(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111675
(43)【公開日】2024-08-19
(54)【発明の名称】主塔の構築方法
(51)【国際特許分類】
E01D 19/14 20060101AFI20240809BHJP
E01D 11/04 20060101ALI20240809BHJP
【FI】
E01D19/14
E01D11/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023016313
(22)【出願日】2023-02-06
(71)【出願人】
【識別番号】000174943
【氏名又は名称】三井住友建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中積 健一
(72)【発明者】
【氏名】吉村 浩一
(72)【発明者】
【氏名】平城 栄治
(72)【発明者】
【氏名】川根 昌也
(72)【発明者】
【氏名】小平 健太
【テーマコード(参考)】
2D059
【Fターム(参考)】
2D059AA27
2D059AA41
2D059BB08
2D059DD27
(57)【要約】
【課題】エクストラドーズド橋や斜張橋の主塔に関して、施工場所での作業を軽減し、工期を短縮できる主塔の構築方法を提供する。
【解決手段】主塔は、鋼殻部材12と、鋼殻部材12の内部に設けられた内部コンクリート部13と、鋼殻部材12の外部に設けられた外部コンクリート部14を含む。斜材が定着される斜材定着鋼殻部材12bは、工場等にて、斜材が挿通される外筒管25bを取り付けた状態に製造される。斜材定着鋼殻部材12bが所定の位置に設置されると、外筒管25bの一部は、その斜材定着鋼殻部材12bよりも一段下の外部コンクリート部14を通過する。このため、各段の外部コンクリート部14は、一段上の斜材定着鋼殻部材12bを設置した後に、一段上の内部コンクリート部13と平行して又は前後して形成される。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主塔と、主桁と、前記主塔に定着される一端部及び前記主桁に定着される他端部を含む複数の斜材とを備える橋梁における前記主塔の構築方法であって、前記主塔は、各々が上下に開口した鋼製の筒状部を含んで互いに積み重ねられた複数の鋼殻部材と、複数の前記鋼殻部材の前記筒状部の内部に形成される内部コンクリート部と、複数の前記鋼殻部材の前記筒状部の外部に形成される外部コンクリート部とを含み、
(a)複数の前記鋼殻部材を工場及び/又は現場ヤードにて製造するステップであって、複数の前記鋼殻部材は、最も下段に配置されるべき最下段鋼殻部材と、前記最下段鋼殻部材よりも上方に配置されるべき複数の斜材定着鋼殻部材とを備え、前記斜材定着鋼殻部材は、前記筒状部における橋軸方向の両端の壁を貫通して前記斜材の前記一端部を収容するべき外筒管を更に含む、該ステップと、
(b)前記主塔の基部を構築するステップと、
(c)前記基部に前記最下段鋼殻部材を固定するステップと、
(d)前記最下段鋼殻部材の前記筒状部内に前記内部コンクリート部を形成するべく、該筒状部内の少なくとも前記橋軸方向の両端部にコンクリートを打設するステップと、
(e)その時点で最も上方に位置する前記鋼殻部材に対して、少なくともその橋軸方向の両端部を収容する第1型枠を設置し、該鋼殻部材の上に前記斜材定着鋼殻部材を載置するステップであって、該斜材定着鋼殻部材から延出する前記外筒管の一部が、該第1型枠内に収容される、該ステップと、
(f)前記内部コンクリート部の一部を形成するべく、該斜材定着鋼殻部材内の少なくとも前記橋軸方向の両端部に前記外筒管を埋設するようにコンクリートを打設し、前記外部コンクリート部の一部を形成するべく、該第1型枠内にコンクリートを打設するステップと、
(g)前記ステップ(e)及び(f)を繰り返すステップと
を備える、構築方法。
【請求項2】
前記ステップ(a)は、前記鋼殻部材の前記筒状部内に配置されるべき内部鉄筋を前記筒状部に取り付けることと、下部が該鋼殻部材の前記筒状部内に配置され、上部が該鋼殻部材の上に載置されるべき他の前記鋼殻部材の前記筒状部内に突入するように構成された連結筋を該鋼殻部材の前記筒状部に取り付けることとを含む、請求項1に記載の構築方法。
【請求項3】
前記ステップ(b)は、前記基部に、上方に延出して、前記外部コンクリート部に埋設されるべき複数の主鉄筋を建て込むことを含む、請求項2に記載の構築方法。
【請求項4】
前記ステップ(a)は、前記筒状部内に配置されて前記主塔の延在方向に延在するシースを、前記筒状部に保持させることを含み、
前記ステップ(e)は、載置された前記斜材定着鋼殻部材に含まれる前記シースを、その下方に位置する他の前記シースに連結することを含み、
前記構築方法は、
(h)互いに連結された前記シース内に緊張材を挿通するステップと、
(i)ステップ(g)及び(h)の後に、前記緊張材を緊張するステップを更に備える、請求項3に記載の構築方法。
【請求項5】
前記主塔は、複数の前記鋼殻部材の前記筒状部内に、前記内部コンクリート部を前記橋軸方向に2つに離間させる中空部を含み、
前記ステップ(a)は、各々の前記鋼殻部材の前記筒状部内において、2つの前記内部コンクリート部における前記中空部との境界面を画成するための第2型枠を、取り外し可能に前記筒状部に取り付けることを含み、
前記ステップ(d)及び(f)では、前記中空部にはコンクリートを打設せず、前記筒状部内へのコンクリートの打設後に前記第2型枠を取り外すことを含む、請求項1に記載の構築方法。
【請求項6】
前記第1型枠は、プレキャストコンクリート型枠を含む、請求項1に記載の構築方法。
【請求項7】
前記外部コンクリート部は、複数の前記鋼殻部材を介して互いに連結されるように、前記橋軸方向に2つに離間している、請求項1に記載の構築方法。
【請求項8】
前記斜材定着鋼殻部材は、高さ調整構造を介して他の前記鋼殻部材上に載置され、
互いに上下に隣接する2つの前記鋼殻部材は、前記筒状部が互いに離間するように前記高さ調整構造を介して互いに隣接し、
前記高さ調整構造は、2つの前記鋼殻部材の一方に設けられた第1支持部と、前記第1支持部に螺合して上下方向に平行な軸線を有する高さ調整ボルトと、2つの前記鋼殻部材の他方に設けられて、前記高さ調整ボルトの先端部が衝当するか、又は前記高さ調整ボルトが螺合する第2支持部とを含む、請求項1に記載の構築方法。
【請求項9】
互いに上下に隣接する2つの前記鋼殻部材間には、上方に配置された前記鋼殻部材の水平位置を調整する水平方向位置調整構造が設けられており、
前記水平方向位置調整構造は、2つの前記鋼殻部材の一方に固定された第3支持部と、前記第3支持部に螺合して水平方向に平行な軸線を有する水平位置調整ボルトと、2つの前記鋼殻部材の他方に固定されて、前記水平位置調整ボルトの先端部が衝当する衝当片とを含む、請求項1に記載の構築方法。
【請求項10】
互いに上下に隣接する2つの前記鋼殻部材間には、上方に配置された前記鋼殻部材の水平位置を調整する水平方向位置調整構造が設けられており、
前記水平方向位置調整構造は、2つの前記鋼殻部材の前記一方に固定された第3支持部と、前記第3支持部に螺合して水平方向に平行な軸線を有する水平位置調整ボルトと、2つの前記鋼殻部材の前記他方に固定されて、前記水平位置調整ボルトの先端部が衝当する衝当片とを含み、
前記第1支持部は、2つの前記鋼殻部材の前記一方の前記筒状部の外周面に固定されて、水平な主面を有する第1鋼板と、前記第1鋼板を貫通して前記高さ調整ボルトを挿通させる第1貫通孔と、前記高さ調整ボルトに螺合して前記第1鋼板に係止される第1ナットとを含み、
前記第2支持部は、2つの前記鋼殻部材の前記他方の前記筒状部の外周面に固定されて、水平な主面を有する第2鋼板と、前記第2鋼板を貫通して前記高さ調整ボルトを挿通させる第2貫通孔と、前記高さ調整ボルトに螺合して前記第2鋼板に係止される第2ナットとを含み、
前記第3支持部は、2つの前記鋼殻部材の前記一方の前記筒状部の外周面及び前記第1鋼板に固定されて、前記上下方向に平行な主面を有する第3鋼板と、前記第3鋼板に固定されて前記水平位置調整ボルトが螺合する第3ナットとを含み、
前記高さ調整構造及び前記水平方向位置調整構造は、前記第3鋼板の上端が前記第2鋼板よりも上方に位置し得るか、前記第3鋼板の下端が前記第2鋼板よりも下方に位置し得るように構成された、請求項8に記載の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主塔と、主桁と、主塔及び主桁に定着される複数の斜材とを備える橋梁における主塔の構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エクストラドーズド橋や斜張橋において、複数の斜材が主塔及び主桁に定着される。複数の斜材は、主塔における橋軸方向の一方の側に定着されるものと、他方の側に定着されるものとを含む。複数の斜材から主塔に伝わる力の水平成分を支持するように、主塔内に、鋼製の筒形状の複数の鋼殻部材を配置し、各々の鋼殻部材の橋軸方向の両端部に1対の斜材を定着させることが提案されている(例えば特許文献1及び2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-204996号公報
【特許文献2】特開2020-105792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
土木及び建築分野においては、施工場所での作業を軽減することや、工期を短縮することが求められている。このようなことは、上記の構造を有する主塔を構築する際にも求められる。このような問題に鑑み、本発明は、上記の構造を有する主塔の構築において、施工場所での作業を軽減し、工期を短縮できる主塔の構築方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために本発明のある態様は、主塔(2)と、主桁(3)と、前記主塔に定着される一端部及び前記主桁に定着される他端部を含む複数の斜材(4)とを備える橋梁(1)における前記主塔の構築方法であって、前記主塔は、各々が上下に開口した鋼製の筒状部(11)を含んで互いに積み重ねられた複数の鋼殻部材(12)と、複数の前記鋼殻部材の前記筒状部の内部に形成される内部コンクリート部(13)と、複数の前記鋼殻部材の前記筒状部の外部に形成される外部コンクリート部(14)とを含み、(a)複数の前記鋼殻部材を工場及び/又は現場ヤードにて製造するステップであって、複数の前記鋼殻部材は、最も下段に配置されるべき最下段鋼殻部材(12a)と、前記最下段鋼殻部材よりも上方に配置されるべき複数の斜材定着鋼殻部材(12b)とを備え、前記斜材定着鋼殻部材は、前記筒状部(11b)における橋軸方向の両端の壁を貫通して前記斜材の前記一端部を収容するべき外筒管(25b)を更に含む、該ステップと、(b)前記主塔の基部(6)を構築するステップと、(c)前記基部に前記最下段鋼殻部材を固定するステップと、(d)前記最下段鋼殻部材の前記筒状部(11a)内に前記内部コンクリート部を形成するべく、該筒状部内の少なくとも前記橋軸方向の両端部にコンクリートを打設するステップと、(e)その時点で最も上方に位置する前記鋼殻部材(n段の鋼殻部材、nは正の整数)に対して、少なくともその橋軸方向の両端部を収容する第1型枠(46,48)(n段)を設置し、該鋼殻部材(n段)の上に前記斜材定着鋼殻部材(n+1段)を載置するステップであって、該斜材定着鋼殻部材(n+1段)から延出する前記外筒管の一部が、該第1型枠内(n段)に収容される、該ステップと、(f)前記内部コンクリート部の一部を形成するべく、該斜材定着鋼殻部材(n+1段)内の少なくとも前記橋軸方向の両端部に前記外筒管を埋設するようにコンクリートを打設し、前記外部コンクリート部の一部を形成するべく、該第1型枠内(n段)にコンクリートを打設するステップと、(g)前記ステップ(e)及び(f)を繰り返すステップとを備える。ここで、「該X」(Xは、構成要素)とは、複数のXの内、その直前に説明した特定のXを指す。例えば、ステップ(e)の「該鋼殻部材」は、その直前に説明した「その時点で最も上方に位置する前記鋼殻部材」を指す。
【0006】
この態様によれば、工場や現場ヤードで外筒管を取り付け済みの鋼殻部材を用いるため、工事現場における鋼殻部材の設置箇所で外筒管と取り付ける必要がなく、設置個所での作業が減り、工期が短縮される。また、各段の外部コンクリート部は、同じ段の内部コンクリート部と並行して形成されるのではなく、それよりも一段上の内部コンクリート部と並行して又は前後して形成されるため、一段上の鋼殻部材に含まれる外筒管を部分的に収容する各段の外部コンクリート部を効率的に形成することができる。
【0007】
上記の態様において、前記ステップ(a)は、前記鋼殻部材(12)の前記筒状部(11)内に配置されるべき内部鉄筋(17)を前記筒状部に取り付けることと、下部が該鋼殻部材の前記筒状部内に配置され、上部が該鋼殻部材の上に載置されるべき他の前記鋼殻部材の前記筒状部内に突入するように構成された連結筋(18)を該鋼殻部材の前記筒状部に取り付けることとを含んでもよい。
【0008】
この態様によれば、内部鉄筋及び連結筋が工場等にて取り付けられるため、鋼殻部材の設置場所においてはこれらを取り付ける作業を省略でき、工期が短縮される。
【0009】
上記の態様において、前記ステップ(b)は、前記基部(6)に、上方に延出して、前記外部コンクリート部(14)に埋設されるべき複数の主鉄筋(10)を建て込むことを含んでも良い。
【0010】
この態様によれば、内部コンクリート部に主鉄筋を配置する必要がないため、内部鉄筋等を含む鋼殻部材を設置個所に配置する際に、主鉄筋が内部鉄筋等に干渉せず、鋼殻部材の配置が容易になる。
【0011】
上記の態様において、前記ステップ(a)は、前記筒状部(11)内に配置されて前記主塔(2)の延在方向に延在するシース(10)を、前記筒状部に保持させることを含み、前記ステップ(e)は、載置された前記斜材定着鋼殻部材(12b)に含まれる前記シースを、その下方に位置する他の前記シースに連結することを含み、前記構築方法は、(h)互いに連結された前記シース内に緊張材(15)を挿通するステップと、(i)ステップ(g)及び(h)の後に、前記緊張材を緊張するステップを更に備えても良い。
【0012】
この態様によれば、各段毎に打設されて主鉄筋を含まない内部コンクリート部が、緊張材によって一体化される。
【0013】
上記の態様において、前記主塔(2)は、複数の前記鋼殻部材(12)の前記筒状部(11)内に、前記内部コンクリート部(13)を前記橋軸方向に2つに離間させる中空部(9)を含み、前記ステップ(a)は、各々の前記鋼殻部材の前記筒状部内において、2つの前記内部コンクリート部における前記中空部との境界面を画成するための第2型枠(16)を、取り外し可能に前記筒状部に取り付けることを含み、前記ステップ(d)及び(f)では、前記中空部にはコンクリートを打設せず、前記筒状部内へのコンクリートの打設後に前記第2型枠を取り外すことを含んでも良い。
【0014】
この態様によれば、あらかじめ、第2型枠が取り付けられた状態で鋼殻部材12が設置個所に配置されるため、設置個所における第2型枠の取り付け作業が省略でき、工期が短縮される。
【0015】
上記の態様において、前記第1型枠(46,48)は、プレキャストコンクリート型枠(46)を含んでも良い。
【0016】
この態様によれば、プレキャストコンクリート型枠が、主塔の一部を構成するため、その取り外し作業を省略でき、工期を短縮することができる。
【0017】
上記態様において、前記外部コンクリート部(14)は、複数の前記鋼殻部材(2)を介して互いに連結されるように、前記橋軸方向に2つに離間していても良い。
【0018】
この態様によれば、主塔の構築後に斜材を架設して、斜材からに引張力によって鋼殻部材が変形しても、その変形は、鋼殻部材における橋軸方向の中央で主に生じるため、外部コンクリート部にひび割れが生じない。また、仮に、外部コンクリート部を鋼殻部材の周囲全体に設けるならば、ひび割れが生じないように、斜材の架設後に外部コンクリート部における橋軸方向の中央部を形成する必要があるが、本態様では、この作業を必要とせず、工期を短縮することができる。
【0019】
上記の態様において、前記斜材定着鋼殻部材(12b)は、高さ調整構造(22)を介して他の前記鋼殻部材(12)上に載置され、互いに上下に隣接する2つの前記鋼殻部材(12)は、前記筒状部(11)が互いに離間するように前記高さ調整構造を介して互いに隣接し、前記高さ調整構造は、2つの前記鋼殻部材の一方に設けられた第1支持部(29)と、前記第1支持部に螺合して上下方向に平行な軸線を有する高さ調整ボルト(30)と、2つの前記鋼殻部材の他方に設けられて、前記高さ調整ボルトの先端部が衝当するか、又は前記高さ調整ボルトが螺合する第2支持部(31)とを含んでも良い。
【0020】
この態様によれば、他の鋼殻部材の上に載置された鋼殻部材の高さ調整が容易となる。また、互いに上下に隣接する鋼殻部材において、筒状部同士が当接しないため、筒状部の上縁及び下縁の不陸等が許容され、筒状部の製造に高い精度が要求されず、安価に筒状部を製造することができる。
【0021】
上記の態様において、互いに上下に隣接する2つの前記鋼殻部材(12)間には、上方に配置された前記鋼殻部材の水平位置を調整する水平方向位置調整構造(23)が設けられており、前記水平方向位置調整構造は、2つの前記鋼殻部材の一方に固定された第3支持部(39)と、前記第3支持部に螺合して水平方向に平行な軸線を有する水平位置調整ボルト(40)と、2つの前記鋼殻部材の他方に固定されて、前記水平位置調整ボルトの先端部が衝当する衝当片(41)とを含んでも良い。
【0022】
この態様によれば、他の鋼殻部材の上に載置された鋼殻部材の水平位置の調整が容易となる。
【0023】
上記の高さ調整構造(22)と水平位置調整構造(23)との双方を含む態様において、前記第1支持部(29)は、2つの前記鋼殻部材(12)の前記一方の前記筒状部(11)の外周面に固定されて、水平な主面を有する第1鋼板(32)と、前記第1鋼板を貫通して前記高さ調整ボルト(30)を挿通させる第1貫通孔(33)と、前記高さ調整ボルトに螺合して前記第1鋼板に係止される第1ナット(34)とを含み、前記第2支持部(31)は、2つの前記鋼殻部材の前記他方の前記筒状部の外周面に固定されて、水平な主面を有する第2鋼板(35)と、前記第2鋼板を貫通して前記高さ調整ボルトを挿通させる第2貫通孔(36)と、前記高さ調整ボルトに螺合して前記第2鋼板に係止される第2ナット(37)とを含み、前記第3支持部(39)は、2つの前記鋼殻部材の前記一方の前記筒状部の外周面及び前記第1鋼板に固定されて、前記上下方向に平行な主面を有する第3鋼板(42)と、前記第3鋼板に固定されて前記水平位置調整ボルト(40)が螺合する第3ナット(43)とを含み、前記高さ調整構造及び前記水平方向位置調整構造は、前記第3鋼板の上端が前記第2鋼板よりも上方に位置し得るか、前記第3鋼板の下端が前記第2鋼板よりも下方に位置し得るように構成されても良い。
【0024】
この態様によれば、第3鋼板が第1鋼板の曲げ剛性を補強するため、鋼材の使用量を低減できる。
【発明の効果】
【0025】
以上の態様によれば、橋軸方向の両端部に斜材が定着された鋼殻部材を含む主塔の構築方法であって、工事現場での作業負担を減らし、工期を短縮できる方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図3】実施形態に係る主塔の構築方法を示す説明図(A:橋幅方向に直交する断面図(B図におけるA-A断面図)、B:水平断面図(A図におけるB-B断面図))
【
図4】実施形態に係る主塔の構築方法を示す説明図(A:橋幅方向に直交する断面図(B図におけるA-A断面図)、B:水平断面図(A図におけるB-B断面図))
【
図5】実施形態に係る主塔の構築方法を示す説明図(A:橋幅方向に直交する断面図(B図におけるA-A断面図)、B:水平断面図(A図におけるB-B断面図))
【
図6】実施形態に係る主塔の構築方法を示す説明図(A:橋幅方向に直交する断面図(B図におけるA-A断面図)、B:水平断面図(A図におけるB-B断面図))
【
図7】実施形態に係る主塔の構築方法を示す説明図(A:橋幅方向に直交する断面図(B図におけるA-A断面図)、B:水平断面図(左側はA図におけるB1-B1断面図であり、右側はA図におけるB2-B2断面図))
【
図8】実施形態に係る主塔の構築方法を示す説明図(A:橋幅方向に直交する断面図(B図におけるA-A断面図)、B:水平断面図(左側はA図におけるB1-B1断面図であり、右側はA図におけるB2-B2断面図))
【
図9】実施形態に係る筒状部(溶接等により肯定されるべき他の部材を含む)の平面図
【
図10】実施形態に係る鋼殻部材の高さ調整構造及び水平位置調整構造の正面図
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
図1は、実施形態に係る橋梁1の主塔2の斜視図(左上部は、内部が見えるように一部を省略して示した)であり、
図2は、実施形態に係る橋梁1の一部断面正面図である。
【0028】
図1及び
図2に示すように、橋梁1は、主塔2と、主桁3と、主塔2及び主桁3に定着される複数の斜材4(
図2では、最も下方に配置されたもの以外の斜材4の図示を省略している)とを備えるエクストラドーズド橋である。
【0029】
主塔2は、橋脚5から上方に延出する基部6と、基部6から上方に延出して複数の斜材4が定着される定着部7と、定着部7から上方に延出する頂部8(
図1では、頂部8の図示を省略している)とを含む。本実施形態においては、橋脚5における橋幅方向の両端部から橋幅方向の外方に傾斜するように斜め上方に延出する1対の主塔2が設けられているが、主塔2は鉛直方向に延在しても良く、橋脚5に連結した主桁3の橋幅方向の中央から上方に延出するように1つの主塔2が設けられても良く、主塔2が橋軸方向に傾斜していても良い。主塔2は、主塔2の延在方向に延在する中空部9を含み、中空部9は、橋梁1の完成後に作業員が点検等の維持管理のために通ることができるように構成されている。
【0030】
基部6及び頂部8は、鉄筋コンクリート造であり、主塔2の延在方向に延在する主鉄筋10(
図3参照)及び水平方向に延在する配力筋(図示せず)を含む。
【0031】
定着部7は、上下に開口した筒状部11を含んで主塔2の延在方向に沿って互いに積み重ねられた複数の鋼殻部材12と、筒状部11内の橋軸方向の両端部に形成された2つの内部コンクリート部13と、筒状部11外に形成されて橋軸方向に2つに離間して配置された外部コンクリート部14と、主塔2の延在方向に緊張力を導入する複数の緊張材15とを含む。定着部7においては、中空部9は、筒状部11内における橋軸方向の中央部に設けられ、内部コンクリート部13は、中空部9によって橋軸方向に2つに離間して配置される。外部コンクリート部14は、主鉄筋10(
図3参照)と配力筋(図示せず)を埋設している。
【0032】
複数の鋼殻部材12は、最も下段に配置される1つの最下段鋼殻部材12aと、最下段鋼殻部材12aよりも上方に配置されて斜材4が定着される複数の斜材定着鋼殻部材12bとを含む。以下、鋼殻部材12に含まれる部材について、最下段鋼殻部材12aに含まれる部材については添え字「a」を付し、斜材定着鋼殻部材12bに含まれる部材については添え字「b」を付し、区別する必要のないときは添え字「a」及び「b」を省略する。
【0033】
図1、
図4、
図7、
図9及び
図10に示すように、各々の鋼殻部材12には、内部コンクリート部13を形成するために使用される型枠16が、筒状部11内に取り外し可能に取り付けられる。各々の鋼殻部材12は、筒状部11と、内部コンクリート部13に埋設される内部鉄筋17及び連結筋18と、筒状部11の内周面及び外周面から突出して内部コンクリート部13及び外部コンクリート部14に埋設されるずれ止め部材19と、内部コンクリート部13に埋設されて緊張材15が挿通されるシース20と、筒状部11に固定された吊り金具21と、互いに上下に隣接する2つの前記鋼殻部材の上下方向の位置を調整する高さ調整構造22と、互いに上下に隣接する2つの前記鋼殻部材の水平方向の位置を調整する水平位置調整構造23とを含む。最下段鋼殻部材12aは、基部6に固定するための固定ブラケット24aを更に含む。斜材定着鋼殻部材12bは、斜材4が挿通されるべき外筒管25bを更に含む。各々の鋼殻部材12は、工場にて、これらの部材を含んだ状態に組み立てられ、型枠16が取り付けられる。
【0034】
筒状部11は、平面視で陸上競技のトラック形状(小判形)、すなわち、矩形の短辺を外側に凸となるように半円で置き換えた形状を呈する。筒状部11は、1枚の鋼板を筒状に湾曲させ、周方向の両端部を溶接又は締結具等により互いに接合することにより製造しても良く、複数の鋼板を筒形状をなすように配置して、溶接又は締結具等により互いに接合することにより製造しても良い。また、筒状部11の平面視における形状は、半円部分が半楕円や円弧であっても良く、全体が楕円形状や矩形であっても良い。
【0035】
型枠16は、内部コンクリート部13における中空部9との境界面を画成するために使用され、内部コンクリート部13の形成後に取り外すことができるように、筒状部11に対して取り外し可能にボルト等の締結具(図示せず)により取り付けられる。型枠16の橋幅方向の両端部が、筒状部11の内周面に当接している。型枠16は、鋼製型枠であることが好ましい。最下段鋼殻部材12aの型枠16aは、平板形状を呈する。斜材定着鋼殻部材12bの型枠16bは、外筒管25bの上端側の開口面に当接する。斜材定着鋼殻部材12bの型枠16bは、上下方向の中間部において筒状部11bにおける橋軸方向の内方に凸になるように屈曲した板形状を呈する。このような屈曲した形状を呈することにより、型枠16bにおける外筒管25bに当接する部分が、外筒管25bの延在方向に直交している。
【0036】
内部鉄筋17は、橋軸方向に延在する鉄筋、橋幅方向に延在する鉄筋、及び主塔2の延在方向に延在する鉄筋を含み、全体が筒状部11における橋軸方向の端部と型枠16とに囲まれた空間内に位置するように、筒状部11に取り付けられる。
【0037】
連結筋18は、その下部が筒状部11における橋軸方向の端部と型枠16とに囲まれた空間内に位置し、その上部が筒状部11及び型枠16の上端よりも上方に突出するように、内部鉄筋17を介して筒状部11に取り付けられる。連結筋18の上部は、その下部が取り付けられた鋼殻部材12の上に載置される他の鋼殻部材12の筒状部11における橋軸方向の端部と型枠16とに囲まれた空間内に突入している。最下段鋼殻部材12aに取り付けられた連結筋18aの下端は、筒状部11aの下端近傍に位置する。斜材定着鋼殻部材12bに取り付けられた連結筋18bの内、上方から見て外筒管25bに重なるように配置される連結筋18bの下端は、外筒管25bの配置を阻害しないように、外筒管25bよりも上方に位置する。連結筋18の内、下方から見て外筒管25bに重なるように配置される連結筋18bの上端は、上方に載置された他の鋼殻部材12の外筒管25bよりも下方に位置する。連結筋18は、下端部及び上端部においてフックを有することが好ましい。特に、外筒管25bの配置を阻害しないように短く設定された連結筋18の端部は、折り曲げ角度が180°のフックを有することが好ましい。連結筋18は、内部コンクリート部13の鉛直方向の引張強度を補強する。
【0038】
ずれ止め部材19は、筒状部11の内周面に溶接等により固定されて内部コンクリート部13に埋設される頭付きスタッドと、筒状部11の外周面に溶接等により固定されて外部コンクリート部14に埋設される頭付きスタッドとを含む。ずれ止め部材19は、頭付きスタッドに代えて、アングル材や孔あき鋼板ジベル等を用いても良く、これらを併用しても良い。
【0039】
シース20は、工場にて、その上端が筒状部11の上端と同じ高さかそれよりも上方に位置するように、内部鉄筋17に仮固定される。シース20は、工事現場にて、そのシース20を含む鋼殻部材12が、他の鋼殻部材12の上に配置された後、他の鋼殻部材12のシース20にカプラーシース継手等により継がれる。シース20は、平面視で、2つの内部コンクリート部13の各々に2か所ずつ、合計4か所に配置される。各々の内部コンクリート部13において、2つのシース20は、互いに橋幅方向に離間している。
【0040】
図9に示すように、吊り金具21は、筒状部11の外周面に溶接又は締結具等により固定されて固定部26と、U字状の金具27と、固定部26に金具27のU字状の両端部を、筒状部11の周方向を軸線に回動可能に連結する軸部28とを含む。吊り金具21は、クレーン等の揚重機(図示せず)で鋼殻部材12を吊るために使用される。
【0041】
図10に示すように、高さ調整構造22は、互いに上下に隣接する2つの鋼殻部材12間において、下方に配置された鋼殻部材12の筒状部11の外面の上部に設けられた第1支持部29と、第1支持部29に螺合して上下方向に平行な軸線を有する高さ調整ボルト30と、上方に配置された鋼殻部材12の筒状部11の外面の下部に設けられて高さ調整ボルト30が螺合する第2支持部31とを含む。
【0042】
第1支持部29は、下方に配置された鋼殻部材12の筒状部11の外周面に溶接等により固定されて、水平な主面を有する第1鋼板32と、第1鋼板32を貫通して高さ調整ボルト30を挿通させる第1貫通孔33と、高さ調整ボルト30に螺合して高さ調整ボルト30の頭部と協働して第1鋼板32を挟持する第1ナット34とを含む。第2支持部31は、上方に配置された鋼殻部材12の筒状部11の外周面に溶接等により固定されて、水平な主面を有する第2鋼板35と、第2鋼板35を貫通して高さ調整ボルト30を挿通させる第2貫通孔36と、高さ調整ボルト30に螺合して第2鋼板35を挟持する1対の第2ナット37とを含む。第2鋼板35の曲げ剛性を高めるため、高さ調整構造22は、筒状部11からの突出方向から見て第2鋼板35に直角に当接するように、第2鋼板35の上面と上方に配置された鋼殻部材12の筒状部11の外周面とに溶接等により固定された補助鋼板38を更に含むと良い。高さ調整ボルト30に対する第2ナット37の位置を変更することにより、第1鋼板32と第2鋼板35との間の距離が変わる。これにより、上方に配置された鋼殻部材12の下方に配置された鋼殻部材12に対する高さ(上下方向の位置)を調整することができる。なお、第2ナット37は、1対設けられることに代えて、第2鋼板35を下方から係止するように1つ設けても良い。また、第2ナット37を設けず、高さ調整ボルト30の先端が第2鋼板35に衝当し、第1ナット34が第1鋼板32に下方から支持され、第1ナット34の高さ調整ボルト30に対する位置を変えることにより、上方に配置された鋼殻部材12の高さを調整しても良い。
【0043】
水平位置調整構造23は、互いに上下に隣接する2つの鋼殻部材12間において、下方に配置された鋼殻部材12の外周面の上部に設けられた第3支持部39と、第3支持部39に螺合して水平方向に平行な軸線を有する水平位置調整ボルト40と、上方に配置された鋼殻部材12の外周面の下部に設けられて、水平位置調整ボルト40の先端部が衝当する衝当片41とを含む。
【0044】
前記第3支持部は、筒状部11からの突出方向から見て第1鋼板32に直角に当接するように第1鋼板32の側端に溶接等により固定され、かつ下方に配置された鋼殻部材12の筒状部11の外周面に溶接等により固定されて、上下方向に平行な主面を有する第3鋼板42と、第3鋼板42の主面に固定されて水平位置調整ボルト40が螺合する第3ナット43とを含む。第3ナット43は、その外周面の一部にて第3鋼板42の主面に溶接等により固定される。第3鋼板42の上端及び第3ナット43は、上方に配置された鋼殻部材12の筒状部11の下端よりも上方に位置する。第3鋼板42は、第1鋼板32に対して直角に当接することにより、第1鋼板32の曲げ剛性を高めている。水平位置調整構造23及び高さ調整構造22は、橋軸方向の互いに反対側に1対、橋幅方向の互いに反対側に2対設けられている。第3ナット43に対する水平位置調整ボルト40の位置を変更することにより、上方に配置された鋼殻部材12の下方に配置された鋼殻部材12に対する水平位置を調整することができる。
【0045】
図4に示すように、固定ブラケット24aは、溶接又は締結具等によって筒状部11aの外面の下端に固定される鉛直片と、鉛直片の下端から筒状部11aに対して外方に延出する水平片とを含むアングル材である。固定ブラケット24aの水平片の下面は、筒状部11aの下縁と面一となっている。固定ブラケット24aの水平片は、アンカーボルト(図示せず)等により、基部6の上面に固定される。固定ブラケット24aは、平面視で、筒状部11aにおける直線状の部分から半円状の部分に切り替わる部分の近傍の4か所に設けられる。
【0046】
図7に示すように、外筒管25bは、斜材4(
図1参照)の一端部が挿入されるべき、鋼製又は樹脂製の円筒形状の部材である。斜材定着鋼殻部材12bの筒状部11bの周壁には、外筒管25bが挿通される貫通孔44bが設けられている。なお、本実施形態では、1つの斜材定着鋼殻部材12bに取り付けられる1対の外筒管25bが左右対称形(「左右」は、
図7の紙面における左右である)になっていないが、これは、主塔2から左右それぞれに延出する主桁3の長さが互いに異なるためである。本実施形態は、左右対称か否かに関わらず適用できる。
【0047】
図2において断面で示される主桁3は、橋軸方向に延在し、主塔2及び橋脚5とラーメン構造を形成している。主桁3は、プレストレストコンクリート造の箱桁であるが、主桁3は、他のコンクリート桁であっても良く、鋼桁であっても良い。橋脚5及び主桁3には、主塔2に設けられた中空部9に連通し、橋幅方向に平行に延在する通路45が設けられている。
【0048】
図1及び
図2に示すように、斜材4は、一端部において主塔2に定着され、他端部において主桁3に定着されて引張力を受けるケーブルを含み、橋幅方向から見て、一端部が他端部に比べて高くなるように斜めに延在する。
【0049】
次に、
図2~
図8を参照して、主塔2の構築方法を説明する。なお、
図4~
図8のA図では、主鉄筋10の図示を省略している。
【0050】
工場において、作業員は、鋼殻部材12を製造し、鋼殻部材12に型枠16を取り付ける。鋼殻部材12は、工場から工事現場に輸送される。なお、鋼殻部材12の組み立ての全部又は一部や、型枠16の鋼殻部材12への取り付けを、工場ではなく、鋼殻部材12が設置されるべき個所の近傍に設けられた作業スペースや資材の保管場所等の現場ヤードで行っても良い。
【0051】
工事現場においては、まず、
図3に示すように、作業員は、基部6を現場打コンクリートによって構築する。構築された基部6の上面からは、外部コンクリート部14(
図1参照)に埋設されるべき主鉄筋10が延出している。主鉄筋10は、必要に応じて、その時点における上端部がコンクリートに埋設される前に、継がれて延長される。基部6を構築するための型枠として、プレキャストコンクリート型枠(図示せず)を使用しても良い。
【0052】
次に、
図4に示すように、作業員は、クレーン等の揚重機(図示せず)を用いて基部6の上面に最下段鋼殻部材12aを載置する。次いで、作業員は、アンカーボルト等(図示せず)によって基部6に固定ブラケット24aを締結することにより、基部6の上面に最下段鋼殻部材12aを固定する。
【0053】
次に、
図5に示すように、作業員は、最下段鋼殻部材12aの筒状部11aの橋軸方向の両端部側の周壁と型枠16aで囲まれた領域に、コンクリートを打設し、筒状部11a内の橋軸方向の両端部に内部コンクリート部13を形成する。作業員は、型枠16aを取り外す。
【0054】
次に、
図6に示すように、作業員は、最下段鋼殻部材12aの橋軸方向の両端部、すなわち、内部コンクリート部13が形成された部分を収容するように、プレキャストコンクリート型枠46(以下、「PCa型枠46」と記載する)を設置する。PCa型枠46は、平面視でコ字形状を呈し、2つ1組で最下段鋼殻部材12aの橋軸方向の一端部を収容する。1組のPCa型枠46は、平面視でコ字形状の端部が互いに対向するように、すなわち、平面視で、中間部分の途切れた矩形をなすように配置される。各々のPCa型枠46は、平面視でコ字形状の一端部が筒状部11の外周面に当接し、他端部間には隙間47が生じている。
【0055】
次に、
図7に示すように、作業員は、クレーン等の揚重機(図示せず)を用いて最下段鋼殻部材12aの上に他の斜材定着鋼殻部材12bを載置し、高さ調整構造22及び水平位置調整構造23(
図10参照)を用いて、載置された斜材定着鋼殻部材12bの高さ及び水平位置を調整する。このとき、上下に積み重ねられた2つの鋼殻部材12において、筒状部11同士は離間しており、その離間距離は、内部コンクリート部13を形成するためのコンクリートの粗骨材の最大寸法よりも小さく、20mm程度である。また、載置された斜材定着鋼殻部材12bの外筒管25bは、その一段下に配置されている2つ1組のPCa型枠46間の隙間47に挿通される。
【0056】
次に、
図8に示すように、作業員は、隙間47を塞ぐ型枠48を設置する。その一段上の斜材定着鋼殻部材12bの外筒管25bは、型枠48を貫通している。型枠48は、PCa型枠46と協働して、外部コンクリート部14を形成するための型枠として機能する。作業員は、最下段鋼殻部材12aの筒状部11a、PCa型枠46及び型枠48に囲まれた領域にコンクリートを打設してその段の外部コンクリート部14を形成し、かつ、その一段上の斜材定着鋼殻部材12bの筒状部11bの橋軸方向の両端部側の内周面と型枠16bで囲まれた領域に、コンクリートを打設し、筒状部11b内の橋軸方向の両端部に内部コンクリート部13を形成する。これらの打設したコンクリートに対して脱型可能になれば、作業員は、型枠16b,48を取り外す。PCa型枠46は、外部コンクリート部14と一体化して主塔2の定着部7の一部を構成する。上下に積み重なった2つの鋼殻部材12の隙間はふさがれていなくとも、その隙間はコンクリートの粗骨材の最大寸法よりも小さい20mm程度であるため、その隙間からの内部コンクリート部13を形成するためのコンクリートの漏れはわずかであり、問題ない。
【0057】
その後、作業員は、
図6~
図8に関して説明した作業を繰り返す。繰り返すにあたって、
図6及び
図7に関する説明における「最下段鋼殻部材12a」は、その時点で最上部に位置する鋼殻部材12と読み替え、
図8に関する説明における「最下段鋼殻部材12a」は、新たに載置された斜材定着鋼殻部材12bよりも一段下の鋼殻部材12と読み替える。
図6~
図8に関して説明した作業は、下段の外部コンクリート部14の形成が、上段の鋼殻部材12の設置とPCa型枠46及び型枠48の設置の後であり、かつ、上段の内部コンクリート部13の形成が、上段の鋼殻部材12の設置の後であれば、作業の順序を入れ替えても良い。
【0058】
定着部7(
図2参照)の最上段においては、作業員は、斜材定着鋼殻部材12bの筒状部11b内に内部コンクリート部13を形成し、最上段のPCa型枠46を設置した後、その上には鋼殻部材12を載置せず、隙間47を型枠48で塞いで、最上段の外部コンクリート部14を形成する。その後、
図2に示すように、作業員は、シース20に緊張材15を挿入し、緊張材15を緊張し、主塔2の延在方向に緊張力を導入する。このようにして、主塔2の定着部7が構築される。
【0059】
定着部7の構築後、作業員は、頂部8を現場打ちコンクリートで構築する。頂部8を構築するための型枠として、プレキャストコンクリート型枠(図示せず)を使用しても良い。
【0060】
なお、
図1に示すように、鋼殻部材12における外部コンクリート部14から露出している部分において、互いに上下に積み重なった2つの鋼殻部材12間の隙間は、コーティング材49で塞がれる。
【0061】
図1及び
図2に示すように、主塔2の構築後、作業員は、張出し架設工法等により主桁3を構築するとともに、主塔2の下段から斜材4を架設する。作業員は、外筒管25bに斜材4の一端部を挿入し、定着具50によって斜材4の一端部を内部コンクリート部13における型枠16によって画成された面に定着させる。
【0062】
実施形態に係る主塔2及びその構築方法の作用効果について説明する。
【0063】
図4及び
図7に示すように、鋼殻部材12は、工場等にて、筒状部11、ずれ止め部材19、吊り金具21、高さ調整構造22、水平位置調整構造23及び固定ブラケット24aだけでなく、内部鉄筋17、連結筋18、シース20及び外筒管25bを含み、かつ型枠16が取り付けられた状態で、その設置場所に配置される。このため、設置場所で内部鉄筋17や型枠16等を取り付ける作業が不要となり、設置場所における作業が軽減され、工期が短縮される。
【0064】
図7及び
図8に示すように、斜材定着鋼殻部材12bは、外筒管25bを含む状態で設置場所に配置されるところ、筒状部11bから斜め下方に延出する外筒管25bは、外部コンクリート部14におけるその斜材定着鋼殻部材12bと同じ高さの部分だけでなく、一段下の鋼殻部材12と同じ高さの部分をも通過する。各段の外部コンクリート部14の形成を、その段の鋼殻部材12内の内部コンクリート部13の形成と並行して行うのではなく、1つ上の段の斜材定着鋼殻部材12bの内部コンクリート部13の形成と並行して又は前後して行うことにより、斜材定着鋼殻部材12bに取り付けられた外筒管25bを目的の位置に配置できる。
【0065】
図3及び
図4に示すように、主鉄筋10を外部コンクリート部14に配置することにより、内部コンクリート部13内に配置されるべき鉄筋を、工場等にてあらかじめ筒状部11内に配置しても、主鉄筋10は、鋼殻部材12の設置個所への配置時に鋼殻部材12内に配置された内部鉄筋17等に干渉せず、鋼殻部材12の配置が容易になる。各段の内部コンクリート部13は連結筋18により連結され、主塔2の延在方向に沿って配置された緊張材15によって互いに一体化される。
【0066】
図6~
図8に示すように、外部コンクリート部14の形成に、PCa型枠46を用いることにより、その部分の型枠の取り外し作業が不要となり、工事現場における作業が減り、工期が短縮される。
【0067】
図1に示すように、斜材4を架設すると、斜材4からの引張力により筒状部11が橋軸方向に引張力を受けて変形する。仮に、外部コンクリート部14を鋼殻部材12の外周面の全体を覆うように設置すると、斜材4からの引張力による筒状部材の変形によって外部コンクリート部14にひび割れが生じる。ひび割れを防ぐために、外部コンクリート部14の一部を斜材4の架設後に形成すると、その作業によって工期が延びる。本実施形態では、2つの外部コンクリート部14が橋軸方向に離間しているため、斜材4からの引張力による筒状部11の変形は、主として筒状部11における外部コンクリート部14から露出している部分に生じるため、斜材4からの引張力による外部コンクリート部14のひび割れは生じ難い。また、外部コンクリート部14の全体が斜材4の架設前に行われるため、工期の延長を抑制することができる。
【0068】
図10に示すように、高さ調整構造22及び水平位置調整構造23により、他の鋼殻部材12の上に新たに載置する斜材定着鋼殻部材12bの位置調整が容易である。また、水平位置調整構造23の第3鋼板42が、第3ナット43及び水平位置調整ボルト40を支持するだけでなく、高さ調整構造22の第1鋼板32の曲げ剛性を高めるため、鋼材の使用量の増大を抑制できる。
【0069】
仮に、鋼製の筒状部11同士を互いに当接させる場合、すなわち、メタルタッチさせる場合は、筒状部11の上縁及び下縁に不陸が生じないようにする等、筒状部11の製造に高い精度が要求される。しかし、本実施形態では、互いに上下に隣接する鋼殻部材12は、高さ調整構造22を介して互いに当接し、筒状部11同士は互いに当接していない。このため、筒状部11の製造に高い精度が要求されず、安価に筒状部11を製造することができる。
【0070】
図1及び
図8に示すように、斜材4から主塔2に伝わる力の水平方向成分は鋼製の筒状部11が主として支持し、鉛直方向成分は、筒状部11及びずれ止め部材19を介して内部コンクリート部13及び外部コンクリート部14が主として支持する。
【0071】
以上で具体的な実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態や変形例に限定されることなく、幅広く変形実施することができる。本発明は、斜張橋の主塔の構築に適用されても良い。最下段鋼殻部材に斜材が定着されても良い。高さ調整構造及び水平位置調整機構に関して、互いに上下に隣接する鋼殻部材において、第1及び第3支持部が上方に配置された鋼殻部材に設けられ、第2支持部が下方に配置された鋼殻部材に設けられても良い。
【符号の説明】
【0072】
2 :主塔
4 :斜材
6 :基部
7 :定着部
9 :中空部
10 :主鉄筋
11 :筒状部
12 :鋼殻部材
12a :最下段鋼殻部材
12b :斜材定着鋼殻部材
13 :内部コンクリート部
14 :外部コンクリート部
15 :緊張材
16 :型枠(第2型枠)
17 :内部鉄筋
18 :連結筋
19 :ずれ止め部材
20 :シース
22 :高さ調整構造
23 :水平位置調整構造
25b :外筒管
46 :プレキャストコンクリート型枠(第1型枠)
48 :型枠(第1型枠)