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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111710
(43)【公開日】2024-08-19
(54)【発明の名称】溶接部材
(51)【国際特許分類】
   B23K 11/14 20060101AFI20240809BHJP
   F01N 13/08 20100101ALI20240809BHJP
【FI】
B23K11/14
F01N13/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023016378
(22)【出願日】2023-02-06
(71)【出願人】
【識別番号】391002498
【氏名又は名称】フタバ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】林 克洋
(72)【発明者】
【氏名】小川 茂
【テーマコード(参考)】
3G004
【Fターム(参考)】
3G004GA06
(57)【要約】
【課題】溶接部材の溶接不良を生じにくくする技術を提供する。
【解決手段】車両に搭載される車載部品が備える本体部材の溶接面に抵抗溶接により取り付けられる溶接部材は、溶接端部と、非溶接端部と、を備える。溶接端部は、溶接面に溶接される端部である。非溶接端部は、溶接端部とは反対側の端部である。非溶接端部は、押圧面と、非押圧面と、を有する。押圧面は、抵抗溶接の際に押圧される面である。押圧面は、押圧が加わる押圧方向に溶接面と対面する。非押圧面は、押圧面以外の面である。溶接部材は、溶接端部から非押圧面まで延びる軸が溶接面に対して傾斜した、又は、当該軸が曲がった形状を有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される車載部品が備える本体部材の溶接面に抵抗溶接により取り付けられる溶接部材であって、
前記溶接面に溶接される溶接端部と、
前記溶接端部とは反対側の非溶接端部と、
を備え、
前記非溶接端部は、前記抵抗溶接の際に押圧され、前記押圧される方向である押圧方向に前記溶接面と対面する押圧面と、前記押圧面以外の非押圧面と、を有し、
当該溶接部材は、前記溶接端部から前記非押圧面まで延びる軸が前記溶接面に対して傾斜した、又は、前記軸が曲がった形状を有する、溶接部材。
【請求項2】
請求項1に記載の溶接部材であって、
前記非押圧面は、前記押圧方向における前記押圧面と前記溶接端部との間に位置する、溶接部材。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の溶接部材であって、
前記車載部品は、排気ガスを通過させるための排気系部品である、溶接部材。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の溶接部材であって、
前記抵抗溶接は、プロジェクション溶接である、溶接部材。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載の溶接部材であって、
当該溶接部材の前記溶接端部から前記非溶接端部まで広がる外周面には、互いに対面し、前記抵抗溶接の際に当該溶接部材を挟み込んで保持するための少なくとも2つの保持面が形成される、溶接部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車載部品が備える本体部材に抵抗溶接により取り付けられる溶接部材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、リングプロジェクション溶接機に備えた接合用の治具にプロジェクションが形成された排気管と他部材とを装着させ、排気管及び他部材をリングプロジェクション溶接により接合する溶接方法が開示されている。この溶接方法では、接合用の治具によって排気管及び他部材が上下方向から挟み込まれた状態で、加圧及び通電が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-150397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、抵抗溶接によって、本体部材に取り付けられる溶接部材には、様々な形状及び構成のものがあり、用途及び使用環境などによって、選ばれる溶接部材は異なる。特許文献1の溶接方法では、溶接部材の形状及び構成によって、溶接部材に均一な圧力を加えにくかったり、溶接部材に均一な電流が流れにくかったりするため、本体部材に対する溶接部材の溶接不良が生じる可能性があるという問題があった。
【0005】
本開示の一局面は、溶接部材の溶接不良を生じにくくする技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、車両に搭載される車載部品が備える本体部材の溶接面に抵抗溶接により取り付けられる溶接部材であって、溶接端部と、非溶接端部と、を備える。溶接端部は、溶接面に溶接される端部である。非溶接端部は、溶接端部とは反対側の端部である。非溶接端部は、押圧面と、非押圧面と、を有する。押圧面は、抵抗溶接の際に押圧される面である。押圧面は、押圧が加わる押圧方向に溶接面と対面する。非押圧面は、押圧面以外の面である。溶接部材は、溶接端部から非押圧面まで延びる軸が溶接面に対して傾斜した、又は、当該軸が曲がった形状を有する。
【0007】
このような構成では、溶接部材が押圧面を有するため、軸が溶接面から押圧方向に真っ直ぐ延びない形状の溶接部材であっても、抵抗溶接の際に、溶接部材に均一な圧力を加えやすい。したがって、本体部材に対する溶接部材の溶接不良を生じにくくすることができる。
【0008】
本開示の一態様では、非押圧面は、押圧方向における押圧面と溶接端部との間に位置してもよい。このような構成では、押圧方向における溶接部材の押圧面に当接する固定台の当接面と非押圧面との間に、空間が形成される。このため、溶接抵抗の際に、例えば、上述した固定具の当接面及び非押圧面と当接する受け治具を当該空間に収容することで、溶接部材が安定して保持されるため、押圧面及び受け治具を介して更に溶接部材に圧力を均一に加えやすくすることができる。
【0009】
本開示の一態様では、車載部品は、排気ガスを通過させるための排気系部品であってもよい。このような構成によれば、排気系部品における溶接部材の溶接不良を生じにくくすることができる。
【0010】
本開示の一態様では、抵抗溶接は、プロジェクション溶接であってもよい。このような構成によれば、溶接部材又は本体部材に設けられる1つ又は複数のプロジェクションに均一に圧力を加えやすくすることができる。その結果、車載部品における溶接部材の溶接不良を生じにくくすることができる。
【0011】
本開示の一態様では、当該溶接部材の溶接端部から非溶接端部まで広がる外周面には、互いに対面し、抵抗溶接の際に当該溶接部材を挟み込んで保持するための少なくとも2つの保持面が形成されてもよい。このような構成によれば、抵抗溶接の際に、例えば2つの保持面を挟み込むことによって、溶接部材を安定して保持することができるため、押圧面を介して溶接部材に圧力を均一に加えやすくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】車載部品の一部を模式的に示す図である。
図2】ワークを示す斜視図である。
図3】ワークを示す底面図である。
図4】本体部材及びワークのリングプロジェクション溶接前の状態と、リングプロジェクション溶接と、を説明するための模式的な断面図である。
図5】ワークの外周面から第2電極に電流が均一に流れる様子を模式的に示す図である。
図6】変形例としてクランプにより保持されたワーク及び本体部材のリングプロジェクション溶接前の状態を模式的に示す断面図である。
図7】ワークがクランプにより保持された状態を上方から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の例示的な実施形態について図面を参照しながら説明する。
[1.車載部品の構成]
図1に示す車載部品100は、車両に搭載されて用いられる。本実施形態の車載部品100は、排気系部品である。排気系部品は、車両に搭載された内燃機関からの排気ガスを通過させるための流路の少なくとも一部を構成する部品である。排気系部品としては、例えば、エキゾーストマニホールド、排気管、触媒コンバータ、マフラ等が挙げられる。
【0014】
図1に示すように、車載部品100は、本体部材1と、ワーク2と、を備える。車載部品100は、本体部材1及びワーク2が、抵抗溶接によって溶接された部品である。抵抗溶接では、本体部材1及びワーク2を加圧しつつ、電気を流すことによって、他の部位よりも電流の断面積の小さい加圧部分が発熱して溶融することで溶接が行われる。詳細は後述するが、本実施形態では、抵抗溶接の一種であるリングプロジェクション溶接により、ワーク2が本体部材1に溶接される。なお、図1図4及び図6において、本体部材1は、一部のみが模式的に示されている。
【0015】
<本体部材>
本体部材1は、排気ガスを通過させるための流路を形成する。本体部材1は、金属製であり、板状の部材により構成されている。例えば、板状の金属部材を巻いて筒状の本体部材1が形成されている。本体部材1は、溶接面11と、非溶接面12と、挿入孔13と、を有する。
【0016】
溶接面11は、ワーク2が溶接される面であり、本体部材1における外面、すなわち流路とは反対側の面である。本実施形態では、溶接面11におけるワーク2が溶接される領域は、平面状である。
非溶接面12は、溶接面11とは反対側の面であり、本体部材1における内面である。
【0017】
挿入孔13は、本体部材1に形成された貫通孔であり、溶接面11及び非溶接面12を貫通する。挿入孔13は、本体部材1の外部から本体部材1が形成する流路内に、所定の物3を挿入可能な孔である。
【0018】
<ワーク>
ワーク2は、車載部品100に所定の物3を取り付けるための接合部材である。本実施形態では、ワーク2は、車載部品100に所定の物3としてセンサを取り付けるためのセンサボスである。センサボスは、本体部材1の挿入孔13に挿入されたセンサを保持するように構成された部材である。ワーク2は、本体部材1の溶接面11に取り付けられる。
【0019】
ワーク2は、金属製であり、筒状である。本実施形態では、ワーク2は、後述する溶接端部21から非溶接端部22の非押圧面222まで延びる中心軸Aが曲がった形状を有する。図1図3に示すように、ワーク2は、溶接端部21と、非溶接端部22と、外周面23と、連通路24と、突起部25と、を有する。
【0020】
溶接端部21は、本体部材1の溶接面11に溶接される端部である。溶接端部21の端面は、平面状であり、中心軸Aと略垂直に交わる。
非溶接端部22は、溶接端部21とは反対側の端部である。非溶接端部22は、押圧面221と、非押圧面222と、を有する。
【0021】
押圧面221は、リングプロジェクション溶接の際に押圧される面であり、後述する固定台6と当接する面である。押圧面221は、リングプロジェクション溶接の際に押圧される方向である図4に示す押圧方向に、本体部材1の溶接面11と対面する。本実施形態では、押圧方向は、図4の上下方向であり、換言すると、押圧面221に対し略垂直な方向である。本実施形態では、押圧面221は、平面状であり、本体部材1の溶接面11と平行に広がる。押圧面221は、ワーク2の非溶接端部22における押圧方向の端面である。
【0022】
非押圧面222は、後述する受け治具7と当接する面である。本実施形態では、非押圧面222は、押圧方向における押圧面221と溶接端部21の端面との間に位置する。具体的には、非押圧面222は、平面状であり、本体部材1の溶接面11に対して傾斜を有するように広がる。非押圧面222は、押圧面221から溶接端部21側に向かって延び、中心軸Aと略垂直に交わる。非押圧面222は、ワーク2の非溶接端部22における中心軸A方向の端面である。
【0023】
中心軸Aは、一例として、溶接端部21の中心から非押圧面222の中心まで延びる。本実施形態では、図1に示すように、中心軸Aは、溶接端部21から直線状に延び出して湾曲した後、溶接端部21の端面に対して傾いた状態で非押圧面222まで直線状に延びる。このため、ワーク2は、中心軸Aが曲がった状態で、本体部材1に固定される。また、中心軸Aは、溶接端部21の端面に対して傾いた状態で延びる部分を有するため、ワーク2は、中心軸Aが本体部材1の溶接面11に対し傾斜した状態で、本体部材1に固定されるとも言える。なお、中心軸Aが本体部材1の溶接面11に対し傾斜した状態とは、溶接面11に対して略垂直に延びる線に対して中心軸Aが角度を有することとも言い換えられる。
【0024】
これにより、本体部材1の溶接面11、ワーク2の溶接端部21の端面、及び、ワーク2の非溶接端部22の押圧面221は、それぞれ略平行に配置される。また、ワーク2の非溶接端部22の非押圧面222は、本体部材1の溶接面11、ワーク2の溶接端部21の端面、及び、ワーク2の非溶接端部22の押圧面221に対し、交差した配置となる。
【0025】
外周面23は、溶接端部21から非溶接端部22まで広がる面である。つまり、本実施形態では、溶接端部21の端面、押圧面221及び非押圧面222以外の全ての面を外周面23と称する。ワーク2の溶接端部21近傍には、溶接端部21の端面に対し略垂直に当該溶接端部21から延び出す直線部20が設けられる。直線部20は、外周面23の一部である。本実施形態では、図2及び図3に示すように、外周面23には、押圧面221及び非押圧面222が並ぶ方向、及び、押圧方向に沿って平面状に延びる平面部231が2つ形成されている。2つの平面部231は、互いに対面するように配置される。具体的には、2つの平面部231は、非押圧面222を挟んで、互いに平行に配置される。なお、外周面には、例えば、平面部が2つ以上形成されていてもよいし、平面部が形成されていなくてもよい。
【0026】
連通路24は、ワーク2に形成された貫通孔であり、溶接端部21の端面及び非押圧面222を貫通する。本実施形態では、図1に示すように、連通路24は、溶接端部21から非押圧面222まで直線状に延びており、溶接端部21の端面に対して傾いている。連通路24は、所定の物3の先端部が挿通可能である。本実施形態では、連通路24は、小径部241と、大径部242と、を有する。小径部241は、第1の開口が溶接端部21に位置し、第2の開口が大径部242と連通する。大径部242は、小径部241よりも径が大きい。大径部242は、小径部241と連通しない開口が非押圧面222に位置する。また、所定の物3にはネジ切りが形成されており、大径部242には所定の物3のネジ切りに螺合するネジ切りが形成されていてもよい。
【0027】
図2に示すように、突起部25は、溶接端部21に設けられ、溶接端部21の端面から突出する。本実施形態では、突起部25は、連通路24の溶接端部21側の開口を囲むように、環状に形成される。換言すると、突起部25は、溶接端部21の縁に沿って周回するように設けられる。本実施形態では、突起部25は、周回する方向に直交する断面形状が台形状である。また、本実施形態では、突起部25は、溶接端部21の縁と溶接端部21側の開口との略中央辺りに配置される。
【0028】
なお、突起部の形状及び配置は、本体部材に集中して圧力がかけられるものであれば、他の形状及び他の配置であってもよい。例えば、突起部は、周回する方向に直交する断面形状が、三角形状、四角形状、四角形状の上面の中央に凹みを有するような形状であってもよい。また、例えば、突起部は、溶接端部21の縁寄りに配置、又は、溶接端部21側の開口寄りに配置されてもよい。突起部25には、リングプロジェクション溶接によって、圧力が加わり、かつ、電気が流れる。これにより、突起部25が電流により溶融され、ワーク2が本体部材1に溶接される。
【0029】
[2.車載部品の製造方法]
次に、図4を用いて、車載部品100の製造方法について説明する。具体的には、車載部品100の製造方法に含まれるワーク2の溶接方法について説明する。車載部品100の製造方法は、当接工程と、溶接工程と、を備える。本実施形態の車載部品100の製造方法では、第1電極4と、第2電極5と、固定台6と、受け治具7と、を備える溶接装置を用いたリングプロジェクション溶接により、ワーク2が本体部材1に溶接される。
【0030】
<第1電極及び第2電極>
図4に示すように、第1電極4は、本体部材1の上方に非溶接面12と当接するように配置される。
【0031】
第2電極5は、ワーク2の外周面23における溶接端部21近傍に当接する。具体的には、第2電極5は、ワーク2の直線部20に当接し、図5に示すように、当該直線部20を周回するように配置される。すなわち、ワーク2の直線部20は、第2電極5によって、ワーク2の中心軸Aを中心とする周方向全周が覆われている。
【0032】
本実施形態では、第2電極5は、図5における左方に位置する第1部分5a、及び、図5における右方に位置する第2部分5bを有する。第1部分5a及び第2部分5bは、ワーク2を左右方向から挟み込むように配置される。第1部分5a及び第2部分5bの互いに対面する端面には、ワーク2の外周面23の湾曲に沿った形状の切欠きがそれぞれ形成されている。当該切欠きを対面させ、第1部分5a及び第2部分5bのそれぞれの切欠きの両側の端面を互いに当接させた状態で、第1部分5a及び第2部分5bを突き合わせる。これにより、第1部分5a及び第2部分5bによって、ワーク2の外周面23が周方向全周覆われた状態で挟み込まれる。
【0033】
第1電極4の本体部材1と対向する面と、第2電極5の本体部材1と対向する面は、略平行に延びる。上述した第1電極4と第2電極5との配置により、第1電極4から第2電極5までの距離は、本体部材1の厚さと突起部25の高さとを足した距離と略同じとなる。
【0034】
<固定台>
固定台6は、移動しないように固定され、後述する受け治具7を上方に配置可能な部材である。固定台6の上面61は平面状である。固定台6は、例えばナイロン等の絶縁素材によって絶縁されている。
【0035】
<受け治具>
受け治具7は、上述したワーク2を保持する部材である。本実施形態では、図4に示すように、ワーク2の非溶接端部22の一部を下方から支持するように構成される。具体的には、ワーク2の押圧面221を固定台6の上面61に当接させた状態では、押圧方向における固定台6の上面61とワーク2の非押圧面222との間に、空間が形成される。そして、当該空間に受け治具7が収容され、受け治具7が固定台6の上面61及びワーク2の非押圧面222と当接することで、ワーク2が下方から支持される。受け治具7は、絶縁素材により形成される。絶縁素材としては、例えば、ナイロン、プラスチック、絶縁性の金属等が挙げられる。受け治具7は、底面71と、上面72と、側面73と、挿入部74と、を有する。
【0036】
底面71は、固定台6の上面61と当接し、リングプロジェクション溶接の際に押圧される面である。本実施形態では、底面71は、平面状であり、本体部材1の溶接面11と平行に広がる。
【0037】
上面72は、底面71よりも上方に位置する面であり、ワーク2の非押圧面222と当接する。上面72は、平面状であり、固定台6の上に受け治具7が配置された状態において、固定台6の上面61に対し傾斜を有するように延びる。上面72は、ワーク2の非押圧面222が当接した状態において、中心軸Aと略垂直に交わる。
【0038】
側面73は、底面71から上面72に広がる面である。
挿入部74は、上面72に対し略垂直に、当該上面72から突出する部分である。具体的には、挿入部74は、大径部242と略同一の形状を有し、大径部242に挿入可能である。つまり、挿入部74の外径は、大径部242の内径と略同一であり、挿入部74の中心軸は、ワーク2の連通路24における大径部242に挿入部74が挿入された状態において、大径部242の中心軸と一致する。なお、挿入部74の大径部242への挿入の観点から、挿入部74の外径は、大径部242の内径よりもわずかに小さく形成されていてもよい。
【0039】
大径部242に挿入部74が挿入されると、挿入部74の先端が、大径部242及び小径部241が繋がることにより形成される段部に当接する。これにより、ワーク2の移動が挿入部74によって規制される。その結果、ワーク2が受け治具7によって、安定して保持される。
【0040】
<当接工程>
図4に示すように、当接工程では、ワーク2の溶接端部21に形成された突起部25を本体部材1の溶接面11に当接させる。
【0041】
具体的には、まず、固定台6の上に配置した受け治具7の挿入部74が、ワーク2の連通路24における大径部242に挿入されるように、ワーク2を固定台6及び受け治具7の上に配置する。このとき、ワーク2の押圧面221と固定台6の上面61とが当接し、ワーク2の非押圧面222と受け治具7の上面72とが当接し、挿入部74の先端と大径部242及び小径部241が繋がることにより形成される段部とが当接する。これにより、溶接端部21が上方を向いた状態で、ワーク2が受け治具7によって保持される。
【0042】
次に、第2電極5をワーク2の直線部20に当接するように配置する。具体的には、第1部分5a及び第2部分5bによって、左右方向からワーク2の直線部20を周方向全周覆うように挟み込む。
【0043】
次に、ワーク2の連通路24と本体部材1の挿入孔13とが重なるように、ワーク2の溶接端部21の上方に本体部材1を配置し、ワーク2の溶接端部21に形成された突起部25と本体部材1の溶接面11とを当接させる。
【0044】
そして、本体部材1の上方に第1電極4を配置し、本体部材1の非溶接面12に第1電極4を当接させる。
【0045】
<溶接工程>
溶接工程では、受け治具7に保持されたワーク2及び本体部材1が当接し、本体部材1の非溶接面12に第1電極4が接触し、かつ、ワーク2の直線部20に第2電極5が接触した状態で、リングプロジェクション溶接が行われる。これにより、本体部材1にワーク2が溶接される。
【0046】
具体的には、まず、第1電極4を下方に移動させ、本体部材1をワーク2に押し当てるように、図4に示す矢印Xの方向への圧力を本体部材1及びワーク2に加える。このとき、ワーク2の押圧面221が固定台6の上面61と当接し、ワーク2が受け治具7により安定して保持された状態で、ワーク2の押圧面221及び当該受け治具7の底面71が、押圧方向に沿って、矢印Xの方向とは反対向きの力により押圧される。このため、本実施形態のように、中心軸Aが曲がった形状のワーク2でも、押圧方向に沿ってワーク2に圧力が均一に加わりやすい。すなわち、第1電極4による押圧方向は、本体部材1、第2電極5、受け治具7及び固定台6に対して略垂直であるため、ワーク2に圧力が均一に加わりやすい。
【0047】
上述した本体部材1及びワーク2への加圧と共に、第1電極4と第2電極5との間で通電を行う。これにより、電流は、図4に示す矢印Yのように、第1電極4からワーク2の突起部25及びワーク2の外周面23を介して第2電極5へ流れる。本実施形態では、第2電極5が、ワーク2の直線部20に配置される。このため、本実施形態のように中心軸Aが曲がった形状のワーク2でも、第1電極4から第2電極5までの距離が略同一であるため、図5に示すように、ワーク2の突起部25に電流が均一に流れやすい。
【0048】
[3.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(3a)本実施形態では、ワーク2が押圧面221及び非押圧面222を有し、非押圧面222が、押圧方向における押圧面221と溶接端部21の端面との間に位置する。そして、ワーク2の押圧面221に当接する固定台6の上面61と非押圧面222との間に形成される空間に、受け治具7が収容される。これにより、ワーク2が受け治具7によって保持され、リングプロジェクション溶接の際に、押圧面221及び受け治具7の底面71が押圧方向に押圧される。
【0049】
このため、本実施形態のように、ワーク2の中心軸Aが曲がったり、ワーク2の中心軸Aが本体部材1の溶接面11に対し傾斜したりする場合でも、ワーク2が安定して保持される。換言すると、中心軸Aが本体部材1の溶接面11から押圧方向に真っ直ぐ延びない形状のワーク2であっても、ワーク2が安定して保持される。このため、リングプロジェクション溶接の際に加わる圧力によって、ワーク2の重心が偏りにくい。したがって、ワーク2に圧力を均一に加えやすくすることができる。その結果、本体部材1に対するワーク2の溶接不良を生じにくくすることができる。
【0050】
また、本実施形態では、ワーク2が押圧面221及び非押圧面222を有するため、受け治具7によるワーク2の保持のために非押圧面222を用いることができる。このため、受け治具7は、ワーク2全体を覆わない形状であってもよい。したがって、ワーク2全体を覆う形状の受け治具と比較して、受け治具7の大きさを縮小することができる。また、ワーク2全体を覆う形状の受け治具と比較して、受け治具7の形状の精度が低くても、ワーク2を保持することができる。
【0051】
(3b)本実施形態では、ワーク2の中心軸Aが曲がった(換言すると、ワーク2の中心軸Aが本体部材1の溶接面11に対し傾斜した)状態で、ワーク2が本体部材1に固定される。そして、リングプロジェクション溶接の際に、第1電極4が本体部材1の非溶接面12に配置され、かつ、第2電極5がワーク2の直線部20(すなわち、外周面23における溶接端部21近傍)に配置される。これにより、第1電極4から本体部材1及びワーク2の外周面23を経て第2電極5へ流れる電流の経路の長さ(すなわち、ワーク2における電流の経路の長さ)が、第2電極5がワーク2の非溶接端部22に配置される構成と比較して短くなりやすい。これに対し、第2電極5がワーク2の非溶接端部22に配置される構成では、ワーク2における電流の経路の長さも長くなるため、電流の流れ具合がワーク2の形状による影響を受けやすい。このため、本実施形態のように、中心軸Aが曲がった形状のワーク2の場合には、電流の流れ具合がワーク2全体においてばらつきやすい。
【0052】
一方、本実施形態では、上述したように、中心軸Aが曲がった形状のワーク2の場合でも、ワーク2における電流の経路の長さも短くなるため、ワーク2全体における電流の経路の長さのばらつきを抑制することができる。その結果電流の流れ具合がワーク2全体においてばらつきにくくなる。
【0053】
このため、中心軸Aが曲がった形状のワーク2の場合でも、図5に示すように、リングプロジェクション溶接の際に、ワーク2の突起部25に電流が均一に流れやすい。したがって、本体部材1に対するワーク2の溶接不良を生じにくくすることができる。また、リングプロジェクション溶接によって、ワーク2と本体部材1との間を隙間なく溶接することができる。
【0054】
(3c)本実施形態では、車載部品100が排気系部品であり、ワーク2がセンサを取り付けるためのセンサボスである。このため、排気系部品におけるセンサボスの溶接不良を生じにくくすることができる。
【0055】
(3d)本実施形態では、ワーク2の溶接端部21が上方を向いた状態で、ワーク2が本体部材1に溶接される。これにより、ワーク2の上方に配置された本体部材1を第1電極4によって加圧することで、リングプロジェクション溶接が可能である。このため、リングプロジェクション溶接に用いられる装置の構造が複雑化することを抑制することができる。
【0056】
なお、本実施形態では、ワーク2が溶接部材の一例に相当し、ワーク2の中心軸Aが軸の一例に相当し、2つの平面部231が2つの保持面に相当する。
【0057】
[4.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0058】
(4a)上記実施形態では、ワーク2を本体部材1に溶接する抵抗溶接としてリングプロジェクション溶接を例示したが、ワークを本体部材に溶接する方法はこれに限定されるものではない。例えば、抵抗溶接は、リングプロジェクション溶接以外のプロジェクション溶接であってもよい。当該プロジェクション溶接の場合、ワークは、溶接端部に複数の突起部を有し、当該複数の突起部は、間隔を空けて配置される。そして、複数の突起部に圧力が加わりかつ電流が流れ、複数の突起部が電流により溶融されかつ加圧により潰されることで、ワークが本体部材に溶接される。また、例えば、抵抗溶接は、スポット溶接であってもよい。スポット溶接の場合、ワークは、溶接端部に突起部を有せず、本体部材1の非溶接面12に配置される第1電極は、非溶接面12と当接する先端部が先細りの形状を有する。そして、第1電極の先端部により本体部材1を加圧し、当該加圧により抵抗が上がった加圧部分に電流を流すことによって、当該加圧部分が発熱して溶融することで、ワークが本体部材に溶接される。
【0059】
(4b)上記実施形態では、突起部25は、ワーク2の溶接端部21に設けられていたが、突起部が設けられる位置はこれに限定されるものではない。例えば、ワークが溶接端部にフランジを有する構成では、当該フランジに突起部が設けられていてもよい。また、例えば、本体部材の溶接面の挿入孔の周囲に突起部が設けられていてもよい。また、例えば、スポット溶接を行う場合であれば、ワーク及び本体部材のいずれにも突起部が設けられていなくてもよい。
【0060】
(4c)上記実施形態では、第2電極5は、左右方向に2つに分割される構成を例示したが、第2電極が分割される方向、又は、第2電極が分割される数はこれに限定されるものではない。例えば、第2電極は、前後方向に2つに分割されていてもよい。また、例えば、第2電極は、3つ以上に分割されていてもよい。
【0061】
(4d)上記実施形態では、受け治具7が、挿入部74を有し、当該挿入部74がワーク2の連通路24における大径部242に挿入されることでワーク2を安定して保持する構成を例示したが、受け治具の形状はこれに限定されるものではない。例えば、受け治具は、挿入部74を有しない構成であってもよい。この場合、受け治具の上面とワーク2の非押圧面222とが当接し、受け治具の底面が固定台6の上面61と当接することのみで、受け治具によってワーク2が保持される。
【0062】
(4e)上記実施形態では、受け治具7を用いてワーク2を保持する構成を例示したが、ワーク2を保持する構成はこれに限定されるものではない。例えば、図6及び図7に示すように、ワーク2は、クランプ8によって挟み込まれることで保持されてもよい。具体的には、リングプロジェクション溶接の際に、ワーク2の外周面23に形成された上述した2つの平面部231にクランプ8を当接させて、ワーク2をクランプ8によって挟み込む。つまり、クランプ8によってワーク2が保持される構成では、2つの平面部231が、リングプロジェクション溶接の際にワーク2を挟み込んで保持するための面として機能する。これにより、リングプロジェクション溶接の際に、2つの平面部231をクランプ8によって挟み込むことによって、ワーク2を安定して保持することができるため、押圧面221を介してワークに圧力を均一に加えやすくすることができる。
【0063】
(4f)上記実施形態では、ワーク2は、中心軸Aが曲がった(換言すると、中心軸Aが溶接端部21の端面に対して傾いている部分を有する)構成を例示したが、ワークの形状はこれに限定されるものではない。
【0064】
例えば、ワークは、中心軸が、ワークの溶接端部の端面に対し傾斜した状態で、溶接端部から非溶接端部の非押圧面まで直線状に延びていてもよい。具体的には、ワークは、当該ワークの外周面が、溶接端部の端面に対し傾斜した状態で、中心軸に沿って溶接端部から非溶接端部まで直線状に延びるような形状である。この場合、ワークは、ワークの中心軸が本体部材1の溶接面11に対し傾斜した状態で、本体部材1に固定される。このような形状のワークの場合も、第2電極をワークの外周面における溶接端部近傍に配置することによって、抵抗溶接の際、ワークの本体部材との接合箇所に電流が均一に流れやすい。また、押圧面を有し、かつ、受け治具によってワークを保持することによって、ワークが安定して保持されるため、ワークに圧力を均一に加えやすくすることができる。したがって、本体部材1に対するワークの溶接不良を生じにくくすることができる。
【0065】
(4g)上記実施形態では、車載部品100の製造方法における溶接工程において、第1電極4が下方に移動することで圧力が加えられたが、圧力が加えられる方向はこれに限定されるものではない。例えば、本体部材1及び本体部材1の非溶接面12に配置される第1電極4が固定された状態において、第2電極5がワーク2の直線部20に接触した状態のワーク2及び当該ワーク2を保持する受け治具7が、下方から上方に移動することで圧力が加えられてもよい。
【0066】
(4h)上記実施形態では、車載部品100は排気系部品であったが、例えば、車載部品は熱交換器等に用いられる他の部品であってもよい。
(4i)上記実施形態では、ワーク2がセンサを保持するためのセンサボスであったが、車載部品100に所定の物を取り付けるための他の接合部材であってもよい。
【0067】
(4j)上記実施形態では、ワーク2の溶接端部21が上方を向いた状態で、本体部材1に溶接されたが、例えば、ワーク2の溶接端部21が下方を向いた状態で、本体部材1に溶接されてもよい。
【0068】
(4k)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。
【0069】
[本明細書が開示する技術思想]
[項目1]
車両に搭載される車載部品が備える本体部材の溶接面に抵抗溶接により取り付けられる溶接部材であって、
前記溶接面に溶接される溶接端部と、
前記溶接端部とは反対側の非溶接端部と、
を備え、
前記非溶接端部は、前記抵抗溶接の際に押圧され、前記押圧される方向である押圧方向に前記溶接面と対面する押圧面と、前記押圧面以外の非押圧面と、を有し、
当該溶接部材は、前記溶接端部から前記非押圧面まで延びる軸が前記溶接面に対して傾斜した、又は、前記軸が曲がった形状を有する、溶接部材。
【0070】
[項目2]
項目1に記載の溶接部材であって、
前記非押圧面は、前記押圧方向における前記押圧面と前記溶接端部との間に位置する、溶接部材。
【0071】
[項目3]
項目1又は項目2に記載の溶接部材であって、
前記車載部品は、排気ガスを通過させるための排気系部品である、溶接部材。
【0072】
[項目4]
項目1から項目3までのいずれか1項に記載の溶接部材であって、
前記抵抗溶接は、プロジェクション溶接である、溶接部材。
【0073】
[項目5]
項目1から項目4までのいずれか1項に記載の溶接部材であって、
当該溶接部材の前記溶接端部から前記非溶接端部まで広がる外周面には、互いに対面し、前記抵抗溶接の際に当該溶接部材を挟み込んで保持するための少なくとも2つの保持面が形成される、溶接部材。
【符号の説明】
【0074】
1…本体部材、2…ワーク、3…所定の物、4…第1電極、5…第2電極、5a…第1部分、5b…第2部分、6…固定台、7…受け治具、8…クランプ、11…溶接面、12…非溶接面、13…挿入孔、20…直線部、21…溶接端部、22…非溶接端部、23…外周面、24…連通路、25…突起部、71…底面、61,72…上面、73…側面、74…挿入部、100…車載部品、221…押圧面、222…非押圧面、231…平面部、241…小径部、242…大径部、A…中心軸。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7