(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111677
(43)【公開日】2024-08-19
(54)【発明の名称】固体酸化物形燃料電池及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 8/0276 20160101AFI20240809BHJP
H01M 8/12 20160101ALI20240809BHJP
H01M 8/1226 20160101ALI20240809BHJP
H01M 8/0273 20160101ALI20240809BHJP
H01M 8/0286 20160101ALI20240809BHJP
H01M 4/86 20060101ALI20240809BHJP
【FI】
H01M8/0276
H01M8/12 101
H01M8/1226
H01M8/0273
H01M8/0286
H01M4/86 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023016317
(22)【出願日】2023-02-06
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三浦 遥平
【テーマコード(参考)】
5H018
5H126
【Fターム(参考)】
5H018AA06
5H018AS03
5H018CC06
5H018EE02
5H018EE12
5H126AA13
5H126BB06
5H126GG02
5H126GG12
5H126HH03
(57)【要約】
【課題】メタルサポート型の固体酸化物形の燃料電池において、アノードからのカソードへのガスのリークを防止することのできる技術を提供する。
【解決手段】固体酸化物形燃料電池1は、電解質層2と、アノード4及びカソード3と、シール部10と、を備える。カソード3は、金属製であるカソードサポート層5と、カソードサポート層と電解質層との間に配置されたカソード電極層6と、カソード電極層の外周端面に設けられ、焼結助剤を含む、カソード焼結助剤層7とを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体酸化物を含む電解質層と、
前記電解質層を挟むように配置され、それぞれ多孔質である、アノード及びカソードと、
前記電解質層、前記アノード、及び前記カソードの外周端部を覆うように配置されたシール部と、
を備え、
前記カソードは、
金属製であるカソードサポート層と、
前記カソードサポート層と前記電解質層との間に配置されたカソード電極層と、
前記カソード電極層の外周端面に設けられ、焼結助剤を含む、カソード焼結助剤層とを含む、
固体酸化物形燃料電池。
【請求項2】
請求項1に記載された固体酸化物形燃料電池であって、
前記焼結助剤は、Cu、Mg,Co、Fe、Cr、Ti、Ni,Y、及びAlからなる群から選択される少なくとも1種の金属又はその酸化物を含んでいる、
固体酸化物形燃料電池。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された固体酸化物形燃料電池であって、
前記シール部は、ガラスシール材を含んでいる、
固体酸化物形燃料電池。
【請求項4】
請求項1又は2に記載された固体酸化物形燃料電池であって、
前記シール部は、運転温度において軟化するように構成されている、
固体酸化物形燃料電池。
【請求項5】
請求項1又は2に記載された固体酸化物形燃料電池であって、
前記カソード焼結助剤層は、積層方向に沿って見た場合に、燃料ガスの流れ方向に対して下流側の端部と、前記燃料ガスの流れ方向に対して垂直な方向における両端部とに形成されている
固体酸化物形燃料電池。
【請求項6】
請求項1又は2に記載された固体酸化物形燃料電池であって、
前記アノードは、
金属製であるアノードサポート層と、
前記アノードサポート層と前記電解質層との間に配置されたアノード電極層とを有する、
固体酸化物形燃料電池。
【請求項7】
請求項1又は2に記載された固体酸化物形燃料電池であって、
更に、
前記アノードを支持する金属フレーム、を備え、
前記アノードの端部と前記金属フレームとが、溶接により一体化されている、
固体酸化物形燃料電池。
【請求項8】
請求項1又は2に記載された固体酸化物形燃料電池であって、
更に、
前記アノードは、更に、前記アノードの外周端面に設けられ、焼結助剤を含む、アノード焼結助剤層を含む、
固体酸化物形燃料電池。
【請求項9】
請求項8に記載された固体酸化物形燃料電池であって、
更に、
前記アノードを支持する金属フレーム、を備え、
前記金属フレームと前記アノード焼結助剤層とが溶接により一体化されている、
固体酸化物形燃料電池。
【請求項10】
電解質層、アノード及びカソードを含む積層体を作製するステップであって、前記カソードは、金属製であるカソードサポート層と、前記カソードサポート層と前記電解質層との間に配置されたカソード電極層とを含む、ステップと、
前記カソード電極層の外周端部にカソード焼結助剤層を形成するステップと、
前記カソード焼結助剤層を形成するステップの後に、前記電解質層、前記アノード、及び前記カソードの外周端部を覆うように、シール部を形成するステップと、
を備え、
前記カソード焼結助剤層を形成するステップは、焼結助剤を含有する焼結助剤含有液を、前記カソード電極層の端部に含浸させるステップを有している、
固体酸化物形燃料電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体酸化物形燃料電池及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
固体酸化物形燃料電池として、メタルサポート型の電池が知られている。メタルサポート型の固体酸化物形燃料電池とは、カソード及びアノードのうちの少なくとも一方が、多孔質のメタルサポート層と、メタルサポート層に支持された多孔質の電極層とを含む燃料電池である。
【0003】
メタルサポート型の固体酸化物形燃料電池の一例が、特許文献1(特開2016-207630号公報)に記載されている。特許文献1には、特定の構成を有する燃料電池セルと、燃料電池セルの周囲に設けられる金属フレームとを備え、サポート層は金属を含有し、燃料電池セルと金属フレームとは、金属を含有するシール部材を介して接合されていることを特徴とするメタルサポート固体酸化物形燃料電池が開示されている。特許文献1には、シール部材がガラスを含有していることも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、メタルサポート型の固体酸化物形燃料電池においては、電解質層が薄いことが多い。電解質層が薄いと、アノードに含まれるガスが電解質層の端部を回り込んでカソードに至るまでのパスが短くなる。そのため、アノードに含まれるガスがカソードにリークしやすい。アノードに含まれるガスは、電池反応の副生成物として、水蒸気を有している。カソードがメタルサポート層を有する場合に、メタルサポート層がそのような水蒸気を含むガスに曝露されると、酸化により酸化物層が形成されることがある。そして、酸化物層と母相との熱膨張係数の差により、メタルサポート層が剥離することがある。
【0006】
そして、特許文献1に記載されるようなガラスを含むシール部材を電解質層の端部に配置したとしても、ガスのリークを完全に防ぐことは難しい。すなわち、電解質層の端部とシール部材との界面を介してアノードからカソードへガスがリークすることがある。
【0007】
従って、本発明の目的は、メタルサポート型の固体酸化物形の燃料電池において、アノードからのカソードへのガスのリークを防止することのできる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様において、固体酸化物形燃料電池は、固体酸化物を含む電解質層と、電解質層を挟むように配置され、それぞれ多孔質である、アノード及びカソードと、電解質層、アノード、及びカソードの外周端部を覆うように配置されたシール部とを備える。カソードは、金属製であるカソードサポート層と、カソードサポート層と電解質層との間に配置されたカソード電極層と、カソード電極層の外周端面に設けられ、焼結助剤を含む、カソード焼結助剤層とを含む。
【0009】
本発明の他の一態様において、固体酸化物形燃料電池の製造方法は、電解質層、アノード及びカソードを含む積層体を作製するステップであって、カソードは、金属製であるカソードサポート層と、カソードサポート層と電解質層との間に配置されたカソード電極層とを含む、ステップと、カソード電極層の外周端部にカソード焼結助剤層を形成するステップと、カソード焼結助剤層を形成するステップの後に、電解質層、アノード、及びカソードの外周端部を覆うように、シール部を形成するステップと、を備える。カソード焼結助剤層を形成するステップは、焼結助剤を含有する焼結助剤含有液を、カソード電極層の外周端部に含浸させるステップを有している。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、メタルサポート型の固体酸化物形の燃料電池において、アノードからカソードへのガスのリークを防止することのできる技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る固体酸化物形燃料電池を示す概略断面図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態の作用効果を説明するための模式図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態の作用効果を説明するための模式図である。
【
図4】
図4は、第2の実施形態に係る固体酸化物形燃料電池におけるカソードの平面図である。
【
図5】
図5は、第3の実施形態に係る固体酸化物形燃料電池を示す概略断面図である。
【
図6】
図6は、第4の実施形態に係る固体酸化物形燃料電池を示す概略断面図である。
【
図7】
図7は、第5の実施形態に係る固体酸化物形燃料電池を示す概略断面図である。
【
図8】
図8は、固体酸化物形燃料電池の製造方法の一例を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、焼結助剤の含浸方法の一例を示す概略図である。
【
図10】
図10は、焼結助剤の含浸方法の他の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
【0013】
(1)第1の実施形態
図1は、第1の実施形態に係る固体酸化物形燃料電池1を示す概略断面図である。
図1に示されるように、固体酸化物形燃料電池1は、電解質層2、カソード3、アノード4、及びシール部10を有している。
【0014】
電解質層2は、固体酸化物を含んでいる。電解質層2は、緻密セラミックス層により構成されている。
【0015】
カソード3及びアノード4は、それぞれ、多孔質である。カソード3及びアノード4は、それぞれ、金属製であるサポート層と、サポート層によって支持されたセラミックス製の電極層とを有している。具体的には、カソード3は、金属製のカソードサポート層5と、カソード電極層6とを有している。カソード電極層6は、カソードサポート層5によって支持されており、カソードサポート層5と電解質層2との間に配置されている。アノード4は、金属製のアノードサポート層8と、アノード電極層9とを有している。アノード電極層9は、アノードサポート層8によって支持されており、アノードサポート層8と電解質層2との間に配置されている。
【0016】
シール部10は、電解質層2、アノード4及びカソード3からなる積層体の外周端部を覆うように配置されている。シール部10は、例えば、ガラスシール材により形成される。
【0017】
カソード3には、更に、カソード焼結助剤層7が設けられている。カソード焼結助剤層7は、焼結助剤を含む層である。
図1に示される例において、カソード焼結助剤層7は、カソードサポート層5及びカソード電極層6の双方の外周端面に設けられている。また、カソード焼結助剤層7は、シール部10よりも内側に設けられている。
【0018】
カソード焼結助剤層7は、運転中にアノード4に含まれるガスに曝露された場合に焼結するように構成されている。このようなカソード焼結助剤層7が設けられていることにより、アノード4からカソード3へのガスのリークが防止される。この点について、以下に説明する。
【0019】
図2及び
図3は、本実施形態の作用効果を説明するための模式図である。固体酸化物形燃料電池1の運転時には、アノード4に水素や炭化水素などの燃料ガスが供給され、カソード3に酸素(空気)が供給される。カソード3では、酸素分子が酸化物イオンに変換される。アノード4では、燃料ガスと酸化物イオンとが反応し、電子を生成する。この際、水蒸気も生成する。すなわち、アノード4には、水蒸気を含む(加湿された)燃料ガスが含まれることになる。ここで、アノード4に含まれる水蒸気を含む燃料ガスが、電解質層2とシール部10との界面を介してカソード3にリークしたとする。この場合、アノードからリークした燃料ガスがカソード焼結助剤層7に到達すると、カソード焼結助剤層7において燃料ガスが燃焼し、カソード焼結助剤層7が焼結する。具体的には、
図3に示されるように、焼結助剤11により、カソード粒子12(カソードサポート層5又はカソード電極層6の構成粒子)が緻密化し、空孔が消失する。このようにして形成された緻密層により、アノード4からのガスリークが防止され、カソードサポート層5の酸化及び剥離を防ぐことができる。
【0020】
なお、製造段階において予めカソード焼結助剤層7を焼結しておくことも技術的には可能である。しかしながら、焼結のためには、カソード焼結助剤層7を加熱しなければならず、エネルギーが必要である。これに対して、本実施形態によれば、アノード4からガスがリークした際にカソード焼結助剤層7が自ずと焼結するから、カソード焼結助剤層7を予め焼結しておく必要はない。そのため、製造時におけるエネルギーコストを増やすことなく、ガスリークを防ぐことができる。
【0021】
以上、本実施形態について概略的に説明した。
【0022】
なお、
図1に示した例では、カソード焼結助剤層7が、積層方向におけるカソード3の外周端面の全体にわたって設けられている。このような位置にカソード焼結助剤層7が設けられていれば、ガスリークをより確実に防止できる。
【0023】
ただし、カソード焼結助剤層7は、少なくともカソード電極層6の外周端面に設けられていればよい。このような位置にカソード焼結助剤層7が設けられさえいれば、カソード焼結助剤層7を欠く場合に比べて、ガスのリークを減らすことができ、一定の効果を奏する。
【0024】
一方で、好ましくは、カソード焼結助剤層7は、その結果、カソード電極層6の外周端面とカソードサポート層5の外周端面との境界を覆うように設けられる。言い換えれば、積層方向におけるカソード焼結助剤層7の外側端部(上端部)は、カソード電極層6の外周端面とカソードサポート層5の外周端面との境界よりも上に位置していることが好ましい。このような構成によれば、カソード電極層6とカソードサポート層5との境界にアノード4からリークしたガスが入り込みにくくなり、カソードサポート層5の酸化及び剥離がより確実に防止される。
【0025】
続いて、固体酸化物形燃料電池1の各部の構成等の詳細について、説明する。
【0026】
(電解質層)
電解質層2は、既述のように、固体酸化物を含む、緻密なセラミックス層である。なお、セラミックスとは、無機物の焼結体をいい、非金属酸化物だけでなく、金属酸化物をも包含する概念である。電解質層2は、酸化物イオンが伝導可能であり、一方でガスについては透過させないように構成されていればよい。電解質層2は、例えば、ジルコニア含有材料により形成される。ジルコニア含有材料としては、イットリア、酸化ネオジム、サマリウム、ガドリニウム、およびスカンジウム等をドープした安定化ジルコニアなどを挙げることができる。より好ましくは、電解質層2は、ScYSZを含む。電解質層2の厚さは、例えば0.5~20μm、好ましくは1~10μmである。
【0027】
(カソード電極層及びアノード電極層)
カソード電極層6及びアノード電極層9は、既述のように、多孔質である。カソード電極層6及びアノード電極層9には、それぞれ、カソード触媒及びアノード触媒が担持される。
【0028】
好適には、カソード電極層6及びアノード電極層9は、多孔質セラミックス層である。これらの電極層を構成するセラミックスとしては、固体酸化物セラミックスが挙げられる。固体酸化物セラミックスとしては、イットリア、酸化ネオジム、サマリウム、ガドリニウム、スカンジウム等をドープした安定化ジルコニア等を挙げることができる。より好ましくは、カソード電極層6及びアノード電極層9は、ScYSZを含む。
【0029】
カソード電極層6及びアノード電極層9の厚みは、それぞれ、例えば0.3~50μm、好ましくは0.5~30μm、より好ましくは0.5~10μm、最も好ましくは2~5μmである。
【0030】
(カソードサポート層及びアノードサポート層)
カソードサポート層5及びアノードサポート層8は、形状保持等の目的で設けられている。これらのサポート層を設けることにより、電解質層2、カソード電極層6及びアノード電極層9が薄い場合であっても、固体酸化物形燃料電池1の保持が維持される。カソードサポート層5及びアノードサポート層8の各々の厚みは、形状保持の観点などから決められ、例えば50~1000μm、好ましくは100~500μmである。
【0031】
カソードサポート層5及びアノードサポート層8は、多孔質の金属製である。これらのサポート層を構成する金属として、例えば、Fe又はCrを含む金属が挙げられる。好ましい一例において、カソードサポート層5及びアノードサポート層8は、SUS製である。このような材料を用いた場合、一般的には、アノードからのガスリークによってFe3O4等の酸化物層の形成が懸念される。しかしながら、本実施形態によれば、既述の通りガスリークが防止されるので、このような材料を用いても問題がない。
【0032】
(カソード焼結助剤層)
既述のように、カソード焼結助剤層7は、焼結助剤を含んでいる。焼結助剤は、アノード4からリークしたガスに曝露された際にカソード粒子の焼結を促進させる機能を有するものであればよい。好ましい焼結助剤として、Cu、Mg,Co、Fe、Cr、Ti、Ni,Y、及びAlからなる群から選択される少なくとも1種の金属又はそれらの酸化物が挙げられる。より好ましい焼結助剤として、MgO、Y2O3、及びAl2O3からなる群から選択される少なくとも一種を挙げることができる。
【0033】
(シール部)
シール部10は、カソード3とアノード4との間でのガスリークをある程度防止するために設けられている。シール部10は、絶縁性であり、ガスの遮断機能を有していればよい。シール部10としては、ガラスシール材が好適に用いられる。ガラスシール材としては、主成分としてSiを含み、他の成分としてアルカリ又はアルカリ土類金属を含む材料が挙げられる。
【0034】
好ましくは、シール部10は、運転温度において軟化するように構成されている。カソード焼結助剤層7の焼結時には、カソード焼結助剤層7の体積が変化する。この際、シール部10が軟化していれば、カソード焼結助剤層7の体積変化にシール部10が容易に追従する。そのため、固体酸化物形燃料電池1の破断を防止できる。
【0035】
シール部10の軟化温度は、例えば900℃以下であり、好ましくは500~900℃、より好ましくは600~800℃、さらに好ましくは650~750℃である。このような範囲内であれば、焼結時におけるカソード焼結助剤層7の体積変化に十分にシール部10が追従する。また、必要以上にシール部10が変形することもない。
【0036】
(2)第2の実施形態
続いて、第2の実施形態について説明する。本実施形態は、カソード焼結助剤層7の位置が工夫されている。なお、第1の実施形態と同様の構成を採用できる点については、説明を省略する。
【0037】
図4は、本実施形態に係る固体酸化物形燃料電池1におけるカソード3の平面図である。
図4には、燃料が流れる方向についても、矢印で示されている。
【0038】
本実施形態において、アノード4、電解質層2、及びカソード3からなる積層体は、積層方向に沿って見た場合に、概ね矩形状である。燃料ガスは、積層方向に垂直な一方向に沿ってアノード4上を流れつつ、アノード4に供給される。
図4に示されるように、カソード焼結助剤層7は、積層方向に沿って見た場合に、燃料ガスの流れ方向に対して下流側の端部と、燃料ガスの流れ方向に対して垂直な方向における両端部とに設けられている。
【0039】
アノード4からカソード3へのガスのリーク量は、燃料ガスの流れ方向の下流側の端部と、燃料ガスの流れ方向に対して垂直な方向における両端部において大きくなる。従って、このような位置にカソード焼結助剤層7を設けておくことにより、より確実にアノード4からカソード3へのガスリークを防ぐことができる。
【0040】
なお、燃料ガスの流れ方向の上流側の端部については、カソード焼結助剤層7が設けられていてもよいが、設けられていなくてもよい。上流側端部にもカソード焼結助剤層7を設ければ、更に確実にガスリークを防ぐことができる。一方で、上流側端部においてカソード焼結助剤層7を省略すれば、焼結助剤に要するコストを抑えることができる。
【0041】
(3)第3の実施形態
続いて、第3の実施形態について説明する。
図5は、本実施形態に係る固体酸化物形燃料電池1を示す概略断面図である。なお、既述の実施形態と同様の構成を採用できる点については、詳細な説明を省略する。
【0042】
図5に示されるように、本実施形態においては、金属フレーム13が追加されている。金属フレーム13は、アノード4を支持している。金属フレーム13は、アノード4の端部と溶接により一体化されている。具体的には、金属フレーム13は、アノードサポート層8の外周端部に接するように配置されている。そして、アノードサポート層8の端部と金属フレーム13とが、溶接により一体化されている。
図5においては、アノードサポート層8と金属フレーム13との溶接部分が、溶接部14として示されている。なお、アノード4の大部分は、金属フレーム13の開口部に重なっている。すなわち、金属フレーム13の開口部を介して、燃料ガスがアノード4に供給可能となっている。また、カソード3側に金属フレームは設けられていない。更に、後述する第4及び第5の実施形態とは異なり、アノード4の端部に焼結助剤は含まれていない。
【0043】
本実施形態によれば、金属フレーム13によって、アノード4、電解質層2及びカソード3からなる積層体を支持することができる。ここで、仮に、カソード3側に金属フレーム13を配置した場合には、カソード3が金属フレーム13により拘束されることになる。この場合、カソード焼結助剤層7の焼結時における体積変化によって、カソード3に大きなせん断応力が発生しやすくなる。その結果、カソード3が破断しやすくなる。しかしながら、本実施形態によれば、金属フレーム13はアノード4側に設けられており、カソード3は金属フレーム13により拘束されない。よって、せん断応力による破断が防止される。
【0044】
(4)第4の実施形態
続いて、第4の実施形態について説明する。
図6は、本実施形態に係る固体酸化物形燃料電池1を示す概略断面図である。なお、既述の実施形態と同様の構成を採用できる点については、詳細な説明を省略する。
【0045】
本実施形態においては、アノード4の外周端面にも、焼結助剤が含まれている。すなわち、アノード4の外周端面に、アノード焼結助剤層15が設けられている。
【0046】
本実施形態においても、運転時にアノード4からカソード3にガスがリークすると、カソード焼結助剤層7においてリークしたガスが燃焼し、カソード焼結助剤層7が焼結する。ここで、ガスの燃焼により生成した熱は、アノード焼結助剤層15にも伝わる。その結果、アノード焼結助剤層15も焼結する。これにより、アノード焼結助剤層15も緻密化する。アノード4側にも圧損要素が形成されるから、アノード4からカソード3へのガスリークがより確実に防止される。
【0047】
なお、アノード焼結助剤層15は、アノード4の外周端面の少なくとも一部に設けられていればよい。好ましくは、アノード焼結助剤層15は、少なくともアノード電極層9の外周端面に設けられる。より好ましくは、アノード焼結助剤層15は、アノード電極層9及びアノードサポート層8の双方の外周端面に設けられる。
【0048】
また、第2の実施形態(
図4参照)と同様に、燃料ガスがアノード4上を積層方向に垂直な一方向に沿って流れる場合には、アノード焼結助剤層15も、カソード焼結助剤層7と同様の位置に設けられていることが好ましい。すなわち、アノード焼結助剤層15も、積層方向に沿って見た場合に、燃料ガスの流れ方向に対して下流側の端部と、燃料ガスの流れ方向に対して垂直な方向における両端部とに設けられていることが好ましい。
【0049】
(5)第5の実施形態
続いて、第5の実施形態について説明する。
図7は、本実施形態に係る固体酸化物形燃料電池1を示す概略断面図である。なお、既述の実施形態と同様の構成を採用できる点については、詳細な説明を省略する。
【0050】
本実施形態においても、第4の実施形態(
図6参照)と同様に、アノード4の外周端面にアノード焼結助剤層15が設けられている。また、第3の実施形態(
図5)と同様に、金属フレーム13が設けられている。更に、本実施形態では、金属フレーム13が、アノード焼結助剤層15と溶接により一体化している(
図7の溶接部14参照)。
【0051】
本実施形態によれば、金属フレーム13とアノード4の表面との間の境界を介したガスのリークパスが、溶接部14により遮断される。従って、アノード4からカソード3へのガスリークがより確実に防止される。
【0052】
(6)固体酸化物形燃料電池の製造方法
続いて、一例を挙げつつ、固体酸化物形燃料電池1の製造方法について説明する。
図8は、固体酸化物形燃料電池1の製造方法の一例を示すフローチャートである。
【0053】
(ステップS1)グリーンシートの積層
まず、固体酸化物形燃料電池1の各層の前駆体となるグリーンシートを作成し、積層する。すなわち、アノードサポート層8用のグリーンシートと、アノード電極層9用のグリーンシートと、電解質層2用のグリーンシートと、カソード電極層6用のグリーンシートと、カソードサポート層5用のグリーンシートとを作成し、これらを積層する。これにより、グリーンシート積層体を得る。なお、各グリーンシートは、例えば、テープキャスト法により作成することができる。
【0054】
(ステップS2)積層体の切断
続いて、必要に応じて、グリーンシート積層体を所望の形状になるように切断する。
【0055】
(ステップS3)還元雰囲気で同時焼成
続いて、グリーンシート積層体を還元雰囲気で同時焼成する。これにより、焼結積層体を得る。
【0056】
(ステップS4)アノード触媒及びカソード触媒の担持
続いて、焼結積層体にアノード触媒及びカソード触媒を担持させる。例えば、各触媒を含有するスラリーを調製し、調製したスラリーを焼結積層体における特定の位置に含浸させ、加熱する。これにより、触媒を担持させることができ、電解質層2、アノード4及びカソード3を含む積層体が形成される。なお、所望の量の触媒を担持させるため、スラリーの含浸及び加熱を複数回実施してもよい。
【0057】
(ステップS5)焼結助剤の含浸
続いて、カソード3の外周端面に焼結助剤を含浸させる。これにより、積層体に焼結助剤を担持させることができ、カソード焼結助剤層7を形成することができる。なお、アノード4の外周端面にアノード焼結助剤層15を形成する場合には、本ステップにおいてアノード4の外周端面にも焼結助剤を含浸させる。
【0058】
図9は、焼結助剤の含浸方法の一例を示す概略図である。この例では、焼結助剤を含有する焼結助剤含有液17に、積層体の端部がディップされる。これにより、焼結助剤を含浸させることができる。
【0059】
図10は、焼結助剤の含浸方法の他の一例を示す概略図である。この例に示されるように、不要部分をマスク16により保護した上で、積層体に焼結助剤含有液17をスプレーすることによっても、焼結助剤を含浸させることができる。
【0060】
(ステップS6)ガラスシール部の形成
続いて、積層体の端部を覆うように、シール部10を形成する。
【0061】
(ステップS7)フレーム溶接
続いて、金属フレーム13を準備し、金属フレーム13とアノード4の端部とを溶接により結合させる。
【0062】
(ステップS8)システム化
続いて、得られた積層体に集電部材等を接続する。また、必要に応じて、複数の積層体を組み合わせ、システム化する。これにより、固体酸化物形燃料電池1を得ることができる。
【0063】
上述の方法によれば、含浸により焼結助剤を積層体に担持させることができ、カソード焼結助剤層7を形成することができる。カソード焼結助剤層7を焼結する工程は必要ない。よって、エネルギーコストを増加させることなく、ガスリークが防止される固体酸化物形燃料電池1を得ることができる。
【0064】
以上、本発明の実施形態について説明した。以下に、本発明の主な構成とその作用効果について、代表的なものを要約する。
【0065】
一態様において、固体酸化物形燃料電池1は、固体酸化物を含む電解質層2と、電解質層2を挟むように配置され、それぞれ多孔質である、アノード4及びカソード3と、電解質層2、アノード4、及びカソード3の外周端部を覆うように配置されたシール部10とを備える。カソード3は、金属製であるカソードサポート層5と、カソードサポート層5と電解質層2との間に配置されたカソード電極層6と、カソード電極層6の外周端面に設けられ、焼結助剤を含む、カソード焼結助剤層7とを含む。このような構成によれば、アノード4からカソード3にリークしたガスがカソード焼結助剤層7に到達すると、カソード焼結助剤層7が焼結し、緻密化する。緻密化したカソード焼結助剤層7によって、ガスのリークが防止される。その結果、カソードサポート層5の酸化及び剥離が防止される。また、製造段階においてカソード焼結助剤層7を予め焼結しておく必要はないから、低エネルギーコストでガスのリークを防止することができる。
【0066】
一態様において、焼結助剤は、Cu、Mg,Co、Fe、Cr、Ti、Ni,Y、及びAlからなる群から選択される少なくとも1種の金属又はその酸化物を含んでいる。このような材料を用いることによって、アノード4からリークしたガスにより、カソード焼結助剤層7においてカソード3を焼結することができる。
【0067】
一態様において、シール部10は、ガラスシール材を含んでいる。このような構成によって、アノード4からのガスのリークをより確実に防ぐことができる。
【0068】
一態様において、シール部10は、運転温度において軟化するように構成されている。このような構成によれば、カソード焼結助剤層7の焼結時における体積変化にシール部10が追従しやすくなる。その結果、固体酸化物形燃料電池1の破断を防止することができる。
【0069】
一態様において、カソード焼結助剤層7は、積層方向に沿って見た場合に、燃料ガスの流れ方向に対して下流側の端部と、燃料ガスの流れ方向に対して垂直な方向における両端部とに形成されている。このような構成によれば、ガスがリークしやすい位置にカソード焼結助剤層7が設けられていることになる。その結果、ガスのリークをより確実に防止することができる。
【0070】
一態様において、アノード4は、金属製であるアノードサポート層8と、アノードサポート層8と電解質層2との間に配置されたアノード電極層9とを有する。
【0071】
一態様において、固体酸化物形燃料電池1は、更に、アノード4を支持する金属フレーム13を備える。アノード4の端部と金属フレーム13とが、溶接により一体化されている。このような構成によれば、金属フレーム13によって固体酸化物形燃料電池1を支持することができる。カソード3は金属フレーム13によって拘束されないので、カソード焼結助剤層7の焼結時における体積変化によりカソード3にせん断応力が発生し難く、カソード3の破断がより確実に防止される。
【0072】
一態様において、アノード4は、更に、アノード4の外周端面に設けられ、焼結助剤を含む、アノード焼結助剤層15を含む。このような構成によれば、運転時にアノード焼結助剤層15が焼結し、緻密化される。そのため、アノード4からのガスのリークがアノード焼結助剤層15においても遮断される。よって、ガスのリークがより確実に防止される。
【0073】
一態様において、固体酸化物形燃料電池1の製造方法は、電解質層2、アノード4及びカソード3を含む積層体を作製するステップであって、カソード3は、金属製であるカソードサポート層5と、カソードサポート層5と電解質層2との間に配置されたカソード電極層6とを含む、ステップと、カソード電極層6の外周端部にカソード焼結助剤層7を形成するステップと、カソード焼結助剤層7を形成するステップの後に、電解質層2、アノード4、及びカソード3の外周端部を覆うように、シール部10を形成するステップとを備える。カソード焼結助剤層7を形成するステップは、焼結助剤を含有する焼結助剤含有液17を、カソード電極層6の端部に含浸させるステップを有している。このような方法によれば、製造段階でカソード焼結助剤層7を焼結する工程が必要ない。よって、低いエネルギーコストで、ガスのリークが防止される固体酸化物形燃料電池1を得ることができる。
【符号の説明】
【0074】
1・・・固体酸化物形燃料電池、2・・・電解質層、3・・・カソード、4・・・アノード、5・・・カソードサポート層、6・・・カソード電極層、7・・・カソード焼結助剤層、8・・・アノードサポート層、9・・・アノード電極層、10・・・シール部、11・・・カソード粒子、12・・・焼結助剤粒子、13・・・金属フレーム、14・・・溶接部、15・・・アノード焼結助剤層、16・・・マスク、17・・・焼結助剤含有液