。このベース部品121は、サイドシル本体101の外側壁111に接合されて車長方向に延びる第1縦板部132を有する。複数のフランジ体135が、複数の横板部134を介して第1縦板部132に連続的に設けられる。各フランジ体135は、横板部134及び第1縦板部132から見て上方へ延び、サイドシル本体101の上壁113の内面に支持される。すると、フランジ体135、横板部134、及び上壁113が、サイドシル本体101の内部で車幅方向に延びる中空部103を画定する。複数のフランジ体135及び複数の横板部134の組は、複数の貫通孔131と車長方向に交互に並べられており、そのため、複数の中空部103が車長方向に間隔をあけて並べられることとなる。
【0076】
すると、側突の発生により衝撃がサイドシル本体101の外側壁111の外面に入力された場合に、その衝撃がエネルギー吸収構造体102によって良好に吸収される。衝撃が入力される外側壁111が第1縦板部132と接合されるため、衝撃がベース部品121ひいては中空部103を構成する構造体に流れやすく、衝撃を当該構造体で吸収しやすい。このようなエネルギー吸収構造体102が、主として、単品のベース部品121によって構成されている。中空部103が互いに独立して構成される場合と対比して、部品点数及び組立工数を削減できる。複数の中空部103同士の間には、貫通孔131が形成されている。車長方向に延びるベース部品121を使用して部品点数の削減を図りつつ、エネルギー吸収構造体103ひいてはサイドシル構造101の重量増加を抑制できる。
【0077】
ベース部品121は、サイドシル本体101と同種の金属材料、特に鉄系金属材料で成形される。すると、例えば抵抗溶接のように、作業効率が高い手法を使用してベース部品121をサイドシル本体101に接合できる。したがって、サイドシル100を容易に製造できる。
【0078】
ベース部品121が、第2縦板部133を更に有する。第2縦板部133は、複数の貫通孔131に対して車幅方向内側で車長方向に延び、複数の横板部134と連続し、内側壁112の内面に支持される。これにより、複数の横板部134が、片持ち梁状ではなく、第1縦板部132と第2縦板部133との両方により支持され、ベース部品121の剛性が向上する。また、ベース部品121が、外側壁111と内側壁112とにより車幅方向に挟まれた状態で、サイドシル本体101に安定的に支持される。
【0079】
第1縦板部132の板厚方向は、車幅方向に向けられ、第1縦板部132は、外側壁111の内面と平行である。そのため、第1縦壁部132のサイドシル本体101に対する接合強度が向上する。第2縦板部133の板厚方向も、車幅方向に向けられ、第2縦板部133は、内側壁112の内面と平行である。そのため、ベース部品121のサイドシル本体101に対する接合強度が向上する。
【0080】
フランジ体135の上端部に、タブ部136が設けられており、タブ部136の上面が、上壁113の内面と平行に配置されて当該内面に支持されている。これにより、フランジ体135がタブ部136を介して上壁113に安定的に支持される。
【0081】
フランジ体135の各々が、対応する横板部134の前縁部から上方へ延びる前フランジ部135Fと、対応する横板部134の後縁部から上方へ延びる後フランジ部135Rとで構成されている。各筒構造103が、横板部134と、上壁113と、横板部134及び上壁113を上下に繋ぐ一対のフランジ部135F,135Rとによって画定される。各筒構造103が、車幅方向から見て閉断面を形成するため、各筒構造103において高い衝撃吸収性能が得られる。なお、この構成において、タブ部136は、前フランジ部135Fの上端部に設けられた前タブ部136Fと、後フランジ部135Rの上端部に設けられた後タブ部136Rとを含んでいる。そのため、一対のフランジ部135F,135Rはどちらも、上壁113に安定的に支持される。
【0082】
前フランジ部135F及び後フランジ部135Rは、上方に向かうにつれて車長方向において互いに離れるように傾斜している。横板部134が車長方向において大きくなくても、中空部103及びこれを構成する構造体の断面積が広くなる。そのため、各構造体103において高い強度もしくは衝撃吸収性能が得られる。
【0083】
エネルギー吸収構造体102が、フランジ体135の上部を覆う上カバー部151と、上カバー部151の側端縁から下方に延びてフランジ体135の側部を車幅方向に覆う側カバー部152と、を有するアウタパッチ122を更に有する。側カバー部152が、外側壁111に溶接されており、上カバー部151が、上壁113に溶接されている。これにより、第1縦壁部132の外側壁111に対する接合強度が向上し、また、フランジ体135が上壁113に対して上下方向に接合される。ベース部品121が、サイドシル本体101に対して車幅方向及び上下方向に接合されることから、エネルギー吸収構造体102のサイドシル本体101に対する接合強度が向上する。
【0084】
中空部103は、間隔をあけて配置される。そのため、強度が過剰となることを防止し、サイドシル101の軽量化が図られる。一対のフランジ部135F,135Rは、切り起こしによって形成され、各中空部103を画定する。そのため、隣接する2つの中空部103の間には、大きな貫通孔131が形成される。貫通穴131は、少なくとも初期貫通孔130aに対し、フランジ部135及びタブ部136の表面積だけ大きい。そのため、車長方向に長尺のベース部品121を使用して複数の筒構造103を設けるに際し、ベース部品121の重量増加を抑制できる。
【0085】
(第2実施形態)
次に、図6図8を参照して、上記実施形態との相違を中心に、第2実施形態に係るサイドシル200について説明する。サイドシル本体101及びベース部品121は、第1実施形態のものと同様である。エネルギー吸収構造体202が、複数のフランジ体135それぞれに接合される複数の補強部品224を更に有する点で、本実施形態は第1実施形態と相違する。
【0086】
各補強部品224は、車幅方向から見てハット形断面を有する。補強部品224は、ベース部品121と同種の金属材料(例えば、鉄系金属材料)で成形されている。補強部品224は、ウェブ部261、前壁部262、及び後壁部263を有する。前壁部262は、前フランジ部135Fの外面(前面)に接合される。後壁部263は、後フランジ部135Rの外面(後面)に接合される。どちらの接合においても、スポット溶接が使用され、1以上(例えば、2つ)の接合点が車幅方向に間隔をおいて設定される。
【0087】
前壁部262は、前フランジ部135Fの前方に隣接する貫通孔131を通過して上下方向に延びる。後壁部263は、後フランジ部135Rの後方に隣接する貫通孔131を通過して上下方向に延びる。前壁部262及び後壁部263の下端はどちらも、横板部134よりも下方に位置付けられる。ウェブ部261は、横板部134よりも下方で、前壁部262及び後壁部263の下端同士を車長方向に接続する。
【0088】
ウェブ部261の車長方向中央部には、ウェブ部261(特に、そのうち前壁部262及び後壁部263と接続される端部)に対して上方に突出して車幅方向に延びる底上げ部264が設けられている。底上げ部264の上面は、横板部134の下面に面接触される。底上げ部254は、横板部134に溶接されていてもよい。溶接する場合には、スポット溶接を好適に適用可能であり、1以上の接合点(例えば、1つ)が、横板部134の車長方向の中心に沿って設けられる。
【0089】
エネルギー吸収構造体102が、フランジ体135に接合される補強部品224を更に有する。補強部品224の追加により、中空部203には、フランジ体135の下方で補強部品224によって画定される閉断面が追加される。そのため、エネルギー吸収構造体202の衝撃吸収性能が向上する。ウェブ部261に底上げ部264を設けているため、補強部品224の剛性が向上する。底上げ部264を横板部134に溶接することで、補強部品224が車長方向のみならず上下方向にもベース部品121と接合される。補強部品224のベース部品121への接合強度が向上し、筒構造203において高い衝撃吸収性能が得られる。
【0090】
(第3実施形態)
次に、図9図11を参照して、上記実施形態との相違を中心に、第3実施形態に係るサイドシル300について説明する。サイドシル本体101は、第1及び第2実施形態のものと同様である。ベース部品321及び補強部品324の構造が、下記のとおり上記実施形態のいずれのものとも相違する。これにより、中空部303の形状が上記実施形態のいずれのものとも相違する。
【0091】
ベース部品321は、複数の横板部134の少なくとも1つに上方又は下方に突出して車幅方向に延びる1以上のビード部337を有している。この点を除き、ベース部品321は、第1実施形態及び第2実施形態のものと同様にして、貫通穴131、第1縦板部132、第2縦板部133、横板部134、フランジ部135、及びタブ部136を有する。
【0092】
本実施形態では、複数のビード部337が、複数の横板部134それぞれに一対一で対応して設けられている。各ビード部337は、対応する横板部134の車長方向中央部において上方に突出し、車幅方向に直線的に延びている。
【0093】
補強部品324は、第2実施形態と同様にして、ウェブ部261、前壁部262、及び後壁部263を有する一方で、第2実施形態のような底上げ部264を有さない。代わりに、本実施形態に係る補強部品324は、複数のタブ部365を有している。
【0094】
複数のタブ部365は、前壁部262の車幅方向外端縁から車長方向に突出する外前タブ部365Fa、後壁部263の車幅方向外端縁から車長方向に突出する外後タブ部365Raを含む。外前タブ部365Fa及び外後タブ部365Raは、車長方向において互いに離れる側へ突出する。前壁部262及び後壁部263の車幅方向内端縁それぞれにも、これと同様にして、内前タブ部365Fb及び内後タブ部365Rbが設けられる。
【0095】
タブ部365の板厚方向は、車幅方向に向けられる。外前タブ部365Fa及び外後タブ部365Raは、第1縦板部132の内面に重ねられ、第1縦板部132と共に外側壁111に溶接される。内前タブ部365Ra及び内後タブ部365Rbは、第2縦板部133の内面に重ねられ、第2縦板部132に接合される。第2縦板部132が内側壁112に溶接される場合には、これら内前タブ部365Ra及び内後タブ部365Rbも同時的に内側壁112に溶接されていてもよい。
【0096】
このように、複数の横板部134の少なくとも1つにビード部337を設けたことにより、横板部134の剛性が向上する。補強部品324にタブ部365を設けたことにより、補強部品324のベース部品321への接合強度が向上する。それにより、ベース部品321のサイドシル本体101への接合強度が向上する。
【0097】
(第4実施形態)
次に、図12図14を参照して、上記実施形態との相違を中心に、第4実施形態に係るサイドシル400について説明する。サイドシル本体101は、第1~第3実施形態のものと同様である。ベース部品421及び補強部品424の構造が、下記のとおり、上記実施形態のいずれのものとも相違する。これにより、中空部403の形状が上記実施形態のいずれのものとも相違する。
【0098】
ベース部品421のフランジ体435は、横板部134に連続する下端と、サイドシル本体101の上壁113の内面に到達する上端との間に、1以上の折曲げ部440を有する。本実施形態では、フランジ体435が、上記実施形態と同様にして、前フランジ部435F及び後フランジ部435Rを有している。各フランジ部435F,435Rが、上端と下端との間に折曲げ部440F,440Rを1つずつ有する。
【0099】
前フランジ部435Fは、下端から上方に延びる第1起立部441と、第1起立部441の上端から第1起立部441の延在方向に対し傾斜しながら上方へ延びる第2起立部442とを有する。第1起立部441の下端は、折曲げ部440において第2起立部442の上端と連続する。第1起立部441は、上に向かうほど車長方向の外側(前フランジ部435Fにおいては前側)に向かうようにして傾斜して延びている。第2起立部442は、第1起立部441よりも上下方向に対する車長方向への傾斜が小さい。このように、第1起立部441と第2起立部442との勾配の相違に起因して、折曲げ部440が角張るように形成される。
【0100】
本実施形態においても、前フランジ部435Fと後フランジ部435Rとは、前後対称である。後フランジ部435Rも、前フランジ部435Fと同様に、第1起立部441及び第2起立部442を有する。タブ部135F,136Fは、第2起立部442の上端部に設けられており、上記実施形態と同様にして上壁113に接合される。
【0101】
これにより、本実施形態では、中空部403の各々が、横板部134、前フランジ部435Fの第1起立部441、前フランジ部435Fの第2起立部442、後フランジ部435Rの第1起立部441、後フランジ部435Rの第2起立部442、及び上壁113によって画定される。各中空部403が、車幅方向から見て六角形状の断面を有する。
【0102】
このように、フランジ体435に折曲げ部440を設けたことにより、外側壁111に衝撃が入力されると、その衝撃が、折曲げ部440によって区別された複数の起立部441,442を介して車幅方向内側へ流れていく。このため、筒構造403において、衝撃吸収性能が向上する。また、前フランジ部435F及び後フランジ部435Rが折曲げ部440を1つずつ有することにより、各中空部403の断面形状が六角形状となり、高い衝撃吸収性能あるいは強度が得られる。
【0103】
補強部品424は、基本的には、第2実施形態のものと同様である。前側壁462は、前フランジ部435Fの第1起立部441及び第2起立部442のうち、第2起立部442の外面に重ね合わせられて第2起立部442に接合されている。第2起立部442は、第1起立部441よりも上方にあり、その延在方向が第1起立部441よりも上下方向に近い。このような第2起立部442に接合されるため、本実施形態に係る前側壁462は、第2実施形態のものよりも上下方向に長い。後側壁463も、これと同様である。これにより、補強部品424のウェブ部261の幅(車長方向の長さ)を広く維持することができ、補強部品424の強度を維持できる。
【0104】
(第5実施形態)
次に、図15図17を参照して、上記実施形態との相違を中心に、第5実施形態に係るサイドシル500について説明する。サイドシル本体101は、第1~第4実施形態のものと同様である。エネルギー吸収構造体502が、第2~第4実施形態のような補強部品に代えて、筒状部品525を有する点で、本実施形態は、上記実施形態のいずれとも異なる。ベース部品524は、第1実施形態のものと類似しているものの、上記実施形態のいずれのものとも異なり、筒状部品525の取付のための構造が付加されている。これにより、中空部503の形状が上記実施形態のいずれとも異なる。
【0105】
第1実施形態と同様に、ベース部品521は、複数の横板部134と、これらそれぞれに対応する複数のフランジ体135とを有し、各フランジ体135は、前フランジ部135F及び後フランジ部135Rで構成され、前フランジ135F及び後フランジ部135Rの各々は、第1~第3実施形態と同様に、折曲げ部を有さない。
【0106】
複数の筒状部品525は、複数のフランジ体135それぞれに一対一で対応して設けられている。各筒状部品525は、車幅方向に延びる状態でフランジ体135に保持される。各筒状部品525は、車幅方向から見て閉断面を有する。
【0107】
本実施形態では、単なる一例として、筒状部品525の断面形状が六角形状である。筒状部品525は、底壁571、底壁571の車長方向両縁部それぞれから上方へ延びる一対の下側壁573F,573R、一対の下側壁573F,573Rの上端から連続して上方へ延びる一対の上側壁574F,574R、及び一対の上側壁574F,574Rの上端同士を車長方向に接続する上壁572を有する。底壁571は、横板部134と平行に配置され、横板部134上に支持される。一対の下側壁573F,573Rは、底壁571が横板部134上に平行に支持されている状態で、一対のフランジ部135F,135Rそれぞれと平行である。一対の下側壁574F,574Rは、一対のフランジ部135F,135Rの内面側で一対のフランジ部135F,135Rに沿って延びている。
【0108】
ベース部品521(及びそのブランク板)は、サイドシル本体101と同種の金属材料で成形される一方、筒状部品525は、サイドシル本体101及びベース部品521とは異種の金属材料で成形される。本実施形態では、ベース部品521及びサイドシル本体101が、鉄系金属材料で成形されるのに対し、筒状部品525は、非鉄金属材料、特にアルミニウム合金やマグネシウム合金等の軽金属で成形される。
【0109】
筒状部品525のベース部品521又はサイドシル本体101への接触面積が大きいと、その分、電蝕により筒状部品525の損耗が早まる。また、材料が異なることから、筒状部品525のベース部品521又はサイドシル本体101との接合に、溶接等の冶金的接合を適用することは困難である。
【0110】
そこで、筒状部品525の底壁571には、局所的に下方に突出した下リッジ部575が設けられる。下リッジ部575は、車幅方向から見て下に凸であり、横板部134の上面に車長方向に延びる直線に沿って線接触する(車幅方向に見た断面内では下リッジ部575が横板部134に一点で接触するよう描画される)。本実施形態では、2つの下リッジ部575が、底壁571の車長方向両端部それぞれに設けられている。そのため、底壁571の下面の大部分が、横板部134の上面から上方に離れている。
【0111】
筒状部品525の前側の下側壁573Fには、局所的に車長方向外側(前側)に突出した側リッジ部576Fが設けられる。側リッジ部573Fは、車幅方向から見て前に凸であり、前フランジ部135Fの内面に車長方向に延びる直線に沿って線接触する。本実施形態では、2つの側リッジ部576Fが、前側の下側壁573Fの上端部及び下端部それぞれに設けられている。そのため、下側壁573Fの外面(前面)の大部分が、前フランジ部135Fの内面(後面)から後方に離れている。これと同様にして、後側の下側壁573Rにも、局所的に車長方向外側(後側)に突出した側リッジ部576Rが設けられている。
【0112】
このように、筒状部品525のうち、フランジ体135による保持のためにベース部品521で取り込まれる部位の大部分が、リッジ部575,576F,576Rにより、ベース部品521と直接的に接触しない。したがって、筒状部品525にベース部品521とは異種の材料を使用しても、筒状部品525の電蝕を回避できる。
【0113】
各筒状部品525は、締結構造526を使用して、対応する横板部134に機械的に接合される。横板部134には、上下方向に貫通されたボルト挿通孔538が形成されている。締結構造526は、ボルト526a及びナット526bで構成される。ボルト526aは、図示のように、筒状部品525の内部から下向きに挿通され、横板部134の下面側に設置されたナット526bに螺合されてもよい。筒状部品525も、ボルト526aが挿通される貫通孔を有し、ボルト526aと筒状部品525との直接的な接触を避けるため、樹脂製のカラー526cが貫通孔577内に設けられていてもよい。ボルト526aは、横板部134の下面側から上向きに挿通されてもよく、その場合、ナット526bは、筒状部品525の内部に設置される。
【0114】
また、筒状部品525がフランジ体135に嵌め込まれるに先立ち、フランジ体135の内面(前フランジ部135Fの後面及び後フランジ部135Rの前面)に接着剤527が塗布される。側リッジ部576F,576Rは、接着剤527を介してフランジ体435に機械的に接合される。接着剤527は、筒状部品525とベース部品521との接合のみならず、筒状部品525とベース部品521との間の電気的絶縁の役割を果たす。筒状部品521の電蝕の防止と筒状部品525のベース部品521に対する接合強度の向上とを実現できる。更に、接着剤527を予め多量に塗布しておくことで、接着剤527の余剰部527aが筒状部品525とベース部品521との間のクリアランスの上開口から漏出して固化し、当該クリアランスを封止する。水等の異物がクリアランスに侵入することを阻止でき、エネルギー吸収構造体502の寿命が長くなる。
【0115】
このように、エネルギー吸収構造体502に筒状部品525を設けることで、中空部503に筒状部品525によって画定される閉断面が追加され、エネルギー吸収構造体502において高い衝撃吸収性能が得られる。また、筒状部品525とベース部品521との接合に機械的接合を適用しているため、筒状部品525の材料としてサイドシル本体101及びベース部品521とは異種の金属材料を選択することが許容される。
【0116】
(第6実施形態)
次に、図18図20を参照して、上記実施形態との相違を中心に、第6実施形態に係るサイドシル600について説明する。サイドシル本体101は、第1~第5実施形態のものと同様である。本実施形態に係るエネルギー吸収構造体602は、補強部品ではなく筒状部品525を備える点で、第5実施形態と類似している。ただし、上記実施形態のいずれとも異なり、本実施形態に係るベース部材602には、タブ部636が、フランジ体635の上端部ではなく、車幅方向両端部に設けられ、フランジ体635がサイドシル本体101の上壁113に到達していない。これにより、中空部603の形状が上記実施形態のいずれとも異なる。
【0117】
ベース部材621は、第5実施形態と同様にして、複数の貫通孔131、第1縦板部132、第2縦板部133、複数の横板部134、及び複数のフランジ体635を有し、各フランジ体635の前フランジ部635F及び後フランジ部635Rは、折曲げ部を有さない。タブ部636は、前フランジ635Fの車幅方向外端縁及び内端縁それぞれから前方に突出する外前タブ部636Fa及び内前タブ部636Fbと、後フランジ部135Rの車幅方向外端縁及び内端縁それぞれから後方に突出する外後タブ部636Ra及び内後タブ部636Rbとを含む。
【0118】
前フランジ部635F及び後フランジ部635Rは、上記実施形態のいずれとも異なり、サイドシル本体101の上壁113の内面にまで到達せず、サイドシル本体101の上壁113よりも下方で終端する。代わりに、前フランジ部635F及び後フランジ部635Rの上端部には、前後一対の係合片639F,639Rが設けられている。係合片639F,639Rは、一対のフランジ部635F,635Rの上端それぞれから車長方向に互いに向き合う側に延びる。
【0119】
他方、筒状部品625は、第5実施形態と同様にして、底壁571、上壁572、一対の下側壁573F,573R、一対の上側壁674F,674R、下リッジ部575、及び側リッジ部576F,576Rを有する。一対の上側壁674F,674Rには、一対の下側壁573の上端と車長方向端部との間で、上下方向に段差が付いている。各上側壁674F,674Rは、下側壁673F,673Rから上方且つ車長方向内側へ延びる下段差壁674aと、下段差壁674aの上端から上方へ延びる蹴上部674bと、蹴上部674bの上端から上方且つ車長方向内側へ延びて上壁572に接続される上段差壁674cと、を有する。上段差壁674cは、蹴上部674bに対して車長方向外側へ延びる延長部678を有する。延長部678は、上側壁674F,674Rよりも車長方向外側へ突出している。下段差壁674a、蹴上部674b、及び延長部678により、車幅方向両端に開口して車幅方向に延びて車幅方向両端で開口されるスリット679が画定される。延長部678の先端部は下方へ屈曲されており、スリット679の車長方向外側は、この先端部で覆われる。
【0120】
筒状部品625をベース部品621に取り付ける際には、筒状部品625を一対のフランジ部635F,635Rの間に車幅方向に挿入する。このとき、係合片639F,639Rがスリット679内に受容され、一対の下側壁573F,573Rが一対のフランジ部635の内面と近接し、底壁571が横板部134の上面と近接する。係合片639F,639Rが上側壁674F,674Rに直接的に接触するのを避けるため、スリット679内には予め接着剤627が充填される。これにより、第5実施形態のように締結構造を用いなくても、接着剤627の接着力と、係合片639のスリット679への引掛りにより、筒状部品625をベース部品621に強固に機械的に接合できる。更に、接着剤627を予め多量に塗布しておくことで、第5実施形態と同様にして、接着剤627の余剰部627aによる封止効果が得られる。
【0121】
(変形例)
これまで、実施形態について説明したが、上記構成は、本発明の範囲内で適宜追加、変更、及び/又は削除可能である。
【0122】
フランジ体が、前後一対のフランジ部で構成されているが、フランジ体は、1つのフランジ部で構成されていてもよい。複数の横板部が、第1縦板部及び第2縦板部に接続されているが、第2縦板部は省略可能である。第1縦板部は、側突発生時の衝撃が入力される外側壁に接合される部分であるため、複数の横板部を第1縦板部と第2縦板部のいずれかを介して一体化する場合には、第1縦板部を残して第1縦板部を外側壁に接合すると、エネルギー吸収構造体においてより高い衝撃吸収性能が得られる。
【0123】
第3実施形態及び第4実施形態において、補強部品が省略されてもよい。第5実施形態及び第6実施形態において、筒状部品が省略されてもよい。ベース部材には、補強部品と筒状部品との両方が取り付けられていてもよい
【0124】
補強部品には、第2実施形態及び第4実施形態において例示された底上げ部と、第3実施形態において例示されたタブ部との両方が設けられていてもよい。また、補強部品には、この両方が設けられていなくてもよい。
【符号の説明】
【0125】
1 車両
2 車体
3 バッテリ
100,200,300,400,500,600 サイドシル
101 サイドシル本体
102,202,302,402,502,602 エネルギー吸収構造体
111 外側壁
112 内側壁
113 上壁
114 下壁
115 上フランジ
116 下フランジ
117 外サイドシル
117a 外側上壁
117b 外側下壁
117c 外側上フランジ
117d 外側下フランジ
117e 内空間
118 内サイドシル
118a 内側上壁
118b 内側下壁
118c 内側上フランジ
118d 内側下フランジ
118e 内空間
121,321,421,521,621 ベース部品
122 アウタパッチ
123 インナパッチ
224,324,424 補強部品
525,625 筒状部品
526 締結構造
127,527 接着剤
130 ブランク板
130a 初期貫通孔
131 貫通孔
132 第1縦板部
133 第2縦板部
134 横板部
134a 中間横板部
134b 前端横板部
134c 後端横板部
135,435 フランジ体
135a 突出部
135F,435F 前フランジ部
135R,435R 後フランジ部
136,636 タブ部
136F 前タブ部
136R 後タブ部
636Fa 前外タブ部
636Fb 前内タブ部
636Ra 後外タブ部
636Rb 後内タブ部
337 ビード部
538 ボルト挿通孔
639F,639R 係合片
440 折曲げ部
441 第1起立部
442 第2起立部
151 上カバー部
152 側カバー部
156 上カバー部
157 側カバー部
261 ウェブ部
262,462 前壁部
263,463 後壁部
264 底上げ部
365 タブ部
571 底壁
572 上壁
573F,573R 下側壁
574F,574R,674F,674R 上側壁
674a 下段差壁
674b 蹴上部
674c 上段差壁
575 下リッジ部
576F,576R 側リッジ部
577 貫通孔
678 延長部
679 スリット
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10A
図10B
図11
図12
図13A
図13B
図14
図15
図16A
図16B
図16C
図17
図18
図19A
図19B
図19C
図20