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  • 特開-接着性重合体組成物及び積層体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111724
(43)【公開日】2024-08-19
(54)【発明の名称】接着性重合体組成物及び積層体
(51)【国際特許分類】
   C09J 123/10 20060101AFI20240809BHJP
   C09J 123/08 20060101ALI20240809BHJP
   C09J 7/35 20180101ALI20240809BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240809BHJP
   B32B 1/08 20060101ALI20240809BHJP
   F16L 11/04 20060101ALI20240809BHJP
【FI】
C09J123/10
C09J123/08
C09J7/35
B32B27/00 D
B32B1/08
F16L11/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023016396
(22)【出願日】2023-02-06
(71)【出願人】
【識別番号】515107720
【氏名又は名称】MCPPイノベーション合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】工藤 健二
【テーマコード(参考)】
3H111
4F100
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
3H111AA02
3H111BA15
3H111CB04
3H111DB09
4F100AK03A
4F100AK03G
4F100AK46B
4F100AL01A
4F100AL01G
4F100AL01J
4F100AL05A
4F100AL05G
4F100AL07A
4F100AL07G
4F100AL07J
4F100BA02
4F100BA03
4F100CB02A
4F100CB02G
4F100DA11
4F100GB32
4F100GB51
4F100GB90
4F100JD02
4F100JD05
4F100JJ03
4J004AA07
4J004AB03
4J004BA02
4J004CA04
4J004CA06
4J004CB03
4J004CC02
4J004FA08
4J004FA10
4J040DA021
4J040DA022
4J040DA091
4J040DA122
4J040DA162
4J040JB01
4J040LA01
4J040LA02
4J040LA08
4J040LA11
4J040MB06
4J040NA08
(57)【要約】
【課題】優れた接着強度を有し、かつ、加熱された後も良好な接着強度を維持できる、耐熱性に優れた接着性重合体組成物を提供する。
【解決手段】成分(A):プロピレン系重合体、成分(B):密度が0.94g/cm以上0.97g/cm以下のエチレン系重合体、並びに、成分(C):不飽和カルボン酸及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種で変性されたプロピレン・エチレン共重合体、を含む接着性重合体組成物。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)~成分(C)を含む接着性重合体組成物。
成分(A):プロピレン系重合体
成分(B):密度が0.94g/cm以上0.97g/cm以下のエチレン系重合体
成分(C):不飽和カルボン酸及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種で変性されたプロピレン・エチレン共重合体
【請求項2】
前記成分(C)が、マレイン酸及び無水マレイン酸の少なくとも一方で変性されたプロピレン・エチレン共重合体である、請求項1に記載の接着性重合体組成物。
【請求項3】
前記成分(A)のJIS K 7210:2014年に準拠し、温度230℃、荷重21.2Nの条件で測定されるメルトフローレートが0.1~50g/10分であり、かつ、
前記成分(B)のJIS K 7210:2014年に基づき、温度190℃、荷重21.2Nの条件で測定されるメルトフローレートが0.1~20g/10分である、請求項1に記載の接着性重合体組成物。
【請求項4】
前記成分(C)における変性量が0.5質量%以上である、請求項1に記載の接着性重合体組成物。
【請求項5】
前記成分(C)における前記プロピレン・エチレン共重合体がランダム共重合体又はブロック共重合体である、請求項1に記載の接着性重合体組成物。
【請求項6】
前記成分(A)及び前記成分(B)の合計に対する前記成分(A)の含有率が51~75質量%である、請求項1に記載の接着性重合体組成物。
【請求項7】
前記成分(A)の含有率が51~65質量%である、請求項6に記載の接着性重合体組成物。
【請求項8】
前記成分(A)及び前記成分(B)の合計100質量部に対する前記成分(C)の含有量が0.5~15質量部である、請求項1に記載の接着性重合体組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の接着性重合体組成物からなる接着層、及び、ガスバリア層が積層された構成を含む、積層体。
【請求項10】
前記ガスバリア層がポリアミドを含む層である、請求項9に記載の積層体。
【請求項11】
中空成形品である、請求項9に記載の積層体。
【請求項12】
前記中空成形品がチューブである、請求項11に記載の積層体。
【請求項13】
前記チューブがクーラントチューブであり、
前記ガスバリア層、前記接着層、及びポリオレフィン系重合体層がこの順に積層された構成を含む、請求項12に記載の積層体。
【請求項14】
前記ポリオレフィン系重合体層の、JIS K 6253:2006年に基づき測定されるデュロD硬度が25~70である、請求項13に記載の積層体。
【請求項15】
シートである、請求項9に記載の積層体。
【請求項16】
燃料部品に用いられる、請求項9に記載の積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着性重合体組成物及び積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン系重合体は成形性や耐薬品性に優れ、各種分野で幅広く利用されている。
一方で、ポリオレフィン系重合体はガスバリア性や機械的強度に劣る。そこで、ポリオレフィン系重合体からなる層を、ガスバリア性に優れたポリアミドやエチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物(EVOH)からなるガスバリア層との積層体とする方法が広く採用されている。
【0003】
また、上記積層体において、ガスバリア層とポリオレフィン系重合体からなる層とを接着する接着層を設ける場合、極性基で変性されたポリオレフィン系重合体を含む接着性重合体組成物からなる接着層が用いられている。
【0004】
積層体は、「主材層/接着層/ガスバリア層/接着層/主材層」の5層構成が基本的な層構成であり、その中でもコストと衛生性の観点から、ポリオレフィン系重合体からなる層を主材層に用いる構造が主流である。
【0005】
主材層に用いられるポリオレフィン系重合体として、例えば、使用温度域が0℃以下の低温から100℃前後の場合は、エチレン系重合体が一般的に使用されてきた。また、レトルト処理などの高温耐熱性を要求される用途や硬度、透明性等を要求される用途では、プロピレン系重合体が一般的に使用されてきた。
【0006】
通常、エチレン系重合体からなる主材層には、極性基で変性されたエチレン系重合体を含む接着性重合体組成物からなる接着層が使用される。また、プロピレン系重合体からなる主材層には、極性基で変性されたプロピレン系重合体を含む接着性重合体組成物からなる接着層が使用される。
【0007】
上記接着層のうち、極性基で変性されたプロピレン系重合体を含む接着性重合体組成物は、耐熱性が十分に良好であり、剛性も高いものの、接着強度の観点で、改良が望まれる。
【0008】
これに対し、特許文献1では、ポリプロピレン系樹脂、高密度ポリエチレン、及び、変性量が1質量%以上である変性プロピレン系樹脂を、特定量含む接着性樹脂組成物が開示されている。これにより、共押出成形性に優れるとともに、層間接着性及び強度に優れる積層体を得ることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2019-210317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
プロピレン系重合体を含む接着性重合体組成物は、クーラントチューブや燃料部品等に用いる際や、所望する形状に変形させる際等に、高温環境下に曝されることがある。これに対し、本発明者は、特許文献1に記載された接着性樹脂組成物は、接着強度に優れるものの、耐熱性が十分ではなく、特に長期間高温環境下に曝された後の接着性が低下するといった課題を有することに想到した。
【0011】
そこで本発明は、優れた接着強度を有し、かつ、加熱された後も良好な接着強度を維持できる、耐熱性に優れた接着性重合体組成物、及び、上記接着性重合体組成物からなる接着層を有する積層体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、プロピレン系重合体及び密度が特定範囲にあるエチレン系重合体に対し、さらに不飽和カルボン酸変性プロピレン・エチレン共重合体を含む接着性重合体組成物とすることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の要旨は以下のとおりである。
【0013】
本発明の態様1は、下記成分(A)~成分(C)を含む接着性重合体組成物である。
成分(A):プロピレン系重合体
成分(B):密度が0.94g/cm以上0.97g/cm以下のエチレン系重合体
成分(C):不飽和カルボン酸及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種で変性されたプロピレン・エチレン共重合体
【0014】
本発明の態様2は、態様1の接着性重合体組成物において、前記成分(C)が、マレイン酸及び無水マレイン酸の少なくとも一方で変性されたプロピレン・エチレン共重合体である。
【0015】
本発明の態様3は、態様1又は態様2の接着性重合体組成物において、前記成分(A)のJIS K 7210:2014年に準拠し、温度230℃、荷重21.2Nの条件で測定されるメルトフローレートが0.1~50g/10分であり、かつ、前記成分(B)のJIS K 7210:2014年に基づき、温度190℃、荷重21.2Nの条件で測定されるメルトフローレートが0.1~20g/10分である。
【0016】
本発明の態様4は、態様1~態様3のいずれか1つの接着性重合体組成物において、前記成分(C)における変性量が0.5質量%以上である。
【0017】
本発明の態様5は、態様1~態様4のいずれか1つの接着性重合体組成物において、前記成分(C)における前記プロピレン・エチレン共重合体がランダム共重合体又はブロック共重合体である。
【0018】
本発明の態様6は、態様1~態様5のいずれか1つの接着性重合体組成物において、前記成分(A)及び前記成分(B)の合計に対する前記成分(A)の含有率が51~75質量%である。
【0019】
本発明の態様7は、態様6の接着性重合体組成物において、前記成分(A)の含有率が51~65質量%である。
【0020】
本発明の態様8は、態様1~態様7のいずれか1つの接着性重合体組成物において、前記成分(A)及び前記成分(B)の合計100質量部に対する前記成分(C)の含有量が0.5~15質量部である。
【0021】
本発明の態様9は、態様1~態様8のいずれか1つの接着性重合体組成物からなる接着層、及び、ガスバリア層が積層された構成を含む、積層体である。
【0022】
本発明の態様10は、態様9の積層体において、前記ガスバリア層がポリアミドを含む層である。
【0023】
本発明の態様11は、態様9又は態様10の積層体が中空成形品である。
【0024】
本発明の態様12は、態様11の積層体である中空成形品がチューブである。
【0025】
本発明の態様13は、態様12の積層体であるチューブがクーラントチューブであり、前記ガスバリア層、前記接着層、及びポリオレフィン系重合体層がこの順に積層された構成を含む。
【0026】
本発明の態様14は、態様13の積層体において、前記ポリオレフィン系重合体層の、JIS K 6253:2006年に基づき測定されるデュロD硬度が25~70である。
【0027】
本発明の態様15は、態様9又は態様10の積層体がシートである。
【0028】
本発明の態様16は、態様9~態様14のいずれか1つの積層体が燃料部品に用いられる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、優れた接着強度を有し、かつ、加熱された後も良好な接着強度を維持できる、耐熱性に優れた接着性重合体組成物を提供できる。そのため、上記接着性重合体組成物からなる接着層を有する積層体は、加熱により変形させる場合や、クーラントチューブや燃料部品等の高温環境下に曝される用途にも、非常に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1は、本実施形態におけるクーラントチューブの構成を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に本発明の実施形態を詳細に説明するが、以下の実施形態は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はこれらに限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。
本明細書において、「~」を用いてその前後に数値又は物性値を挟んで表現する場合、その前後の値を含むものとして用いることとする。また、本明細書において“質量%”と“重量%”、及び“質量部”と“重量部”とは、それぞれ同義である。
【0032】
〈接着性重合体組成物〉
本実施形態に係る接着性重合体組成物は、下記成分(A)~成分(C)を含む。
成分(A):プロピレン系重合体
成分(B):密度が0.94g/cm以上0.97g/cm以下のエチレン系重合体
成分(C):不飽和カルボン酸及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種で変性されたプロピレン・エチレン共重合体
【0033】
《成分(A):プロピレン系重合体》
本実施形態における成分(A)はプロピレン系重合体である。
上記プロピレン系重合体は、本実施形態に係る接着性重合体組成物に耐熱性及び剛性を付与する成分である。また、上記プロピレン系重合体は、接着性重合体組成物を接着層として、プロピレン系重合体層と接着させる際の密着性及び押出加工性を付与するための成分でもある。
【0034】
本実施形態における成分(A)であるプロピレン系重合体としては、例えば、プロピレン単独重合体(プロピレンホモポリマー)、プロピレン・α-オレフィン共重合体が挙げられる。中でも、耐熱性と剛性のバランスの観点から、プロピレン単独重合体が好ましい。
【0035】
プロピレン・α-オレフィン共重合体としてはプロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・ブテン共重合体、プロピレン・エチレン・ヘキセン共重合体、プロピレン・エチレン・オクテン共重合体、プロピレン・ブテン・ヘキセン共重合体、プロピレン・ブテン・オクテン共重合体、又はプロピレン・ヘキセン・オクテン共重合体等のプロピレン系(共)重合体が挙げられる。上記共重合体はいずれも、ランダム共重合体やブロック共重合体が例示される。
なお、本明細書において、「(共)重合体」とは、単独重合体と共重合体の総称である。また、「プロピレン系重合体」は、プロピレン単独重合体およびプロピレン共重合体の総称である。
【0036】
本実施形態における成分(A)のプロピレン系重合体は、1種のみを用いてもよく、組成や物性等の異なるものを2種以上併用してもよい。2種以上を併用する場合、プロピレン系ランダム共重合体とプロピレン系ブロック重合体との組み合わせなど、構造等の異なるものの組み合わせであってもよい。
【0037】
本実施形態における成分(A)のプロピレン系重合体におけるプロピレン単位の含有率は80~100モル%が好ましい。ここで、耐熱性の観点から、上記含有率は80モル%以上が好ましく、85モル%以上がより好ましい。また、上記含有率の上限は特に限定されず、100モル%であってもよい。なお、上記含有率が100モル%とは、成分(A)であるプロピレン系重合体がプロピレン単独重合体であることを意味する。
また、本明細書における「単位」とは、共重合体に含まれる単量体単位を意味する。例えば、プロピレン系重合体における「プロピレン単位」とは、プロピレンに基づく単量体単位を意味する。同様に、エチレンに基づく単量体単位は「エチレン単位」と称する。
【0038】
本実施形態における成分(A)のプロピレン系重合体は、製造しても、市販のものを用いてもよい。プロピレン系重合体を製造する場合には、従来公知の方法によって製造される。
プロピレン系重合体の製造方法としては、例えば、チーグラーナッタ触媒、メタロセン触媒等の触媒を用いた、バッチ法、気相法、スラリー法等の公知の手段が挙げられる。
【0039】
本実施形態における成分(A)であるプロピレン系重合体の曲げ弾性率は、800~2000MPaが好ましく、1000~1800MPaがより好ましい。ここで、剛性の観点から、上記曲げ弾性率は800MPa以上が好ましく、1000MPa以上がより好ましい。また、同様の理由から、上記曲げ弾性率は2000MPa以下が好ましく、1800MPa以下がより好ましい。
なお、本明細書における曲げ弾性率は、JIS K 7171:1994年に準拠して測定される値である。
【0040】
本実施形態における成分(A)であるプロピレン系重合体のメルトフローレート(MFR)は特に限定されないが、0.1~50g/10分が好ましく、0.3~20g/10分がより好ましく、0.5~5g/10分がさらに好ましい。ここで、製造する際のエネルギー負荷低減と成形品の加工特性の観点から、上記MFRは0.1g/10分以上が好ましく、0.3g/10分以上がより好ましく、0.5g/10分以上がさらに好ましい。また、同様の観点から、上記MFRは50g/10分以下が好ましく、20g/10分以下がより好ましく、5g/10分以下がさらに好ましい。
なお、本明細書において、成分(A)のプロピレン系重合体のメルトフローレート(MFR)は、JIS K 7210:2014年に準拠し、温度230℃、荷重21.2N、10分の条件で測定される値である。
【0041】
本実施形態における成分(A)であるプロピレン系重合体の一態様として、プロピレン系重合体におけるプロピレン単位の含有率が80~100モル%であり、かつ、曲げ弾性率が800~2000MPaであること、及び、メルトフローレート(MFR)が0.1~50g/10分であることの少なくとも一方を満たすことが好ましく、双方を満たすことがより好ましい。
【0042】
《成分(B):エチレン系重合体》
本実施形態における成分(B)は、密度が0.94g/cm以上0.97g/cm以下のエチレン系重合体であり、一般的に高密度ポリエチレンと呼ばれるエチレン系重合体である。
上記エチレン系重合体は、本実施形態に係る接着性重合体組成物に接着性及び機械的強度を付与するための成分である。
【0043】
本実施形態における成分(B)のエチレン系重合体は、例えば、エチレン単独重合体(エチレンホモポリマー)、エチレン・α-オレフィン共重合体が挙げられる。
エチレン・α-オレフィン共重合体としては、例えば、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・ブテン共重合体、エチレン・ヘキセン共重合体、エチレン・オクテン共重合体、エチレン・プロピレン・ブテン共重合体、エチレン・プロピレン・ヘキセン共重合体、エチレン・プロピレン・オクテン共重合体、エチレン・ブテン・ヘキセン共重合体、エチレン・ブテン・オクテン共重合体、もしくはエチレン・ヘキセン・オクテン共重合体等が挙げられる。上記共重合体はランダム共重合体又はブロック共重合体が好ましい。また、これらの中でも、エチレン・ブテン共重合体、エチレン・ヘキセン共重合体が好ましく、エチレン・ブテンランダム共重合体、エチレン・ブテンブロック共重合体、エチレン・ヘキセンランダム共重合体、エチレン・ヘキセンブロック共重合体がより好ましい。
【0044】
本実施形態における成分(B)のエチレン系重合体は、1種のみを用いてもよく、組成や物性等の異なるものを2種以上併用してもよい。
【0045】
本実施形態における成分(B)のエチレン系重合体におけるエチレン単位の含有率は80~100モル%が好ましい。ここで、耐熱性の観点から、上記含有率は80モル%以上が好ましく、90モル%以上がより好ましい。また、上記含有率の上限は特に限定されず、100モル%、すなわちエチレン単独重合体でもよいが、エチレン・α-オレフィン共重合体とする場合には、99.9モル%以下がより好ましい。
【0046】
なお、本実施形態に係る接着性重合体組成物が、単量体単位として、プロピレン及びエチレンを含む共重合体を含む場合、共重合体におけるプロピレン単位の含有率とエチレン単位の含有率の多寡により、成分(A)のプロピレン系重合体であるか、成分(B)のエチレン系重合体であるかが決定される。
【0047】
すなわち、共重合体におけるプロピレン単位の含有率がエチレン単位の含有率よりも多い場合には、かかる共重合体は成分(A)のプロピレン系重合体に分類される。また、共重合体におけるエチレン単位の含有率がプロピレン単位の含有率よりも多い場合には、かかる共重合体はエチレン系重合体に分類され、さらにその密度が0.94g/cm以上0.97g/cm以下である場合には、成分(B)のエチレン系重合体に分類される。
【0048】
さらに、共重合体が三元以上の共重合体である場合には、共重合体における単量体単位のうち、プロピレン単位の含有率が最も多い場合に、かかる共重合体は成分(A)のプロピレン系共重合体に分類される。同様にエチレン単位の含有率が最も多い場合に、かかる共重合体はエチレン系共重合体に分類され、その密度が0.94g/cm以上0.97g/cm以下である場合には、成分(B)のエチレン系重合体に分類される。
【0049】
本実施形態における成分(B)のエチレン系重合体は、製造しても、市販のものを用いてもよい。エチレン系重合体を製造する場合には、従来公知の方法によって製造される。
エチレン系重合体の製造方法としては、クロム系触媒を用いる方法、チーグラーナッタ触媒を用い、溶媒中で重合する方法、気相中で重合する方法等が挙げられる。また、重合方法に関しては、単段にて重合されたものの他、多段重合されたものも選択可能である。この重合方法の選択により、分子量分布を調整することができる。
【0050】
本実施形態における成分(B)であるエチレン系重合体の密度は、0.94~0.97g/cmであり、0.94~0.965g/cmが好ましく、0.945~0.96g/cmがより好ましい。ここで、剛性と耐熱性の観点から、上記密度は0.94g/cm以上が好ましく、0.945g/cm以上がより好ましい。また、接着性の観点から、上記密度は0.97g/cm以下が好ましく、0.965g/cm以下がより好ましく、0.96g/cm以下がさらに好ましい。
なお、本明細書における密度は、JIS K 7112:1999年に準拠し、水中置換法で測定される値である。
【0051】
本実施形態における成分(B)であるエチレン系重合体のメルトフローレート(MFR)は特に限定されないが、0.1~20g/10分が好ましく、0.1~10g/10分がより好ましく、0.1~5g/10分がさらに好ましい。ここで、成形した際の外観や成分(B)の微分散性保持の観点から、上記MFRは0.1g/10分以上が好ましい。また、同様の観点から、上記MFRは20g/10分以下が好ましく、10g/10分以下がより好ましく、5g/10分以下が更に好ましい。
なお、本明細書において、成分(B)のエチレン系重合体のメルトフローレート(MFR)は、JIS K 7210:2014年に準拠し、温度190℃、荷重21.2N、10分の条件で測定される値である。
【0052】
成分(B)であるエチレン系重合体のメルトフローレート(MFR)が上記範囲であることに加え、成分(A)であるプロピレン系重合体のメルトフローレート(MFR)が0.1~50g/10分であることがより好ましく、0.3~20g/10分であることがさらに好ましく、0.5~5g/10分であることがよりさらに好ましい。
【0053】
本実施形態における成分(B)であるエチレン系重合体の分子量分布(Mw/Mn)は3~20が好ましく、5~19がより好ましい。ここで、接着強度と加工性の観点から、上記分子量分布は3以上が好ましく、5以上がより好ましい。また、同様の観点から、上記分子量分布は20以下が好ましく、19以下がより好ましい。
なお、本明細書において、成分(B)であるエチレン系重合体の分子量分布における重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されたポリスチレン換算の値であり、測定されたMwとMnの比として分子量分布(Mw/Mn)が算出される。
【0054】
本実施形態における成分(B)であるエチレン系重合体の一態様として、密度が0.94~0.97g/cmであることに加え、エチレン系重合体におけるエチレン単位の含有率が80~100モル%であることが好ましい。さらに、メルトフローレート(MFR)が0.1~20g/10分であること、及び、分子量分布(Mw/Mn)が3~20であることの少なくとも一方を満たすことがより好ましく、双方を満たすことがさらに好ましい。
【0055】
《成分(C):変性プロピレン・エチレン共重合体》
本実施形態における成分(C)は、不飽和カルボン酸及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種で変性されたプロピレン・エチレン共重合体(以下、単に「変性プロピレン・エチレン共重合体」と称することがある。)である。
【0056】
上記変性プロピレン・エチレン共重合体は、本実施形態に係る接着性重合体組成物の接着性に寄与する成分であるが、良好な接着性に加え、加熱された後の良好な接着性にも寄与することが分かった。
接着層に用いられる接着性重合体組成物は、一般的に、加熱されると膨潤し、冷却されると収縮するが、加熱・冷却が繰り返されると、接着層と被接着層との膨潤収縮挙動の相違により、接着性が低下すると考えられる。これに対し、上記本実施形態に係る接着性重合体組成物は、上記成分(C)の変性プロピレン・エチレン共重合体を含有することにより、膨潤収縮挙動への追従性が向上し、加熱された後も良好な接着強度を維持できるものと考えている。
【0057】
本実施形態における成分(C)の変性プロピレン・エチレン共重合体は、ランダム共重合体又はブロック共重合体が好ましく、成分(C)による効果をより好適に奏する観点から、ランダム共重合体がより好ましい。
【0058】
本実施形態における成分(C)の変性プロピレン・エチレン共重合体は、1種のみを用いてもよく、単量体組成や物性、グラフト変性に用いた不飽和カルボン酸成分の種類や、変性量の異なるもの等を2種以上併用してもよい。
【0059】
本実施形態における成分(C)である変性プロピレン・エチレン共重合体のメルトフローレート(MFR)は特に限定されないが、0.1~150g/10分が好ましく、0.1~100g/10分がより好ましく、0.1~50g/10分がさらに好ましい。ここで、接着性の観点から、上記MFRは150g/10分以下が好ましく、100g/10分以下がより好ましく、50g/10分以下がさらに好ましい。また、MFRの下限は特に制限はないが、一般的に製造可能な観点から通常0.1g/10分以上である。
なお、本明細書において、成分(C)である変性プロピレン・エチレン共重合体のメルトフローレート(MFR)は、JIS K 7210:2014年に準拠し、温度180℃、荷重21.2N、10分の条件で測定される値である。
【0060】
本実施形態における成分(C)の変性プロピレン・エチレン共重合体の原料となる、変性前のプロピレン・エチレン共重合体(以下「原料ポリプロピレン」と称す場合がある。)の単量体単位の主成分はプロピレンであり、さらに、エチレンも単量体単位とする。
また、上記原料ポリプロピレンが三元以上の共重合体である場合には、プロピレン、エチレン以外のα-オレフィンも単量体単位としてよい。プロピレン、エチレン以外のα-オレフィンとしては、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン等が挙げられる。
成分(A)及び成分(B)との相溶性の観点から、成分(C)の原料となる原料ポリプロピレンは、プロピレンとエチレンの二元共重合体が好ましい。
【0061】
成分(C)の原料となる原料ポリプロピレンは、1種のみを用いてもよく、組成や物性等の異なるものを2種以上併用してもよい。
【0062】
ここで主成分とは、原料ポリプロピレンにおけるプロピレン単位の含有率が50モル%以上であることを意味し、上記含有率は80~99.9モル%が好ましく、85~99.5モル%がより好ましい。
ここで、上記含有率は50モル%以上であればよいが、成分(A)との相溶性の観点から、上記含有率は80モル%以上が好ましく、85モル%以上がより好ましい。また、熱処理後の接着性の観点から、上記含有率は99.9モル%以下が好ましく、99.5モル%以下がより好ましい。
【0063】
また、成分(C)の原料となる原料ポリプロピレンにおけるエチレン単位の含有率は、原料ポリプロピレンがプロピレンとエチレンの二元共重合体である場合、さらにα-オレフィンも単量体単位とした三元以上の共重合体である場合を問わず、0.1~20モル%が好ましく、0.1~15モル%がより好ましい。
ここで、熱処理後の接着性の観点から、上記含有率はモル%以上が好ましく、0.1モル%以上がより好ましい。また、成分(A)との相溶性の観点から、上記含有率は20モル%以下が好ましく、15モル%以下がより好ましい。
【0064】
なお、成分(C)の原料となる原料ポリプロピレンにおける上記プロピレン単位の含有率やエチレン単位の含有率は、変性後の成分(C)である変性プロピレン・エチレン共重合体におけるプロピレン単位の含有率やエチレン単位の含有率と同程度と見做してよい。ただし実際には、変性された際にプロピレン単位のところで分子切断が起きるため、プロピレン単位の含有率やエチレン単位の含有率は変性前後で変わると推測され、厳密に同じ含有率とはならない。
【0065】
成分(C)の原料となる原料ポリプロピレンの立体規則性には制限は無く、プロピレン連鎖はアイソタクティック、シンジオタクティック、アタクティック、ステレオブロック等の何れでもよい。中でも、プロピレン連鎖はアイソタクティックが好ましい。
【0066】
成分(C)の原料となる原料ポリプロピレンは、製造しても、市販のものを用いてもよい。原料ポリプロピレンを製造する場合には、従来公知の方法によって製造される。
原料ポリプロピレンを製造するにあたって、重合に用いる触媒も公知のものを適宜採用することができる。重合形態は、先述したように、ランダム共重合又はブロック共重合が好ましい。
【0067】
成分(C)の原料となる原料ポリプロピレンのメルトフローレート(MFR)は特に限定されないが、0.1~100g/10分が好ましく、0.1~50g/10分がより好ましく、0.1~20g/10分がさらに好ましい。ここで、変性の観点から、上記MFRは100g/10分以下が好ましく、50g/10分以下がより好ましく、20g/10分以下がさらに好ましい。また、MFRの下限は特に制限はないが、一般的に製造可能な観点から通常0.1g/10分以上である。
なお、本明細書において、原料ポリプロピレンのメルトフローレート(MFR)は、JIS K 7210:2014年に準拠し、温度230℃、荷重21.2N、10分の条件で測定される値である。
【0068】
本実施形態における成分(C)の変性プロピレン・エチレン共重合体は、上記原料ポリプロピレンが不飽和カルボン酸及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種(以後、「不飽和カルボン酸成分」と称することがある。)で変性された共重合体である。
不飽和カルボン酸成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。さらには、ビニルトリメトキシシラン等のビニルシラン類等を不飽和カルボン酸成分と共に併用してもよい。
【0069】
変性に用いる不飽和カルボン酸としては、α,β-エチレン性不飽和カルボン酸が好ましく、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ナジック酸TM(エンドシス-ビシクロ[2,2,1]ヘプト-5-エン-2,3ジカルボン酸)等が挙げられる。
【0070】
変性に用いる不飽和カルボン酸の誘導体としては、上記不飽和カルボン酸の酸無水物、カルボン酸エステル等が例示され、更には、酸ハロゲン化物、アミド、イミドなどの誘導体であってもよい。これらの誘導体としては、酸無水物が好ましい。
【0071】
中でも、本実施形態における成分(C)は、マレイン酸及び無水マレイン酸の少なくとも一方で変性されたプロピレン・エチレン共重合体がより好ましく、無水マレイン酸で変性されたプロピレン・エチレン共重合体がさらに好ましい。
【0072】
原料ポリプロピレンを不飽和カルボン酸成分により変性する方法は特に限定されないが、例えば溶融変性法や溶液変性法等が挙げられる。
溶融変性法としては、原料ポリプロピレン及び不飽和カルボン酸成分を、必要によりさらにラジカル発生剤を予め混合した上で、混練機中で溶融混練して反応させる方法が挙げられる。また、溶融変性法の別の態様としては、混練機中で溶融した原料ポリプロピレンに、ラジカル発生剤及び不飽和カルボン酸成分の混合物を、装入口から添加して反応させる方法が挙げられる。
【0073】
上記混合には通常、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、V型ブレンダー等が使用される。
溶融混練には通常、単軸又は二軸押出機、ロール、バンバリーミキサー、ニーダー、ブラベンダーミキサー等が使用される。
【0074】
溶液変性法としては、原料ポリプロピレンを有機溶剤に溶解した溶液に、不飽和カルボン酸成分及びラジカル発生剤等を加え、通常60~350℃、好ましくは80~190℃の温度で、通常0.5~15時間、好ましくは1~10時間反応させる方法が挙げられる。
【0075】
変性反応に用いるラジカル発生剤は特に限定されないが、例えば、ベンゾイルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ジ-tert-ブチルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ペルオキシベンゾエート)ヘキシン-3、ラウロイルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、tert-ブチルペルベンゾエート、tert-ブチルペルイソブチレート、tert-ブチルペルピバレート、及びクミルペルピバレート等の有機ペルオキシドや有機ペルエステル、あるいは、アゾビスイソブチロニトリル、ジメチルアゾイソブチレート等のアゾ化合物等を使用することができる。
【0076】
ラジカル発生剤は、原料ポリプロピレンの種類やMFR、不飽和カルボン酸成分の種類、及び反応条件等に応じて適宜選択することができる。ラジカル発生剤は1種のみを用いても、2種以上を併用してもよい。
【0077】
ラジカル発生剤の配合量は限定されないが、原料ポリプロピレン100質量部に対して0.001~10質量部が好ましく、0.005~7質量部がより好ましい。ここで、ラジカルの分子切断の効果が高くなり過ぎて、分子量が大きく低下する結果、物性、接着性に悪影響を及ぼすおそれを抑制する観点から、上記配合量は10質量部以下が好ましく、7質量部以下がより好ましい。また、適切な反応性を実現し、良好にグラフト変性させる観点から、上記配合量は0.001質量部以上が好ましく、0.005質量部以上がより好ましい。
【0078】
上記変性反応後は、未反応の不飽和カルボン酸成分を除く処理を行ってもよい。この処理方法は特に限定されないが、例えば、装置下部より気体が吹き込める構造を有する貯蔵タンクに変性反応後の変性プロピレン・エチレン共重合体を入れて、ヒーターあるいは熱媒油で装置を100℃程度に加熱し、装置下部より窒素などの不活性気体あるいは空気を吹き込み、6~24時間処理する方法が挙げられる。
【0079】
本実施形態における成分(C)の変性プロピレン・エチレン共重合体における不飽和カルボン酸成分による変性量(グラフト率)は0.5質量%以上が好ましく、0.5~2.0質量%がより好ましく、0.7~1.5質量%がさらに好ましい。ここで、本実施形態に係る接着性重合体組成物において十分な接着性を得る観点から、上記変性量は0.5質量%以上が好ましく、0.7質量%以上がより好ましい。また、上記接着性重合体組成物において、良好な熱安定性及び接着性に加え、さらに他の成分との相溶性も良好とする観点から、上記変性量は2.0質量%以下が好ましく、1.5質量%以下がより好ましい。
【0080】
本明細書において、変性量(グラフト率)とは、赤外分光測定装置で測定して得られる、上記原料ポリプロピレン、すなわち変性前のプロピレン・エチレン共重合体にグラフトした不飽和カルボン酸及びその誘導体の含有率を意味する。
具体的には、成分(C)である変性プロピレン・エチレン共重合体を厚さ100μm程度のシート状にプレス成形したサンプル中の不飽和カルボン酸成分特有の吸収を測定する。不飽和カルボン酸成分特有の吸収とは、1,900~1,600cm-1(C=O伸縮振動帯)のカルボニル特性吸収を用いることができる。
なお、グラフト率は、上記の方法で予め作成した検量線から求めることもできる。
【0081】
なお、不飽和カルボン酸成分による変性は、添加した不飽和カルボン酸成分の100%すべてが反応に供されず、原料ポリプロピレンと反応していない不飽和カルボン酸成分が変性プロピレン・エチレンランダム共重合体中に残留している場合がある。しかしながら、本明細書における上記変性量(グラフト率)は、上記の方法で測定した際の値を意味するものとする。
【0082】
《成分(A)~成分(C)の含有割合》
本実施形態に係る接着性重合体組成物は、上述の成分(A)~成分(C)を、必須成分として含有する。
【0083】
成分(A)と成分(B)の合計に対する成分(A)の含有率は51~75質量%が好ましく、51~70質量%がより好ましく、51~65質量%がさらに好ましく、52~65質量%がよりさらに好ましく、53~65質量%が特に好ましい。すなわち、成分(A)と成分(B)の合計に対する成分(B)の含有率は25~49質量%が好ましく、30~48質量%がより好ましく、35~47質量%がさらに好ましい。
ここで、耐熱性と剛性を維持し、プロピレン系重合体からなる基材層と接着させる際の密着性を確保する観点から、上記成分(A)の含有率は51質量%以上が好ましく、52質量%以上がより好ましく、53質量%以上がさらに好ましく、上記成分(B)の含有率は49質量%が好ましく、48質量%以下がより好ましく、47質量%以下がさらに好ましい。
また、エチレン系重合体からなる基材層やガスバリア層と接着させる際の密着性を確保する観点から、上記成分(A)の含有率は75質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましく、65質量%以下がさらに好ましく、上記成分(B)の含有率は25質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、35質量%以上がさらに好ましい
【0084】
成分(A)と成分(B)の合計100質量部に対する成分(C)の含有量は、0.5~15質量部が好ましく、2~12質量部がより好ましい。ここで、十分な接着性を得る観点から、上記含有量は0.5質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましい。また、加工性、焼けやメヤニ等の発生抑制、吸湿抑制、及びハンドリングの観点から、上記含有量は15質量部以下が好ましく、12質量部以下がより好ましい。
【0085】
成分(A)~成分(C)の含有割合として、例えば、成分(A)と成分(B)の合計に対し、成分(A)の含有率が51~75質量%、成分(B)の含有率が25~49質量%であり、かつ、成分(A)と成分(B)の合計100質量部に対する成分(C)の含有量が0.5~15質量部であることがより好ましい。上記成分(A)及び成分(B)の含有率、並びに、成分(C)の含有量のさらに好ましい態様は、各成分の含有率又は含有量の好ましい態様と同様である。
【0086】
本実施形態に係る接着性重合体組成物における成分(A)~成分(C)の合計の含有率は、70~100質量%が好ましく、75~100質量%がより好ましく、80~100質量%がさらに好ましい。ここで、成分(A)~成分(C)を含むことによる効果を有効に得る観点から、上記合計の含有率は、70質量%以上が好ましく、75質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましい。また、上限は特に限定されず、100質量%以下、すなわち、本実施形態に係る接着性重合体組成物が、成分(A)~成分(C)のみからなってもよい。
【0087】
《その他の成分》
本実施形態に係る接着性重合体組成物は、上記の成分(A)~成分(C)に加え、本発明の効果を著しく損なわない範囲において、各種目的に応じて他の任意の添加剤や樹脂等(以下、「その他の成分」と称することがある。)を含有してもよい。ただし、粘着付与剤は、成形時の発煙、油中への浸出、耐熱性の低下等のおそれがあるため、本実施形態に係る接着性重合体組成物は、粘着付与剤を含有しないことが好ましい。これは、接着性重合体組成物中の粘着付与剤の含有率が5質量%以下であることを意味する。
その他の成分は、1種類のみを含有しても、2種類以上を任意の組合せと比率で含有してもよい。
【0088】
その他の成分のうち、添加剤としては、一般的にポリオレフィンに用いられる補助添加成分を採用できる。具体的には、プロセス油、中和剤、加工助剤、可塑剤、結晶核剤、衝撃改良剤、難燃剤、難燃助剤、架橋剤、架橋助剤、帯電防止剤、滑剤、充填材、相溶化剤、耐熱安定剤、耐候安定剤(酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤など)、防曇剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、抗菌剤、カーボンブラック、着色剤(顔料、染料など)等が挙げられる。
【0089】
添加剤のうち難燃剤は、ハロゲン系難燃剤と非ハロゲン系難燃剤に大別されるが、非ハロゲン系難燃剤が好ましい。
非ハロゲン系難燃剤としては、具体的には、金属水酸化物、リン系難燃剤、窒素含有化合物(メラミン系、グアニジン系)難燃剤、無機系化合物(硼酸塩、モリブデン化合物)難燃剤等が挙げられる。
【0090】
添加剤のうち耐熱安定剤及び酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール類、リン化合物、ヒンダードアミン、イオウ化合物、銅化合物、アルカリ金属のハロゲン化物等が挙げられる。
【0091】
添加剤のうち充填材は、有機充填材と無機充填材に大別される。
有機充填材としては、澱粉、セルロース微粒子、木粉、おから、モミ殻、フスマ等の天然由来のポリマーやこれらの変性品等が挙げられる。
無機充填材としては、タルク、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、ワラストナイト、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、ケイ酸カルシウム、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カルシウム、アルミノ珪酸ナトリウム、珪酸マグネシウム、ガラスバルーン、カーボンブラック、酸化亜鉛、三酸化アンチモン、ゼオライト、金属繊維、金属ウイスカー、セラミックウイスカー、チタン酸カリウム、窒化ホウ素、グラファイト、炭素繊維等が挙げられる。
【0092】
これらの添加剤を用いる場合、本実施形態に係る接着性重合体組成物に対する合計の含有率は、0.01~5質量%が好ましく、0.1~2質量%がより好ましい。ここで、上記合計の含有率は0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、また、5質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましい。
なお、本実施形態に係る接着性重合体組成物をマスターバッチとして用いる場合には、上記添加剤の含有率は、上記範囲の2~50倍、好ましくは3~30倍の濃度で含有させることもできる。
【0093】
その他の成分のうち、樹脂としては、具体的には、例えば、ポリフェニレンエーテル系樹脂;ポリカーボネート樹脂;ナイロン66、ナイロン11等のポリアミド系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリスチレン等のスチレン系樹脂、及びポリメチルメタクリレート系樹脂等のアクリル/メタクリル系樹脂等を挙げることができる。これらは、1種を用いても、2種以上を併用してもよい。
【0094】
本実施形態に係る接着性重合体組成物がこれら樹脂を含有する場合、成分(A)及び成分(B)の合計100質量部に対する合計の含有量は、10質量部以下が好ましい。
【0095】
《接着性重合体組成物の製造方法》
本実施形態に係る接着性重合体組成物は、成分(A)~成分(C)と、必要に応じて添加されるその他の成分とを配合して得られる。
配合方法は特に限定されないが、例えば、溶融法、溶液法、懸濁分散法等が挙げられ、実用的には溶融法が好ましく、溶融混練法がより好ましい。
【0096】
溶融混練は、例えば、粉状又は粒状の成分(A)~成分(C)、及び、必要に応じて添加されるその他の成分を、所定の配合割合にて均一に混合し、混練する。
各成分を混合・混練する順序は、特に限定されず、例えば、成分(A)~成分(C)と必要に応じて用いられるその他の成分とを一括混合して混練する方法や、成分(A)~成分(C)と必要に応じて用いられるその他の成分の一部を予め混合しておき、その後残りの成分を一括混合して混練する方法でもよい。
【0097】
混合は、例えば、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、V型ブレンダー等を用いることができる。
混練は、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール、単軸又は二軸等の多軸混練押出機等の通常の混練機を用いて行うことができる。
【0098】
溶融混練の温度は、通常100℃~300℃であり、120℃~280℃が好ましく、150℃~250℃がより好ましい。ここで、上記温度は100℃以上が好ましく、120℃以上がより好ましく、150℃以上がさらに好ましく、また、300℃以下が好ましく、280℃以下がより好ましく、250℃以下がさらに好ましい。
【0099】
《接着性重合体組成物の物性》
・MFR
本実施形態に係る接着性重合体組成物のメルトフローレート(MFR)は0.2~10g/10分が好ましく、0.5~5g/10分がより好ましい。ここで、接着性重合体組成物を接着層として共押出する際に他の樹脂との粘度バランスを良好に維持し易く、得られる積層体を構成する各層の厚みのばらつきを抑制する観点から、上記MFRは0.2g/10分以上が好ましく、0.5g/10分以上がより好ましく、また、10g/10分以下が好ましく、5g/10分以下がより好ましい。
また、本実施形態に係る接着性重合体組成物を接着層として用い、特に、シートやパイプ、チューブ、クーラントチューブ等の積層体を成形する押出成形に用いる場合は、上記MFRは0.5~3g/10分が特に好ましい。すなわち、0.5g/10分以上がより好ましく、また、3g/10分以下が特に好ましい。
なお、本明細書において、接着性重合体組成物のメルトフローレート(MFR)は、JIS K 7210:2014年に準拠し、温度230℃、荷重21.2N、10分の条件で測定される値である。
【0100】
〈積層体〉
本実施形態に係る積層体は、接着性重合体組成物からなる接着層を含む。ここでの接着性重合体組成物は、上記〈接着性重合体組成物〉に記載されたものを採用でき、好ましい態様も同様である。上記接着層は耐熱性や強度に優れるため、積層体を構成する他の層との密着性が良好で、耐熱性にも優れた積層体を得ることができる。
【0101】
本実施形態に係る積層体は、上記接着層及びガスバリア層が積層された構成を含むことが好ましく、上記接着層とガスバリア層は直接接していることがより好ましい。
また、本実施形態に係る積層体は、上記接着層及びポリオレフィン系重合体層が積層された構成を含むことも好ましく、上記接着層とポリオレフィン系重合体層は直接接していることがより好ましい。
さらに、本実施形態に係る積層体は、ガスバリア層、上記接着層、及びポリオレフィン系重合体層がこの順に積層された構成を含むことも好ましく、上記接着層とガスバリア層、及び、上記接着層とポリオレフィン系重合体層、の少なくとも一方が直接接していることがより好ましく、両方が直接接していることがさらに好ましい。すなわち、接着層の一方の主面にガスバリア層が直接接しており、接着層の他方の主面にポリオレフィン系重合体層が直接接していることがさらに好ましい。
なお、ポリオレフィン系重合体層については後述するが、ポリオレフィン系重合体からなる層であり、プロピレン系重合体やエチレン系重合体等からなる層が好ましい。
【0102】
また、本実施形態に係る積層体の一態様として、ガスバリア層の両面に接着性重合体組成物からなる接着層を介してポリオレフィン系重合体層を積層してなる5層の積層体が挙げられる。これは、「ポリオレフィン系重合体層/接着性重合体組成物からなる接着層/ガスバリア層/接着性重合体組成物からなる接着層/ポリオレフィン系重合体層」の層構成であることを意味する。
ここで、2つのポリオレフィン系重合体層は同一でも異なるものでもよく、2つの接着性重合体組成物からなる接着層も同一でも異なるものでもよい。
【0103】
上記2つのポリオレフィン系重合体層のうち少なくとも一方はプロピレン系重合体層であることが好ましく、2つのポリオレフィン系重合体層が共にプロピレン系重合体層であることがより好ましい。また、2つのポリオレフィン系重合体層のうち少なくとも一方はエチレン系重合体層であってもよく、2つのポリオレフィン系重合体層が共にエチレン系重合体層であってもよい。
【0104】
本実施形態に係る積層体の一態様として、非対称積層構造のものであってもよい。具体的には、ガスバリア層を複数層配した積層体や、内層及び外層の少なくとも一方にガスバリア層を配した積層体等が挙げられる。
【0105】
本実施形態に係る積層体の合計の厚みは特に限定されず、用途や被接着層の種類等に応じて適宜決定される。上記厚みは、例えば200~5000μmが好ましく、500~5000μmでもよく、また、30~200μmでもよい。上記積層体がクーラントチューブである場合には、当該厚みは、500~5000μmが好ましい。また、上記積層体がシートである場合には、当該厚みは30~200μmが好ましい。
【0106】
本実施形態に係る積層体の接着強度は、Tピール剥離試験により評価することができる。具体的には、後掲の実施例の項に示されるように、所定の幅に切りそろえた試験片(後掲の実施例では5mm幅)を用いて、カッター等で強度を測定したい界面を剥離し、一般的な引張試験機を用いて23℃にてTピール方式で所定の速度(後掲の実施例では50mm/分)で引き剥がすことにより剥離強度を測定でき、この剥離強度を積層体の接着強度とする。上記測定したい界面とは、接着層の、ポリオレフィン系重合体層又はガスバリア層に対する剥離強度のうち、小さい剥離強度となる層と、接着層との界面を意味する。
【0107】
用途にもよるが、積層体の、上記Tピール剥離試験により測定される接着強度は、0.15N/mm以上が好ましく、0.25N/mm以上がより好ましい。
【0108】
本実施形態に係る積層体は、加熱された後も良好な接着強度を維持できる。その指標として、加熱処理前の接着強度に対し、積層体を100℃で2000時間加熱処理を行った後に測定される接着強度の低下率が30%以下であれば、耐熱性に優れると判断でき好ましく、上記低下率は15%以下がより好ましく、小さいほど好ましい。
【0109】
《接着層》
本実施形態に係る積層体における接着層は、上述したように、上記〈接着性重合体組成物〉に記載された組成物からなる層を採用できる。
上記接着層の厚みは特に限定されず、用途や被接着層の種類等に応じて適宜決定される。上記厚みは、例えば1~500μmが好ましく、2~300μmがより好ましく、3~200μmがさらに好ましく、10~500μmでもよい。ここで、上記厚みは1μm以上が好ましく、2μm以上がより好ましく、3μm以上がさらに好ましく、10μm以上でもよい。また、上記厚みは500μm以下が好ましく、300μm以下がより好ましく、200μm以下がさらに好ましい。
また、詳細は後述するが、本実施形態に係る積層体がクーラントチューブである場合には、接着層の厚みは10~500μmが好ましい。
【0110】
《ガスバリア層》
本実施形態に係る積層体におけるガスバリア層とは、酸素、窒素、二酸化炭素等のガスの透過性が低い層である。上記ガスバリア層には、従来公知のバリア性を有する重合体を使用できる。
バリア性を有する重合体としては、例えば、ポリアミド、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリフタルアミド等が挙げられる。上記ガスバリア層は、ガスバリア性に加え、積層体に対する機械的強度や耐熱性等の耐性を付与することもできる。かかる観点から、ガスバリア層は、ポリアミドを含む層であることが好ましい。
【0111】
バリア性を有する重合体であるエチレン・ビニルアルコール共重合体は、通常エチレン・酢酸ビニル共重合体を鹸化して得られるものである。
本実施形態におけるエチレン・ビニルアルコール共重合体の鹸化度は95%以上が好ましく、95~100%がより好ましい。ここで、耐ガス透過性を良好に維持する観点から、上記鹸化度は95%以上が好ましく、また、上限は特に限定されず、100%でもよい。
【0112】
本実施形態におけるエチレン・ビニルアルコール共重合体におけるエチレン単位の含有率は20~50モル%が好ましい。ここで、耐ガス透過性を良好に維持するとともに熱分解を抑制し、溶融成形し易いとの観点、及び、延伸性や耐水性の観点から、上記エチレン単位の含有率は20モル%以上が好ましく、また、50モル%以下が好ましい。
【0113】
本実施形態におけるエチレン・ビニルアルコール共重合体は、鹸化度が95%以上であり、かつ、上記共重合体におけるエチレン単位の含有率が20~50モル%であることがより好ましい。
【0114】
バリア性を有する重合体であるポリアミドとしては、ε-カプロラクタム、ω-ラウロラクタム等のラクタムの重合体、6-アミノカプロン酸、11-アミノウンデカン酸、12-アミノドデカン酸等のアミノカルボン酸の重合体、ヘキサメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4-又は2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン、1,3-又は1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(p-アミノシクロヘキシルメタン)等の脂環式ジアミン、m-又はp-キシリレンジアミン等の芳香族ジアミン等のジアミンと、アジピン酸、スペリン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸等のジカルボン酸との重縮合体、及びこれらの共重合体等が挙げられる。
より具体的には、ポリアミド6、ポリアミド9、ポリアミド9T、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド611、ポリアミド612、ポリアミド6T、ポリアミド6I、ポリアミドMXD6等が挙げられ、中でもポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミドMXD6が好ましい。
【0115】
ガスバリア層の厚みは特に限定されず、用途や樹脂の種類、要求特性等に応じて適宜決定される。上記厚みは、例えば2~3000μmが好ましく、2~1000μmがより好ましく、2~700μmがさらに好ましく、3~600μmがよりさらに好ましく、また、100~3000μmでもよい。ここで、上記厚みは2μm以上が好ましく、3μm以上がより好ましく、100μm以上でもよい。また、上記厚みは3000μm以下が好ましく、1000μm以下が好ましく、700μm以下がより好ましく、600μm以下がさらに好ましい。
また、詳細は後述するが、本実施形態に係る積層体がクーラントチューブである場合には、ガスバリア層の厚みは100~3000μmが好ましい。
【0116】
なお、本実施形態におけるガスバリア層には、その目的を損なわない範囲において、本実施形態における接着性重合体組成物やその構成成分を含んでいてもよく、上記接着性重合体組成物が含有していてもよいその他の成分等を含有していてもよい。
【0117】
《ポリオレフィン系重合体層》
本実施形態に係る積層体におけるポリオレフィン系重合体層は、ポリオレフィン系重合体からなる層である。ポリオレフィン系重合体層は、例えば、プロピレン系重合体層、エチレン系重合体層等が挙げられる。
【0118】
・プロピレン系重合体層
本実施形態におけるポリオレフィン系重合体層がプロピレン系重合体層である場合、それを構成するプロピレン系重合体は、プロピレン単位の含有率が50モル%以上であることが好ましい。
このようなプロピレン系重合体として、例えば、プロピレン単独重合体(プロピレンホモポリマー)、プロピレン・エチレンランダム共重合体、プロピレン・ブテンランダム共重合体、プロピレン・エチレン・ヘキセンランダム共重合体、プロピレン・エチレン・オクテンランダム共重合体、プロピレン・ブテン・ヘキセンランダム共重合体、プロピレン・ブテン・オクテンランダム共重合体、プロピレン・ヘキセン・オクテンランダム共重合体、プロピレン・エチレンブロック共重合体等のプロピレン系重合体等が挙げられる。
【0119】
上記のうち、特に、メルトフローレート(MFR)が0.1~30g/10分である、プロピレン単独重合体(プロピレンホモポリマー)、プロピレン・エチレンランダム共重合体、プロピレン・ブテンランダム共重合体、プロピレン・エチレン・ヘキセンランダム共重合体、プロピレン・エチレン・オクテンランダム共重合体、プロピレン・ブテン・ヘキセンランダム共重合体、プロピレン・ブテン・オクテンランダム共重合体がより好ましく、上記MFRが0.1~30g/10分である、プロピレン単独重合体(プロピレンホモポリマー)、プロピレン・エチレンランダム共重合体、プロピレン・ブテンランダム共重合体が特に好ましい。
なお、本明細書において、上記プロピレン系重合体のメルトフローレート(MFR)は、JIS K 7210:2014年に準拠し、温度230℃、荷重21.2N、10分の条件で測定される値である。
【0120】
上記プロピレン系重合体層の厚みは特に限定されず、用途や樹脂の種類、要求特性等に応じて適宜決定される。上記厚みは、例えば20~5000μmが好ましく、30~4000μmがより好ましく、100~1100μmでもよい。ここで、上記厚みは20μm以上が好ましく、30μm以上がより好ましく、100μm以上でもよい。また、上記厚みは5000μm以下が好ましく、4000μm以下がより好ましく、1100μm以下でもよい。
また、詳細は後述するが、本実施形態に係る積層体がクーラントチューブである場合には、上記プロピレン系重合体層の厚みは100~1100μmが好ましい。
【0121】
・エチレン系重合体層
本実施形態におけるポリオレフィン系重合体層がエチレン系重合体層である場合、それを構成するエチレン系重合体は、エチレン単位の含有率が50モル%以上であることが好ましい。
このようなエチレン系重合体として、例えば、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、エチレン系エラストマー等が挙げられる。
【0122】
上記のうち、特に、メルトフローレート(MFR)が0.1~30g/10分である、低密度ポリエチレン又は高密度ポリエチレンが好ましい。
なお、本明細書において、上記エチレン系重合体のメルトフローレート(MFR)は、JIS K 7210:2014年に準拠し、温度190℃、荷重21.2N、10分の条件で測定される値である。
【0123】
上記エチレン系重合体層の厚みは特に限定されず、用途や樹脂の種類、要求特性等に応じて適宜決定される。上記厚みは、例えば20~5000μmが好ましく、30~4000μmがより好ましく、100~1100μmでもよい。ここで、上記厚みは20μm以上が好ましく、30μm以上がより好ましく、100μm以上でもよい。また、上記厚みは5000μm以下が好ましく、4000μm以下がより好ましく、1100μm以下でもよい。
また、詳細は後述するが、本実施形態に係る積層体がクーラントチューブである場合には、上記エチレン系重合体層の厚みは100~1100μmが好ましい。
【0124】
なお、本実施形態におけるポリオレフィン系重合体層には、その目的を損なわない範囲において、本実施形態における接着性重合体組成物やその構成成分を含んでいてもよく、上記接着性重合体組成物が含有していてもよいその他の成分等を含有していてもよい。
【0125】
《その他の層》
本実施形態に係る積層体は、上記ポリオレフィン系重合体層、接着層及びガスバリア層の他に、その他の層が積層されていてもよい。
その他の層としては特に制限されることはない。例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン(GPPS)、ハイインパクトポリスチレン(HIPS)、スチレン-アクリロニトリルグラフト共重合体(ABS樹脂)等のスチレン系樹脂等からなる樹脂層や、プロピレン系樹脂及びポリエチレン系樹脂以外のオレフィン系重合体、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリオキシメチレンホモポリマー、ポリオキシメチレンコポリマー等のポリオキシメチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレート系樹脂等のアクリル/メタクリル系樹脂などのその他の熱可塑性樹脂層等が挙げられる。
【0126】
《積層体の製造方法》
本実施形態に係る積層体を製造する方法(以下、「一次加工」と称することがある。)は、従来公知の種々の手法を採用できる。例えば、押出機で溶融させた個々の溶融樹脂を多層ダイスに供給し、ダイスの中で積層する共押出法によるブロー成形法、パイプ押出成形、チューブ押出成形、T-ダイ成形によるフィルム成形、シート成形が挙げられる。
【0127】
以下、シートの共押出法を例として詳細に説明する。
上記の各層を構成する重合体や組成物を予め溶融混練、又はドライブレンドによって調製する。次いで、単軸、2軸などの押出成形法により押出し、フィードブロック、マルチマニフォールドダイなどで合流し積層構造とする。そして、所定の形状のダイから押出して、冷却後、シート形状の場合は巻き取り機で巻き取る。
【0128】
共押出法における押出温度は、積層体を構成する各層の樹脂の特性によって適宜選択されるが、一般的に300℃以下に抑制することが好ましい。
シートの引き取り速度(m/h)は所望するシート厚みに応じて適宜設定すればよい。
押出機の基材原料の吐出量(g/h)は、用いる原料の種類、目的とするシートの各層厚み等により適宜選択すればよい。
冷却方法は従来公知の方法を採用できるが、例えば、ロール上へのキャストによる冷却する方法、エアナイフにより冷却する方法、サイザー等を通して水中で冷却する方法等を採用できる。
【0129】
《積層体の用途》
本実施形態に係る積層体は、上述したガスバリア層やポリオレフィン系重合体層と、接着層とを積層した場合、熱可塑性樹脂同士の積層体となることから熱成形等の二次加工性にも優れる。そのため、かかる積層体を、延伸や熱成形等の二次加工に供することができる。
本実施形態に係る積層体を二次加工に供し、用途に応じて様々な形状に加工できる。本実施形態に係る積層体は、例えば、中空成形品、又はシートとすることが好ましい。中空成形品としては、チューブが好ましく、上記チューブは、クーラントチューブでもよい。
【0130】
本実施形態に係る積層体における接着層を構成する接着性重合体組成物は、ガスバリア性の重合体層に対して優れた接着性を有すると共に、耐熱性及び剛性にも優れる。そのため、本実施形態に係る積層体は、優れた接着強度特性を示し、さらに、強度、耐熱性及びガスバリア性等にも優れたものとすることができる。
したがって、本実施形態に係る積層体は、一般食品包材や薬品等の保管容器、燃料タンクや燃料チューブ、クーラントチューブ等の燃料部品等に好適に使用することができ、特に、燃料部品に用いられることがより好ましい。なお、本実施形態に係る積層体は、用途に応じて、上述の中空成形品やシートといった形状の他、任意の形状に加工して適用できる。
【0131】
・クーラントチューブ
本実施形態に係る積層体がクーラントチューブである場合について、図1を参照して説明するが、本実施形態に係るクーラントチューブは、これに限定されるものではない。
【0132】
図1は、クーラントチューブの構成を示す模式断面図である。外層側から、ガスバリア層1、接着層2、ポリオレフィン系重合体層3の順に積層された積層構造を有する。
上述したように、ガスバリア層1はガスバリア性の付与に加えて、機械的強度や耐熱性等の耐性付与の観点から、ポリアミドを含む層であることが好ましい。また、接着層2は、本実施形態における接着性重合体組成物からなる層であり、ポリオレフィン系重合体層3は、ポリオレフィン系重合体層であることが好ましい。各層のより好ましい態様は、上述したとおりであるが、重合体層3となるポリオレフィン系重合体層は、積層体であるクーラントチューブに対して、柔軟性、耐熱性、機械的強度を持たせる観点から、プロピレン系重合体層であることがより好ましい。
【0133】
なお、図1は3層のクーラントチューブであるが、4層以上であってもよく、5層である場合には、先述したように、「ポリオレフィン系重合体層/接着性重合体組成物からなる接着層/ガスバリア層/接着性重合体組成物からなる接着層/ポリオレフィン系重合体層」の層構成であってもよい。
また、非対称積層構造でもよく、ガスバリア層を複数層配したり、内層及び外層の少なくとも一方にガスバリア層を配してもよい。
【0134】
本実施形態におけるクーラントチューブのポリオレフィン系重合体層がポリオレフィン系重合体層である場合、ポリオレフィン系重合体層のデュロD硬度は25~70が好ましく、25~65がより好ましい。ここで、機械的強度の観点から、上記デュロD硬度は25以上が好ましい。また、柔軟性付与の観点から、上記デュロD硬度は70以下が好ましく、65以下がより好ましい。
なお、本明細書において、ポリオレフィン系重合体層のデュロD硬度は、JIS K 6253:2006年に基づき測定される値である。
【0135】
本実施形態におけるクーラントチューブを構成する積層体の合計の厚みは0.5~5mmが好ましく、0.6~4mmがより好ましい。ここで、機械的強度の観点から、上記合計の厚みは、0.5mm以上が好ましく、0.6mm以上がより好ましい。また、チューブの賦形の観点から、上記合計の厚みは5mm以下が好ましく、4mm以下がより好ましい。
【0136】
本実施形態におけるクーラントチューブを構成するガスバリア層の厚みは0.1~3.0mmが好ましく、0.2~2mmがより好ましい。ここで、機械的強度の観点から、ガスバリア層の厚みは0.1mm以上が好ましく、0.2mm以上がより好ましい。また、チューブの賦形の観点から、ガスバリア層の厚みは1.0mm以下が好ましく、3.0mm以下がより好ましい。
【0137】
本実施形態におけるクーラントチューブを構成する接着層の厚みは0.01~0.5mmが好ましく、0.05~0.4mmがより好ましい。ここで、接着性の観点から、接着層の厚みは0.01mm以上が好ましく、0.05mm以上がより好ましい。また、柔軟性の観点から、接着層の厚みは0.5mm以下が好ましく、0.4mm以下がより好ましい。
【0138】
本実施形態におけるクーラントチューブを構成するポリオレフィン系重合体層の厚みは0.1~1.1mmが好ましく、0.15~1.0mmがより好ましい。ここで、耐クーラント液耐性の観点から、ポリオレフィン系重合体層の厚みは0.1mm以上が好ましく、0.15mm以上がより好ましい。また、チューブの賦形の観点から、ポリオレフィン系重合体層の厚みは1.1mm以下が好ましく、1.0mm以下がより好ましい。
【0139】
本実施形態におけるクーラントチューブを構成する各層は、ガスバリア層の厚みが0.1~3.0mmであり、接着層の厚みが0.01~0.5mmであり、ポリオレフィン系重合体層の厚みが0.1~1.1mmであることが好ましい。
【実施例0140】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例における各種の製造条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における上限又は下限の好ましい値としての意味を持つものであり、好ましい範囲は上述した上限又は下限の値と、下記実施例の値又は実施例同士の値との組み合わせで規定される範囲であってもよい。
【0141】
[原材料]
以下の諸例では次の原材料を使用した。
【0142】
〈成分(A)〉
・A-1:プロピレン系重合体
プロピレン単独重合体 MFR(230℃,荷重21.2N):0.8g/10分、曲げ弾性率:1260MPa
・A-2:プロピレン系重合体
プロピレン単独重合体 MFR(230℃,荷重21.2N):0.8g/10分、曲げ弾性率:1300MPa
【0143】
〈成分(B)〉
・B-1:高密度ポリエチレン
エチレン・ブテン共重合体 MFR(190℃,荷重21.2N):0.3g/10分、密度:0.954g/cm、Mw/Mn:17.4、ブテン単位含有率:0.3モル%
・B-2:高密度ポリエチレン
エチレン・ブテン共重合体 MFR(190℃,荷重21.2N):0.5g/10分、密度:0.954g/cm、Mw/Mn:7.2、ブテン単位含有率:0.2モル%
【0144】
〈成分(C)〉
・C-1:変性プロピレン・エチレン共重合体
(製造方法)
プロピレン・エチレンランダム共重合体(密度:0.89g/cm、MFR(230℃,荷重21.2N):6g/10分)100質量部と、無水マレイン酸(和光純薬社製)1.5質量部と、有機過酸化物(日油社製、パーヘキサ25B)0.3質量部と、をドライブレンドして混合した。次いで、得られた混合物を、二軸押出機(D=30mmφ、L/D=32、日本製鋼(株)製、TEX30)を用い、温度240℃、スクリュー回転数300rpm、押出量10kg/hで溶融混練し、ペレタイズした。これにより、変性量が0.9質量%の、無水マレイン酸で変性されたプロピレン・エチレンランダム共重合体C-1を得た。
【0145】
・C’-1:変性プロピレン単独重合体
(製造方法)
クロロベンゼン6Lに、プロピレン単独重合体(密度:0.90g/cm、MFR(230℃,荷重21.2N):10g/10分)のパウダー5kg、及び、無水マレイン酸500gを130℃で溶解させた。次いで、この溶液にジクミルペルオキシドのクロロベンゼン溶液(200g/400L)を加えた。さらに130℃で8時間反応を続け、次いで40℃まで冷却し、樹脂を析出させた。析出させた樹脂をろ過し、さらにアセトンで繰り返し洗浄し、90℃で減圧乾燥することにより、変性量が2.2質量%の、無水マレイン酸で変性されたプロピレン単独重合体C’-1を得た。
【0146】
[実施例1-1、実施例1-2及び比較例1-1]
上記[原材料]に記載の各成分を、それぞれ表1に記載の配合量にてドライブレンドして混合した。得られた混合物を、単軸押出機(口径40mmφ、L/D=32)を用い、設定温度210℃、スクリュー回転数60rpm、押出量20kg/hで溶融混練し、ストランドカットによりペレット状の接着性重合体組成物をそれぞれ得た。
得られた接着性重合体組成物のMFR(230℃,荷重21.2N)は表1に示す通りであった。また、表1の「接着性重合体組成物(質量部)」における「-」である成分は未添加であることを意味する。
【0147】
[実施例2-1、実施例2-2及び比較例2-1]
実施例1-1、実施例1-2及び比較例1-1の接着性重合体組成物をそれぞれ接着層とした積層体を以下の手順により得た。
なお、ポリオレフィン系重合体層はポリオレフィン系重合体層であるプロピレン系重合体層として、日本ポリプロ社製ポリプロピレン「ノバテックPP EG7F」(MFR(230℃,荷重21.2N):1.3g/10分)を用いた。
ガスバリア層にはポリアミド12(ナイロン12)(EMS社製、Grilamid L25W20X)を用いた。
接着層には、上記のとおり、実施例1-1、実施例1-2及び比較例1-1の接着性重合体組成物をそれぞれ用いた。
【0148】
まず、多層ブロー成形機を用いて、3種5層多層のボトル成形品(容量500mL、厚み約3.5mm)を得た。多層ブロー成形機における各層の押出機は、プロピレン系重合体層65mmφ、ガスバリア層40mmφ、接着層40mmφとし、200mm径丸型ダイス(リップ開度5mm)を用いた。
3種5層の多層構成は、ポリオレフィン系重合体層/接着層/ガスバリア層/接着層/ポリオレフィン系重合体層とし、各層厚みは、順に、1.5/0.1/0.1/0.1/1.5(mm)とした。
成形温度はガスバリア層220℃、接着層230℃、ポリオレフィン系重合体層220℃、ダイス温度220℃とし、押出量約30kg/h、ボトルの冷却時間2分、金型温度15℃とした。
【0149】
[評価;接着強度]
上記で得られた積層体を、それぞれ押出方向に幅7mmの短冊状に切り出して試験片とした。試験片に対し、23℃雰囲気下、速度50mm/分にてTピール剥離試験を行うことで剥離強度を測定し、その値を積層体の接着強度とした。
結果を表1の「接着強度(耐熱性試験前)」に示すが、かかる強度が0.15N/mm以上であれば接着強度に優れると評価でき、0.25N/mm以上であれば、接着強度に非常に優れると評価できる。
【0150】
[評価;耐熱性]
上記[評価;接着強度]と同様にして試験片を切出し、これを精密オーブンに入れて100℃で2000時間熱処理を施した。熱処理後の試験片に対し、23℃雰囲気下、速度50mm/分にてTピール剥離試験を行うことで剥離強度を測定し、その値を積層体の接着強度とした。
結果を表1の「接着強度(耐熱性試験後)」に示すが、かかる強度について、加熱処理前の接着強度に対する、加熱処理後の接着強度の低下率が30%以下であれば耐熱性に優れると評価でき、上記低下率が15%以下であれば耐熱性に非常に優れると評価できる。
【0151】
【表1】
【0152】
表1の結果より、成分(C)として変性プロピレン単独共重合体を用いた比較例2-1における接着層は、加熱された後の接着強度が、加熱前の接着強度の半分近くまで低下し、耐熱性に課題を有する結果となった。
【0153】
これに対し、成分(C)として変性プロピレン・エチレン共重合体を用いた本実施形態に係る接着性重合体組成物を接着層として用いると、非常に優れた接着強度を有しつつ、加熱された後も良好な接着強度を維持できており、耐熱性に非常に優れることが分かった。
【0154】
なお、成分(B)について、実施例ではB-1を、比較例ではB-2をそれぞれ用いたが、B-1及びB-2は共に高密度ポリエチレンであり、MFR、密度、ブテン単位含有率等は殆ど同じである。これら物性値が同程度であれば、同程度の分子量を持ち、かつ似たポリマー構造を有すると言えるため、実施例における成分(B)としてB-2を、又は、比較例における成分(B)としてB-1をそれぞれ用いた場合であっても、接着強度及び耐熱性の評価結果は大きく変わらないもの言える。
【符号の説明】
【0155】
1 ガスバリア層
2 接着層
3 ポリオレフィン系重合体層
図1