(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111717
(43)【公開日】2024-08-19
(54)【発明の名称】コネクタ組立体
(51)【国際特許分類】
H01R 13/6582 20110101AFI20240809BHJP
H01R 24/40 20110101ALI20240809BHJP
【FI】
H01R13/6582
H01R24/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023016385
(22)【出願日】2023-02-06
(71)【出願人】
【識別番号】000227995
【氏名又は名称】タイコエレクトロニクスジャパン合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(72)【発明者】
【氏名】吉村 健太郎
【テーマコード(参考)】
5E021
5E223
【Fターム(参考)】
5E021FA02
5E021FA08
5E021FA14
5E021FA16
5E021FB02
5E021FB11
5E021FB14
5E021FC21
5E021FC29
5E021LA06
5E021LA10
5E223AB01
5E223AB59
5E223AB65
5E223AB67
5E223AC21
5E223AC23
5E223BA12
5E223BA15
5E223BA17
5E223BB01
5E223BB12
5E223CA13
5E223CB24
5E223CB26
5E223CB41
5E223CC09
5E223DA25
5E223DA34
5E223DB08
5E223EB02
5E223EB13
5E223EB23
5E223GA08
5E223GA11
5E223GA19
5E223GA81
(57)【要約】
【課題】複数の部材を共通のグランド電位に保つ新規な構造を有するコネクタ組立体を提供する。
【解決手段】このコネクタ組立体10は、第1コネクタ20と第2コネクタ30とを備えている。第1コネクタ20は、信号コンタクト24と、信号コンタクト24を取り巻く第1アウタシールド22と、孔261の周りに広がる天板部262および第2コネクタ30を取り巻くように広がる側板部を有するケースシェル26とを備えている。また、第2コネクタは、信号コンタクト24と接触する信号コンタクト33と、信号コンタクト33を取り巻くアウタシールド31とを備えている。そして、第1コネクタ20がさらに、アウタシールド22、ケースシェル26、およびアウタシールド31に接してこれらアウタシールド22、ケースシェル26、およびアウタシールド31を共通のグランド電位に保つシールドスプリング27を備えている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1コネクタと、該第1コネクタと組み合う第2コネクタとを備え、
前記第1コネクタが、
上下に棒状に延びる第1信号コンタクトと、
筒状に形成されて上下に開口し、前記第1信号コンタクトから離れて該第1信号コンタクトを取り巻く第1アウタシールドと、
前記アウタシールドが入り込む孔を有し該孔の周りに広がる天板部と、前記第2コネクタと組み合った状態において該第2コネクタを取り巻くように広がる側板部とを有するケースシェルとを備え、
前記第2コネクタが、
前記第1信号コンタクトと接触する第2信号コンタクトと、
前記第2信号コンタクトから離れて該第2信号コンタクトを取り巻く第2アウタシールドとを備えて、
前記第1アウタシールドの下方の開口から該第1アウタシールドの内側に入り込み、
前記第1コネクタがさらに、前記第1アウタシールド、前記ケースシェル、および前記第2アウタシールドに接してこれら第1アウタシールド、ケースシェル、および第2アウタシールドを共通のグランド電位に保つシールドスプリングを備えたことを特徴とするコネクタ組立体。
【請求項2】
前記シールドスプリングが、
環状に形成され前記第1アウタシールドを取り巻く基部と、
前記基部の外縁から延びて前記ケースシェルに接する第1舌部と、
前記基部の内縁から延びて前記第1アウタシールドおよび前記第2アウタシールドに接する第2舌部とを備えたことを特徴とする請求項1に記載のコネクタ組立体。
【請求項3】
前記第1舌部および前記第2舌部の各々が、前記基部の、環状に延びる周回方向複数箇所に形成されていることを特徴とする請求項2に記載のコネクタ組立体。
【請求項4】
前記基部が、前記ケースシェルの前記天板部の下側に配置され、前記第1舌部が、該ケースシェルの内面に接する第1接点部を有することを特徴する請求項2または3に記載のコネクタ組立体。
【請求項5】
前記第2舌部が、前記基部の内縁から下向きに延び内向きに突き出て前記第1アウタシールドに接する第2接点部を有するとともに、さらに該第1アウタシールドの下方の開口から該第1アウタシールドの内側に延びて前記第2アウタシールドに接する第3接点部を有することを特徴とする請求項4に記載のコネクタ組立体。
【請求項6】
前記基部が、前記ケースシェルの前記天板部の上側に配置され、
前記第1舌部が、該ケースシェルの上面に接する第4接点部を有することを特徴する請求項2または3に記載のコネクタ組立体。
【請求項7】
前記第2舌部が、前記基部の内縁から前記孔を通過して下向きに延び内向きに突き出て前記第1アウタシールドに接する第5接点部を有するとともに、さらに該第1アウタシールドの下方の開口から該第1アウタシールドの内側に延びて前記第2アウタシールドに接する第6接点部を有することを特徴とする請求項6に記載のコネクタ組立体。
【請求項8】
前記第2信号コンタクトが、
前記第1信号コンタクトと接する接点部と、
前記接点部に繋がり、該接点部と接した状態にある前記第1信号コンタクトを延長した中心線を横切って延びて、半田付けにより信号を伝える信号伝送部とを有することを特徴とする請求項1から7のうちのいずれか1項に記載のコネクタ組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに嵌合する第1コネクタおよび第2コネクタからなるコネクタ組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、上下に棒状に延びる信号コンタクトと、その信号コンタクトから離れてその信号コンタクトの周りを取り巻く筒状のアウタシールドとを有し、信号コンタクトとアウタシールドとの間に第1のシール部材を嵌め込むとともに、アウタシールドの外周に第2のシール部材を嵌め込んだ構造のコネクタが開示されている。ここでは、このコネクタを、本発明との対応付けのために第1コネクタと称する。
【0003】
この第1コネクタはカメラモジュール側の第2コネクタと嵌合して一体のコネクタ組立体となる。このコネクタ組立体は、ケーブルが接続された相手コネクタに嵌合してカメラモジュールとケーブル側との信号の伝送を仲介するコネクタ組立体である。
【0004】
そして、第1コネクタは、第2コネクタと嵌合した状態にあってケーブルが接続された相手コネクタとは未嵌合の状態にあるときに、この第1コネクタに浸入した水が第2コネクタ側に漏れるのを防止する役割を担っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、上掲のコネクタ組立体の分野においても、益々の小型化、信号の高速化が進んでおり、これらの要求を満たしつつコストの低減化や製造の容易化が求められている。
【0007】
特には、コスト低減化および製造の簡易化の観点から、グランド電位に保たれるべき複数の部材どうしの接触をどのような構造で確保するのかが問題となる。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑み、複数の部材を共通のグランド電位に保つ新規な構造を有するコネクタ組立体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成する本発明のコネクタ組立体は、
第1コネクタと、その第1コネクタと組み合う第2コネクタとを備え、
第1コネクタが、
上下に棒状に延びる第1信号コンタクトと、
筒状に形成されて上下に開口し、第1信号コンタクトから離れて第1信号コンタクトを取り巻く第1アウタシールドと、
アウタシールドが入り込む孔を有しその孔の周りに広がる天板部と、第2コネクタと組み合った状態において第2コネクタを取り巻くように広がる側板部とを有するケースシェルとを備え、
第2コネクタが、
第1信号コンタクトと接触する第2信号コンタクトと、
筒状に形成されて上下に開口し第2信号コンタクトから離れて第2信号コンタクトを取り巻く第2アウタシールドとを備えて、
第1アウタシールドの下方の開口から第1アウタシールドの内側に入り込み、
第1コネクタがさらに、第1アウタシールド、ケースシェル、および第2アウタシールドに接してこれら第1アウタシールド、ケースシェル、および第2アウタシールドを共通のグランド電位に保つシールドスプリングを備えたことを特徴とする。
【0010】
本発明のコネクタ組立体は、シールドスプリングを備え、第1アウタシールド、ケースシェル、および第2アウタシールドを共通のグランド電位に保つための電気的な接触の役割をそのシールドスプリングに担わせている。この電気的な接触を担わせるには、導電性のほか良好なバネ性をもった材料を用いる必要がある。
【0011】
このため、例えば、第1アウタシールドとケースシェルとの電気的な接続をケースシェルに担わせるとともに第1アウタシールドと第2アウタシールドとの接続を第2アウタシールドに担わせるといった役割分担をさせた場合と比べ、シールドスプリングのみ、導電性と良好なバネ性を兼ね備えた材料とすればよく、コストの低減化および製造の容易化が図られる。
【0012】
ここで、本発明のコネクタ組立体において、
上記シールドスプリングが、
環状に形成され第1アウタシールドを取り巻く基部と、
基部の外縁から延びてケースシェルに接する第1舌部と、
基部の内縁から延びて第1アウタシールドおよび第2アウタシールドに接する第2舌部とを備えていることが好ましい。
【0013】
この構造のシールドスプリングを採用すると、基部を挟む第1舌部と第2舌部とにより、ケースシェル、第1アウタシールド、および第2アウタシールドの3部品が共通のグランド電位に保たれる。
【0014】
ここで、シールドスプリングを構成する第1舌部および第2舌部は、その各々が、基部の、環状に延びる周回方向複数箇所に形成されていることが好ましい。
【0015】
第1舌部および第2舌部が複数箇所に形成されていると、ケースシェル、第1アウタシールド、および第2アウタシールドの3部品が、一層の信頼性をもって、共通のグランド電位に保たれる。
【0016】
ここで、このシールドスプリングは、一例として、上記基部が、ケースシェルの天板部の下側に配置され、第1舌部が、ケースシェルの内面に接する第1接点部を有することが好ましい。
【0017】
この場合、第2舌部が、基部の内縁から下向きに延び内向きに突き出て第1アウタシールドに接する第2接点部を有するとともに、さらに第1アウタシールドの下方の開口から第1アウタシールドの内側に延びて第2アウタシールドに接する第3接点部を有することが好ましい。
【0018】
あるいは、このシールドスプリングは、別例として、上記基部が、ケースシェルの天板部の上側に配置され、第1舌部が、ケースシェルの外面に接する第4接点部を有していてもよい。
【0019】
この場合、第2舌部が、基部の内縁からケースシェルのに設けられている孔を通過して下向きに延び内向きに突き出て第1アウタシールドに接する第5接点部を有するとともに、さらに第1アウタシールドの下方の開口から第1アウタシールドの内側に延びて第2アウタシールドに接する第6接点部を有することが好ましい。
【0020】
また、本発明のコネクタ組立体は、上記第2信号コンタクトが、
第1信号コンタクトと接する接点部と、
その接点部に繋がり、その接点部と接した状態にある第1信号コンタクトを延長した中心線を横切って延びて、半田付けにより信号を伝える信号伝送部とを有することが好ましい。
【0021】
第1コネクタと第2コネクタとの嵌合に際し、第1信号コンタクトと第2信号コンタクトとが位置ずれを生じているおそれがある。上記の構造の第2信号コンタクトを採用すると信号伝送部が柔軟に撓んで位置ずれを吸収する。すなわち、上記の構造の第2信号コンタクトを採用すると大きな位置ずれが許容される。
【発明の効果】
【0022】
以上の本発明によれば、複数の部材を共通のグランド電位に保つ新規な構造を有し、この構造によりコストの低減化および製造の容易化が図られたコネクタ組立体が実現する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の第1実施形態のコネクタ組立体と、そのコネクタ組立体と嵌合する相手コネクタの模式図である。
【
図2】第1実施形態のコネクタ組立体を構成している第1コネクタの斜視図である。
【
図3】第1実施形態のコネクタ組立体を構成している第2コネクタの斜視図である。
【
図4】第1実施形態のコネクタ組立体の分解斜視図である。
【
図5】第1実施形態のコネクタ組立体の縦断面図である。
【
図6】第1実施形態におけるシールドスプリングの斜視図である。
【
図7】
図5に示す破線で囲んだ領域R1の拡大図である。
【
図8】第2コネクタの信号コンタクトの側面図(A)および斜視図(B)である。
【
図9】嵌合した状態にある第1コネクタと第2コネクタとからなるコネクタ組立体の底面図である。
【
図10】本発明の第2実施形態のコネクタ組立体の縦断面図である。
【
図11】第2実施形態のコネクタ組立体に採用されているシールドスプリングの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0025】
図1は、本発明の第1実施形態のコネクタ組立体と、そのコネクタ組立体と嵌合する相手コネクタの模式図である。
【0026】
本発明の一実施形態のコネクタ組立体10は、互いに嵌合する第1コネクタ20と第2コネクタ30とを有する。
【0027】
第2コネクタ30は、回路基板38に半田付けされている。この回路基板38は、不図示のカメラが搭載されたモジュールを構成する回路基板であり、第2コネクタ30は、そのカメラの信号を外部に送り出すためのコネクタである。
【0028】
第2コネクタ30は、その回路基板38を含むカメラモジュールとともにケース39内に収容されている。このケース39は、矢印Uで示す上方に開いた開口391とその開口391を取り巻く側壁392を有する。第2コネクタ30は、そのケース39の側壁392から離れた中央の位置に配置されている。
【0029】
第1コネクタ20は、矢印Dで示す下側に第1の嵌合部201を有し、矢印Uで示す上側に第2の嵌合部202を有する。そして、この第1コネクタ20は、ケース39内に収納されている第2コネクタ30を第1の嵌合部201で覆うようにして、その第2コネクタ30と嵌合する。
【0030】
また、上側の第2の嵌合部202は、相手コネクタ90と嵌合する。この相手コネクタ90にはケーブル91が接続されている。ケーブル91は、長く延びているが、ここでは、相手コネクタ90に接続されている先端部分のみ、図示している。
【0031】
第1コネクタ20は、先ずは第2コネクタ30と嵌合し、嵌合状態のコネクタ組立体10となる。このコネクタ組立体10は、第1コネクタ20と第2コネクタ30が一旦嵌合した後は、第1コネクタ20と第2コネクタ30とに再び分離することは想定されていない。このコネクタ組立体10は、第1コネクタ20と第2コネクタ30が嵌合した状態のまま相手コネクタ90と嵌合し、カメラモジュールと相手コネクタ90との間で伝送される信号を仲介する。相手コネクタ90に伝えられた信号は、ケーブル91により、離れた位置にあるモニタ等の不図示の装置に伝送される。
【0032】
ここで、コネクタ組立体10は、車の製造過程で、あるいは、車のメンテナンスの過程で、そのコケクタ組立体10を構成している第1コネクタ20と第2コネクタ30とが嵌合した状態にあって、相手コネクタ90とは未嵌合の状態が存在する。カメラが搭載されたモジュールは水分を嫌うため、コネクタ組立体10は、相手コネクタ93とは未嵌合の状態であってもそのコネクタ組立体10に浸入した水がカメラモジュール側に漏れることがないように防水対策が施されている必要がある。このコネクタ組立体10の防水は、相手コネクタ90との嵌合よりも前の段階における防水であり、嵌合前防水あるいは未嵌合防水と呼ばれている。
【0033】
図2は、第1実施形態のコネクタ組立体を構成している第1コネクタの斜視図である。
【0034】
また、
図3は、第1実施形態のコネクタ組立体を構成している第2コネクタの斜視図である。
【0035】
さらに、
図4は、第1実施形態のコネクタ組立体の分解斜視図である。
【0036】
さらに、
図5は、第1実施形態のコネクタ組立体の縦断面図である。
【0037】
前述した通り、第1コネクタ20は、
図1に矢印Dで示す下側に第1の嵌合部201を有し、
図1に矢印Uで示す上側に第2の嵌合部202を有する。この第1コネクタ20は、第1の嵌合部201に第2コネクタ30が嵌合してコネクタ組立体10を構成する。そして、第2の嵌合部202が相手コネクタ90との嵌合を担っている。
【0038】
図4には、分解した状態の第1コネクタ20と、さらに第2コネクタ30が示されている。
【0039】
第1コネクタ20は、
図4に示した上から順に、樹脂製のアウタハウジング21、金属製のアウタシールド22、樹脂製のインナハウジング23、金属製の信号コンタクト24、ポッティング塊25、金属製のケースシェル26、および、金属製のシールドスプリング27で構成されている。
【0040】
信号コンタクト24は、棒形状を有し、第2コネクタ30からカメラの信号を受け取って相手コネクタ90に伝える役割を有している。この信号コンタクト24は、インナハウジング23に支えられている。
【0041】
アウタシールド22は、筒状の部材であり、その内側にインナハウジング23を支持し、さらにその中心に、インナハウジング23を介して信号コンタクト24を支持している。
【0042】
ポッティング塊25は、防水を担当している。ここには、硬化後のポッティング剤の塊りとしての形状が示されている。このポッティング塊25は、内側の第1のポッティング塊251と外側の第2のポッティング塊252とに分かれている。これらのポッティング塊251,252は、この第1コネクタ20の組立の途中の工程で
図5に示す2つのポッティング溜まり281,282に液状のポッティング剤が注入されて硬化したものであり、本来は、ポッティング溜まり281,282を構成している部品とは分離不能であるが、
図4では、あえて、硬化後のポッティング塊251,252を取り出して、それらの形状を示している。そして、2つのポッティング溜まり281,282に液状のポッティング剤が注入されて硬化することにより、ポッティング塊251,252が形成され、これにより防水構造が完成する。ここで、内側の第1のポッティング塊251は信号コンタクト24とアウタシールド22との間の防水を担当し、外側の第2のポッティング塊252は、アウタシールド22とアウタハウジング21との間の防水を担当している。
【0043】
図5に示す第1のポッティング溜まり281および第2のポッティング溜まり282は、いずれも、矢印Dで示す下方に開いた開口を有する。そこで、これら第1のポッティング溜まり281および第2のポッティング溜まり282にポッティング剤を注入するにあたっては、ケースシェル70を組み立てる前の第1コネクタ20を上下逆向きにした状態に保持し、その逆向きにした状態で第1のポッティング溜まり281および第2のポッティング溜まり282にポッティング剤を注入し、その注入したポッティング剤が硬化してポッティング塊251,252となるまでその逆向きにした状態が保持される。
【0044】
ケースシェル26およびシールドスプリング27は、第1のポッティング溜まり281および第2のポッティング溜まり282にポッティング剤が注入されて硬化した後に取り付けられる。
【0045】
ケースシェル26には、アウタシールド22が入り込む孔261を有する天板部262と、第2コネクタ30と嵌合した状態においてその第2コネクタ30を取り巻くように広がる側板部263が設けられている。このケースシェル26は、この第1コネクタ20が第2コネクタ30に嵌合した際に第2コネクタ30をシールドする。
【0046】
シールドスプリング27は、ケースシェル26とアウタシールド22とに接してケースシェル26とアウタシールド22を共通のグランド電位に保つ役割を担っている。そして、第1コネクタ20が第2コネクタ30と嵌合すると、このシールドスプリング27は、第2コネクタ30のアウタシールド31にも接し、ケースシェル26と、第1コネクタ20のアウタシールド22と、さらに第2コネクタ30のアウタシールド31を共通のグランド電位に保つ。
【0047】
アウタハウジング21は、矢印Dで示す下方に大きく開いた第1の嵌合開口211を有し、さらに矢印Uで示す上方に開いた第2の嵌合開口212を有する。
【0048】
第1の嵌合開口211には、ケースシェル26が配置されている。第1コネクタ20が第2コネクタ30と嵌合すると、ケースシェル26の側板部263が第2コネクタ30を取り巻くとともにアウタハウジング21がケース39に嵌まり込む。
【0049】
第2の嵌合開口212には、相手コネクタ90との嵌合に当たり、相手コネクタ90が嵌まり込む。
【0050】
第2コネクタ30は、
図5の断面図に示すように、第1コネクタ20のアウタシールド22の、矢印D で示す側の下方の開口221からアウタシールド22に内側に入り込んでいる。そして、この第2コネクタ30は、金属製の信号コンタクト33と、樹脂製のハウジング32と、金属製のアウタシールド31とを備えている。
【0051】
信号コンタクト33は、第1コネクタ20の信号コンタクト24と接触して電気信号を伝える。ハウジング32は、信号コンタクト33を取り巻いて信号コンタクト33を支持する。このハウジング32の、矢印Uで示す向きの上部には、第1コネクタ20の信号コンタクト24が挿し込まれる挿し込み孔321(
図3参照)が形成されている。また、アウタシールド31は、筒状に形成されて上下(矢印U-D方向)に開口し、ハウジング32を取り巻くように配置されている。すなわち、アウタシールド31は、ハウジング32を間に置くことにより信号コンタクト33から離れて、その信号コンタクト33を取り巻いている。
【0052】
図6は、第1実施形態におけるシールドスプリングの斜視図である。
【0053】
また、
図7は、
図5に示す破線で囲んだ領域R1の拡大図である。
【0054】
シールドスプリング27は、基部271と、第1舌部272と、第2舌部273とを備えている。
【0055】
基部271は、環状に形成され、第1コネクタ20のアウタシールド22を取り巻くように配置されている。
【0056】
第1舌部272は、基部271の外縁271aから延び、バネ性を有し、ケースシェル26に接している。
【0057】
また、第2舌部273は、基部271の内縁271bから延び、バネ性を有し、第1コネクタ20のアウタシールド22に接している。また、この第2舌部273は、第1コネクタ20と第2コネクタ30が嵌合すると、第2コネクタ30のアウタシールド31にも接する。
【0058】
このシールドスプリング27は、この第1実施形態における具体例としては、
図5および
図7に示すように、基部271が、ケースシェル26の天板部262の、矢印Dで示す下側に配置され、第1舌部272が、ケースシェル26の内面に接する第1接点部272aを有する。
【0059】
また、第2舌部27は、基部271の内縁271bから下向き(矢印D方向)に延びていて、基部271の環状の内向きに突き出て第1コネクタ20のアウタシールド22に接する第2接点部273aを有する。そして、この第2舌部27は、さらに第1コネクタ20のアウタシールド22の、矢印Dで示す側の下方の開口221からそのアウタシールド22の内側に延びて第2コネクタ30のアウタシールド31に接する第3接点部273bを有する。
【0060】
このシールドスプリング27により、ケースシェル26、第1コネクタ20のアウタシールド22、および、第2コネクタ30のアウタシールド31が共通のグランド電位に保たれる。
【0061】
ここで、第1舌部272および第2舌部273は、それらのいずれもが、基部271の環状に延びる周回方向複数箇所に形成されている。
【0062】
第1舌部272および第2舌部273が複数箇所に形成されていると、ケースシェル26、第1コネクタ20のアウタシールド22、および第2コネクタ30のアウタシールド31の3部品が、一層の信頼性をもって、共通のグランド電位に保たれる。
【0063】
このシールドスプリング27を採用したことによるさらなるメリットについては、後述する。
【0064】
図8は、第2コネクタの信号コンタクトの側面図(A)および斜視図(B)である。
【0065】
第2コネクタ30の信号コンタクト33は、接点部331と信号伝送部332とを有する。
【0066】
接点部331は、筒形状を有し、第1コネクタ20の信号コンタクト24が挿し込まれる開口331aと、その開口331aから挿し込まれた信号コンタクト24と接するように筒形状が細径に絞られた細径部331bが形成されている。開口331aから挿し込まれた信号コンタクト24は、細径部331bにおいてこの第2コネクタ30の信号コンタクト33と接触する。
【0067】
また、信号伝送部332は、接点部331の、矢印Dで示す向きの下端に繋がり、接点部331の、挿し込まれた信号コンタクト24を下方に延長した中心線331cを横切って延びている。この信号伝送部332は、その先端に、回路基板38(
図1参照)に半田付けされる半田付け部332aを有し、その回路基板38との信号の伝送を担っている。
【0068】
第1コネクタ20と第2コネクタ30との嵌合に際し、第1コネクタ20の信号コンタクト24と第2コネクタ30の信号コンタクト33が位置ずれを生じているおそれがある。上記の構造の信号伝送部332を有する信号コンタクト33を採用すると、その信号伝送部332が柔軟に撓んで位置ずれを吸収する。すなわち、この構造の信号コンタクト33を第2コネクタ30の信号コンタクトとして採用すると信号コンタクト24と信号コンタクト33との間の大きな位置ずれが許容され、このコネクタ組立体10の部品の寸法精度や組立精度を緩めてコストを抑えることができる。
【0069】
図9は、嵌合した状態にある第1コネクタと第2コネクタとからなるコネクタ組立体の底面図である。
【0070】
この
図9には、シールドスプリング27の基部271が円形に現れている。そして、その基部271の外縁271aからは複数の第1舌部272が放射状に延びている。これらの第1舌部272は、ケースシェル26に接している。また、その基部271の内縁271bからは中央に向って複数の第2舌部273が延びている。これらの第2舌部273は第1コネクタ20のアウタシールド22および第2コネクタ30のアウタシールド31に接している。
【0071】
また、第2コネクタ30のアウタシールド31には、一周に亘る複数箇所に、回路基板38(
図1参照)の不図示のグランドへの半田付け用の半田付け部311が形成されている。また、ここには、第2コネクタ30の信号コンタクト33の信号伝送部332が現れている。この信号伝送部332の先端の半田付け部332aは、回路基板38(
図1参照)の、信号の伝送を担う不図示の信号端子に半田付けされる。
【0072】
ここで、
図6に示すシールドスプリング27を採用したことによるさらなるメリットについて説明する。
【0073】
ケースシェル26は、第1コネクタ20のアウタシールド22が入り込む孔261を有している。そこで、ケースシェル26に、この孔261から内側に延びてその孔261に入り込んだアウタシールド22に接する切片を形成する。こうすれば、ケースシェル26と第1コネクタ20のアウタシールド22に関しては、それらが共通のグランド電位となるように電気的に接続することができる。
【0074】
また、第1コネクタ20のアウタシールド22と第2コネクタ30のアウタシールド31とを電気的に接続するために、第2コネクタ30のアウタシールド31を切り起して、第1コネクタ20のアウタシールド22に接触する切片を形成することが考えられる。こうすれば、その切り起した切片で第1コネクタ20のアウタシールド22と第2コネクタ30のアウタシールド31とが電気的に接続される。
【0075】
したがって、ケースシェル26に切片を形成するとともに、第2コネクタ30のアウタシールド31にも切片を形成すれば、シールリング27を備えることなく、ケースシェル26と、第1コネクタ20のアウタシールド22と、第2コネクタ30のアウタシールド31とを電気的に接続して、それらを共通のグランド電位に保つことができる。
【0076】
しかしながら、この場合は、ケースシェル26という大面積の部材全体を、導電性とともに良好なバネ性を有する材料で形成する必要があり、また、ケースシェル26の形状が複雑となり、コストが上昇するおそれがある。
【0077】
また、第2コネクタ30のアウタシールド31についても、導電性とともにバネ性を考慮した材料とする必要がある。
【0078】
さらに、第2コネクタ30のアウタシールド31は、第2コネクタ30の信号コンタクト33を取り巻いてこの信号コンタクト33をシールドする役割を担っている。したがって、このアウタシールド31を切り起して第1コネクタ20のアウタシールド22との接触のための切片を形成すると、その切片を切り起した部分のシールド性が脆弱となり、これを原因としてノイズへの耐性が低下したり信号の伝送速度が制限を受けるおそれがある。
【0079】
第1実施形態では、これらの欠点を考慮した結果、バネ性を必要とする部分を1つの部品にまとめたシールドスプリング27が採用されている。このシールドスプリング27の採用により、第2コネクタ30についても十分なシールド性を確保している。
【0080】
次に、本発明の第2実施形態のコネクタ組立体について説明する。以下における第2実施形態の説明にあたっては、第1実施形態のコネクタ組立体の説明において付した符号をそのまま採用し、第1実施形態との相違点についてのみ説明する。
【0081】
図10は、本発明の第2実施形態のコネクタ組立体の縦断面図である。この
図10は、上述の第1実施形態における
図5に対応する図である。
【0082】
第1実施形態の場合、
図5に示すように、防水を担うポッティング塊25が形成されている。このポッティング塊25は、内側の第1のポッティング塊251と外側の第2のポッティング塊252とからなる。これら第1のポッティング塊251と第2のポッティング塊252は、2つのポッティング溜まり281,282に液状のポッティング剤が注入されて硬化することにより、形成されたものである。
【0083】
これに対し、
図10に示す第2実施形態の場合、第1実施形態のポッティング溜まり281,282に対応するポッティング溜まりは存在せず、したがってポッティング塊25に対応するポッティング塊も存在しない。
【0084】
第2実施形態の場合、ポッテング塊に代わり、円環状に形成された第1の防水ゴム283および第2の防水ゴム284が備えられている。
【0085】
第1の防水ゴム283には、信号コンタクト24が挿し込まれてその信号コンタクト24と水密に接している。また、この第1の防水ゴム283はアウタシールド22の内壁面222に一周に亘って水密に接している。すなわち、この第1の防水ゴム283は、第1実施形態における第1のポッティング塊251と同様、信号コンタクト24とアウタシールド22との間の防水を担っている。
【0086】
また、第2の防水ゴム284にはアウタシールド22が挿し込まれて、そのアウタシールド22の外壁面223と水密に接している。また、この第2の防水ゴム284はアウタハウジング21の内壁面213に一周に亘って水密に接している。すなわち、この第2の防水ゴム284は、第1実施形態における第2のポッティング塊252と同様、アウタシールド22とアウタハウジング21との間の防水を担っている。
【0087】
このように、第1実施形態におけるポッティング塊25に代わり、第2実施形態では防水ゴム283,284が防水を担当している。
【0088】
なお、防水ゴム283,284に防水を担当させたことに伴い、第1実施形態と比べると部材の形状が変更されているが、ここでは、部材の形状変更についての説明は省略する。
【0089】
図11は、第2実施形態のコネクタ組立体に採用されているシールドスプリングの斜視図である。
【0090】
また、
図12は、
図10に示す破線で囲んだ領域R2の拡大図である。
【0091】
シールドスプリング27は、
図6に示す、第1実施形態におけるシールドスプリング27と同様、基部271と、第1舌部272と、第2舌部273とを備えている。
【0092】
基部271は、環状に形成され、第1コネクタ20のアウタシールド22を取り巻くように配置されている。
【0093】
第1舌部272は、基部271の外縁271aから延び、バネ性を有し、ケースシェル26に接している。
【0094】
また、第2舌部273は、基部271の内縁271bから矢印Dで示す下向きに延び内向きに突き出て第1コネクタ20のアウタシールド22に接する第2接点部273aを有する。また、この第2舌部273は、第1コネクタ20と第2コネクタ30が嵌合すると、第2コネクタ30のアウタシールド31にも接する。
【0095】
第1実施形態におけるシールドスプリング27の場合、
図5および
図7に示すように、その基部271は、ケースシェル26の天板部262の、矢印Dで示す下側に配置されている。これに対し、この第2実施形態におけるシールドスプリング27は、
図10および
図12に示すように、その基部271が、ケースシェル26の天板部262の、矢印Uで示す上側に配置され、第1舌部272が、ケースシェル26の上面に接する第1接点部272aを有する。
【0096】
また、第2舌部27は、基部271の内縁271bからケースシェル26に設けられている孔261を通過して、矢印Dで示す下向きに延び、基部271の環状の内向きに突き出て第1コネクタ20のアウタシールド22に接する第2接点部273aを有する。そして、この第2舌部27は、さらに第1コネクタ20のアウタシールド22の、矢印Dで示す側の下方の開口221からそのアウタシールド221の内側に延びて第2コネクタ30のアウタシールド31に接する第3接点部273bを有する。
【0097】
この第2実施形態のシールドスプリング27を用いた場合も、ケースシェル26、第1コネクタ20のアウタシールド22、および、第2コネクタ30のアウタシールド31が共通のグランド電位に保たれる。
【0098】
ここで、この第2実施形態のシールドスプリング27も、第1実施形態のシールドスプリング27と同様、第1舌部272および第2舌部273は、それらのいずれもが、基部271の環状に延びる周回方向複数箇所に形成されている。
【0099】
このように、シールドスプリング27は、ケースシェル26の下側に配置してもよく、上側に配置してもよい。ただし、その配置位置に応じて形状が変更される。
【0100】
この第2実施形態における、第1実施形態との主な相違点は以上であり、その他の相違点は本質的ではない相違点であり、説明は省略する。
【0101】
以上の第1実施形態および第2実施形態によれば、コストの低減化および製造の容易化が図られたコネクタ組立体が実現する。
【符号の説明】
【0102】
10 コネクタ組立体
20 第1コネクタ
201 第1の嵌合部
202 第2の嵌合部
21 アウタハウジング
211 第1の嵌合開口
212 第2の嵌合開口
213 アウタハウジングの内壁面
22 アウタシールド
221 アウタシールドの下方の開口
222 アウタシールドの内壁面
223 アウタシールドの外壁面
23 インナハウジング
24 信号コンタクト
25 ポッティング塊
251 第1のポッティング塊
252 第2のポッティング塊
26 ケースシェル
261 ケースシェルの孔
262 ケースシェルの天板部
263 ケースシェルの側板部
27 シールドスプリング
271 シールドスプリングの基部
271a 基部の外縁
271b 基部の内縁
272 シールドスプリングの第1舌部
272a 第1接点部
273 シールドスプリングの第2舌部
273a 第2接点部
273b 第3接点部
281 第1のポッティング溜まり
282 第2のポッティング溜まり
283 第1の防水ゴム
284 第2の防水ゴム
30 第2コネクタ
31 第2コネクタのアウタシールド
311 アウタシールドの半田付け部
32 第2コネクタのハウジング
321 挿し込み孔
33 第2コネクタの信号コンタクト
331 信号コンタクトの接点部
331a 接点部の開口
331b 接点部の細径部
331c 中心線
332 信号コンタクトの信号伝送部
38 回路基板
39 ケース
391 ケースの開口
392 ケースの側壁
90 相手コネクタ
91 ケーブル