(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111659
(43)【公開日】2024-08-19
(54)【発明の名称】荷重測定器
(51)【国際特許分類】
G01L 1/14 20060101AFI20240809BHJP
G01G 3/00 20060101ALI20240809BHJP
G01G 3/12 20060101ALI20240809BHJP
【FI】
G01L1/14 J
G01G3/00 A
G01G3/12
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023016291
(22)【出願日】2023-02-06
(71)【出願人】
【識別番号】522477573
【氏名又は名称】THKプレシジョン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100180264
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 貴大
(72)【発明者】
【氏名】古田 淳
(57)【要約】
【課題】 一つの変位測定手段で複数の荷重測定範囲に対応することができ、低荷重から高荷重まで最適な分解能が得られる荷重測定器を提供する。
【解決手段】 本発明の荷重測定器1は、複数の弾性変形構造体2a,2b,2cからなる荷重測定器であって、その弾性変形構造体は、固定部3a,3b,3cと、荷重を受ける変位部4a,4b,4cと、固定部と変位部とを繋ぎ荷重が掛かったときに弾性変形する弾性ばね部5a,5b,5cと、を備え、複数の弾性変形構造体のそれぞれの固定部どうしが連結されて並列に配置され、少なくとも一つの弾性変形構造体に変位部の変位量を測定する変位測定手段6が設けられ、その変位測定手段を設けた弾性変形構造体を含む少なくとも二つ以上の弾性変形構造体のそれぞれの変位部どうしを連結する連結部材9,10,11を有し、その連結部材は、連結する弾性変形構造体の個数に応じて付け替え可能であることとする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の弾性変形構造体からなる荷重測定器であって、
前記弾性変形構造体は、固定部と、荷重を受ける変位部と、前記固定部と前記変位部とを繋ぎ荷重が掛かったときに弾性変形する弾性ばね部と、を備え、
前記複数の弾性変形構造体のそれぞれの前記固定部どうしが連結されて並列に配置され、
少なくとも一つの前記弾性変形構造体に前記変位部の変位量を測定する変位測定手段が設けられ、
前記変位測定手段を設けた前記弾性変形構造体を含む少なくとも二つ以上の前記弾性変形構造体のそれぞれの前記変位部どうしを連結する連結部材を有し、
前記連結部材は、連結する前記弾性変形構造体の個数に応じて付け替え可能であることを特徴とする荷重測定器。
【請求項2】
前記変位測定手段が、前記弾性ばね部に備えられた歪みゲージを有することを特徴とする請求項1に記載の荷重測定器。
【請求項3】
前記連結部材が、荷重を掛ける荷重載荷部であることを特徴とする請求項1又は2に記載の荷重測定器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷重センサ、フォースセンサ、はかり、ロードセルなどの荷重測定器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の荷重測定器の一例を説明する。
図5は、従来の荷重測定器の簡易説明図であって、(a)は無荷重時、(b)は荷重載荷時である。この荷重測定器12は固定部13と変位部14が互いに平行ばね15によって連結されている。また、変位部14の変位量D1を測定するための変位測定手段16が、固定部13に備えられている。そして、変位部14に重り20を載荷すると、
図5(b)に示すように、平行ばね15には、その剛性に応じた一定の変位が生じる。変位量D1は、平行ばね15が弾性変形する範囲内では荷重に比例するため、この変位量D1を変位測定手段16によって測定することで、重り20の荷重が測定できることになる。
【0003】
このような従来の荷重測定器12の具体例として、平行ばね15の剛性を6×10^4N/mとする。そして、変位測定手段16として静電容量式変位センサを用いたときの諸特性を、測定レンジ50μm、出力電圧範囲0~10V、電気的ノイズ1mVとすると、荷重測定器12の荷重の測定範囲は、0~3Nとなる。また、一般的な荷重測定器の分解能は、変位センサの電気的ノイズによって制限される。つまり、この荷重測定器12の場合、荷重の測定分解能は電気的ノイズを荷重に換算した0.3mNとなる。
【0004】
なお、変位センサの電気的ノイズは、変位測定範囲に依らずほぼ一定なため、例えば荷重測定範囲が0~1Nの荷重測定器の場合は、剛性を1/3の2×10^4N/mにすることによって、1N載荷したときの変位量が3倍になり、荷重分解能を0.1mNに改善することができる。
【0005】
ここで、大きな荷重を測定できる荷重測定器は剛性が高いので、そのような高い剛性の荷重測定器を用いて小さな荷重を測定すると分解能が低下するという問題がある。そこで、特許文献1には、一定範囲の荷重を高分解能で測定することを目的として、低分解能荷重センサと高分解能荷重センサの両方を備え、比較的小さい荷重のときは高分解能荷重センサが使用され、比較的大きい荷重のときは低分解能荷重センサが使用されるスピンドル又はロードセルが開示されている。このようなスピンドル又はロードセルであれば、計測できる荷重範囲を一般的なスピンドル等よりも広くすることができ、また、高分解能荷重センサを非接触の計測システムにすることで、高荷重でも高分解能荷重センサが損傷を受けないようにすることができる。しかし、このような荷重測定器の場合は、2種類の荷重センサを搭載しなければならないので、機器が複雑でコストがかかるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような実情に鑑み、本願発明は、簡易な構造で、低荷重から高荷重まで広い荷重範囲に対して適切な分解能で荷重測定ができる荷重測定器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の荷重測定器は、複数の弾性変形構造体からなる荷重測定器であって、その弾性変形構造体は、固定部と、荷重を受ける変位部と、固定部と変位部とを繋ぎ荷重が掛かったときに弾性変形する弾性ばね部と、を備え、複数の弾性変形構造体のそれぞれの固定部どうしが連結されて並列に配置され、少なくとも一つの弾性変形構造体に変位部の変位量を測定する変位測定手段が設けられ、その変位測定手段を設けた弾性変形構造体を含む少なくとも二つ以上の弾性変形構造体のそれぞれの変位部どうしを連結する連結部材を有し、その連結部材は、連結する弾性変形構造体の個数に応じて付け替え可能であることとする。
【0009】
ここで、変位測定手段が、弾性ばね部に貼付された歪みゲージを有することにしてもよい。また、連結部材が、荷重を掛ける荷重載荷部であることにしてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の荷重測定器によると、測定荷重に応じて弾性変形構造体の連結個数を決定することで、荷重測定器の剛性を容易に変更することができるため、測定荷重が低荷重のときは剛性を下げ、測定荷重が高荷重のときは剛性を上げて測定荷重に適した剛性を設定し、低荷重から高荷重まで適切な分解能で測定できるという効果が得られる。
【0011】
また、測定荷重に応じて剛性を変更することができるため、荷重測定範囲と剛性の倍率を同じにすることによって、弾性変形の変位測定範囲と荷重測定範囲を同じにすることができるため、一つの変位測定手段で複数の荷重測定範囲に対応することができ、低コストを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】変位測定手段を備えた弾性変形構造体の簡易説明図であって、(a)は無荷重時、(b)は荷重載荷時である。
【
図2】変位測定手段を備えていない弾性変形構造体の簡易説明図である。
【
図3】本発明の荷重測定器の簡易説明図であって、(a)は弾性変形構造体が1つの場合、(b)は弾性変形構造体を2つ連結した場合、(c)は弾性変形構造体を3つ連結した場合である。
【
図4】変位測定手段として歪みゲージを用いた弾性変形構造体の簡易説明図である。
【
図5】従来の荷重測定器の簡易説明図であって、(a)は無荷重時、(b)は荷重載荷時である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の荷重測定器は、従来から用いられている弾性変形構造体を複数連結して構成されている。以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して説明する。なお、ここでは、説明のため3つの弾性変形構造体からなる荷重測定器について述べるが、3つに限定するものではなく、2つでもよいし、4つ以上にすることも可能である。
【0014】
図1は、変位測定手段を備えた弾性変形構造体の簡易説明図であって、(a)は無荷重時、(b)は荷重載荷時である。また、
図2は、変位測定手段を備えていない弾性変形構造体の簡易説明図である。
【0015】
本発明による荷重測定器1は、3つの弾性変形構造体2a,2b,2cから構成されている。変位測定手段6を備えた弾性変形構造体2aは、固定部3aと、荷重を受ける変位部4aと、固定部3aと変位部4aとを繋ぎ荷重が掛かったときに弾性変形する弾性ばね部5aと、を備えている。なお、本実施例における弾性ばね部5aは平行ばねとなっているが、平行ばねに限定するものではなく、一定の荷重に対して弾性変形をするものであれば平行ばね以外でもよい。なお、固定部3aや変位部4aは、それ自体の剛性が高く、基本的に変形しないものとする。
【0016】
固定部3aには変位部4aの変位量Dを測定するための変位測定手段6が取り付けられている。変位部4aに重り20などの荷重を載荷すると、
図1(b)に示すように平行ばね5aの剛性に応じた一定の変位を生じる。この変位は、平行ばね5aが弾性変形する範囲では荷重に比例するため、この変位量Dを変位測定手段6で測定することにより荷重を測定することができるのは、従来技術と同様である。なお、変位部4aの上面に荷重載荷部9を備え、重り20などの荷重を荷重載荷部9に載荷する構成でもよい。
【0017】
弾性変形構造体2aの具体例としては、平行ばね5aの剛性は2×10^4N/m、変位測定手段6は静電容量式変位センサで、その諸特性は測定レンジが50μm、出力範囲が0~10V、電気的ノイズが1mVとする。荷重の測定範囲0~1Nのとき、変位部3aに1Nの荷重を掛けたときの平行ばね5aに生じる変位は50μmであり、荷重測定分解能は0.1mNとなる。
【0018】
次に、変位測定手段を備えていない弾性変形構造体2b、2cの構造を
図2に示す。弾性変形構造体2b、2cは弾性変形構造体2aから変位測定手段6を取り除いた以外は、弾性変形構造体2aと同様の構成である。したがって、平行ばね5b,5cの剛性は2×10^4N/mとし、変位部3b,3cに1Nの荷重を与えたとき、平行ばね5b,5cの変位は50μmとなる。
【0019】
図3は、本発明の荷重測定器の簡易説明図であって、(a)は弾性変形構造体が1つの場合、(b)は弾性変形構造体を2つ連結した場合、(c)は弾性変形構造体を3つ連結した場合であり、これらは
図1及び
図2の右側面図である。
【0020】
荷重測定器1は、3つの弾性変形構造体2a,2b,2cの固定部3a,3b,3cがそれぞれ固定プレート8に並列に配置されて連結された構成となっている。なお、固定プレート8は基本的に剛性が高く、変形しないものとする。また、固定部3a,3b,3cと固定プレート8との結合も剛結とする。
【0021】
荷重載荷部9は、変位部4aの上面に結合され、重りなどの荷重を載荷する部材である。また、荷重載荷部10,11は、変位部4a,4b,4cどうしを繋ぐ連結部材10,11としても用いられる。なお、連結部材10,11が変位部4a,4b,4cの側面どうしを連結するものであって変位部4a,4b,4cの上面に重りなどの荷重を直接載荷する構造の場合は、荷重載荷部ではなく連結部材10,11としてのみ機能する。また、荷重載荷部(連結部材)9,10,11の剛性は十分に高く、この荷重測定器1の使用範囲では変形しないものとする。また、変位部4a,4b,4cと荷重載荷部9,10,11との結合は剛結とする。
【0022】
荷重の測定範囲が0~1Nの場合は、
図3(a)に示すように荷重載荷部9を変位部4aのみと結合することによって、弾性変形構造体2aのみが機能し、2×10^4N/mの剛性を持った荷重測定器として機能する。従って荷重載荷部9に1Nの荷重を載荷したときの弾性変形による変位は50μmとなり、荷重測定分解能は0.1mNが得られる。なお、ここで変位部4aに変位が生じた際に、その他の変位部4b,4cには、全く影響がない構成とする。つまり、荷重載荷部9は、弾性変形構造体2aの変位部4aに結合されているが、それ以外の弾性変形構造体2b,2cとは、一切接触しない構造としなければならない。
【0023】
次に荷重測定範囲が1~2Nの場合は、
図3(b)に示すように荷重載荷部(連結部材)10を変位部4aと変位部4cとを連結するように設ける。そうすることによって2つの弾性変形構造体2a,2cが一体となって機能することになり、4×10^4N/mの剛性を持った荷重測定器1となる。荷重載荷部10に2Nの荷重を載荷したときの弾性変形による変位は50μmとなり、荷重測定分解能は0.2mNが得られる。なお、この場合も、弾性変形構造体2bには、荷重載荷の影響がない構成にする必要がある。また、載荷荷重が弾性変形構造体2a,2cが平等に分担できるように、荷重載荷部10は、十分に剛性が高いものとする。
【0024】
更に荷重測定範囲が2~3Nの場合は、
図3(c)に示すように荷重載荷部11を変位部4aと変位部4bと変位部4cとを連結するように設ける。そうすることによって、3つの弾性変形構造体2a,2b,2cが一体となって機能することになり、6×10^4N/mの剛性を持った荷重測定器となる。荷重載荷部11に3Nの荷重を載荷したときの弾性変形による変位は50μmとなり、荷重測定分解能は0.3mNが得られる。ここでも、載荷荷重は弾性変形構造体2a,2b,2cが平等に分担できる構造にしなければならない。
【0025】
図3(a),(b),(c)のいずれの場合でも、荷重測定器1に弾性変形構造体2aが含まれることから、変位部4aの変位量Dを測定する変位測定手段6が備えられていることになる。この変位測定手段6は、少なくとも1つあれば荷重測定器1としての機能を果たすことができる。言い換えると、連結部材10,11は、変位測定手段6を設けた弾性変形構造体2aを含んで連結できるものであればよい。
【0026】
図3(a),(b),(c)で示したように、荷重載荷部(連結部材)9,10,11は、連結する弾性変形構造体の個数に応じて付け替え可能であることとする。そうすることで、連結部材を付け替えるだけで、簡易に荷重測定器の剛性を変更することができるというメリットがある。
【0027】
また、変位測定手段6は、静電容量式変位センサに限定するものではない。
図4は、変位測定手段として歪みゲージを用いた弾性変形構造体の簡易説明図である。
図4に示すように、弾性ばね部5aの両面に歪みゲージ21を貼付し、これらの歪みの値を計測して変位量を算出してもよい。
【0028】
このように測定荷重の大きさに応じて荷重測定器の剛性を変更することによって、低荷重での分解能を改善しながら高荷重の測定もできる。また、測定荷重の測定範囲に比例して弾性ばね部(平行ばね)の剛性を大きくすることによって、弾性変形による変位は、測定荷重範囲に対して測定変位範囲がほぼ一定に保たれるため、変位測定手段を1つだけ用いればよい。よって、本発明の荷重測定器は、簡易な構造で、低荷重から高荷重まで広い荷重範囲に対して適切な分解能で荷重測定ができ、コスト低減を図ることができる。
【符号の説明】
【0029】
1 荷重測定器
2a,2b,2c 弾性変形構造体
3a,3b,3c 固定部
4a,4b,4c 変位部
5a,5b,5c 弾性ばね部
6 変位測定手段
8 固定プレート
9 荷重載荷部
10 荷重載荷部(連結部材)
11 荷重載荷部(連結部材)
12 従来の荷重測定器
13 固定部
14 変位部
15 平行ばね
16 変位測定手段
20 重り
21 歪みゲージ
D,D1 変位量