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特開2024-111671オキシ塩素化触媒の製造方法およびオキシ塩素化触媒
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111671
(43)【公開日】2024-08-19
(54)【発明の名称】オキシ塩素化触媒の製造方法およびオキシ塩素化触媒
(51)【国際特許分類】
   B01J 37/02 20060101AFI20240809BHJP
   B01J 37/06 20060101ALI20240809BHJP
   B01J 35/36 20240101ALI20240809BHJP
   B01J 35/55 20240101ALI20240809BHJP
   B01J 27/122 20060101ALI20240809BHJP
【FI】
B01J37/02 101A
B01J37/06
B01J35/02 K
B01J35/02 301A
B01J27/122 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023016308
(22)【出願日】2023-02-06
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】杉山 幹人
【テーマコード(参考)】
4G169
【Fターム(参考)】
4G169AA01
4G169AA03
4G169AA08
4G169AA09
4G169AA14
4G169BA01A
4G169BA01B
4G169BB08A
4G169BB08B
4G169BC01A
4G169BC03B
4G169BC31A
4G169BC31B
4G169BD12A
4G169BD12B
4G169CB07
4G169CB26
4G169DA06
4G169EA02Y
4G169EA06
4G169EB18Y
4G169EC03Y
4G169EC06Y
4G169EC07Y
4G169ED03
4G169FA02
4G169FB14
4G169FB17
4G169FB27
4G169FB57
4G169FC02
4G169FC07
(57)【要約】
【課題】強度に優れるオキシ塩素化触媒およびその製造方法を提供する。
【解決手段】アルミナ担体を水洗浄する洗浄工程と、前記洗浄工程後のアルミナ担体を、含水蒸気雰囲気中で、水蒸気を供給せずに、乾燥する第1の乾燥工程と、前記第1の乾燥工程にて得られたアルミナ担体に、塩化銅及び周期表1属元素の塩化物を担持させる触媒担持工程と、を含む、オキシ塩素化触媒の製造方法により課題を解決する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミナ担体を水洗浄する洗浄工程と、
前記洗浄工程後のアルミナ担体を、含水蒸気雰囲気中で、水蒸気を供給せずに、乾燥する第1の乾燥工程と、
前記第1の乾燥工程にて得られたアルミナ担体に、塩化銅及び周期表1属元素の塩化物を担持させる触媒担持工程と、を含む、オキシ塩素化触媒の製造方法。
【請求項2】
前記第1の乾燥工程における、乾燥温度は100℃~200℃であり、乾燥時間は1.0時間~2.0時間である、請求項1に記載のオキシ塩素化触媒の製造方法。
【請求項3】
前記触媒担持工程で得られた、塩化銅及び周期表1属元素の塩化物を担持させたアルミナ担体を、さらに含水蒸気雰囲気中で乾燥する第2の乾燥工程を含む、請求項1又は2に記載のオキシ塩素化触媒の製造方法。
【請求項4】
中空円筒形状のアルミナ担体に、塩化銅及び周期表1属元素の塩化物を担持させたオキシ塩素化触媒であって、圧縮破壊強度が原料アルミナ担体の圧縮破壊強度に対して1.3倍~1.7倍である、オキシ塩素化触媒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はオキシ塩素化触媒の製造方法およびオキシ塩素化触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ塩化ビニル(PVC)の製造方法として以下の工程からなる方法が知られている:
(i)エチレンのオキシ塩素化反応による1,2-ジクロロエタンの製造
(ii)1,2-ジクロロエタンの熱分解反応による塩化ビニルモノマーの製造
(iii)塩化ビニルモノマーの重合。
【0003】
(i)の工程において、二塩化エタンを得るオキシ塩素化反応には、アルミナ担体に塩化銅及び塩化カリウムを担持したオキシ塩素化触媒が使用される。
【0004】
当該オキシ塩素化触媒の製造方法として、中空円筒形状のアルミナ担体に塩化銅及び周期表1族元素の塩化物を担持して、蓋付トレイ内に入れ、バッチ式の焼成装置で焼成を行う方法が開示されている(特許文献1参照)。
【0005】
また、オキシ塩素化触媒に関するものではないが、アルミナ担体に、銀、レニウムを含有する溶液を含浸させて焼成する、エチレンオキシド製造用触媒の製造方法において、予めアルミナ担体を洗浄し乾燥することが開示されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013-91021号公報
【特許文献2】特開2013-202592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
オキシ塩素化触媒は反応管に充填して使用されることから、充填の際に割れ、破砕、粉砕等が発生しないよう、オキシ塩素化触媒には一定以上の強度が要求される。しかし、従来のオキシ塩素化触媒の製造技術では、触媒強度が低下する場合があり、改善の余地があった。
【0008】
本発明の一態様は、強度に優れるオキシ塩素化触媒およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の一実施形態は、以下の構成を含むものである。
【0010】
〔1〕アルミナ担体を水洗浄する洗浄工程と、
前記洗浄工程後のアルミナ担体を、含水蒸気雰囲気中で、水蒸気を供給せずに、乾燥する第1の乾燥工程と、
前記第1の乾燥工程にて得られたアルミナ担体に、塩化銅及び周期表1属元素の塩化物を担持させる触媒担持工程と、を含む、オキシ塩素化触媒の製造方法。
【0011】
〔2〕前記第1の乾燥工程における、乾燥温度は100℃~200℃であり、乾燥時間は1.0時間~2.0時間である、〔1〕に記載のオキシ塩素化触媒の製造方法。
【0012】
〔3〕前記触媒担持工程で得られた、塩化銅及び周期表1属元素の塩化物を担持させたアルミナ担体を、さらに含水蒸気雰囲気中で乾燥する第2の乾燥工程を含む、〔1〕または〔2〕に記載のオキシ塩素化触媒の製造方法。
【0013】
〔4〕中空円筒形状のアルミナ担体に、塩化銅及び周期表1属元素の塩化物を担持させたオキシ塩素化触媒であって、圧縮破壊強度が原料アルミナ担体の圧縮破壊強度に対して1.3倍~1.7倍である、オキシ塩素化触媒。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一態様によれば、強度に優れるオキシ塩素化触媒およびその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態について以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能である。また、異なる実施形態または実施例にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせて得られる実施形態または実施例についても、本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。なお、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考文献として援用される。また、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上(Aを含みかつAより大きい)B以下(Bを含みかつBより小さい)」を意図する。
【0016】
〔1.本発明の基本原理〕
オキシ塩素化触媒は、一般に、(i)アルミナ担体を水洗浄して排水し、水を吸収させた後、(ii)水を吸収させたアルミナ担体に、塩化銅及び周期表1属元素の塩化物を担持させ、その後(iii)塩化銅及び周期表1属元素の塩化物を担持させたアルミナ担体を乾燥させる工程を経て生産される。
【0017】
本発明者らは、オキシ塩素化触媒の触媒強度が低下する原因を究明する中で、アルミナ担体の強度は、アルミナ担体を水洗浄して排水し、水を吸収させて待機する工程で、低下傾向を示すことを見出した。
【0018】
本発明者らは、かかる知見に基づき、触媒強度の低下を低減して、強度に優れるオキシ塩素化触媒を実現すべく検討を行った。そして、水洗浄後のアルミナ担体を、水から取り出して、水を含有した状態で密封乾燥する工程、言い換えれば、含水蒸気雰囲気中で、水蒸気を供給せずに乾燥する工程(第1の乾燥工程)を、アルミナ担体に塩化銅及び周期表1属元素の塩化物を担持させる前に実施したところ、第1の乾燥工程にて乾燥後のアルミナ担体は、驚くべきことに、水洗浄前のアルミナ担体よりも強度に優れることを見出した。そして、当該乾燥後のアルミナ担体を使用することにより、強度に優れたオキシ塩素化触媒を得ることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0019】
水洗浄後のアルミナ担体を、水から取り出して、水を含有した状態で開放乾燥する場合には、乾燥後のアルミナ担体の強度は水洗浄前のアルミナ担体と比較して向上しないことから、含水蒸気雰囲気中で乾燥を行うことが、乾燥後のアルミナ担体の強度の向上に影響を与えていると考えられる。水洗後に、含水蒸気雰囲気中で、水蒸気を供給せずに乾燥する工程を、アルミナ担体に塩化銅及び周期表1属元素の塩化物を担持させる前に、行うことにより、乾燥後のアルミナ担体の強度が向上する理由は明らかではないが、例えば、含水蒸気雰囲気中の水蒸気によるアルミナ担体粒子の再水和が起こることが、理由の一つとして考えられる。
【0020】
〔2.オキシ塩素化触媒の製造方法〕
本発明の一実施形態に係るオキシ塩素化触媒の製造方法は、アルミナ担体を水洗浄する洗浄工程と、前記洗浄工程後のアルミナ担体を、含水蒸気雰囲気中で、水蒸気を供給せずに、乾燥する第1の乾燥工程と、前記第1の乾燥工程にて得られたアルミナ担体に、塩化銅及び周期表1属元素の塩化物を担持させる触媒担持工程と、を含む。
【0021】
〔2-1.洗浄工程〕
(水洗浄)
本工程は、アルミナ担体を水で洗浄する工程である。アルミナ担体を水洗浄することにより、アルミナ担体表面の不純物を除去することができる。また、水との接触による発熱に伴い温度が上昇したアルミナ担体を冷却することができる。前記水洗浄に使用する水としては、例えば、純水、蒸留水、イオン交換水、脱イオン水、酸性水、アルカリ水、超純水、水道水、井戸水等を挙げることができるが、不純物除去の観点から、純水、蒸留水、イオン交換水、脱イオン水、超純水であることがより好ましい。
【0022】
本工程で使用される水の量は、洗浄されるアルミナ担体に対して、好ましくは120重量%以上であり、より好ましくは200重量%以上であり、さらに好ましくは280重量%以上である。前記水の量が、120重量%以上であれば、アルミナ担体が水で満たされるため好ましい。また、前記水の量の上限は、特に限定されないが、洗浄されるアルミナ担体に対して、好ましくは840重量%以下であり、より好ましくは560重量%以下である。前記水の量が、840重量%以下であれば、水の使用量が過度に多くならない点で好ましい。
【0023】
本工程で使用される水の温度は、好ましくは2℃~50℃であり、より好ましくは5℃~40℃であり、さらに好ましくは10℃~30℃である。水の温度が2℃以上であれば凍結することがないため好ましい。また、水の温度が50℃以下であれば加熱のための時間及びコストを低減できるため好ましく、水の温度が30℃以下であれば加熱不要であるためより好ましい。水の温度は加熱・冷却を必要としない室温とすることができる。
【0024】
本工程で使用される洗浄方法は特に限定されるものではないが、例えば、洗浄されるアルミナ担体を水に浸漬する方法、水に浸漬して撹拌する方法、水に浸漬して容器を振盪する方法、洗浄されるアルミナ担体に水を循環させる方法、洗浄されるアルミナ担体に水を循環させ攪拌する方法、洗浄されるアルミナ担体に水を散布する方法等を挙げることができる。中でも、冷却の観点から、水に浸漬して攪拌する方法、水を循環させる方法、水を循環させ攪拌する方法、水を散布する方法等がより好ましい。
【0025】
また、水洗浄する時間も特に限定されるものではないが、好ましくは1分~20分であり、より好ましくは2分~10分であり、さらに好ましくは3分~7分である。水洗浄する時間が1分以上であれば、表面付着物が洗浄されるため好ましく、20分以下であれば、操作にかかる時間を低減することができるため好ましい。水洗浄する回数も特に限定されるものではないが、好ましくは1回~3回であり、より好ましくは1回~2回である。水洗浄する回数が1回であれば、繰り返し操作がないため好ましく、3回以下であれば、1時間以内で操作を終えることができるため好ましい。
【0026】
(アルミナ担体)
本発明の一実施形態において使用されるアルミナ担体は、オキシ塩素化触媒に使用され得るものであれば特に限定されない。
【0027】
前記アルミナ担体は、α-アルミナ、γ-アルミナ及び活性アルミナ等のいずれの形態のアルミナで構成されてもよい。中でも、比表面積が高いことから、活性アルミナおよびγ-アルミナで構成されることがより好ましい。前記アルミナ担体は、例えば、水和アルミナ(水酸化アルミニウム)の粉末を成形し、焼成することによって得られる。成形の際、水酸化アルミニウム粉末に滑剤、賦孔剤などの添加剤を含んでもよい。滑剤などの添加剤は、例えば、水酸化アルミニウム100質量部に対して8質量部以下添加してもよい。或いは、前記アルミナ担体として市販のアルミナ担体を使用してもよい。
【0028】
前記アルミナ担体の形状は特に限定されるものではないが、例えば、高さ方向に貫通する中空孔を1つ有する中空円筒形状のアルミナ担体を好適に用いることができる。中空円筒形状にすることにより、アルミナ担体の耐圧強度が高く、アルミナ担体と反応体や処理物質との接触面積が大きく、各種操作における圧力損失も小さくなるため好ましい。
【0029】
このような、中空円筒形状としては、円筒の外径が好ましくは3.0mm~6.0mm、より好ましくは4.0mm~5.5mm、内径が好ましくは1.0mm以上、より好ましくは1.5mm以上、肉厚が好ましくは1.0mm~2.5mm、より好ましくは1.0mm~2.0mm、円筒の高さが好ましくは3.0mm~6.0mm、より好ましくは4.0mm~5.5mm、そして内径/外径の比が好ましくは0.17~0.67、より好ましくは0.27~0.64であるものが、前述した耐圧強度、接触面積の確保、圧力損失の軽減などの見地から好ましい。
【0030】
本発明のアルミナ担体の好ましい形状としては、用途に応じて、従来公知の筒状形状に成形してもよいし、例えば特開2017-154051に開示されたアルミナ担体のように、高さ方向に貫通する中空孔を複数有する中空円筒形状であってもよい。また、前記中空円筒形状のアルミナ担体が、高さ方向に貫通する中空孔を複数有している場合、その中空孔の数も特に限定されるものではないが、例えば1個~6個であり、より好ましくは1個~3個である。その場合の、中空内孔の配置および円筒の外径からの距離も特に限定されるものではなく、適宜選択することができる。
【0031】
前記アルミナ担体は、副生物抑制の観点から、JIS R 1655に準拠して水銀圧入法で測定した細孔容積が0.25cm/g~0.60cm/gの範囲であることが好ましく、より好ましくは0.30cm/g~0.50cm/gの範囲である。
【0032】
また、前記アルミナ担体は、触媒活性向上の観点から、JIS Z 8830に準拠してBET法で測定した比表面積が150m/g~300m/gであることが好ましく、180m/g~250m/gであることがより好ましい。
【0033】
また、前記アルミナ担体としては、特開2017-154051に開示されたアルミナ担体も好適に用いることができる。
【0034】
前記アルミナ担体の圧縮破壊強度は、通常9.8N~24.5Nであり、より好ましくは11.8N~21.6Nであり、さらに好ましくは14.7N~18.6Nである。前記アルミナ担体の圧縮破壊強度が9.8N以上であれば、触媒充填時の割れ、破砕、粉砕等が発生しにくいため好ましく、24.5N以下であれば、触媒活性低下がないため好ましい。ここで、本明細書において、圧縮破壊強度とは、後述する実施例に記載の方法により測定した値である。
【0035】
〔2-2.第1の乾燥工程〕
(洗浄工程後のアルミナ担体)
本工程では、前記洗浄工程後のアルミナ担体を、含水蒸気雰囲気中で、水蒸気を供給せずに、乾燥する。
【0036】
乾燥を行う対象である、前記洗浄工程後のアルミナ担体は、前記洗浄工程にて、水洗浄した後、洗浄に用いた水と分離したアルミナ担体である。ここで、洗浄に用いた水と分離したアルミナ担体とは、例えば、アルミナ担体を水洗浄した後、アルミナ担体を水から取り出すこと、水洗浄を行った容器を傾斜させて水を排出すること、水洗浄を行った容器から水を吸引して排出すること、水から取り出すか又は水を排出した洗浄後のアルミナ担体を吸水紙等で拭いて水をさらに排出すること等により水と分離したアルミナ担体を挙げることができる。このような方法で水と分離したアルミナ担体は、水を含んでいるため、乾燥が含水蒸気雰囲気中で行われることになる。
【0037】
乾燥を行う対象である、前記洗浄工程後のアルミナ担体は、前述のように水を含んでいればよいが、乾燥に供する前記洗浄工程後のアルミナ担体に含まれる水の量は、乾燥に供する前記洗浄工程後のアルミナ担体の重量に対して、好ましくは15重量%~40重量%であり、より好ましくは20重量%~35重量%であり、さらに好ましくは25重量%~30重量%である。乾燥に供する前記洗浄工程後のアルミナ担体に含まれる水の量が、前記範囲内であれば、乾燥工程後のアルミナ担体の強度が、水洗浄前のアルミナ担体の強度に対して向上するため好ましい。ここで、前記「乾燥に供する前記洗浄工程後のアルミナ担体に含まれる水の量」は、(乾燥に供する前記洗浄工程後のアルミナ担体の重量-水洗浄前のアルミナ担体の重量)/(乾燥に供する前記洗浄工程後のアルミナ担体の重量)により算出される値である。
【0038】
乾燥を行う対象である、前記洗浄工程後のアルミナ担体は、洗浄に用いた水と分離したアルミナ担体であればよいが、当該分離したアルミナ担体を、待機後乾燥させることがより好ましい。当該分離したアルミナ担体を、待機後乾燥させることにより、最終的に得られるオキシ塩素化触媒の強度を向上できるという利点がある。なお、分離したアルミナ担体を、待機後乾燥させる場合は、前記「乾燥に供する前記洗浄工程後のアルミナ担体の重量」は、待機後のアルミナ担体の重量である。
【0039】
前記分離したアルミナ担体を、待機させる待機時間は、好ましくは10分~48時間であり、より好ましくは20分~24時間であり、さらに好ましくは30分~15時間である。ここで、「待機時間」とは、アルミナ担体を分離してから、乾燥に供するまでの時間をいう。前記待機時間が10分以上であれば、最終的に得られるオキシ塩素化触媒の強度を向上できるため好ましい。また、前記待機時間が48時間以下であれば、乾燥・触媒担持・触媒乾燥工程に要する時間が長くなりすぎないため好ましく、前記待機時間が15時間以下であれば、乾燥・触媒担持・触媒乾燥工程が2日でできるため好ましい。
【0040】
また、前記分離したアルミナ担体を、待機させる温度は、好ましくは2℃~50℃であり、より好ましくは5℃~40℃であり、さらに好ましくは10℃~30℃である。前記温度が2℃以上であれば凍結することがないため好ましい。また、前記温度が50℃以下であれば加熱のための時間及びコストを低減できるため好ましく、前記温度が30℃以下であれば加熱不要であるため好ましい。
【0041】
(乾燥)
本工程では、前記洗浄工程後のアルミナ担体を、含水蒸気雰囲気中で、水蒸気を供給せずに、乾燥する。「含水蒸気雰囲気中」とは、水蒸気を含有する雰囲気中であればよいが、含水蒸気雰囲気中の水蒸気含有量は、好ましくは乾燥温度における飽和水蒸気量以下である。含水蒸気雰囲気中の水蒸気含有量が乾燥温度における飽和水蒸気量以下であれば、乾燥工程後のアルミナ担体の強度が、水洗浄前のアルミナ担体の強度に対して向上するため好ましい。なお、含水蒸気雰囲気中の水蒸気含有量は、露点計を用いて測定することができる。
【0042】
ここで、含水蒸気雰囲気中の水蒸気含有量は、本乾燥工程の全工程にわたって乾燥温度における飽和水蒸気量以下であることが好ましい。
【0043】
また、本工程では、水蒸気を供給すると、含水蒸気雰囲気中の水蒸気含有量が過多になるため、水蒸気を供給せずに乾燥を行う。
【0044】
本工程では、前記洗浄工程後のアルミナ担体を、含水蒸気雰囲気中で乾燥すればよいが、雰囲気中には、その他に、酸素、窒素、アルゴン、ヘリウム等またはこれらの2以上の組合せが含まれ得る。
【0045】
乾燥は加熱して乾燥することが好ましく、乾燥温度は、好ましくは100℃~200℃であり、より好ましくは100℃~150℃であり、さらに好ましくは100℃~125℃である。前記乾燥温度が100℃以上であれば水が十分気化するため好ましい。また、前記乾燥温度が200℃以下であれば乾燥温度に到達するまでの時間が比較的短い(例えば1時間以内)ため好ましい。なお、ここで前記乾燥温度は、乾燥を行う装置内の気相の温度を意図する。
【0046】
乾燥は密封乾燥であることが好ましい。密封された雰囲気内で、前記洗浄工程後のアルミナ担体を乾燥することにより、乾燥を行う装置内の雰囲気中の水蒸気含有量を飽和水蒸気量以下に保ちやすいため、好ましい。
【0047】
また、本工程における乾燥時間は、好ましくは1.0時間~2.0時間であり、より好ましくは1.0時間~1.5時間であり、さらに好ましくは1.0時間~1.2時間である。前記乾燥時間が1.0時間以上であれば、水が十分気化するため好ましく、前記乾燥時間が2時間以下であれば、乾燥対象の温度が上昇しすぎないことから、冷却が速く、乾燥させたものを乾燥器から早く取り出せるという利点がある。
【0048】
本工程にて得られたアルミナ担体の圧縮破壊強度は、好ましくは9.8N~27.4Nであり、より好ましくは11.8N~24.6Nであり、さらに好ましくは14.7N~21.6Nである。本工程にて得られたアルミナ担体の圧縮破壊強度が前記範囲内であれば、当該アルミナ担体を使用することにより、強度に優れたオキシ塩素化触媒を得ることができる。
【0049】
また、本工程にて得られたアルミナ担体の圧縮破壊強度は、水洗浄前の原料アルミナ担体の圧縮破壊強度に対して1.0倍以上であることが好ましく、より好ましくは1.0倍~1.3倍であり、さらに好ましくは1.0倍~1.2倍である。
【0050】
〔2-3.触媒担持工程〕
本工程は、前記第1の乾燥工程にて得られたアルミナ担体(以下、「乾燥アルミナ担体」と称することがある)に、塩化銅及び周期表1属元素の塩化物を担持させる工程である。
【0051】
前記乾燥アルミナ担体に、塩化銅及び周期表1属元素の塩化物を担持させる方法は特に限定されない。操作が簡便であり、担持効率が高いとの観点から、塩化銅及び周期表1属元素の塩化物を含む水溶液を前記乾燥アルミナ担体に含浸させる浸漬法を用いることができる。あるいは、塩化銅を含む水溶液と、周期表1属元素の塩化物を含む水溶液とを、別途調製して、順次、前記乾燥アルミナ担体に含浸させる浸漬法を用いてもよい。この場合、塩化銅を含む水溶液と、周期表1属元素の塩化物を含む水溶液とは、この順で前記乾燥アルミナ担体に含浸させてもよいし、逆の順で前記乾燥アルミナ担体に含浸させてもよい。
【0052】
前記塩化銅は、塩化第一銅、塩化第二銅、又はこれらの組合せであり得るが、水溶性の観点から、塩化第二銅であることがより好ましい。前記塩化銅を含む水溶液における、塩化銅の濃度は、触媒性能の観点から、好ましくは100g/l~600g/lであり、より好ましくは200g/l~500g/lである。
【0053】
前記周期表1属元素の塩化物は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化ルビジウム、塩化セシウム、又は、これらの2種類以上の組合せであり得るが、水溶性の観点から、塩化カリウムまたは塩化ナトリウムであることがより好ましく、塩化カリウムであることがさらに好ましい。前記周期表1属元素の塩化物を含む水溶液における、前記周期表1属元素の塩化物の濃度は、触媒性能の観点から、好ましくは1g/l~200g/lであり、より好ましくは10g/l~100g/lである。
【0054】
本工程において、触媒担持の方法として浸漬法を用いる場合、塩化銅及び/又は周期表1属元素の塩化物を含む水溶液の温度は、好ましくは2℃~50℃であり、より好ましくは5℃~40℃であり、さらに好ましくは10℃~30℃である。前記温度が2℃以上であれば凍結することがないため好ましい。また、前記温度が50℃以下であれば加熱のための時間及びコストを低減できるため好ましく、前記温度が30℃以下であれば加熱不要であるため好ましい。
【0055】
また、触媒担持の方法として浸漬法を用いる場合、塩化銅及び/又は周期表1属元素の塩化物を含む水溶液に、前記乾燥アルミナ担体を浸漬する時間は、好ましくは10分~48時間であり、より好ましくは30分~24時間であり、さらに好ましくは1時間~12時間である。前記浸漬時間が10分以上であれば、含浸液がアルミナ担体に吸収されるため好ましく、前記浸漬時間が48時間以下であれば、アルミナ担体が不溶であるため好ましい。
【0056】
〔2-4.第2の乾燥工程〕
本発明の一実施形態に係るオキシ塩素化触媒の製造方法は、前述の洗浄工程、乾燥工程、及び触媒担持工程に加えて、前記触媒担持工程で得られた、塩化銅及び周期表1属元素の塩化物を担持させたアルミナ担体を乾燥する、第2の乾燥工程を含んでもよい。以下、「前記触媒担持工程で得られた、塩化銅及び周期表1属元素の塩化物を担持させたアルミナ担体」を、「前記触媒担持工程で得られた触媒担持アルミナ担体」と称することがある。
【0057】
本工程においては、前記触媒担持工程で得られた触媒担持アルミナ担体を乾燥できれば、乾燥条件は特に限定されるものではない。従って、乾燥温度、乾燥時間、雰囲気中の水蒸気含有量、開放乾燥であるか密封乾燥であるか、水蒸気の供給の有無等についても特に限定されるものではない。
【0058】
中でも、本工程は、前記触媒担持工程で得られた触媒担持アルミナ担体を、前述の第1の乾燥工程と同様に、含水蒸気雰囲気中で、水蒸気を供給せずに、乾燥する工程であることがより好ましい。当該方法にて、第2の乾燥工程の乾燥を行うことにより、強度により優れたオキシ塩素化触媒を得ることができる。なお、本工程は、前記観点から、含水蒸気雰囲気中で、水蒸気を供給せずに、乾燥する工程であることがより好ましいが、同様の観点から、含水蒸気雰囲気中で、水蒸気を供給して、乾燥する工程であることも好ましい。すなわち、本工程は、含水蒸気雰囲気中で乾燥する工程であることが好ましい。
【0059】
本工程において、乾燥を行う対象である、前記触媒担持工程で得られた触媒担持アルミナ担体は、前記触媒担持工程にて、例えば、塩化銅及び/又は周期表1属元素の塩化物を含む水溶液に浸漬した後、浸漬に用いた前記水溶液と分離した触媒担持アルミナ担体である。ここで、浸漬に用いた前記水溶液と分離した触媒担持アルミナ担体とは、例えば、アルミナ担体を前記水溶液に浸漬した後、触媒担持アルミナ担体を前記水溶液から取り出すこと、浸漬を行った容器を傾斜させて前記水溶液を排出すること、浸漬を行った容器から水を吸引して排出すること、前記水溶液から取り出すか又は前記水溶液を排出した後の触媒担持アルミナ担体を吸水紙等で拭いて水をさらに排出すること等により前記水溶液と分離した触媒担持アルミナ担体を挙げることができる。このような方法で水と分離した触媒担持アルミナ担体は、水を含んでいるため、乾燥が含水蒸気雰囲気中で行われることになる。
【0060】
乾燥を行う対象である、前記触媒担持工程で得られた触媒担持アルミナ担体に含まれる水の量は、乾燥に供する、前記触媒担持工程で得られた触媒担持アルミナ担体の重量に対して、好ましくは15重量%~40重量%であり、より好ましくは20重量%~35重量%であり、さらに好ましくは25重量%~30重量%である。乾燥に供する前記触媒担持工程で得られた触媒担持アルミナ担体に含まれる水の量が、前記範囲内であれば、第2の乾燥工程後の触媒担持アルミナ担体の強度がより向上するため好ましい。ここで、前記「乾燥に供する前記触媒担持工程で得られた触媒担持アルミナ担体に含まれる水の量」は、(乾燥に供する前記触媒担持工程で得られた触媒担持アルミナ担体の重量-水洗浄前のアルミナ担体の重量)/(乾燥に供する前記触媒担持工程で得られた触媒担持アルミナ担体の重量)により算出される値である。
【0061】
本工程において、前記触媒担持工程で得られた触媒担持アルミナ担体を、含水蒸気雰囲気中で乾燥する場合の乾燥条件は、水蒸気の供給の有無を問わない点以外は、〔2-2.第1の乾燥工程〕の(乾燥)において説明した条件と同じであるので、ここでは説明を省略する。
【0062】
〔3.オキシ塩素化触媒〕
本発明の一実施形態に係るオキシ塩素化触媒は、中空円筒形状のアルミナ担体に、塩化銅及び周期表1属元素の塩化物を担持させたオキシ塩素化触媒であって、圧縮破壊強度が原料アルミナ担体の圧縮破壊強度に対して1.3倍~1.7倍であり、より好ましくは1.35倍~1.7倍であり、さらに好ましくは1.4倍~1.65倍である。なお、ここで、原料アルミナ担体とは、水洗浄を行う前の、原料として用いるアルミナ担体を意図する。
【0063】
本発明の一実施形態に係るオキシ塩素化触媒の圧縮破壊強度は、好ましくは14N~29Nであり、より好ましくは16N~28Nであり、さらに好ましくは18N~27Nである。これにより、オキシ塩素化触媒を反応管に充填する際の割れ、破砕、粉砕の発生を低減することができる。
【0064】
「中空円筒形状のアルミナ担体」、「塩化銅」、および「周期表1属元素の塩化物」については、〔2.オキシ塩素化触媒の製造方法〕で説明したとおりであるので、ここでは説明を省略する。
【0065】
本発明の一実施形態に係るオキシ塩素化触媒は、中空円筒形状のアルミナ担体に、塩化銅及び周期表1属元素の塩化物が担持されている。前記塩化銅は、アルミナ担体及び触媒金属化合物の合計重量、すなわちオキシ塩素化触媒の全体質量に対して、銅元素換算で1重量%~12重量%担持されていることが好ましく、2重量%~10重量%担持されていることがより好ましく、3重量%~9重量%担持されていることがさらに好ましい。前記周期表1属元素の塩化物は、アルミナ担体及び触媒金属化合物の合計重量、すなわちオキシ塩素化触媒の全体重量に対して、アルカリ金属元素換算で0.2重量%~5重量%担持されていることが好ましく、0.3重量%~4.5重量%担持されていることがより好ましく、0.5重量%~4重量%担持されていることがさらに好ましい。アルミナ担体に担持されている塩化銅及び周期表1属元素の塩化物の担持量が前述した範囲であると、触媒活性が良好になり、副生物の生成が抑制されるため好ましい。
【0066】
前記オキシ塩素化触媒は、副生物抑制の観点から、JIS R 1655に準拠して水銀圧入法で測定した細孔容積が0.05cm/g~0.20cm/gの範囲であることが好ましく、より好ましくは0.10cm/g~0.40cm/gの範囲である。
【0067】
また、前記オキシ塩素化触媒は、触媒活性向上の観点から、JIS Z 8830に準拠してBET法で測定した比表面積が100m/g~300m/gであることが好ましく、140m/g~280m/gであることがより好ましい。
【0068】
本発明の一実施形態に係るオキシ塩素化触媒は、前述のオキシ塩素化触媒の製造方法により製造される。
【実施例0069】
以下、実施例および比較例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0070】
<圧縮破壊強度>
原料アルミナ担体、第1の乾燥工程後に得られたアルミナ担体、及び、オキシ塩素化触媒の圧縮破壊強度は、株式会社藤原製作所製デジタル硬度計KHT-40Nを用いて測定した。具体的には、中空円筒形状のアルミナ担体、及び中空円筒形状のオキシ塩素化触媒の円筒側面に対して、垂直方向に荷重をかけ、アルミナ担体及びオキシ塩素化触媒が破壊された時の強度を測定した。測定は、それぞれ30個の、原料アルミナ担体、第1の乾燥工程後に得られたアルミナ担体、および、オキシ塩素化触媒について行い、それぞれ30個の平均値を圧縮破壊強度とした。
【0071】
〔実施例1〕
アルミナ担体(水澤化学工業株式会社製、KOA-R3)30個を、10cmのガラス容器に入れた。このガラス容器に、10℃の純水7.5cmを添加して、5分間浸漬することにより洗浄した(洗浄工程)。洗浄後、ガラス容器よりアルミナ担体30個をとり出して、別の10cmのガラス容器に移し、その後10℃で、30分間待機した。待機後、アルミナ担体30個を待機させたガラス容器に蓋をした密封状態で、アルミナ担体を100℃で、1時間乾燥した(第1の乾燥工程)。乾燥には、ヤマト科学株式会社DX600定温乾燥器を使用し、当該乾燥器内に、前述の密封状態のガラス容器を配置して行った。
【0072】
純水を添加する前のアルミナ担体30個の重量は2.614g、待機後のアルミナ担体30個の重量は3.685gであったことより、乾燥に供する前記洗浄工程後のアルミナ担体に含まれる水の量は、29重量%であった。また、乾燥時の含水蒸気雰囲気中の水蒸気含有量は、0.0009体積%であった。
【0073】
第1の乾燥工程にて得られたアルミナ担体30個に、塩化第二銅二水和物13.7gと塩化カリウム3.5gとを純水31cmに溶解させた触媒含浸液を加えて、室温で30分間含浸させた(触媒担持工程)。
【0074】
触媒を含浸させたアルミナ担体30個を、ガラス容器より取り出して、別の10cmのガラス容器に移し、当該ガラス容器に蓋をした密封状態で、触媒を含浸させたアルミナ担体30個を、100℃で、1時間乾燥して(第2の乾燥工程)、オキシ塩素化触媒を得た。
【0075】
純水を添加する前の原料として用いたアルミナ担体30個の重量は2.614g、乾燥に供する前記触媒担持工程で得られた触媒担持アルミナ担体30個の重量は3.690gであったことより、乾燥に供する前記触媒担持工程で得られた触媒担持アルミナ担体に含まれる水の量は、29重量%であった。また、第2の乾燥工程における含水蒸気雰囲気中の水蒸気含有量は、0.05体積%であった。
【0076】
原料アルミナ担体の圧縮破壊強度は16.8N、第1の乾燥工程後に得られたアルミナ担体の圧縮破壊強度は19.7Nであり、第1の乾燥工程後に得られたアルミナ担体の圧縮破壊強度は、原料アルミナ担体の圧縮破壊強度に対して、約1.7割増加した。
【0077】
また、オキシ塩素化触媒の圧縮破壊強度は、26.2Nであり、原料アルミナ担体の圧縮破壊強度に対して5割以上増加した。
【0078】
〔実施例2〕
第2の乾燥工程において、触媒を含浸させたアルミナ担体30個を、ガラス容器に蓋をしない開放状態で、乾燥させたこと以外は実施例1と同様にして、オキシ塩素化触媒を得た。第2の乾燥工程における含水蒸気雰囲気中の水蒸気含有量は、0.05体積%であった。
【0079】
原料アルミナ担体の圧縮破壊強度、及び第1の乾燥工程後に得られたアルミナ担体の圧縮破壊強度は実施例1と同じであり、第1の乾燥工程後に得られたアルミナ担体の圧縮破壊強度は、原料アルミナ担体の圧縮破壊強度に対して、約1.7割増加した。
【0080】
また、オキシ塩素化触媒の圧縮破壊強度は、24.0Nであり、原料アルミナ担体の圧縮破壊強度に対して4.3割増加した。
【0081】
〔比較例1〕
純水で洗浄後、ガラス容器よりアルミナ担体30個をとり出して、別の10cmのガラス容器に移し、その後10℃で、30分間待機した後、乾燥(第1の乾燥工程)を行わなかった以外は実施例1と同様にして、オキシ塩素化触媒を得た。
【0082】
原料アルミナ担体の圧縮破壊強度は16.8N、オキシ塩素化触媒の圧縮破壊強度は20.6Nであり、オキシ塩素化触媒の圧縮破壊強度は、原料アルミナ担体の圧縮破壊強度に対して2.2割増加した。
【0083】
〔比較例2〕
純水で洗浄後、ガラス容器よりアルミナ担体30個をとり出して、別の10cmのガラス容器に移し、その後10℃で、30分間待機した後、乾燥(第1の乾燥工程)を行わなかった以外は実施例2と同様にして、オキシ塩素化触媒を得た。
【0084】
原料アルミナ担体の圧縮破壊強度は16.8N、オキシ塩素化触媒の圧縮破壊強度は9.0Nであり、オキシ塩素化触媒の圧縮破壊強度は、原料アルミナ担体の圧縮破壊強度に対して4.6割減少した。
【0085】
〔比較例3〕
純水で洗浄後、ガラス容器よりアルミナ担体30個をとり出して、別の10cmのガラス容器に移し、その後10℃で、30分間待機した後、第1の乾燥工程において、ガラス容器に蓋をしない開放状態で、乾燥を行ったこと以外は実施例1と同様にして、オキシ塩素化触媒を得た。第1の乾燥工程における雰囲気中の水蒸気含有量は、0.0009体積%であった。
【0086】
原料アルミナ担体の圧縮破壊強度は16.8N、第1の乾燥工程後に得られたアルミナ担体の圧縮破壊強度は14.8Nであり、第1の乾燥工程後に得られたアルミナ担体の圧縮破壊強度は、原料アルミナ担体の圧縮破壊強度に対して、1.2割減少した。
【0087】
また、オキシ塩素化触媒の圧縮破壊強度は、16.6Nであり、原料アルミナ担体の圧縮破壊強度に対して0.1割減少した。
【0088】
〔参考例〕
実施例1と同様にして、アルミナ担体の水洗浄とその後の待機までを行った。具体的には、アルミナ担体(水澤化学工業株式会社製、KOA-R3)30個を、10cmのガラス容器に入れた。このガラス容器に、10℃の純水7.5cmを添加して、5分間浸漬することにより洗浄した(洗浄工程)。洗浄後、ガラス容器よりアルミナ担体30個をとり出して、別の10cmのガラス容器に移し、その後10℃で、30分間待機した。待機後のアルミナ担体の圧縮破壊強度を測定した。
【0089】
原料アルミナ担体の圧縮破壊強度は16.8N、待機後のアルミナ担体の圧縮破壊強度は7.6Nであり、待機後のアルミナ担体の圧縮破壊強度は、原料アルミナ担体の圧縮破壊強度に対して5.4割減少した。
【0090】
実施例1~2、比較例1~3における各乾燥工程後のアルミナ担体の圧縮破壊強度を表1に示す。
【0091】
【表1】
【0092】
〔まとめ〕
参考例より、アルミナ担体の強度は、アルミナ担体を水洗浄して排水し、水を吸収させて待機する工程で、大幅に低下することが分かる。
【0093】
また、実施例1より、水洗浄後のアルミナ担体を、水から取り出して、水を含有した状態で密封乾燥(含水蒸気雰囲気中で、水蒸気を供給せずに乾燥)することにより、水洗後に強度が低下していたアルミナ担体の強度は、水洗浄前よりもさらに向上していることが分かる。そして、当該乾燥後のアルミナ担体を使用することにより、強度に優れたオキシ塩素化触媒を得ることができることが示された。
【0094】
実施例1及び2はいずれにおいても、水洗浄後のアルミナ担体を、水を含有した状態で密封乾燥(含水蒸気雰囲気中で、水蒸気を供給せずに乾燥)しており、触媒担持工程で得られた、塩化銅及び周期表1属元素の塩化物を担持させたアルミナ担体の乾燥方法が異なっているが、いずれの実施例においても、強度に優れたオキシ塩素化触媒を得ることができることが示された。すなわち、水洗浄後のアルミナ担体を乾燥する第1の乾燥工程において、含水蒸気雰囲気中で、水蒸気を供給せずに乾燥することにより、触媒担持後の乾燥工程(第2の乾燥工程)の乾燥条件に関わらず、強度に優れたオキシ塩素化触媒を得ることができることがわかる。さらに、実施例1と実施例2との比較から、触媒担持後の乾燥工程(第2の乾燥工程)においても、含水蒸気雰囲気中で乾燥することにより、より強度に優れたオキシ塩素化触媒を得ることができることも示された。
【0095】
一方、水洗浄後のアルミナ担体を、乾燥せずに触媒担持を行った比較例1、2では、強度に優れたオキシ塩素化触媒を得ることができなかった。また、水洗浄後のアルミナ担体を、開放状態で乾燥した後、触媒担持を行った比較例3では、乾燥により得られた触媒担持前のアルミナ担体の強度は低く、強度に優れたオキシ塩素化触媒を得ることができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明の一実施形態によれば、強度に優れるオキシ塩素化触媒を提供することができる。それゆえ、本発明の一実施形態は、ポリ塩化ビニルの製造に使用される二塩化エタンを得るオキシ塩素化反応の触媒として、好適に利用できる。