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特開2024-111728車両用灯具システム、制御装置、配光制御方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111728
(43)【公開日】2024-08-19
(54)【発明の名称】車両用灯具システム、制御装置、配光制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B60Q 1/04 20060101AFI20240809BHJP
   B60Q 1/14 20060101ALI20240809BHJP
【FI】
B60Q1/04 E
B60Q1/14 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023016402
(22)【出願日】2023-02-06
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100122183
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 一郎
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 重之
【テーマコード(参考)】
3K339
【Fターム(参考)】
3K339AA02
3K339AA43
3K339BA01
3K339BA02
3K339BA21
3K339BA22
3K339BA25
3K339CA01
3K339DA01
3K339GB01
3K339KA01
3K339KA07
3K339KA23
3K339LA02
3K339LA06
3K339LA26
3K339MA01
3K339MA06
3K339MB04
3K339MC13
3K339MC14
3K339MC77
3K339MC90
(57)【要約】
【課題】積雪時のわだちの認識を向上する新たな技術を提供する。
【解決手段】車両用灯具システム10は、車両前方を照射可能な車両用灯具と、車両用灯具が形成する配光パターンの情報に応じて車両用灯具の駆動を制御する制御部と、を備える。車両用灯具は、ロービーム用配光パターンを形成する第1の灯具ユニットと、わだちの有無によって形状が変化する路面描画用配光パターンを路面に形成する第2の灯具ユニットと、を有する。制御部は、車両前方の積雪状況を検出した場合、ロービーム用配光パターン及び路面描画用配光パターンを形成するように車両用灯具の駆動を制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前方を照射可能な車両用灯具と、
前記車両用灯具が形成する配光パターンの情報に応じて前記車両用灯具の駆動を制御する制御部と、を備え、
前記車両用灯具は、
ロービーム用配光パターンを形成する第1の灯具ユニットと、
わだちの有無によって形状が変化する路面描画用配光パターンを路面に形成する第2の灯具ユニットと、を有し、
前記制御部は、車両前方の積雪状況を検出した場合、前記ロービーム用配光パターン及び前記路面描画用配光パターンを形成するように前記車両用灯具の駆動を制御することを特徴とする車両用灯具システム。
【請求項2】
前記第2の灯具ユニットは、複数の発光領域がマトリックス状に配列した光源を有し、
前記制御部は、
前記複数の発光領域のうち一部の発光領域の照射状態を変化させることで複数の配光パターンを形成可能に構成されており、車両前方の積雪状況を検出した場合、前記配光パターンとして前記路面描画用配光パターンを路面に描画するように前記車両用灯具の駆動を制御することを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具システム。
【請求項3】
前記第2の灯具ユニットの照射方向を上下に変化させるアクチュエータを更に備え、
前記制御部は、車両前方の積雪状況を検出した場合、前記第2の灯具ユニットの照射方向が積雪状況でない場合よりも下向きになるように前記アクチュエータの動きを制御することを特徴とする請求項2に記載の車両用灯具システム。
【請求項4】
前記車両用灯具は、ハイビーム用配光パターンを形成する第3の灯具ユニットを有し、
前記制御部は、車両前方の積雪状況を検出した場合、ハイビーム用配光パターンの形成を停止するように前記第3の灯具ユニットの駆動を制御することを特徴とする請求項3に記載の車両用灯具システム。
【請求項5】
前記制御部は、前記路面描画用配光パターンとして車両前方の路面を横切る明暗が周期的なパターンを路面に描画するように前記第2の灯具ユニットの駆動を制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用灯具システム。
【請求項6】
前記制御部は、車両前方の撮像画像に基づく情報から積雪状況を判定することを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用灯具システム。
【請求項7】
前記制御部は、車外の気温に基づく情報から積雪状況を判定することを特徴とする請求項6に記載の車両用灯具システム。
【請求項8】
車両前方を照射可能な車両用灯具と、
前記車両用灯具が形成する配光パターンの情報に応じて前記車両用灯具の駆動を制御する制御部と、を備え、
前記車両用灯具は、
わだちの有無によって形状が変化する路面描画用配光パターンを路面に形成する灯具ユニットを有し、
前記制御部は、車両前方の積雪状況を検出した場合、前記路面描画用配光パターンを形成するとともに、わだちを含む領域を該路面描画用配光パターンで追従照射するように前記車両用灯具の駆動を制御することを特徴とする車両用灯具システム。
【請求項9】
ロービーム用配光パターンを形成する第1の灯具ユニットと、わだちの有無によって形状が変化する路面描画用配光パターンを路面に形成する第2の灯具ユニットと、を有する、車両前方を照射可能な車両用灯具を制御する制御装置であって、
前記車両用灯具が形成する配光パターンの情報に応じて前記車両用灯具を制御する制御部を有し、
前記制御部は、車両前方の積雪状況を検出した場合、前記ロービーム用配光パターン及び前記路面描画用配光パターンを形成するように前記車両用灯具の駆動を制御することを特徴とする制御装置。
【請求項10】
ロービーム用配光パターンを形成する第1の灯具ユニットと、わだちの有無によって形状が変化する路面描画用配光パターンを路面に形成する第2の灯具ユニットと、を有する、車両前方を照射可能な車両用灯具を、該車両用灯具が形成する配光パターンの情報に応じて制御する配光制御方法であって、
車両前方の積雪状況を検出した場合、前記ロービーム用配光パターン及び前記路面描画用配光パターンを形成するように前記車両用灯具の駆動を制御することを特徴とする配光制御方法。
【請求項11】
ロービーム用配光パターンを形成する第1の灯具ユニットと、わだちの有無によって形状が変化する路面描画用配光パターンを路面に形成する第2の灯具ユニットと、を有する、車両前方を照射可能な車両用灯具を、該車両用灯具が形成する配光パターンの情報に応じて制御する制御部に実行させるためのプログラムであって、
前記プログラムは、前記制御部に、車両前方の積雪状況を検出した場合、前記ロービーム用配光パターン及び前記路面描画用配光パターンを形成するように前記車両用灯具の駆動を制御するステップを実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
夜間走行中の自車両前方の道路形状を運転者が把握するためには、道路の白線の視認性が重要である。しかしながら、積雪時においては、道路全体が雪に覆われるため白線を認識できない。そこで、自車両前方を走行する先行車の軌跡として形成されたわだちに追従する操舵を行うことで、道路形状に沿った安全な運転が可能となる。
【0003】
例えば、車両が走行する道路状況として、少なくとも積雪状況を検出したときに自車両の前方領域で検出したわだちを周囲よりも明るく照明する配光制御手段を備えるランプ制御装置が考案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-51488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述のランプ制御装置は、わだちを周囲よりも明るく照明できるものの、白色の濃淡でしかない車両前方からわだちの形状を正確に把握することには改善の余地がある。
【0006】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その例示的な目的の一つは、積雪時のわだちの認識を向上する新たな技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の車両用灯具システムは、車両前方を照射可能な車両用灯具と、車両用灯具が形成する配光パターンの情報に応じて車両用灯具の駆動を制御する制御部と、を備える。車両用灯具は、ロービーム用配光パターンを形成する第1の灯具ユニットと、わだちの有無によって形状が変化する路面描画用配光パターンを路面に形成する第2の灯具ユニットと、を有する。制御部は、車両前方の積雪状況を検出した場合、ロービーム用配光パターン及び路面描画用配光パターンを形成するように車両用灯具の駆動を制御する。
【0008】
この態様によると、車両用灯具が、積雪時に、わだちの有無によって形状が変化する路面描画用配光パターンを路面に形成することで、わだちが認識しやすくなる。
【0009】
第2の灯具ユニットは、複数の発光領域がマトリックス状に配列した光源を有してもよい。制御部は、複数の発光領域のうち一部の発光領域の照射状態を変化させることで複数の配光パターンを形成可能に構成されており、車両前方の積雪状況を検出した場合、配光パターンとして路面描画用配光パターンを路面に描画するように車両用灯具の駆動を制御してもよい。これにより、複数の配光パターンを形成できる第2の灯具ユニットを用いて、わだちの有無によって形状が変化する特定の路面描画用配光パターンを路面に形成できる。
【0010】
第2の灯具ユニットの照射方向を上下に変化させるアクチュエータを更に備えてもよい。制御部は、車両前方の積雪状況を検出した場合、第2の灯具ユニットの照射方向が積雪状況でない場合よりも下向きになるようにアクチュエータの動きを制御してもよい。これにより、積雪していない通常走行時には主に車両前方の手前側よりも遠方を所定の配光パターンで照射する第2の灯具ユニットを用いて、路面描画用配光パターンを車両前方の手前側の路面に形成できる。
【0011】
車両用灯具は、ハイビーム用配光パターンを形成する第3の灯具ユニットを有してもよい。制御部は、車両前方の積雪状況を検出した場合、ハイビーム用配光パターンの形成を停止するように第3の灯具ユニットの駆動を制御してもよい。これにより、運転者の視線が手前側に向きやすくなる。
【0012】
制御部は、路面描画用配光パターンとして車両前方の路面を横切る明暗が周期的なパターンを路面に描画するように第2の灯具ユニットの駆動を制御してもよい。明暗が周期的なパターンのように対称性の高い形状の路面描画用パターンをわだちのある路面に形成すると、パターンの一部のひずみが目立ちやすいため、わだちの場所を認識しやすくなる。
【0013】
制御部は、車両前方の撮像画像に基づく情報から積雪状況を判定してもよい。これにより、精度良く積雪状況を検出できる。
【0014】
制御部は、車外の気温に基づく情報から積雪状況を判定してもよい。これにより、簡易に積雪状況を検出できる。また、車外の気温に基づく情報に加えて、車両の位置情報や車両前方の撮像画像に基づく情報を用いて積雪状況を判定してもよい。これにより、より精度良く積雪状況を検出できる。
【0015】
本発明の別の態様もまた、車両用灯具システムである。この車両用灯具システムは、車両前方を照射可能な車両用灯具と、車両用灯具が形成する配光パターンの情報に応じて車両用灯具の駆動を制御する制御部と、を備える。車両用灯具は、わだちの有無によって形状が変化する路面描画用配光パターンを路面に形成する灯具ユニットを有する。制御部は、車両前方の積雪状況を検出した場合、路面描画用配光パターンを形成するとともに、わだちを含む領域を該路面描画用配光パターンで追従照射するように車両用灯具の駆動を制御する。
【0016】
この態様によると、車両用灯具が、積雪時に、わだちの有無によって形状が変化する路面描画用配光パターンを路面に形成することで、わだちが認識しやすくなる。加えて、検出したわだちを含む領域を路面描画用配光パターンで追従照射することで、自車両が進むべき方向を運転者が認識しやすくなる。
【0017】
本発明の更に別の態様は、制御装置である。この装置は、ロービーム用配光パターンを形成する第1の灯具ユニットと、わだちの有無によって形状が変化する路面描画用配光パターンを路面に形成する第2の灯具ユニットと、を有する、車両前方を照射可能な車両用灯具を制御する。また、この制御装置は、車両用灯具が形成する配光パターンの情報に応じて車両用灯具を制御する制御部を有する。制御部は、車両前方の積雪状況を検出した場合、ロービーム用配光パターン及び路面描画用配光パターンを形成するように車両用灯具の駆動を制御する。
【0018】
この態様によると、車両用灯具が、積雪時に、わだちの有無によって形状が変化する路面描画用配光パターンを路面に形成することで、わだちが認識しやすくなる。
【0019】
本発明の更に別の態様は、配光制御方法である。この方法は、ロービーム用配光パターンを形成する第1の灯具ユニットと、わだちの有無によって形状が変化する路面描画用配光パターンを路面に形成する第2の灯具ユニットと、を有する、車両前方を照射可能な車両用灯具を、該車両用灯具が形成する配光パターンの情報に応じて制御する配光制御方法であって、車両前方の積雪状況を検出した場合、ロービーム用配光パターン及び路面描画用配光パターンを形成するように車両用灯具の駆動を制御する。
【0020】
この態様によると、車両用灯具が、積雪時に、わだちの有無によって形状が変化する路面描画用配光パターンを路面に形成することで、わだちが認識しやすくなる。
【0021】
本発明の更に別の態様は、プログラムである。このプログラムは、ロービーム用配光パターンを形成する第1の灯具ユニットと、わだちの有無によって形状が変化する路面描画用配光パターンを路面に形成する第2の灯具ユニットと、を有する、車両前方を照射可能な車両用灯具を、該車両用灯具が形成する配光パターンの情報に応じて制御する制御部に実行させるためのプログラムである。また、このプログラムは、制御部に、車両前方の積雪状況を検出した場合、ロービーム用配光パターン及び路面描画用配光パターンを形成するように車両用灯具の駆動を制御するステップを実行させる。
【0022】
この態様によると、車両用灯具が、積雪時に、わだちの有無によって形状が変化する路面描画用配光パターンを路面に形成することで、わだちが認識しやすくなる。
【0023】
以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を製造方法や制御方法などの方法、灯具や照明、制御装置などの装置、発光モジュール、光源、プログラム、コンピュータ読み取り可能な記録媒体などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、積雪時のわだちの認識を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本実施の形態に係る車両用灯具システムのブロック図である。
図2】車両用灯具システムによって形成される配光パターンの一例を模式的に示す図である。
図3】本実施の形態に係る配光制御方法の一例を示すフローチャートである。
図4】わだちの認識向上のための路面描画用配光パターンについて説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組合せは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0027】
本実施の形態に係る車両灯具は、車両前方に配置された車両用前照灯であり、様々な制御部やセンサ等と適宜組み合わされることで車両用灯具システムを構成する。はじめに、本実施の形態に係る車両用灯具システムの概略構成について説明する。図1は、本実施の形態に係る車両用灯具システムのブロック図である。
【0028】
車両用灯具システム10は、ADAS(Advanced Driver-Assistance Systems:先進運転支援システム)に対応したカメラユニット12と、センタECU14と、外気温センサ16と、カーナビゲーションシステム18と、ランプスイッチ20と、を備える。カメラユニット12は、車両前方を撮像する前方カメラ22と、前方カメラ22で撮像した画像情報に基づいて車両前方に存在する標識や車両等の物体を検出するカメラECU24と、を有する。本実施の形態に係るカメラユニット12やセンタECU14は車両本体側に設けられているが、車両全体のどこに設けてもかまわない。
【0029】
さらに、車両用灯具システム10は、ランプECU26と、ランプECU26によって配光制御されるLoビーム用ランプ28及びHiビーム用ランプ30と、高精細ADB(Adaptive Driving Beam)用のコントローラ32と、コントローラ32で制御される高精細ADB用のLEDユニット34と、を備える。本実施の形態に係るランプECU26やコントローラ32は、車両用灯具であるLoビーム用ランプ28やHiビーム用ランプ30、LEDユニット34のいずれかに設けられている。
【0030】
図2は、車両用灯具システムによって形成される配光パターンの一例を模式的に示す図である。図2に示す配光パターンP1は、Loビーム用ランプ28により形成されるロービーム用配光パターンPLと、Hiビーム用ランプ30により形成されるハイビーム用配光パターンPHと、LEDユニット34により形成されるADB配光パターンPHLと、が重なったパターンである。
【0031】
Loビーム用ランプ28は、H-H線より下方の車両近傍領域を照射するように光源や光学部材が適宜選択されている。Hiビーム用ランプ30は、H-H線より上方の遠方領域を照射するように光源や光学部材が適宜選択されている。Hiビーム用ランプ30は、8個のLEDが一方向に並んでおり、各LEDの点消灯を制御することで、ハイビーム用配光パターンPHの一部が遮光又は減光された配光パターンを形成できる。
【0032】
LEDユニット34は、H-H線とV線との交点を中心とした領域を照射するように光源や光学部材が適宜選択されており、LEDユニット34から出射した光で車両前方を照射可能な車両用灯具である。ADB配光パターンPHLは、H-H線とV線との交点を中心にロービーム用配光パターンPLとハイビーム用配光パターンPHの両方と重なる配光パターンである。また、各LEDの駆動電流を個別に制御し、一部のLEDの駆動電流をゼロまたは減らすことで、ADB配光パターンPHLを構成するマトリックスの一部のピクセルを遮光又は減光した状態にできる。これにより、ADB配光パターンPHLの範囲に含まれる車両や人へのグレアを防止する際の遮光領域を極力小さくできるとともに、その他の領域への視認性を維持できる。
【0033】
LEDユニット34は、縦64個、横256個のLED34a(発光領域)がマトリックス状に配列された光源を有し、コントローラ32からの指示に基づいて各LEDの駆動が個別に制御される。なお、LEDユニット34は、矩形の短辺方向に20以上の発光素子が配列され、長辺方向に100以上の発光素子が配設されていてもよい。また、LED以外でもマトリックス状の発光領域を個別に点消灯できるのであれば、有機EL素子や液晶シャッタ、MEMSミラーといったものも光源として適用可能である。
【0034】
コントローラ32は、複数の発光領域のうち一部の発光領域の照射状態を変化させることで部分領域の明るさが異なる複数の配光パターンを形成可能に構成されている。換言すると、コントローラ32は、複数の発光領域のそれぞれから出射する光の量を制御することで選択された配光パターンを照射するように車両用灯具を制御する。これにより、一つのLEDユニット34で様々な配光パターンを形成できる。また、反射物が存在する部分領域が複数あっても、それぞれの部分領域の明るさが調整された配光パターンを形成できる。
【0035】
次に、積雪時において街灯や照明のない郊外の真っ暗な夜道を車両が走行する状況について説明する。路面に積雪していない状況では、ヘッドランプの光で路面を照らすことでセンターラインや車道外側線、路側帯といった道路の形状や進行方向を示唆する路面標示を確認できる。しかしながら、積雪時においては、ヘッドランプの光で路面を照らしても路面標示が全く見えないため、運転者が道路の形状や車線幅を正確に把握することが難しい状況が生じ得る。そこで、本願の発明者は、自車両の前方を走行する先行車によってできるわだちに着目した。
【0036】
積雪時に形成されるわだちは、先行車の車輪が通過した跡であるが、路面全体が雪で覆われている場合は車両前方が白一色のため、ヘッドランプの光で路面全体を照らしてもわだちの場所や形状を認識しづらい。
【0037】
そこで、本実施の形態に係る車両用灯具システム10は、わだちの有無によって形状が変化する路面描画用配光パターンを路面に形成することで、わだちの認識を向上できる。具体的には、コントローラ32は、車両前方の積雪状況を検出した場合、所定のロービーム用配光パターン及び路面描画用配光パターンで車両前方を照射するようにLoビーム用ランプ28及びLEDユニット34の駆動を制御する。なお、各種検知、判別、制御がどのECUやコントローラで実行するかは特に限定されず、適宜選択すればよい。
【0038】
図3は、本実施の形態に係る配光制御方法の一例を示すフローチャートである。図4は、わだちの認識向上のための路面描画用配光パターンについて説明するための模式図である。本実施の形態に係る車両用灯具システム10は、車両前方を照射可能な車両用灯具と、車両用灯具が形成する配光パターンの情報に応じて車両用灯具の駆動を制御する制御部と、を備える。本実施の形態では、カメラECU24、センタECU14、ランプECU26及びコントローラ32(以下、これらをまとめて制御部と称する場合がある。)のいずれかにおいて、積雪状況か否かを判定し、状況に応じて所定形状の路面描画用配光パターンを形成する。また、車両用灯具は、ロービーム用配光パターンを形成するLoビーム用ランプ28と、わだちの有無によって形状が変化するLEDユニット34と、ハイビーム用配光パターンを形成するHiビーム用ランプ30と、を有する。
【0039】
制御部は、ランプスイッチ20によりLoビーム用ランプ28、Hiビーム用ランプ30及びLEDユニット34のいずれかを点灯させる信号を取得した場合、図3に示す制御を開始する。次に、制御部は、カメラユニット12の画像情報(路面画像等)を取得する(S10)。また、必要に応じて、外気温センサ16から車外の気温に基づく情報を取得し(S12)、カーナビゲーションシステム18から自車両の位置情報を取得する(S14)。
【0040】
制御部は、車両前方の撮像画像に基づく情報を解析し、輝度情報や色情報から前方の路面が積雪路か乾燥路かを判別することが可能である。これにより、精度良く積雪状況を検出できる。また、制御部は、外気温センサ16で検出された車外の気温に基づく情報を加味してもよい。例えば、外気温が氷点下であれば積雪している可能性は高まる。また、制御部は、カーナビゲーションシステム18から取得した自車両の位置情報から、車両前方の路面にセンターライン(白線)等の路面標識が存在するはずであるにもかかわらず、画像情報からは路面標識を識別できないような高輝度領域(反射光が白色)しか検出できない場合に積雪状況であると判定してもよい。これにより、より精度良く積雪状況を検出できる。制御部において積雪状況でないと判定された場合(S16のNo)、図3に示す制御を一端終了する。
【0041】
制御部において積雪状況であると判定された場合(S16のYes)、それまで水平線を挟んだ上下の領域をADB配光パターンPHL(図2参照)で照射していたLEDユニット34を、照射方向を上下に変化させるアクチュエータ36を用いて車両手前側(下向き)に照射方向を変更する(S18)。つまり、制御部は、車両前方の積雪状況を検出した場合、LEDユニット34の照射方向が積雪状況でない場合よりも下向きになるようにアクチュエータ36の動きを制御する。これにより、積雪していない通常走行時には主に車両前方の手前側よりも遠方を所定のADB配光パターンPHLで照射するLEDユニット34を用いて、路面描画用配光パターンPRを車両前方の手前側の路面領域R1に形成できる。
【0042】
その際、車両用灯具システム10は、Loビーム用ランプ28を点灯することで(S20)、ロービーム用配光パターンPLで車両前方の路面を広範囲に照射する。また、車両用灯具システム10は、Hiビーム用ランプ30を消灯することで(S22)、運転者の視線が遠方よりも車両手前側の路面に向きやすくなる。
【0043】
このように、車両用灯具システム10は、LEDユニット34が、積雪時に、わだちの有無によって形状が変化する路面描画用配光パターンPRを路面に形成することで、わだちが認識しやすくなる。つまり、制御部は、車両前方の積雪状況を検出した場合、配光パターンとして路面描画用配光パターンPRを路面に描画するようにLEDユニット34の駆動を制御する。これにより、複数の配光パターンを形成できるLEDユニット34を用いて、わだちの有無によって形状が変化する特定の路面描画用配光パターンPRを路面に形成できる。なお、積雪時のわだち38は、先行車40によってできる走行軌跡であり、運転者がわだちを認識できれば、積雪によって路面標識が見えない状況でも走行する道路形状や道路幅を予測しやすくなる。
【0044】
ここで、路面描画用配光パターンPRは、車両前方の路面を横切る明暗が周期的なパターンが好ましい。例えば、本実施の形態に係る制御部は、図4に示すような複数の短冊状のパターンPXが間隔を置いて車両前方へ並んだ路面描画用配光パターンPRを路面領域R1に描画するようにLEDユニット34の駆動を制御する。明暗が周期的なパターンのように対称性の高い形状の路面描画用パターンPRをわだち38のある路面領域R1に形成すると、パターンPXの一部のひずみSが目立ちやすいため、運転者がわだち38の場所を認識しやすくなる。換言すると、制御部は、撮像画像に基づく情報からパターンPXの一部のひずみSの有無や位置を検出し、わだちの有無や形状を判別する。なお、周期的なパターンとは、前述の複数の短冊形状が並んだパターン以外に、千鳥状パターンや格子状パターンが挙げられる。つまり、輪郭が直線的だったり、模様が規則的だったりする対称性の高いパターンが好ましい。
【0045】
前述のように、本実施の形態に係る制御部は、車両前方の積雪状況を検出した場合、路面描画用配光パターンPRを形成することでわだち38の一部を認識しやすくなる。制御部は、前述のひずみSの存在から判別されたわだち38の一部の軌跡からより遠方のわだち42を推定し、そのわだち42を含む領域を路面描画用配光パターンPRで追従照射するように車両用灯具の駆動を制御する。これにより、自車両が進むべき方向を運転者がより早期に認識しやすくなる。また、制御部は、画像情報からわだちの曲率を算出することで、道路形状がどの程度カーブしているか判別できる。そのため、仮にカーナビゲーションシステム18からの情報を用いなくても、自車両が進むべき方向を誘導できる。
【0046】
なお、本実施の形態に係る車両用灯具システムの発明を、制御部を有する制御装置単体の発明と捉えることができる。また、車両用灯具を制御する制御部に実行させるプログラムの発明と捉えることもできる。
【0047】
以上、本発明を上述の実施の形態を参照して説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、実施の形態の構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。また、当業者の知識に基づいて実施の形態における組合せや処理の順番を適宜組み替えることや各種の設計変更等の変形を実施の形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうる。
【符号の説明】
【0048】
10 車両用灯具システム、 12 カメラユニット、 14 センタECU、 16 外気温センサ、 18 カーナビゲーションシステム、 20 ランプスイッチ、 22 前方カメラ、 24 カメラECU、 26 ランプECU、 28 Loビーム用ランプ、 30 Hiビーム用ランプ、 32 コントローラ、 34 LEDユニット、 34a LED、 36 アクチュエータ、 38 わだち、 40 先行車、 42 わだち、 P1 配光パターン、 PH ハイビーム用配光パターン、 PHL ADB配光パターン、 PL ロービーム用配光パターン、 PR 路面描画用配光パターン、 R1 路面領域。
図1
図2
図3
図4