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特開2024-111682ヒートシール用耐熱ニス組成物、塗工物および包材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111682
(43)【公開日】2024-08-19
(54)【発明の名称】ヒートシール用耐熱ニス組成物、塗工物および包材
(51)【国際特許分類】
   C09D 101/18 20060101AFI20240809BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20240809BHJP
   C09D 7/62 20180101ALI20240809BHJP
   C09J 101/18 20060101ALI20240809BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20240809BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20240809BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20240809BHJP
【FI】
C09D101/18
C09D7/63
C09D7/62
C09J101/18
C09J11/04
C09J11/06
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023016325
(22)【出願日】2023-02-06
(71)【出願人】
【識別番号】000105947
【氏名又は名称】サカタインクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】羽田野 靖
(72)【発明者】
【氏名】右近 博
(72)【発明者】
【氏名】松木 誠二郎
【テーマコード(参考)】
3E086
4J038
4J040
【Fターム(参考)】
3E086AB01
3E086AC07
3E086AD01
3E086BA04
3E086BA15
3E086BB02
3E086BB05
3E086BB51
3E086BB52
3E086CA01
3E086DA06
4J038BA081
4J038BA212
4J038BA232
4J038HA446
4J038KA06
4J038NA11
4J038NA14
4J038PB04
4J038PC08
4J040BA051
4J040BA182
4J040BA202
4J040HA306
4J040KA23
4J040KA26
4J040LA08
4J040MA10
4J040NA08
(57)【要約】
【課題】ポリエチレンフィルムを用いたモノマテリアル包材に適用された場合に、優れた耐熱性および耐ブロッキング性が得られ、かつ、透明性が優れた耐熱ニス塗膜が得られる、ヒートシール用耐熱ニス組成物、塗工物および包材を提供する。
【解決手段】硝化綿と、ワックスと、シリカと、有機溶剤とを含み、ワックスの含有量は、ヒートシール用耐熱ニス組成物の固形分中、0.5~3.0質量%であり、シリカの含有量は、ヒートシール用耐熱ニス組成物の固形分中、2.0~11.0質量%である、ヒートシール用耐熱ニス組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硝化綿と、ワックスと、シリカと、有機溶剤とを含み、
前記ワックスの含有量は、ヒートシール用耐熱ニス組成物の固形分中、0.5~3.0質量%であり、
前記シリカの含有量は、ヒートシール用耐熱ニス組成物の固形分中、2.0~11.0質量%である、ヒートシール用耐熱ニス組成物。
【請求項2】
前記硝化綿の含有量は、ヒートシール用耐熱ニス組成物の固形分中、75.0~98.0質量%である、請求項1記載のヒートシール用耐熱ニス組成物。
【請求項3】
前記ワックスは、ポリエチレンワックスを含む、請求項1または2記載のヒートシール用耐熱ニス組成物。
【請求項4】
前記シリカは、有機処理シリカを含む、請求項1または2記載のヒートシール用耐熱ニス組成物。
【請求項5】
さらに、ロジン系樹脂を含む、請求項1または2記載のヒートシール用耐熱ニス組成物。
【請求項6】
前記ロジン系樹脂は、マレイン酸変性ロジンである、請求項5記載のヒートシール用耐熱ニス組成物。
【請求項7】
固形分のバイオマス度が42%以上である、請求項1または2記載のヒートシール用耐熱ニス組成物。
【請求項8】
請求項1または2記載のヒートシール用耐熱ニス組成物が塗工された、塗工物。
【請求項9】
請求項8記載の塗工物がヒートシールされた、包材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートシール用耐熱ニス組成物、塗工物および包材に関する。より詳細には、本発明は、ポリエチレンフィルムを用いたモノマテリアル包材に適用された場合に、優れた耐熱性、耐ブロッキング性および耐摩擦性が得られ、かつ、透明性が優れた耐熱ニス塗膜が得られる、ヒートシール用耐熱ニス組成物、塗工物および包材に関する。
【背景技術】
【0002】
食品包材に使用されるプラスチックフィルム系の積層体として、たとえば、PETのベースフィルムに印刷インキからなる印刷層を形成し、印刷層上に接着剤を塗布して接着剤層を形成し、接着剤層にポリエチレンのシーラントフィルムを貼り合わせ(ラミネート)、シーラント層を谷折りしてヒートシールを行うものが知られている。この積層体の構成は、PETベースフィルム/印刷層/接着剤層/ポリエチレンシーラントフィルムである。積層体は、ベースフィルム側から加熱されることにより、ポリエチレン同士が溶融してヒートシールされる。
【0003】
リサイクル性が重要視される現在、食品包材においてもモノマテリアル化が求められている。そのため、たとえば、ベースフィルムとシーラントフィルムとがポリエチレンからなる積層体が検討されている(たとえば特許文献1~3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2020/262326号
【特許文献2】国際公開第2021/205813号
【特許文献3】特開2022-39843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1~3に記載の積層体は、ヒートシールが行われると、シーラントフィルムだけでなく、ベースフィルムも熱の影響を受ける。そのため、ポリエチレン製のベースフィルムは、収縮し、包材としての実用性を損なう。
【0006】
そこで、ベースフィルム上に、耐熱層を積層することが考えられる。すなわち、ポリエチレンのベースフィルムに印刷インキを用いて印刷層を形成し、印刷層と反対側のベースフィルム表面に耐熱ニスを塗工して耐熱層を設ける。これにより、耐熱層/ポリエチレンベースフィルム/印刷層という構成の積層体が得られる(これを構成1という)。通常、積層体は、いったん巻き取られ、ロールとして保管される。次に、ロールがラミネート機に設置され、印刷層の上に接着剤が塗布されて接着剤層が形成され、接着剤層にポリエチレンのシーラントフィルムが貼り合わせられ(ラミネート)、ポリエチレン側が谷折りされてから、ヒートシールされる。すなわち、耐熱層/ポリエチレンベースフィルム/印刷層/接着剤層/ポリエチレンシーラントフィルム、という構成の積層体である(これを構成2という)。
【0007】
構成1の積層体は、巻き取られると、印刷層と耐熱層とがブロッキングしやすいという問題がある。これに対し、ブロッキングを防止できる程度に耐熱層にシリカやワックスを混ぜると、積層体は、耐熱層が白化(不透明化)しやすく、包材としての意匠性を損ないやすい。また、構成1および構成2において印刷層を形成せず、無色透明な包材を作成した場合も、積層体は、同様にブロッキングしやすい。
【0008】
本発明者らは、これらの事情に鑑みて鋭意検討し、上記構成1の耐熱層の透明性、上記構成1の耐ブロッキング性、および上記構成2のヒートシール適性(ヒートシール時にベースフィルムが収縮しない)のすべてを満足するヒートシール用耐熱ニス組成物を完成させた。
【0009】
本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、ポリエチレンフィルムを用いたモノマテリアル包材に適用された場合に、優れた耐熱性、耐ブロッキング性および耐摩擦性が得られ、かつ、透明性が優れた耐熱ニス塗膜が得られる、ヒートシール用耐熱ニス組成物、塗工物および包材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する本発明は、以下の構成を主に備える。
【0011】
(1)硝化綿と、ワックスと、シリカと、有機溶剤とを含み、前記ワックスの含有量は、ヒートシール用耐熱ニス組成物の固形分中、0.5~3.0質量%であり、前記シリカの含有量は、ヒートシール用耐熱ニス組成物の固形分中、2.0~11.0質量%である、ヒートシール用耐熱ニス組成物。
【0012】
このような構成によれば、ヒートシール用耐熱ニス組成物は、ポリエチレンフィルムを用いたモノマテリアル包材に適用された場合に、優れた耐熱性、耐ブロッキング性および耐摩擦性が得られ、かつ、透明性が優れた耐熱ニス塗膜が得られる。
【0013】
(2)前記硝化綿の含有量は、ヒートシール用耐熱ニス組成物の固形分中、75.0~98.0質量%である、(1)記載のヒートシール用耐熱ニス組成物。
【0014】
このような構成によれば、ヒートシール用耐熱ニス組成物は、ポリエチレンフィルムを用いたモノマテリアル包材に適用された場合に、透明性がより優れた耐熱ニス塗膜が得られる。
【0015】
(3)前記ワックスは、ポリエチレンワックスを含む、(1)または(2)記載のヒートシール用耐熱ニス組成物。
【0016】
このような構成によれば、ヒートシール用耐熱ニス組成物は、好適に塗膜の耐摩擦性を有する。
【0017】
(4)前記シリカは、有機処理シリカを含む、(1)~(3)のいずれかに記載のヒートシール用耐熱ニス組成物。
【0018】
このような構成によれば、ヒートシール用耐熱ニス組成物は、好適に塗膜の耐熱性や耐ブロッキング性を有する。
【0019】
(5)さらに、ロジン系樹脂を含む、(1)~(4)のいずれかに記載のヒートシール用耐熱ニス組成物。
【0020】
このような構成によれば、ヒートシール用耐熱ニス組成物は、各種プラスチックフィルムに対する接着性が優れる。
【0021】
(6)前記ロジン系樹脂は、マレイン酸変性ロジンである、(5)記載のヒートシール用耐熱ニス組成物。
【0022】
このような構成によれば、ヒートシール用耐熱ニス組成物は、各種プラスチックフィルムに対する接着性が優れる。
【0023】
(7)固形分のバイオマス度が42%以上である、(1)~(6)のいずれかに記載のヒートシール用耐熱ニス組成物。
【0024】
このような構成によれば、ヒートシール用耐熱ニス組成物は、バイオマス化への要求を満足する。
【0025】
(8)(1)~(7)のいずれかに記載のヒートシール用耐熱ニス組成物が塗工された、塗工物。
【0026】
このような構成によれば、塗工物は、上記したヒートシール用耐熱ニス組成物が塗工された塗工物である。そのため、塗工物は、ポリエチレンフィルムを用いたモノマテリアル包材である場合に、優れた耐熱性および耐ブロッキング性を有し、かつ、透明性が優れた耐熱ニス塗膜が形成されている。
【0027】
(9)(8)記載の塗工物がヒートシールされた、包材。
【0028】
このような構成によれば、包材は、上記したヒートシール用耐熱ニス組成物が塗工された塗工物からなる。そのため、包材は、ベースフィルム側から熱が加えられてヒートシールされた際に、シーラントフィルムが溶融してヒートシールされるとともに、ベースフィルムが収縮しにくい。また、包材は、優れた耐熱性だけでなく、耐ブロッキング性および耐熱ニス塗膜の透明性も優れる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、ポリエチレンフィルムを用いたモノマテリアル包材に適用された場合に、優れた耐熱性、耐ブロッキング性および耐摩擦性が得られ、かつ、透明性が優れた耐熱ニス塗膜が得られる、ヒートシール用耐熱ニス組成物、塗工物および包材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
<ヒートシール用耐熱ニス組成物>
本発明の一実施形態のヒートシール用耐熱ニス組成物(以下、ニス組成物ともいう)は、硝化綿と、ワックスと、シリカと、有機溶剤とを含む。ワックスの含有量は、ニス組成物の固形分中、0.5~3.0質量%である。シリカの含有量は、ニス組成物の固形分中、2.0~11.0質量%である。以下、それぞれについて説明する。
【0031】
(硝化綿)
硝化綿は、天然セルロースと硝酸とを反応させて、天然セルロース中の無水グルコピラノース基の6員環中の最大3個の水酸基を、硝酸基に置換した硝酸エステルとして得られ得る。本実施形態の硝化綿は、窒素量10~13%、平均重合度35~90のものが好ましく用いられる。具体例としては、SS1/2、SS1/4、SS1/8、TR1/16、NCRS-2(KOREA CNC LTD社製)等を挙げることができる。
【0032】
硝化綿の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、硝化綿の含有量は、ニス組成物の固形分中、75.0質量%以上であることが好ましく、85質量%以上であることがより好ましい。また、硝化綿の含有量は、ニス組成物の固形分中、98.0質量%以下であることが好ましく、95質量%以下であることがより好ましい。硝化綿の含有量が上記範囲内であることにより、ニス組成物は、ポリエチレンフィルムを用いたモノマテリアル包材に適用された場合に、透明性がより優れた耐熱ニス塗膜が得られる。
【0033】
(ワックス)
ワックスは、各種天然ワックス、合成ワックス等である。
【0034】
天然ワックスは、石油系ワックスであるパラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等;褐炭系ワックスであるモンタンワックス等;植物系ワックスであるカルナバワックス、キャンデリアワックス等;動植物系ワックスである蜜蝋、ラノリン等のワックスを、水性媒体中に分散させたエマルジョン等である。
【0035】
合成ワックスは、ポリアルキレンワックス(好ましくはポリC2-C4アルキレンワックス)、酸化ポリアルキレンワックス(好ましくは酸化ポリC2-C4アルキレンワックス)等である。これらの中でも、合成ワックスは、得られる塗膜に優れた耐摩擦性を付与し得る点から、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、酸化ポリプロピレンワックス等であることが好ましく、ポリエチレンワックスであることがより好ましい。
【0036】
ワックスの平均粒子径は特に限定されない。一例を挙げると、ワックスの平均粒子径は、1μm以上であることが好ましく、2μm以上であることがより好ましい。また、ワックスの平均粒子径は、100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましい。ワックスの平均粒子径が上記範囲内であることにより、ニス組成物は、塗膜の透明性と耐摩擦性とを両立し得る。なお、本実施形態において、ワックスの平均粒子径は、ナノトラック(UPA-EX150、日機装(株)製)にて測定し得る。
【0037】
ワックスの融点は特に限定されない。一例を挙げると、ワックスの融点は、70℃以上であることが好ましく、85℃以上であることがより好ましい。融点が上記範囲内であることにより、ニス組成物は、得られる塗膜の耐熱性が優れる。
【0038】
ワックスの含有量は、ニス組成物の固形分中、0.5質量%以上であればよく、0.7質量%以上であることが好ましく、0.9質量%以上であることがより好ましい。また、ワックスの含有量は、ニス組成物の固形分中、3.0質量%以下であればよく、2.5質量%以下であることが好ましく、2.0質量%以下であることがより好ましい。ワックスの含有量が0.5質量%未満である場合、ニス組成物は、ポリエチレンフィルムを用いたモノマテリアル包材に適用された場合に、得られる塗膜の耐摩擦性が劣る。一方、ワックスの含有量が3.0質量%を超える場合、ニス組成物は、ポリエチレンフィルムを用いたモノマテリアル包材に適用された場合に、得られる塗膜の透明性が劣る。
【0039】
(シリカ)
シリカは、未処理のシリカ粒子であってもよく、有機化合物または無機化合物で表面処理されたシリカ粒子であってもよい。本実施形態では、得られる塗膜の耐熱性や耐ブロッキング性が優れる点から、シリカは、有機処理シリカを含むことが好ましい。有機処理は、ポリエチレン処理、ポリエチレンワックス処理、疎水表面処理等である。
【0040】
シリカの形状は特に限定されない。一例を挙げると、シリカの形状は、球状、中空状、多孔質状、棒状、板状、繊維状、または、不定形状等である。
【0041】
シリカの含有量は、ニス組成物の固形分中2.0質量%以上であればよく、3.0質量%以上であることが好ましく、4.0質量%以上であることがより好ましい。また、シリカの含有量は、ニス組成物の固形分中11.0質量%以下であればよく、10.0質量%以下であることが好ましく、9.0質量%以下であることがより好ましい。シリカの含有量が2.0質量%未満である場合、ニス組成物は、ポリエチレンフィルムを用いたモノマテリアル包材に適用された場合に、得られる塗膜の耐ブロッキング性が劣る。一方、シリカの含有量が11.0質量%を超える場合、ニス組成物は、ポリエチレンフィルムを用いたモノマテリアル包材に適用された場合に、得られる塗膜の透明性が劣る。
【0042】
(有機溶剤)
有機溶剤は特に限定されない。一例を挙げると、有機溶剤は、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルコール系有機溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系有機溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチルなどのエステル系有機溶剤;n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタンなどの脂肪族炭化水素系有機溶剤;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタンなどの脂環族炭化水素系有機溶剤等である。有機溶剤は、環境に配慮する点から、芳香族炭化水素系有機溶剤を含まないことが好ましい。
【0043】
有機溶剤の含有量は、ニス組成物中60質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましい。また、有機溶剤の含有量は、ニス組成物中95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましい。有機溶剤の含有量が上記範囲内であることにより、ニス組成物は、塗工に適した粘度を有する。
【0044】
(ロジン系樹脂)
本実施形態のニス組成物は、ロジン系樹脂を含むことが好ましい。これにより、ニス組成物は、各種プラスチックフィルムに対する接着性が優れる。
【0045】
ロジン系樹脂は特に限定されない。一例を挙げると、ロジン系樹脂は、ガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジン等のロジン類およびその誘導体等である。一般的にロジンは、松から得られる琥珀色、無定形の樹脂であり、天然から得られるため混合物であるが、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、パラストリン酸、ピマール酸、イソピマール酸、サンダラコピマール酸、デヒドロアビエチン酸という構成成分ごとに単離して用いても良く、本実施形態ではこれらもロジンと定義する。
【0046】
ロジン誘導体は、上記のロジンを変性させた化合物であり、水素化ロジン、不均化ロジン、ロジン変性フェノール樹脂、ロジンエステル、マレイン酸変性ロジン、重合ロジン等である。これらの中でも、ロジン系樹脂は、得られるニス組成物の各種プラスチックフィルムに対する接着性が優れる点から、マレイン酸変性ロジンであることが好ましい。
【0047】
(任意成分)
本実施形態のニス組成物は、上記した硝化綿と、ワックスと、シリカと、有機溶剤および任意のロジン系樹脂のほかに、適宜の任意成分を含んでもよい。任意成分は、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂、セルロース系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、エポキシ樹脂、ポリオレフィン樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、酸化防止剤、熱安定剤、中和剤、アンチブロッキング剤、粘着付与剤、帯電防止剤、スリップ剤、核剤、発泡剤、架橋剤、バイオマス資源、生分解促進剤等である。
【0048】
以上、本実施形態のニス組成物は、ポリエチレンフィルムを用いたモノマテリアル包材に適用された場合に、優れた耐熱性、耐ブロッキング性および耐摩擦性が得られ、かつ、透明性が優れた耐熱ニス塗膜が得られる。
【0049】
また、ニス組成物は、昨今のバイオマス化に対する要求にも応え得る。すなわち、ニス組成物は、その構成成分のうち、セルロース系成分として、バイオマス原料(たとえばウッドパルプ)を用いて作製される硝化綿を用いる。また、ロジン系成分として、ロジン系樹脂を用い得る。これにより、ニス組成物は、バイオマス由来の成分を多く配合することができ、たとえば、バイオマス度を、42%以上とし得る。バイオマス度は、42%以上であることが好ましく、48%以上であることがより好ましい。なお、本実施形態において、バイオマス度は、ニス組成物の固形分に含まれるバイオマスの質量%をいう。
【0050】
<ヒートシール用耐熱ニス組成物の調製方法>
本実施形態のニス組成物の調製方法は特に限定されない。一例を挙げると、ニス組成物は、各成分を全て添加して攪拌装置で攪拌混合して調製することができる。
【0051】
<塗工物>
本発明の一実施形態の塗工物は、ヒートシール用耐熱ニス組成物が塗工された、塗工物である。本実施形態の塗工物は、特にポリエチレンフィルムを用いた塗工物であることが好ましい。
【0052】
ポリエチレンフィルムは特に限定されない。一例を挙げると、ポリエチレンフィルムは、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(ULDPE)等である。また、ポリエチレンフィルムは、インフレーション成形またはTダイ成形から得られたフィルムを、更に延伸したフィルムからなる層を積層したフィルムであっても良い。
【0053】
本実施形態の塗工物は、上記したポリエチレンフィルムの一方の面に印刷層が形成され、他方の面に上記したニス組成物からなる耐熱層(耐熱ニス塗膜)が形成され得る。この場合、塗工物は、印刷層と耐熱層とが接するように積層された場合であっても、ブロッキングを生じにくい。
【0054】
印刷層を形成する方法は特に限定されない。一例を挙げると、印刷層は、従来公知の方法により、インキ組成物をグラビア印刷等によって塗工することにより形成し得る。
【0055】
耐熱層を形成する方法は特に限定されない。一例を挙げると、耐熱層は、上記したニス組成物を、フィルムの印刷層が形成された面とは反対側の面に、刷版等を用いて形成し得る。ほかにも、耐熱層は、スプレーなどを用いて噴霧することにより設けられてもよい。
【0056】
耐熱層の厚みは特に限定されない。一例を挙げると、耐熱層の厚みは、0.5μm~1.5μmである。
【0057】
得られる塗工物は、複数の塗工物が、それぞれの印刷層および耐熱層が接するように積層された場合にであっても、ブロッキングを生じにくい。また、塗工物は、上記したニス組成物が用いられている。そのため、塗工物は、ポリエチレンフィルムを用いたモノマテリアル包材である場合に、優れた耐熱性を有し、かつ、透明性が優れた耐熱ニス塗膜による耐熱層が形成されている。
【0058】
<包材>
本発明の一実施形態の包材は、上記した塗工物がヒートシールされた包材である。
【0059】
具体的には、包材は、ベースフィルム(上記したポリエチレンフィルム)と、ベースフィルムの一方の面に形成された印刷層と、他方の面に形成された耐熱層(耐熱ニス塗膜)と、印刷層上に接着剤を塗布して形成された接着剤層と、接着剤層上に貼り合わされた(ラミネートされた)ポリエチレンからなるシーラントフィルム(シーラント層)とからなる。包材は、シーラント層が谷折りされ、その後、ベースフィルム側から加熱される。これにより、シーラント層同士が熱融着する。
【0060】
接着剤は特に限定されない。一例を挙げると、接着剤は、エポキシ系接着剤、アクリル系接着剤、ウレタン系接着剤等である。また、接着剤は、1液型、2液型、ホットメルト型であってもよい。
【0061】
本実施形態の包材は、ベースフィルムおよびシーラントフィルムがいずれもポリエチレンからなるモノマテリアル包材である。しかしながら、本実施形態の包材は、ベースフィルムに耐熱層(耐熱ニス塗膜)が形成されている。そのため、ヒートシールを行う際の熱により、ベースフィルム側は熱融解しにくい。その結果、包材は、シーラントフィルムが溶融してヒートシールされるとともに、ベースフィルムは収縮しにくい。また、包材は、上記したニス組成物が用いられているため、優れた耐熱性だけでなく、耐ブロッキング性および耐熱ニス塗膜の透明性も優れる。
【実施例0062】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。本発明は、これら実施例に何ら限定されない。なお、特に制限のない限り、「%」は「質量%」を意味し、「部」は「質量部」を意味する。以下の実施例、比較例で使用した材料は次の通りである。表中の各成分および合計に関する欄の数値の単位は「質量%」である。
【0063】
本実施例で使用した原材料を以下に示す。
<ヒートシール用耐熱ニス組成物>
(硝化綿ワニス)
硝化綿ワニス1:硝化綿(商品名「DHX8-13」、稲畑産業(株)から入手、固形分70質量%、バイオマス度59.9%以上)33.5質量部を、酢酸エチル43.0質量部およびイソプロピルアルコール23.5質量部からなる混合溶媒に溶解させて固形分23質量%の硝化綿ワニス1を得た。
硝化綿ワニス2:硝化綿(商品名「DLX30-50」、稲畑産業(株)から入手、固形分70質量%、バイオマス度63.2%以上)33.5質量部を、酢酸エチル43.0質量部およびイソプロピルアルコール23.5質量部からなる混合溶媒に溶解させて固形分23質量%の硝化綿ワニス2を得た。
(ポリウレタンワニス)
ポリウレタンワニス:攪拌機、冷却管および窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに数平均分子量2,000の3-メチル-1,5-ペンチレンアジペートジオール400質量部、イソホロンジイソシアネート57.7質量部、および触媒としてテトラブチルチタネート0.04質量部を仕込み、窒素ガスを導入しながら90~100℃で6時間反応させた。酢酸プロピル871質量部、イソプロピルアルコール218質量部を加えた後、室温近くまで冷却し、イソホロンジアミン5.6質量部とアミノエチルエタノールアミン3.4質量部の混合物を加えて20分間攪拌して、ポリウレタン樹脂(固形分30質量%)を得た。得られたポリウレタン樹脂を酢酸プロピルで希釈して固形分23%のポリウレタンワニスを得た。
(セルロース系樹脂)
セルロース系樹脂1:商品名「CAP 482-05」、セルロースアセテートプロピオネート、バイオマス度52.5%、イーストマンケミカル社製
(ロジン系樹脂)
ロジン系樹脂1:商品名「マルキードNo.33」、マレイン酸変性ロジン、酸価290~320mgKOH/g、軟化点140~160℃、バイオマス度65~79%、荒川化学工業(株)製
(ワックス)
ワックス1:商品名「ポリコンPA-60」、ポリエチレンワックス、平均粒子径10~20μm、融点103℃、固形分25質量%、(株)ポリコン製
ワックス2:商品名「ハイフラット8514」、ポリエチレンワックス、平均粒子径3.6μm、固形分15質量%、(株)岐阜セラツク製造所製
(シリカ)
シリカ1:商品名「サイロイド7000」、有機処理シリカ、細孔容積2.0ml/g、平均粒子径5.0μm、グレースジャパン(株)製
シリカ2:商品名「NIPGEL AZ-200」、ゲル法シリカ、平均粒子径(D50)4.2μm、東ソー・シリカ(株)製
【0064】
<ニス組成物1~12>
以下の表1に記載の処方(質量部)に従って、それぞれの原料を攪拌機で均一に混合し、ニス組成物を作製した。
【0065】
【表1】
【0066】
<実施例1~8、比較例1~6および比較参考例1>
1.塗工物の作製
グラビアインキ(商品名「ベルフローラR白115NT」、サカタインクス(株)製)をザーンカップで16秒となるよう希釈し、膜厚30μmの一軸延伸処理ポリエチレンフィルム(ベースフィルム)の一方の面に、ヘリオ175線の刷版を用いてグラビア印刷して印刷層を形成した。その後、印刷層と反対側の面に、それぞれのニス組成物を、ヘリオ175線の刷版を用いて塗工して耐熱層(耐熱ニス塗膜)を形成し、実施例および比較例の塗工物を得た。なお、実施例7および比較例6においては、グラビアインキによる印刷を行わずに耐熱層を形成した。比較参考例1においては、耐熱ニスを塗工しなかった。
【0067】
得られた塗工物について、以下の評価方法により、透明性、耐ブロッキング性および耐摩擦性を評価した。結果を表2に示す。
【0068】
<透明性>
塗工物を、耐熱層の側から目視にて観察し、耐熱層の透明性を評価した。
(評価基準)
○:耐熱層は、透明であった。
×:耐熱層は、不透明であった。
【0069】
<耐ブロッキング性>
塗工物の印刷層と耐熱層とを合わせ、7kgf/cm2の荷重をかけて40℃で12時間放置した後、塗工物を剥がした時の様子から、耐ブロッキング性を評価した。なお、実施例7および比較例6においては、ベースフィルムと耐熱層とを合わせ、7kgf/cm2の荷重をかけて40℃で12時間放置した後、塗工物を剥がした時の様子から耐ブロッキング性を評価した。
(評価基準)
○:塗工物を剥がした際に、全く抵抗が無く、また、インキ層や耐熱層が剥離しなかった。
△:塗工物を剥がした際に、抵抗はあったが、インキ層や耐熱層は剥離しなかった。
×:塗工物を剥がした際に、抵抗があり、かつ、インキ層や耐熱層が剥離した。
【0070】
<耐摩擦性>
塗工物の耐熱層表面に、摩擦子にカナキンを用い、学振型摩擦堅牢度試験機((株)大栄科学精器製作所製)を用い、荷重200gで100往復の条件で評価した。評価基準を下記に示す。
<評価基準>
○:ニス塗膜表面に脱落が見られなかった。
×:ニス塗膜表面に脱落が見られた。
【0071】
2.包材の作製
それぞれの塗工物に対して、耐熱層の反対側の面に、ポリエーテル系接着剤組成物(A-969、(株)三井化学ポリウレタン製)および硬化剤(A-5、(株)三井化学ポリウレタン製)を用いて、ドライラミネート機にてシーラントフィルム(商品名「T.U.X HC 50」、三井化学東セロ(株)製)のポリエチレンフィルムを積層し、40℃にて3日間エージングして複合フィルムを得た。その後、シーラント層を谷折りし、インパルスシーラーを用いてヒートシール(160℃、0.9秒間)を行い、実施例および比較例の包材を得た。
【0072】
得られた包材について、以下の評価方法により、ヒートシール性を評価した。結果を表2に示す。
【0073】
<ヒートシール性>
包材を目視にて観察し、外観を評価した。
(評価基準)
○:包材は、収縮していなかった。
×:包材は、収縮していた。
【0074】
【表2】
【0075】
表2に示されるように、本発明の実施例1~8のニス組成物を用いた塗工物は、透明性と耐ブロッキング性が優れ、かつ、耐摩擦性が優れた。また、実施例1~8の塗工物を用いて得た包材は、ヒートシール性が優れていた。
【0076】
また、本発明の実施例1~8で用いたニス組成物は、表1に示されるように、バイオマス度を有する原材料として硝化綿を用いたため、バイオマス度が高かった。