(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111679
(43)【公開日】2024-08-19
(54)【発明の名称】検査装置及び検査方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/956 20060101AFI20240809BHJP
【FI】
G01N21/956 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023016319
(22)【出願日】2023-02-06
(71)【出願人】
【識別番号】000219314
【氏名又は名称】東レエンジニアリング株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】301014904
【氏名又は名称】東レエンジニアリング先端半導体MIテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】島谷 謙一
(72)【発明者】
【氏名】久世 康之
【テーマコード(参考)】
2G051
【Fターム(参考)】
2G051AA51
2G051AB01
2G051AB07
2G051AC21
2G051CA04
2G051CA07
2G051EA24
(57)【要約】
【課題】複数のカメラを用いた場合における被検査対象の検査時間を短縮する。
【解決手段】検査装置1は、複数の領域Rに区画された被検査対象Wを複数のカメラ10,20で撮像して得られる撮像画像Waにより被検査対象Wを検査する。第1カメラ10により撮像される領域Rの撮像画像Wa1は、複数の画素Pで分割されている。第2カメラ20により撮像される領域Rの撮像画像Wa2は、複数の画素Pで分割されている。複数のカメラ10,20は、第1カメラ10と、第1カメラ10以外の第2カメラ20と、を含む。第2カメラ20により撮像される領域Rの撮像画像Wa2では、輝度値(光学情報)Lのシェーディング処理と、第1カメラ10と第2カメラ20との間の性能差に基づいて輝度値Lを補正するカメラ間補正処理とが、複数の画素Pに対応する1つのシェーディング‐カメラ間補正テーブル21によって、行われる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の領域に区画された被検査対象を複数のカメラで交互に撮像して得られる撮像画像により前記被検査対象を検査する検査装置であって、
複数の前記カメラは、第1カメラと、前記第1カメラ以外の第2カメラと、を含み、
前記第1カメラにより撮像される前記領域の前記撮像画像は、複数の画素で分割されており、
前記第2カメラにより撮像される前記領域の前記撮像画像は、複数の画素で分割されており、
前記第2カメラにより撮像される前記領域の前記撮像画像では、光学情報のシェーディング処理と、前記第1カメラと前記第2カメラとの間の性能差に基づいて前記光学情報を補正するカメラ間補正処理とが、複数の前記画素に対応する1つのシェーディング‐カメラ間補正テーブルによって、行われる、検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載の検査装置であって、
前記第1カメラにより撮像される前記領域の前記撮像画像では、前記光学情報の前記シェーディング処理のみが、複数の前記画素に対応する1つのシェーディングテーブルによって、行われる、検査装置。
【請求項3】
請求項1に記載の検査装置であって、
前記光学情報は、輝度を含む、検査装置。
【請求項4】
複数の領域に区画された被検査対象を複数のカメラで交互に撮像して得られる撮像画像により前記被検査対象を検査する検査方法であって、
複数の前記カメラは、第1カメラと、前記第1カメラ以外の第2カメラと、を含み、
前記第1カメラにより撮像される前記領域の前記撮像画像は、複数の画素で分割されており、
前記第2カメラにより撮像される前記領域の前記撮像画像は、複数の画素で分割されており、
前記第2カメラにより撮像される前記領域の前記撮像画像では、光学情報のシェーディング処理と、前記第1カメラと前記第2カメラとの間の性能差に基づいて前記光学情報を補正するカメラ間補正処理とが、複数の前記画素に対応する1つのシェーディング‐カメラ間補正テーブルによって、行われる、検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、検査装置及び検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被検査対象をカメラで撮像して得られる撮像画像に基づいて被検査対象を検査する検査装置が、知られている。この種の検査装置は、例えば、ガラスや半導体ウエハなどの被検査対象に形成された欠陥を、検出する。
【0003】
この種の検査装置では、被検査対象における任意の領域をカメラで撮像して得られる撮像画像データをメモリに一時的に保存して、撮像画像データを外部機器(例えばコンピュータ)などに転送した後に、被検査対象における次(隣)の領域を同じカメラで再び撮像する。
【0004】
このような検査装置では、カメラの処理能力(例えば、撮像画像データを保存するためのメモリ容量や、外部機器への撮像画像データの転送速度など)に応じて、被検査対象における任意の領域をカメラで撮像してから被検査対象における次の領域を同じカメラで再び撮像できるようになるまでに、少なからずインターバルがあるので、検査に時間がかかってしまうという問題があった。
【0005】
特許文献1に開示の検査装置は、被検査対象を複数のカメラで交互に撮像することによって、カメラの処理能力に制約を受けることなく検査時間を短縮することを可能にした。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1に開示の検査装置では、複数の領域に区画された被検査対象を複数のカメラで交互に撮像するところ、たとえ同仕様のカメラ同士であっても、複数のカメラ間において微妙に性能が異なることがある。このため、一のカメラで撮像される被検査対象の任意の領域の撮像画像と、他のカメラで撮像される被検査対象の他の領域の撮像画像とでは、両カメラ間の性能差に起因して、輝度や明度などの光学情報が微妙に異なることがある。
【0008】
一のカメラで得られる領域の撮像画像と、他のカメラで得られる領域の撮像画像との間で、両カメラ間の性能差に基づいて光学情報の補正処理を行う必要があるので、当該補正処理に要する時間分だけ、被検査対象の検査に時間を要してしまう。このため、被検査対象を複数のカメラで交互に撮像する検査手法において、検査時間を短縮するにあたって、いまだ改善の余地がある。
【0009】
本開示は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、複数のカメラを用いた場合における被検査対象の検査時間を短縮することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示に係る検査装置は、複数の領域に区画された被検査対象を複数のカメラで交互に撮像して得られる撮像画像により前記被検査対象を検査する検査装置であって、複数の前記カメラは、第1カメラと、前記第1カメラ以外の第2カメラと、を含み、前記第1カメラにより撮像される前記領域の前記撮像画像は、複数の画素で分割されており、前記第2カメラにより撮像される前記領域の前記撮像画像は、複数の画素で分割されており、前記第2カメラにより撮像される前記領域の前記撮像画像では、光学情報のシェーディング処理と、前記第1カメラと前記第2カメラとの間の性能差に基づいて前記光学情報を補正するカメラ間補正処理とが、複数の前記画素に対応する1つのシェーディング‐カメラ間補正テーブルによって、行われる。
【0011】
複数の領域に区画された被検査対象を第1カメラ及び第2カメラで交互に撮像することによって、第1カメラにより撮像される領域の撮像画像と、第2カメラにより撮像される領域の撮像画像と、が得られる。
【0012】
各カメラにより撮像される各領域の撮像画像は複数の画素で分割されているところ、複数の画素間において光学情報のバラツキが生じることがある。
【0013】
そこで、第1カメラにより撮像される領域の撮像画像において、複数の画素間における光学情報のバラツキを抑制するために、シェーディング処理が行われる。同様に、第2カメラにより撮像される領域の撮像画像においても、複数の画素間における光学情報のバラツキを抑制するために、シェーディング処理が行われる。
【0014】
ここで、第1カメラで撮像される被検査対象の任意の領域の撮像画像と、第2カメラで撮像される被検査対象の他の領域の撮像画像との間では、第1カメラと第2カメラとの間の性能差に起因して、光学情報が微妙に異なることがある。
【0015】
そこで、第2カメラにより撮像される領域の撮像画像では、シェーディング処理に加えて、第1カメラと第2カメラとの間の性能差に基づいて光学情報を補正するカメラ間補正処理が、行われる。そして、カメラ間補正処理は、複数の画素に対応する1つのシェーディング‐カメラ間補正テーブルによって、シェーディング処理と共に行われる。
【0016】
第2カメラにより撮像される領域の撮像画像では、シェーディング処理とカメラ間補正処理とが1つのシェーディング‐カメラ間補正テーブルによって行われるので、シェーディング処理とカメラ間補正処理とを互いに別個のテーブルで行った場合に比較して、画像処理時間を短縮することができる。このため、被検査対象の検査に要する時間を最終的に短縮することができる。
【0017】
以上、複数のカメラを用いた検査装置による被検査対象の検査時間を短縮することができる。
【0018】
一実施形態では、前記第1カメラにより撮像される前記領域の前記撮像画像では、前記光学情報の前記シェーディング処理のみが、複数の前記画素に対応する1つのシェーディングテーブルによって、行われる。
【0019】
かかる構成によれば、第1カメラにより撮像される領域の撮像画像では、第2カメラに合わせて光学情報を補正する必要がないので、第1カメラにおける処理が簡単である。
【0020】
一実施形態では、前記光学情報は、輝度を含む。
【0021】
かかる構成によれば、第1カメラと第2カメラとの性能差に起因した、人間が感じる見え方のバラツキを、抑制することができる。
【0022】
本開示に係る検査方法は、複数の領域に区画された被検査対象を複数のカメラで交互に撮像して得られる撮像画像により前記被検査対象を検査する検査方法であって、複数の前記カメラは、第1カメラと、前記第1カメラ以外の第2カメラと、を含み、前記第1カメラにより撮像される前記領域の前記撮像画像は、複数の画素で分割されており、前記第2カメラにより撮像される前記領域の前記撮像画像は、複数の画素で分割されており、前記第2カメラにより撮像される前記領域の前記撮像画像では、光学情報のシェーディング処理と、前記第1カメラと前記第2カメラとの間の性能差に基づいて前記光学情報を補正するカメラ間補正処理とが、複数の前記画素に対応する1つのシェーディング‐カメラ間補正テーブルによって、行われる。
【0023】
以上、複数のカメラを用いた検査方法による被検査対象の検査時間を短縮することができる。
【発明の効果】
【0024】
本開示によれば、複数のカメラを用いた場合における被検査対象の検査時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、複数のカメラを備える検査装置を示す。
【
図2】
図2は、複数のカメラのON/OFF切換を示す。
【
図3】
図3は、被検査対象における各領域を模式的に示す。
【
図4】
図4は、本実施形態について、第1カメラにより撮像される領域の撮像画像における第1シェーディングテーブルを用いたシェーディング処理を示す。
【
図5】
図5は、本実施形態について、第2カメラにより撮像される領域の撮像画像における1つのシェーディング‐カメラ間補正テーブルを用いたシェーディング処理及びカメラ間補正処理を示す。
【
図6】
図6は、従来例について、第2カメラにより撮像される領域の撮像画像における別個の第2シェーディングテーブル及びカメラ間補正テーブルを用いたシェーディング処理及びカメラ間補正処理を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本開示の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本開示、その適用物あるいはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0027】
(検査装置)
図1は、検査装置1を示す。検査装置1は、複数(本例では2つ)のカメラ10,20を、備える。複数のカメラ10,20は、第1カメラ10と、第1カメラ10以外の第2カメラ20と、を含む。第1カメラ10と第2カメラ20とは、互いに同仕様であるものの、後述するように微妙な性能差がある。微妙な性能差としては、例えば、製作誤差などに起因する、感光能力の微妙な差などがある。
【0028】
検査装置1は、被検査対象Wを検査するためにある。検査装置1は、例えばマイコン及びプログラムで構成された制御部を、備える。
【0029】
検査装置1は、例えば、被検査対象Wに形成された欠陥を、検査するためにある。欠陥として、例えば、異物、傷、エッジリンス不良、スルーホール異常、塗膜ムラ、剥がれ、スクラッチ、ボンディングパッド異常、色ムラ、パターン異常、染み、変色、変形、などがある。
【0030】
被検査対象Wは、半導体基板である。被検査対象Wは、可動のステージ2に載せられている。一方、第1カメラ10及び第2カメラ20は、定位置に固定されている。
【0031】
図2は、第1カメラ10及び第2カメラ20のON/OFF切換を示す。第1カメラ10及び第2カメラ20のON/OFFは、トリガ信号Sによって、交互に切り換えられる。第1カメラ10がON(起動)のとき、第2カメラ20はOFF(停止)である。反対に、第1カメラ10がOFFのとき、第2カメラ20はONである。
【0032】
図3は、被検査対象Wを模式的に示す。被検査対象Wは、複数の領域Rに区画されている。複数の領域Rは、行列(マトリックス)状に並べられている。複数の領域Rは、被検査対象Wの表面における行方向(横方向)N及び列方向(縦方向)Kに、並べられている。
【0033】
被検査対象Wには、領域R毎に回路パターンFが形成されている。回路パターンFは、半導体製造の前工程において、半導体基板(半導体ウエハ)に焼き付けられる。
図3では回路パターンFを模式的に符号「F」で表すが、実際はもっと複雑な形状である。
【0034】
検査装置1では、被検査対象Wを検査するにあたって、複数の領域Rに区画された被検査対象Wを第1カメラ10及び第2カメラ20で交互に撮像することによって、領域R毎に撮像画像Waを得る。
【0035】
領域R毎に得られた撮像画像Waは、各カメラ10,20のメモリに一時的に保存された後に、コンピュータなどの外部機器に転送される。一方のカメラ10,20が被検査対象Wの任意の領域Rを撮像した後に上述の一時保存及び転送などを行っている間に、他方のカメラ10,20は被検査対象Wの次(隣)の領域Rを撮像する。
【0036】
これにより、検査装置1は、2つのカメラ10,20で分担しながら被検査対象Wの各領域Rを撮像することによって、被検査対象Wの撮像画像Waを領域R毎に素早く得て、被検査対象Wを短時間で検査する。
【0037】
具体的には、第1カメラ10及び第2カメラ20を定位置に固定したまま、被検査対象Wが載せられたステージ2を列方向Kに移動させる。これにより、第1カメラ10及び第2カメラ20は、被検査対象Wを、任意の行において列方向Kに、スキャン(走査)する。
【0038】
より詳細には、第1カメラ10及び第2カメラ20は、被検査対象Wを、任意の行において列方向Kの一方にスキャンした後に、その隣の行において列方向Kの他方にスキャンするのを、繰り返す(
図3の矢印A参照)。
【0039】
以下、第1カメラ10及び第2カメラ20が被検査対象Wをスキャンする方向である列方向Kを、スキャン方向Kという場合がある。
【0040】
第1カメラ10及び第2カメラ20は、スキャン方向(列方向)Kにおいて、領域R毎に、被検査対象Wを交互に撮像する。すなわち、スキャン方向(列方向)Kに互いに隣り合う領域R同士の間で、撮像に用いるカメラ10,20が互いに異なる。
【0041】
被検査対象Wにおける任意の領域Rは、被検査対象Wを第1カメラ10及び第2カメラ20により複数の領域Rの並ぶ列方向Kにスキャンすることによって、第1カメラ10及び第2カメラ20のうちのいずれかで、撮像される。これにより、検査装置1は、被検査対象Wの撮像画像Waを領域R毎に得る。
【0042】
領域R毎に得られた撮像画像Waは、第1カメラ10及び第2カメラ20によって区別されている。すなわち、2つのカメラ10,20間の機差が考慮されている。領域R毎に得られた撮像画像Waは、第1カメラ10により撮像される領域Rの撮像画像Wa1(以下「第1カメラ画像Wa1」という場合がある)と、第2カメラ20により撮像される領域Rの撮像画像Wa2(以下「第2カメラ画像Wa2」という場合がある)と、の2パターンある。
【0043】
検査装置1は、領域R毎に得られた撮像画像Waを、予め用意された良品画像Taと比較することによって、被検査対象Wを検査する。良品画像Taは、被検査対象Wと同仕様の良品サンプル(図示せず)をベースに、作成されている。良品画像Taは、統計的良品画像とも呼ばれており、多数の良品サンプルを平均化等することによって得られる。
【0044】
図4は、本実施形態について、第1カメラ10により撮像される領域Rの撮像画像(第1カメラ画像)Wa1を示す。第1カメラ画像Wa1は、複数の画素(ピクセル)Pで分割されている。本例では、画素Pの数が5×5=25の場合を例示する。
【0045】
各画素Pに記載の数値は、光学情報としての輝度値Lである。画素Pにおいて、輝度値Lは、その数値が大きいほど明るく、その数値が小さいほど暗い。輝度値Lは、例えば、0~255の数値範囲で表される。
【0046】
図4において、領域Rは、無地であるとする。すなわち、領域Rには、何らパターン(例えば
図3の「F」)が存在しないとする。この場合、本来、第1カメラ画像Wa1における全ての画素Pの輝度値Lは、互いに等しくなるはずである。しかしながら、
図4に示すように、第1カメラ画像Wa1における各画素Pの輝度値Lは、互いにバラツキがある。例えば、第1カメラ画像Wa1における中央の画素Pの輝度値Lは大きい一方、第1カメラ画像Wa1における外周の画素Pの輝度値Lは小さい。
【0047】
第1カメラ10により撮像される領域Rの撮像画像Wa1(第1カメラ画像Wa1)では、各画素Pの輝度値Lのシェーディング処理のみが、1つ(単一)の第1シェーディングテーブル11によって、行われる。
【0048】
第1シェーディングテーブル11は、テーブル(表)で構成されており、第1カメラ画像Wa1における複数(25個)の画素Pに対応している。すなわち、第1シェーディングテーブル11は、第1カメラ画像Wa1と同様に、複数(25個)の画素Pで分割されている。
【0049】
ここで、「シェーディング処理のみ」とは、1つの第1シェーディングテーブル11によって行われるのがシェーディング処理のみであるという意味であり、第1カメラ画像Wa1において第1シェーディングテーブル11を用いずにその他の処理(例えば、後述の歪み補正処理など)が行われても差し支えない。
【0050】
第1シェーディングテーブル11は、シェーディング処理前の第1カメラ画像Wa1における各画素Pの輝度値Lに対して、第1シェーディング係数X1を乗じる。第1シェーディング係数X1は、第1カメラ10の性能に基づいて定まる。第1シェーディング係数X1は、実験やシミュレーションによって画素P毎に予め定められており、画素P毎に保存されている。
【0051】
第1シェーディングテーブル11における各画素Pの第1シェーディング係数X1は、シェーディング処理によって第1カメラ画像Wa1における全ての画素Pの輝度値Lが中央の画素Pの輝度値Lに統一されるように、設定されている。
【0052】
第1カメラ画像Wa1における中央の画素Pの輝度値L(200)は、変化させる必要がないので、第1シェーディングテーブル11における中央の画素Pの第1シェーディング係数X1は、100.0%である。
【0053】
一方、第1カメラ画像Wa1における左上の画素Pの輝度値L(183)は、大きく変化させる必要があるので、第1シェーディングテーブル11における左上の画素Pの第1シェーディング係数X1は、大きな値の109.3%である(183×1.093≒200)。
【0054】
第1カメラ画像Wa1における全ての画素Pの輝度値Lは、200で統一されて、バラツキがなくなる。
【0055】
第1カメラ画像Wa1では、第1シェーディングテーブル11によるシェーディング処理を行った後に、歪み補正処理を行う。歪み補正では、第1カメラ画像Wa1(領域R)における画素Pの位置調整などが行われる。
【0056】
図5は、本実施形態について、第2カメラ20により撮像される領域Rの撮像画像(第2カメラ画像)Wa2を示す。
図6は、従来例についての第2カメラ画像Wa2を示す。以下、第2カメラ画像Wa2の説明において、第1カメラ画像Wa1と同様の構成については、詳細な説明を省略する場合がある。
【0057】
図5,6に示すように、第2カメラ画像Wa2は、複数(25個)の画素Pで分割されている。各画素Pに記載の数値は、輝度値Lである。
【0058】
図5,6に示すように、第2カメラ画像Wa2における各画素Pの輝度値Lは、互いにバラツキがある。例えば、第2カメラ画像Wa2における中央の画素Pの輝度値Lは大きい一方、第2カメラ画像Wa2における外周の画素Pの輝度値Lは小さい。
【0059】
図5,6と
図4とに示すように、画像処理前において、第2カメラ画像Wa2における各画素Pの輝度値Lは、第1カメラ画像Wa1における各画素Pの輝度値Lよりも、全体的に小さい(画像処理前において、第2カメラ画像Wa2は、第1カメラ画像Wa1よりも、全体的に暗い)。
【0060】
図6に示すように、従来例について、第2カメラ画像Wa2では、各画素Pの輝度値Lのシェーディング処理及びカメラ間補正処理が、別個(2つ)の第2シェーディングテーブル25及びカメラ間補正テーブル26によって、行われる。
【0061】
第2シェーディングテーブル25は、テーブル(表)で構成されており、第2カメラ画像Wa2における複数(25個)の画素Pに対応している。すなわち、第2シェーディングテーブル25は、第2カメラ画像Wa2と同様に、複数(25個)の画素Pで分割されている。
【0062】
第2シェーディングテーブル25は、シェーディング処理前の第2カメラ画像Wa2における各画素Pの輝度値Lに対して、第2シェーディング係数X2を乗じる。第2シェーディング係数X2は、第2カメラ20の性能に基づいて予め定められており、画素P毎に保存されている。
【0063】
第2シェーディングテーブル25における各画素Pの第2シェーディング係数X2は、シェーディング処理によって第2カメラ画像Wa2における全ての画素Pの輝度値Lが中央の画素Pの輝度値Lに統一されるように、設定されている。
【0064】
第2カメラ画像Wa2における中央の画素Pの輝度値L(180)は、変化させる必要がないので、第2シェーディングテーブル25における中央の画素Pの第2シェーディング係数X2は、100.0%である。
【0065】
一方、第2カメラ画像Wa2における左上の画素Pの輝度値L(162)は、大きく変化させる必要があるので、第2シェーディングテーブル25における左上の画素Pの第2シェーディング係数X2は、大きな値の111.1%である(162×1.111≒180)。
【0066】
ここで、
図4と
図6とに示すように、第1カメラ画像Wa1における各画素Pの輝度値Lと、第2カメラ画像Wa2における各画素Pの輝度値Lとは、シェーディング処理後の時点で互いに異なっている。
【0067】
シェーディング処理後の第1カメラ画像Wa1における各画素Pの輝度値Lは200である一方(
図4参照)、シェーディング処理後の第2カメラ画像Wa2における各画素Pの輝度値Lは180である(
図6参照)。第1カメラ画像Wa1における各画素Pの輝度値Lと第2カメラ画像Wa2における各画素Pの輝度値Lとの差異は、第1カメラ10と第2カメラ20との間の微妙な性能差に起因する。
【0068】
そこで、
図6に示すように、従来例において、第2カメラ画像Wa2では、カメラ間補正テーブル26によって、第1カメラ10と第2カメラ20との間の性能差に基づいて、各画素Pの輝度値Lを補正する。詳細には、第2カメラ画像Wa2における各画素Pの輝度値Lは、第1カメラ画像Wa1における各画素Pの輝度値Lを基準にして、補正される。
【0069】
カメラ間補正テーブル26は、テーブル(表)で構成されており、第2カメラ画像Wa2における複数(25個)の画素Pに対応している。すなわち、カメラ間補正テーブル26は、第2カメラ画像Wa2と同様に、複数(25個)の画素Pで分割されている。
【0070】
カメラ間補正テーブル26は、シェーディング処理後の第2カメラ画像Wa2における各画素Pの輝度値Lに対して、カメラ間補正係数Yを乗じる。カメラ間補正係数Yは、第1カメラ10と第2カメラ20との間の性能差に基づいて予め定められており、画素P毎に保存されている。
【0071】
カメラ間補正テーブル26における各画素Pのカメラ間補正係数Yは、第2カメラ画像Wa2の各画素Pの輝度値Lが、第1カメラ画像Wa1の各画素Pの輝度値Lと一致するように、設定されている。
【0072】
カメラ間補正テーブル26は、各画素Pにおいて、111.1%である。シェーディング処理後の第2カメラ画像Wa2における各画素Pの輝度値L(180)は、カメラ間補正テーブル26における各画素Pのカメラ間補正係数Y(111.1%)を乗じることによって、200となる(180×1.111≒200)。
【0073】
従来例では、
図6に示すように、第2カメラ画像Wa2において、シェーディング処理とカメラ間補正処理とが、別個(2つ)の第2シェーディングテーブル25及びカメラ間補正テーブル26によって行われるので、画像処理に時間を要してしまい、ひいては被検査対象Wの検査に時間を要してしまうという問題があった。
【0074】
本実施形態では、
図5に示すように、第2カメラ画像Wa2では、各画素Pの輝度値Lのシェーディング処理及びカメラ間補正処理が、1つ(単一)のシェーディング‐カメラ間補正テーブル21によって、行われる。
【0075】
シェーディング‐カメラ間補正テーブル21は、テーブル(表)で構成されており、第2カメラ画像Wa2における複数(25個)の画素Pに対応している。すなわち、シェーディング‐カメラ間補正テーブル21は、第2カメラ画像Wa2と同様に、複数(25個)の画素Pで分割されている。
【0076】
シェーディング‐カメラ間補正テーブル21は、第2カメラ画像Wa2における各画素Pの輝度値Lを、シェーディング処理するとともに、第1カメラ10と第2カメラ20との間の性能差に基づいて補正する。
【0077】
シェーディング‐カメラ間補正テーブル21は、画像処理前の第2カメラ画像Wa2における各画素Pの輝度値Lに対して、シェーディング‐カメラ間補正係数Zを乗じる。シェーディング‐カメラ間補正係数Zは、第2カメラ20の性能及び第1カメラ10と第2カメラ20との間の性能差に基づいて、予め定められており、画素P毎に保存されている。
【0078】
図5に示すように、本実施形態に係るシェーディング‐カメラ間補正テーブル21における各画素Pのシェーディング‐カメラ間補正係数Zは、従来例(
図6参照)に係る第2シェーディングテーブル25における各画素Pの第2シェーディング係数X2と、カメラ間補正テーブル26における各画素Pのカメラ間補正係数Yとを、互いに乗じたものである。すなわち、シェーディング‐カメラ間補正テーブル21は、第2シェーディングテーブル25とカメラ間補正テーブル26とを、互いに合成したものである。
【0079】
シェーディング‐カメラ間補正テーブル21における中央の画素Pのシェーディング‐カメラ間補正係数Zは、第2シェーディングテーブル25における中央の画素Pの第2シェーディング係数X2(100%)と、カメラ間補正テーブル26における中央の画素Pのカメラ間補正係数Y(111.1%)とを、互いに乗じたものであって、111.1%である(100%×111.1%=111.1%)。
【0080】
第2カメラ画像Wa2における中央の画素Pの輝度値L(180)は、シェーディング‐カメラ間補正テーブル21の中央のシェーディング‐カメラ間補正係数Z(111.1%)によって、補正されて、200となる(180×1.111≒200)。
【0081】
シェーディング‐カメラ間補正テーブル21における左上の画素Pのシェーディング‐カメラ間補正係数Zは、第2シェーディングテーブル25における左上の画素Pの第2シェーディング係数X2(111.1%)と、カメラ間補正テーブル26における左上の画素Pのカメラ間補正係数Y(111.1%)とを、互いに乗じたものであって、123.5%である(111.1%×111.1%≒123.5%)。
【0082】
第2カメラ画像Wa2における左上の画素Pの輝度値L(162)は、シェーディング‐カメラ間補正テーブル21の左上のシェーディング‐カメラ間補正係数Z(123.5%)によって、補正されて、200となる(162×1.235≒200)。
【0083】
第2カメラ画像Wa2では、1つのシェーディング‐カメラ間補正テーブル21によるシェーディング処理及びカメラ間補正処理を行った後に、歪み補正処理を行う。
【0084】
(作用効果)
本実施形態によれば、複数の領域Rに区画された被検査対象Wを第1カメラ10及び第2カメラ20で交互に撮像することによって、撮像画像Waとして、第1カメラ10により撮像される領域Rの撮像画像(第1カメラ画像)Wa1と、第2カメラ20により撮像される領域の撮像画像(第2カメラ画像)Wa2と、が得られる。
【0085】
各カメラ10,20(第1カメラ10、第2カメラ20)により撮像される各領域Rの撮像画像Wa(第1カメラ画像Wa1、第2カメラ画像Wa2)は複数の画素Pで分割されているところ、複数の画素P間において輝度値(光学情報)Lのバラツキが生じることがある。
【0086】
そこで、第1カメラ画像Wa1において、複数の画素P間における輝度値(光学情報)Lのバラツキを抑制するために、シェーディング処理が行われる。同様に、第2カメラ画像Wa2においても、複数の画素P間における輝度値Lのバラツキを抑制するために、シェーディング処理が行われる。
【0087】
ここで、第1カメラ10で撮像される被検査対象Wの任意の領域Rの撮像画像(第1カメラ画像)Wa1と、第2カメラ20で撮像される被検査対象Wの他の領域Rの撮像画像(第2カメラ画像)Wa2との間では、第1カメラ10と第2カメラ20との間の性能差に起因して、輝度値(光学情報)Lが微妙に異なることがある。
【0088】
そこで、第2カメラ画像Wa2では、シェーディング処理に加えて、第1カメラ10と第2カメラ20との間の性能差に基づいて各画素Pの輝度値(光学情報)Lを補正するためのカメラ間補正処理が、行われる。
【0089】
そして、カメラ間補正処理は、複数の画素Pに対応する1つのシェーディング‐カメラ間補正テーブル21によって、シェーディング処理と共に行われる。
【0090】
第2カメラ画像Wa2では、シェーディング処理とカメラ間補正処理とが1つのシェーディング‐カメラ間補正テーブル21によって行われるので(本実施形態、
図5参照)、シェーディング処理とカメラ間補正処理とを互いに別個(2つ)のテーブルで行った場合(従来例、
図6参照)に比較して、画像処理時間を短縮することができる。すなわち、本実施形態では、第2カメラ画像Wa2における画像処理の回数を、従来例の2回から1回に削減することができる。このため、被検査対象Wの検査に要する時間を最終的に短縮することができる。
【0091】
以上、複数のカメラ10,20を用いた検査装置1による被検査対象Wの検査時間を短縮することができる。
【0092】
第1カメラ画像Wa2では、輝度値(光学情報)Lのシェーディング処理のみが1つの第1シェーディングテーブル11によって行われるので、第2カメラ20に合わせて輝度値Lを補正する必要がなく、第1カメラ10における画像処理が簡単である。
【0093】
光学情報Lとして輝度値を含むので、第1カメラ10と第2カメラ20との性能差に起因した、人間が感じる見え方のバラツキを、抑制することができる。
【0094】
(その他の実施形態)
以上、本開示を好適な実施形態により説明してきたが、こうした記述は限定事項ではなく、勿論、種々の改変が可能である。
【0095】
カメラ10,20の数は、2つに限定されない。第1カメラ10と、複数の第2カメラ20と、があってもよい。
【0096】
複数の領域Rの並ぶ行方向Nを、スキャン方向としてもよい。ステージ2が固定、カメラ10,20が可動でもよい。
【0097】
被検査対象Wの各領域Rには、回路パターンRが無くてもよい。被検査対象Wは、半導体基板に限定されず、例えば、ガラスや金属や樹脂その他でもよく、また板材でなくてもよい。
【0098】
シェーディング処理前の第1カメラ画像Wa1及び第2カメラ画像Wa2における各画素Pの輝度値Lは、中央の画素Pで大きい一方、外周の画素Pで小さかったが、これに限定されず、中央の画素Pで小さい一方、外周の画素Pで大きくてもよく、さらにはランダムでもよい。
【0099】
画像処理前において、第2カメラ画像Wa2における各画素Pの輝度値Lは、第1カメラ画像Wa1における各画素Pの輝度値Lよりも、全体的に大きくてもよい(画像処理前において、第2カメラ画像Wa2は、第1カメラ画像Wa1よりも、全体的に明るくてもよい)。
【0100】
画素Pによる分割数は、上記に限定されず、ユーザが任意に設定してよい。光学情報Lとして、輝度値以外の指標を用いてもよい。光学情報Lとして、輝度値の他に、例えば、色相、明度、暗度、彩度、光度、照度などがある。
【0101】
歪み補正処理は、行われなくてもよい。シェーディング処理、カメラ間補正処理及び歪み補正処理以外の、画像処理が行われてもよい。
【0102】
シェーディング‐カメラ間補正テーブル21を用いた上記補正を、良品画像T1の作成時に適用してもよい。
【0103】
本開示に係る検査方法は、複数の領域Rに区画された被検査対象Wを複数のカメラ10,20で交互に撮像して得られる撮像画像Waにより被検査対象Wを検査する。複数のカメラ10,20は、第1カメラ10と、第1カメラ10以外の第2カメラ20と、を含む。第1カメラ10により撮像される領域Rの撮像画像(第1カメラ画像)Wa1は、複数の画素Pで分割されている。第2カメラ20により撮像される領域Rの撮像画像(第2カメラ画像)Wa2は、複数の画素Pで分割されている。第2カメラ20により撮像される領域Rの撮像画像Wa2では、光学情報Lのシェーディング処理と、第1カメラ10と第2カメラ20との間の性能差に基づいて光学情報Lを補正するカメラ間補正処理とが、複数の画素Pに対応する1つのシェーディング‐カメラ間補正テーブル21によって、行われる。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本開示は、検査装置及び検査方法に適用できるので、極めて有用であり、産業上の利用可能性が高い。
【符号の説明】
【0105】
W 被検査対象
Wa 撮像画像
Wa1 第1カメラ画像(撮像画像)
Wa2 第2カメラ画像(撮像画像)
Ta 良品画像
R 領域
N 行方向
K 列方向(スキャン方向)
F 回路パターン
P 画素
L 輝度値(輝度、光学情報)
X1 第1シェーディング係数
X2 第2シェーディング係数
Y カメラ間補正係数
Z シェーディング‐カメラ間補正係数
S トリガ信号
A 矢印
1 検査装置
2 ステージ
10 第1カメラ(複数のカメラ)
11 第1シェーディングテーブル
20 第2カメラ(複数のカメラ)
21 シェーディング‐カメラ間補正テーブル
25 第2シェーディングテーブル
26 カメラ間補正テーブル