(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111681
(43)【公開日】2024-08-19
(54)【発明の名称】検査装置及び検査方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/956 20060101AFI20240809BHJP
【FI】
G01N21/956 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023016322
(22)【出願日】2023-02-06
(71)【出願人】
【識別番号】000219314
【氏名又は名称】東レエンジニアリング株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】301014904
【氏名又は名称】東レエンジニアリング先端半導体MIテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】島谷 謙一
(72)【発明者】
【氏名】久世 康之
【テーマコード(参考)】
2G051
【Fターム(参考)】
2G051AA51
2G051AB01
2G051AB07
2G051AC21
2G051CA04
2G051CA07
(57)【要約】
【課題】複数のカメラを用いた場合における被検査対象の検査の信頼性を高める。
【解決手段】検査装置1は、被検査対象Wを複数のカメラ10,20で交互に撮像して得られる撮像画像W1を良品画像T1と比較することによって、被検査対象Wを検査する。良品画像Tは、複数の領域Rに区画された良品サンプルTを複数のカメラ10,20で交互に撮像することで得られる。良品サンプルTにおける任意の領域Rは、良品サンプルTを複数のカメラ10,20により複数の領域Rの並ぶ方向Kに少なくともカメラ10,20の数だけスキャンすることによって、複数のカメラ10,20で交互に撮像される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査対象を複数のカメラで交互に撮像して得られる撮像画像を良品画像と比較することにより前記被検査対象を検査する検査装置であって、
前記良品画像は、複数の領域に区画された良品サンプルを複数の前記カメラで交互に撮像することで得られており、
前記良品サンプルにおける任意の前記領域は、前記良品サンプルを複数の前記カメラにより複数の前記領域の並ぶ方向に少なくとも前記カメラの数だけスキャンすることによって、複数の前記カメラで交互に撮像される、検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載の検査装置であって、
前記撮像画像は、複数の領域に区画された前記被検査対象を複数の前記カメラで交互に撮像することで得られており、
前記被検査対象における任意の前記領域は、前記被検査対象を複数の前記カメラにより複数の前記領域の並ぶ方向にスキャンすることによって、複数の前記カメラのうちのいずれかで撮像されており、
前記領域毎に得られた前記撮像画像は、同じ前記カメラで得られた前記良品画像と比較される、検査装置。
【請求項3】
請求項1に記載の検査装置であって、
前記良品サンプルにおける任意の前記領域は、前記良品サンプルを複数の前記カメラにより複数の前記領域の並ぶ方向に少なくとも前記カメラの数だけ往復スキャンすることによって、往路及び復路のスキャン方向毎に複数の前記カメラで交互に撮像される、検査装置。
【請求項4】
請求項3に記載の検査装置であって、
前記撮像画像は、複数の領域に区画された前記被検査対象を複数の前記カメラで交互に撮像することで得られており、
前記被検査対象における任意の前記領域は、前記被検査対象を複数の前記カメラにより複数の前記領域の並ぶ方向に前記往路及び前記復路のいずれかの前記スキャン方向でスキャンすることによって、複数の前記カメラのうちのいずれかで撮像されており、
前記領域毎に得られた前記撮像画像は、同じ前記カメラ及び同じ前記スキャン方向で得られた前記良品画像と比較される、検査装置。
【請求項5】
請求項1に記載の検査装置であって、
前記被検査対象及び前記良品サンプルは、前記領域毎に回路パターンが形成された半導体基板である、検査装置。
【請求項6】
被検査対象を複数のカメラで交互に撮像して得られる撮像画像を良品画像と比較することにより前記被検査対象を検査する検査方法であって、
前記良品画像は、複数の領域に区画された良品サンプルを複数の前記カメラで交互に撮像することで得られており、
前記良品サンプルにおける任意の前記領域は、前記良品サンプルを複数の前記カメラにより複数の前記領域の並ぶ方向に少なくとも前記カメラの数だけスキャンすることによって、複数の前記カメラで交互に撮像される、検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、検査装置及び検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被検査対象をカメラで撮像して得られる撮像画像に基づいて被検査対象を検査する検査装置が、知られている。この種の検査装置は、例えば、ガラスや半導体ウエハなどの被検査対象に形成された欠陥を、検出する。
【0003】
この種の検査装置では、被検査対象における任意の領域をカメラで撮像して得られる撮像画像データをメモリに一時的に保存して、撮像画像データを外部機器(例えばコンピュータ)などに転送した後に、被検査対象における次(隣)の領域を同じカメラで再び撮像する。
【0004】
このような検査装置では、カメラの処理能力(例えば、撮像画像データを保存するためのメモリ容量や、外部機器への撮像画像データの転送速度など)に応じて、被検査対象における任意の領域をカメラで撮像してから被検査対象における次の領域を同じカメラで再び撮像できるようになるまでに、少なからずインターバルがあるので、検査に時間がかかってしまうという問題があった。
【0005】
特許文献1に開示の検査装置は、被検査対象を複数のカメラで交互に撮像することによって、カメラの処理能力に制約を受けることなく検査時間を短縮することを可能にした。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1に開示の検査装置では、被検査対象を検査するにあたって、被検査対象を複数のカメラで交互に撮像して得られる撮像画像を、予め用意された良品画像と比較する。良品画像は、複数の領域に区画された良品サンプルをカメラで撮像することによって、得られてる。
【0008】
複数の領域に区画された良品サンプルを1つの同じカメラのみで撮像することで良品画像を得た場合、当該良品画像は、検査時において被検査対象を複数のカメラで交互に撮像して得られる撮像画像とは、撮像条件が異なるので、信頼性が低い。
【0009】
一方、検査時と同じ撮像条件で、つまり複数の領域に区画された良品サンプルを複数のカメラで交互に撮像することで良品画像を得た場合、当該良品画像は、1つの同じカメラのみで撮像した前者の場合に比較して、カメラ毎に撮像される良品サンプルの領域の数が少なくなるので、十分なサンプル数を得られず、やはり信頼性が低くなってしまう。
【0010】
例えば、複数の領域に区画された良品サンプルを2つのカメラで交互に撮像した場合、カメラ毎に撮像される良品サンプルの領域の数は、良品サンプルの全領域を1つの同じカメラのみで撮像した場合に比較して、半分以下となる。
【0011】
良品画像の信頼性が低ければ、検査装置による被検査対象の検査の信頼性も当然に低くなる。
【0012】
本開示は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、複数のカメラを用いた場合における被検査対象の検査の信頼性を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本開示に係る検査装置は、被検査対象を複数のカメラで交互に撮像して得られる撮像画像を良品画像と比較することにより前記被検査対象を検査する検査装置であって、前記良品画像は、複数の領域に区画された良品サンプルを複数の前記カメラで交互に撮像することで得られており、前記良品サンプルにおける任意の前記領域は、前記良品サンプルを複数の前記カメラにより複数の前記領域の並ぶ方向に少なくとも前記カメラの数だけスキャンすることによって、複数の前記カメラで交互に撮像される。
【0014】
かかる構成によれば、良品画像は、検査時と同じ撮像条件で、すなわち複数の領域に区画された良品サンプルを複数のカメラで交互に撮像することで、得られる。このため、良品サンプルを1つの同じカメラのみで撮像することで良品画像を得た場合に比較して、良品画像の信頼性が高い。
【0015】
さらに、良品サンプルにおける任意の領域は、良品サンプルを複数のカメラにより複数の領域の並ぶ方向に少なくともカメラの数だけスキャンすることによって、複数のカメラで交互に撮像される。このため、カメラ毎に撮像される良品サンプルの領域の数が少なくならないので、良品画像の信頼性が低くなることが抑制される。
【0016】
以上、複数のカメラを用いた検査装置による被検査対象の検査の信頼性を高めることができる。
【0017】
一実施形態では、前記撮像画像は、複数の領域に区画された前記被検査対象を複数の前記カメラで交互に撮像することで得られており、前記被検査対象における任意の前記領域は、前記被検査対象を複数の前記カメラにより複数の前記領域の並ぶ方向にスキャンすることによって、複数の前記カメラのうちのいずれかで撮像されており、前記領域毎に得られた前記撮像画像は、同じ前記カメラで得られた前記良品画像と比較される。
【0018】
かかる構成によれば、領域毎に得られた撮像画像は、同じカメラという条件にて、良品画像と比較される。このため、撮像画像と良品画像との比較において、複数のカメラ間の機差がもたらす影響を低減することができる。
【0019】
一実施形態では、前記良品サンプルにおける任意の前記領域は、前記良品サンプルを複数の前記カメラにより複数の前記領域の並ぶ方向に少なくとも前記カメラの数だけ往復スキャンすることによって、往路及び復路のスキャン方向毎に複数の前記カメラで交互に撮像される。
【0020】
かかる構成によれば、スキャン方向における往路及び復路をも考慮した、より信頼性の高い良品画像を得ることができる。
【0021】
一実施形態では、前記撮像画像は、複数の領域に区画された前記被検査対象を複数の前記カメラで交互に撮像することで得られており、前記被検査対象における任意の前記領域は、前記被検査対象を複数の前記カメラにより複数の前記領域の並ぶ方向に前記往路及び前記復路のいずれかの前記スキャン方向でスキャンすることによって、複数の前記カメラのうちのいずれかで撮像されており、前記領域毎に得られた前記撮像画像は、同じ前記カメラ及び同じ前記スキャン方向で得られた前記良品画像と比較される。
【0022】
かかる構成によれば、領域毎に得られた撮像画像は、同じカメラ及び同じスキャン方向という条件にて、良品画像と比較される。このため、撮像画像と良品画像との比較において、複数のカメラ間の機差及びスキャン方向(往路or復路)がもたらす影響を、低減することができる。
【0023】
一実施形態では、前記被検査対象及び前記良品サンプルは、前記領域毎に回路パターンが形成された半導体基板である。
【0024】
かかる構成によれば、半導体基板の領域毎に形成された回路パターンを、より信頼性高く、検査することができる。
【0025】
本開示に係る検査方法は、被検査対象を複数のカメラで交互に撮像して得られる撮像画像を良品画像と比較することにより前記被検査対象を検査する検査方法であって、前記良品画像は、複数の領域に区画された良品サンプルを複数の前記カメラで交互に撮像することで得られており、前記良品サンプルにおける任意の前記領域は、前記良品サンプルを複数の前記カメラにより複数の前記領域の並ぶ方向に少なくとも前記カメラの数だけスキャンすることによって、複数の前記カメラで交互に撮像される。
【0026】
かかる構成によれば、複数のカメラを用いた検査方法による被検査対象の検査の信頼性を高めることができる。
【発明の効果】
【0027】
本開示によれば、複数のカメラを用いた場合における被検査対象の検査の信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、複数のカメラを備える検査装置を示す。
【
図2】
図2は、複数のカメラのON/OFF切換を示す。
【
図3】
図3は、被検査対象及び良品サンプルにおける領域毎の回路パターンを模式的に示す。
【
図4】
図4は、良品サンプルにおける任意の領域をカメラの数だけ往復スキャンした場合を示す。
【
図5】
図5は、複数のカメラ間の機差並びにスキャン方向における往路及び複路を考慮せずに良品サンプルを撮像した場合と、それらを考慮して良品サンプルを撮像した場合と、を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本開示の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本開示、その適用物あるいはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0030】
(検査装置)
図1は、検査装置1を示す。検査装置1は、複数(本例では2つ)のカメラとしての第1カメラ10及び第2カメラ20を、備える。検査装置1は、被検査対象Wを検査するためにある。検査装置1は、例えばマイコン及びプログラムで構成された制御部を、備える。
【0031】
検査装置1は、例えば、被検査対象Wに形成された欠陥を、検査するためにある。欠陥として、例えば、異物、傷、エッジリンス不良、スルーホール異常、塗膜ムラ、剥がれ、スクラッチ、ボンディングパッド異常、色ムラ、パターン異常、染み、変色、変形、などがある。
【0032】
被検査対象Wは、半導体基板である。被検査対象Wは、可動のステージ2に載せられている。一方、第1カメラ10及び第2カメラ20は、定位置に固定されている。
【0033】
図2は、第1カメラ10及び第2カメラ20のON/OFF切換を示す。第1カメラ10及び第2カメラ20のON/OFFは、トリガ信号Sによって、交互に切り換えられる。第1カメラ10がON(起動)のとき、第2カメラ20はOFF(停止)である。反対に、第1カメラ10がOFFのとき、第2カメラ20はONである。
【0034】
図3は、被検査対象W及び後述する良品サンプルTを模式的に示す。被検査対象Wは、複数の領域Rに区画されている。複数の領域Rは、行列(マトリックス)状に並べられている。複数の領域Rは、被検査対象Wの表面における行方向(横方向)N及び列方向(縦方向)Kに、並べられている。なお、図中、nは行番号、kは列番号を示す。
【0035】
被検査対象Wには、領域R毎に回路パターンFが形成されている。回路パターンFは、半導体製造の前工程において、半導体基板(半導体ウエハ)に焼き付けられる。
図3では回路パターンFを模式的に符号「F」で表すが、実際はもっと複雑な形状である。
【0036】
検査装置1では、被検査対象Wを検査するにあたって、複数の領域Rに区画された被検査対象Wを第1カメラ10及び第2カメラ20で交互に撮像することによって、領域R毎に撮像画像W1を得る。
【0037】
領域R毎に得られた撮像画像W1は、各カメラ10,20のメモリに一時的に保存された後に、コンピュータなどの外部機器に転送される。一方のカメラ10,20が被検査対象Wの任意の領域Rを撮像した後に上述の一時保存及び転送などを行っている間に、他方のカメラ10,20は被検査対象Wの次(隣)の領域Rを撮像する。
【0038】
これにより、検査装置1は、2つのカメラ10,20で分担しながら被検査対象Wの各領域Rを撮像することによって、被検査対象Wの撮像画像W1を領域R毎に素早く得て、被検査対象Wを短時間で検査する。
【0039】
具体的には、第1カメラ10及び第2カメラ20を定位置に固定したまま、被検査対象Wが載せられたステージ2を列方向Kに移動させる。これにより、第1カメラ10及び第2カメラ20は、被検査対象Wを、任意の行において列方向Kに、スキャン(走査)する。
【0040】
より詳細には、第1カメラ10及び第2カメラ20は、被検査対象Wを、任意の行において列方向Kの一方Kaにスキャンした後に、その隣の行において列方向Kの他方Kbにスキャンするのを、繰り返す(
図3の矢印A参照)。
【0041】
以下、第1カメラ10及び第2カメラ20が被検査対象Wをスキャンする方向である列方向Kを、スキャン方向Kという場合がある。列方向Kの一方Kaを、スキャン方向Kの往路Kaという場合がある。列方向Kの他方Kbを、スキャン方向Kの復路Kbという場合がある。
【0042】
第1カメラ10及び第2カメラ20は、スキャン方向(列方向)Kにおいて、領域R毎に、被検査対象Wを交互に撮像する。すなわち、スキャン方向(列方向)Kに互いに隣り合う領域R(n,k)と領域R(n,k+1)との間で、撮像に用いるカメラ10,20が互いに異なる。例えば、領域R(n,k)は第1カメラ10で撮像される一方、領域R(n,k+1)は第2カメラ20で撮像される。
【0043】
また、行方向Nに互いに隣り合う領域R(n,k)と領域R(n+1,k)との間で、カメラ10,20が被検査対象Wをスキャンするスキャン方向Kは、互いに異なる。例えば、領域R(n,k)はスキャン方向Kの往路Kaにおいて撮像される一方、領域R(n+1,k)はスキャン方向Kの複路Kbにおいて撮像される。
【0044】
被検査対象Wにおける任意の領域Rは、被検査対象Wを第1カメラ10及び第2カメラ20により複数の領域Rの並ぶ列方向Kに往路Ka及び復路Kbのいずれかのスキャン方向Kでスキャンすることによって、第1カメラ10及び第2カメラ20のうちのいずれかで、撮像される。これにより、検査装置1は、被検査対象Wの撮像画像W1を領域R毎に得る。
【0045】
領域R毎に得られた撮像画像W1は、第1カメラ10及び第2カメラ20並びにスキャン方向Kにおける往路Ka及び復路Kbによって、区別されている。すなわち、2つのカメラ10,20間の機差及びスキャン方向K(往路Ka又は複路Kb)が考慮されている。具体的には、第1カメラ10×往路Ka、第2カメラ20×往路Ka、第1カメラ10×複路Kb、及び第2カメラ20×複路Kbの、4パターンある。
【0046】
検査装置1は、領域R毎に得られた撮像画像W1を、予め用意された良品画像T1と比較することによって、被検査対象Wを検査する。良品画像T1は、被検査対象Wと同仕様の良品サンプルTをベースに、作成されている。良品サンプルTは、
図3に示すように、被検査対象Wと同様に、複数の領域Rに区画されている。良品サンプルTにおける複数の領域Rは、被検査対象Wにおける複数の領域Rと同様に、行列状に(行方向N及び列方向Kに)、並べられている。
【0047】
良品サンプルTは、半導体基板である。良品サンプルTには、被検査対象Wと同様に、領域R毎に回路パターンFが形成されている。
【0048】
ここで、複数の領域Rに区画された良品サンプルTをスキャン方向Kにおける往路Ka及び復路Kbを考慮せずに且つ1つの同じカメラのみで撮像した後に平均化することによって、良品画像T1を得たとする。すなわち、複数のカメラ間の機差並びにスキャン方向Kにおける往路Ka及び復路Kbを区別しなかったとする。
【0049】
このようにして得られた良品画像T1は、検査時においてスキャン方向Kにおける往路Ka及び復路Kbを考慮し且つ被検査対象Wを第1カメラ10及び第2カメラ20で交互に撮像することで、4パターンに区別して得られる撮像画像W1とは、撮像条件が異なるので、信頼性が低い。
【0050】
そこで、本実施形態に係る検査装置1では、良品画像T1は、検査時と同じ撮像条件にて、すなわち複数の領域Rに区画された良品サンプルTをスキャン方向Kにおける往路Ka及び復路Kbを考慮し且つ第1カメラ10及び第2カメラ20で交互に撮像することによって、領域R毎に得られる。
【0051】
ここで、
図5は、複数の(2つの)カメラ10,20間の機差並びにスキャン方向Kにおける往路Ka及び複路Kbを考慮せずに良品サンプルTを撮像した場合(例えば第1カメラ10×往路Kaのみの場合)(左)と、それらを考慮して良品サンプルTを撮像した場合(右)と、を示す。
【0052】
図5に示すように、2つのカメラ10,20間の機差並びにスキャン方向K(往路Ka又は複路Kb)を考慮(区別)した場合(
図5の右参照)、得られる良品画像T1は、スキャン方向Kを考慮せず且つ1つの同じカメラのみで撮像した前者の場合(例えば第1カメラ10×往路Kaのみの場合、
図5の左参照)に比較して、カメラ10,20毎及びスキャン方向K毎に撮像される良品サンプルTの領域Rの数が少なくなる。このため、カメラ10,20毎及びスキャン方向K毎に十分な数の良品画像T1が得られず、やはり信頼性が低くなってしまう。
【0053】
具体的には、カメラ10,20毎及びスキャン方向K毎に撮像される良品サンプルTの領域Rの数(すなわちカメラ10,20毎及びスキャン方向K毎に得られる良品画像T1の数)は、良品サンプルTの全ての領域Rをスキャン方向Kを考慮せず且つ1つの同じカメラのみで撮像した場合に比較して、1/4以下となる。
【0054】
図5の例では、2つのカメラ10,20間の機差並びにスキャン方向Kにおける往路Ka及び複路Kbを考慮しない場合(
図5の左参照)、良品サンプルTにおける全ての領域R(n,k),R(n,k+1)R(n,k+2),R(n,k+3),R(n+1,k),R(n+1,k+1),R(n+1,k+2),R(n+1,k+3)は、同じパターンである。
【0055】
一方、
図5の例では、2つのカメラ10,20間の機差並びにスキャン方向Kにおける往路Ka及び複路Kbを考慮した場合(
図5の右参照)、良品サンプルTにおける領域Rは、4パターンに区別される(サンプル数が1/4になる)。具体的には、第1カメラ10×往路Kaの領域R(n,k),R(n,k+2)、第2カメラ20×往路Kaの領域R(n,k+1),R(n,k+3)、第1カメラ10×複路Kbの領域R(n+1,k+3),R(n+1,k+1)、第2カメラ20×複路Kaの領域R(n+1,k+2),R(n+1,k)がある。
【0056】
良品画像T1の信頼性が低ければ、検査装置1による被検査対象Wの検査の信頼性も当然に低くなる。そこで、本実施形態に係る検査装置1では、以下の方法によって、良品画像T1の信頼性を高めることとした。
【0057】
図4は、本実施形態に係る検査装置1において、良品サンプルTにおける任意の領域Rをカメラ10,20の数だけ往復スキャンした場合を、示す。
【0058】
図4に示すように、本実施形態に係る検査装置1では、良品サンプルTにおける任意の領域Rは、良品サンプルTを第1カメラ10及び第2カメラ20により複数の領域Rの並ぶ列方向Kに少なくともカメラ10,20の数である2回だけ往復スキャン(計4回の片道スキャン)することによって、往路Ka及び復路Kbのスキャン方向K毎に第1カメラ10及び第2カメラ20で交互に撮像される(
図3の矢印Bも参照)。
【0059】
ここで、往復スキャンは、往路Kaの片道スキャンと復路Kbの片道スキャンとの組み合わせであり、片道スキャン2回分に相当する。
【0060】
図4の例では、例えば、良品サンプルTにおける領域R(n,k)は、スキャン方向Kにおける往路Ka及び復路Kb毎に且つ第1カメラ10及び第2カメラ20毎に、計4回片道スキャン(計2回往復スキャン)される。他の領域R(n,k+1)R(n,k+2),R(n,k+3),R(n+1,k),R(n+1,k+1)R(n+1,k+2),R(n+1,k+3)についても、同様である。
【0061】
良品サンプルTにおける各領域Rは、第1カメラ10×往路Ka、第2カメラ20×往路Ka、第1カメラ10×複路Kb、及び第2カメラ20×複路Kbの4パターン全てによって、撮像される。
【0062】
なお、領域R(n,k+3)においてスキャン方向Kの往路Kaから複路Kbへの折り返しが行われるが、折り返しの前後において、同じカメラ10,20による連続した撮像がなされる。往路Kaの第2カメラ20で領域R(n,k+3)を撮像した後に、連続して複路Kaの第2カメラ20で領域R(n,k+3)を撮像する。往路Kaの第1カメラ10で領域R(n,k+3)を撮像した後に、連続して複路Kaの第1カメラ10で領域R(n,k+3)を撮像する。
【0063】
図4に示すように、良品サンプルTをベースにして領域R毎に4パターン全ての良品画像T1が得られるので、カメラ10,20毎並びにスキャン方向Kにおける往路Ka及び復路Kb毎に得られる良品画像T1の数は、
図5の右の例の4倍となる。カメラ10,20毎及びスキャン方向K(往路Ka又は復路Kb)毎に得られる良品画像T1は、4つのパターン毎に統計的に平均化されて、最終的に4枚となる。
【0064】
領域R毎に得られた撮像画像W1は、同じカメラ10,20及び同じスキャン方向K(往路Ka又は復路Kb)で得られた良品画像T1と、比較される。
【0065】
例えば
図4に示すように、第1カメラ10×往路Kaの条件で得られた撮像画像W1は、同じく第1カメラ10×往路Kaの条件で得られた良品画像T1と、比較される。同様に、第2カメラ20×往路Kaの条件で得られた撮像画像W1は、同じく第2カメラ20×往路Kaの条件で得られた良品画像T1と、比較される。第1カメラ10×複路Kbの条件で得られた撮像画像W1は、同じく第1カメラ10×複路Kbの条件で得られた良品画像T1と、比較される。第2カメラ20×複路Kbの条件で得られた撮像画像W1は、同じく第2カメラ20×複路Kbの条件で得られた良品画像T1と、比較される。
【0066】
(作用効果)
本実施形態によれば、良品画像T1は、検査時と同じ撮像条件で、すなわち複数の領域Rに区画された良品サンプルTを第1カメラ10及び第2カメラ20(複数のカメラ10,20)で交互に撮像することで、得られる。
【0067】
このため、良品サンプルTを1つの同じカメラのみで撮像することで良品画像T1を得た場合に比較して、良品画像T1の信頼性が高い。
【0068】
さらに、良品サンプルTにおける任意の領域Rは、良品サンプルTを第1カメラ10及び第2カメラ20により複数の領域の並ぶ列方向Kに少なくともカメラ10,20の数である2回だけ往復スキャン(少なくとも計4回の片道スキャン)することによって、スキャン方向Kにおける往路Ka及び復路Kb毎に第1カメラ10及び第2カメラ20で交互に撮像される。
【0069】
このため、第1カメラ10及び第2カメラ20毎並びにスキャン方向Kにおける往路Ka及び復路Kb毎に撮像される良品サンプルTの領域Rの数が少なくならないので、良品画像T1の信頼性が低くなることが抑制される。
【0070】
以上、複数のカメラ10,20を用いた検査装置1による被検査対象Wの検査の信頼性を高めることができる。
【0071】
スキャン方向Kにおける往路Ka及び復路Kbをも考慮した、より信頼性の高い良品画像を得ることができる。
【0072】
領域R毎に得られた撮像画像W1は、同じカメラ10,20及び同じスキャン方向K(往路Ka又は復路Kb)という条件にて、良品画像T1と比較される。このため、撮像画像W1と良品画像T1との比較において、2つのカメラ10,20間の機差及びスキャン方向K(往路Ka又は復路Kb)がもたらす影響を、低減することができる。
【0073】
半導体基板W,Tの領域R毎に形成された回路パターンFを、より信頼性高く、検査することができる。
【0074】
(その他の実施形態)
以上、本開示を好適な実施形態により説明してきたが、こうした記述は限定事項ではなく、勿論、種々の改変が可能である。
【0075】
良品サンプルTを、第1カメラ10及び第2カメラ20によって、複数の領域Rの並ぶ列方向Kに、カメラ10,20の数よりも大きな数だけ(例えば3回以上)往復スキャン(計6回以上片道スキャン)しても差し支えない。
【0076】
スキャン方向Kにおける往路Ka及び復路Kbは、考慮されなくてもよい。例えば、良品サンプルTを、第1カメラ10及び第2カメラ20によって、複数の領域Rの並ぶ列方向Kに、カメラ10,20の数である2回だけ片道スキャンしても差し支えない。
【0077】
複数の領域Rの並ぶ行方向Nを、スキャン方向としてもよい。
【0078】
カメラの数は、2つに限定されない。第1カメラ10及び第2カメラ20の他に、第3カメラ、第4カメラ…があってもよい。その場合、カメラの増加に応じて、良品サンプルTに対するスキャンの回数も増加する。
【0079】
ステージ2が固定、カメラ10,20が可動でもよい。
【0080】
被検査対象W及び良品サンプルTは、半導体基板に限定されず、例えば、ガラスや金属や樹脂その他でもよく、また板材でなくてもよい。
【0081】
本開示に係る検査方法は、被検査対象Wを複数のカメラ10,20で交互に撮像して得られる撮像画像W1を良品画像T1と比較することによって、被検査対象Wを検査する。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本開示は、検査装置及び検査方法に適用できるので、極めて有用であり、産業上の利用可能性が高い。
【符号の説明】
【0083】
W 被検査対象(半導体基板)
W1 撮像画像
T 良品サンプル(半導体基板)
T1 良品画像
R 領域
n 行番号
k 列番号
N 行方向
K スキャン方向(列方向)
Ka 往路(一方)
Kb 復路(他方)
F 回路パターン
S トリガ信号
A 矢印
B 矢印
1 検査装置
2 ステージ
10 第1カメラ(複数のカメラ)
20 第2カメラ(複数のカメラ)