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特開2024-111678風力発電設備のインターバル時間設定装置、インターバル時間設定方法およびインターバル時間設定プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111678
(43)【公開日】2024-08-19
(54)【発明の名称】風力発電設備のインターバル時間設定装置、インターバル時間設定方法およびインターバル時間設定プログラム
(51)【国際特許分類】
   F03D 80/70 20160101AFI20240809BHJP
   F03D 7/04 20060101ALI20240809BHJP
   F03D 17/00 20160101ALI20240809BHJP
【FI】
F03D80/70
F03D7/04 Z
F03D17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023016318
(22)【出願日】2023-02-06
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100150717
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 和也
(72)【発明者】
【氏名】山田 敏雅
(72)【発明者】
【氏名】吉水 謙司
(72)【発明者】
【氏名】平野 俊夫
(72)【発明者】
【氏名】谷山 賀浩
(72)【発明者】
【氏名】仲村 岳
(72)【発明者】
【氏名】伊東 亮
【テーマコード(参考)】
3H178
【Fターム(参考)】
3H178AA03
3H178AA40
3H178AA43
3H178AA51
3H178BB01
3H178BB35
3H178BB54
3H178BB56
3H178DD08X
3H178DD12Z
3H178DD52X
3H178DD55X
3H178EE03
3H178EE17
3H178EE35
(57)【要約】
【課題】風車の軸受の損傷を防止することができる風力発電設備のインターバル時間設定装置を提供する。
【解決手段】実施の形態による風力発電設備のインターバル時間設定装置は、ナセルに対して回転可能に風車を支持する軸受を含む風力発電設備を停止してから再起動するまでのインターバル時間を設定するための装置である。風力発電設備のインターバル時間設定装置は、停止時の軸受の温度を取得する軸受温度取得部と、軸受温度取得部により取得された軸受の温度が温度閾値よりも高いか否かを判断する軸受温度判断部と、軸受温度判断部による判断結果に基づいてインターバル時間を設定するインターバル設定部と、を備えている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナセルに対して回転可能に風車を支持する軸受を含む風力発電設備を停止してから再起動するまでのインターバル時間を設定するための風力発電設備のインターバル時間設定装置であって、
停止時の前記軸受の温度を取得する軸受温度取得部と、
前記軸受温度取得部により取得された前記軸受の前記温度が温度閾値よりも高いか否かを判断する軸受温度判断部と、
前記軸受温度判断部による判断結果に基づいて前記インターバル時間を設定するインターバル設定部と、
を備えた、風力発電設備のインターバル時間設定装置。
【請求項2】
前記温度閾値は、前記風車の連続回転時間と前記風車の軸受に充填されたグリスの温度を示す温度特性モデルに基づいて設定され、
前記温度特性モデルは、前記風車の回転開始時間から第1時間に達するまでの第1時間帯と、前記第1時間から第2時間に達するまでの第2時間帯と、前記第2時間から第3時間に達するまでの第3時間帯と、を含み、
前記第2時間帯における前記グリスの温度は、前記第1時間帯における前記グリスの温度よりも高く、
前記第3時間帯における前記グリスの温度は、前記第2時間帯における前記グリスの温度よりも低く、
前記温度閾値は、前記第2時間帯における前記グリスの最高温度以上の温度に設定されている、
請求項1に記載の風力発電設備のインターバル時間設定装置。
【請求項3】
停止するまでの前記風車の連続回転時間を取得する回転時間取得部と、
前記軸受温度判断部により前記軸受の温度が温度閾値よりも高くないと判断された場合、前記回転時間取得部により取得された前記連続回転時間が時間閾値よりも長いか否かを判断する回転時間判断部と、を更に備え、
前記インターバル設定部は、前記回転時間判断部による判断結果に基づいて前記インターバル時間を設定する、
請求項1に記載の風力発電設備のインターバル時間設定装置。
【請求項4】
前記時間閾値は、前記風車の連続回転時間と前記風車の軸受に充填されたグリスの温度を示す温度特性モデルに基づいて設定され、
前記温度特性モデルは、前記風車の回転開始時間から第1時間に達するまでの第1時間帯と、前記第1時間から第2時間に達するまでの第2時間帯と、前記第2時間から第3時間に達するまでの第3時間帯と、を含み、
前記第2時間帯における前記グリスの温度は、前記第1時間帯における前記グリスの温度よりも高く、
前記第3時間帯における前記グリスの温度は、前記第2時間帯における前記グリスの温度よりも低く、
前記時間閾値は、前記第2時間である、
請求項3に記載の風力発電設備のインターバル時間設定装置。
【請求項5】
風況を取得する風況取得部と、
前記風況取得部により取得された風況の変動が大きいか否かを判断する風況判断部と、を更に備え、
前記風況判断部は、前記回転時間判断部により判断の後、前記風況取得部により取得された風況の変動が大きいか否かを判断し、
前記インターバル設定部は、前記風況判断部による判断結果に基づいて前記インターバル時間を設定する、
請求項3に記載の風力発電設備のインターバル時間設定装置。
【請求項6】
前記軸受温度判断部が、前記軸受の前記温度が温度閾値よりも高いと判断した場合、前記インターバル設定部は、第1インターバル時間を設定し、
前記インターバル設定部は、前記回転時間判断部により前記連続回転時間が前記時間閾値よりも長くないと判断されるとともに、前記風況判断部により前記風況の変動が大きくないと判断された場合、前記第1インターバル時間よりも短い第2インターバル時間を設定する。
請求項5に記載の風力発電設備のインターバル時間設定装置。
【請求項7】
前記インターバル設定部は、前記回転時間判断部により前記連続回転時間が前記時間閾値よりも長くないと判断されるとともに、前記風況判断部により前記風況の変動が大きいと判断された場合、前記第1インターバル時間よりも短いとともに前記第2インターバル時間よりも長い前記インターバル時間を設定する、
請求項6に記載の風力発電設備のインターバル時間設定装置。
【請求項8】
前記インターバル設定部は、前記回転時間判断部により前記連続回転時間が前記時間閾値よりも長いと判断されるとともに、前記風況判断部により前記風況の変動が大きくないと判断された場合、前記第1インターバル時間よりも短いとともに前記第2インターバル時間よりも長い前記インターバル時間を設定する、
請求項6に記載の風力発電設備のインターバル時間設定装置。
【請求項9】
前記軸受温度判断部が、前記軸受の前記温度が温度閾値よりも高いと判断した場合、前記インターバル設定部は、第1インターバル時間を設定し、
前記インターバル設定部は、前記回転時間判断部により前記連続回転時間が前記時間閾値よりも長いと判断されるとともに、前記風況判断部により前記風況の変動が大きいと判断された場合、前記第1インターバル時間を設定する、
請求項5に記載の風力発電設備のインターバル時間設定装置。
【請求項10】
ナセルに対して回転可能に風車を支持する軸受を含む風力発電設備を停止してから再起動するまでのインターバル時間を設定するための風力発電設備のインターバル時間設定方法であって、
停止時の前記軸受の温度を取得するステップと、
前記軸受の温度が温度閾値よりも高いか否かを判断するステップと、
前記軸受の温度の判断結果に基づいて前記インターバル時間を設定するステップと、
を備えた、風力発電設備のインターバル時間設定方法。
【請求項11】
ナセルに対して回転可能に風車を支持する軸受を含む風力発電設備を停止してから再起動するまでのインターバル時間を設定するための風力発電設備のインターバル時間設定方法をコンピュータに実行させるインターバル時間設定プログラムであって、
前記インターバル時間設定方法は、
停止時の前記軸受の温度を取得するステップと、
前記軸受の温度が温度閾値よりも高いか否かを判断するステップと、
前記軸受の温度の判断結果に基づいて前記インターバル時間を設定するステップと、
を備えた、風力発電設備のインターバル時間設定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、風力発電設備のインターバル時間設定装置、インターバル時間設定方法およびインターバル時間設定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
将来の主要電源と言われている風力発電設備は、タワーの上部にナセルを設置し、ナセルに回転可能な複数のブレードが取り付けられるように構成されている。ブレードが回転することにより、ナセルに内蔵された発電機が発電を行う。
【0003】
ブレードの回転を発電機に伝えるロータは、ナセルに取り付けられた軸受に支持されている。軸受には、転がり軸受が用いられている。軸受の潤滑には、運転条件などを考慮して、潤滑油ではなくグリスが用いられている。グリスは、増ちょう剤および基油等を含む半固体状態の潤滑剤である。半固体状態では、増ちょう剤が繊維構造をなし、その繊維構造に基油が保持されている。このため、半固体状態のグリスは通常、潤滑性能を発揮しない。すなわち、グリスは、仕様の温度範囲内で撹拌されることにより、基油が繊維構造から放出されて潤滑性能が発揮される。撹拌が止まると、時間の経過に伴って基油がある程度の割合で繊維構造に戻り、グリスは半固体状態に戻る。このようなグリスの潤滑性能を維持することを目的に、グリスの供給量および基油の残存量を監視または管理する方法が知られている。
【0004】
風力発電設備の運転時の特徴として、ブレードの回転を計画的に行うことが困難である点が挙げられる。基本的に風力発電設備の運転は、運転停止と定格運転とを繰り返す断続運転となる。この断続運転は、風力発電設備の設置位置の風況に応じて行われる。このため、グリスの供給量および基油の残存量が適切に管理された場合であっても、風況によっては潤滑性能が発揮されない可能性がある。潤滑性能が発揮されない間に軸受に高い荷重が掛かると、軸受に損傷が発生するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第7099816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
実施の形態は、このような点を考慮してなされたものであり、風車の軸受の損傷を防止することができる風力発電設備のインターバル時間設定装置、インターバル時間設定方法およびインターバル時間設定プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施の形態による風力発電設備のインターバル時間設定装置は、ナセルに対して回転可能に風車を支持する軸受を含む風力発電設備を停止してから再起動するまでのインターバル時間を設定するための装置である。風力発電設備のインターバル時間設定装置は、停止時の軸受の温度を取得する軸受温度取得部と、軸受温度取得部により取得された軸受の温度が温度閾値よりも高いか否かを判断する軸受温度判断部と、軸受温度判断部による判断結果に基づいてインターバル時間を設定するインターバル設定部と、を備えている。
【0008】
実施の形態による風力発電設備のインターバル時間設定方法は、ナセルに対して回転可能に風車を支持する軸受を含む風力発電設備を停止してから再起動するまでのインターバル時間を設定するための方法である。風力発電設備のインターバル時間設定方法は、停止時の軸受の温度を取得するステップと、軸受の温度が温度閾値よりも高いか否かを判断するステップと、軸受の温度の判断結果に基づいてインターバル時間を設定するステップと、を備えている。
【0009】
実施の形態による風力発電設備のインターバル時間設定プログラムは、ナセルに対して回転可能に風車を支持する軸受を含む風力発電設備を停止してから再起動するまでのインターバル時間を設定するための風力発電設備のインターバル時間設定方法をコンピュータに実行させるプログラムである。インターバル時間設定方法は、停止時の軸受の温度を取得するステップと、軸受の温度が温度閾値よりも高いか否かを判断するステップと、軸受の温度の判断結果に基づいてインターバル時間を設定するステップと、を備えている。
【発明の効果】
【0010】
実施の形態によれば、風車の軸受の損傷を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本実施の形態による風力発電設備を示す模式図である。
図2図2は、図1に示す風力発電設備を制御するウィンドファーム制御システムを示す図である。
図3図3は、本実施の形態による風力発電設備のインターバル時間設定装置を示すブロック図である。
図4図4は、図1に示す軸受に充填されたグリスの温度特性モデルを示す図である。
図5図5は、図1に示す風力発電設備の故障停止から風力発電設備を再起動するまでのフローチャートである。
図6図6は、本実施の形態による風力発電設備のインターバル時間設定方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本実施の形態による風力発電設備のインターバル時間設定装置、インターバル時間設定方法およびインターバル時間設定プログラムについて説明する。
【0013】
図1図6を用いて、本実施の形態による風力発電設備のインターバル時間設定装置、インターバル時間設定方法およびインターバル時間設定プログラムについて説明する。ここではまず、風力発電設備について図1を用いて説明する。風力発電設備は、地上に設置されていてもよく、洋上に設置されていてもよい。風力発電設備は、洋上浮力式の設備であってもよい。
【0014】
図1に示すように、風力発電設備1は、鉛直方向に細長に延びるタワー2と、タワー2に支持されたナセル3と、ナセル3に回転可能に設けられた風車4と、を含んでいる。ナセル3内に、風車4の回転によって発電を行う発電機5が内蔵されている。ナセル3は、タワー2の長手軸に対して垂直な面内で回転可能に構成されている。
【0015】
風車4は、ロータ6に連結されたハブ4aと、ハブ4aに連結された3つのブレード4bと、を含んでいる。ハブ4aと各ブレード4bは、ロータ6とともに一体に回転するように構成されている。なお、ブレード4bの個数は3つに限られることはなく、任意である。
【0016】
ロータ6は、変速機7を介して上述した発電機5に連結されている。変速機7は、ロータ6の回転速度を増速または減速して発電機5に回転を伝達する。発電機5は、変速機7から伝達された回転エネルギを用いて発電を行う。
【0017】
ロータ6は、ナセル3に取り付けられた軸受8に回転可能に支持されている。軸受8は、転がり軸受であってもよい。軸受8には、潤滑性能を発揮可能なグリスが充填されており、ロータ6の円滑な回転運動を可能にしている。
【0018】
軸受8には、軸受温度検出器10(図3参照)が設けられている。軸受温度検出器10は、風力発電設備1の運転中に、軸受8の温度を検出するように構成されている。
【0019】
ロータ6には、回転速度検出器11(図3参照)が設けられている。回転速度検出器11は、風力発電設備1の運転中に、ロータ6の回転速度を検出するように構成されている。
【0020】
図1に示すように、ナセル3の上部に、風況検出器12が設けられている。風況検出器12は、風速風向計とも称される。風況検出器12は、風速と風向を含む風況を計測する。風況検出器12が検出する風向は、風況検出器12が位置する水平面において風速が最大となる方向を示す。その方向に沿う風速と風向が風況検出器12により検出される。
【0021】
ナセル3内に、風力発電制御装置13(図2参照)が内蔵されていてもよい。あるいは、風力発電制御装置13は、ナセル3の外部に設置されていてもよい。風力発電制御装置13は、風力発電設備1の運転を制御する。風力発電制御装置13は、後述する風力発電設備1のインターバル時間設定装置30とは別体の装置として構成されていてもよい。風力発電制御装置13には、上述した軸受温度検出器10、回転速度検出器11および風況検出器12が接続されている。
【0022】
風力発電制御装置13には、軸受温度検出器10により検出された軸受8の温度が検出信号として送信される。軸受8の温度の検出信号は所定の時間間隔で送信され、軸受温度記憶部14に記憶されて軸受温度データが構築される。軸受温度記憶部14は、風力発電制御装置13に内蔵されていてもよい。
【0023】
風力発電制御装置13には、回転速度検出器11により検出された回転速度が検出信号として送信される。回転速度の検出信号は所定の時間間隔で送信され、回転速度記憶部15に記憶されて回転速度データが構築される。回転速度記憶部15は、風力発電制御装置13に内蔵されていてもよい。
【0024】
風力発電制御装置13には、風況検出器12により検出された風速および風向を含む風況が検出信号として送信される。風況の検出信号は、所定の時間間隔で送信され、風況記憶部16に記憶されて風況データが構築される。風況記憶部16は、風力発電制御装置13に内蔵されていてもよい。
【0025】
このように構成された風力発電設備1は、ウィンドファームに設置されている。図2に示すように、ウィンドファームには、複数の上述した風力発電設備1が設置されている。1つの風力発電設備1が、1つの風力発電制御装置13で制御される。各風力発電設備1の風力発電制御装置13は、ウィンドファーム内のネットワーク21を介して、ウィンドファーム制御装置20に接続されている。ウィンドファーム制御装置20は、ウィンドファーム内の各風力発電制御装置13の上位制御装置であり、各風力発電制御装置13を制御するように構成されている。
【0026】
ウィンドファーム制御装置20には、エンジニアリング端末装置22が接続されていてもよい。エンジニアリング端末装置22は、ウィンドファーム制御装置20が行う制御で用いられる各種パラメータ等を調整可能になっている。パラメータは、オペレータが、エンジニアリング端末装置22を利用して調整可能になっていてもよい。パラメータの調整は、統計的演算を利用して自動的に行われてもよい。この場合、図2に示すように、ウィンドファーム制御装置20に統計演算装置23が接続されて、統計演算装置23が、パラメータの自動調整を行ってもよい。エンジニアリング端末装置22は、制御に必要な情報を入力可能になっていてもよい。エンジニアリング端末装置22は、後述するインターバル時間設定装置30により設定された時間または後述する軸受温度、連続回転時間および風況等の情報が表示可能になっていてもよい。
【0027】
次に、本実施の形態による風力発電設備のインターバル時間設定装置30について図3を用いて説明する。インターバル時間設定装置30は、ナセル3に対して回転可能に風車4を支持する軸受8を含む風力発電設備1を停止してから再起動するまでのインターバル時間を設定するための装置である。風力発電設備1の停止とは、強風等を原因とした一過性の事象による停止を意味している。インターバル時間設定装置30は、上述したウィンドファーム制御装置20とは別体に構成されていてもよく、またはウィンドファーム制御装置20に組み込まれていてもよい。この場合、インターバル時間設定装置30は、複数の風力発電設備1のうちの1つの風力発電設備1が停止した場合に当該風力発電設備1のインターバル時間を設定してもよい。複数の風力発電設備1が停止した場合には風力発電設備1のそれぞれに対して個別にインターバル時間を設定してもよい。あるいは、インターバル時間設定装置30は、上述した風力発電制御装置13とは別体に構成されていてもよく、または風力発電制御装置13に組み込まれていてもよい。この場合、インターバル時間設定装置30は、対応する風力発電設備1が停止した場合に当該風力発電設備1のインターバル時間を設定してもよい。
【0028】
図3に示すように、インターバル時間設定装置30は、通信部31と、記憶部32と、演算部33と、を含んでいる。
【0029】
通信部31は、上述した風力発電制御装置13とネットワーク21を介して通信可能に構成されている。通信部31は、無線で風力発電制御装置13と通信可能であってもよく、有線で風力発電制御装置13と通信可能であってもよい。
【0030】
記憶部32は、任意の情報を記憶するように構成されていてもよい。記憶部32には、後述するインターバル時間設定プログラムが記憶されていてもよい。
【0031】
図3に示すように、演算部33は、軸受温度取得部34と、回転時間取得部35と、風況取得部36と、軸受温度判断部37と、回転時間判断部38と、風況判断部39と、インターバル設定部40と、を含んでいる。各部の機能は、例えば、上述した記憶部32に格納されたコンピュータプログラムを実行することで実現されてもよい。このプログラムはインターバル時間設定プログラムの一例であり、記録媒体からインターバル時間設定装置30にインストールされていてもよい。
【0032】
軸受温度取得部34は、風力発電設備1の停止時の軸受8の温度を取得する。より具体的には、軸受温度取得部34は、上述した軸受温度記憶部14に記憶された軸受温度データから、停止時の軸受8の温度を取得する。軸受8の温度は、上述した通信部31を介して、軸受温度記憶部14から取得する。
【0033】
回転時間取得部35は、風力発電設備1が停止するまでの風車4の連続回転時間を取得する。より具体的には、回転時間取得部35は、上述した回転速度記憶部15に記憶された回転速度データから、停止するまでの風車4の連続回転時間を取得する。連続回転時間は、上述した通信部31を介して、回転速度記憶部15から取得する。停止時から回転開始時まで遡った時間が連続回転時間に相当する。連続回転時間は、風車4の回転が連続して継続している時間である。
【0034】
風況取得部36は、現在の風況、すなわち現在の風速および風向を取得する。より具体的には、風況取得部36は、上述した風況記憶部16に記憶された風況データから、最新の風速および風向を取得してもよい。風速および風向は、通信部31を介して風況記憶部16から取得される。あるいは、風況取得部36は、風況記憶部16に記憶された風況データではなく、風力発電制御装置13を介して風況検出器12から、現在の風速および風向を取得してもよい。
【0035】
軸受温度判断部37は、上述した軸受温度取得部34により取得された軸受8の温度が温度閾値よりも高いか否かを判断する。温度閾値については後述する。
【0036】
回転時間判断部38は、上述した回転時間取得部35により取得された風車4の連続回転時間が時間閾値よりも長いか否かを判断する。時間閾値については後述する。回転時間判断部38は、軸受温度判断部37により軸受8の温度が温度閾値よりも高くないと判断された場合、連続回転時間の判断を行ってもよい。
【0037】
風況判断部39は、上述した風況取得部36により取得された風況の変動が大きいか否かを判断する。風況の変動には、風速の変動と風向の変動とが含まれる。風速の変動および風向の変動のうちの少なくとも一方の変動が大きいか否かが判断されてもよい。例えば、風速の変動が小さくても風向の変動が大きければ、風況の変動が大きいと判断されてもよい。あるいは、風速の変動が小さくても風速が小さく、かつ風向の変動が大きければ、風況の変動は大きくないと判断されてもよい。風速の変動が小さくても風速が大きく、かつ風向の変動が大きければ、風況の変動は大きいと判断されてもよい。風況判断部39は、回転時間判断部38により判断の後、風況の判断を行ってもよい。
【0038】
例えば、風況の変動の大きさは、風力発電設備1の再起動に要する時間に基づいて判断されてもよい。再起動してからの経過時間が60秒前後である時点で、風況の変動が大きい場合を考える。例えば、十数秒の周期で発電出力が50%以上変動するような風況の変動が無ければ、風況の変動は小さいと判断されてもよい。このような判断を行うためには、風速および風向の絶対値、変化率または標準偏差等の様々な判断指標を用いてもよい。一方、風況の変動の周期が10分以上である場合、風力発電設備1の再起動時に軸受8に掛かる荷重には大きな影響を及ぼさないため、風況の変動は小さい状態であって安定した状態と判断してもよい。
【0039】
インターバル設定部40は、軸受温度判断部37による判断結果に基づいてインターバル時間を設定する。インターバル時間は、風力発電設備1が停止してから再起動するまでの時間である。インターバル設定部40は、軸受温度判断部37による判断結果に応じて、長さが異なる複数のインターバル時間のうちの1つのインターバル時間を選定して設定してもよい。例えば、インターバル設定部40は、軸受温度判断部37により軸受8の温度が温度閾値よりも高いと判断された場合、比較的長い第1インターバル時間を設定してもよい。あるいは、インターバル設定部40は、軸受温度判断部37による判断結果に応じて、任意の長さのインターバル時間を設定してもよい。
【0040】
インターバル設定部40は、回転時間判断部38による判断結果に基づいてインターバル時間を設定してもよい。インターバル設定部40は、更に風況判断部39による判断結果に基づいてインターバル時間を設定してもよい。
【0041】
インターバル設定部40は、上述のようにして設定されたインターバル時間を、風力発電制御装置13に送信する。風力発電制御装置13は、このインターバル時間に基づいて、風力発電設備1を再起動する。
【0042】
本実施の形態によるインターバル時間設定装置30は、軸受8に充填されたグリスの温度特性モデルに基づいてインターバル時間を設定してもよい。温度特性モデルは、風車4の連続回転時間と風車4の軸受8に充填されたグリスの温度との関係を示すモデルである。以下、温度特性モデルについて図4を用いて説明する。
【0043】
図4に示すように、温度特性モデルは、第1時間帯Δt1と、第2時間帯Δt2と、第3時間帯Δt3と、を含んでいる。
【0044】
第1時間帯Δt1は、風車4の回転開始時間から第1時間t1に達するまでの時間帯である。第1時間帯Δt1では、風車4が回転開始してからあまり時間が経っていない時間帯であるため、グリスの温度は低く、グリスは半固体状になっている。この場合、グリスの粘性は高い。第1時間帯Δt1におけるグリスの潤滑性能は低いと言える。風車4の回転開始によりグリスの撹拌が開始されるが、撹拌の摩擦力は大きい。このため、グリスの温度が、第1時間t1付近で急激に上昇し、第2時間帯Δt2に移行する。
【0045】
第2時間帯Δt2は、第1時間t1から第2時間t2に達するまでの時間帯である。第2時間帯Δt2におけるグリスの温度は、第1時間帯Δt1におけるグリスの温度よりも高い。第2時間帯Δt2では、グリスの温度が比較的高い状態で推移する。撹拌による摩擦力が低下するため、第2時間帯Δt2におけるグリスの潤滑性能は第1時間帯Δt1よりは高いが、後述する第3時間帯Δt3よりは低い中程度と言える。撹拌が継続すると、グリスの増ちょう剤の繊維構造がせん断される。このことにより、摩擦力が低下してグリスの温度が低下に転じる。このときに第3時間帯Δt3に移行する。時間t2は、グリス温度が低下に転じた時間として設定されていてもよい。時間t2は、グリス温度が低下に転じた時間として厳密な意味に縛られていなくてもよく、例えば、図4に示すように、グリス温度が明確に低下に転じたと判断できる時間として設定されていてもよい。
【0046】
第3時間帯Δt3は、第2時間t2から第3時間t3に達するまでの時間帯である。第3時間帯Δt3におけるグリスの温度は、第2時間帯Δt2におけるグリスの温度(より具体的には後述する最高温度TE2)よりも低い。第3時間帯Δt3におけるグリスの温度は、第1時間帯Δt1におけるグリスの温度よりも高い。第3時間帯Δt3では、グリスの増ちょう剤の繊維構造がせん断されているため、撹拌による摩擦力が低い。このため、第3時間帯Δt3では、グリスの温度が第2時間帯Δt2における温度よりも低い温度で推移する。第3時間帯Δt3におけるグリスの潤滑性能は高いと言える。
【0047】
その後、ロータ6の回転数が大きくなった場合、又は軸受8に掛かる荷重が大きくなった場合には、グリスの温度が上昇し得る。このことが、図4における第4時間帯Δt4として示されている。すなわち、第3時間t3において、ロータ6の回転数が大きくなったり、または軸受8に掛かる荷重が大きくなったりすると、第4時間帯Δt4に示すようにグリスの温度が上昇し得る。この状態では、グリスの潤滑性能は低下している。
【0048】
上述したように、グリスの状態は、風車4およびロータ6の回転による撹拌によって変化する。この撹拌によってグリスに剪断力が掛かり、撹拌の継続時間と、撹拌によって上昇するグリスの温度が、グリスの状態を表している。このためロータ6の連続回転時間と軸受8の温度を検出することにより、グリスの状態を推定することができる。この推定は、厳密な推定であることに限られることはなく、グリスの潤滑性能を発揮させるためのメカニズムによって状態の違いを把握できればよい。このことにより、軸受8の予防保全を目的として軸受8の損傷を回避するための判断を行うことができる。
【0049】
グリスの増ちょう剤の繊維構造がせん断されることにより、グリス中の油膜を形成する基油が軸受8の金属接触面に流れ出て、金属接触面に油膜が形成される。この状態が、潤滑性能が発揮された良好な状態であり、軸受8が良好な状態でロータ6を支持可能な状態である。風車4の回転が停止すると、流れ出た基油によって増ちょう剤の繊維構造が復元され、グリスは半固体状態に戻る。しかしながら、第3時間帯Δt3および第4時間帯Δt4において風車4が回転停止した場合、繊維構造から流れ出た基油は軸受8の金属接触面から流れ落ち、グリスが半固体状態に戻っていない。このため、風車4が回転停止した場合には、増ちょう剤の繊維構造が復元されてグリスが半固体状態に戻るように、上述したインターバル時間が設定されてもよい。
【0050】
一方、風力発電設備1の運転停止時間が長くなると、発電機会が逸失される。このため、上述したインターバル時間は可能な限り短く設定されてもよい。また、風力発電設備1の再起動時には、過剰な風荷重が掛かることを避けるようにしてもよい。
【0051】
例えば、上述した第1時間帯Δt1または第2時間帯Δt2におけるグリスの状態に戻るまで、インターバル時間が設定されてもよい。第4時間帯Δt4で風車4が回転停止した場合には、インターバル時間は比較的長い第1インターバル時間であってもよい。第1時間帯Δt1および第2時間帯Δt2で風力発電設備1が停止した場合には、インターバル時間は比較的短い第2インターバル時間であってもよい。第3時間帯Δt3で風力発電設備1が停止した場合には、インターバル時間は、第1インターバル時間よりも短いとともに第2インターバル時間よりも長くてもよい。
【0052】
そこで、本実施の形態によるインターバル時間設定装置30は、上述したグリスの温度特性を用いて風力発電設備1の停止から再起動するまでのインターバル時間を設定する。
【0053】
例えば、上述した温度閾値は、図4に示すTE1であってもよい。TE1は、第2時間帯Δt2におけるグリスの最高温度TE2以上の温度である。この場合、軸受温度判断部37は、停止時の軸受8の温度が、この最高温度TE2よりも高いか否かを判断することができる。このことにより、風車4が回転停止したときのグリスの状態が、図4に示す第1時間帯Δt1~第3時間帯Δt3に属するか、または第4時間帯Δt4に属するかを判断することができる。
【0054】
例えば、上述した時間閾値は、図4に示す第2時間t2であってもよい。この場合、回転時間判断部38は、停止するまでの連続回転時間が、第2時間t2よりも長いか否かを判断することができる。このことにより、風車4が回転停止したときのグリスの状態が、図4に示す第1時間帯Δt1~第2時間帯Δt2に属するか、または第3時間帯Δt3に属するかを判断することができる。
【0055】
このようなグリスの温度特性を用いることにより、観察することが困難なグリスの状態を、軸受8の温度と連続回転時間から推定することができる。
【0056】
次に、本実施の形態による風力発電設備1のインターバル時間設定方法について図5および図6を用いて説明する。インターバル時間設定方法は、ナセル3に対して回転可能に風車4を支持する軸受8を含む風力発電設備1を故障停止してから再起動するまでのインターバル時間を設定するための方法である。ここでは、風力発電設備1の一過性の事象による停止の一例として、故障停止した場合を例にとって説明する。
【0057】
一般的な気象条件として、3、4日程度の周期で風車4の回転が停止するような比較的弱い風速状況が発生する。この場合、軸受8のグリスは、図4に示す第1時間帯Δt1におけるグリスの状態に、3、4日に一度は戻ることになる。このような風速状況で風速が高くなる場合は、風速は徐々に高くなる場合がほとんどである。このため、再起動時に、軸受8を損傷する程度の風荷重が軸受8に掛かることはほとんどないと言える。
【0058】
一方、3、4日間の連続運転中に、一過性の事象による故障で回転停止が発生する場合もある。このような回転停止の多くは、突風によりタワー2が揺れたり、風車4の回転が高くなりすぎたりすることによって発生する。このような風速状況は継続しないため、機器故障などが併発しない限り、風力発電設備1は速やかに再起動される。しかしながら、故障停止した際のグリスの状態によっては、潤滑性能が低下したまま風力発電設備1が再起動されるおそれがあり得る。そこで、故障停止した風力発電設備1を再起動する際に、本実施の形態によるインターバル時間設定方法が実行される。
【0059】
図5には、風力発電設備1が何らかの理由で故障停止してから、風力発電設備1を再起動するまでの再起動方法のフローチャートを示している。まず、ステップS1として風力発電設備1が故障停止すると、ステップS2として故障復旧が行われる。復旧後、再起動するための条件を満たすまで、ステップS3として風力発電設備1は待機する。風力発電設備1の待機時間は、上述したインターバル設定部40により設定されたインターバル時間である。待機中、ステップS4として再起動するための条件の確認が行われる。ステップS4においては、後述するインターバル時間設定方法とは別に、停止中の機器の状態および風況が起動可能条件を満たしているか否かの確認が行われる。例えば、インターバル設定部40により設定されたインターバル時間が終了する直前に、風況の確認が行われてもよい。ステップS4の条件を満たすと、ステップS5として風力発電設備1は再起動される。
【0060】
図5に示すステップS3において待機すべき時間を示すインターバル時間の設定方法について、図6を用いて以下説明する。
【0061】
まず、ステップS11として、風力発電設備1の風車4が何らかの故障発生によって回転停止する。
【0062】
ステップS11の後、ステップS12として、軸受温度取得部34により故障停止時の軸受8の温度が取得される。
【0063】
ステップS12の後、ステップS13として、軸受温度判断部37により軸受8の温度が温度閾値TE1よりも高いか否かが判断される。このことにより、故障停止時の軸受8の温度が、図4に示す第2時間帯Δt2におけるグリスの最高温度TE2よりも高いか否かを判断することができる。軸受8の温度が温度閾値TE1よりも高いと判断された場合、ステップS14として、インターバル設定部40により、比較的長い第1インターバル時間が設定される。
【0064】
ステップS13において、軸受8の温度が温度閾値TE1よりも高くないと判断された場合、ステップS15として、回転時間取得部35により故障停止するまでの風車4の連続回転時間が取得される。ステップS15は、ステップS12と同時に行われてもよく、またはステップS12の前に行われてもよい。
【0065】
ステップS15の後、ステップS16として、風況取得部36により風況が取得される。ステップS16は、ステップS12と同時に行われてもよく、またはステップS12の前に行われてもよい。ステップS16は、ステップS15と同時に行われてもよく、またはステップS15の前に行われてもよい。
【0066】
ステップS16の後、ステップS17として、回転時間判断部38により、風車4の連続回転時間が時間閾値(上述した第2時間t2)よりも長いか否かが判断される。このことにより、故障停止するまでの連続回転時間が、図4に示す第2時間t2よりも長いか否かを判断することができる。
【0067】
ステップS17において、風車4の連続回転時間が時間閾値よりも長くないと判断された場合、ステップS18として、風況判断部39により、風況の変動が大きいか否かが判断される。このことにより、風力発電設備1の周囲における風況が、風力発電設備1を再起動する条件を満たしているか否かを判断することができる。
【0068】
ステップS18において、風況の変動が大きくないと判断された場合、ステップS19として、インターバル設定部40により、比較的短い第2インターバル時間が設定される。
【0069】
ステップS18において、風況の変動が大きいと判断された場合、ステップS20として、インターバル設定部40により、第3インターバル時間が設定される。第3インターバル時間は、第1インターバル時間よりも短いとともに第2インターバル時間よりも長い時間である。
【0070】
上述したステップS17において、風車4の連続回転時間が時間閾値よりも長いと判断された場合、ステップS21として、風況判断部39により、風況の変動が大きいか否かが判断される。このことにより、風力発電設備1が設置された位置における風況が、風力発電設備1を再起動する条件を満たしているか否かを判断することができる。
【0071】
ステップS21において、風況の変動が大きくないと判断された場合、上述したステップS20として、第3インターバル時間が設定される。
【0072】
ステップS21において、風況の変動が大きいと判断された場合、上述したステップS14として、第1インターバル時間が設定される。
【0073】
このようにして、図4に示すグリスの温度特性モデルを用いるとともに風況を考慮して、風力発電設備1が故障停止してから再起動するまでのインターバル時間を設定することができる。インターバル設定部40により設定されたインターバル時間は、風力発電制御装置13に送信され、このインターバル時間に対応する待機時間で、図5に示すステップS3における待機が行われる。
【0074】
このように本実施の形態によれば、停止時の軸受8の温度が温度閾値よりも高いか否かが判断され、軸受8の温度の判断結果に基づいて、風力発電設備1の停止から再起動するまでのインターバル時間が設定される。このことにより、停止時におけるグリスの状態を推定し、グリスが半固体状態に戻るまでのインターバル時間を設定することができる。このため、風力発電設備1の再起動時に、グリスの潤滑性能が低下することを防止でき、軸受8に過大な荷重が掛かることを防止できる。この結果、風車4の軸受8の損傷を防止することができる。
【0075】
また、本実施の形態によれば、軸受8の温度が温度閾値よりも高いと判断された場合、比較的長い第1インターバル時間が設定される。軸受8の温度が温度閾値よりも高い場合、軸受8に掛かる荷重が大きくなっていると推定できる。この場合、図4に示す第4時間帯T4のようにグリスの温度が高くなり、金属接触面に油膜を形成するための基油が、増ちょう剤の繊維構造から多く流れ出ている。このため、インターバル時間を長くすることにより、基油が増ちょう剤の繊維構造に戻ってグリスを復元するための時間を確保することができる。従って、風力発電設備1の再起動時に、グリスを半固体状態に戻すことができ、再起動時の軸受8の潤滑状態が低下することを抑制できる。この結果、風車4の軸受8の損傷をより一層防止することができる。とりわけ、温度閾値が、図4に示す第2時間帯Δt2におけるグリスの最高温度TE2以上の温度に設定されている場合、停止時におけるグリスの状態推定の精度を高めることができる。
【0076】
また、本実施の形態によれば、軸受8の温度が温度閾値よりも高くないと判断された場合、連続回転時間が時間閾値よりも長いか否かが判断され、連続回転時間の判断結果に基づいて、風力発電設備1の停止から再起動するまでのインターバル時間が設定される。このことにより、停止時におけるグリスの状態を推定し、グリスが半固体状態に戻るまでのインターバル時間を設定することができる。また、インターバル時間が無用に長くなることを防止し、風力発電設備1の発電機会の逸失時間を低減することができる。
【0077】
また、本実施の形態によれば、連続回転時間が時間閾値よりも長くないと判断された場合、風況の変動が大きいか否かが判断される。風況の判断結果に基づいて、インターバル時間が設定される。このことにより、風況の変動の大きさに基づいて、インターバル時間を設定することができる。このため、風力発電設備1の再起動時に、軸受8に過大な荷重が掛かることを防止でき、軸受8の損傷をより一層防止できる。
【0078】
また、本実施の形態によれば、連続回転時間が時間閾値よりも長くないと判断されるとともに、風況の変動が大きくないと判断された場合、比較的短い第2インターバル時間が設定される。このことにより、軸受8に過大な荷重が掛かる可能性が低い状態では、インターバル時間を短くして、風力発電設備1の再起動を早めることができる。このため、インターバル時間が無用に長くなることを防止し、風力発電設備1による発電機会の逸失時間を低減することができる。
【0079】
また、本実施の形態によれば、連続回転時間が時間閾値よりも長くないと判断されるとともに、風況の変動が大きいと判断された場合、第1インターバル時間よりも短いとともに第2インターバル時間よりも長い第3インターバル時間が設定される。このことにより、風況の変動が大きい状態で風力発電設備1が再起動されることを防止できる。このため、軸受8に過大な荷重が掛かることを防止でき、軸受8の損傷をより一層防止できる。また、インターバル時間が無用に長くなることを防止し、風力発電設備1の発電機会の逸失時間を低減することができる。
【0080】
また、本実施の形態によれば、連続回転時間が時間閾値よりも長いと判断されるとともに、風況の変動が大きくないと判断された場合、第1インターバル時間よりも短いとともに第2インターバル時間よりも長い第3インターバル時間が設定される。このため、インターバル時間を長くすることにより、基油が増ちょう剤の繊維構造に戻ってグリスを復元するための時間を確保することができる。従って、風力発電設備1の再起動時に、グリスを半固体状態に戻すことができ、再起動時の軸受8の潤滑状態が低下することを抑制できる。この結果、風車4の軸受8の損傷をより一層防止することができる。また、風力発電設備の再起動を早めることができ、発電機会の逸失時間を低減することができる。
【0081】
また、本実施の形態によれば、連続回転時間が時間閾値よりも長いと判断されるとともに、風況の変動が大きいと判断された場合、比較的長い第1インターバル時間が設定される。このため、ンターバル時間を長くすることにより、基油が増ちょう剤の繊維構造に戻ってグリスを復元するための時間を確保することができる。従って、風力発電設備1の再起動時に、グリスを半固体状態に戻すことができ、再起動時の軸受8の潤滑状態が低下することを抑制できる。この結果、風車4の軸受8の損傷をより一層防止することができる。
【0082】
なお、上述した本実施の形態においては、ステップS18において風況の変動が大きいと判断された場合、および、ステップS21において風況の変動が小さいと判断された場合、第3インターバル時間が設定される例について説明した。しかしながら、本実施の形態は、このことに限られることはない。例えば、ステップS21において風況の変動が小さいと判断された場合、第3インターバル時間とは異なる第4インターバル時間が設定されてもよい。第4インターバル時間は、第1インターバル時間よりも短いとともに第2インターバル時間よりも長くてもよい。第4インターバル時間は、第3インターバル時間より長くてもよく、または短くてもよい。
【0083】
また、上述した本実施の形態においては、ステップS18において風況の変動が大きいか否かを判断している例について説明した。しかしながら、本実施の形態は、このことに限られることはない。例えば、ステップS18においては、風況の変動の大きさに応じて、3つ以上に場合分けされて、インターバル時間の長さをそれぞれ異ならせてもよい。ステップS21も同様である。
【0084】
以上述べた実施の形態によれば、風車の軸受8の損傷を防止することができる。
【0085】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、当然のことながら、本発明の要旨の範囲内で、これらの実施の形態を、部分的に適宜組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0086】
1:風力発電設備、3:ナセル、4:風車、8:軸受、30:インターバル時間設定装置、34:軸受温度取得部、35:回転時間取得部、36:風況取得部、37:軸受温度判断部、38:回転時間判断部、39:風況判断部、40:インターバル設定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6