(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111736
(43)【公開日】2024-08-19
(54)【発明の名称】防護服
(51)【国際特許分類】
A41D 13/00 20060101AFI20240809BHJP
A41D 13/02 20060101ALI20240809BHJP
【FI】
A41D13/00 102
A41D13/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023016411
(22)【出願日】2023-02-06
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591176661
【氏名又は名称】コスモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木戸 達也
(72)【発明者】
【氏名】林 祐一郎
(72)【発明者】
【氏名】村上 康晴
(72)【発明者】
【氏名】杉野 昌紀
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 広隆
【テーマコード(参考)】
3B011
3B211
【Fターム(参考)】
3B011AA01
3B011AA02
3B011AA05
3B011AB01
3B011AC17
3B011AC26
3B211AA01
3B211AA02
3B211AA05
3B211AB01
3B211AC17
3B211AC26
(57)【要約】
【課題】加工時間を短縮化することができ、生産性が優れる防護服を提供する。
【解決手段】1または複数の裁断パーツからなり、着用者が身体の一部を外部に露出するための複数の開口部と、それぞれの開口部の周縁において、開口部を形成するよう接合された接合部と、が形成されており、接合部は、裁断パーツに設けられた一対の接合線同士が接合された部位であり、1または複数の折り目に沿って折り畳まれた折り畳み部がさらに形成された、防護服。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1または複数の裁断パーツからなり、
着用者が身体の一部を外部に露出するための複数の開口部と、それぞれの前記開口部の周縁において、前記開口部を形成するよう接合された接合部と、が形成されており、
前記接合部は、前記裁断パーツに設けられた一対の接合線同士が接合された部位であり、1または複数の折り目に沿って折り畳まれた折り畳み部がさらに形成された、防護服。
【請求項2】
前記折り畳み部は、着用者が前記防護服を着用した際の、脇部、股部または首部のうち少なくともいずれかに相当する部位に形成された、請求項1記載の防護服。
【請求項3】
前記防護服は、上衣であり、
前記開口部は、4か所である、請求項1または2記載の防護服。
【請求項4】
前記防護服は、下衣であり、
前記開口部は、3か所である、請求項1または2記載の防護服。
【請求項5】
前記防護服は、上衣と下衣とが一体となった防護服であり、
前記開口部は、5か所である、請求項1または2記載の防護服。
【請求項6】
前記裁断パーツは、丈方向または幅方向の中心線を境に対称形状である裁断パーツを含む、請求項1または2記載の防護服。
【請求項7】
前記接合部における前記接合線の形状は、同一である、請求項1または2記載の防護服。
【請求項8】
前記裁断パーツの数は、1~10である、請求項1または2記載の防護服。
【請求項9】
前記開口部の周縁に、前記開口部の開口径を伸縮させる伸縮部が形成された、請求項1または2記載の防護服。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防護服に関する。より詳細には、本発明は、加工時間を短縮化することができ、生産性が優れ、廃棄物を削減することができ、リサイクルが容易であり、生産場所の制約を受けにくく、緊急時などにおいて供給網を確保しやすい防護服に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、粉塵や放射線を伴う作業や水を扱う作業において、作業者は、衣服の上に防護服を着用して作業することがある。特許文献1には、放射能汚染防護服が開示されている。特許文献1に記載の防護服は、脚部の上部域からフード部にわたり開閉可能なファスナ部材を備える。作業後において、着用者と別の人がファスナ部材を開閉する。これにより、着用者は、放射能汚染を起こしにくく、より安全である。また、特許文献2に記載の簡易防護服は、後部にミシン目が形成されており、容易に脱衣可能である。
【0003】
ところで、特許文献1~2の防護服を含む従来の防護服は、裁断されたパーツを縫製等することにより作製される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-252021号公報
【特許文献2】特開2021-192649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の防護服は、着用者の体型に合うよう所定の立体形状を有する。そのため、裁断されたパーツ同士(たとえば前身頃と後身頃)は同一形状ではなく、それら裁断パーツを人の手によって縫製する必要があった。具体的には、作業者は、たとえば左手で一方の裁断パーツを持ち、右手で他方の裁断パーツを持ち、両裁断パーツの縫製すべき位置を手作業で調整しつつ、縫製作業を行う必要があった。したがって、従来の防護服は、習熟した縫製技能を必要とし、製造に多くの時間を要するだけでなく、生産場所の制約を受けることから、緊急時などにおいて、供給網を確保しにくい課題があった。加えて、従来の防護服は、着用者の体形に合わせて変形させるために、多くの部位を縫製する必要があり、縫糸やテープなどの副資材の使用量が多く、使い捨ての防護服においては廃棄物量増加につながり、リサイクル処理にも多くの時間を要するものであった。
【0006】
本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、加工時間を短縮化することができ、生産性が優れ、廃棄物を削減することができ、リサイクルが容易であり、生産場所の制約を受けにくく、緊急時などにおいて供給網を確保しやすい防護服を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明には、以下の構成が主に含まれる。
【0008】
(1)1または複数の裁断パーツからなり、着用者が身体の一部を外部に露出するための複数の開口部と、それぞれの前記開口部の周縁において、前記開口部を形成するよう接合された接合部と、が形成されており、前記接合部は、前記裁断パーツに設けられた一対の接合線同士が接合された部位であり、1または複数の折り目に沿って折り畳まれた折り畳み部がさらに形成された、防護服。
【0009】
このような構成によれば、防護服は、接合線を介して接合される裁断パーツが同一形状である。そのため、得られる防護服は、形状の異なる裁断パーツを手作業で縫製する必要がなく、たとえば、縫製装置等によってオートメーション化して生産し得る。また、防護服は、折り畳み部が形成されている。これにより、防護服は、適宜、折り畳み部を設けることにより、着用者の体形に合わせて変形させることができ、着心地がよく、かつ、着用者の動作を妨げにくい。また、防護服は、多くの部位を、縫製や接着によらずに作製することができる。その結果、防護服は、習熟した縫製技能を必要とせず、かつ、製造に要する時間も短縮化され得る。加えて、防護服は、多くの部位を、縫製や接着によらずに作製することで、縫糸やテープなどの副資材の省略が可能となり、廃棄物量の削減あるいはリサイクルが容易となり、使い捨ての防護服に適した取り扱い性が得られ得る。さらに、防護服は、折り畳み部を設けることにより、着用者の体形に合わせて変形させることができ、かつ、多くの部位を、縫製や接着によらずに作製することができる構成とすることで、生地材料さえあれば容易に生産が可能であり、生産場所の制約を受けにくく、緊急時などにおいて、供給網を確保しやすい。
【0010】
(2)前記折り畳み部は、着用者が前記防護服を着用した際の、脇部、股部または首部のうち少なくともいずれかに相当する部位に形成された、(1)記載の防護服。
【0011】
このような構成によれば、防護服は、脇部、股部または首部において、着用者の体形に合わせて変形させることができ、着心地がよく、かつ、着用者の動作を妨げにくい。
【0012】
(3)前記防護服は、上衣であり、前記開口部は、4か所である、(1)または(2)記載の防護服。
【0013】
このような構成によれば、上衣である防護服は、形状の異なる裁断パーツを手作業で縫製する必要がなく、たとえば、縫製装置等によってオートメーション化して生産し得る。また、上衣である防護服は、折り畳み部が形成されている。これにより、防護服は、適宜、折り畳み部を設けることにより、着用者の体形に合わせて、たとえば脇部や首部等を変形させることができ、着心地がよく、かつ、着用者の動作を妨げにくい。また、上衣である防護服は、多くの部位を、縫製や接着によらずに作製することができる。その結果、防護服は、習熟した縫製技能を必要とせず、かつ、製造に要する時間も短縮化され得る。
【0014】
(4)前記防護服は、下衣であり、前記開口部は、3か所である、(1)または(2)記載の防護服。
【0015】
このような構成によれば、下衣である防護服は、形状の異なる裁断パーツを手作業で縫製する必要がなく、たとえば、縫製装置等によってオートメーション化して生産し得る。また、下衣である防護服は、折り畳み部が形成されている。これにより、防護服は、適宜、折り畳み部を設けることにより、着用者の体形に合わせて、たとえば股部等を変形させることができ、着心地がよく、かつ、着用者の動作を妨げにくい。また、下衣である防護服は、多くの部位を、縫製や接着によらずに作製することができる。その結果、防護服は、習熟した縫製技能を必要とせず、かつ、製造に要する時間も短縮化され得る。
【0016】
(5)前記防護服は、上衣と下衣とが一体となった防護服であり、前記開口部は、5か所である、(1)または(2)記載の防護服。
【0017】
このような構成によれば、防護服は、形状の異なる裁断パーツを手作業で縫製する必要がなく、たとえば、縫製装置等によってオートメーション化して生産し得る。また、防護服は、折り畳み部が形成されている。これにより、防護服は、適宜、折り畳み部を設けることにより、着用者の体形に合わせて、変形させることができ、着心地がよく、かつ、着用者の動作を妨げにくい。また、防護服は、多くの部位を、縫製や接着によらずに作製することができる。その結果、防護服は、習熟した縫製技能を必要とせず、かつ、製造に要する時間も短縮化され得る。
【0018】
(6)前記裁断パーツは、丈方向または幅方向の中心線を境に対称形状である裁断パーツを含む、(1)~(5)のいずれかに記載の防護服。
【0019】
このような構成によれば、防護服は、裁断パーツから組み立てる際に、組み立てやすい。また、防護服は、中心線を境に対称形状とすることにより、折りたたんだ際に異なる形状同士の積層や衝突による凹凸が少なく、製品の梱包体積が少なく、輸送機器の内部や、倉庫、店頭における保管場所において、保管スペースを削減しやすい。
【0020】
(7)前記接合部における前記接合線の形状は、同一である、(1)~(6)のいずれかに記載の防護服。
【0021】
このような構成によれば、防護服は、形状の異なる裁断パーツを手作業で縫製する必要がなく、たとえば、縫製装置等によってオートメーション化して生産し得る。
【0022】
(8)前記裁断パーツの数は、1~10である、(1)~(7)のいずれかに記載の防護服。
【0023】
このような構成によれば、防護服は、所定面積の生地からパーツを裁断する際に、裁断に要する加工時間を短く維持しつつ、裁断後の余った生地の量を少なくすることができ、歩留まりがよい。そのため、防護服は、生産性がより優れる。
【0024】
(9)前記開口部の周縁に、前記開口部の開口径を伸縮させる伸縮部が形成された、(1)~(8)のいずれかに記載の防護服。
【0025】
このような構成によれば、防護服は、開口部において、着用者の身体(たとえば手首や足首等)に密着するように、開口径を狭めることができる。これにより、防護服は、着用者の体形により密着しやすく、着用者の動作に追随するよう変形しやすい。また、防護服は、外部からの液体、粉塵や汚染物質などを防護服内部に侵入させにくく、安全性が優れる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、加工時間を短縮化することができ、生産性が優れ、廃棄物を削減することができ、リサイクルが容易であり、生産場所の制約を受けにくく、緊急時などにおいて供給網を確保しやすい防護服を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態(第1の実施形態)の防護服の模式的な正面図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態(第1の実施形態)の防護服1の裁断パーツを説明するための模式的な平面図である。
【
図3】
図3は、本実施形態の変形例(変形実施形態1)の防護服の裁断パーツを説明する模式的な平面図である。
【
図4】
図4は、本発明の一実施形態(第2の実施形態)の防護服の模式的な正面図である。
【
図5】
図5は、本発明の一実施形態(第2の実施形態)の防護服の裁断パーツを説明するための模式的な平面図である。
【
図6】
図6は、本発明の一実施形態(第2の実施形態)の防護服の袖部分を説明するための模式的な斜視図である。
【
図7】
図7は、本発明の一実施形態(第2の実施形態)の防護服の袖部分を説明するための模式的な斜視図である。
【
図8】
図8は、本発明の一実施形態(第3の実施形態)の防護服の模式的な正面図である。
【
図9】
図9は、本発明の一実施形態(第3の実施形態)の防護服の裁断パーツ2Bを説明するための模式的な平面図である。
【
図10】
図10は、本発明の一実施形態(第3の実施形態)の防護服の模式的な正面図である。
【
図11】
図11は、本発明の一実施形態(第4の実施形態)の防護服の模式的な正面図である。
【
図12】
図12は、本発明の一実施形態(第4の実施形態)の防護服の裁断パーツを説明するための模式的な平面図である。
【
図13】
図13は、首部を露出するための開口部の折り畳み部を説明するための模式図である。
【
図14】
図14は、首部を露出するための開口部の折り畳み部において、折り畳み部の右半分における縫い止め部のみを解いた状態の模式図である。
【
図15】
図15は、本発明の一実施形態(第4の実施形態)の防護服の変形例の模式的な正面図である。
【
図16】
図16は、本発明の一実施形態(第5の実施形態)の防護服の模式的な正面図である。
【
図17】
図17は、本発明の一実施形態(第5の実施形態)の防護服の模式的な斜視図である。
【
図18】
図18は、本発明の一実施形態(第5の実施形態)の防護服の裁断パーツ2Dを説明するための模式的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の一実施形態(第1の実施形態)の防護服1の模式的な正面図である。
図2は、本発明の一実施形態(第1の実施形態)の防護服1の裁断パーツ2を説明するための模式的な平面図である。本実施形態の防護服1は、1または複数の裁断パーツからなる。防護服1は、着用者が身体の一部を外部に露出するための複数の開口部と、それぞれの開口部の周縁において、開口部を形成するよう接合された接合部とが形成されている。接合部は、裁断パーツ2に設けられた一対の接合線同士が接合された部位である。防護服1は、1または複数の折り目に沿って折り畳まれた折り畳み部4が形成されている。以下、それぞれについて説明する。
【0029】
ここで、本実施形態において、着用者の身体寸法は特に限定されない。本実施形態では、説明の明瞭化のため、以下の身体寸法である着用者が例示される。すなわち、着用者は、身長が171cmであり、上腕長が32cmであり、頸側・肩峰直線距離が15cmであり、頚窩高が140cmであり、胸骨中点高が128cmであり、前腋窩幅が34cmであり、肩甲骨下角間直線距離が20cmであり、大腿長が44cmであり、脛骨上縁高が43cmである。
【0030】
また、本実施形態の防護服1の用途は特に限定されない。防護服1は、たとえば、粉塵や放射線を伴う作業や水を扱う作業において、着用者が着用している衣服の上に着用する防護服等である。
【0031】
本実施形態の防護服1は、
図1または
図2に示されるように、1つの裁断パーツ2からなり、5つの開口部(開口部3a~開口部3e)が形成されている。5つの開口部は、それぞれ、着用者の首部、両腕部および両脚部を外部に露出するための開口部である。
【0032】
裁断パーツ2は、本実施形態の防護服1を構成する基材(生地)であり、裁断パーツ2が組み立てられることにより、防護服1が作製され得る。
【0033】
裁断パーツ2は、丈方向または幅方向の中心線を境に対称形状である裁断パーツを含むことが好ましい。
図2に示されるように、本実施形態の裁断パーツ2は、丈方向の中心線CL1を境に対称形状である。このような裁断パーツ2は、幅方向の中心線に沿って折り、近接する接合線同士を接合することにより、接合部が形成され、防護服1の形状に加工され得る。具体的には、裁断パーツ2は、幅方向の中心線CL2に沿って折られる。次いで、一対の接合線同士(接合線L1aおよび接合線L1b、接合線L2aおよび接合線L2b、接合線L3aおよび接合線L3b、接合線L4aおよび接合線L4b、接合線L5aおよび接合線L5b、接合線L6aおよび接合線L6b)が接合される。これにより、裁断パーツ2における切り欠き部C1~切り欠き部C7が、略円形状に加工され、接合部(接合部Ja~接合部Jf)が形成されるとともに、着用者の首部を外部に露出するための開口部3a、着用者の右腕を外部に露出するための開口部3b、着用者の左腕を外部に露出するための開口部3c、着用者の右脚を外部に露出するための開口部3d、および、着用者の左脚を外部に露出するための開口部3eが形成される。これにより、裁断パーツ2は、上衣と下衣とが一体となった防護服1として加工される。防護服1は、5か所の開口部(開口部3a~開口部3e)に、着用者が自身の首部、両腕部、両脚部を通すことにより、着用者に着用され得る。なお、防護服1の着用は、防護服1の背面に形成された背面開口部(図示せず)から、着用者が身体を防護服1内に入れることによって行われてもよい。背面開口部は、ファスナ部(図示せず)によって開閉され得る。
【0034】
本実施形態の防護服1の接合部は、裁断パーツの端部近傍に接着樹脂を塗工して接合することにより形成され得る。接着樹脂は特に限定されない。一例を挙げると、接着樹脂は、湿気硬化型反応性ホットメルト樹脂、熱可塑性ホットメルト樹脂、熱硬化性ホットメルト樹脂または、合成ゴム系接着樹脂等である。
【0035】
接合部における接合線同士の形状は、同一であることが好ましい。これにより、防護服1は、形状の異なる裁断パーツを手作業で縫製する必要がなく、たとえば、縫製装置等によってオートメーション化して生産し得る。なお、本実施形態において、接合されるそれぞれの接合線同士の形状は、完全に一致する場合に限らず、本実施形態の効果を損なわない範囲で形状が異なっていてもよい。一例を挙げると、接合線同士の形状は、生産における加工誤差範囲、すなわち接合されるそれぞれの接合線の寸法比率がプラスマイナス5%以内、または曲率半径の比率がプラスマイナス10%以内、または接合されるそれぞれの接合線と地の目との角度が、プラスマイナス30°以内の差異である場合を含む。
【0036】
また、本実施形態の防護服1は、
図1に示されるように、折り目に沿って折り畳まれた折り畳み部4が形成されている。このような折り畳み部4が形成されていることにより、防護服1は、着用者の体形に合わせて変形させやすく、着心地がよく、かつ、着用者の動作を妨げにくい。また、防護服1は、折り畳み部4が形成されることによって、適度な剛性が付与される。そのため、防護服1は、着用者が着用した際に、着崩れしにくく、着心地がよい。
【0037】
折り畳み部4は、裁断パーツ2を折り畳むことにより、形成し得る。具体的には、折り畳み部4は、参照符号Lsで示される直線(実線)部分を「山折り」、その隣の参照符号Lbで示される直線(破線)部分を「谷折り」し、それらを交互に繰り返すことにより形成し得る。
【0038】
本実施形態の防護服1は、裁断パーツ2の領域Raにおいて折り畳むことにより、着用者の脇部に相当する位置に折り畳み部4を形成することができる。同様に、防護服1は、裁断パーツ2の領域Rbにおいて折り畳むことにより、着用者の股部に相当する位置に折り畳み部4を形成することができる。また、防護服1は、裁断パーツ2の領域Rcにおいて折り畳むことにより、着用者の首部に相当する位置に折り畳み部4を形成することができる。これにより、防護服1は、脇部、股部または首部において、着用者の体形に合わせて変形させることができ、着心地がよく、かつ、着用者の動作を妨げにくい。
【0039】
折り畳み部4において、「山折り」および「谷折り」の繰り返し回数は特に限定されない。一例を挙げると、「山折り」および「谷折り」の繰り返し回数は、折り畳み部4を形成する部位において、着用者が防護服1を着用した際における、着用者と防護服1との寸法差に基づいて適宜調整され得る。また、「山折り」および「谷折り」の繰り返し回数が過度に多くなると、折り畳み部4が硬くなり、肌触りなどの触感が劣る傾向がある。そのため、防護服1は、着用者の身体寸法に対して、適宜の密着性を有し、かつ、触感(肌ざわり)を損なわないよう、折り畳み部4が形成されることが好ましい。一例を挙げると、山折りおよび谷折りの繰り返し回数は、2~26回であることが好ましく、6~16回であることがより好ましい。山折りおよび谷折りの繰り返し回数が上記範囲内であることにより、防護服1は、適宜の剛性が付与されつつ、触感(肌ざわり)がよい。
【0040】
また、折り畳み部4において、「山折りの高さ(谷折りの深さ)」は特に限定されない。一例を挙げると、「山折りの高さ」は、「山折り」および「谷折り」の繰り返し回数と同様に、折り畳み部4を形成する部位において、着用者が防護服1を着用した際における、着用者と防護服1との寸法差や、触感(肌ざわり)に基づいて適宜調整され得る。一例を挙げると、山折りの高さ(谷折りの深さ)は、50mm~200mmであることが好ましく、100mm~150mmであることがより好ましい。山折りの高さ(谷折りの深さ)が上記範囲内であることにより、防護服1は、適宜の剛性が付与されつつ、触感(肌ざわり)がよい。
【0041】
なお、本実施形態の防護服1の折り畳み部4は、折り畳まれた形状が保持されやすいように、山折りの先端部分(または谷折りの先端部分)に、縫い止め部(図示せず)が形成されてもよい。縫い止め部は、先端部分から1~数mmの位置を縫うことにより形成され得る。これにより、山折り形状および谷折り形状が保持されやすく、防護服1は、所望の形状の折り畳み部が形成されやすい。
【0042】
本実施形態の防護服1は、上衣と下衣とが一体となった防護服1であり、開口部は上記のとおり5か所(開口部3a~開口部3e)である。このような防護服1は、形状の異なる裁断パーツを手作業で縫製する必要がなく、たとえば、縫製装置等によってオートメーション化して生産し得る。また、防護服1は、折り畳み部4が形成されている。これにより、防護服1は、適宜、折り畳み部4を設けることにより、着用者の体形に合わせて、変形させることができ、着心地がよく、かつ、着用者の動作を妨げにくい。また、防護服1は、多くの部位を、縫製や接着によらずに作製することができる。その結果、防護服1は、習熟した縫製技能を必要とせず、かつ、製造に要する時間も短縮化され得る。
【0043】
以上、本実施形態によれば、防護服は、接合線を介して接合される裁断パーツが同一形状である。そのため、得られる防護服は、形状の異なる裁断パーツを手作業で縫製する必要がなく、たとえば、縫製装置等によってオートメーション化して生産し得る。また、防護服は、折り畳み部が形成されている。これにより、防護服は、適宜、折り畳み部を設けることにより、着用者の体形に合わせて変形させることができ、着心地がよく、かつ、着用者の動作を妨げにくい。また、防護服は、多くの部位を、縫製や接着によらずに作製することができる。その結果、防護服は、習熟した縫製技能を必要とせず、かつ、製造に要する時間も短縮化され得る。加えて、防護服は、縫糸やテープなどの副資材の省略が可能となり、廃棄物量の削減あるいはリサイクルが容易となり、使い捨ての防護服に適した取り扱い性が得られ得る。さらに、防護服は、折り畳み部を設けることにより、着用者の体形に合わせて変形させることができ、かつ、多くの部位を、縫製や接着によらずに作製することができる構成とすることで、生地材料さえあれば容易に生産が可能であり、生産場所の制約を受けにくく、緊急時などにおいて、供給網を確保しやすい。
【0044】
なお、防護服を構成する繊維材料は、従来公知の繊維材料であってよい。すなわち、繊維材料は、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリフェニレンサルファイト、フッ素系樹脂、およびこれらの混合物などである。これらの中でも、繊維材料は、生地の生産性や、風合いが優れたものとなる観点から、ポリオレフィン系樹脂を主成分とすることが好ましい。
【0045】
また、防護服は、不織布からなることが好ましく、メルトブロー法によって得られるメルトブロー不織布と、スパンボンド法により得られるスパンボンド不織布との積層構造からなる生地からなることが好ましい。
【0046】
なお、防護服を構成する生地は、たとえば、撥水、撥油、帯電防止、難燃、防菌、および防カビ等の機能が付与されてもよい。
【0047】
(変形実施形態1)
図3は、本実施形態の変形例(変形実施形態1)の防護服の裁断パーツ2Vを説明する模式的な平面図である。本変形実施形態1の裁断パーツは、上記した実施形態の裁断パーツと比較して、丈方向の中心線を境として、2つの裁断パーツ(裁断パーツ21Vおよび裁断パーツ22V)に裁断されている。
【0048】
これらの裁断パーツ21Vおよび裁断パーツ22Vは、組み立てられる際に、一対の接合線(接合線L7aおよび接合線L7b)に沿って接合される。得られる防護服は、上記した第1の実施形態の防護服1(
図1参照)と同様である。
【0049】
本変形実施形態1によれば、得られる防護服は、生地巾などの素材規格に合わせて裁断工程における裁断パーツ配置を調整することが容易となり、かつ裁断時に発生する生地廃棄ロスを削減しやすい、すなわち用尺収率に優れる。
【0050】
<第2の実施形態>
図4は、本発明の一実施形態(第2の実施形態)の防護服1Aの模式的な正面図である。
図5は、本発明の一実施形態(第2の実施形態)の防護服1Aの裁断パーツ2Aを説明するための模式的な平面図である。
【0051】
図4に示されるように、本実施形態の防護服1Aは、上衣であり、4か所の開口部(開口部3Aa~開口部3Ad)が形成されている。それぞれの開口部からは、着用者の首部、両腕部および胴部が外部に露出する。
【0052】
図5に示されるように、本実施形態の防護服1Aの裁断パーツは、略矩形状であり、幅方向の中心線CL3を境に対称形状である。
【0053】
裁断パーツの中央には、着用者の首部を露出するための開口部3Aaが形成されている。開口部の形状は、略楕円形状である。
【0054】
また、裁断パーツ2Aは、幅方向の中心線CL4に沿って折り、近接する接合線同士を接合することにより、接合部が形成され、上衣である防護服1Aの形状に加工され得る。具体的には、幅方向の中心線CL4に沿って折り、一対の接合線同士(接合線L8aおよび接合線L8b、接合線L9aおよび接合線L9b)を接合する。これにより、
図5に示される裁断パーツ2Aにおける端部(端部E1および端部E2、および、端部E3および端部E4)が、略円形状に加工された接合部(接合部Jgおよび接合部Jh)、着用者の右腕を外部に露出するための開口部3Ab、および、着用者の左腕を外部に露出するための開口部3Acが形成される。これにより、裁断パーツは、上衣である防護服1Aとして加工される。防護服1Aは、4か所の開口部(開口部3Aa~開口部3Ad)に、着用者が自身の首部、両腕部、胴部を通すことにより、着用者に着用され得る。なお、防護服1Aは、開口部3Aaに着用者の頭部を通ることによって着用されてもよく、防護服1Aの背面に形成された背面開口部(図示せず)から、着用者が身体を防護服1A内に入れることによって行われてもよい。背面開口部は、ファスナ部(図示せず)によって開閉され得る。
【0055】
図5に示されるように、裁断パーツの折り畳み部4Aは、参照符号Lsで示される直線(実線)部分を「山折り」、その隣の参照符号Lbで示される直線(破線)部分を「谷折り」し、それらを交互に繰り返すことにより形成し得る。これにより、得られる折り畳み部4Aは、
図4に示されるように、防護服1Aの丈方向に沿って放射状に形成される。このように、本実施形態の防護服1Aは、折り畳み部4Aが丈方向に形成されていることにより、着用者の両腕の動作を妨げにくい。
【0056】
図6および
図7は、本実施形態の防護服1Aの袖部分を説明するための模式的な斜視図である。本実施形態の防護服1Aは、開口部3Acの周縁に、開口部3Acの開口径を伸縮させる伸縮部EPが形成されてもよい。本実施形態では、
図7に示されるように、開口部3Acの周縁に沿って伸縮性の縫い糸からなる弾性部材が設けられている。
【0057】
このような弾性部材からなる伸縮部EPによれば、開口部3Acの開口径は、たとえば、10~70%の範囲の寸法に収縮するよう構成され得る。これにより、防護服1Aは、開口部において、着用者の身体(たとえば手首や足首等)に密着するように、開口径を狭めることができる。その結果、防護服1Aは、着用者の体形により密着しやすく、着用者の動作に追随するよう変形しやすい。また、防護服1Aは、外部からの液体、粉塵や汚染物質などを防護服1A内部に侵入させにくく、安全性が優れる。
【0058】
なお、このような伸縮部EPは、上記した第1の実施形態や、後述する実施形態および変形例のいずれの開口部において採用されてもよい。
【0059】
以上、本実施形態の上衣である防護服は、形状の異なる裁断パーツを手作業で縫製する必要がなく、たとえば、縫製装置等によってオートメーション化して生産し得る。また、上衣である防護服は、折り畳み部が形成されている。これにより、防護服は、適宜、折り畳み部を設けることにより、着用者の体形に合わせて、たとえば脇部や首部等を変形させることができ、着心地がよく、かつ、着用者の動作を妨げにくい。また、上衣である防護服は、多くの部位を、縫製や接着によらずに作製することができる。その結果、防護服は、習熟した縫製技能を必要とせず、かつ、製造に要する時間も短縮化され得る。
【0060】
<第3の実施形態>
図8は、本発明の一実施形態(第3の実施形態)の防護服1Bの模式的な正面図である。
図9は、本発明の一実施形態(第3の実施形態)の防護服1Bの裁断パーツ2Bを説明するための模式的な平面図である。
図10は、本発明の一実施形態(第3の実施形態)の防護服1Bの模式的な正面図である。
【0061】
図8に示されるように、本実施形態の防護服1Bは、上衣であり、4か所の開口部(3Ba~開口部3Bd)が形成されている。それぞれの開口部からは、着用者の首部、両腕部および胴部が外部に露出する。
【0062】
図9に示されるように、本実施形態の防護服1Bの裁断パーツ2Bは、身頃部を構成する第1の裁断パーツ21Bと、フード部5Bを構成する第2の裁断パーツ22Bからなる。第2の裁断パーツ22Bは任意である。
【0063】
第1の裁断パーツ21Aは、一部が切り欠かれた略円環状であり、丈方向の中心線CL5を境に対称形状である。第1の裁断パーツ21Aは、着用者が首部を露出させるための第1の円弧部分23aと、着用者が両腕部および胴部を露出させるための第2の円弧部分23bとを有する。第1の円弧部分23aおよび第2の円弧部分23bの端部には、一対の接合線(接合線L10aおよび接合線L10b)が形成されている。一対の接合線が接合された接合部が形成されることにより、首部を露出させるための開口部3Baが形成される。
【0064】
図9に示されるように、第1の裁断パーツ21Bは、一対の接合線同士(接合線L11aおよび接合線L11b、接合線L12aおよび接合線L12b)を接合する。これにより、
図8および
図10に示されるように、接合部Jiおよび接合部Jjが形成されるとともに、着用者の右腕、胴部および左腕をそれぞれ露出するための開口部(開口部3Bb、開口部3Bcおよび開口部3Bd)が形成される。これにより、裁断パーツ2Bは、上衣である防護服1Bとして加工される。防護服1Bは、4か所の開口部に、着用者が自身の首部、両腕部、胴部を通すことにより、着用者に着用され得る。
【0065】
本実施形態の防護服1Bは、接合部Jiおよび接合部Jjが形成されていることにより、着用者が着用した際に、首部を中心として前後に回転することが防がれる。また、防護服1Bは、着用者の腕の動きに追随して変形しやすく、着心地がよく、作業性が優れる。
【0066】
図9に示されるように、裁断パーツ2Bの折り畳み部4Bは、参照符号Lbで示される直線(実線)部分を「山折り」、その隣の参照符号Lbで示される直線(破線)部分を「谷折り」し、それらを交互に繰り返すことにより形成し得る。これにより、得られる折り畳み部4Bは、
図8に示されるように、防護服1Bの丈方向に沿って放射状に形成される。このように、本実施形態の防護服1Bは、折り畳み部4Bが丈方向に形成されていることにより、着用者の両腕の動作を妨げにくい。
【0067】
また、「山折り」および「谷折り」が繰り返されることにより、第1の円弧部分23aが折り畳まれる。「山折りの高さ(谷折りの深さ)」および「山折りおよび谷折りの繰り返し回数」は、所望する開口部3Baの寸法に合うように適宜調整される。すなわち、得られる開口部3Baの寸法が、着用者が首部を通すことのできる寸法となるよう調整される。
【0068】
図9に示されるように、フード部5Bを構成する第2の裁断パーツ22Bは、3つの小パーツ(左側フードパーツf1、中心フードパーツf2および右側フードパーツf3)からなる。左側フードパーツf1および右側フードパーツf3は、対称形状である。左側フードパーツの接合線L13aと、中心フードパーツの接合線L13bとが接合されて接合部が形成される。同様に、右側フードパーツの接合線14aと、中心フードパーツの接合線14bとが接合されて接合部が形成される。これにより、フード部5Bが形成される。
【0069】
なお、中心フードパーツf2は、省略されてもよい。この場合、左側フードパーツf1および右側フードパーツf3が、接合線L13aおよび接合線L14aに沿って接合されて、フード部5Bが形成され得る。
【0070】
本実施形態の防護服1Bは、上記した第2の実施形態の防護服1A(
図4参照)と比較して、身頃部における折り畳み部4Bが、丈方向に沿った溝状に形成される。その結果、防護服1Bは、たとえば、液体等が飛散する場所での作業において、防護服1Bに付着した液体等の汚れが、折り畳み部4Bの形成方向に沿って、下方に落下しやすく、汚れが付着しにくい。
【0071】
以上、本実施形態の上衣である防護服は、形状の異なる裁断パーツを手作業で縫製する必要がなく、たとえば、縫製装置等によってオートメーション化して生産し得る。また、上衣である防護服は、折り畳み部が形成されている。これにより、防護服は、適宜、折り畳み部を設けることにより、着用者の体形に合わせて、たとえば脇部や首部等を変形させることができ、着心地がよく、かつ、着用者の動作を妨げにくい。また、上衣である防護服は、多くの部位を、縫製や接着によらずに作製することができる。その結果、防護服は、習熟した縫製技能を必要とせず、かつ、製造に要する時間も短縮化され得る。
【0072】
<第4の実施形態>
図11は、本発明の一実施形態(第4の実施形態)の防護服1Cの模式的な正面図である。
図12は、本発明の一実施形態(第4の実施形態)の防護服1Cの裁断パーツ2Cを説明するための模式的な平面図である。
【0073】
図11に示されるように、本実施形態の防護服1Cは、上衣であり、4か所の開口部(3Ca~開口部3Cd)が形成されている。それぞれの開口部からは、着用者の首部、両腕部および胴部が外部に露出する。
【0074】
図12に示されるように、本実施形態の防護服1Cの裁断パーツ2Cは、身頃部を構成する第1の裁断パーツ21Cと、フード部5Cを構成する第2の裁断パーツ22Cからなる。第2の裁断パーツ22Cは任意である。なお、第2の裁断パーツ22Cは、第3の実施形態に関連して上記した第2の裁断パーツ22B(
図9参照)と同様である。
【0075】
第1の裁断パーツ21Cは、一部が切り欠かれた略矩形状であり、丈方向の中心線CL6を境に対称形状である。第1の裁断パーツ21Cは、着用者が首部を露出させるための直線部分24aと、着用者が両腕部および胴部を露出させるための湾曲部分24bとを有する。直線部分24aおよび湾曲部分24bの端部には、一対の接合線(接合線L13aおよび接合線L13b)が形成されている。一対の接合線が接合された接合部Jkが形成されることにより、首部を露出させるための開口部3Caが形成される。
【0076】
図12に示されるように、第1の裁断パーツ21Cは、一対の接合線同士(接合線14aおよび接合線14b、接合線15aおよび接合線15b)を接合する。これにより、
図11に示されるように、接合部Jlおよび接合部Jmが形成されるとともに、着用者の右腕、胴部および左腕をそれぞれ露出するための開口部(開口部3Cb、開口部3Cc、開口部3Cd)が形成される。これにより、裁断パーツ2Cは、上衣である防護服1Cとして加工される。防護服1Cは、4か所の開口部に、着用者が自身の首部、両腕部、胴部を通すことにより、着用者に着用され得る。
【0077】
本実施形態の防護服1Cは、接合部Jlおよび接合部Jmが形成されていることにより、着用者が着用した際に、首部を中心として前後に回転することが防がれる。また、防護服1Cは、着用者の腕の動きに追随して変形しやすく、着心地がよく、作業性が優れる。
【0078】
図12に示されるように、裁断パーツ2Cの折り畳み部4Cは、参照符号Lsで示される直線(実線)部分を「山折り」、その隣の参照符号Lbで示される直線(破線)部分を「谷折り」し、それらを交互に繰り返すことにより形成し得る。
図12において、折り畳み部4Cを形成するために、接合される接合線の組み合わせが、接合線FL1~接合線FL9および接合線FR1~接合線FR9として示されている。これにより、得られる折り畳み部4Cは、
図11に示されるように、防護服1Cの丈方向に沿って放射状に形成される。このように、本実施形態の防護服1Cは、折り畳み部4Cが丈方向に形成されていることにより、着用者の両腕の動作を妨げにくい。
【0079】
また、「山折り」および「谷折り」が繰り返されることにより、直線部分が折り畳まれる。「山折りの高さ(谷折りの深さ)」および「山折りおよび谷折りの繰り返し回数」は、所望する開口部の寸法に合うように適宜調整される。すなわち、得られる開口部の寸法が、着用者が首部を通すことのできる寸法となるよう調整される。
【0080】
図13は、首部を露出するための開口部3Caの折り畳み部4Cを説明するための模式図である。
図14は、首部を露出するための開口部3Caの折り畳み部4Cにおいて、折り畳み部4Cの右半分における縫い止め部のみを解いた状態の模式図である。
図13に示されるように、本実施形態の防護服1Cは、第1の裁断パーツ21Cの直線部分が、「山折り」および「谷折り」に交互に折り畳まれるとともに、山折りの先端部分および谷折りの先端部分に縫い止め部SPが形成されている。
【0081】
このように、第1の裁断パーツ21Cが折り畳まれ、縫い止め部SPが形成されることにより、首部を露出するための開口部3Caが形成される。
図14では、説明の明瞭化のために、開口部3Caの左側半分は、縫い止めされて閉止されており、右側半分は、縫い止めされておらずに解かれている状態が示されている。左側半分に示されるように、縫い止めされていることにより、防護服1Cは、開口部3Caから、着用者の肩部に相当する箇所に、適宜の剛性が付与されている。これにより、本実施形態の防護服1Cは、肩部から上腕部の触感が優れ、着心地がよい。また、防護服1Cは、着用時に、肩部において着用者と適度に密着し、作業中に前後に回転したりしにくい。
【0082】
以上、本実施形態の上衣である防護服は、形状の異なる裁断パーツを手作業で縫製する必要がなく、たとえば、縫製装置等によってオートメーション化して生産し得る。また、上衣である防護服は、折り畳み部が形成されている。これにより、防護服は、適宜、折り畳み部を設けることにより、着用者の体形に合わせて、たとえば脇部や首部等を変形させることができ、着心地がよく、かつ、着用者の動作を妨げにくい。また、上衣である防護服は、多くの部位を、縫製や接着によらずに作製することができる。その結果、防護服は、習熟した縫製技能を必要とせず、かつ、製造に要する時間も短縮化され得る。
【0083】
<第4の実施形態の変形例>
図15は、本発明の一実施形態(第4の実施形態)の防護服1Cの変形例の模式的な正面図である。
【0084】
図15に示されるように、本変形例の防護服1Wはフード部5Wの形状が異なる以外は、上記した第4の実施形態の防護服1C(
図11参照)と同様の構成である。本変形例のフード部5Wは、第4の実施形態の第2の裁断パーツ22C(
図12参照)において、中心フードパーツf2が省略されており、左側フードパーツf1および右側フードパーツf3が接合されることにより、形成されている。
【0085】
本変形実施形態の防護服1Wは、フード部5Wを左右対称の2枚の裁断パーツより構成したものであり、フード部5Wの先端が尖っている。そのため、フード部5Wに付着した液体等の汚れが、フード部5Wや折り畳み部4Cの形成方向に沿って、下方に落下しやすく、汚れが付着しにくいうえ、生地用尺の収率向上にも寄与する。
【0086】
<第5の実施形態>
図16は、本発明の一実施形態(第5の実施形態)の防護服1Dの模式的な正面図である。
図17は、本発明の一実施形態(第5の実施形態)の防護服1Dの模式的な斜視図である。
図18は、本発明の一実施形態(第5の実施形態)の防護服1Dの裁断パーツ2Dを説明するための模式的な平面図である。
【0087】
図16~
図17に示されるように、本実施形態の防護服1Dは、下衣であり、3か所の開口部(開口部3Da~開口部3Dc)が形成されている。それぞれの開口部からは、着用者の両脚部および胴部が外部に露出する。防護服1Dは、着用者の股部に相当する位置に、折り畳み部4Dが設けられている。
【0088】
図18に示されるように、本実施形態の裁断パーツ2Dは、丈方向の中心線CL7および幅方向の中心線CL8を境に対称形状である。このような裁断パーツ2Dは、幅方向の中心線CL8に沿って折り、近接する接合線同士を接合することにより、接合部が形成され、下衣である防護服1Dの形状に加工され得る。具体的には、裁断パーツ2Dは、幅方向の中心線CL8に沿って折られる。次いで、一対の接合線同士(接合線F16aおよび接合線F16b、接合線17aおよび接合線F17b、接合線F18aおよび接合線F18b)が接合される。これにより、
図18に示される裁断パーツ2Dにおける切り欠き部C8および切り欠き部C9が、略円形状に加工され、着用者の右脚を外部に露出するための開口部3Db、着用者の左脚を外部に露出するための開口部3Dc、および、着用者の胴部を外部に露出するための開口部3Daが形成される。これにより、裁断パーツ2Dは、下衣として加工される。下衣である防護服1Dは、3か所の開口部に、着用者が自身の胴部、両脚部を通すことにより、着用者に着用され得る。
【0089】
また、本実施形態の防護服1Dは、
図17に示されるように、折り目に沿って折り畳まれた折り畳み部4Dが形成されている。このような折り畳み部4Dが形成されていることにより、下衣である防護服1Dは、着用者の体形に合わせて変形させやすく、着心地がよく、かつ、着用者の動作を妨げにくい。また、防護服1Dは、折り畳み部4Dが形成されることによって、適度な剛性が付与される。そのため、防護服1Dは、着用者が着用した際に、着崩れしにくく、着心地がよい。
【0090】
図18に示されるように、折り畳み部4Dは、裁断パーツ2Dを折り畳むことにより、形成し得る。具体的には、折り畳み部4Dは、参照符号Lsで示される直線部分を「山折り」、その隣の参照符号Lbで示される直線部分を「谷折り」し、それらを交互に繰り返すことにより形成し得る。このように、防護服は、裁断パーツの領域Rcにおいて折り畳むことにより、着用者の股部に相当する位置に折り畳み部4Dを形成することができる。
【0091】
なお、本実施形態の防護服1Dは、着用者の胴部が露出する開口部3Daの周縁が、縮径されている。開口部3Daの周縁を縮径させる方法は特に限定されない。一例を挙げると、開口部3Daは、開口部3Daの周縁を縫製することによって縮径してもよく、第2の実施形態に関連して上記したように、開口部3Daの周縁に、伸縮性の縫い糸からなる弾性部材を設けて伸縮部を形成してもよい。本実施形態では、
図16に示されるように、開口部3Daの周縁の数か所を等間隔で縫製することにより、縮径されている。
【0092】
以上、本実施形態の下衣である防護服は、形状の異なる裁断パーツを手作業で縫製する必要がなく、たとえば、縫製装置等によってオートメーション化して生産し得る。また、下衣である防護服は、折り畳み部が形成されている。これにより、防護服は、適宜、折り畳み部を設けることにより、着用者の体形に合わせて、たとえば股部等を変形させることができ、着心地がよく、かつ、着用者の動作を妨げにくい。また、下衣である防護服は、多くの部位を、縫製や接着によらずに作製することができる。その結果、防護服は、習熟した縫製技能を必要とせず、かつ、製造に要する時間も短縮化され得る。
【0093】
防護服全体の説明に戻り、上記実施形態(第1の実施形態~第5の実施形態)では、裁断パーツ数が1~4である場合について例示した。これに代えて、裁断パーツ数は、1~10であってもよい。裁断パーツ数が少ない場合、防護服は、作製時に接合に要する部位の数が少ない。そのため、防護服は、より短時間で作製され得る。これに対し、裁断パーツ数が多い場合、防護服は、防護服1着あたりに必要な生地の長さが短くなり、歩留まりが向上しやすい。したがって、裁断パーツ数は、所望する製造時間や、生地の歩留まりを考慮して選択され得る。これにより、防護服は、所定面積の生地からパーツを裁断する際に、裁断に要する加工時間を短く維持しつつ、裁断後の余った生地の量を少なくすることができ、歩留まりがよい。そのため、防護服は、生産性がより優れる。
【0094】
<防護服の製造方法>
本実施形態の防護服は、裁断された裁断パーツを折り畳み部を形成しながら折り畳むとともに、適宜、接合部を形成することにより製造される。以下、一例として、第1の実施形態において例示した防護服の製造方法を説明する。
【0095】
まず、
図2に示される裁断パーツ2に沿って、裁断装置によって生地を裁断する。裁断装置の動作は、コンピュータ等によって制御され得る。たとえば、裁断装置は、CADすなわちコンピュータ支援設計システムにより作図された、電子図面データの裁断線情報に沿って、生地を裁断するよう制御されている。また、生地の裁断方法は、積層された生地の上層に、裁断線を記したマーキングペーパーを配置し、ハサミ、竪刃裁断機あるいは丸刃裁断機を用いて裁断線に沿って手動で裁断する方法や、積層された生地の上層に、裁断パーツと同一形状の型紙を配置し、バンドナイフを用いて型紙に沿って手動で裁断する方法や、積層された生地の上層に、裁断パーツと同一形状の打ち抜き刃を配置し、押圧荷重をかけて打ち抜き裁断する方法などがある。自動裁断機を用いて、コンピュータにプログラムされた裁断線に沿って裁断刃が駆動して、生地を裁断する方法が、裁断工程の加工時間が短く生産性が優れるため好ましい。
【0096】
次いで、
図1および
図2に示されるように、裁断パーツ2は、幅方向の中心線CL2に沿って折られ、一対の接合線同士が接合されて、接合部が形成され、防護服1の形状に加工され得る。また、裁断パーツは、所定の折り線に沿って、山折りおよび谷折りが繰り返されて、立体的に形状が形作られる。
【0097】
具体的には、まず、接合線が接着剤で接合される。接着剤を付与する方法は特に限定されない。接着剤の付与は、例えば、コーティング法、スクリーン印刷法、平版オフセット印刷法、インクジェット法、フレキソ印刷法、グラビア印刷法、グラビアオフセット印刷法、スタンピング法、ディスペンス法、スキージ印刷などを採用できる。具体的には、接着剤の塗工は、裁断パーツの形状に沿って吐出ノズルを移動させながら、接着剤を裁断パーツに対して吐出することにより実施し得る。吐出ノズルは、塗工装置によって動作が制御され得る。塗工装置による塗工ノズルの動作は、コンピュータ等によって制御され得る。たとえば、塗工装置は、裁断パーツの形状を認識し、所定の接合線の形状に沿って、接着剤を付与するよう制御され得る。これにより、裁判パーツの所定の位置に接着剤が付与され得る。
【0098】
次いで、接合部は、プレス加工機によってプレス加工されることにより作製され得る。プレス加工方法は特に限定されない。プレス加工は、例えば二つの金属平板の間に裁断パーツを配して加圧する方法や、一対のロール間に裁断パーツを導入して加圧する方法、コンベヤベルト間に裁断パーツを加圧する方法を採用することができる。プレス加工機は、接着剤の付与された接合線同士を密着させてプレスすることにより、接合部を形成し得る。
【0099】
本実施形態によれば、
図1および
図2に示されるように、一対の接合線同士(接合線L1aおよび接合線L1b、接合線L2aおよび接合線L2b、接合線L3aおよび接合線L3b、接合線L4aおよび接合線L4b、接合線L5aおよび接合線L5b、接合線L6aおよび接合線L6b)が接合される。これにより、裁断パーツ2における切り欠き部C1~切り欠き部C7が、略円形状に加工され、接合部(接合部Ja~接合部Jf)が形成されるとともに、着用者の首部を外部に露出するための開口部3a、着用者の右腕を外部に露出するための開口部3b、着用者の左腕を外部に露出するための開口部3c、着用者の右脚を外部に露出するための開口部3d、および、着用者の左脚を外部に露出するための開口部3eが形成される。これにより、裁断パーツ2は、上衣と下衣とが一体となった防護服1として加工される。防護服1は、5か所の開口部(開口部3a~開口部3e)に、着用者が自身の首部、両腕部、両脚部を通すことにより、着用者に着用され得る。
【0100】
なお、本実施形態では、接合部を形成することにより、開口部が形成される態様について例示した。これに代えて、本実施形態の防護服の製造方法は、開口のない閉止された接合部を形成し、その後、着用者の両腕、両脚、首部および胴部に相当する位置を切り抜いて、開口部を形成してもよい。
【0101】
以上、本実施形態によれば、得られる防護服は、接合線を介して接合される裁断パーツが同一形状である。そのため、防護服は、形状の異なる裁断パーツを手作業で縫製する必要がなく、たとえば、縫製装置等によってオートメーション化して生産し得る。また、防護服は、折り畳み部が形成されている。これにより、防護服は、適宜、折り畳み部を設けることにより、着用者の体形に合わせて変形させることができ、着心地がよく、かつ、着用者の動作を妨げにくい。また、防護服は、多くの部位を、縫製や接着によらずに作製することができる。その結果、防護服は、習熟した縫製技能を必要とせず、かつ、製造に要する時間も短縮化され得る。
【符号の説明】
【0102】
1、1A、1B、1C、1D、1V、1W 防護服
2、2A、2B、2C、2D、2V、21A、21B、21C、21V、22B、22C、22V 裁断パーツ
23a、23b 円弧部分
24a 直線部分
24b 湾曲部分
3a、3b、3c、3d、3e、3Aa、3Ab、3Ac、3Ad、3Ba、3Bb、3Bc、3Bd、3Ca、3Cb、3Cc、3Cd、3Da、3Db、3Dc 開口部
4、4A、4B、4C、4D 折り畳み部
5B、5C、5W フード部
C1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9 切り欠き部
CL1、CL2、CL3、CL4、CL5、CL6、CL7、CL8 中心線
E1、E2、E3、E4 端部
f1 左側フードパーツ
f2 中心フードパーツ
f3 右側フードパーツ
FL1~FL9 接合線
FR1~FR9 接合線
Ja、Jb、Jc、Jd、Je、Jf、Jg、Jh、Ji、Jj、Jk、Jl、Jm 接合部
L1a、L1b、L2a、L2b、L3a、L3b、L4a、L4b、L5a、L5b、L6a、L6b、L7a、L7b、L8a、L8b、L9a、L9b、L10a、L10b、L11a、L11b、L12a、L12b、L13a、L13b、L14a、L14b、L15a、L15b、L16a、L16b、L17a、L17b、L18a、L18b 接合線
Ls、Lb 直線部分