(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111722
(43)【公開日】2024-08-19
(54)【発明の名称】光デバイス、光モジュール及び光送受信装置
(51)【国際特許分類】
G02B 6/42 20060101AFI20240809BHJP
G02B 6/12 20060101ALI20240809BHJP
【FI】
G02B6/42
G02B6/12 331
G02B6/12 321
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023016394
(22)【出願日】2023-02-06
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、研究成果展開事業「6Gネットワークに向けた長波長帯単一モード面発光レーザを基盤とした光トランシーバの開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】309015134
【氏名又は名称】富士通オプティカルコンポーネンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】園田 裕彦
【テーマコード(参考)】
2H137
2H147
【Fターム(参考)】
2H137AA01
2H137AB05
2H137AB06
2H137AB09
2H137AB11
2H137BA03
2H137BA41
2H137BA44
2H137BA49
2H137BB03
2H137BB12
2H137BC02
2H137BC32
2H137BC55
2H137DA39
2H147AA01
2H147AB17
2H147AB29
2H147BA05
2H147BB02
2H147BB07
2H147BD01
2H147BE15
2H147CA01
2H147CA09
2H147CA17
2H147CB01
2H147CB03
2H147DA10
(57)【要約】
【課題】光ファイバとの結合損失を抑制できる光デバイス等を提供する。
【解決手段】光デバイスは、光導波路回路と、光導波路回路に送信光を送信する光送信部と、光導波路回路からの受信光を受信する光受信部とを有する。光導波路回路は、光導波路と、波長合分波器と、モードフィルタとを有する。光導波路は、光送信部から出力される送信光が入力される第1のポートと、送信光が出力される第2のポートとを備え、送信光を導波すると共に、第2のポートから入力される受信光を導波する。波長合分波器は、第1のポートと第2のポートとの間の光導波路に配置されている。モードフィルタは、波長合分波器を用いて、入力された受信光の高次モードを除去すると共に、高次モードが除去された受信光を光受信部に出力する第3のポートを備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光導波路回路と、前記光導波路回路に送信光を送信する光送信部と、前記光導波路回路からの受信光を受信する光受信部と、を有する光デバイスであって、
前記光導波路回路は、
前記光送信部から出力される前記送信光が入力される第1のポートと、前記送信光が出力される第2のポートとを備え、前記送信光を導波すると共に、前記第2のポートから入力される前記受信光を導波する光導波路と、
前記第1のポートと前記第2のポートとの間の前記光導波路に配置された波長合分波器と、
前記波長合分波器を用いて、入力された前記受信光の高次モードを除去すると共に、前記高次モードが除去された前記受信光を前記光受信部に出力する第3のポートを備えたモードフィルタと、
を有することを特徴とする光デバイス。
【請求項2】
前記光送信部は、
シングルモードの前記送信光を発振する発光素子を有することを特徴とする請求項1に記載の光デバイス。
【請求項3】
前記モードフィルタは、
前記高次モードを除去する条件の曲率を有する曲げ導波路であることを特徴とする請求項1に記載の光デバイス。
【請求項4】
前記モードフィルタは、
第1のコアと、前記第1のコアと並列に配置され、前記第1のコアを導波する前記受信光の高次モードを遷移する第2のコアと、
を有することを特徴とする請求項1に記載の光デバイス。
【請求項5】
前記送信光又は前記受信光は、
SMF(Single Mode Fiber)の光ファイバのカットオフ波長以下の波長帯を使用することを特徴とする請求項1に記載の光デバイス。
【請求項6】
前記光送信部と前記第1のポートとの間を光結合する第1の光部品と、
前記光受信部と前記第3のポートとの間を光結合する第2の光部品とを有し、
前記第1の光部品は、
前記光送信部からの前記送信光を集光する第1の集光レンズと、
前記第1の集光レンズにて集光された前記送信光を前記第1のポートに光結合する第1の光路変換プリズムと、を有し、
前記第2の光部品は、
前記光受信部に対して前記受信光を集光する第2の集光レンズと、
前記第3のポートから入力された前記受信光を前記第2の集光レンズに光結合する第2の光路変換プリズムと、
を有することを特徴とする請求項1に記載の光デバイス。
【請求項7】
前記光送信部と前記第1のポートとの間を光結合する第1のフォトニックワイヤボンドと、
前記光受信部と前記第3のポートとの間を光結合する第2のフォトニックワイヤボンドとを有することを特徴とする請求項1に記載の光デバイス。
【請求項8】
送信光を出力する光送信器と、
受信光を受信する光受信器と、
前記光送信器からの前記送信光を導波すると共に、前記光受信器に対して前記受信光を導波する光導波路回路と、を有する光モジュールであって、
前記光導波路回路は、
前記光送信器から出力される前記送信光が入力される第1のポートと、前記送信光が出力される第2のポートとを備え、前記送信光を導波すると共に、前記第2のポートから入力される前記受信光を導波する光導波路と、
前記第1のポートと前記第2のポートとの間の前記光導波路に配置された波長合分波器と、
前記波長合分波器を用いて、入力された前記受信光の高次モードを除去すると共に、前記高次モードが除去された前記受信光を前記光受信器に出力する第3のポートを備えたモードフィルタと、
を有することを特徴とする光モジュール。
【請求項9】
送信データに応じた電気信号に基づき、送信光を出力する光送信器と、受信した受信光から受信データに応じた電気信号を出力する光受信器と、前記光送信器からの前記送信光を導波すると共に、前記光受信器に対して前記受信光を導波する光導波路回路と、前記電気信号に対する信号処理を実行するプロセッサと、を有する光送受信装置であって、
前記光導波路回路は、
前記光送信器から出力される前記送信光が入力される第1のポートと、前記送信光が出力される第2のポートとを備え、前記送信光を導波すると共に、前記第2のポートから入力される前記受信光を導波する光導波路と、
前記第1のポートと前記第2のポートとの間の前記光導波路に配置された波長合分波器と、
前記波長合分波器を用いて、入力された前記受信光の高次モードを除去すると共に、前記高次モードが除去された前記受信光を前記光受信器に出力する第3のポートを備えたモードフィルタと、
を有することを特徴とする光送受信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光デバイス、光モジュール及び光送受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、インターネットの発展に伴い大規模データセンタでは、トラフィック量が飛躍的に増加している。例えば、AI(Artificial Intellligence)、機械学習の進展、膨大な各種センサや端末と接続するIoT(Internet of Things)や自動運転技術等を利用するデータ駆動型社会の実現が期待されている。5Gの移動通信システムの導入が進むに連れて、トラフィック量が加速的に広がっている。
【0003】
5Gでは、例えば、半径2kmのセル内に約100台のアンテナ基地局が必要となる。更に、6Gでは、無線周波数の高周波化とセル半径の小型化が予想されるため、例えば、6Gの半径2kmのセル内に約10,000台のアンテナ基地局が必要となる。尚、6Gでは、100ギガbpsよりも更に高速となる1テラbps以上の通信が想定されている。従来の3Gや4Gの基地局では、通信事業者のビル内やその近傍に設置され、これらの基地局とネットワークとが接続されている。また、5Gや6Gの基地局においても、3Gや4Gの基地局や基地局が設置された通信事業者の局舎を起点にして光ファイバで張り出す、いわゆる光フロントホールの導入が進んでいる。
【0004】
従って、今後、例えば、2030年までに距離10km未満で単一モードファイバを用いた100ギガbps級の一芯双方向光デバイスを実装した光トランシーバの開発が求められている。
【0005】
図9は、光デバイス100の一例を示す説明図である。
図9に示す光デバイス100は、一芯双方向光デバイスである。光デバイス100は、光送信端子部110と、光受信端子部120と、デバイス本体130と、光ファイバ接合部140とを有する。光送信端子部110は、発光素子111と、集光レンズ112と、を有する。発光素子111は、送信光を発光するLD(Laser Diode)である。集光レンズ112は、発光素子111からの送信光を集光するレンズである。光受信端子部120は、集光レンズ121と、プリアンプ122と、受光素子123とを有する。集光レンズ121は、受信光を集光するレンズである。プリアンプ122は、集光レンズ121で集光した受信光を光増幅する光アンプである。受光素子123は、プリアンプ122にて光増幅後の受信光を電気変換するPD(Photo Diode)である。
【0006】
デバイス本体130は、光導波路131と、波長フィルタ132と、を有する。光導波路131は、送信光及び受信光が導波する導波路である。光導波路131は、光送信端子部110と光結合する光入力ポート131Aと、光受信端子部120と光結合する光出力ポート131Bと、光ファイバ接合部140と光結合する伝送路ポート131Cとを有する。光ファイバ接合部140は、光ファイバ200と接合する接合部である。
【0007】
波長フィルタ132は、光導波路131内に配置され、光入力ポート131Aからの送信光を透過し、透過後の送信光を伝送路ポート131Cに出力すると共に、伝送路ポート131Cからの受信光を光出力ポート131Bに反射する。
【0008】
しかしながら、光デバイス100では、光ファイバ200を導波する基本モードの受信光に対する伝送路上の反射等の影響で高次モードが発生する。従って、光デバイス100では、特に長距離伝送や高ビットレート伝送に対応するためには高次モードを除去する機能が必要となる。そこで、高次モードを除去するモードフィルタを光ファイバ200の伝送路上に配置する方法が知られている。
【0009】
図10は、光デバイス100とモードフィルタ300とを接続した構成の一例を示す説明図である。
図10に示すシステム構成は、光デバイス100と、モードフィルタ300と、光デバイス100とモードフィルタ300との間を接続する第1の光ファイバ200Aと、モードフィルタ300と接続する第2の光ファイバ200Bとを有する。モードフィルタ300は、第1の光ファイバ200Aとの融着接続で直列接続していると共に、第2の光ファイバ200Bとの融着接続で直列接続している。第2の光ファイバ200Bでは、基本モードの信号光が導波し、伝送路上の反射等の影響で高次モードの信号光も発生してしまう。モードフィルタ300は、曲率を有する曲げ導波路301で構成する。モードフィルタ300は、例えば、第2の光ファイバ200Bから高次モードの受信光が曲げ導波路301内を導波することで、曲げ導波路301で高次モードの受信光が放射されることになる。
【0010】
つまり、モードフィルタ300では、第2の光ファイバ200Bから高次モード及び基本モードの受信光が曲げ導波路301内を導波した場合、曲げ導波路301で高次モードが放射されることで基本モードの受信光を第1の光ファイバ200Aに出力する。そして、第1の光ファイバ200Aは、モードフィルタ300から基本モードの受信光を導波する。
【0011】
そして、光デバイス100は、第1の光ファイバ200Aから基本モードの受信光を伝送路ポート131Cから光導波路131内に入力する。光導波路131内の波長フィルタ132は、光導波路131を導波する基本モードの受信光を光出力ポート131Bに反射する。光受信端子部120は、光出力ポート131Bから入力した基本モードの受信光を受光することになる。
【0012】
また、光デバイス100内の光送信端子部110は、基本モードの送信光を光導波路131内の光入力ポート131Aに入力する。光導波路131内の波長フィルタ132は、光導波路131内を導波する基本モードの送信光を透過し、透過後の基本モードの送信光を伝送路ポート131Cに出力することになる。
【0013】
光デバイス100は、外付けのモードフィルタ300を使用して第2の光ファイバ200Bからの受信光から高次モードを放射することで基本モードの受信光を受光する。その結果、光受信端子部120では、伝送路上で受信光に高次モードが生じたとしても、モードフィルタ300を用いて基本モードの受信光を取得できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平11-258437号公報
【特許文献2】国際公開第2008/108422号
【特許文献3】米国特許出願公開第2002/0031304号明細書
【特許文献4】特開2016-018894号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
図10に示す構成では、モードフィルタ300内の曲げ導波路301の設計パラメータ(MFD径、曲げ曲率、長さ、比屈折率差)を変えることで、曲げ導波路301の導波路長を短くして高次モードの除去量を大きくできる。つまり、光デバイス100の小型化に貢献できる。
【0016】
しかしながら、導波路長を短くした場合、導波路損失や第1の光ファイバ200Aとの結合損失が大きくなってしまう。従って、光ファイバ200Aとの結合損失の影響を最小限に抑制できるモードフィルタを備えた光デバイスが求められているのが実情である。
【0017】
一つの側面では、光ファイバとの結合損失を抑制できる光デバイス等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
一つの態様の光デバイスは、光導波路回路と、前記光導波路回路に送信光を送信する光送信部と、前記光導波路回路からの受信光を受信する光受信部とを有する。前記光導波路回路は、光導波路と、波長合分波器と、モードフィルタとを有する。光導波路は、前記光送信部から出力される前記送信光が入力される第1のポートと、前記送信光が出力される第2のポートとを備え、前記送信光を導波する。更に、光導波路は、前記第2のポートから入力される前記受信光を導波する。波長合分波器は、前記第1のポートと前記第2のポートとの間の前記光導波路に配置されている。モードフィルタは、前記波長合分波器を用いて、入力された前記受信光の高次モードを除去すると共に、前記高次モードが除去された前記受信光を前記光受信部に出力する第3のポートを備えている。
【発明の効果】
【0019】
一つの側面によれば、光ファイバとの結合損失を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、実施例1の光デバイスの一例を示す説明図である。
【
図2】
図2は、実施例1の光デバイスの一例を示す説明図である。
【
図3】
図3は、光デバイス内の各部位を通過する受信光の変化の一例を示す説明図である。
【
図4】
図4は、実施例2の光デバイスの一例を示す説明図である。
【
図5】
図5は、実施例2の光デバイスの一例を示す説明図である。
【
図6】
図6は、実施例3のモードフィルタの一例を示す説明図である。
【
図7】
図7は、実施例4のモードフィルタの一例を示す説明図である。
【
図8】
図8は、本実施例の光送受信装置の一例を示す説明図である。
【
図9】
図9は、光デバイスの一例を示す説明図である。
【
図10】
図10は、光デバイスとモードフィルタとを接続した構成の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面に基づいて、本願の開示する光デバイス等の実施例を詳細に説明する。尚、本実施例により、開示技術が限定されるものではない。また、以下に示す各実施例は、矛盾を起こさない範囲で適宜組み合わせても良い。
【実施例0022】
図1及び
図2は、実施例1の光デバイス1の一例を示す説明図である。
図1に示す光デバイス1は、一芯双方向光デバイスである。光デバイス1は、基板2と、基板2上に形成された光導波路回路3と、光導波路回路3に送信光を送信する光送信部11と、光導波路回路3からの受信光を受信する光受信部12とを有する。光導波路回路3は、光導波路3Aと、モードフィルタ4である曲げ導波路3Bと、波長合分波器5とを有する。
【0023】
光導波路3Aは、光送信部11から出力される送信光が入力される第1のポート3A1と、送信光が光ファイバFCに出力される第2のポート3A2とを備え、送信光を導波する。更に、光導波路3Aは、第2のポート3A2から入力される光ファイバFCからの受信光を導波する。波長合分波器5は、第1のポート3A1と第2のポート3A2との間の光導波路3Aに配置されている。モードフィルタ4は、波長合分波器5を用いて、光導波路3Aから入力された受信光が入力されると、受信光の高次モードを除去すると共に、高次モードが除去された受信光を光受信部12に出力する第3のポート3B1を備えている。モードフィルタ4は、受信光が曲げ導波路3Bを導波することで受信光の高次モードを放射することで高次モードを除去する。
【0024】
光送信部11は、送信側IC11Aと、発光素子11Bと、発光素子11Bと第1のポート3A1との間を光結合する第1の光部品11Cと、金属ワイヤ11Dと、を有する。送信側IC11Aは、送信データに応じて電気信号を発光素子11Bに出力する。発光素子11Bは、電気信号に応じて送信光を発光する。発光素子11Bは、例えば、シングルモードの信号光を出力するLDである。第1の光部品11Cは、発光素子11Bからの送信光を集光する第1の集光レンズ11C1と、集光した送信光を第1のポート3A1に反射する第1の光路変換プリズム11C2とを有する。
【0025】
光受信部12は、受信側IC12Aと、受光素子12Bと、受光素子12Bと第3のポート3B1との間を光結合する第2の光部品12Cと、金属ワイヤ12Dと、を有する。第2の光部品12Cは、第2の光路変換プリズム12C1と、第2の集光レンズ12C2とを有する。第2の光路変換プリズム12C1は、モードフィルタ4からの受信光を第3のポート3B1から第2の集光レンズ12C2に反射する。第2の集光レンズ12C2は、第2の光路変換プリズム12C1にて反射された受信光を受光素子12Bに集光する。受光素子12Bは、受信光に応じて電気信号に変換し、変換後の電気信号を受信側IC12Aに出力する。受信側IC12Aは、受光素子12Bからの電気信号から受信データを取得する。
【0026】
波長合分波器5は、第1のポート3A1からの送信光を光導波路3Aの第2のポート3A2に透過出力すると共に、第2のポート3A2からの受信光をモードフィルタ4である曲げ導波路3Bに反射する。
【0027】
モードフィルタ4は、高次モードを放射する条件の曲率を有する曲げ導波路3Bで構成する。モードフィルタ4は、最短距離の光回路構成で出力するような導波路レイアウト(曲げ曲率、長さ)とすることが好ましい。モードフィルタ4は、波長合分波器5で反射された受信光が導波することで、受信光の高次モードを放射して基本モードの受信光を第3のポート3B1に出力する。
【0028】
光送信部11は、例えば、VCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting Laser)送信器である。光送信部11は、通常、857ナノ帯の信号光を使用するが、1μm帯の送信光でも使用できる。光送信部11は、シングルモードの送信光を発振する発光素子11Bを有する。光ファイバFCは、例えば、1.3μm帯のSMF(Single Mode Fiber)の光ファイバである。送信光又は受信光は、例えば、1.3μm帯のSMFの光ファイバFCのカットオフ波長である1.26μm以下の波長帯を使用する。
【0029】
図3は、光デバイス1内の各部位を通過する受信光の変化の一例を示す説明図である。光ファイバFCから光デバイス1に入力する受信光は、伝送路上の反射等の影響で基本モードの他に、高次モードが発生する。従って、光デバイス1は、光ファイバFCから高次モード及び基本モードの受信光を第2のポート3A2から光導波路3Aに入力する。
【0030】
光導波路3A内に配置された波長合分波器5は、光導波路3Aを導波する受信光をモードフィルタ4に反射し、反射された受信光をモードフィルタ4に出力する。尚、受信光は、前述した通り、光ファイバFCから入力した基本モード及び高次モードの受信光である。
【0031】
モードフィルタ4は、受信光が導波して高次モードが放射されることで、基本モードの受信光を受光素子12Bに出力することになる。つまり、光デバイス1は、光ファイバFCからの受信光を、波長合分波器5を用いてモードフィルタ4に反射し、モードフィルタ内を受信光が導波することで高次モードが放射されて基本モードの受信光が透過出力することになる。その結果、受信光の高次モードを除去できる。
【0032】
光デバイス1は、発光素子11Bからの送信光を第1のポート3A1から光導波路3A内に入力する。そして、光導波路3A内に配置された波長合分波器5は、送信光を透過して第2のポート3A2に出力する。そして、光デバイス1は、第2のポート3A2から光ファイバFCに送信光を出力する。
【0033】
つまり、光デバイス1は、発光素子11Bからの送信光を、モードフィルタ4を経由することなく、光導波路3A経由で光ファイバFCに出力するため、送信光のモードフィルタ4による光損失を抑制できる。
【0034】
ここで、実施例1の光デバイス1の光損失と
図10に示す光デバイス100の光損失とについて検証した。
図10に示す光デバイス100における送信側の光損失として、光送信端子部110の結合損失が1dB、モードフィルタ300の損失が0.3dB、第1の光ファイバ200Aとモードフィルタ300との間の結合損失が0.5dBとなる。更に、送信側の光損失として、第1の光ファイバ200Aと光デバイス100との間の結合損失が0.5dB、融着損失が0.1dBとなる。従って、送信側の光損失は、合計2.4dBとなる。
【0035】
光デバイス100における受信側の光損失として、光受信端子部120の結合損失が0.5dB、モードフィルタ300の損失が0.3dB、第1の光ファイバ200Aとモードフィルタ300との間の結合損失が0.5dBとなる。更に、受信側の光損失として、第1の光ファイバ200Aと光デバイス100との間の結合損失が0.5dB、融着損失が0.1dBとなる。従って、受信側の光損失は、合計1.9dBとなる。
【0036】
これに対して、実施例1の光デバイス1の送信側の光損失として、光送信部11の結合損失が1dB、光ファイバFCと光デバイス1との間の結合損失が0.5dBとなる。送信側の光損失は、合計1.5dBとなる。受信側の光損失は、光受信部12の結合損失が0.5dB、モードフィルタ4の損失が0.3dB、光ファイバFCと光デバイス1との間の結合損失が0.5dBとなる。従って、受信側の光損失は、合計1.3dBとなる。
【0037】
つまり、実施例1の光デバイス1の送信側の光損失は、
図10に示す光デバイス100に比較して0.9dB、受信側の光損失は、光デバイス100に比較して0.6dBの光損失を改善できる。従って、光デバイス1では、更なる伝送距離の延長を図ることができる。
【0038】
実施例1の光デバイス1では、受信側のみにモードフィルタ4を配置するため、送受信側での結合損失を抑制しながら、光ファイバFCで発生しうる高次モード成分を除去することで、受信感度の向上を図る。つまり、小型かつ低損失な一芯双方向光デバイスを実現できる。
【0039】
光デバイス1は、光導波路回路3の光導波路3Aに波長合分波器5を配置し、送信光がモードフィルタ4を介さずに第2のポート3A2から出力する構成にしたので、送信光の低損失化を図ることができる。
【0040】
光デバイス1は、第2のポート3A2から入力された受信光は伝送路内で高次モードが発生しうる場合があるため、波長合分波器5を用いて受信光をモードフィルタ4に反射してモードフィルタ4内を受信光が導波する。そして、光デバイス1は、モードフィルタ4内を受信光が導波することで、高次モードを除去して基本モードの受信光を光受信部12に出力する。その結果、結合損失を抑制しながら、光ファイバFCで発生しうる高次モード成分を除去することで、受信感度の向上を図る。
【0041】
光デバイス1は、発光素子11Bの直近に送信側IC11A及び受光素子12Bの直近に受信側IC12Aを配置する構成が可能になるため、高周波特性を得ることができる。
【0042】
光デバイス1は、例えば、1.3μm帯のSMFの光ファイバFCのカットオフ波長である1.26μm以下の波長帯を送信光又は受信光に使用したので、この波長帯を使用しても長距離伝送及び高ビットレートの伝送が実現できる。
【0043】
尚、実施例1の光デバイス1では、送信光が出力される第2のポート3A2と光ファイバFCとが直接光接続される場合を例示したが、これに限定されるものではない。例えば、第2のポート3A2と光ファイバFCとの間にレンズ光学系を配置しても構わない。
【0044】
尚、実施例1の光デバイス1では、発光素子11Bと第1のポート3A1との間を光結合する第1の光部品11Cと、受光素子12Bと第3のポート3B1との間を光結合する第2の光部品12Cとを有する場合を例示したが、これに限定されるものではない。そこで、その実施の形態につき、実施例2として以下に説明する。
図4及び
図5は、実施例2の光デバイスの一例を示す説明図である。尚、実施例1の光デバイス1と同一の構成には同一符号を付すことで、その重複する構成及び動作の説明については省略する。
第1のフォトニックワイヤボンド20Aは、発光素子11Bと第1のポート3A1との間を光結合する光導波路である。第2のフォトニックワイヤボンド20Bは、受光素子12Bと第3のポート3B1との間を光結合する光導波路である。第1のフォトニックワイヤボンド20A及び第2のフォトニックワイヤボンド20Bは、例えば、UV硬化性樹脂等のフォトニックワイヤボンドで構成する。
実施例2の光デバイス1Aでは、発光素子11Bと第1のポート3A1との間を第1のフォトニックワイヤボンド20Aで光結合すると共に、受光素子12Bと第3のポート3B1との間を第2のフォトニックワイヤボンド20Bで光結合する。その結果、発光素子11Bと第1のポート3A1との間と、受光素子12Bと第3のポート3B1との間における光結合の向上を図る。
尚、説明の便宜上、光導波路3A上に波長合分波器5を使用する場合を例示したが、受信光と送信光とが異なる波長を使用して方向性結合器を使用しても良く、適宜変更可能である。
モードフィルタ4は、曲げ導波路3Bで構成する場合を例示したが、高次モードを除去できる機能であればよく、その実施の形態につき、実施例3及び実施例4として以下に説明する。