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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111730
(43)【公開日】2024-08-19
(54)【発明の名称】ヘッドアップディスプレイ、移動体
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/01 20060101AFI20240809BHJP
   G02B 5/32 20060101ALI20240809BHJP
   B60K 35/23 20240101ALI20240809BHJP
【FI】
G02B27/01
G02B5/32
B60K35/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023016405
(22)【出願日】2023-02-06
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100217836
【弁理士】
【氏名又は名称】合田 幸平
(72)【発明者】
【氏名】柏木 剛
(72)【発明者】
【氏名】山内 豪
(72)【発明者】
【氏名】青木 陽祐
(72)【発明者】
【氏名】國安 寛行
(72)【発明者】
【氏名】三浦 啓介
【テーマコード(参考)】
2H199
2H249
3D344
【Fターム(参考)】
2H199DA12
2H199DA13
2H199DA18
2H199DA25
2H199DA27
2H199DA35
2H199DA42
2H249CA05
2H249CA15
2H249CA22
3D344AA21
3D344AB01
3D344AC25
(57)【要約】      (修正有)
【課題】意図されない画像光による使用者の視界の悪化を抑制する。
【解決手段】移動体10は、ヘッドアップディスプレイ20と、ウインドシールド13とを有する。ヘッドアップディスプレイ20は、ホログラフィックスクリーン40と、投射装置30とを含む。ホログラフィックスクリーン40は、投射装置30から投射された画像光を回折するホログラム素子60を含む。ウインドシールド13が水平方向に対してなす角度のうちホログラフィックスクリーン40の近くの角度αと、ホログラフィックスクリーン40が水平方向hdに対してなす角度のうちウインドシールド13の近くの角度βと、ホログラム素子60で回折された画像光の輝度が最大となる方向に対して回折された画像光の輝度が最大輝度の10%以上となる方向がなす角度γとは、次の関係(i)を満たす。γ≦α-(90-β)・・・(i)
【選択図】図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホログラフィックスクリーンと、前記ホログラフィックスクリーンに画像光を投射する投射装置と、を含むヘッドアップディスプレイと、
前記ホログラフィックスクリーンと水平方向に対面する位置に配置されるウインドシールドと、を備え、
前記ホログラフィックスクリーンは、投射された画像光を回折するホログラム素子を含み、
前記ホログラフィックスクリーンの法線方向と鉛直方向との両方に延びる平面において、前記ウインドシールドが水平方向に対してなす角度のうち前記ホログラフィックスクリーンの近くの角度α[°]と、前記ホログラフィックスクリーンが水平方向に対してなす角度のうち前記ウインドシールドの近くの角度β[°]と、前記ホログラム素子で回折された画像光の輝度が最大となる方向に対して前記ホログラム素子で回折された画像光の輝度が最大輝度の10%以上となる方向のうち前記ウインドシールドに最も近づく方向がなす角度γ[°]とは、次の関係(i)を満たす、移動体。
γ≦α-(90-β) ・・・(i)
【請求項2】
前記ホログラフィックスクリーンの法線方向と鉛直方向との両方に延びる平面において、前記ホログラム素子で回折された画像光の輝度が最大となる方向に対して前記ホログラム素子で回折された画像光の輝度が最大輝度の10%以上となる方向のうち前記ウインドシールドに最も近づく方向がなす角度γ[°]と、前記ホログラフィックスクリーンの法線方向に対して前記投射装置が前記ホログラフィックスクリーンに画像光を投射する角度δ[°]とは、次の関係(ii)を満たす、請求項1に記載の移動体。
δ≧γ ・・・(ii)
【請求項3】
ホログラフィックスクリーンと、前記ホログラフィックスクリーンに画像光を投射する投射装置と、を含み、
前記ホログラフィックスクリーンは、投射された画像光を回折するホログラム素子を含み、
前記ホログラフィックスクリーンの法線方向と鉛直方向との両方に延びる平面において、前記ホログラム素子で回折された画像光の輝度が最大となる方向に対して前記ホログラム素子で回折された画像光の輝度が最大輝度の10%以上となる方向のうちウインドシールドに最も近づく方向がなす角度γ[°]と、前記ホログラフィックスクリーンの法線方向に対して前記投射装置が前記ホログラフィックスクリーンに画像光を投射する角度δ[°]とは、次の関係(ii)を満たす、ヘッドアップディスプレイ。
δ≧γ ・・・(ii)
【請求項4】
請求項3に記載のヘッドアップディスプレイと、
前記ホログラフィックスクリーンと水平方向に対面する位置に配置されるウインドシールドと、を備える、移動体。
【請求項5】
前記ホログラフィックスクリーンの法線方向と鉛直方向との両方に延びる平面において、前記ウインドシールドが水平方向に対してなす角度のうち前記ホログラフィックスクリーンの近くの角度α[°]と、前記ホログラフィックスクリーンが水平方向に対してなす角度のうち前記ウインドシールドの近くの角度β[°]と、前記ホログラフィックスクリーンの法線方向に対して前記投射装置が前記ホログラフィックスクリーンに画像光を投射する角度δ[°]とは、次の関係(iii)を満たす、請求項1,2または4に記載の移動体。
δ≦α-(90-β) ・・・(iii)
【請求項6】
前記ホログラフィックスクリーンの法線方向と鉛直方向との両方に延びる平面において、前記ウインドシールドが水平方向に対してなす角度のうち前記ホログラフィックスクリーンの近くの角度α[°]と、前記ホログラフィックスクリーンが水平方向に対してなす角度のうち前記ウインドシールドの近くの角度β[°]と、前記ホログラフィックスクリーンの法線方向に対して前記投射装置が前記ホログラフィックスクリーンに画像光を投射する角度δ[°]とは、次の関係(iv)を満たす、請求項1,2または4に記載の移動体。
δ≧2α-(90-β) ・・・(iv)
【請求項7】
ホログラフィックスクリーンと、前記ホログラフィックスクリーンに画像光を投射する投射装置と、を含むヘッドアップディスプレイと、
前記ホログラフィックスクリーンと水平方向に対面する位置に配置されるウインドシールドと、を備え、
前記ホログラフィックスクリーンは、投射された画像光を回折するホログラム素子を含み、
前記ホログラフィックスクリーンの法線方向と鉛直方向との両方に延びる平面において、前記ウインドシールドが水平方向に対してなす角度のうち前記ホログラフィックスクリーンの近くの角度α[°]と、前記ホログラフィックスクリーンが水平方向に対してなす角度のうち前記ウインドシールドの近くの角度β[°]と、前記ホログラフィックスクリーンの法線方向に対して前記投射装置が前記ホログラフィックスクリーンに画像光を投射する角度δ[°]とは、次の関係(iii)を満たす、移動体。
δ≦α-(90-β) ・・・(iii)
【請求項8】
ホログラフィックスクリーンと、前記ホログラフィックスクリーンに画像光を投射する投射装置と、を含むヘッドアップディスプレイと、
前記ホログラフィックスクリーンと水平方向に対面する位置に配置されるウインドシールドと、を備え、
前記ホログラフィックスクリーンは、投射された画像光を回折するホログラム素子を含み、
前記ホログラフィックスクリーンの法線方向と鉛直方向との両方に延びる平面において、前記ウインドシールドが水平方向に対してなす角度のうち前記ホログラフィックスクリーンの近くの角度α[°]と、前記ホログラフィックスクリーンが水平方向に対してなす角度のうち前記ウインドシールドの近くの角度β[°]と、前記ホログラフィックスクリーンの法線方向に対して前記投射装置が前記ホログラフィックスクリーンに画像光を投射する角度δ[°]とは、次の関係(iv)を満たす、移動体。
δ≧2α-(90-β) ・・・(iv)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ヘッドアップディスプレイ及びヘッドアップディスプレイを有する移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘッドアップディスプレイは、使用者の視界内に表示を行う。ヘッドアップディスプレイは、透明なホログラフィックスクリーンに画像光が投射される。特許文献1乃至4に開示されたヘッドアップディスプレイにおいて、ホログラフィックスクリーンはホログラム素子を含んでいる。ホログラム素子は、画像光を回折する。ホログラム素子で回折された画像光は、指向性を有した散乱光として、使用者に向かう。使用者は、ホログラフィックスクリーンからの散乱光を観察することで、ホログラフィックスクリーンに画像が表示されていると認識できる。使用者は、透明なホログラフィックスクリーンを介して視界を確保できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-202417号公報
【特許文献2】特開平9-179058号公報
【特許文献3】特開2000-284677号公報
【特許文献4】特開2003-294952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1乃至4に開示されたホログラフィックスクリーンにおいて、意図された画像光以外の意図されない画像光が使用者に観察されることがある。意図されない画像光は、使用者の視界を悪化させ得る。本開示は、意図されない画像光による使用者の視界の悪化を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一実施の形態は、以下の[1]乃至[8]に関する。
[1]
ホログラフィックスクリーンと、前記ホログラフィックスクリーンに画像光を投射する投射装置と、を含むヘッドアップディスプレイと、
前記ホログラフィックスクリーンと水平方向に対面する位置に配置されるウインドシールドと、を備え、
前記ホログラフィックスクリーンは、投射された画像光を回折するホログラム素子を含み、
前記ホログラフィックスクリーンの法線方向と鉛直方向との両方に延びる平面において、前記ウインドシールドが水平方向に対してなす角度のうち前記ホログラフィックスクリーンの近くの角度α[°]と、前記ホログラフィックスクリーンが水平方向に対してなす角度のうち前記ウインドシールドの近くの角度β[°]と、前記ホログラム素子で回折された画像光の輝度が最大となる方向に対して前記ホログラム素子で回折された画像光の輝度が最大輝度の10%以上となる方向のうち前記ウインドシールドに最も近づく方向がなす角度γ[°]とは、次の関係(i)を満たす、移動体。
γ≦α-(90-β) ・・・(i)
[2]
前記ホログラフィックスクリーンの法線方向と鉛直方向との両方に延びる平面において、前記ホログラム素子で回折された画像光の輝度が最大となる方向に対して前記ホログラム素子で回折された画像光の輝度が最大輝度の10%以上となる方向のうち前記ウインドシールドに最も近づく方向がなす角度γ[°]と、前記ホログラフィックスクリーンの法線方向に対して前記投射装置が前記ホログラフィックスクリーンに画像光を投射する角度δ[°]とは、次の関係(ii)を満たす、[1]の移動体。
δ≧γ ・・・(ii)
[3]
ホログラフィックスクリーンと、前記ホログラフィックスクリーンに画像光を投射する投射装置と、を含み、
前記ホログラフィックスクリーンは、投射された画像光を回折するホログラム素子を含み、
前記ホログラフィックスクリーンの法線方向と鉛直方向との両方に延びる平面において、前記ホログラム素子で回折された画像光の輝度が最大となる方向に対して前記ホログラム素子で回折された画像光の輝度が最大輝度の10%以上となる方向のうちウインドシールドに最も近づく方向がなす角度γ[°]と、前記ホログラフィックスクリーンの法線方向に対して前記投射装置が前記ホログラフィックスクリーンに画像光を投射する角度δ[°]とは、次の関係(ii)を満たす、ヘッドアップディスプレイ。
δ≧γ ・・・(ii)
[4]
[3]のヘッドアップディスプレイと、
前記ホログラフィックスクリーンと水平方向に対面する位置に配置されるウインドシールドと、を備える、移動体。
[5]
前記ホログラフィックスクリーンの法線方向と鉛直方向との両方に延びる平面において、前記ウインドシールドが水平方向に対してなす角度のうち前記ホログラフィックスクリーンの近くの角度α[°]と、前記ホログラフィックスクリーンが水平方向に対してなす角度のうち前記ウインドシールドの近くの角度β[°]と、前記ホログラフィックスクリーンの法線方向に対して前記投射装置が前記ホログラフィックスクリーンに画像光を投射する角度δ[°]とは、次の関係(iii)を満たす、[1]、[2]または[4]の移動体。
δ≦α-(90-β) ・・・(iii)
[6]
前記ホログラフィックスクリーンの法線方向と鉛直方向との両方に延びる平面において、前記ウインドシールドが水平方向に対してなす角度のうち前記ホログラフィックスクリーンの近くの角度α[°]と、前記ホログラフィックスクリーンが水平方向に対してなす角度のうち前記ウインドシールドの近くの角度β[°]と、前記ホログラフィックスクリーンの法線方向に対して前記投射装置が前記ホログラフィックスクリーンに画像光を投射する角度δ[°]とは、次の関係(iv)を満たす、[1]、[2]または[4]の移動体。
δ≧2α-(90-β) ・・・(iv)
[7]
ホログラフィックスクリーンと、前記ホログラフィックスクリーンに画像光を投射する投射装置と、を含むヘッドアップディスプレイと、
前記ホログラフィックスクリーンと水平方向に対面する位置に配置されるウインドシールドと、を備え、
前記ホログラフィックスクリーンは、投射された画像光を回折するホログラム素子を含み、
前記ホログラフィックスクリーンの法線方向と鉛直方向との両方に延びる平面において、前記ウインドシールドが水平方向に対してなす角度のうち前記ホログラフィックスクリーンの近くの角度α[°]と、前記ホログラフィックスクリーンが水平方向に対してなす角度のうち前記ウインドシールドの近くの角度β[°]と、前記ホログラフィックスクリーンの法線方向に対して前記投射装置が前記ホログラフィックスクリーンに画像光を投射する角度δ[°]とは、次の関係(iii)を満たす、移動体。
δ≦α-(90-β) ・・・(iii)
[8]
ホログラフィックスクリーンと、前記ホログラフィックスクリーンに画像光を投射する投射装置と、を含むヘッドアップディスプレイと、
前記ホログラフィックスクリーンと水平方向に対面する位置に配置されるウインドシールドと、を備え、
前記ホログラフィックスクリーンは、投射された画像光を回折するホログラム素子を含み、
前記ホログラフィックスクリーンの法線方向と鉛直方向との両方に延びる平面において、前記ウインドシールドが水平方向に対してなす角度のうち前記ホログラフィックスクリーンの近くの角度α[°]と、前記ホログラフィックスクリーンが水平方向に対してなす角度のうち前記ウインドシールドの近くの角度β[°]と、前記ホログラフィックスクリーンの法線方向に対して前記投射装置が前記ホログラフィックスクリーンに画像光を投射する角度δ[°]とは、次の関係(iv)を満たす、移動体。
δ≧2α-(90-β) ・・・(iv)
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、意図されない画像光による使用者の視界の悪化を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、一実施の形態を説明する図であって、移動体、自動車、ヘッドアップディスプレイ、及びホログラフィックスクリーンの一具体例を示す側面図である。
図2図2は、図1に示されたヘッドアップディスプレイを示す側断面図である。
図3図3は、図2に示されたホログラフィックスクリーンを示す側断面図である。
図4図4は、図2に示されたホログラフィックスクリーンに含まれるホログラム素子の一例を示す平面図である。
図5図5は、図4に示されたホログラム素子の拡大平面図である。
図6図6は、図2に示されたホログラフィックスクリーンに含まれるホログラム素子の他の例を示す平面図である。
図7図7は、図3に示されたホログラフィックスクリーンの層構成の一変形例を示す側断面図である。
図8図8は、図7に対応する図であって、ホログラフィックスクリーンの層構成の他の変形例を示す側断面図である。
図9図9は、図7に対応する図であって、ホログラフィックスクリーンの層構成の更に他の変形例を示す側断面図である。
図10図10は、図7に対応する図であって、ホログラフィックスクリーンの層構成の更に他の変形例を示す側断面図である。
図11図11は、図7に対応する図であって、ホログラフィックスクリーンの層構成の更に他の変形例を示す側断面図である。
図12図12は、ヘッドアップディスプレイの作用を説明するための図である。
図13図13は、ヘッドアップディスプレイの作用を説明するための図である。
図14図14は、ヘッドアップディスプレイの作用を説明するための図である。
図15図15は、ヘッドアップディスプレイの作用を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本開示の一実施の形態について説明する。本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。一部の図において示された構成等が、他の図において省略されていることもある。
【0009】
本明細書において、形状や幾何学的条件ならびにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語や長さや角度の値等は、厳密な意味に限定されることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈される。
【0010】
本明細書において、「シート」、「フィルム」及び「板」等の用語は、呼称の違いのみに基づいて互いから区別されない。例えば「透明板」は、「透明フィルム」又は「透明シート」と呼ばれる部材等と呼称の違いのみにおいて区別され得ない。
【0011】
本明細書において、シート状の部材の法線方向とは、対象となるシート状の部材のシート面への法線方向のことを指す。また、「シート面」とは、対象となるシート状の部材を全体的且つ大局的に見た場合において対象となるシート状部材と一致する面のことを指す。「シート」を「フィルム」または「板」等と読み替えた場合も同様である。
【0012】
方向の関係を図面間で明確にするため、いくつかの図面には、共通する符号を付した矢印により第1方向D1、第2方向D2、第3方向D3を共通する方向として示している。以下の例において、第1方向D1及び第2方向D2は水平方向と平行であり、第3方向D3は鉛直方向と平行である。第1方向D1、第2方向D2、第3方向D3は、互いに直交している。図面の紙面に垂直な方向に沿って紙面から手前に向かう矢印を、例えば図1に示すように、円の中に点を設けた記号により示す。
【0013】
本明細書において、あるパラメータに関して複数の上限値の候補及び複数の下限値の候補が挙げられている場合、そのパラメータの数値範囲は、任意の1つの上限値の候補と任意の1つの下限値の候補とを組み合わせることによって構成されてもよい。一例として、「パラメータBは、A1以上でもよく、A2以上でもよく、A3以上でもよい。パラメータBは、A4以下でもよく、A5以下でもよく、A6以下でもよい。」との記載について検討する。この例において、パラメータBの数値範囲は、A1以上A4以下でもよく、A1以上A5以下でもよく、A1以上A6以下でもよく、A2以上A4以下でもよく、A2以上A5以下でもよく、A2以上A6以下でもよく、A3以上A4以下でもよく、A3以上A5以下でもよく、A3以上A6以下でもよい。
【0014】
図1乃至図15は、一実施の形態を説明するための図である。図1には、ヘッドアップディスプレイ20を有する移動体10の側面図が示されている。移動体10は、移動可能な装置である。移動体10は、人間が乗った状態で移動可能としてもよい。図示された例では、移動体10は、自動車12である。図示された例に限らず、移動体10は、船、飛行機、鉄道車両等であってもよい。移動体10は、ウインドシールド13を有している。図示された例では、ウインドシールド13は、自動車12のフロントウインドウ14である。
【0015】
移動体10は、第1方向D1を側方方向、第2方向D2を前後方向、第3方向D3を高さ方向とするように配置されている。言い換えると、移動体10を水平面に配置した際の、移動体10の側方方向を第1方向D1とし、前後方向を第2方向D2とし、高さ方向を第3方向D3としている。
【0016】
図1に示すように、ヘッドアップディスプレイ20は、投射装置30及びホログラフィックスクリーン40を有している。投射装置30は、画像光をホログラフィックスクリーン40に投影する。ホログラフィックスクリーン40が、投影された画像光を使用者5に向けて回折する。これにより、使用者5は、ヘッドアップディスプレイ20によって画像を観察できる。
【0017】
図2には、ヘッドアップディスプレイ20の側断面図が示されている。より詳しくは、図2は、ヘッドアップディスプレイ20のホログラフィックスクリーン40の法線方向nd2と鉛直方向との両方に延びる平面における、ヘッドアップディスプレイ20の側断面図である。ホログラフィックスクリーン40の法線方向nd2とは、ホログラフィックスクリーン40の板面の法線方向であり、ホログラフィックスクリーン40の中心における法線方向であってもよい。
【0018】
ヘッドアップディスプレイ20の使用者5は、図2に光L20で示すように、ホログラフィックスクリーン40を介して、ホログラフィックスクリーン40の背後からの光を観察できる。本明細書で用いる「Xの背後」とは、ヘッドアップディスプレイ20の観察者である使用者5を基準としたXのうしろを意味する。撮像装置が、ホログラフィックスクリーン40を介して、ホログラフィックスクリーン40を観察する使用者5を撮像してもよい。
【0019】
本実施の形態によるヘッドアップディスプレイ20は、種々の分野に適用可能である。ヘッドアップディスプレイ20は、ヘッドマウントディスプレイに適用されてもよい。ヘッドアップディスプレイ20は、プロンプターに適用されてもよい。プロンプターは、講演や撮像等に使用されてもよい。
【0020】
ウインドシールド13は、ホログラフィックスクリーン40と水平方向に対面する位置に配置されている。ウインドシールド13は、ホログラフィックスクリーン40の背後に位置している。ウインドシールド13がホログラフィックスクリーン40と水平方向に対面するとは、ウインドシールド13の法線方向nd1の水平方向の一成分とホログラフィックスクリーン40の法線方向nd2の水平方向の一成分とが平行であることを意味する。図2に示されているように、ウインドシールド13は、ホログラフィックスクリーン40に対して斜めに対面していてもよい。
【0021】
図2に示されているホログラフィックスクリーン40の法線方向nd2と鉛直方向との両方に延びる平面において、ウインドシールド13は、水平面に対して角度αをなしている。より詳しくは、ホログラフィックスクリーン40の法線方向nd2と鉛直方向との両方に延びる平面において、ウインドシールド13が水平面に対してなす角度のうちホログラフィックスクリーン40の近くの角度が角度αである。ホログラフィックスクリーン40の法線方向nd2と鉛直方向との両方に延びる平面において、ウインドシールド13が水平面に対してなす角度は、ウインドシールド13の鉛直方向の上端と下端とを結ぶ直線と、水平面とがなす角度である。角度αは、25°以上であってもよく、30°以上であってもよく、90°以下であってもよく、80°以下であってもよい。
【0022】
投射装置30は、画像を形成する画像光をホログラフィックスクリーン40に投射する。投射装置30は、特に限定されず、画像を形成可能な種々の装置であってよい。図1に示された例において、投射装置30はダッシュボード内に配置されている。投射装置30は、ダッシュボードによって隠蔽されている。投射装置30が外部から観察されにくくなる。
【0023】
図2に示された例において、投射装置30は、画像形成装置31及び投射光学系32を含む。画像形成装置31は、複数の画素を含んでもよい。画像形成装置31は、画素毎に発光状態を制御することによって、所望の画像を形成してもよい。画像形成装置31は、透過型の液晶表示装置、反射型の液晶表示装置、デジタルミラーデバイスを含むレーザー表示装置、EL表示装置とも呼ばれるエレクトロルミネッセンス表示装置等であってもよい。投射光学系32は、画像形成装置31からホログラフィックスクリーン40へ画像光を誘導する。投射光学系32は、ミラー、レンズ、プリズム、回折光学素子、および、これらの組合せを含んでもよい。図示された例において、投射光学系32は画像光を反射するミラーである。
【0024】
本実施の形態では、ホログラフィックスクリーン40は、ヘッドアップディスプレイ20のコンバイナ50として用いられている。図2に示すように、ホログラフィックスクリーン40は、投射装置30から画像光を投射される。ホログラフィックスクリーン40は、ホログラム素子60を含んでいる。ホログラム素子60は、画像光を回折して、観察者である使用者5に向ける。
【0025】
図3は、図2のホログラフィックスクリーン40の層構成の一例を示す縦断面図である。ホログラフィックスクリーン40は、使用者5に対面する第1面41と、フロントウインドウ14に対面する第2面42と、を含む。
【0026】
ホログラフィックスクリーン40は、高い可視光透過率を有してもよい。ホログラフィックスクリーン40は、透明でもよい。ホログラフィックスクリーン40は、入射光がホログラム素子60のブラッグ条件を満たさない場合に、透明でもよい。ホログラフィックスクリーン40に高い可視光透過率を付与するため、ホログラフィックスクリーン40の構成要素も透明でもよい。
【0027】
「透明」とは、可視光透過率が、40%以上、70%以上、80%以上または90%以上であることを意味する。可視光透過率は、分光光度計((株)島津製作所製「UV-3100PC」、JIS K0115準拠品)を用いて測定波長380nm以上780nm以下の範囲内で1nm毎に測定したときの、各波長における全光線透過率の平均値として特定される。可視光透過率の測定時における入射角は、特に透過方向が定められていない場合、0°とする。入射角は、入射面への法線方向に対して入射光の進行方向がなす角度(°)であり、90°未満の値となる。
【0028】
図示された例において、ホログラフィックスクリーン40は、板状である。ホログラフィックスクリーン40は、その板面が水平面に対して傾斜するように配置されている。
【0029】
図2に示されているホログラフィックスクリーン40の法線方向nd2と鉛直方向との両方に延びる平面において、ホログラフィックスクリーン40は、水平面に対して角度βをなしている。より詳しくは、ホログラフィックスクリーン40の法線方向nd2と鉛直方向との両方に延びる平面において、ホログラフィックスクリーン40が水平面に対してなす角度のうちウインドシールド13の近くの角度が角度βである。ホログラフィックスクリーン40の法線方向nd2と鉛直方向との両方に延びる平面において、ホログラフィックスクリーン40が水平面に対してなす角度は、ホログラフィックスクリーン40の鉛直方向の上端と下端とを結ぶ直線と、水平面とがなす角度である。角度βは、60°以上であってもよく、75°以上であってもよく、90°以下であってもよく、80°以下であってもよい。
【0030】
図示された例に限らず、ホログラフィックスクリーン40は、曲がっていてもよい。例えば、ホログラフィックスクリーン40は、フロントウインドウ14の形状に沿うように曲がっていてもよい。
【0031】
図示された例において、ホログラフィックスクリーン40は、保護フィルム54、ホログラム素子60及び支持体51を含む。保護フィルム54、ホログラム素子60及び支持体51は、第1面41から第2面42に向けて、この順で配置されている。
【0032】
支持体51は、透明な板である。支持体51は、ホログラム素子60を支持する基板として機能する。支持体51の材料は、ソーダライムガラス等のガラスであってもよいし、アクリル樹脂やポリカーボネート等の樹脂であってもよい。支持体51の厚みは、1mm以上5mm以下であってもよい。
【0033】
保護フィルム54は、ホログラム素子60を保護する保護層として機能する。保護フィルム54は透明なフィルムである。保護フィルム54の材料は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、環状ポリオレフィン等であってもよい。保護フィルム54の厚みは、10μm以上100μm以下であってもよい。
【0034】
ホログラム素子60は、特定の入射方向から入射する特定波長の光を、高い回折効率で回折して、特定の方向に向ける。ホログラム素子60は、ブラッグ条件を満たす入射光を高い回折効率で回折して、特定の方向に向ける。ホログラム素子60は、投射装置30からの画像光を、高効率で回折する。投射装置30は、画像光がホログラム素子60のブラッグ条件を満たすように、ホログラフィックスクリーン40に対して位置決めされる。ホログラム素子60は、ホログラフィックスクリーン40から所定の出射方向に向けて画像光が進むように、画像光を回折する。
【0035】
ホログラム素子60は、反射型のホログラムでもよく、透過型のホログラムでもよい。図示された例において、ホログラム素子60は、反射型のホログラムである。
【0036】
ホログラム素子60は、指向性を有した散乱層として機能してもよい。これにより、ホログラフィックスクリーン40は、指向性を有したスクリーンとして機能してもよい。図2に示すように、ホログラフィックスクリーン40によって表示される画像を、ホログラフィックスクリーン40に対する所定の範囲として設定されたアイボックスB5内から観察することを想定されている。図示された例において、使用者5の体型や使用者5が着座する座席の可動範囲等を考慮して、アイボックスB5の大きさや位置が決定される。目がアイボックスB5内に位置する間、使用者5は画像を観察できる。ホログラフィックスクリーン40の各位置から出射する光が、アイボックスB5内の全域に広げられる。光源光を有効に活用して画像を明るく表示する観点から、ホログラフィックスクリーン40の各位置から出射する光は、アイボックスB5のみに向かうことが好ましい。
【0037】
図2に示された例において、ホログラム素子60は、入射角θ1でホログラム素子60に入射する画像光L21を、高効率で回折する。ホログラム素子60で回折された画像光L22は、出射角θ2となる出射方向に、ホログラフィックスクリーン40から出射する。
【0038】
入射角は、入射対象への法線方向に対して、入射対象への入射前における入射光の進行方向、すなわち入射方向がなす角度であり、90°未満の値となる。図示された例において、画像光L21の入射角θ1は、ホログラフィックスクリーン40への入射方向と法線方向nd2との間の角度となる。出射角θ2は、回折対象への法線方向に対して回折された画像光L22の回折対象からの出射後における進行方向、すなわち出射方向がなす角度であり、90°未満の値となる。図示された例において、出射角θ2は、画像光L22のホログラフィックスクリーン40からの出射方向と法線方向nd2との間の角度となる。入射角θ1および出射角θ2は、入射光L21、出射光L22、およびホログラフィックスクリーン40への法線方向nd2を含む面上で特定される。
【0039】
ホログラフィックスクリーン40への入射位置等に応じて入射角や出射角は変化し得る。入射角を測定する際の入射方向は、ホログラム素子60のうちの投射装置30からの画像光が入射し得る範囲の中心(重心)となる位置に向かう光路のうちの最も高強度となる光路によって、特定される。回折角を測定する際の出射方向は、ホログラム素子60のうちの投射装置30からの画像光が入射し得る範囲の中心(重心)となる位置から出射する光路のうちの最も高強度となる光路によって、特定される。
【0040】
投射装置30からホログラフィックスクリーン40への画像光の入射角θ1は、40°以上でもよく、45°以上でもよく、50°以上でもよい。入射角θ1の下限をこのように設定することによって、ホログラフィックスクリーン40で正反射した画像光による影響を抑制できる。
【0041】
投射装置30からホログラフィックスクリーン40への画像光の入射角θ1は、60°以下でもよく、55°以下でもよく、50°以下でもよい。入射角θ1の上限を設定することにより、第1面41での正反射を抑制できる。
【0042】
特に、ホログラフィックスクリーン40の法線方向nd2と鉛直方向との両方に延びる平面における、投射装置30からホログラフィックスクリーン40への画像光の入射角、言い換えるとホログラフィックスクリーン40の法線方向nd2に対して投射装置30がホログラフィックスクリーン40に画像光を投影する角度である角度δは、40°以上であってもよく、50°以上であってもよく、80°以下であってもよく70°以下であってもよい。
【0043】
ホログラム素子60で回折された画像光は、出射角θ2で輝度が最大となり、出射角θ2から離れるにつれて輝度が小さくなる。輝度が小さくなると、画像光はほとんど観察されなくなる。例えば輝度が最大輝度の10%未満となる画像光は、ほとんど観察されない。出射角θ2を中心とした、輝度が最大輝度の10%以上となる角度以内において、画像光は十分に明るく観察される。ホログラフィックスクリーン40の法線方向nd2と鉛直方向との両方に延びる平面における、ホログラム素子60で回折された画像光の輝度が最大となる方向に対してホログラム素子60で回折された画像光の輝度が最大輝度の10%以上となる方向のうちウインドシールド13に最も近づく方向がなす角度γは、5°以上であってもよく、10°以上であってもよく、50°以下であってもよく、40°以下であってもよい。
【0044】
画像光の輝度は、JIS C7614:1993に準拠した色彩輝度計であるトプコン社製のBM-7を用いて測定できる。本明細書における画像光の輝度は、当該色彩輝度計において測定角を2°にして測定された値として特定される。
【0045】
回折機能を実現するために、ホログラム素子60に干渉縞が記録されている。干渉縞に関する情報は、種々の形態として、ホログラム素子60に記録され得る。ホログラム素子60は、位相型のホログラムであってもよいし、振幅型のホログラムであってもよい。ホログラム素子60は、表面レリーフ型ホログラムであってもよいし、計算機合成ホログラム(CGH:Computer Generated Hologram)としての表面レリーフ型ホログラムであってもよい。ホログラム素子60は、大面積化が容易である点において、体積ホログラムでもよい。ホログラム素子60は、波長選択性や角度選択性の鋭い反射型体積ホログラムでもよい。
【0046】
指向性を有した散乱層として機能する体積ホログラムは、散乱層からの散乱光としての物体光を感光性材料層に露光することにより、作製され得る。感光性材料層として、銀塩感材、重クロム酸ゼラチン、架橋性ポリマー、フォトポリマー等の層が例示される。露光時、感光性材料層に対する散乱層の相対位置は、ホログラム素子60に対するアイボックスB5の相対位置と同一にする。投射装置30からホログラム素子60に向かう画像光と共役な参照光を、物体光とともに感光性材料層に露光する。感光性材料層において、参照光と物体光とを干渉させることによって、感光性材料層に干渉縞を記録できる。
【0047】
図4に示すように、ホログラム素子60は、有効区域61と、有効区域61に隣接する周囲区域62と、を含んでもよい。図4に示された例において、周囲区域62は、有効区域61を周状に取り囲んでいる。周囲区域62は、有効区域61に隣接している。図5は、図4の部分拡大図である。図5に示すように、周囲区域62は、第1区域62A及び第2区域62Bのいずれかに区分けされる。図示された例において、第1区域62A及び第2区域62Bは、千鳥状に配列されている。図4及び図5に示す例において、有効区域61及び周囲区域62のうちの、有効区域61と周囲区域62の第1区域62Aとのみが、画像光を回折する回折機能を有してもよい。有効区域61と周囲区域62の第1区域62Aとのみが、画像光を回折する干渉縞を有してもよい。すなわち、周囲区域62の第2区域62Bは、画像光を回折する機能を有さなくてもよい。周囲区域62の第2区域62Bは、画像光を回折する干渉縞を有さなくてもよい。
【0048】
感光性材料を露光して作製したホログラム素子60では、干渉縞を有する区域がいくらか色を有する。図4に示した例のように、ホログラム素子60の周縁には干渉縞を有さない区域が生じ得る。図4に示された例において、ホログラム素子60は、有効区域61から離れて周囲区域62に隣接する非有効区域63を含んでいる。非有効区域63は、露光工程時に治具等によって保持されていた区域であって、干渉縞を形成するための露光を施されていない。非有効区域63と有効区域61との色差が目立つと、ヘッドアップディスプレイ20及びホログラフィックスクリーン40の意匠性が著しく低下する。有効区域61と非有効区域63の中間の色を有した周囲区域62を設置することにより、ホログラム素子60内における色差を目立たなくできる。ヘッドアップディスプレイ20及びホログラフィックスクリーン40の意匠性を改善できる。
【0049】
図4に示された例において、非有効区域63は、周囲区域62を周状に取り囲んでいる。非有効区域63は、周囲区域62及び周囲区域62と隣接している。周囲区域62は、有効区域61と非有効区域63との間に位置する。
【0050】
ホログラム素子60の干渉縞が形成された区域だけを切り出して用いる場合にも、ホログラム素子60の色が意匠性を低下させ得る。例えば、図6に示すように、複数のホログラム素子60を用いて大きな表示面を形成することもある。この例において、二つのホログラム素子60を並べた際に、二つのホログラム素子60の境界が目立ち得る。二つのホログラム素子60を隙間なく配置した状態を維持することが難しいため、いくらか着色した二つのホログラム素子60の間の区域が視認され得る。図6に示すように、有効区域61に隣接して周囲区域62を設けることで、二つのホログラム素子60の間の区域を目立たなくできる。ヘッドアップディスプレイ20及びホログラフィックスクリーン40の意匠性を改善できる。
【0051】
ホログラフィックスクリーン40は、複数のホログラム素子60を含んでもよい。複数のホログラム素子60は、互いに異なる波長の光を高効率で回折できる。例えば、投射装置30からの画像光は、青色の光、緑色の光、および赤色の光を含み得る。この例において、ホログラフィックスクリーン40は、青色の光を高効率で回折するホログラム素子60、緑色の光を高効率で回折するホログラム素子60、及び赤色の光を高効率で回折するホログラム素子60を含んでもよい。ホログラム素子60が体積ホログラムである場合には、多重記録によって、単一のホログラム素子60が複数の波長域の光を高効率で回折してもよい。
【0052】
図3に示したホログラフィックスクリーン40の構成は例示に過ぎない。図7乃至図11に示すように、ホログラフィックスクリーン40を構成してもよい。以下の説明において、既に説明した部分と同一に構成し得る部分に対し、当該既に説明した部分と同一の符号を付すとともに、重複する説明を省略する。
【0053】
図7に示された例において、ホログラム素子60と支持体51との間に接合層53が設けられている。接合層53は、ホログラム素子60及び支持体51を接合する。接合層53は、種々の接着性または粘着性を有した材料を含んでよい。一例として、接合層53の材料は熱可塑性樹脂でもよい。図7に示された例において、ホログラム素子60を用意し、このホログラム素子60を支持体51に接合層53を用いて貼合してもよい。支持体51は、ホログラム素子60保護フィルム54よりも大面積を有してもよい。
【0054】
図8に示された例において、ホログラフィックスクリーン40は、図7に示されたホログラフィックスクリーン40と比較して、保護フィルム54に接合した接合層53と、接合層53と接合し第1面41を構成する第2支持体52と、を更に含む。第2支持体52は、支持体51と、同一の材料で同一に構成されてもよいし、異なる材料で構成されてもよいし、異なる構成を有してもよい。図8に示すように、ホログラフィックスクリーン40は、ホログラム素子60の側端面を覆う封止部55を更に含んでもよい。封止部55は、水や油等によるホログラム素子60の劣化を抑制する。封止部55は、樹脂によって構成されてもよい。図9に示されたホログラフィックスクリーン40は、図8に示されたホログラフィックスクリーン40と比較して、接合層53及びホログラム素子60の間に保護フィルム54を更に含む。
【0055】
図10及び図11は、保護フィルム54や第2支持体52に代えて、樹脂成形部56が設けられている。樹脂成形部56は、射出成形によって形成されてもよい。樹脂成形部56は、ホログラム素子60の側端面を覆ってもよい。図10に示されたホログラフィックスクリーン40は、図3のホログラフィックスクリーン40の保護フィルム54に代えて、樹脂成形部56が設けられている。図11に示されたホログラフィックスクリーン40は、図7のホログラフィックスクリーン40の保護フィルム54に代えて、樹脂成形部56が設けてられている。
【0056】
図8乃至図11に示された例において、ホログラム素子60の全周囲が他の部材によって覆われている。ホログラム素子60は、全周囲を他の部材によって封止されている。この例によれば、水、手垢、油等の浸入によってホログラム素子60に記録された干渉縞のピッチが変化することを抑制できる。水や油等によって、樹脂材料が黄変することを抑制できる。
【0057】
ホログラフィックスクリーン40は、特定の機能を発揮することを期待されたその他の機能層を更に含んでもよい。1つの機能層が2つ以上の機能を発揮してもよい。ホログラフィックスクリーン40は、耐擦傷性を有したハードコート(HC)機能、赤外線遮蔽(反射)機能、紫外線遮蔽(反射)機能、防汚機能等の一以上を含んでもよい。
【0058】
本実施の形態の移動体10において、図2に示されているような、ホログラフィックスクリーン40の法線方向nd2と鉛直方向との両方に延びる平面において、ウインドシールド13が水平方向に対してなす角度α[°]と、ホログラフィックスクリーン40が水平方向に対してなす角度β[°]と、ホログラム素子60で回折された画像光の輝度が最大となる方向に対してホログラム素子60で回折された画像光の輝度が最大輝度の10%以上となる方向のうちウインドシールド13に最も近づく方向がなす角度γ[°]とが、次の関係(i)を満たしていてもよい。
γ≦α-(90-β) ・・・(i)
【0059】
本実施の形態の移動体10において、図2に示されているような、ホログラフィックスクリーン40の法線方向nd2と鉛直方向との両方に延びる平面において、ホログラム素子60で回折された画像光の輝度が最大となる方向に対してホログラム素子60で回折された画像光の輝度が最大輝度の10%以上となる方向のうちウインドシールド13に最も近づく方向がなす角度γ[°]と、ホログラフィックスクリーン40の法線方向nd2に対して投射装置30がホログラフィックスクリーン40に画像光を投射する角度δ[°]とは、次の関係(ii)を満たしていてもよい。
δ≧γ ・・・(ii)
【0060】
本実施の形態の移動体10において、図2に示されているような、ホログラフィックスクリーン40の法線方向nd2と鉛直方向との両方に延びる平面において、ウインドシールド13が水平方向に対してなす角度α[°]と、ホログラフィックスクリーン40が水平方向に対してなす角度β[°]と、ホログラフィックスクリーン40の法線方向nd2に対して投射装置30がホログラフィックスクリーン40に画像光を投射する角度δ[°]とは、次の関係(iii)を満たしていてもよい。
δ≦α-(90-β) ・・・(iii)
【0061】
本実施の形態の移動体10において、図2に示されているような、ホログラフィックスクリーン40の法線方向nd2と鉛直方向との両方に延びる平面において、ウインドシールド13が水平方向に対してなす角度α[°]と、ホログラフィックスクリーン40が水平方向に対してなす角度β[°]と、ホログラフィックスクリーン40の法線方向nd2に対して投射装置30がホログラフィックスクリーン40に画像光を投射する角度δ[°]とは、次の関係(iv)を満たしていてもよい。
δ≧2α-(90-β) ・・・(iv)
【0062】
上述の関係(i)乃至(iv)の少なくともいずれかを満たすように、本実施の形態の移動体10において、ウインドシールド13及びホログラフィックスクリーン40が配置されており、ホログラム素子60が設計されている。本実施の形態の移動体10は、上述の関係(i)乃至(iv)のうち、複数を同時に満たしていてもよい。
【0063】
このような関係を満たすホログラム素子60は、例えば、感光性材料層に干渉縞を記録する際に、感光性材料層から十分に離して参照光を照射することで、あるいはレンチキュラーレンズを介して感光性材料層に参照光を照射することで、製造できる。
【0064】
次に、図示された移動体10及びヘッドアップディスプレイ20の作用について説明する。
【0065】
図2に示すように、使用者5は、ホログラフィックスクリーン40の背後からの光L20を、ホログラフィックスクリーン40を介して観察できる。使用者5は、ウインドシールド13の背後、言い換えると移動体10の外部を、ホログラフィックスクリーン40を介して観察できてもよい。
【0066】
図2に示すように、投射装置30から画像光L21が放出される。画像光L21は、画像形成装置31によって形成され、投射光学系32によってホログラフィックスクリーン40に向けられる。画像光L21は、ホログラフィックスクリーン40に第1面41から入射する。画像光は、照明光として、ホログラフィックスクリーン40のホログラム素子60に入射する。ホログラム素子60は、照明光としての画像光を高効率で回折する。ホログラム素子60は、指向性を有した散乱層として機能する。ホログラム素子60で回折された画像光L22は、再生光として、ホログラム素子60で反射して使用者5に向かう。使用者5は、画像光L22によって形成される画像を、例えばホログラフィックスクリーン40上に、観察できる。
【0067】
従来のヘッドアップディスプレイでは、意図されない画像光が観察されることがある。例えば、ウインドシールドに画像光が映り込むことや、画像光が二重に観察されることがある。意図されない画像光が観察されると、使用者の視界が悪化する。
【0068】
本件開示者らが検討した結果、上述の関係(i)乃至(iv)の少なくともいずれかを満たすことで、意図されない画像光による使用者の視界の悪化を抑制できることが判明した。以下、関係(i)乃至(iv)のそれぞれを満たす場合と満たさない場合について検討する。
【0069】
上述した関係(i)を満たす場合と満たさない場合について検討する。図12には、ホログラフィックスクリーン40の法線方向nd2と鉛直方向との両方に延びる平面において、ホログラム素子60で回折された画像光の輝度が最大となる方向に対してホログラム素子60で回折された画像光の輝度が最大輝度の10%以上となる方向のうちウインドシールド13に最も近づく方向がなす角度γ[°]が、上述した関係(i)を満たす角度γ1[°]と、上述した関係(i)を満たさない角度γ2[°]が示されている。図12に示されているように、ホログラフィックスクリーン40に入射した画像光L121は、ホログラフィックスクリーン40に含まれるホログラム素子60で回折される。
【0070】
上述した関係(i)を満たさない場合、図12に示すように、ウインドシールド13に近づく方向において、ホログラム素子60で回折された画像光のうち輝度が最大輝度の10%以上となる画像光L123は、ホログラム素子60で回折された画像光の輝度が最大となる方向に対して角度γ2[°]の範囲にある。この画像光L123の一部は、ウインドシールド13に入射する。ウインドシールド13に入射した画像光L123は、ウインドシールド13で反射して、使用者5に観察され得る。使用者5は、ウインドシールド13上に、画像光L123によって形成される画像を観察し得る。このようにして、意図されない画像光が観察され得る。
【0071】
上述した関係(i)を満たす場合、図12に示すように、ウインドシールド13に近づく方向において、ホログラム素子60で回折された画像光のうち輝度が最大輝度の10%以上となる画像光L122は、ホログラム素子60で回折された画像光の輝度が最大となる方向に対して角度γ1[°]の範囲にある。この画像光L122は、ウインドシールド13に入射しない。ウインドシールド13には、ホログラム素子60で回折された画像光のうち輝度が最大輝度の10%未満となる画像光しか入射し得ない。使用者5は、ウインドシールド13上に画像をほとんど観察し得ない。本実施の形態の移動体10において、上述した関係(i)を満たすことで、意図されない画像光による使用者の視界の悪化を抑制できる。
【0072】
上述した関係(ii)を満たす場合と満たさない場合について検討する。図13には、ホログラフィックスクリーン40の法線方向nd2と鉛直方向との両方に延びる平面において、ホログラフィックスクリーン40の法線方向nd2に対して投射装置30がホログラフィックスクリーン40に画像光を投射する角度δ[°]が、上述した関係(ii)を満たす角度δ1[°]と、上述した関係(ii)を満たさない角度δ2[°]とが示されている。図13に示されているように、ホログラフィックスクリーン40に入射した画像光L131、L132は、ホログラフィックスクリーン40に含まれるホログラム素子60で回折される。ウインドシールド13に近づく方向において、ホログラム素子60で回折された画像光のうち輝度が最大輝度の10%以上となる画像光L133は、ホログラム素子60で回折された画像光の輝度が最大となる方向に対して角度γ[°]の範囲にある。ホログラム素子60で回折された画像光のうち輝度が最大輝度の10%以上となる範囲の画像光L133は、十分に明るい画像を形成して、使用者5に観察される。
【0073】
上述した関係(ii)を満たさない場合、図13に示すように、ホログラフィックスクリーン40の法線方向nd2と鉛直方向との両方に延びる平面において、ホログラフィックスクリーン40に入射角δ2[°]で入射した画像光L132は、ホログラフィックスクリーン40の表面で反射角δ2[°]で反射する。ホログラフィックスクリーン40の表面で反射した画像光L135は、ホログラム素子60で回折された画像光のうち輝度が最大輝度の10%以上となる範囲の画像光L133と重なる。使用者5は、ホログラム素子60で回折された画像光L133によって形成される画像と、ホログラフィックスクリーン40の表面で反射した画像光L135によって形成される画像と、の両方を同時に観察し得る。すなわち、使用者5は、画像を二重に観察し得る。このようにして、意図されない画像光が観察され得る。
【0074】
上述した関係(ii)を満たす場合、図13に示すように、ホログラフィックスクリーン40の法線方向nd2と鉛直方向との両方に延びる平面において、ホログラフィックスクリーン40に入射角δ1[°]で入射した画像光L131は、ホログラフィックスクリーン40の表面で反射角δ1[°]で反射する。ホログラフィックスクリーン40の表面で反射した画像光L134は、ホログラム素子60で回折された画像光のうち輝度が最大輝度の10%以上となる範囲の画像光L133と重ならない。使用者5は、ホログラフィックスクリーン40の表面で反射した画像光L134によって形成される画像を、ホログラム素子60で回折された画像光L133によって形成される画像とは異なる位置に観察する。あるいは、使用者5は、ホログラフィックスクリーン40の表面で反射した画像光L134によって形成される画像を、観察できない。本実施の形態の移動体10において、上述した関係(ii)を満たすことで、意図されない画像光による使用者の視界の悪化を抑制できる。
【0075】
上述した関係(iii)を満たす場合と満たさない場合について検討する。図14には、ホログラフィックスクリーン40の法線方向nd2と鉛直方向との両方に延びる平面において、ホログラフィックスクリーン40の法線方向nd2に対して投射装置30がホログラフィックスクリーン40に画像光を投射する角度δ[°]が、上述した関係(iii)を満たす角度δ3[°]と、上述した関係(iii)を満たさない角度δ4[°]とが示されている。図14に示されているように、ホログラフィックスクリーン40に入射した画像光L141、L142は、ホログラフィックスクリーン40に含まれるホログラム素子60で回折される。ホログラム素子60で回折された画像光のうち輝度が最大輝度の10%以上となる画像光L143は、十分に明るい画像を形成して、使用者5に観察される。
【0076】
上述した関係(iii)を満たさない場合、図14に示すように、ホログラフィックスクリーン40の法線方向nd2と鉛直方向との両方に延びる平面において、ホログラフィックスクリーン40に入射角δ4[°]で入射した画像光L142は、ホログラフィックスクリーン40の表面で反射角δ4[°]で反射する。ホログラフィックスクリーン40の表面で反射した画像光L145は、ウインドシールド13に入射する。ウインドシールド13に入射した画像光L145は、ウインドシールド13で反射して、使用者5に観察され得る。使用者5は、ウインドシールド13上に、画像光L145によって形成される画像を観察し得る。このようにして、意図されない画像光が観察され得る。
【0077】
上述した関係(iii)を満たす場合、図14に示すように、ホログラフィックスクリーン40の法線方向nd2と鉛直方向との両方に延びる平面において、ホログラフィックスクリーン40に入射角δ3[°]で入射した画像光L141は、ホログラフィックスクリーン40の表面で反射角δ3[°]で反射する。ホログラフィックスクリーン40の表面で反射した画像光L144は、ウインドシールド13に入射しない。ウインドシールド13には、ホログラム素子60で回折された画像光のうち輝度が最大輝度の10%未満となる画像光しか入射し得ない。使用者5は、ウインドシールド13上に画像をほとんど観察し得ない。本実施の形態の移動体10において、上述した関係(iii)を満たすことで、意図されない画像光による使用者の視界の悪化を抑制できる。
【0078】
上述した関係(iv)を満たす場合と満たさない場合について検討する。図15には、ホログラフィックスクリーン40の法線方向nd2と鉛直方向との両方に延びる平面において、ホログラフィックスクリーン40の法線方向nd2に対して投射装置30がホログラフィックスクリーン40に画像光を投射する角度δ[°]が、上述した関係(iv)を満たす角度δ5[°]と、上述した関係(iv)を満たさない角度δ6[°]とが示されている。図15に示されているように、ホログラフィックスクリーン40に入射した画像光L151、L152は、ホログラフィックスクリーン40に含まれるホログラム素子60で回折される。ホログラム素子60で回折された画像光のうち輝度が最大輝度の10%以上となる画像光L153は、十分に明るい画像を形成して、使用者5に観察される。
【0079】
上述した関係(iv)を満たさない場合、図15に示すように、ホログラフィックスクリーン40の法線方向nd2と鉛直方向との両方に延びる平面において、ホログラフィックスクリーン40に入射角δ6[°]で入射した画像光L152は、ホログラフィックスクリーン40の表面で反射角δ6[°]で反射する。ホログラフィックスクリーン40の表面で反射した画像光L155は、ウインドシールド13に入射する。ウインドシールド13に入射した画像光L155は、入射角が大きいため、ウインドシールド13で反射すると、鉛直方向の上側に向かう。これにより、ウインドシールド13で反射した画像光L155は、使用者5に観察され得る。このようにして、意図されない画像光が観察され得る。
【0080】
上述した関係(iv)を満たす場合、図15に示すように、ホログラフィックスクリーン40の法線方向nd2と鉛直方向との両方に延びる平面において、ホログラフィックスクリーン40に入射角δ5[°]で入射した画像光L151は、ホログラフィックスクリーン40の表面で反射角δ5[°]で反射する。ホログラフィックスクリーン40の表面で反射した画像光L154は、ウインドシールド13に入射する。ウインドシールド13に入射した画像光L154は、入射角が小さいため、ウインドシールド13で反射すると、鉛直方向の下側に向かう。これにより、ウインドシールド13で反射した画像光L154は、使用者5にほとんど観察されない。本実施の形態の移動体10において、上述した関係(iv)を満たすことで、意図されない画像光による使用者の視界の悪化を抑制できる。
【0081】
以上に説明してきた本実施の形態において、ホログラフィックスクリーン40の法線方向nd2と鉛直方向との両方に延びる平面において、ウインドシールド13が水平方向に対してなす角度のうちホログラフィックスクリーン40の近くの角度α[°]と、ホログラフィックスクリーン40が水平方向に対してなす角度のうちウインドシールド13の近くの角度β[°]と、ホログラム素子60で回折された画像光の輝度が最大となる方向に対してホログラム素子60で回折された画像光の輝度が最大輝度の10%以上となる方向のうちウインドシールド13に最も近づく方向がなす角度γ[°]と、ホログラフィックスクリーン40の法線方向nd2に対して投射装置30がホログラフィックスクリーン40に画像光を投射する角度δ[°]とは、次の関係(i)乃至(iv)のいずれかを満たしている。
γ≦α-(90-β) ・・・(i)
δ≧γ ・・・(ii)
δ≦α-(90-β) ・・・(iii)
δ≧2α-(90-β) ・・・(iv)
本実施の形態によれば、ホログラム素子60で回折した画像光やホログラフィックスクリーン40の表面で反射した画像光が、意図されない画像光として、ウインドシールド13上に観察されることや、観察されることが意図された画像光と重なって、使用者5に観察されることが抑制される。意図されない画像光による使用者の視界の悪化を抑制できる。
【0082】
具体例を参照しながら一実施の形態を説明してきたが、上述の具体例が一実施の形態を限定しない。上述した一実施の形態は、その他の様々な具体例で実施でき、その要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、追加等を行うことができる。
【0083】
上述した具体例に限らず、ホログラフィックスクリーン40は、湾曲していてもよい。
【0084】
図1に示された例において、ホログラフィックスクリーン40は、自動車のダッシュボードによって下方から保持されている。しかしながらこの例に限られず、ホログラフィックスクリーン40は、側方から保持されてもよいし、上方から保持されてもよい。
【実施例0085】
本開示を実施例により更に詳細に説明する。本開示は以下の実施例に限定されない。
【0086】
実施例として、ウインドシールド及びヘッドアップディスプレイを有する移動体を用意した。移動体は、自動車である。ウインドシールドは、自動車のフロントウインドウである。ヘッドアップディスプレイは、投射装置と、ホログラフィックスクリーンと、を有している。投射装置は、ホログラフィックスクリーンに画像光を投射する。ホログラフィックスクリーンは、ホログラム素子を有する。ホログラフィックスクリーンに投射された画像光は、ホログラム素子によって回折される。ホログラフィックスクリーンは、自動車のダッシュボードによって下方から保持されている。ウインドシールドは、ホログラフィックスクリーンに対面する位置に配置されている。
【0087】
ホログラフィックスクリーンの法線方向と鉛直方向との両方に延びる平面における、ウインドシールドが水平方向に対してなす角度のうちホログラフィックスクリーンの近くの角度を角度α[°]とする。ホログラフィックスクリーンの法線方向と鉛直方向との両方に延びる平面における、ホログラフィックスクリーンが水平方向に対してなす角度のうちウインドシールドの近くの角度を角度β[°]とする。ホログラフィックスクリーンの法線方向と鉛直方向との両方に延びる平面における、ホログラム素子で回折された画像光の輝度が最大となる方向に対してホログラム素子で回折された画像光の輝度が最大輝度の10%以上となる方向のうちウインドシールドに最も近づく方向がなす角度を角度γ[°]とする。ホログラフィックスクリーンの法線方向と鉛直方向との両方に延びる平面における、ホログラフィックスクリーンの法線方向に対して投射装置30がホログラフィックスクリーンに画像光を投射する角度δ[°]とする。
【0088】
実施例において、角度α[°]、β[°]、γ[°]、δ[°]をそれぞれ変化させた。実施例において、意図されない画像光が使用者に観察されるかを評価した。意図されない画像光とは、ホログラフィックスクリーンのホログラム素子60で回折した画像光のうち直接使用者に観察される画像光のことをいう。
【0089】
実施例の角度α[°]、β[°]、γ[°]、δ[°]の値及び意図されない画像光が使用者に観察されるかの評価の結果を表1に示す。意図されない画像光が使用者に観察されなかったものはAと、意図されない画像光が使用者に少ししか観察されなかったものはBと、意図されない画像光が視界の妨げにならない程度に使用者に観察されたものにはCと、意図されない画像光が使用者に明確に観察されたものはDと、評価した。
【0090】
【表1】
【0091】
表1から以下のことが理解される。実施例1乃至3、5、6、8、10乃至16、19乃至21、25、26では、関係(i)を満たしている。実施例1乃至13、15乃至17、19乃至26では、関係(ii)を満たしている。実施例10、11、13、14、16、18では、関係(iii)を満たしている。実施例5乃至9、19、20、22、23、25では、関係(iv)を満たしている。実施例から、関係(i)乃至(iv)のいずれを満たすことで、意図されない画像光が使用者に観察されにくくなることが理解される。関係(i)乃至(iv)のいずれか2つを満たすことで、意図されない画像光が使用者に少ししか観察されなくなることが理解される。関係(i)乃至(iv)のいずれか3つを満たすことで、意図されない画像光が使用者に観察されず、使用者の視界の悪化が抑制できることが理解される。
【符号の説明】
【0092】
5:使用者
10:移動体
12:自動車
13:ウインドシールド
14:フロントウインドウ
20:ヘッドアップディスプレイ
30:投射装置
31:画像形成装置
32:投射光学系
40:ホログラフィックスクリーン
41:第1面
42:第2面
50:コンバイナ
51:支持体
52:第2支持体
53:接合層
54:保護フィルム
55:封止部
56:樹脂成形部
60:ホログラム素子
61:有効区域
62:周囲区域
62A:第1区域
62B:第2区域
63:非有効区域
D1:第1方向
D2:第2方向
D3:第3方向
nd1:ウインドシールドの法線方向
nd2:ホログラフィックスクリーンの法線方向
B5:アイボックス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図13
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図15