(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111672
(43)【公開日】2024-08-19
(54)【発明の名称】ヒータ及び加熱装置
(51)【国際特許分類】
H05B 3/14 20060101AFI20240809BHJP
H05B 3/10 20060101ALI20240809BHJP
H05B 3/44 20060101ALI20240809BHJP
【FI】
H05B3/14 F
H05B3/10 B
H05B3/44
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023016310
(22)【出願日】2023-02-06
(71)【出願人】
【識別番号】390018315
【氏名又は名称】メトロ電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124420
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 清隆
(72)【発明者】
【氏名】近藤 元博
(72)【発明者】
【氏名】倉田 征治
(72)【発明者】
【氏名】筒井 健
(72)【発明者】
【氏名】高木 真宏
(72)【発明者】
【氏名】森本 敦士
【テーマコード(参考)】
3K092
【Fターム(参考)】
3K092QA01
3K092QA02
3K092QB14
3K092QB32
3K092QB40
3K092QB45
3K092QC37
3K092QC61
3K092RA03
3K092RD10
3K092RD35
3K092SS47
3K092TT13
3K092UC04
(57)【要約】
【課題】発熱量、発熱密度に優れ、より効率的な構成を具備するヒータ、及びそのヒータを備えた加熱装置を提供する。
【解決手段】ヒータ1では、スター結線におけるU,V,W相にそれぞれ炭素質発熱体10が配置されている。ヒータ1は、外部との接続に用いられる接続部14と、接続部14に直接接続されない前配線部12と、接続部14に直接接続される後配線部16と、を備えている。更に、ヒータ1は、炭素質発熱体10並びに前配線部12及び後配線部16を覆う外管2を備えている。外管2は、閉じた前端部を有している。前配線部12は、外管2の閉じた前端部内に配置されている。接続部14は、外管2における閉じた前端部と異なる後端部に配置されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スター結線又はデルタ結線における3つの相にそれぞれ1以上の炭素質発熱体が配置されている
ことを特徴とするヒータ。
【請求項2】
更に、外部との接続に用いられる接続部と、
前記接続部に直接接続されない第1配線部と、
前記接続部に直接接続される第2配線部と、
を備えている
ことを特徴とする請求項1に記載のヒータ。
【請求項3】
前記炭素質発熱体は、長手方向に延びており、
前記炭素質発熱体の第1端部に前記第1配線部が接続されていると共に、前記炭素質発熱体の第2端部に前記第2配線部が接続されており、
更に、前記炭素質発熱体並びに前記第1配線部及び前記第2配線部を覆う外管を備えており、
前記外管は、閉じた端部を有しており、
前記第1配線部は、前記閉じた端部内に配置されており、
前記接続部は、前記外管における前記閉じた端部と異なる端部に配置されている
ことを特徴とする請求項2に記載のヒータ。
【請求項4】
更に、前記炭素質発熱体を覆う内管を備えている
ことを特徴とする請求項1に記載のヒータ。
【請求項5】
前記炭素質発熱体は、蛇行する形状を有している
ことを特徴とする請求項1に記載のヒータ。
【請求項6】
三組の前記炭素質発熱体は、三角形状に配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載のヒータ。
【請求項7】
三相交流電源により発熱する炭素質発熱体を備えている
ことを特徴とするヒータ。
【請求項8】
請求項1から請求項7の何れかに記載のヒータが用いられる
ことを特徴とする加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱対象を加熱可能なヒータ、及びヒータを備えた加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
赤外線ヒータとして、特許第4939961号公報(特許文献1)に記載されたものが知られている。
この赤外線ヒータでは、内管3内における炭素質発熱体2の長手方向の各端部に接続された2本のリード線8,8が、端子棒13と、外管4及び内管3の間の導電棒16並びに端子棒18とに、それぞれつながっている。
この赤外線ヒータは、一対の端子棒13,18を介して炭素質発熱体2に対して通電可能となり、この通電によって炭素質発熱体2が赤熱し、赤外線放射熱を発生させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の赤外線ヒータでは、内管3内の1つの炭素質発熱体2が、その長手方向両端部に接続された2本のリード線8,8を介して通電される。
よって、赤外線ヒータの発熱量及び発熱密度に向上の余地がある。
又、端子棒13と同じ側に端子棒18が配置される場合、外管4及び内管3の間において長手方向に延びる導電棒16が必要となる。上記と異なり端子棒13,18が長手方向の異なる端部にそれぞれ配置される場合、赤外線ヒータを取り付ける加熱装置において、2箇所の端子棒接続部、及びそれらへの配線が必要となる。
【0005】
そこで、本発明の主な目的は、発熱量、発熱密度が向上したヒータ、及びそのヒータを備えた加熱装置を提供することである。
又、本発明の別の主な目的は、より効率的な構成を具備するヒータ、及びそのヒータを備えた加熱装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書は、ヒータを開示する。このヒータでは、スター結線又はデルタ結線における3つの相にそれぞれ1以上の炭素質発熱体が配置されている。
又、ヒータは、三相交流電源により発熱する炭素質発熱体を備えている。
他方、本明細書は、加熱装置を開示する。この加熱装置では、上述のヒータが用いられている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の主な効果は、発熱量、発熱密度が向上したヒータ、及びそのヒータを備えた加熱装置が提供されることである。
又、本発明の別の主な効果は、より効率的な構成を具備するヒータ、及びそのヒータを備えた加熱装置が提供されることである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係るヒータの上面、右面、及び後面を示す斜視図である。
【
図2】
図1のヒータの下面、左面、及び前面を示す斜視図である。
【
図4】
図1のヒータの前後方向中央横断面図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る加熱装置の上面、右面、及び後面を示す斜視図である。
【
図9】
図8の加熱装置の下面、左面、及び前面を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る実施の形態の例が、その変更例と共に、適宜図面に基づいて説明される。
尚、当該形態は、下記の例及び変更例に限定されない。
【0010】
図1は、当該形態に係るヒータ1の上面、右面、及び後面を示す斜視図である。
図2は、ヒータ1の下面、左面、及び前面を示す斜視図である。
図3は、ヒータ1の一部分解斜視図である。
図4は、ヒータ1の前後方向中央横断面図である。
ヒータ1は、ランプヒータであり、外管2と、複数(3つ)の内管3と、通電部4と、を有する。
尚、ヒータ1の長手方向が前後方向とされ、前後方向に交わる方向であってヒータ1における熱の主な放射方向が上下方向とされ、前後方向及び上下方向に交わる方向(炭素質発熱体10の幅方向)が左右方向とされる。かようなヒータ1の方向は、説明の便宜上定められたものであり、各種の部材及び部分の移動並びに設置の態様等により、変化することがある。
【0011】
外管2は、石英ガラス製であり、透光性を有している。外管2は、前後に延びており、前後の各端部が閉塞された円筒状である。尚、外管2の材質は、赤外線を通し耐熱性を有していれば、石英ガラス以外であっても良い。又、外管2の形状は、角筒状等、円筒状以外であっても良い。
外管2の前端部は、半球面状である。
外管2の後端部は、水平な板状に形成された外管板状部5となっている。
【0012】
各内管3は、石英ガラス製であり、透光性を有している。各内管3は、前後に延びており、前後の各端部が内部の部材を通さず流体を通す程度に開放された円筒状である。少なくとも何れかの内管3における材質及び形状の少なくとも一方は、外管2と同様に変更可能である。
各内管3の前端部は、水平な板状に形成された内管前板状部7となっている。
各内管3の後端部は、水平な板状に形成された内管後板状部8となっている。
各内管3は、外管2内に配置されている。
外管2及び各内管3の内部には、アルゴンガス等の不活性ガスが封入されており、通電部4の酸化による劣化が抑制されている。尚、不活性ガスの封入は、省略されても良い。
【0013】
通電部4は、複数(3枚)の炭素質発熱体10と、第1配線部としての前配線部12と、接続部14と、第2配線部としての後配線部16と、を有する。
【0014】
各炭素質発熱体10は、長手方向に延びており前後左右に広がる板状の部材である。
各炭素質発熱体10は、炭素質の板である。各炭素質発熱体10は、水平な姿勢となっている。尚、各炭素質発熱体10の少なくとも何れかの姿勢は、水平以外であっても良い。又、各炭素質発熱体10の少なくとも何れかの形状は、板状以外であっても良い。
各炭素質発熱体10は、端部を除く全体において左右両側から等間隔で交互に同じ長さのスリット18が入れられる。よって、各炭素質発熱体10は、蛇行する形状となっている。尚、一部のスリット18の長さは、他のスリット18の長さに対して長くあるいは短くされても良い。又、一部のスリット18間の大きさは、他のスリット18間の大きさに対して大きくあるいは小さくされても良い。
各炭素質発熱体10は、通電により、赤外線を放射して発熱する。各炭素質発熱体10におけるスリット18の配置態様により、各炭素質発熱体10の抵抗が調整され、赤外線の放射量が調整されて、発熱量が調整される。例えば、各炭素質発熱体10の中央部におけるスリット18間の大きさよりその前後におけるスリット18間の大きさが大きくされると、各炭素質発熱体10の中央部における抵抗がその前後に比べて大きくなり、各炭素質発熱体10の中央部における赤外線の放射量がその前後に比べて多くなって、各炭素質発熱体10の中央部における発熱量がその前後に比べて大きくなり、各炭素質発熱体10の中央部における赤外線の放射量がその前後に比べて大きくなる。
各炭素質発熱体10は、同じ大きさの金属に比べて軽く、よって、ヒータ1は、同程度の大きさの金属製の発熱体を用いたヒータより軽量である。又、各炭素質発熱体10は、赤外線を発し、赤外線により加熱対象を加熱するため、ヒータ1は、離れた加熱対象であっても効率的に加熱可能であるし、高熱の加熱対象に対し伝熱量の低減が抑制された状態で加熱可能である。更に、各炭素質発熱体10が電力印可に応じて瞬時に発光(赤熱)するため、ユーザはヒータ1の作動状態を把握し易い。
【0015】
各炭素質発熱体10は、上に2枚、下に1枚配置される状態で、内管3内に保持されている。各炭素質発熱体10の左右方向の中央部は、主に
図4に示されるように、後側から前方へ見て逆正三角形状に配置されている。
各炭素質発熱体10における表面である上面及び下面からの赤外線放射量は、各炭素質発熱体10における肉厚面である前面、後面、左面及び右面からの赤外線放射量より多い。即ち、各炭素質発熱体10における赤外線放射は、主に上面及び下面からなされ、各炭素質発熱体10の熱放射には指向性が存在する。
尚、各炭素質発熱体10の中心部は、後側から前方へ見て正三角形状に配置されていても良いし、二等辺三角形状に配置されていても良いし、他の三角形状に配置されていても良い。以下、これらの中心部の配置は、三角形状の中心部配置とまとめて称されることがある。各炭素質発熱体10は、仮想的な正三角形又は二等辺三角形等に沿うように配置されても良く、この場合と三角形状の中心部配置とを含めて、各炭素質発熱体10の三角形状の配置と称されることがある。かように各炭素質発熱体10が仮想的な多角形の各辺に沿うかあるいは仮想的な多角形の各辺と直交するように配置されれば、ヒータ1における熱放射が無指向性(全方位均一性)に近づく。又、外管2及び各内管3の少なくとも何れかの内部に、赤外線を反射する1以上の反射板が設けられても良い。反射板は、全部が外管2又は各内管3の内壁に接触していても良いし、一部又は全部が当該内壁から離れていても良い。反射板は、外管2及び各内管3の少なくとも何れかの下部に配置されても良い。
【0016】
図5は、
図2の前部拡大図である。
前配線部12は、前リード線部20と、炭素質発熱体10毎の前配線接続部22と、を有する。
前配線部12は、各炭素質発熱体10の前端部(第1端部)に接続される。
【0017】
前リード線部20は、炭素質発熱体10毎の前リード線24と、結線部26と、を有する。
各前リード線24は、前後に延びている。各前リード線24は、導線であり、非導電性の被覆部を有していない。各前リード線24は、対応する内管3の内管前板状部7を通過している。各前リード線24の前端部は、外管2内であって対応する内管3の前側に配置されている。各前リード線24の後端部は、対応する内管3の前部内に配置されている。尚、各前リード線24の少なくとも何れかは、非導電性の被覆部を有していても良い。
結線部26は、外管2の前端部内に配置されており、各前リード線24の前端部を互いに電気的に接続している。結線部26及び各前リード線24の導電部の前端部は、互いに溶着されている。尚、結線部26及び各前リード線24の導電部の前端部は、溶着に代えて、あるいは溶着と共に、かしめ等で接続されても良い。
【0018】
各前配線接続部22は、複数箇所で屈曲した導電板により形成されており、上スペーサ部32と、第1屈曲部33と、上板部34と、左右一対の第2屈曲部35と、凹部36と、下板部37と、第3屈曲部38と、下スペーサ部39と、を有する。
上スペーサ部32は、前方から見て、内管3の内部空間の断面の上部形状即ち上半円状となっている。
第1屈曲部33は、上スペーサ部32及び上板部34の間に配置されている。
上板部34は、水平姿勢となっている。
各第2屈曲部35は、上板部34及び下板部37の間に配置されている。第2屈曲部35は、上板部34及び下板部37の間における左右方向の両端部に配置されている。
凹部36は、左右の第2屈曲部35の間に配置されている。凹部36は、各第2屈曲部35に対して後方に凹んでいる。
下板部37は、水平姿勢となっている。下板部37及び上板部34は、各第2屈曲部35及び凹部36の後側に配置されており、互いに向かい合っている。下板部37及び上板部34の間には、凹部36を介して、対応する前リード線24の後端部が導入され、この導入、及び下板部37及び上板部34の少なくとも一方への前リード線24の後端部の接触により、前配線接続部22と対応する前リード線24とが電気的に接続されている。又、下板部37及び上板部34の間には、対応する炭素質発熱体10の前端部が後方から導入され、この導入、及び下板部37及び上板部34の少なくとも一方への炭素質発熱体10の前端部の接触により、前配線接続部22と対応する炭素質発熱体10とが電気的に接続されている。よって、前リード線24と、対応する炭素質発熱体10とは、前配線接続部22を介して、互いに電気的に接続されている。尚、炭素質発熱体10及び対応する前リード線24が直接電気的に接続されていても良い。
第3屈曲部38は、下板部37及び下スペーサ部39の間に配置されている。
下スペーサ部39は、前方から見て、内管3の内部空間の断面の下部形状即ち下半円状となっている。
各前配線接続部22は、内管3の前部内に配置されており、上スペーサ部32の肉厚部及び下スペーサ部39の肉厚部が内管3の内壁に接触することにより、対応する炭素質発熱体10を内管3内で水平に保持している。
【0019】
前配線部12は、外部との接続に用いられる端子である接続部14に直接接続されていない。
前配線部12は、外管2の閉じた前端部内に配置されている。
【0020】
図6は、
図2の後部拡大図である。
接続部14は、炭素質発熱体10(相)毎の電極ピン42と、非導電性の電極ピンケース44と、を有する。
各電極ピン42は、金属製であり、導電性を呈していて、前後方向に延びており、左右に並べられている。
電極ピンケース44は、耐熱性を呈する。電極ピンケース44の前部における上下方向の中央部には、その上下に対して後方に窪む窪み部48が形成されている。窪み部48の上下方向の大きさは、外管板状部5の上下方向の大きさ(厚さ)と同様とされており、窪み部48内に、外管板状部5(の前端部以外)が入っている。尚、電極ピンケース44は、通電部4あるいは接続部14の構成要素とされず、通電部4あるいは接続部14から独立した構成要素とされても良い。
各電極ピン42は、窪み部48の後方に配置されており、電極ピンケース44の後部に保持されている。
各電極ピン42は、外部電源に接続されるヒータ1の端子である。各電極ピン42の後端部は、外部に露出している。
尚、接続部14は、端子としての電極ピン42を用いた端子部に代えて、リード線を用いたものとされても良い。このリード線は、後述の後リード線部50と一体であっても良い。又、接続部14として、端子棒である電極ピン42を使用したもの以外、及びリード線を使用したもの以外が用いられても良い。
【0021】
後配線部16は、後リード線部50と、炭素質発熱体10毎の後配線接続部52と、を有する。
後配線部16は、各炭素質発熱体10の後端部(第2端部)に接続される。
【0022】
後リード線部50は、炭素質発熱体10毎の後リード線54及び抵抗素子56を有する。
各後リード線54は、前後に延びている。各後リード線54は、導線であり、非導電性の被覆部を有していない。各後リード線54は、対応する内管3の内管後板状部8を通過している。各後リード線54の前端部は、対応する内管3の後部内に配置されている。各後リード線54の後部は、外管2内であって対応する内管3の後側に配置されている。各後リード線54の後端部は、対応する電極ピン42に電気的に接続されている。尚、各後リード線54の少なくとも何れかは、非導電性の被覆部を有していても良い。
各抵抗素子56は、対応する後リード線54に介装されている。各抵抗素子56は、外管板状部5内に配置されている。各抵抗素子56は、対応する炭素質発熱体10への電流及び電圧の少なくとも一方を調節する。
外管板状部5は、形成前に各後リード線54及び各抵抗素子56を通した状態で、外管2の後端部を板状に変形することで封止して形成されるところ、その封止の程度は、酸素分子の透過を抑制する観点から、隙間の大きさが0.03μm(マイクロメートル)以上0.05μm以下となる程度であることが好ましい。
又、内管3の端部は、炭素質発熱体10等が出て行かない程度に開放されているため、炭素質発熱体10同士の接触等の抑制が図られつつ、端部非開放の場合に発生し得る内管3の内圧上昇及びこれに基づく内管3の破損の抑制が図られる。
【0023】
各後配線接続部52は、複数箇所で屈曲した導電板により形成されており、上スペーサ部62と、第1屈曲部63と、上板部64と、左右一対の第2屈曲部65と、凹部66と、下板部67と、第3屈曲部68と、下スペーサ部69と、を有する。
上スペーサ部62は、後方から見て、内管3の内部空間の断面の上部形状即ち上半円状となっている。
第1屈曲部63は、上スペーサ部62及び上板部64の間に配置されている。
上板部64は、水平姿勢となっている。
各第2屈曲部65は、上板部64及び下板部67の間に配置されている。第2屈曲部65は、上板部64及び下板部67の間における左右方向の両端部に配置されている。
凹部66は、左右の第2屈曲部65の間に配置されている。凹部66は、各第2屈曲部65に対して前方に凹んでいる。
下板部67は、水平姿勢となっている。下板部67及び上板部64は、各第2屈曲部65及び凹部66の前側に配置されており、互いに向かい合っている。下板部67及び上板部64の間には、凹部66を介して、対応する後リード線54の前端部が導入され、この導入、及び下板部67及び上板部64の少なくとも一方への後リード線54の前端部の接触により、後配線接続部52と対応する後リード線54とが電気的に接続されている。又、下板部67及び上板部64の間には、対応する炭素質発熱体10の後端部が前方から導入され、この導入、及び下板部67及び上板部64の少なくとも一方への炭素質発熱体10の後端部の接触により、後配線接続部52と対応する炭素質発熱体10とが電気的に接続されている。よって、後リード線54と、対応する炭素質発熱体10とは、後配線接続部52を介して、互いに電気的に接続されている。尚、炭素質発熱体10及び対応する後リード線54が直接電気的に接続されていても良い。
第3屈曲部68は、下板部67及び下スペーサ部69の間に配置されている。
下スペーサ部69は、後方から見て、内管3の内部空間の断面の下部形状即ち下半円状となっている。
各後配線接続部52は、内管3の後部内に配置されており、上スペーサ部62の肉厚部及び下スペーサ部69の肉厚部が内管3の内壁に接触することにより、対応する炭素質発熱体10を内管3内で水平に保持している。
【0024】
後配線部16は、外部との接続に用いられる端子である接続部14と、直接接続されている。より詳しくは、後配線部16の後リード線部50は、接続部14の各電極ピン42と、直接接続されている。
後配線部16は、外管2の閉じた後端部内に配置されている。後配線部16は、外部に一部露出する接続部14の各電極ピン42に直接つながっている。
【0025】
かような通電部4により、
図7に示されるような回路が形成される。尚、
図7において、抵抗素子56は何れも省略されている。
即ち、抵抗としての各炭素質発熱体10がスター結線される。
各炭素質発熱体10は、各電極ピン42が三相交流電源に接続されることで通電し、赤外線を放射して発熱する。より詳しくは、各電極ピン42が順にU,V,W相であるとして、順に三相交流電源のR,S,T相に接続されることで、各炭素質発熱体10が通電し、赤外線を放射して発熱する。
【0026】
例えば、200Vの三相交流電源で駆動可能なヒータ1の発熱密度は、100Vの単相交流での炭素質発熱体10の発熱密度に比べ、十分に大きくなる。
又、200Vの三相交流電源で駆動可能なヒータ1における炭素質発熱体10の単位面積(単位長さ)当たりの電力は、100Vの単相交流での炭素質発熱体10の単位面積(単位長さ)当たりの電力より大きくなり、ヒータ1における電力供給の開始時点から所望する発熱量に到達する時点までの時間(立ち上がり時間)は、100Vの単相交流での立ち上がり時間より短くなる。
更に、200Vの三相交流電源で駆動可能なヒータ1の炭素質発熱体10と、100Vの単相交流で駆動される炭素質発熱体10とで同程度の発熱密度を得る場合、ヒータ1の炭素質発熱体10に流れる電流は、100Vの単相交流での炭素質発熱体10に流れる電流より小さくなるため、ヒータ1の炭素質発熱体10の耐久性は、100Vの単相交流での耐久性より優れる。
加えて、200Vの三相交流電源で駆動されるヒータ1において、1つの炭素質発熱体10が断線したとしても、ヒータ1は、残る2つの炭素質発熱体10に100Vずつ計200Vの電圧が印加された状態で点灯を続け、直ちに不点灯にはならない。
【0027】
図8及び
図9は、複数(3本)のヒータ1を用いた加熱装置101の斜視図である。尚、ヒータ1は、1本を含め2本以下であっても良いし、4本以上であっても良い。
加熱装置101の加熱対象は、どのようなものであっても良く、例えば、製品製造時の材料及び金型の少なくとも一方、空調及び乾燥の少なくとも一方等のための空気等の気体、食品である。
加熱装置101は、ハウジング102と、装置側接続部104と、導線部106と、電源接続部108と、を有する。
【0028】
ハウジング102は、金属製であり、上下が開放されて、上開口部及び下開口部が設けられた枠状である。尚、ハウジング102の上面又は下面の一部又は全部は、開放されず、上閉塞部又は下閉塞部で覆われていても良い。
ハウジング102は、ヒータ1を、それぞれ前後に延びる状態で、互いに左右に並ぶように保持する。
ハウジング102は、複数(2つ)のハウジング側部110と、前カバー112と、前取っ手114と、複数(2本)の前脚部116と、後カバー118と、後取っ手120と、導線端部カバー122と、複数(2本)の後脚部124と、を有する。
【0029】
各ハウジング側部110は、複数の孔を有する板状であり、前後上下に広がっている。
前カバー112は、上部と下部とから成り、各ヒータ1の前端部を覆っている。前カバー112の左右両側に、対応するハウジング側部110の前端部が固定されている。尚、前カバー112は、各ヒータ1の少なくとも何れかを保持しても良い。
前取っ手114は、上から見て“U”字状であり、前カバー112の前面に取り付けられる。前取っ手114は、前カバー112から前方へ突出している。
各前脚部116は、前カバー112の前面の左右に取り付けられており、前方及び下方に延びている。各前脚部116の下面は、加熱装置101の最下面となっている。
【0030】
後カバー118は、上部と下部とから成り、各ヒータ1の後端部及び装置側接続部104を覆っている。後カバー118の左右両側に、対応するハウジング側部110の後部が固定されている。尚、後カバー118は、各ヒータ1の少なくとも何れかを保持しても良い。
後取っ手120は、前から見て逆“U”字状であり、後カバー118の上面に取り付けられる。後取っ手114は、後カバー118から上方へ突出している。
導線端部カバー122は、上部及び後部を有する折り曲げ板状であり、複数のスリットを有していて、装置側接続部104の後部及び導線部106の前端部を覆う。導線端部カバー122の左右両側に、対応するハウジング側部110の後端部が固定されている。
各後脚部124は、導線端部カバー122の後面の左右に取り付けられており、後方及び下方に延びている。各後脚部124の下面は、加熱装置101の最下面となっている。
【0031】
装置側接続部104は、ヒータ1毎にヒータ電極ピン受け部(図示略)を有している。各ヒータ電極ピン受け部は、ブロック状のヒータ電極ピン受け部本体と、その前面から後方に延びる電極ピン42毎のヒータ電極ピン受け穴と、を有する。各ヒータ電極ピン受け穴は、対応する電極ピン42を受け入れ、その際に電極ピン42と電気的に接続される。
尚、装置側接続部104は、複数設けられても良い。
【0032】
導線部106は、複数(3本)の導線(図示略)と、各導線をまとめて内包する被覆130と、ボックス部132と、を含む。
被覆130内の3本の導線は、各ヒータ1のU相の電極ピン42が入るR相の各ヒータ電極ピン受け穴とつながるR線と、各ヒータ1のV相の電極ピン42が入るS相の各ヒータ電極ピン受け穴とつながるS線と、各ヒータ1のW相の電極ピン42が入るT相の各ヒータ電極ピン受け穴とつながるR線と、から成る。尚、各ヒータ電極ピン受け穴と導線との接続は、並列であっても良いし、直列であっても良いし、他の態様であっても良い。
ボックス部132は、被覆130及び各導線に介装され、各ヒータ1へ供給する電力を調整する。
尚、導線部106は、ヒータ1の通電部4に対し、端子を介さずに直接接続されても良い。この場合、端子受けとしての装置側接続部104は、省略される。装置側接続部104及び導線部106の少なくとも一方は、上記以外のものとされても良い。
【0033】
電源接続部108は、三相交流電源(図示略)に接続される。
電源接続部108は、導線部106のR線につながり三相交流電源のR相に接続されるR端子(図示略)と、導線部106のT線につながり三相交流電源のT相に接続されるT端子(図示略)と、導線部106のS線につながり三相交流電源のS相に接続されるS端子(図示略)と、を有する。
尚、加熱装置101は、電源のオンオフを行うスイッチを備えていても良い。
【0034】
以下、このようなヒータ1及び加熱装置101の動作例が説明される。
ユーザは、加熱装置101におけるハウジング102の開口部を1以上の加熱対象に隣接あるいは接触させ、電源接続部108を三相交流電源に接続する。すると、各ヒータ1に電力が供給され、各炭素質発熱体10が赤外線を放射する。加熱対象は、赤外線により加熱される。
尚、加熱対象は、ハウジング102の上開口部の上側のみに配置されても良いし、下開口部の下側のみに配置されても良いし、上開口部の上側及び下開口部の下側の双方に配置されても良い。
【0035】
ユーザは、加熱装置101による加熱が完了すると、電源接続部108の三相交流電源に対する接続を解除する。すると、各ヒータ1への電力の供給が遮断され、各炭素質発熱体10の赤外線の放射が停止して、赤外線による加熱対象の加熱が停止する。
尚、各ヒータ1及び加熱対象の少なくとも一方の温度を検知するセンサ、及びセンサ及び各ヒータ1と電気的に接続されて各ヒータ1が制御される制御部が設けられ、制御部が、センサにより検知された温度に基づいて、各ヒータ1のオンオフ及び出力(発熱量、赤外線放射量)の少なくとも一方を制御しても良い。又、加熱装置101を加熱対象に対して移動させる移動手段が設けられても良い。更に、移動手段に代えて、あるいは移動手段と共に、加熱対象を加熱装置101に対して搬送する搬送手段が設けられても良い。搬送手段は、例えば、加熱装置101のヒータ1の隣接部に対して加熱対象を搬送するコンベヤであっても良いし、搬入部からヒータ1の隣接部を経て搬出部まで加熱対象を搬送するコンベヤであっても良い。
【0036】
何れかのヒータ1において炭素質発熱体10が寿命等により破断したとき等のように、ヒータ1の交換を要する場合、ユーザは、適宜前カバー112を外したうえで、加熱装置101の装置側接続部104から交換対象のヒータ1を前方へ抜き取り、新たなヒータ1の接続部14(の各電極ピン42)を装置側接続部104(の対応するヒータ電極ピン受け穴)に差し込むだけで、短時間で簡単に行える。
又、ヒータ1単体で三相交流にて駆動可能であるため、一部のヒータ1が加熱装置101から外されていても、加熱装置101は動作可能であり、ユーザはヒータ1の本数を選択可能であり、加熱装置101の発熱量及び消費電力量を調整可能である。
更に、一部のヒータ1の抵抗(発熱量、供給電力)は、他のヒータ1の抵抗(発熱量、供給電力)と異なるものとされても良く、加熱装置101では、かような異なる種類のヒータ1の混在動作が可能で、ユーザは発熱パターンを調節することができる。
【0037】
かようなヒータ1及び加熱装置101は、次のような作用効果を奏する。
即ち、ヒータ1では、スター結線におけるU,V,W相にそれぞれ炭素質発熱体10が配置されている。
よって、三相交流電源に接続されることで、単相交流に接続される場合に比べて発熱量、発熱密度が向上したヒータ1が提供される。
【0038】
更に、ヒータ1は、外部との接続に用いられる接続部14と、接続部14に直接接続されない前配線部12と、接続部14に直接接続される後配線部16と、を備えている。よって、炭素質発熱体10における接続部14と反対側の端部から接続部14へ長手方向に延びる配線が不要であり、より効率的な構成を具備するヒータ1が提供される。
又、炭素質発熱体10は、長手方向に延びており、炭素質発熱体10の前端部に前配線部12が接続されていると共に、炭素質発熱体10の後端部に後配線部16が接続されており、更に、ヒータ1は、炭素質発熱体10並びに前配線部12及び後配線部16を覆う外管2を備えており、外管2は、閉じた前端部を有しており、前配線部12は、外管2の閉じた前端部内に配置されており、接続部14は、外管2における閉じた前端部と異なる後端部に配置されている。よって、炭素質発熱体10並びに前配線部12及び後配線部16を保護する外管2内に炭素質発熱体10並びに前配線部12及び後配線部16がより効率良く配置される。
【0039】
更に、ヒータ1は、炭素質発熱体10を覆う内管3を備えている。よって、炭素質発熱体10が物理的接触及びショートから保護される。
又、炭素質発熱体10は、蛇行する形状を有している。よって、形状を調整することで、炭素質発熱体10の抵抗ひいては発熱量、発熱密度が簡単に調整される。
又更に、三組の炭素質発熱体10は、三角形状に配置されている。よって、炭素質発熱体10の群が入り得る仮想的な円筒の径が、各炭素質発熱体10において赤外線の主な放射面である上面及び下面の少なくとも一方を互いに適宜揃えた状態においても、より小さくなる。従って、ヒータ1が、発熱量、発熱密度に配慮しつつ、よりコンパクトになる。
【0040】
又、ヒータ1は、三相交流電源により発熱する各炭素質発熱体10を備えている。よって、発熱量、発熱密度が向上したヒータ1が提供される。
加えて、加熱装置101では、上述のヒータ1が用いられる。よって、発熱量、発熱密度が向上し、より効率的な構成を具備する加熱装置101が提供される。
【0041】
尚、本発明の上記形態又は変更例は、更に次の変更例を適宜有する。
加熱装置101において、各ヒータ1の一部又は全部が左右方向に延びるように配置される等、ヒータ1及び加熱装置101における各種の部材又は部分の個数、材質及び配置の少なくとも何れかが変更されても良い。各種の部材又は部分の個数の変更には、0個とすること、即ち各種の部材又は部分の省略が含まれても良い。
【符号の説明】
【0042】
1・・ヒータ、2・・外管、4・・内管、10・・炭素質発熱体、12・・前配線部(第1配線部)、14・・接続部、16・・後配線部(第2配線部)、101・・加熱装置。