(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111691
(43)【公開日】2024-08-19
(54)【発明の名称】効率的な中継伝送システムの運用を可能とする通信装置、制御装置、制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04B 7/08 20060101AFI20240809BHJP
H04W 92/20 20090101ALI20240809BHJP
H04B 7/022 20170101ALI20240809BHJP
H04B 7/15 20060101ALI20240809BHJP
【FI】
H04B7/08 800
H04W92/20 110
H04B7/022
H04B7/15
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023016339
(22)【出願日】2023-02-06
(71)【出願人】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 尭彦
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 力
(72)【発明者】
【氏名】植田 一暁
(72)【発明者】
【氏名】流田 理一郎
(72)【発明者】
【氏名】梅原 雅人
【テーマコード(参考)】
5K067
5K072
【Fターム(参考)】
5K067AA14
5K067AA41
5K067DD11
5K067EE02
5K067EE10
5K067EE16
5K067KK02
5K072AA04
5K072AA29
5K072BB02
5K072BB13
5K072BB25
5K072CC04
5K072EE04
5K072FF09
5K072GG05
5K072GG10
5K072GG12
5K072GG13
(57)【要約】
【課題】レイヤ1の中継伝送を伴うメッシュネットワークの高度かつ効率的な制御を可能とすること。
【解決手段】基地局装置からの無線信号を複数の無線レピータがビームを形成して受信し、受信された無線信号を増幅して転送するように構成された中継通信システムにおける、無線レピータの機能を有する通信装置は、中継通信システムの制御を行う制御装置から、ビームの方向の第1の候補と、第1の候補と異なるビームの方向の第2の候補とを示す情報と、ビームの向きを第1の候補と第2の候補との間で切り替える前に待機すべき時間を示すインターバル値とを受信し、基地局装置から送信された信号を、その基地局装置または他の通信装置から、ビームを第1の候補によって示される方向に向けている間の所定のタイミングにおいて検出できなかった場合に、インターバル値によって示される時間だけ待機した後に、ビームを第2の候補によって示される方向に向けるようにビームを制御する。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局装置からの無線信号を複数の無線レピータがビームを形成して受信し、受信された無線信号を増幅して転送するように構成された中継通信システムにおける、前記無線レピータの機能を有する通信装置であって、
前記中継通信システムの制御を行う制御装置から、前記ビームの方向の第1の候補と、前記第1の候補と異なる前記ビームの方向の第2の候補とを示す情報と、前記ビームの向きを前記第1の候補と前記第2の候補との間で切り替える前に待機すべき時間を示すインターバル値とを受信する受信手段と、
前記基地局装置から送信された信号を、当該基地局装置または他の通信装置から、前記ビームを前記第1の候補によって示される方向に向けている間の所定のタイミングにおいて検出できなかった場合に、前記インターバル値によって示される時間だけ待機した後に、前記ビームを前記第2の候補によって示される方向に向けるように前記ビームを制御する制御手段と、
を有することを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記ビームを前記第1の候補によって示される方向に向けている間の前記所定のタイミングにおいて前記基地局装置から送信された信号を検出できなかった後であって、前記インターバル値によって示される時間の間に、当該信号を検出することができた場合、前記ビームの向きを前記第1の候補によって示される方向から変更しないように前記ビームを制御する、ことを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記受信手段は、前記制御装置と所定の通信方式で通信を行うことにより、前記第1の候補と前記第2の候補を示す情報と前記インターバル値とを取得し、
前記無線レピータは、前記所定の通信方式と異なる通信方式の無線信号を増幅して転送するように構成される、
ことを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項4】
設定可能な複数のビームにおいて前記基地局装置から送信された信号を測定する測定手段と、
前記測定の結果を前記制御装置へ通知する通知手段と、
をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項5】
基地局装置からの無線信号を複数の無線レピータがビームを形成して受信し、受信された無線信号を増幅して転送するように構成された中継通信システムを制御する制御装置であって、
前記複数の無線レピータのそれぞれにおいて形成可能なビームを用いて前記基地局装置又は他の無線レピータからの無線信号が測定された結果である無線品質に基づいて、前記基地局装置と前記複数の無線レピータとにおいて使用されるべき中継通信経路と、当該中継通信経路に含まれる無線リンクのそれぞれが使用できなくなった場合に使用されるべき複数の代替通信経路を特定する特定手段と、
前記中継通信経路に基づいて前記複数の無線レピータのそれぞれにおいて設定されるべきビームの方向の第1の候補を決定し、前記複数の代替通信経路に基づいて、前記複数の無線レピータのそれぞれにおいて前記第1の候補から切り替えられるべきビームの方向の第2の候補を決定し、前記無線レピータがビームを切り替える前に待機すべき時間を示すインターバル値を決定する決定手段と、
前記複数の無線レピータのそれぞれに対して、前記第1の候補および前記第2の候補の情報と、前記インターバル値とを通知する通知手段と、
を有することを特徴とする制御装置。
【請求項6】
前記決定手段は、前記複数の無線レピータのそれぞれについての前記インターバル値を、前記中継通信経路において前記基地局装置から当該無線レピータに至るまでのホップ数が多いほど長くなるように決定する、ことを特徴とする請求項5に記載の制御装置。
【請求項7】
前記決定手段は、前記複数の代替通信経路においてビームが向けられるべき方向が一意に定まる無線レピータについての前記インターバル値を0とする、ことを特徴とする請求項5に記載の制御装置。
【請求項8】
前記決定手段は、複数の代替通信経路においてビームが向けられるべき方向が一意に定まらない第1の無線レピータについての前記インターバル値を、前記中継通信経路において、複数の代替経路においてビームが向けられるべき方向が一意に定まる第2の無線レピータからの前記第1の無線レピータに至るまでのホップ数が多いほど長くなるように決定する、ことを特徴とする請求項7に記載の制御装置。
【請求項9】
前記通知手段は、前記複数の無線レピータのそれぞれと所定の通信方式で通信を行うことにより、前記第1の候補と前記第2の候補を示す情報と前記インターバル値とを通知し、
前記無線レピータは、前記所定の通信方式と異なる通信方式の無線信号を増幅して転送するように構成される、
ことを特徴とする請求項5に記載の制御装置。
【請求項10】
基地局装置からの無線信号を複数の無線レピータがビームを形成して受信し、受信された無線信号を増幅して転送するように構成された中継通信システムにおける、前記無線レピータの機能を有する通信装置によって実行される制御方法であって、
前記中継通信システムの制御を行う制御装置から、前記ビームの方向の第1の候補と、前記第1の候補と異なる前記ビームの方向の第2の候補とを示す情報と、前記ビームの向きを前記第1の候補と前記第2の候補との間で切り替える前に待機すべき時間を示すインターバル値とを受信することと、
前記基地局装置から送信された信号を、当該基地局装置または他の通信装置から、前記ビームを前記第1の候補によって示される方向に向けている間の所定のタイミングにおいて検出できなかった場合に、前記インターバル値によって示される時間だけ待機した後に、前記ビームを前記第2の候補によって示される方向に向けるように前記ビームを制御することと、
を含むことを特徴とする制御方法。
【請求項11】
基地局装置からの無線信号を複数の無線レピータがビームを形成して受信し、受信された無線信号を増幅して転送するように構成された中継通信システムを制御する制御装置によって実行される制御方法であって、
前記複数の無線レピータのそれぞれにおいて形成可能なビームを用いて前記基地局装置又は他の無線レピータからの無線信号が測定された結果である無線品質に基づいて、前記基地局装置と前記複数の無線レピータとにおいて使用されるべき中継通信経路と、当該中継通信経路に含まれる無線リンクのそれぞれが使用できなくなった場合に使用されるべき複数の代替通信経路を特定することと、
前記中継通信経路に基づいて前記複数の無線レピータのそれぞれにおいて設定されるべきビームの方向の第1の候補を決定し、前記複数の代替通信経路に基づいて、前記複数の無線レピータのそれぞれにおいて前記第1の候補から切り替えられるべきビームの方向の第2の候補を決定し、前記無線レピータがビームを切り替える前に待機すべき時間を示すインターバル値を決定することと、
前記複数の無線レピータのそれぞれに対して、前記第1の候補および前記第2の候補の情報と、前記インターバル値とを通知することと、
を含むことを特徴とする制御方法。
【請求項12】
基地局装置からの無線信号を複数の無線レピータがビームを形成して受信し、受信された無線信号を増幅して転送するように構成された中継通信システムにおける、前記無線レピータの機能を有する通信装置に備えられコンピュータに、
前記中継通信システムの制御を行う制御装置から、前記ビームの方向の第1の候補と、前記第1の候補と異なる前記ビームの方向の第2の候補とを示す情報と、前記ビームの向きを前記第1の候補と前記第2の候補との間で切り替える前に待機すべき時間を示すインターバル値とを受信させ、
前記基地局装置から送信された信号を、当該基地局装置または他の通信装置から、前記ビームを前記第1の候補によって示される方向に向けている間の所定のタイミングにおいて検出できなかった場合に、前記インターバル値によって示される時間だけ待機した後に、前記ビームを前記第2の候補によって示される方向に向けるように前記ビームを制御させる、
ためのプログラム。
【請求項13】
基地局装置からの無線信号を複数の無線レピータがビームを形成して受信し、受信された無線信号を増幅して転送するように構成された中継通信システムを制御する制御装置に備えられたコンピュータに、
前記複数の無線レピータのそれぞれにおいて形成可能なビームを用いて前記基地局装置又は他の無線レピータからの無線信号が測定された結果である無線品質に基づいて、前記基地局装置と前記複数の無線レピータとにおいて使用されるべき中継通信経路と、当該中継通信経路に含まれる無線リンクのそれぞれが使用できなくなった場合に使用されるべき複数の代替通信経路を特定させ、
前記中継通信経路に基づいて前記複数の無線レピータのそれぞれにおいて設定されるべきビームの方向の第1の候補を決定し、前記複数の代替通信経路に基づいて、前記複数の無線レピータのそれぞれにおいて前記第1の候補から切り替えられるべきビームの方向の第2の候補を決定し、前記無線レピータがビームを切り替える前に待機すべき時間を示すインターバル値を決定させ、
前記複数の無線レピータのそれぞれに対して、前記第1の候補および前記第2の候補の情報と、前記インターバル値とを通知させる、
ためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、効率的な中継伝送システムの運用技術に関する。
【背景技術】
【0002】
セルラ通信システムにおいて、基地局装置と端末装置との間の通信を中継する技術が知られている。例えば、特許文献1には、Integrated Access and Backhaul(IAB)を用いた中継通信システムが記載されている。また、中継通信の態様として、メッシュネットワークが知られている。メッシュネットワークでは、設定された通信経路において一部のリンクに障害が発生した場合に、そのリンクを通らない別の通信経路が設定されることにより、通信を継続することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
IABを用いた中継通信システムは、中継装置間のルーティング情報を媒体アクセス制御(MAC)層(レイヤ2)において復調する必要がある。この復調を行うことにより、一定の処理遅延が発生してしまい、例えば、迅速な経路の切り替えなどの制御ができないことが想定される。また、レイヤ2の復調処理のための機能に係る装置コストが必要となるため、多数の中継装置を用意してネットワークを構築する場合のコストが増大してしまいうる。これに対して、物理層(レイヤ1)で中継する無線レピータを用いてメッシュネットワークを構成することにより、レイヤ2の復調処理に係る処理遅延が発生することはなく、また、ネットワーク構成コストを低減することができる。しかしながら、レイヤ1の中継装置を用いるメッシュネットワークでは、そのネットワークを効率的に運用することが重要となる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、レイヤ1の中継装置を用いるメッシュネットワークの効率的な運用技術を提供する。
【0006】
本発明の一態様による通信装置は、基地局装置からの無線信号を複数の無線レピータがビームを形成して受信し、受信された無線信号を増幅して転送するように構成された中継通信システムにおける、前記無線レピータの機能を有する通信装置であって、前記中継通信システムの制御を行う制御装置から、前記ビームの方向の第1の候補と、前記第1の候補と異なる前記ビームの方向の第2の候補とを示す情報と、前記ビームの向きを前記第1の候補と前記第2の候補との間で切り替える前に待機すべき時間を示すインターバル値とを受信する受信手段と、前記基地局装置から送信された信号を、当該基地局装置または他の通信装置から、前記ビームを前記第1の候補によって示される方向に向けている間の所定のタイミングにおいて検出できなかった場合に、前記インターバル値によって示される時間だけ待機した後に、前記ビームを前記第2の候補によって示される方向に向けるように前記ビームを制御する制御手段と、を有する。
【0007】
本発明の一態様による制御装置は、基地局装置からの無線信号を複数の無線レピータがビームを形成して受信し、受信された無線信号を増幅して転送するように構成された中継通信システムを制御する制御装置であって、前記複数の無線レピータのそれぞれにおいて形成可能なビームを用いて前記基地局装置又は他の無線レピータからの無線信号が測定された結果である無線品質に基づいて、前記基地局装置と前記複数の無線レピータとにおいて使用されるべき中継通信経路と、当該中継通信経路に含まれる無線リンクのそれぞれが使用できなくなった場合に使用されるべき複数の代替通信経路を特定する特定手段と、前記中継通信経路に基づいて前記複数の無線レピータのそれぞれにおいて設定されるべきビームの方向の第1の候補を決定し、前記複数の代替通信経路に基づいて、前記複数の無線レピータのそれぞれにおいて前記第1の候補から切り替えられるべきビームの方向の第2の候補を決定し、前記無線レピータがビームを切り替える前に待機すべき時間を示すインターバル値を決定する決定手段と、前記複数の無線レピータのそれぞれに対して、前記第1の候補および前記第2の候補の情報と、前記インターバル値とを通知する通知手段と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、レイヤ1の中継装置を用いるメッシュネットワークを効率的に運用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】無線通信ネットワークの構成例を示す図である。
【
図2】通信装置が他の通信装置からの信号を受信する状態を説明する図である。
【
図3】中継通信経路を特定する手順を概説する図である。
【
図4】基地局装置及び通信装置との間に設定可能な中継通信経路を示す図である。
【
図5】使用すべき中継通信経路の決定方法を説明する図である。
【
図6】代替通信経路の設定方法を説明する図である。
【
図7】制御装置及び通信装置のハードウェア構成例を示す図である。
【
図10】制御装置が実行する処理の流れの例を示す図である。
【
図11】無線通信ネットワークにおいて実行される処理の流れの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴は任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0011】
(システム構成)
図1に、本実施形態に係る無線通信システムの構成例を示す。無線通信システムは、無線メッシュネットワークであり、一例において、基地局装置101と、複数の通信装置(通信装置111~通信装置116)を含んで構成される。基地局装置101は、例えば第5世代(5G)のセルラ通信規格やその後継規格に準拠した無線通信を行う基地局装置であり、端末装置との接続を確立して無線通信を行うように構成される。通信装置111~通信装置116は、例えば、基地局装置と同様に、端末装置との接続を確立して無線通信を行うことが可能な通信装置でありうる。ただし、本実施形態では、通信装置111~通信装置116は、基地局装置101から送信された信号を物理層(レイヤ1)で中継する無線レピータとしての機能を有する。また、通信装置111~通信装置116は、例えば、レイヤ1の無線レピータとしての機能と、他の通信装置や後述の制御装置121と通信するための機能とを併せ持つ1つの装置として構成されうるが、これに限られない。例えば、通信装置111~通信装置116は、これらの機能が別個の装置として実装された装置の集合体として実現されてもよい。なお、基地局装置101と通信装置111~通信装置116のそれぞれとの間において、例えばミリ波などの大容量な通信が可能な周波数帯を用いて信号が伝送され、無線通信によってバックホール回線が構築されるものとする。基地局装置101から送出されたバックホール回線用の周波数帯の電波は、その電波を受信した通信装置(例えば、通信装置111)によって増幅されて出力される。また、その増幅されて出力された電波は、さらに別の通信装置によって受信され、その別の通信装置は、その電波を増幅して出力する。このようにして、複数の通信装置を介して中継通信経路が確立される。
【0012】
通信装置は、自装置の配下の端末装置宛ての信号が届いた場合、その信号を復調し、端末装置が受信することのできる形式の信号に変換して、その端末装置へ送信する。また、通信装置は、端末装置から受信した信号を、バックホール回線で送信可能な形式に変換して、他の通信装置又は基地局装置へ送信する。なお、これは一例であり、通信装置は、一般的な無線レピータとしての機能を有してもよい。すなわち、基地局装置、端末装置又は他の通信装置(無線レピータ)から到来した電波を増幅して出力する機能を有し、例えば基地局装置や他の通信装置から受信した信号を端末装置が処理できる形式の無線信号へ変換する処理や、端末装置から受信した信号をバックホール回線へ流すための形式へ変換する処理などの機能を有しなくてもよい。なお、以下では、通信装置における中継通信機能に着目して説明する。
【0013】
一般に、レイヤ1で中継を行う無線レピータを用いた通信システムでは、事前に計画された位置に無線レピータを配置して、その無線レピータが単純に受信した電波を増幅して出力することにより、カバレッジエリアを改善するように構成される。このような構成では、無線レピータは、事前に設定された方向に電波を放射するのみであり、メッシュネットワークにおける中継経路の切り替えなどの柔軟な通信を行うことが容易ではない。一方で、近年、複数のパターンでビームを設定可能に構成され、そのいずれかのパターンのビームを使用して中継を行うことが可能な無線レピータが存在する。このような無線レピータにおいて、例えば、最大の受信電力で信号を検出することができるパターンのビームを用いることにより、無線品質が良好な中継経路を選択的に使用することができる。
【0014】
制御装置121は、上述のような通信装置による無線中継ネットワークの制御を行う。制御装置121は、通信装置のそれぞれにおける位置情報、及び、電波を受信した際のビームの指向方向に基づいて、各通信装置によって形成される中継通信の順序の関係を特定する。そして、制御装置121は、中継通信経路を形成するためのルーティング情報を形成する。制御装置121は、中継通信経路を形成するための各通信装置における中継処理のための設定情報を、ルーティング情報として形成し、形成したルーティング情報を、各通信装置へ通知しうる。なお、各通信装置は、例えば有線通信回線を用いて制御装置121との間で通信してもよいし、例えば、基地局装置101を介して制御装置121と通信してもよい。また、通信装置は、例えば、ロングタームエボリューション(LTE)、第5世代(5G)セルラ通信システム、無線LAN、Bluetooth(登録商標) Low Energy(BLE)等のレガシ通信方式による無線通信が可能であってもよく、その無線通信によって、制御装置121との間の制御用の通信を行ってもよい。
【0015】
(中継通信経路の特定)
上述のような構成において、制御装置121は、まず、基地局装置101と通信装置111~通信装置116とによってどのような中継通信経路が構成されるかを特定する。本実施形態では、制御装置121が、各通信装置が所定の電力レベル以上の電力で無線信号を受信することができた方向を特定する。そして、制御装置121は、特定した方向に基づいて、各通信装置が、基地局装置又は他の通信装置のいずれから送出された無線信号を受信することができたかを特定する。制御装置121は、通信装置が所定の電力レベル以上の電力で基地局装置又は他の通信装置から無線信号を受信することができた場合に、この通信装置と、基地局装置又は他の通信装置との間に中継通信用のリンクが形成可能であると判定することができる。
【0016】
各通信装置は、例えば、信号の受信に使用可能な複数のビームパターンを用いて、無線信号の検出処理を実行する。通信装置は、無線信号の受信電力が強い方から所定数(例えば1つ)のビーム又は所定値以上の電力で無線信号が受信された1つ以上のビームを特定し、そのビームを示す情報を制御装置121へ通知する。例えば、
図2の例において、通信装置202は、基地局装置又は通信装置201から送信された無線信号を、ビーム211~ビーム215のそれぞれのパターンで測定する。そして、通信装置202は、例えば、自装置の位置と、所定レベル以上の電力で無線信号を受信したビーム212(指向方向)の情報とを、制御装置121へ通知する。なお、通信装置201は、無線信号を出力する際に複数のビームを形成してもよい。この場合、通信装置201は、例えば基地局装置から受信した無線信号を増幅して、その複数のビームの少なくとも一部(一例において全部)から出力するように構成されうる。そして、通信装置202は、その1つ以上のビームのいずれかから送出された無線信号を検出するようにしうる。なお、通信装置201は、1つのビームのみを形成可能であってもよく、その場合は、そのビームを用いて増幅後の無線信号を出力するように構成される。
【0017】
なお、ビーム212の情報は、例えば、通信装置202の姿勢(アンテナ配置)と、アンテナウェイトの情報を含みうる。この場合、制御装置121は、アンテナウェイトの情報からアンテナパターンを特定し、そのパターンと姿勢の情報に基づいて、ビーム212の指向方向を特定しうる。なお、これは一例に過ぎず、通信装置202自身が、自装置のアンテナウェイト及びアンテナパターンからビーム212の指向方向を特定して、特定した情報を制御装置121へ通知してもよい。また、通信装置202は、例えば固定されている複数の指向性アンテナのうち、無線信号を十分な電力で検出したのがいずれのアンテナであるかを示す情報を制御装置121へ通知してもよい。
【0018】
なお、制御装置121は、各アンテナパターンとその指向方向との関係及びそれに対応するインデクスに関する情報を事前に有していてもよい。この場合、通信装置202は、いずれのアンテナパターンにおいて無線信号が十分な電力で検出されたかを示すインデクスの情報を、制御装置121へ通知しうる。これにより、制御装置121は、インデクスに対応するアンテナパターンを特定し、通信装置202がどの方向において到来した電波を十分な電力で検出したかを特定することができる。なお、通信装置202は、例えば設置された際に、アンテナパターンを示す情報と、そのアンテナパターンを特定可能なインデクスを示す情報とを、制御装置121へ通知してもよい。また、例えば、そのような情報が、通信事業者によって、通信装置202と制御装置121に対して、実際に通信装置202の運用が開始される前に入力されてもよい。さらに、通信装置が設置された際に、その通信装置の位置情報が制御装置121に入力されてもよい。この場合、制御装置121は、各通信装置においていずれのアンテナパターンを用いて十分な電力の無線信号を検出したかを特定可能な情報のみを取得するようにしてもよい。
【0019】
制御装置121は、各通信装置から、通信装置の位置と電波の受信方向を取得すると、その通信装置が受信した電波を出力したノードを特定する。例えば、制御装置121は、
図3に示すように、通信装置202から受信した情報に基づいて、通信装置202の位置からビーム212に対応する方向に存在する基地局装置や他の通信装置を特定する。制御装置121は、例えば、通信装置201や通信装置203についても位置情報および無線信号を検出した際に使用したビームの方向の情報を取得する。また、制御装置121は、例えば、基地局装置101の位置の情報も保持しているものとする。ここで、通信装置202が受信した無線信号の発信元の候補は、通信装置202以外の装置である。このため、制御装置121は、基地局装置101の位置、通信装置201の位置、及び通信装置203の位置が、通信装置202の位置を基準としてビーム212に対応する方向に存在するか否かを判定する。これにより、制御装置121は、例えば、通信装置202において検出された無線信号の発信元が通信装置201であることを特定する。また、制御装置121は、同様にして、通信装置201が検出した無線信号の発信元が基地局装置101であることを特定しうる。そして、制御装置121は、これらの特定結果から、基地局装置101、通信装置201、通信装置202の順で無線信号が中継される中継通信経路が存在することを特定することができる。
【0020】
同様にして、制御装置121は、利用可能な中継通信経路を全て特定する。例えば、
図1の例において、基地局装置101から通信装置116までの経路として、(1)基地局装置101、通信装置111、通信装置114、通信装置115を経由する経路、(2)基地局装置101、通信装置111、通信装置115を経由する経路、(3)基地局装置101、通信装置111、通信装置112、通信装置115を経由する経路、(4)基地局装置101、通信装置112、通信装置115を経由する経路、(5)基地局装置101、通信装置111、通信装置112を経由する経路、(6)基地局装置101、通信装置112を経由する経路、(7)基地局装置101、通信装置111、通信装置112、通信装置113を経由する経路、(8)基地局装置101、通信装置112、通信装置113を経由する経路、及び、(9)基地局装置101、通信装置113を経由する経路の9つの経路を特定しうる。このようにして、制御装置121は、例えば
図1において、基地局装置101と、通信装置111~通信装置116とからなる中継ネットワークにおいて設定可能な全ての中継通信経路を特定することができる。なお、中継通信経路の特定方法はこれに限られず、他の方法によって中継通信経路が特定されてもよい。
【0021】
(使用経路の設定)
制御装置121は、上述のようにして特定した中継通信経路の情報を、ルーティング情報として各通信装置に通知する。一例において、制御装置121は、各通信装置に対して、その通信装置が関与する中継通信経路を特定可能な情報を通知する。例えば、
図1のシステムにおいて、通信装置115に対して、基地局装置101から通信装置115に到達するまでの中継通信経路の情報として、(10)基地局装置101、通信装置111、通信装置114、通信装置115からなる経路、(11)基地局装置101、通信装置111、通信装置115からなる経路、(12)基地局装置101、通信装置111、通信装置112、通信装置115からなる経路、及び、(13)基地局装置101、通信装置112、通信装置115からなる経路が、通知される。また、通信装置115が関与する通信経路として、基地局装置101と通信装置116との間の通信経路である、上述の(1)~(4)の経路が、通信装置115へ通知される。各通信装置は、例えば、基地局装置101から通信装置115までの経路が使用されるべきことが制御装置121や基地局装置101によって指示された場合、上述の(10)~(13)のいずれかの経路を用いるように、各通信装置が動作しうる。なお、基地局装置101から通信装置116までの経路が使用されるべき際には、上述の(1)~(9)の経路のいずれかの経路を使用するように、各通信装置が動作しうる。
【0022】
また、制御装置121は、ルーティング情報として、通信装置のそれぞれが使用すべきビームのパターンを1つ以上通知しうる。例えば、制御装置121は、通信装置115に対して、(10)の経路では通信装置114の方向に向けたビームを、(11)の経路では通信装置112の方向に向けたビームを、(12)及び(13)の経路では通信装置114の方向に向けたビームを、それぞれ使用すべきことを通知しうる。なお、上述の経路を示す情報は通知されなくてもよく、基地局装置101から送出された無線信号を中継可能なビームの情報のみが通知されてもよい。また、制御装置121は、各通信装置が、信号を出力する際に使用すべきビームのパターンをルーティング情報として含めてもよい。すなわち、制御装置121は、例えば、各中継通信経路を形成するために使用されるべき各通信装置の送信または受信のためのビームのパターンを特定し、そのビームのパターンの情報を各通信装置へ提供しうる。
【0023】
制御装置121は、設定可能な中継通信経路のうちのいずれを使用すべきかを、様々な基準に基づいて決定しうる。例えば、基地局装置101から送信された信号が端末装置に届くまでの間の遅延がサイクリックプリフィクス(CP)の長さを超える場合、端末装置において、中継通信経路を経由して届いた信号が、例えば基地局装置101から直接到来した信号と直交しなくなりうる。このため、制御装置121は、中継通信経路における中継遅延が所定値以下となるように、使用すべき中継通信経路を選択しうる。また、制御装置121は、例えば、無線品質や、中継通信経路のホップ数(基地局装置101と末端の通信装置(中継装置)までの間のリンクの数)などに基づいて、使用すべき中継通信経路を選択してもよい。なお、中継通信経路の選択の際に無線品質が用いられる場合、各通信装置は、例えば、所定の電力以上で無線信号を検出した際のビームに関する情報を通知する際に、さらに、その無線信号の無線品質を示す情報をそのビームと関連付けて、制御装置121へ通知しうる。無線品質を示す情報は、例えば参照信号受信電力(RSRP)や参照信号受信品質(RSRQ)、信号対雑音比(SNR)などでありうる。
【0024】
制御装置121は、基地局装置と、中継を行う各通信装置をノードとするモデルを用いて、使用すべき中継通信経路を決定することができる。
図4は、
図1の中継通信ネットワークをモデル化した図である。
図4における円は基地局装置または通信装置を示しており、円の中に示されている数字は、どの基地局装置又は通信装置であるかを示している。すなわち、「101」と記された円は、基地局装置101を示しており、「111」~「116」と記された円は、それぞれ、通信装置111~通信装置116を示している。2つの円をつなぐ矢印は、矢印の起点側の装置から送出された無線信号が、矢印の終点側の装置に十分な電力で届き、その2つの装置の間で中継通信のためのパスが形成可能であることを示している。なお、矢印は、基地局装置101を起点とした場合に、どのように無線信号が中継されるかを示している。すなわち、基地局装置101から無線信号が送出された場合に、矢印に沿って中継通信が行われ、矢印が示す方向と逆方向には無線信号が伝送されないことを示している。なお、基地局装置101へ信号が送信される場合のモデルは、別途作成されてもよいし、
図4の矢印の向きを反転させたものが用いられてもよい。
【0025】
図4において、矢印に付された数字(例えば、基地局装置101と通信装置111との間の「1」や、基地局装置101と通信装置113との間の「6」など)は、そのリンクを使用する際の「コスト」に相当する。ここでの「コスト」は、例えば、伝搬遅延や無線品質などに対応し、コストの値が低いほど、伝搬遅延が小さく又は無線品質が高いなど、そのリンクの使用が有利であることを示す。中継通信経路のコストは、その中継通信経路に含まれるすべてのリンクにおけるコストを合算した値となる。例えば、
図4において、基地局装置101、通信装置112、及び通信装置116からなる中継通信経路のコストは、基地局装置101と通信装置112との間のリンクのコスト「3」に、通信装置112と通信装置116との間のリンクのコスト「3」を加算した、「6」となる。
【0026】
本実施形態では、制御装置121が、例えば、基地局装置101から端末装置へ無線信号が届くまでの時間を短縮するために、ホップ数が十分に抑制されるように、中継通信経路を選択する。
【0027】
制御装置121は、例えば、使用すべき中継通信経路として、ホップ数が小さい中継通信経路ほど優先的に選択するようにする。例えば、
図4において、基地局装置101と通信装置116までで形成可能な中継通信経路のうち、2ホップで到達することができる、(A)基地局装置101、通信装置112、通信装置116からなる経路、及び、(B)基地局装置101、通信装置113、通信装置116からなる経路のいずれかが、使用される中継通信経路として優先的に選択されるようにしうる。また、このときに、同じホップ数の経路が複数存在する場合には、コストが小さい方の経路が優先的に選択されるようにしうる。すなわち、上述の経路(A)はコストが6であり、経路(B)はコストが8であるため、制御装置121は、経路(A)と経路(B)とのうち、経路(A)が優先的に選択されるようにしうる。なお、制御装置121は、通信装置111~通信装置116のそれぞれについて、上述のように、基地局装置101からの最小のホップ数の中継通信経路を、使用すべき中継通信経路として選択しうる。また、制御装置121は、通信装置111~通信装置116のそれぞれに対して最小のホップ数の経路が複数存在する場合、その複数の経路のうちでコストが最小の経路を、使用すべき中継通信経路として選択しうる。
【0028】
また、制御装置121は、ホップ数が所定数以下であることを前提に、コストが小さい経路ほど、使用すべき中継通信経路として優先的に選択してもよい。例えば、所定数が3である場合、基地局装置101から通信装置116までの経路のうち、(C)基地局装置101、通信装置111、通信装置114、通信装置115、通信装置116からなる経路、(D)基地局装置101、通信装置111、通信装置112、通信装置115、通信装置116からなる経路、(E)基地局装置101、通信装置111、通信装置112、通信装置113、通信装置116からなる経路は、ホップ数が4となるため、選択されない。一方で、上述の経路(A)及び経路(B)と、(F)基地局装置101、通信装置111、通信装置112、通信装置116からなる経路、(G)基地局装置101、通信装置111、通信装置115、通信装置116からなる経路、(H)基地局装置101、通信装置112、通信装置115、通信装置116からなる経路、(I)基地局装置101、通信装置112、通信装置113、通信装置116からなる経路は、ホップ数が3以下である。このため、制御装置121は、これらの経路のうち、コストが最小の経路を、使用すべき中継通信経路として選択しうる。例えば、経路(A)はコストが6であり、経路(B)はコストが8であり、経路(F)はコストが5であり、経路(G)はコストが5であり、経路(H)はコストが6であり、経路(I)はコストが7である。このため、制御装置121は、経路(F)又は経路(G)を、使用すべき中継通信経路として選択しうる。このように、制御装置121は、例えば、ホップ数の制限の範囲内の中継通信経路を全て抽出し、その抽出した中継通信経路の中から、使用すべき中継通信経路として、コストが小さい方の経路を優先的に選択しうる。
【0029】
なお、上述の例は、基地局装置101と通信装置111~通信装置116までの個別の中継通信経路をコストに基づいて選択する手順について説明した。この手順によれば、例えば通信装置111~通信装置116が、基地局装置101から到来した信号の制御情報部分を復号することができ、その信号の宛先に応じて中継先を切り替えることができる場合に、適切な経路で中継通信を行うことができる。一方で、通信装置111~通信装置116が受信した信号の制御情報部分を復号できない場合には、信号の宛先によって無線信号の転送先を変更させることができない。
【0030】
このため、システム全体における中継通信経路に関するトータルのコストに基づいて、各通信装置における信号の転送方向を1つに定めるような中継通信経路の特定が行われてもよい。この中継通信経路の特定方法について、説明を簡単にするためにノード数を減らしたモデルである
図5(A)~
図5(D)を用いて、最大ホップ数が3である場合を例として説明する。
図5(A)~
図5(D)において、ノード501は、例えば基地局装置に対応し、ノード502~ノード505は、例えば無線レピータを含んだ通信装置に対応する。ここで、
図5(A)に示すように、ノード501はノード502及びノード503とリンクを形成可能である。なお、ここでの「リンクを形成可能」とは、ノード501の送出した無線信号がノード502及びノード503において(少なくとも1つのビームパターンを用いて)所定レベル以上の電力で受信されることを意味する。また、各リンクにおけるコストは、リンクに付された数字によって表される。例えば、ノード501からノード502へのリンクはコストが1であり、ノード501からノード503へのリンクはコストが4である。ノード502は、ノード503とリンクを形成可能であり、ノード503は、ノード504及びノード505とリンクを形成可能である。さらに、ノード504はノード505とリンクを形成可能である。
【0031】
このような構成において、ノード501とノード502~505の全てとの間に1つの中継通信経路のみが設定されて使用されるようにする。すなわち、ノード503に着目すると、ノード501からノード503に直接到達する経路と、ノード501からノード502を介してノード503に到達する経路が存在するが、この両方が使用されるのではなく、いずれか一方のみが使用されるようにする。また、上述のように、最大ホップ数が3となるように中継通信経路が選択されるため、ノード501、ノード502、ノード503、ノード504、ノード505の順で接続する4ホップの経路は選択されないようにする。このため、
図5(A)のような構成において、選択可能な経路は
図5(B)~
図5(D)に示す3パターンのみとなる。ここで、
図5(B)のパターンについて説明する。このパターンにおいて、ノード502までの経路は、ノード501からノード502まで直接到達する経路であり、コストは1である。ノード503までの経路は、ノード501からノード502を経由してノード503に到達する経路であり、コストは1+2=3である。ノード504までの経路は、ノード501からノード503までの経路に、ノード503とノード504の間の経路を追加したものであり、コストは1+2+1=4である。そして、ノード505までの経路は、ノード501からノード503までの経路に、ノード503とノード505の間の経路を追加したものであり、コストは1+2+2=5である。したがって、
図5(B)のパターンにおける総コストは、1+3+4+5=13となる。
【0032】
同様に、
図5(C)において、ノード502に到達するためのコストは1であり、ノード503に到達するためのコストは4であり、ノード504に到達するためのコストは4+1=5であり、ノード505に到達するためのコストは4+1+2=7である。したがって、
図5(C)のパターンにおける総コストは、1+4+5+7=17となる。また、
図5(D)において、ノード502に到達するためのコストは1であり、ノード503に到達するためのコストは4であり、ノード504に到達するためのコストは4+1=5であり、ノード505に到達するためのコストは4+2=6である。したがって、
図5(D)のパターンにおける総コストは、1+4+5+6=16となる。したがって、
図5(B)~
図5(D)のような中継通信経路の中で、
図5(B)の中継通信経路がトータルのコストが最小となる。このため、
図5(A)のようにノード間のリンクの形成が可能な場合、
図5(B)の中継通信経路が使用されると決定されうる。また、
図5(B)の中継通信経路において無線リンク障害などが発生した場合に、次にコストの低い
図5(D)の中継通信経路が使用されるような処理が行われ、
図5(B)及び
図5(D)の中継通信経路がいずれも使用できない状態となった場合、
図5(C)の中継通信経路が使用されるような処理が行われてもよい。ただし、これは一例であり、後述のような手順で、無線リンク障害が発生した場合などのための代替の中継通信経路が決定されてもよい。なお、例えば、
図5(B)や
図5(D)のような中継通信経路が設定された場合、ノード503は、ノード501から受信した信号を、ノード504へ向かう方向とノード505へ向かう方向との2つの方向へ向けて転送することとなる。この場合、ノード503は、1つの方向へ信号を転送する場合と比べて、電力を分散して複数の方向へ信号を転送することとなりうる。したがって、
図5(B)や
図5(D)の場合にノード503から送信されてノード504において受信される信号の無線品質は、
図5(C)の場合と比べて低くなることが想定されうる。このため、コストが無線品質に対応する場合、
図5(B)や
図5(D)の場合と
図5(C)の場合とで異なる値に設定されてもよい。なお、コストがノード間の距離に相当する場合は、複数のノードに向けて信号が送信される場合と単一のノードに向けて信号が送信される場合とで、ノード間の距離に変化はないため、コストは変わらない。
【0033】
(中継通信経路の切り替え)
制御装置121は、上述のようにして設定された中継通信経路に含まれる無線リンクが無線リンク障害の発生などによって使用可能でなくなった場合の代替の中継通信経路(以下では、この経路を「代替通信経路」と呼ぶ場合がある。)を事前に設定することができる。例えば、
図1の構成において、
図6(A)のような中継通信経路が、使用される経路として設定されたものとする。すなわち、基地局装置101から通信装置111に到達する経路、基地局装置101から通信装置111を介して通信装置112に到達する経路、基地局装置101から通信装置111及び通信装置112を介して通信装置113に到達する経路、基地局装置101から通信装置111を介して通信装置114に到達する経路、基地局装置101から通信装置111を介して通信装置115に到達する経路、基地局装置101から通信装置111及び通信装置115を介して通信装置116に到達する経路、の6個の経路が設定される。そして、これらの経路は、(1)基地局装置101と通信装置111との間の無線リンク、(2)通信装置111と通信装置112との間の無線リンク、(3)通信装置112と通信装置113との間の無線リンク、(4)通信装置111と通信装置114との間の無線リンク、(5)通信装置111と通信装置115との間の無線リンク、及び、(6)通信装置115と通信装置116との間の無線リンク、の6個の無線リンクにより構成される。制御装置121は、例えば、これらの無線リンクがそれぞれ切断された場合の代替通信経路を事前に設定しておく。
【0034】
例えば、上述の通信装置111と通信装置112との間の無線リンクが切断された場合、
図6(A)の中継通信経路のうち、通信装置112を経由する中継通信経路が全て使用できなくなる。このため、通信装置112は、ビームの向きを通信装置111の方向から基地局装置101の方向へと切り替えるための設定を行うことができる。この設定では、
図6(B)に示すように、通信装置111と通信装置112との間の無線リンクが使用されず、基地局装置101と通信装置112との間の無線リンクが使用される。なお、この場合に、基地局装置101と通信装置112との間の無線リンクと通信装置112と通信装置113との間の無線リンクとを用いて、基地局装置101と通信装置113との間の中継通信経路を設定することができる。ただしこれに限られず、例えば、基地局装置101から通信装置113に直接到達する経路が使用されてもよい。制御装置121は、例えば、上述のコストの値などに基づいて、このいずれの経路を代替通信経路として設定するかを決定しうる。ここでは、制御装置121は、
図6(B)の通信経路を代替通信経路として設定したものとする。
【0035】
制御装置121は、このような代替通信経路の設定処理を、1つ以上の無線リンクが使用できない全ての場合について行う。
図6(C)は、通信装置111と通信装置115との間の無線リンクが使用できなくなった場合の代替通信経路の例を示している。この場合、例えば、通信装置115までの経路として、基地局装置101から通信装置111及び通信装置114を経由して通信装置115に至る経路が選択されうる。一方で、このような経路が用いられる場合、通信装置115を経由して通信装置116に至る経路は、ホップ数が4になってしまうため、ホップ数の制限によって使用することができない。このため、通信装置116までの経路として、基地局装置101から通信装置111及び通信装置112を経由して通信装置116に至る経路が選択されうる。なお、例えば各無線リンクのコストにより他の代替通信経路が選択されうるが、ここでは、
図6(C)の代替通信経路が選択されたものとする。同様に、通信装置115と通信装置116との間の無線リンクが使用できなくなった場合に、例えば各無線リンクのコストに基づいて、
図6(D)の代替通信経路が選択され、通信装置112と通信装置113との間の無線リンクが使用できなくなった場合に、例えば各無線リンクのコストに基づいて、
図6(E)の代替通信経路が選択されたものとする。
【0036】
また、
図6(F)及び
図6(G)は、それぞれ、基地局装置101と通信装置111との間の無線リンクが使用できなくなった場合及び通信装置111と通信装置114との間の無線リンクが使用できなくなった場合の代替通信経路を示している。なお、基地局装置101と通信装置111の間の無線リンクが使用できなくなった場合には、通信装置111及び通信装置114に至る中継通信経路を設定できないため、この場合には通信装置111及び通信装置114に到達する経路は設定されない。同様に、通信装置111と通信装置114の間の無線リンクが使用できなくなった場合に、通信装置114に到達する経路は設定されない。なお、
図1のような構成の例に過ぎず、実際には他の通信装置が用いられることによって、これらの通信装置に至る代替通信経路が当然に設定されうる。
【0037】
なお、
図6(B)~
図6(G)の例は、1つの無線リンクが使用できなくなった場合について説明しているが、複数の無線リンクが使用できなくなった場合の代替通信経路が設定されてもよい。この場合、その複数の無線リンクの全ての組み合わせが使用できなくなった場合のそれぞれについて、代替通信経路が特定されうる。
【0038】
制御装置121は、このようにして特定した代替通信経路に基づいて、各通信装置において基地局装置101からの無線信号が届かなくなった場合の、変更後のビームの方向を集計する。そして、制御装置121は、各通信装置についての集計結果によって、代替通信経路において使用される頻度の高いビームの方向を、その通信装置の変更後のビームの方向の候補として設定する。そして、制御装置121は、使用する中継通信経路におけるビームの方向を第1の候補とし、代替通信経路において使用される頻度が最も高い、第1の候補と異なるビームの方向を第2の候補として、各通信装置へ通知する。なお、代替通信経路において使用される頻度が次に高い、第1の候補及び第2の候補と異なるビームの方向を第3の候補として、各通信装置へ通知してもよい。
【0039】
例えば、通信装置112は、
図6(A)に示すように、使用する中継通信経路において通信装置111の方向へビームを向けている。ここで、基地局装置101からの無線信号が通信装置111から通信装置112に届かなくなった場合、通信装置112が関与する代替通信経路が設定される。通信装置112が関与する代替通信経路は、
図6(B)及び
図6(F)のように設定され、これらの場合、代替通信経路においてビームを基地局装置101の方向へ向けることとなる。すなわち、通信装置112は、2つの代替通信経路の両方において、基地局装置101の方向へビームを向けることとなる。このため、通信装置112には、ビームの方向の第1の候補として、初期的に使用される中継通信経路において使用される通信装置111の方向が通知され、ビームの方向の第2の候補として、代替通信経路において使用される基地局装置101の方向が通知される。
【0040】
また、通信装置113は、
図6(A)に示すように、使用する中継通信経路において通信装置112の方向へビームを向けている。ここで、基地局装置101からの無線信号が通信装置112から通信装置113に届かなくなった場合、通信装置113が関与する代替通信経路が設定される。通信装置113が関与する代替通信経路は、
図6(B)、
図6(E)、及び
図6(F)のように設定される。ここで、通信装置113は、
図6(B)及び
図6(F)の場合は、ビームの方向を変更する必要がない。すなわち、
図6(B)及び
図6(F)の場合は、上流側(基地局装置101の側)の通信装置112においてビームの方向が切り替えられることにより、通信装置113への基地局装置101からの無線信号の供給が可能となるため、通信装置113のビームの方向の変更は不要となる。一方で、
図6(E)の場合には、通信装置113は、代替通信経路においてビームを基地局装置101の方向へ向けることとなる。すなわち、通信装置113は、2つの代替通信経路においてビームの方向の切り替えが発生せず、1つの代替通信経路においてはビームの向きを基地局装置101の方向へ変更することとなる。このため、通信装置113には、ビームの方向の第1の候補として通信装置112の方向が通知され、ビームの方向の第2の候補として基地局装置101の方向が通知される。
【0041】
通信装置115は、
図6(A)に示すように、使用する中継通信経路において通信装置111の方向へビームを向けている。ここで、基地局装置101からの無線信号が通信装置111から届かなくなった場合、通信装置115が関与する代替通信経路が設定される。通信装置115は、
図6(C)の場合に通信装置114の方向へビームを変更し、
図6(F)の場合に通信装置112の方向へビームを変更する。このため、通信装置115が関与する代替通信経路において、通信装置112の方向と通信装置114の方向との2通りが同じ頻度で通信装置115のビームの方向の変更先となる。この場合、例えば、システム全体としてより低コストの代替通信経路に対応する方向が、ビームの方向の第2の候補として通信装置115へ通知されうる。なお、これは一例であり、他の基準で、ビームの方向の第2の候補が決定されてもよい。例えば、基地局装置101と通信装置111との間の無線リンクが使用できなくなった場合、通信装置115がビームの方向を通信装置114の方向へ向けても、通信を再開することはできない。一方で、通信装置115は、ビームの方向を通信装置112へ向けることにより、基地局装置101と通信装置111との間の無線リンクと通信装置111と通信装置112との間の無線リンクとのいずれが使用できなくなった場合であっても、(例えば通信装置112がビームの方向を変更することにより)通信を再開することができる。このため、通信装置112の方向が、ビームの方向の変更先として優先されてもよい。このような事情に鑑み、ここでは、ビームの方向の第2の候補として、通信装置112の方向が選択されたものとする。この場合、通信装置115には、ビームの方向の第1の候補として通信装置111の方向が通知され、ビームの方向の第2の候補として、通信装置112の方向が通知され、必要に応じて、ビームの方向の第3の候補として、通信装置114の方向が通知される。
【0042】
通信装置116は、
図6(A)に示すように、使用する中継通信経路において通信装置115の方向へビームを向けている。ここで、基地局装置101からの無線信号が通信装置115から届かなくなった場合、通信装置116が関与する代替通信経路が設定される。通信装置116は、
図6(C)及び
図6(D)の場合に通信装置112の方向へビームを変更し、
図6(F)の場合はビームの方向を変更しない。このため、通信装置116には、ビームの方向の第1の候補として通信装置115の方向が通知され、ビームの方向の第2の候補として通信装置112の方向が通知される。
【0043】
なお、
図6(A)のような構成において、通信装置111及び通信装置114は、基地局装置101からの無線信号を受信することができなくなった場合に切り替えるべき代替通信経路を有しない。このため、制御装置121は、ビームの方向の第1の候補のみを通知しうる。
【0044】
各通信装置は、初期的な状態として、上述のようにして通知された第1の候補の方向へビームを形成して、基地局装置101からの無線信号を受信して、(必要に応じて送信ビームを形成して)その無線信号を増幅して転送する。そして、各通信装置は、基地局装置101からの無線信号が一定時間にわたって届かなかった場合に、第2の候補の方向へビームの向きを切り替えて、無線信号を受信することができる代替通信経路に切り替えて、中継通信を継続する。
【0045】
一方で、各通信装置が、基地局装置101からの無線信号を検出しなくなったことに応じて直ちに代替通信経路への切り替えを行うと、各通信装置において使用されることが想定されている中継通信経路がずれてしまうことがありうる。すなわち、例えば、通信装置111と通信装置112との間の無線リンクが使用できなくなった場合に、通信装置112が
図6(B)のようにビームの向きを変更することによりシステム全体において通信を再開できるのに対して、通信装置113も、
図6(E)のようにビームの方向を変更してしまいうる。すなわち、通信装置113は、基地局装置101からの無線信号を検出しなくなった場合であっても、そのまま待機しておけば、通信を再開できるにもかかわらず、ビームの向きを変更してしまいうる。この結果、例えば、コストが大きく非効率な通信経路が使用されてしまう。
【0046】
このような事情に鑑み、本実施形態では、制御装置121は、各通信装置に対して、上述のようなビームの方向の第1の候補や第2の候補を通知する際に、基地局装置101からの無線信号を検出しなくなってからビームの向きを変更するまでの間にビームの向きを変更せずに待機する時間(インターバル値)を設定する。このインターバル値は、例えば、上流側(基地局装置101に近い側)の通信装置に対して短く設定される。一例において、代替通信経路におけるビームの方向が一意に定まる通信装置に対しては、インターバル値が0に設定される。例えば、通信装置112は、基地局装置101と通信装置111との間の無線リンク又は通信装置111と通信装置112との間の無線リンクのいずれかが使用できなくなった場合に基地局装置101からの無線信号が検出されなくなるが、その際の代替通信経路である
図6(B)及び
図6(F)のいずれにおいても、ビームの方向が基地局装置101の方向へと変更されることとなる。このため、制御装置121は、通信装置112に対しては、例えば上述の第1の候補及び第2の候補を通知するのと並行して、インターバル値が0であることを通知しうる。
【0047】
一方、例えば通信装置113は、基地局装置101と通信装置111との間の無線リンク、通信装置111と通信装置112との間の無線リンク、又は、通信装置112と通信装置113との間の無線リンクのいずれかが使用できなくなった場合に、基地局装置101からの無線信号が検出されなくなる。このときの代替通信経路は、
図6(B)、
図6(E)、
図6(F)のいずれかとなり、
図6(E)の場合にはビームの方向を基地局装置101の方向へと変更するが、
図6(B)及び
図6(F)の場合にはビームの方向を変化させない。すなわち、代替通信経路におけるビームの向きが一意に定まらない。このため、制御装置121は、通信装置113に対して、0より大きいインターバル値を通知しうる。
【0048】
なお、制御装置121は、代替通信経路におけるビームの向きが一意に定まらない通信装置に対しては、使用される(ビームの方向の第1の候補による)中継通信経路における基地局装置101からその通信装置までのホップ数に応じた長さのインターバル値を通知しうる。例えば、通信装置115は、
図6(A)の中継通信経路において、基地局装置101から2ホップで到達する位置に存在し、通信装置116は、その中継通信経路において、基地局装置101から3ホップで到達する位置に存在する。このため、制御装置121は、通信装置115に対して、通信装置116より短いインターバル値を通知しうる。すなわち、上流側(基地局装置101に近い側)の通信装置ほど短いインターバル値が通知される。これによれば、上流側の通信装置においてビームの方向を変更することにより中継通信を再開できる場合に、下流側の通信装置が不必要にビームの方向を変更することを防ぐことが可能となる。なお、インターバル値の決定方法は、上述の例に限られない。例えば、使用されるべき中継通信経路における基地局装置101からのホップ数のみに基づいてインターバル値が決定されてもよい。すなわち、代替通信経路におけるビームの向きが一意に定まらなくても、基地局装置101から1ホップで到達する通信装置についてはインターバル値を0とし、その後、1ホップ増加する事に、インターバル値を所定値(Δx)だけ増加させてもよい。この場合、初期的な中継通信経路(最も優先して使用されるように設定された中継通信経路)において基地局装置101からnホップ目で到達する通信装置のインターバル値が、(n-1)×Δxのように決定されうる。また、上述のようにして、代替通信経路におけるビームの向きが一意に定まる通信装置を起点としたホップ数に応じて、インターバル値が決定されてもよい。この場合、起点からのホップ数をmとした場合に、m×Δxのように決定されうる。
【0049】
なお、通信装置116は、例えば、通信装置115が
図6(C)のように、ビームの方向を通信装置114に向けた場合に、基地局装置101からの無線信号を受信することができるようになる。しかしながら、この場合、ホップ数が増加しており、その無線信号が通信装置116に到達するまでに時間がかかることが想定される。このため、通信装置116は、無線信号が受信されるべきタイミングでその無線信号を受信することができず、正常に通信を再開することができていないと判定しうる。その結果、通信装置116は、第2の候補の方向(通信装置112の方向)へビームの向きを変更しうる。これにより、通信装置115が通信装置114の方向へビームを向けた場合に、
図6(C)のような中継通信経路が使用されるようになる。
【0050】
なお、各通信装置は、自装置がビームを向けている方向の情報を、定期的に制御装置121へ通知してもよい。そして、制御装置121は、例えばホップ数が、中継通信経路の決定の際の制限として使用している所定数(上述の例では3)を超える経路が存在する場合に、そのような経路がなくなるように、特定の通信装置に対してビームの向きを変更するように指示してもよい。例えば、通信装置115が通信装置114の方向へビームを向けた場合に、通信装置116に基地局装置101からの無線信号が所定のタイミングで到達して、通信装置116がビームの向きを通信装置115の方向に維持した場合などに、制御装置121は、通信装置116に対して、ビームを通信装置112の方向へ向けるように指示しうる。なお、基地局装置101からの無線信号が一定のタイミングで届いている限りにおいて、使用されている中継通信経路におけるホップ数が所定数を超えることが許容されてもよい。
【0051】
なお、上述の実施形態における「基地局装置101からの無線信号を検出しない」は、基地局装置101から定期的に送信される同期信号や報知信号が所定のタイミングで受信されなかった場合に対応する。すなわち、基地局装置101から断続的に無線信号が送信される場合の無信号区間が存在する場合に、その無信号区間が存在しても、定期的に送信される無線信号が検出されている間は、「基地局装置101からの無線信号を検出しない」と判定されることはない。この場合は、そもそも基地局装置101から送信された無線信号が存在しないだけであり、無線リンクに問題が発生したわけではないからである。
【0052】
なお、通信装置111~通信装置116は、定期的に、設定可能な複数のビームにおいて無線信号を観測し、その観測結果を制御装置121に通知するようにしうる。また、通信装置111~通信装置116は、現在使用しているビームの情報を、その無線信号の観測結果と共に又はそれとは別個に、制御装置121へ通知しうる。制御装置121は、受信した情報に基づいて、例えば通信装置111~通信装置116が、初期的に設定した中継通信経路を使用しているか、又は、代替通信経路を使用しているかを特定することができる。そして、制御装置121は、代替通信経路が使用されている場合であって、初期的に設定した中継通信経路が(例えば無線品質の改善などにより)使用可能となっていると判定した場合、代替通信経路から、初期的な通信経路へ戻すように、各通信装置に対してビームの設定を通知しうる。また、制御装置121は、定期的に受信した無線品質の情報などに基づいて、使用されるべき中継通信経路と代替通信経路を特定し、その特定結果に基づいて、各通信装置に対して、設定すべきビームの向きの情報やインターバル値を通知するようにしてもよい。
【0053】
(装置構成)
図7を用いて、制御装置および通信装置のハードウェア構成例について説明する。制御装置および通信装置は、一例において、プロセッサ701、ROM702、RAM703、記憶装置704、及び、通信回路705を含んで構成される。プロセッサ701は、汎用のCPU(中央演算装置)や、ASIC(特定用途向け集積回路)等の、1つ以上の処理回路を含んで構成されるコンピュータであり、ROM702や記憶装置704に記憶されているプログラムを読み出して実行することにより、装置の全体の処理や、上述の各処理を実行する。ROM702は、制御装置および通信装置が実行する処理に関するプログラムや各種パラメータ等の情報を記憶する読み出し専用メモリである。RAM703は、プロセッサ701がプログラムを実行する際のワークスペースとして機能し、また、一時的な情報を記憶するランダムアクセスメモリである。記憶装置704は、例えば着脱可能な外部記憶装置等によって構成される。
【0054】
通信装置の通信回路705は、例えば、基地局装置や他の通信装置が送信した無線信号を増幅して出力する機能を有する。なお、通信装置の通信回路705は、例えば、複数のアンテナのそれぞれに対応するアンテナウェイトを設定することにより、信号の受信のためのアンテナウェイトを形成するように構成されうる。なお、通信装置の通信回路705は、さらに、信号の送信のためのアンテナウェイトを形成するように構成されてもよい。また、通信装置の通信回路705は、例えば、複数の指向性アンテナと接続され、その少なくともいずれかを使用するように構成されてもよい。さらに、通信装置の通信回路705は、複数のビームパターンのそれぞれに対して別個に用意されてもよく、使用されるビーム以外のビームパターンに対応する通信回路705は、オフとされるように構成されてもよい。また、通信装置の通信回路705は、所定の電力以上で無線信号を検出したビームを特定可能な情報、各ビームにおける無線信号の受信品質、通信装置の位置情報などのうちの少なくともいずれかを、制御装置へ通知するための通信機能を有しうる。一例において、通信装置の通信回路705は、例えば中継通信経路を介して基地局装置へその情報を通知するように構成されうる。この場合、基地局装置が、その情報を制御装置へ転送しうる。また、通信装置の通信回路705は、レガシ通信方式や有線通信方式を用いて、その情報を直接、制御装置へ通知する機能を有してもよい。また、通信装置の通信回路705は、例えば中継通信経路を介して、又は、制御装置から直接、制御装置によって生成された、中継通信経路に対応するビームの方向の候補の情報を受信するように構成されうる。
【0055】
制御装置の通信回路705は、通信装置から情報を取得し、通信装置へ情報を送信可能な任意の通信機能を有しうる。制御装置の通信回路705は、例えば、基地局装置や通信装置との間で有線通信方式を用いて接続を確立して、情報を送受信するように構成されうる。また、制御装置の通信回路705は、例えば、レガシ通信方式で通信可能な構成を有し、通信装置とその通信方式を用いて無線通信を行うように構成されてもよい。
【0056】
図8は、制御装置の機能構成例を示す図である。制御装置は、その機能として、例えば、情報取得部801、経路特定部802、ビーム設定通知部803、及び、インターバル情報通知部804を有する。なお、
図8の機能ブロックは概略的に示したものであり、それぞれの機能ブロックが一体化されて実現されてもよいし、さらに細分化されてもよい。また、
図8の各機能は、例えば、プロセッサ701がROM702や記憶装置704に記憶されているプログラムを実行することにより実現されてもよいし、例えば通信回路705の内部に存在するプロセッサが所定のソフトウェアを実行することによって実現されてもよい。なお、各機能部が実行する処理の詳細について、上述の詳細についてはここでは説明せず、その大まかな機能のみを概説する。
【0057】
情報取得部801は、通信装置から、無線信号を所定の電力以上で受信した通信装置のビームを特定可能な情報、各ビームにおける無線信号の受信品質、通信装置の位置情報を特定可能な情報などの少なくともいずれかを取得する。経路特定部802は、情報取得部801によって取得された情報に基づいて、例えば上述のようにして、各通信装置がどの装置からの信号を増幅して出力するかを特定し、中継通信経路を特定する。例えば、経路特定部802は、
図2や
図3を用いて説明したようにして、設定可能な通信経路を特定する。そして、経路特定部802は、例えば、基地局装置101及び通信装置111~通信装置116の間に
図1に示すような通信経路を設定可能であることを特定する。経路特定部802は、さらに、設定可能な通信経路のうち実際に使用すべき中継通信経路と、代替の中継通信経路とを決定する。そして、経路特定部802は、各通信装置が設定すべきビームの向きの1つ以上の候補を決定する。ビーム設定通知部803は、経路特定部802によって特定されたビームの向きの1つ以上の候補の情報を各通信装置へ通知する。インターバル情報通知部804は、各通信装置が基地局装置からの無線信号の不検出状態となったタイミングからビームの向きを変更するまでの時間(インターバル値)の情報を、その通信装置へ通知する。
【0058】
図9は、通信装置の機能構成例を示す図である。通信装置は、その機能として、例えば、測定部901、情報通知部902、及び、ビーム制御部903を有する。なお、
図9の機能ブロックは概略的に示したものであり、それぞれの機能ブロックが一体化されて実現されてもよいし、さらに細分化されてもよい。また、
図9の各機能は、例えば、プロセッサ701がROM702や記憶装置704に記憶されているプログラムを実行することにより実現されてもよいし、例えば通信回路705の内部に存在するプロセッサが所定のソフトウェアを実行することによって実現されてもよい。なお、各機能部が実行する処理の詳細について、上述の詳細についてはここでは説明せず、その大まかな機能のみを概説する。
【0059】
測定部901は、他の通信装置や基地局装置から到来した無線信号を、例えば設定可能な複数のビームのそれぞれで受信し、いずれのビームを用いた場合に、その無線信号が所定の電力以上で検出されるかを特定する。情報通知部902は、測定部901によって特定されたビームの情報、そのビームを用いた場合の無線信号の受信品質などの情報を、制御装置へ通知する。情報通知部902は、例えば、受信用のビームの情報として、そのビームに事前に割り当てられたインデクスを制御装置へ通知しうる。また、情報通知部902は、自装置の位置情報を制御装置へ通知しうる。ビーム制御部903は、情報通知部902によって通知された情報に基づいて制御装置が決定したビームの向きの候補の情報を制御装置から取得し、その情報に基づいて、通信に使用すべきビームを設定する。
【0060】
ビーム制御部903は、基地局装置からの無線信号が検出されなかった場合に、代替通信経路に対応する方向へビームを切り替える。このとき、ビーム制御部903は、基地局装置からの無線信号が受信されるべきタイミングにおいてその無線信号を検出しなかったタイミングから、制御装置から通知されたインターバル値に対応する期間だけ待機した後に、ビームの向きを切り替えうる。なお、ビーム制御部903は、通知されたインターバル値に対応する期間の間に、基地局装置からの無線信号を検出することができた場合、ビームの向きを切り替えずに維持しうる。これによれば、上流側の通信装置におけるビームの向きの切り替えにより、中継通信経路が再構成され、これにより、正常な通信を再開することが可能となる。
【0061】
また、測定部901は、中継通信を実行中に、設定可能なビームのそれぞれにおいて、定期的に基地局装置又は他の通信装置からの無線信号を測定し、情報通知部902は、その測定結果を制御装置へ通知するようにしてもよい。なお、情報通知部902は、測定結果と共に又は測定結果とは別個に、周期的に、現在使用しているビームを示す情報を、制御装置121へ通知してもよい。
【0062】
(処理の流れ)
続いて、制御装置が、中継通信経路及び代替通信経路を特定して、各通信装置に対して設定情報を通知する際の処理の流れの例について、
図10を用いて説明する。なお、
図10は、制御装置が実行する処理を概説するための図に過ぎず、例えば1つの処理ステップが複数の処理ステップに分割されてもよいし、複数の処理ステップが1つの処理ステップに統合されてもよい。また、本実施形態で説明する趣旨を逸脱しない範囲において、処理の順序が入れ替えられてもよいし、処理の一部が省略されてもよい。
【0063】
制御装置は、まず、各通信装置から、基地局装置又は他の通信装置から到来した無線信号の測定結果(無線品質)の情報や、その通信装置の位置の情報など、設定可能な通信経路を特定可能な情報を取得する(S1001)。そして、制御装置は、取得した情報に基づいて、基地局装置と各通信装置との位置関係を特定し、設定可能な無線リンクを特定する(S1002)。例えば、制御装置は、位置関係及び設定可能な無線リンクを特定し、
図4のようなモデルを生成する。そして、制御装置は、そのモデルに基づいて、使用すべき中継通信経路と、その中継通信経路の一部の無線リンクが使用することができなくなった場合の代替通信経路とを特定する(S1003)。例えば、制御装置は、使用すべき中継通信経路を
図6(A)のように特定し、代替通信経路を
図6(B)~
図6(G)のように特定する。そして、制御装置は、特定した使用すべき中継通信経路に基づいて、各通信装置のビームの向きの第1の候補を決定し、さらに、代替通信経路に基づいて、代替通信経路が存在する通信装置について、ビームの向きの第2の候補を決定する(S1004)。なお、制御装置は、1つ以上の通信装置に対して、3つ以上の候補を決定してもよい。制御装置は、さらに、例えば、代替通信経路におけるビームの方向が一意に定まるか否か、及び、その方向が一意に定まらない通信装置について基地局装置からその通信装置に達するまでのホップ数に基づいて、使用中のビームにおいて基地局装置からの無線信号を検出しなくなった際に、ビームの方向を切り替えるまでの待機時間(インターバル値)を決定する(S1005)。そして、制御装置は、各通信装置に対して個別に決定したビーム方向の候補とインターバル値とを、それらの通信装置へ通知する(S1006)。
【0064】
続いて、制御装置が、各通信装置に対して個別に決定したビーム方向の候補とインターバル値とを決定した後に、無線通信システムにおいて実行される処理の流れの例について、
図11を用いて説明する。なお、ここでは、
図1のシステムにおいて、制御装置121が、
図6(A)のような中継通信経路と
図6(B)~
図6(G)のような代替通信経路に基づいて、通信装置111~通信装置116に対するビーム方向の候補とインターバル値とを決定したものとする。
【0065】
制御装置121は、通信装置111に対して、ビームの方向の第1の候補として基地局装置101の方向を示す情報を通知する(S1101)。なお、制御装置121は、通信装置111が使用すべきビームを特定可能な情報を通知すれば足り、例えば、結果としてビームが基地局装置101の方向に向くような、ビームIDを通信装置111に通知しうる。すなわち、通信装置111は、自装置から見てどの方向に基地局装置101が存在するかを知っている必要はない。他の通信装置についても同様である。なお、
図1の例では、通信装置111には、ビームの切り替え先は存在しない。すなわち、通信装置111は、基地局装置101からの無線信号を検出することができなくても、ビームの向きを変更しないように動作しうる。このため、制御装置121は、通信装置111に対して、ビームの方向の第2の候補の情報を通知せず、また、インターバル値も通知しない。ビームの切り替えが発生しないため、インターバル値が使用されえないからである。
【0066】
制御装置121は、通信装置112に対して、ビームの方向の第1の候補として通信装置111の方向を、ビームの方向の第2の候補として基地局装置101の方向を示す情報を通知する(S1102)。また、制御装置121は、第1の候補から第2の候補までの切り替えの前に待機するためのインターバル値を「0」とする情報を通知しうる。通信装置112は、基地局装置101からの無線信号が通信装置111から届かなくなった場合に使用される代替通信経路において、常にビームを基地局装置101の方向へ向けることとなるため、ビームの切り替えの際に待機する必要がないからである。なお、通信装置112は、例えば、基地局装置101からの無線信号が通信装置111から届くはずのタイミングにおいて無線信号を検出できなかった場合に、ただちにビームの向きを基地局装置101の方向へと切り替える。ただし、これは一例であり、通信装置112は、基地局装置101からの無線信号が受信されるべき機会において、連続して所定回数だけ無線信号を検出しなかった場合に、ビームの方向を切り替えるようにしてもよい。他の通信装置においても、基地局装置101からの無線信号が受信されるべき機会において、連続して所定回数だけ無線信号を検出しなかった場合に、インターバル値に対応する期間だけ待機してから、ビームの方向を変更するようにしてもよい。
【0067】
制御装置121は、通信装置113に対して、ビームの方向の第1の候補として通信装置112の方向を、ビームの方向の第2の候補として基地局装置101の方向を示す情報を通知する(S1103)。また、制御装置121は、第1の候補から第2の候補までの切り替えの前に待機するためのインターバル値を「2Δx」とする情報を通知しうる。ここで、このインターバル値(2Δx)は、例えば、代替通信経路においてビームが向けられるべき方向が一意に定まらず、かつ、初期的な中継通信経路において基地局装置101からのホップ数が3ホップ目の通信装置に対して設定される値でありうる。通信装置113は、代替通信経路の一部においてビームの向きを通信装置112の方向で維持し、別の代替通信経路においてビームの向きを基地局装置101の方向へと変更するため、ビームの方向が一意に定まらない。このため、通信装置112には、非ゼロのインターバル値「2Δx」が通知される。なお、初期的な中継通信経路において基地局装置101からのホップ数がnホップ目の通信装置に対して、インターバル値(n-1)×Δxが設定される。なお、ここでは、基地局装置101からのホップ数で決定されたインターバル値として「2Δx」が通知される例を示しているが、初期的な中継通信経路においてインターバル値が0となる通信装置111からのホップ数を基準として、インターバル値が決定されてもよい。すなわち、通信装置113に対しては、インターバル値「Δx」が通知されてもよい。なお、ホップ数に応じてΔxずつインターバル値が増加する例が示されているが、これに限られない。すなわち、ホップ数の増加に応じて増加するが、比例しない値が、インターバル値として使用されてもよい。
【0068】
制御装置121は、通信装置114に対して、ビームの方向の第1の候補として通信装置111の方向を示す情報を通知する(S1104)。通信装置114には、通信装置111と同様に、ビームの切り替え先は存在しない。すなわち、通信装置114は、基地局装置101からの無線信号を検出することができなくても、ビームの向きを変更しないように動作しうる。このため、制御装置121は、通信装置114に対して、ビームの方向の第2の候補の情報を通知せず、また、インターバル値も通知しない。
【0069】
制御装置121は、上述の処理と同様にして、通信装置115に対して、ビーム方向の第1の候補として通信装置111の方向を、第2の候補として通信装置112の方向を通知し、インターバル値として「Δx」を通知する(S1105)。通信装置115には、初期的な中継通信経路において、基地局装置101から2ホップで到達するからである。また、制御装置121は、通信装置116に対して、ビーム方向の第1の候補として通信装置115の方向を、第2の候補として通信装置112の方向を通知し、インターバル値として、「Δx」よりも長い「2Δx」を通知する(S1106)。通信装置116には、初期的な中継通信経路において、基地局装置101から3ホップで到達するからである。
【0070】
通信装置111~通信装置116は、通知された第1の候補の方向にビームを形成して無線信号を受信するようにする。これにより、基地局装置101と通信装置111~通信装置116とにより、
図6(A)に示すような、初期的な中継通信経路が形成されることとなる。この状況において、基地局装置101が無線信号を送信すると(S1107)、その無線信号は通信装置111において受信され、通信装置111は、その無線信号を増幅して転送する。そして、通信装置112、通信装置114、及び通信装置115は、この無線信号を受信すると、その無線信号を増幅して転送する。そして、通信装置113は通信装置112から、通信装置116は通信装置115から、その無線信号を受信すると、その無線信号を増幅して転送する。このようにして、通信装置111~通信装置116間で無線信号が転送される(S1108)。なお、各通信装置から転送された無線信号は、その通信装置の周囲に存在する端末装置(不図示)において受信され、その無線信号に基づいて、基地局装置101と端末装置との間の通信が行われる。
【0071】
その後、例えば、基地局装置101が無線信号を送信して(S1109)、通信装置111がその無線信号を増幅して転送したにもかかわらず、その無線信号が通信装置112に届かなかったものとする(S1110)。この場合、通信装置113においても、無線信号が届かなくなる。なお、他の通信装置においては、無線信号が届いているものとする(S1111)。このとき、通信装置112は、インターバル値「0」が通知されているため、待機することなく、ビームの向きを、第1の候補(通信装置111の方向)から第2の候補(基地局装置101の方向)へと切り替える(S1112)。一方で、通信装置113は、通知されたインターバル値「2Δx」に従って、その値に対応する期間だけ待機する(S1113)。この場合、基地局装置101から無線信号が送信されると(S1114)、通信装置112は、向きを変更したビームを用いて、この無線信号を受信することができる(S1115)。これにより、通信装置113は、ビームの向きを変更することなく、無線信号を受信し、その無線信号を増幅して転送することができるようになる。一方で、他の通信装置は、そのまま無線信号を受信し、その無線信号を増幅して転送することができる(S1116)。
【0072】
なお、例えば、通信装置112は、定期的に通信装置111からの無線信号が届いているか否かを測定し、通信装置111との間の無線リンクが使用可能状態に戻ったことに応じて、ビームの向きを再び通信装置111の方向へと切り替えてもよい。これにより、例えばコストの観点で優れた中継通信経路を優先して使用することが可能となる。また、通信装置112は、基地局装置101の方向にビームを向けている間に無線信号を受信できなくなった場合に、通信装置111の方向にビームの向きを戻すようにしてもよい。なお、通信装置112は、上述のインターバル値に従って待機時間なく、ビームの向きを、基地局装置101の方向から通信装置111の方向に戻してもよい。なお、ビームの向きを戻す際のインターバル値が別個に用意されてもよい。また、通信装置112は、基地局装置101の方向にビームを向けている間に無線信号を受信できなくなった場合、無線信号の中継を停止してもよい。この場合、制御装置121から、ビームの設定の情報を再度受信するまで、ビームの向きを通信装置111の方向に向け、又は、無線信号の中継を停止するようにしてもよい。他の通信装置についても同様である。なお、各通信装置は、通信中(上述の中継通信経路の設定の完了後の無線信号の増幅および転送の開始後)に、基地局装置101から送信された無線信号の無線品質を測定し、制御装置121へ通知しうる。なお、各通信装置は、形成可能な複数のビームのそれぞれを用いて、基地局装置101又は他の通信装置から届く無線信号を測定しうる。すなわち、中継通信経路や代替通信経路において用いられる方向のビームのみでなく、通信に使用しない方向のビームでの測定をも行うようにしうる。そして、制御装置121は、中継通信経路や代替通信経路の再設定と、それらの経路に基づく各通信装置におけるビームの設定を行いうる。各通信装置は、制御装置121からビームの設定の情報を再度受信すると、自装置内の設定を更新し、その更新の結果として必要となった場合に、ビームの向きを変更しうる。
【0073】
以上のようにして、無線レピータを用いた中継通信システムにおいて、中継通信経路と代替通信経路とを効率的に切り替えながら、中継通信を維持及び運用することが可能となる。よって、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「レジリエントなインフラを整備し、持続可能な産業化を推進するとともに、イノベーションの拡大を図る」に貢献することが可能となる。
【0074】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。