(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111708
(43)【公開日】2024-08-19
(54)【発明の名称】乗り物用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/64 20060101AFI20240809BHJP
B60N 2/68 20060101ALI20240809BHJP
A47C 7/40 20060101ALI20240809BHJP
【FI】
B60N2/64
B60N2/68
A47C7/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023016374
(22)【出願日】2023-02-06
(71)【出願人】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【弁理士】
【氏名又は名称】福士 智恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100205501
【弁理士】
【氏名又は名称】角渕 由英
(72)【発明者】
【氏名】和田 仁明
【テーマコード(参考)】
3B084
3B087
【Fターム(参考)】
3B084EC01
3B087DB02
3B087DB04
3B087DB10
(57)【要約】
【課題】必要な強度を確保しつつ、パッド材の損傷を抑制することが可能なバックフレームを備えた乗り物用シートを提供する。
【解決手段】車両用シートSは、バックフレーム10を備え、バックフレーム10は、左右のサイドフレーム11と、左右のサイドフレーム11の上側に配置されて、左右のサイドフレーム11を連結する上部フレーム12と、を備えている。上部フレーム12は、後方に開口を有する断面略コ字形状を有するコ字形状部1211と、コ字形状部1211の開口側の端部から後方に延びる上側カール部1212と、下側カール部1213と、を有し、上側カール部1212の先端部1212a及び下側カール部1213の先端部1213aは、前方に向かうように巻き込まれている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バックフレームを備える乗り物用シートであって、
前記バックフレームは、左右のサイドフレームと、該左右のサイドフレームの上側に配置されて、前記左右のサイドフレームを連結する上部フレームと、を備え、
前記上部フレームは、後方に開口を有する断面略U字形状を有するU字形状部と、該U字形状部の開口側の端部から後方に延びる一対のカール部と、を有し、
前記一対のカール部の先端は、前方に向かうように巻き込まれていることを特徴とする乗り物用シート。
【請求項2】
前記上部フレームは、シート幅方向の中央に位置し、シート幅方向に延びる中央部と、該中央部のシート幅方向の両端から下方に延びて、前記サイドフレームに連結される左右の延長部と、を有し、
前記一対のカール部は、前記中央部及び前記左右の延長部に連続して設けられていることを特徴とする請求項1に記載の乗り物用シート。
【請求項3】
前記一対のカール部は、互いに異なる巻き込み形状を有していることを特徴とする請求項1に記載の乗り物用シート。
【請求項4】
前記バックフレームは、前記左右のサイドフレームの下側に配置されて、前記左右のサイドフレームを連結する下部フレームを備え、
前記バックフレームには、前記左右のサイドフレームと、前記上部フレームと、前記下部フレームと、によって囲まれる中央開口が形成され、
前記一対のカール部の先端は、前記中央開口に向かって巻き込まれていることを特徴とする請求項1に記載の乗り物用シート。
【請求項5】
前記一対のカール部は、前記U字形状部の、前記中央開口に近接する端部に設けられた第一カール部と、前記U字形状部の、前記中央開口から離間する端部に設けられた第二カール部と、を有し、
前記第一カール部の前記上部フレームが延びる方向に直交する方向の幅は、前記第二カール部の前記上部フレームが延びる方向に直交する方向の幅よりも大きいことを特徴とする請求項4に記載の乗り物用シート。
【請求項6】
前記第一カール部の前記幅は、前記上部フレームが延びる方向に沿って連続的に変化することを特徴とする請求項5に記載の乗り物用シート。
【請求項7】
前記第一カール部の前記幅は、前記上部フレームが前記サイドフレームと連結する位置に向かって大きくなるように連続的に変化することを特徴とする請求項6に記載の乗り物用シート。
【請求項8】
前記U字形状部は、該U字形状部の前側において、平坦な前板部を有し、
前記一対のカール部の少なくとも一方は、前記上部フレームの後側に位置おいて、平坦な後板部を有し、
前記前板部と前記後板部は、互いに平行に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の乗り物用シート。
【請求項9】
前記サイドフレームは、平坦な後壁部を有し、
前記後板部と前記後壁部とは、シート前後方向において重なり合っていることを特徴とする請求項8に記載の乗り物用シート。
【請求項10】
前記バックフレームを備えるシートフレームと、該シートフレームに載置されるパッド材と、該パッド材を被覆する表皮材と、を備えることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の乗り物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗り物用シートに係り、特に、バックフレームを備えた乗り物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バックフレーム及びクッションフレームを備えるシートフレームと、シートフレームに載置されるパッド材と、パッド材を被覆する表皮材と、を主な構成とする乗り物用シートが知られている。バックフレームは、着座者の背部を支える支持面としての役割を有するシートバックの骨格を形成している。そのため、バックフレームは、シートバックの骨格として求められる強度を有している必要がある。
【0003】
特許文献1には、ヘッドレストと、ヘッドレストを装着するヘッドレストホルダーが取り付けられたバックフレームが記載されている。バックフレームは、シートバックの骨格を形成するとともに、ヘッドレストを支持するために必要な強度が求められる。特許文献1において、バックフレームの上部背面に設けられたカール部によって、バックフレームの強度の向上が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されたバックフレームは、カール部が設けられたことによって、ヘッドレストを支持するために必要な強度を確保することができる。しかしながら、カール部の後方には、垂直に屈曲する屈曲部が設けられており、パッド材と屈曲部が当接する箇所において、パッド材が損傷してしまう虞があった。より詳細には、バックフレームに載置されるパッド材は、特に屈曲部と当接する箇所において、局部的に発生する圧縮応力の影響を受けることによって劣化し、他の箇所と比べて損傷の程度が大きくなる虞があった。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、必要な強度を確保しつつ、パッド材の損傷を抑制することが可能なバックフレームを備えた乗り物用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は、本発明の乗り物用シートによれば、バックフレームを備える乗り物用シートであって、前記バックフレームは、左右のサイドフレームと、該左右のサイドフレームの上側に配置されて、前記左右のサイドフレームを連結する上部フレームと、を備え、前記上部フレームは、後方に開口を有する断面略U字形状を有するU字形状部と、該U字形状部の開口側の端部から後方に延びる一対のカール部と、を有し、前記一対のカール部の先端は、前方に向かうように巻き込まれていることにより解決される。
【0008】
上記構成によれば、乗り物用シートのバックフレームは、U字形状部の端部から後方に延びる一対のカール部を有している。そのため、カール部によってバックフレームに必要な強度を確保することができる。また、バックフレームは、パッド材と当接する位置において、緩やかに湾曲するカール部を有している。そのため、局部的な圧縮応力が低減され、パッド材の損傷を抑制することが可能となる。
【0009】
また、前記上部フレームは、シート幅方向の中央に位置し、シート幅方向に延びる中央部と、該中央部のシート幅方向の両端から下方に延びて、前記サイドフレームに連結される左右の延長部と、を有し、前記一対のカール部は、前記中央部及び前記左右の延長部に連続して設けられているとよい。
上記構成によれば、カール部は、中央部と左右の延長部に連続して設けられているため、バックフレームの上側部分の全体にわたって必要な強度を確保することができるとともに、パッド材の損傷を抑制することが可能となる。
【0010】
また、前記バックフレームは、前記左右のサイドフレームの下側に配置されて、前記左右のサイドフレームを連結する下部フレームを備え、前記バックフレームには、前記左右のサイドフレームと、前記上部フレームと、前記下部フレームと、によって囲まれる中央開口が形成され、前記一対のカール部の先端は、前記中央開口に向かって巻き込まれているとよい。
上記構成によれば、一対のカール部が中央開口に向かって巻き込まれているため、カール部を設けることによってバックフレームが大型化することを抑制することが可能となる。また、一対のカール部の両方が中央開口に向かって巻き込まれているため、互いに反対の方向に向かって巻き込まれている場合と比べてカール部の形成に要する作業負担が軽減されて、バックフレームの製造コストの低減を図ることが可能となる。
【0011】
また、前記一対のカール部は、互いに異なる巻き込み形状を有しているとよい。
上記構成によれば、カール部の巻き込み形状を異ならせることによって、バックフレームの強度の向上効果と、パッド材の損傷の抑制効果と、バックフレームの軽量化効果の両立を図ることが可能となる。
【0012】
また、前記一対のカール部は、前記U字形状部の、前記中央開口に近接する端部に設けられた第一カール部と、前記U字形状部の、前記中央開口から離間する端部に設けられた第二カール部と、を有し、前記一方のカール部の前記上部フレームが延びる方向に直交する方向の幅は、前記他方のカール部の前記上部フレームが延びる方向に直交する方向の幅よりも大きいとよい。
上記構成によれば、バックフレームの強度の向上効果と、パッド材の損傷の抑制効果の両立を図ることが可能となる。
【0013】
また、前記第一カール部の前記幅は、前記上部フレームが延びる方向に沿って連続的に変化するとよい。
上記構成によれば、カール部の巻き込み形状が連続的に変化する。そのため、巻き込み形状が不連続に変化する場合において不連続点に脆弱部が形成されてしまうことを抑制することが可能となる。
【0014】
また、前記第一カール部の前記幅は、前記上部フレームが前記サイドフレームと連結する位置に向かって大きくなるように連続的に変化するとよい。
上記構成によれば、上部フレームとサイドフレームの連結部において、上部フレームとサイドフレームの連結強度の向上を図ることが可能となる。
【0015】
また、前記U字形状部は、該U字形状部の前側において、平坦な前板部を有し、前記一対のカール部の少なくとも一方は、前記上部フレームの後側において、平坦な後板部を有し、前記前板部と前記後板部は、互いに平行に配置されているとよい。
上記構成によれば、バックフレームの強度の向上と、製造コストの抑制を図ることが可能となる。
【0016】
また、前記サイドフレームは、平坦な後壁部を有し、前記後板部と前記後壁部は、シート前後方向において重なり合っているとよい。
上記構成によれば、上部フレームとサイドフレームとの連結部におけるバックフレームの強度の向上を図ることが可能となる。
【0017】
また、前記乗り物用シートは、前記バックフレームを備えるシートフレームと、該シートフレームに載置されるパッド材と、該パッド材を被覆する表皮材と、を備えるとよい。
上記構成によれば、必要な強度を確保しつつ、パッド材の損傷を抑制することが可能なバックフレームを備えた乗り物用シートを提供することが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の乗り物用シートによれば、バックフレームは、U字形状部の端部から後方に延びる一対のカール部を有している。そのため、必要な強度を確保しつつ、パッド材の損傷を抑制することが可能となる。
また、バックフレームの上側部分の全体にわたって必要な強度を確保することができるとともに、パッド材の損傷を抑制することが可能となる。
また、バックフレームが大型化を抑制するとともに、製造コストの低減を図ることが可能となる。
また、バックフレームの強度の向上効果と、パッド材の損傷の抑制効果と、バックフレームの軽量化効果の両立を図ることが可能となる。
また、バックフレームに脆弱部が形成されてしまうことを抑制することが可能となる。
また、上部フレームとサイドフレームの連結部において、上部フレームとサイドフレームの結合強度の向上を図ることが可能となる。
また、バックフレームの強度の向上と、製造コストの抑制を図ることが可能となる。
また、上部フレームとサイドフレームの連結部におけるバックフレームの強度の向上を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図2】シートフレームを斜め前方から見た斜視図である。
【
図4】バックフレームを斜め後方から見た斜視図である。
【
図5】
図3のV-V断面図であり、アッパーフレームの中央部の断面図である。
【
図6】
図3のVI-VI断面図であり、アッパーフレームの延長部の断面図である。
【
図7】
図3のVII-VII断面図であり、アッパーフレームがサイドフレームと連結する位置の近傍におけるアッパーフレームの延長部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態に係る乗り物用シートの構成について図面を参照しながら説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
また、以下の説明中、シート構成部品の材質、形状及び大きさに関する内容は、あくまでも具体例の一つに過ぎず、本発明を限定するものではない。
【0021】
なお、以下では、乗り物用シートの一例として車両に搭載される車両用シートSを挙げ、その構成例について説明することとする。ただし、本発明は、自動車・鉄道など車輪を有する地上走行用乗り物に搭載される車両用シートSに限定されるものではなく、例えば、地上以外を移動する航空機や船舶などに搭載されるシートにも適用され得る。
【0022】
また、以下の説明中、「前後方向」とは、車両用シートSの前後方向であり、車両走行時の進行方向と一致する方向である。また、「シート幅方向」とは、車両用シートSの横幅方向であり、車両用シートSに着座した着座者から見た左右方向と一致する方向である。また、「上下方向」とは、車両用シートSの上下方向であり、車両が水平面を走行しているときには鉛直方向と一致する方向である。また、単に「外側」という場合は、車両用シートS単体の中心から外側に向かう方向において外側に近い方を指し、「内側」という場合は車両用シートS単体の外側から中心に向かう方向において中心に近い方を意味する。
【0023】
<車両用シートS>
本実施形態に係る車両用シートSの基本構成について、
図1を参照して説明する。
図1は、車両用シートSの斜視図である。
図1において、車両用シートSの一部については、図示の都合上、表皮材Tを外した構成で図示している。
【0024】
車両用シートSは、車体フロアの上に載置され、車両の着座者が着座するシートである。本実施形態において、車両用シートSは、車両の前席に相当するフロントシートとして利用される。ただし、これに限定されるものではなく、車両用シートSは、後部座席のシートとしても利用可能であり、また、前後方向に三列のシートを備える車両において二列目のミドルシートや三列目のリアシートとしても利用可能である。
【0025】
車両用シートSは、
図1に示すように、シートバック1と、シートクッション2と、ヘッドレスト3と、を主な構成として有している。また、車両用シートSは、車体フロアに対してシート本体を前後方向に移動可能に支持するスライドレール4と、シートクッション2に対してシートバック1を回動可能に連結するリクライニング機構5(
図2を参照)と、をさらに備えている。
【0026】
シートバック1は、着座者の背部を支える背もたれ部分となる。シートバック1は、該シートバック1の骨格を構成するシートバックフレーム10(
図2を参照)にパッド材Pを載置し、さらにパッド材Pを表皮材Tで被覆することで構成されている。シートバックフレーム10については、後述する。
【0027】
シートクッション2は、着座者の臀部を支える着座部分となる。シートクッション2は、該シートクッション2の骨格を構成するシートクッションフレーム20(
図2を参照)にパッド材Pを載置し、さらにパッド材Pを表皮材Tで被覆することで構成されている。
【0028】
ヘッドレスト3は、着座者の頭部を支えるように、シートバック1の上部に取り付けられている。ヘッドレスト3の内部には、ヘッドレスト3の骨格を形成するとともに、シートバックフレーム10に固定されるヘッドレストフレーム(不図示)が設けられている。
【0029】
車両用シートSの下部には、スライドレール4が設置されている。換言すると、車両用シートSは、スライドレール4を介して、前後方向にスライド移動可能な状態で車体フロアに取り付けられる。
スライドレール4は、公知の構造(一般的なスライドレール機構の構造)である。詳細には、スライドレール4は、車体フロアに固定されるロアレールと、ロアレールに対してスライド移動可能なアッパーレールと、を有している。
【0030】
リクライニング機構5は、シートクッション2に対して、シートバック1を回動可能に連結している。また、リクライニング機構5は、シートバック1を、シートクッション2に対して所定の角度で傾斜した状態にロックすることができる。そして、リクライニング機構5は、そのロックを解除することによりシートバック1を前方又は後方に倒伏することができる。
【0031】
<シートフレームF>
次に、車両用シートSの中に設けられて、車両用シートSの骨格を形成するシートフレームFについて説明する。
図2は、シートフレームFを斜め前方から見た斜視図である。
図3は、シートフレームFの正面図である。
図2及び
図3に示すように、シートフレームFは、シートバックフレーム10と、シートクッションフレーム20と、を有している。上述したように、シートバックフレーム10及びシートクッションフレーム20は、それぞれシートバック1及びシートクッション2の骨格を構成する。
【0032】
<<シートクッションフレーム20>>
シートクッションフレーム20は、上面視において方形枠状の外形形状を有している。シートクッションフレーム20は、クッションサイドフレーム21と、前方連結フレーム(不図示)と、パンフレーム22と、後方連結フレーム24と、を主な構成として有している。
【0033】
左右のクッションサイドフレーム21は、シート幅方向に互いに離間して配設されており、前後方向に延在している。クッションサイドフレーム21の前端には、前方連結フレームとパンフレーム22が配設されて、左右のクッションサイドフレーム21を連結している。一方、クッションサイドフレーム21の後方には、後方連結フレーム24が配設されて、左右のクッションサイドフレーム21を連結している。なお、
図2で示されていないが、パンフレーム22と、後方連結フレーム24の間には、受圧部材が取り付けられている。受圧部材は、着座者が着座した際の荷重を受け止めて、着座者の臀部を下方から支持する。
【0034】
<<シートバックフレーム10>>
シートバックフレーム10は、正面視において方形枠状の外形形状を有している。シートバックフレーム10は、一対のバックサイドフレーム11と、上部フレーム12と、下部フレーム13と、を主な構成として有している。また、シートバックフレーム10には、左右のバックサイドフレーム11と、上部フレーム12と、下部フレーム13と、によって囲まれる開口領域Rが形成されている。開口領域Rは、本発明の中央開口に相当する。
【0035】
バックサイドフレーム11は、シートバックフレーム10の左右に1つずつ配置されている。バックサイドフレーム11は、上下方向に延びている。
バックサイドフレーム11は、板状部材をプレス加工することによって形成されており、前板部11aと、側板部11bと、後板部11cと、を有している。前板部11a、側板部11b、及び後板部11cは、平坦な面を有しており、後述する上部フレーム12の下方に位置する延長部122と連結部11dにおいて重なり合うように連結する。
【0036】
上部フレーム12及び下部フレーム13は、一対のバックサイドフレーム11の間に配置されている。上部フレーム12及び下部フレーム13は、それぞれバックサイドフレーム11の上端及び下端を連結している。上部フレーム12及び下部フレーム13は、板状部材をプレス加工することによって形成されている。
【0037】
上部フレーム12は、シート幅方向の中央に位置し、シート幅方向に延びる中央部121と、中央部121の両端から斜め下方に延びて、バックサイドフレーム11に連結される左右の延長部122と、を有している。中央部121には、図示しないヘッドレストフレームが取り付けられる。中央部121及び延長部122は、着座者の頭部を支持するとともに、シートバック1の骨格を構成するために必要な強度を有する必要がある。
【0038】
図5は、
図3のV-V断面図である。
図5に示すように、上部フレーム12の中央部121は、後方に開口を有する断面略コ字形状の中央コ字形状部1211と、中央コ字形状部1211から後方に延びる一対のカール部1210(上側カール部1212、下側カール部1213)と、を有している。
中央コ字形状部1211は、前側に位置する中央前板部1211aと、上側に位置する上板部1211bと、下側に位置する下板部1211cと、を有している。中央前板部1211aは、平坦面を有しているが、これに限定されない。中央前板部1211aは、前方又は後方に突出する湾曲面を有していてもよい。中央前板部1211aが前方に突出する湾曲面を有している場合、中央部121は、断面略U字形状を有することとなる。換言すると、断面略U字形状は、開口部と反対側の端部が平坦面を有する場合を含む形状であることを意味することとする。中央コ字形状部1211は、本発明のU字形状部に相当し、中央前板部1211aは、本発明の前板部に相当する。
また、
図5に示すように、上板部1211bの前後方向の長さL1は、下板部1211cの前後方向の長さL2よりも長くなるように形成されている。
【0039】
上側カール部1212は、中央コ字形状部1211の開口側の端部であって、開口領域Rから離間する上板後端部1211dから後方に延びている。また、下側カール部1213は、中央コ字形状部1211の開口側の端部であって、開口領域Rに近接する下板後端部1211eから後方に延びている。上側カール部1212及び下側カール部1213は、板状部材からなる上部フレーム12の端部に対して、カール曲げ加工を施すことによって形成されている。カール曲げ加工とは、緩やかに湾曲する湾曲面を有する金型を用いて施されるプレス加工である。
【0040】
上側カール部1212は、上板後端部1211dから後方に延びるとともに下方に向かって湾曲する。そして、上側カール部1212の先端部1212aは、前方に向かうように巻き込まれている。同様に、下側カール部1213は、下板後端部1211eから後方に延びるとともに下方に向かって湾曲する。そして、下側カール部1213の先端部1213aは、前方に向かうように巻き込まれている。換言すると、上側カール部1212の先端部1212aは、上側カール部1212の後端よりも前方に位置している。同様に、下側カール部1213の先端部1213aは、下側カール部1213の後端よりも前方に位置している。このように、中央部121の後端に上側カール部1212及び下側カール部1213を形成することによって、中央部121は、上部フレーム12に求められる強度を確保することが可能となる。また、上側カール部1212及び下側カール部1213は、パッド材Pと当接する位置において、緩やかに湾曲するカール部(巻き込み形状面)を有している。そのため、パッド材Pに対する局部的な圧縮応力が低減され、パッド材Pの損傷を抑制することが可能となる。上側カール部1212は、本発明の第二カール部に相当し、下側カール部1213は、本発明の第一カール部に相当する。
【0041】
図6及び
図7は、それぞれ
図3のVI-VI断面図、VII-VII断面図である。
図6に示すように、延長部122は、後方に開口を有する断面略コ字形状の延長コ字形状部1221と、延長コ字形状部1221の後方に延びる一対のカール部1220(外側カール部1222、内側カール部1223)と、を有している。
延長コ字形状部1221は、前側に位置する延長前板部1221aと、シート幅方向の外側(左側)に位置する外板部1221bと、内側(右側)に位置する内板部1221cと、を有している。延長前板部1221aは、平坦面を有しているが、これに限定されない。延長前板部1221aは、前方又は後方に突出する湾曲面を有していてもよい。延長コ字形状部1221は、本発明のU字形状部に相当し、延長前板部1221aは、本発明の前板部に相当する。
【0042】
外側カール部1222は、延長コ字形状部1221の開口側の端部であって、開口領域Rから離間する外板後端部1221dから後方に延びている。また、内側カール部1223は、延長コ字形状部1221の開口側の端部であって、開口領域Rに近接する内板後端部1221eから後方に延びている。外側カール部1222及び内側カール部1223は、板状部材からなる上部フレーム12の端部に対して、カール曲げ加工を施すことによって形成されている。
【0043】
外側カール部1222は、外板後端部1221dから後方に延びるとともに内側に向かって湾曲する。そして、外側カール部1222の先端部1222aは、前方に向かうように巻き込まれている。同様に、内側カール部1223は、内板後端部1221eから後方に延びるとともに内側に向かって湾曲し、内側カール部1223の先端部1223aは、前方に向かうように巻き込まれている。換言すると、外側カール部1222の先端部1222aは、外側カール部1222の後端よりも前方に位置している。同様に、内側カール部1223の先端部1223aは、内側カール部1223の後端よりも前方に位置している。このように、延長部122の後端に外側カール部1222及び内側カール部1223を形成することによって、延長部122は、上部フレーム12に求められる強度を確保することが可能となる。また、外側カール部1222及び内側カール部1223は、パッド材Pと当接する位置において、緩やかに湾曲するカール部(巻き込み面)を有している。そのため、パッド材Pに対する局部的な圧縮応力が低減され、パッド材Pの損傷を抑制することが可能となる。外側カール部1222は、本発明の第二カール部に相当し、内側カール部1223は、本発明の第一カール部に相当する。
【0044】
また、
図6及び
図7に示すように、外側カール部1222と内側カール部1223とは、互いに異なる巻き込み形状を有している。より詳細には、外側カール部1222は、半円形状に形成されているが、内側カール部1223は、一部に平坦面からなる後板部1223bを有している。そして、内側カール部1223の、上部フレーム12が延びる方向に直交する方向(
図6及び
図7における左右方向)の幅W2は、外側カール部1222の、上部フレーム12が延びる方向に直交する方向の幅W1よりも大きい。このように、外側カール部1222の幅W1を小さく形成することによって、延長部122の強度を高めることが可能となる。また内側カール部1223の幅W2を大きく形成し、カール部を緩やかに湾曲させることによって、パッド材Pの損傷の抑制効果を高めることが可能となる。これにより、上部フレーム12の強度の向上効果と、パッド材Pの損傷の抑制効果の両立を図ることが可能となる。
【0045】
また、
図3及び
図4に示すように、上部フレーム12は、上部フレーム12の下端において、バックサイドフレーム11の連結部11dと連結している。そして、
図3、
図6、及び
図7に示すように、内側カール部1223の幅W2は、連結部11dに向かうにつれて連続的に大きくなるように変化している。これによって、内側カール部1223の幅W2が不連続的に変化すると、不連続点に脆弱部が形成されてしまう場合があるが、幅W2が連続的に変化することにより脆弱部が形成されてしまうことを抑制することができる。
【0046】
また、
図7に示すように、延長部122の延長前板部1221aと内側カール部1223の後板部1223bは、互いに平行に配置されている。そのため、延長部122の強度の向上と、製造コストの抑制を図ることが可能となる。
また、後板部1223bとバックサイドフレーム11の後板部11cは、シート前後方向に重なり合っており、重なった部分で溶接されている。そのため、上部フレーム12とバックサイドフレーム11の連結部11dにおけるシートバックフレーム10の強度の向上を図ることが可能となる。バックサイドフレーム11の後板部11cは、本発明の後壁部に相当する。
【0047】
また、
図4に示すように、上側カール部1212及び外側カール部1222は、中央部121と左右の延長部122に連続して設けられている。そして、下側カール部1213及び内側カール部1223も、中央部121と延長部122に連続して設けられている。このため、上部フレーム全体にわたって必要な強度を確保することができるとともに、パッド材Pの損傷を抑制することが可能となる。
【0048】
また、上部フレーム12の中央部121に設けられた一対のカール部1210と、延長部122に設けられた一対のカール部1220の先端は、開口領域Rの内側に向かって巻き込まれている。具体的には、上側カール部1212の先端部1212a及び下側カール部1213の先端部1213aは、下側に向かって巻き込まれている。一方、外側カール部1222の先端部1222a及び内側カール部1223の先端部1223aは、シートバック1の内側に向かって巻き込まれている。これにより、カール部を設けることによってシートバックフレーム10が大型化することを抑制することが可能となる。また、一対のカール部1210、1220の両方が開口領域Rに向かって巻き込まれているため、カール曲げ加工を繰り返し行うだけで容易に一対のカール部1210、1220を形成することができる。そのため、互いに反対の方向に向かって巻き込まれている場合と比較して、カール曲げ加工に係る作業負担が軽減されて、シートバックフレーム10の製造コストを低減することが可能となる。
【0049】
<変形例>
以上、本発明の一実施形態に係る車両用シートSの構成について説明してきたが、上述した実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
上述した実施形態において、カール部は、上部フレーム12に形成されていることとして説明したが、これに限定されない。カール部は、左右のバックサイドフレーム11に形成されていてもよい。この場合であっても、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0050】
また、上述した実施形態において、上部フレーム12は、前側において平坦面を有していることとして説明したが、これに限定されない。上部フレーム12は、前側において湾曲面を有していてもよい。上部フレーム12は、その前側に位置する板状部と、上部フレーム12が延びる方向とは直交する方向の端部から後方に延びる一対の板状部を有していればよい。すなわち、略U字形状とは、開口端とは反対の端部が平坦である場合を含む形状であることを意味することとする。
【0051】
また、上述した実施形態において、カール部は、中央コ字形状部1211及び延長コ字形状部1221の両端部から後方に延びることとして説明したが、これに限定されない。カール部は、中央コ字形状部1211及び延長コ字形状部1221の少なくとも一方の端部から後方に延びていればよい。
【0052】
また、上述した実施形態において、カール部の先端は前方に向かうように巻き込まれていることとして説明したが、これに限定されない。カール部は、中央コ字形状部1211及び延長コ字形状部1221から後方に延びるようにカール曲げ加工が施されていればよい。
【符号の説明】
【0053】
S 車両用シート(乗り物用シート)
F シートフレーム
T 表皮材
P パッド材
R 開口領域(中央開口)
1 シートバック
2 シートクッション
3 ヘッドレスト
4 スライドレール
5 リクライニング機構
10 シートバックフレーム(バックフレーム)
11 バックサイドフレーム(サイドフレーム)
11a 前板部
11b 側板部
11c 後板部(後壁部)
11d 連結部
12 上部フレーム
121 中央部
1210 カール部
1211 中央コ字形状部(U字形状部)
1211a 中央前板部(前板部)
1211b 上板部
1211c 下板部
1211d 上板後端部
1211e 下板後端部
1212 上側カール部(カール部、第二カール部)
1212a 先端部
1213 下側カール部(カール部、第一カール部)
1213a 先端部
122 延長部
1220 カール部
1221 延長コ字形状部(U字形状部)
1221a 延長前板部(前面部)
1221b 外板部
1221c 内板部
1221d 外板後端部
1221e 内板後端部
1222 外側カール部(カール部、第二カール部)
1222a 先端部
1223 内側カール部(カール部、第一カール部)
1223a 先端部
1223b 後板部
13 下部フレーム
20 シートクッションフレーム
21 クッションサイドフレーム
22 パンフレーム
24 後方連結フレーム