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特開2024-11174防食コンクリート柱及びライニングの施工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011174
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】防食コンクリート柱及びライニングの施工方法
(51)【国際特許分類】
   E04C 3/34 20060101AFI20240118BHJP
   E04B 1/64 20060101ALI20240118BHJP
   E04B 1/62 20060101ALI20240118BHJP
   E04G 23/02 20060101ALI20240118BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20240118BHJP
   C09D 175/12 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
E04C3/34
E04B1/64 Z
E04B1/62 Z
E04G23/02 A
C09D5/00 D
C09D175/12
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022112972
(22)【出願日】2022-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】000241957
【氏名又は名称】北海道電力株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591197699
【氏名又は名称】日本高圧コンクリート株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100202913
【弁理士】
【氏名又は名称】武山 敦史
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(72)【発明者】
【氏名】大道 靖史
(72)【発明者】
【氏名】芳賀 正志
(72)【発明者】
【氏名】田村 達也
【テーマコード(参考)】
2E001
2E163
2E176
4J038
【Fターム(参考)】
2E001DH25
2E001DH35
2E001EA01
2E001FA02
2E001GA06
2E001HD11
2E001JD02
2E001MA01
2E163DA01
2E163FA02
2E163FD09
2E163FD43
2E163FF52
2E176AA04
2E176BB04
4J038DG061
4J038MA10
4J038NA03
4J038PA07
4J038PB05
4J038PC04
(57)【要約】
【課題】低コストで入手でき、耐久性に優れた防食コンクリート柱及びライニングの施工方法を提供する。
【解決手段】防食コンクリート柱は、コンクリート柱本体と、コンクリート柱本体の表面に定着されたポリウレア樹脂の層を含むライニングと、を備える。ポリウレア樹脂の層の厚さは、少なくとも1mm以上であってもよい。ライニングは、コンクリート柱本体の表面に塗布された下塗り層と、下塗り層の上に塗布されたポリウレア樹脂からなる中塗り層と、中塗り層の上に塗布された上塗り層と、を備えてもよい。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート柱本体と、
前記コンクリート柱本体の表面に定着されたポリウレア樹脂の層を含むライニングと、
を備える防食コンクリート柱。
【請求項2】
ポリウレア樹脂の層の厚さは、少なくとも1mm以上である、
請求項1に記載の防食コンクリート柱。
【請求項3】
前記ライニングは、前記コンクリート柱本体の表面に塗布された下塗り層と、前記下塗り層の上に塗布されたポリウレア樹脂からなる中塗り層と、前記中塗り層の上に塗布された上塗り層と、を備える、
請求項1に記載の防食コンクリート柱。
【請求項4】
前記コンクリート柱本体は、被覆が施されていない内部鉄筋を備える、
請求項1に記載の防食コンクリート柱。
【請求項5】
コンクリート柱本体の表面を下処理する工程と、
下処理が施された前記コンクリート柱本体の表面にライニング材としてポリウレア樹脂を塗布する工程と、
を含むライニングの施工方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防食コンクリート柱及びライニングの施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンクリート柱に対して内部鉄筋の腐食を防止する防食対策を施し、コンクリート柱の長寿命化を図る試みがなされている。防食コンクリート柱としては、ライニング材が表面に施された防食鉄筋を用いたコンクリート柱が実用化されている。この種の防食コンクリート柱は、コンクリートにひび割れが発生しても防食鉄筋が腐食しないため、耐力低下が発生しない点で有用である。例えば、特許文献1には、鉄筋をエポキシ樹脂で被覆した防食鉄筋を用いた防食コンクリート柱が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-188603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の防食コンクリート柱には、製造時に防食鉄筋を緊張させるのに特殊な製造技術が必要であり、製造コストが高いという問題がある。また、特許文献1のコンクリート柱には、防食鉄筋にエポキシ樹脂が被覆されているため、防食鉄筋とコンクリートとの間の付着力が弱く、結果としてコンクリートにひび割れが発生しやすい、という問題もある。
【0005】
本発明は、このような背景に基づいてなされたものであり、低コストで入手でき、耐久性に優れた防食コンクリート柱及びライニングの施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る防食コンクリート柱は、
コンクリート柱本体と、
前記コンクリート柱本体の表面に定着されたポリウレア樹脂の層を含むライニングと、
を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、低コストで入手でき、耐久性に優れた防食コンクリート柱及びライニングの施工方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施の形態に係る防食コンクリート柱に対するポリウレア樹脂の塗布作業の様子を示す概略図である。
図2】本発明の実施の形態に係る防食コンクリート柱に定着させたライニングの構成を示す概略図である。
図3】本発明の実施の形態に係る防食コンクリート柱に対するライニングの施工方法の流れを示すフローチャートである。
図4】実施例1におけるコンクリート柱の元口側の外観を撮影した図である。
図5】実施例2における耐久性評価試験の結果を示す図である。
図6】(a)は、実施例2における試験片の構成を示す図であり、(b)は、(a)の試験片を用いた引張試験の概要を説明するための図である。
図7】試験温度が常温の場合におけるコンクリート柱の荷重と変位との関係を示すグラフである。
図8】試験温度が-40℃の場合におけるコンクリート柱の荷重と変位との関係を示すグラフである。
図9】試験温度が+40℃の場合におけるコンクリート柱の荷重と変位との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態に係る防食コンクリート柱及びライニングの施工方法を、図面を参照しながら詳細に説明する。各図面では、同一又は同等の部分に同一の符号を付す。
【0010】
実施の形態に係る防食コンクリート柱は、コンクリート柱本体の内部鉄筋(主筋)の防食のためにコンクリート柱本体の表面にライニング材としてポリウレア樹脂を定着させたコンクリート柱である。ポリウレア樹脂は、防水性及び伸縮性に優れているため、経年劣化によりひび割れが発生するコンクリート柱本体のライニング材として好適である。
【0011】
ポリウレア樹脂は、イソシアネート(R-NCO)からなるA剤とポリアミン(R’-NH)からなるB剤との化学反応で生成される樹脂化合物である。ポリウレア樹脂では、以下の化学式で示すようにイソシアネートとポリアミンとの化学反応により強力なウレア結合が生成されている。
R-NCO+R’-NH→R-NH-CO-NH-R’
【0012】
イソシアネートは、例えば、イソシアン酸メチル、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートである。ポリアミンは、例えば、ポリオキシポロピレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、ポリオキシポロピレントリアミンである。ポリウレア樹脂には、主原料であるイソシアネート及びポリアミン以外の成分、例えば、触媒、界面活性剤、発泡剤、架橋剤を添加してもよい。また、ポリウレア樹脂の着色のために着色剤を添加してもよい。
【0013】
ポリウレア樹脂は、ウレア結合を主体する樹脂化合物であるため、防水性、耐熱性、耐候性の点のみならず、引張強度、伸縮性の点でも優れている。例えば、ポリウレア樹脂の伸び率は、200%以上(材料の標準性能)であり、コンクリート柱のJIS(Japanese Industrial Standards)規格で規定されたひび割れ幅の規格値0.25mmに対して十分な裕度を有している。このため、コンクリート柱本体にひび割れが生じても、少なくともJIS規格で規定されたひび割れ幅の範囲内では、ポリウレア樹脂の層を含むライニングがコンクリート柱本体の変形に追従するため、高い防水性を維持できる。また、ポリウレア樹脂は、硬化までの時間が短く、ライニング材として安定した施工が可能である。以上の理由から、ポリウレア樹脂は、コンクリート柱本体のライニング材として好適である。
【0014】
ポリウレア樹脂は、例えば、図1に示すように塗布機1を用いた噴射によりコンクリート柱表面に塗布される。塗布機1は、A剤及びB剤を加温すると共に圧縮するリアクター2と、リアクター2にホースを介して接続され、リアクター2から供給されたA剤及びB剤を衝突させて混合した後、外部にスプレー状に噴射するスプレーガン3と、を備える。リアクター2には、コンプレッサ及びエアドライヤーが接続され、コンプレッサ及びエアドライヤーは、A剤及びB剤の圧縮及び加温に必要な高温高圧な空気をリアクター2に供給する。
【0015】
ポリウレア樹脂の塗布は建物内で実施することが好ましい。ポリウレア樹脂の塗布に用いるポリイソシアネートは、水と反応して炭酸ガスを発生し、ポリウレア樹脂に膨れを発生させる。このため、ライニングの品質を確保するには、雨天時や躯体が濡れている状態での施工を回避する必要がある。また、ポリウレア樹脂の塗布時には、温度が大きく変動することも避ける必要がある。塗布時の温度は、例えば、5℃以上であり、できれば20℃以上であることが好ましい。
【0016】
ポリウレア樹脂は、好ましくはコンクリート柱本体の表面に対して均一な厚みで塗布されている。ポリウレア樹脂の厚みは、コンクリート柱の防食を達成可能な範囲で任意であるが、上塗り剤が塗布されていない状態でポリウレア樹脂が直接紫外線に晒されると1年相当で厚みが0.02mm程度減少するため、ある程度の厚みを有することが好ましい。塗布機1を用いてポリウレア樹脂を厚み1mm未満に塗布するには特殊な技術が要求されるため、ポリウレア樹脂の厚みは、少なくとも1mm以上であることが好ましい。ポリウレア樹脂の厚みが1mmであれば、1年で厚みが0.02mmずつ減少してもポリウレア樹脂が消失するまでには50年を要する計算となり、長期間の耐久性を確保できる。
【0017】
図2に示すように、ポリウレア樹脂の層は、例えば、上塗り材の層(上塗り層)と下塗り材の層(下塗り層)との間に配置された中塗り材の層(中塗り層)であることが好ましい。上塗り材は、トップコートとも呼ばれ、紫外線の遮断のために塗布される。上塗り材は、例えば、フッ素樹脂系、シリコン樹脂系、アクリルウレタン樹脂系の上塗り材であり、耐久性を考慮して選択される。
【0018】
下塗り材は、中塗り材とコンクリートとの接着力を高め、コンクリートに含まれる水分の影響を小さくしたり、外気温の変化時における中塗り材とコンクリートとの間での膨張の違いを緩和したりするために塗布される。下塗り材は、プライマーとも呼ばれ、例えば、ウレタン系、エポキシ系、ゴム系、水系エマルジョンの下塗り材である。下塗り材には、例えば、防錆剤が添加されてもよい。
以上が、防食コンクリート柱の構成である。
【0019】
次に、図3を参照して、コンクリート柱に対するライニングの施工方法の流れを説明する。以下の工程は、温度の変化やコンクリート柱へ水分が付着する可能性を考慮し、いずれも建物内で実施するものとする。
【0020】
まず、コンクリート柱表面に対する下処理を行う(ステップS1)。下処理としては、例えば、コンクリート表面の脱脂やケレンを行う。このとき、コンクリート柱表面に付着した水分があれば乾燥させるとよい。また、コンクリート柱が使用済みのものであれば、パテ材を用いてコンクリート表面の凹凸や欠損部を補修してもよい。
【0021】
次に、下処理を行ったコンクリート表面に下塗り材を塗布する(ステップS2)。下塗り材は、例えば、ペイントローラ、ハケで塗布すればよい。
【0022】
次に、下塗り材の上に中塗り材であるポリウレア樹脂を塗布する(ステップS3)。中塗り材は、例えば、図1に示す塗布機1を用いて機械噴射により一定の厚みにポリウレア樹脂を塗布すればよい。
【0023】
次に、中塗り材の上に上塗り材を塗布する(ステップS4)。上塗り材は、例えば、ペイントローラ、ハケで塗布すればよい。
以上が、ライニングの施工方法の流れである。
【0024】
実施の形態に係る防食コンクリート柱は、ポリウレタン等の他の樹脂を表面に塗布したコンクリート柱と比較すると、ひび割れへの追従性に優れているため、長期にわたって安定した防食性能を維持できる。例えば、ポリウレタン等の他の樹脂を表面に塗布したコンクリート柱では、ひび割れへの追従性がないため、長期にわたって実用に耐える防食性能が得られない。
【0025】
実施の形態に係る防食コンクリート柱は、内部鉄筋として防食鉄筋を用いたコンクリート柱と比較して以下の利点を有する。まず、防食鉄筋を用いたコンクリート柱では、樹脂被覆により覆われた防食鉄筋の径が太いため、高強度コンクリート柱を製造しようとすると末口側に防食鉄筋を収容できず、高強度コンクリート柱の製造ができない。他方、実施の形態に係る防食コンクリート柱は、内部鉄筋として被覆のない鉄筋を用いることができるため、高強度コンクリート柱であっても問題なく製造できる。
【0026】
防食鉄筋を使用したコンクリート柱の製造には、内部鉄筋の緊張時に特殊な技術が必要であり、低コスト化が困難である。他方、実施の形態に係る防食コンクリート柱は、内部鉄筋の緊張時に特殊な技術が不要であり、低コスト化が可能である。
【0027】
防食鉄筋を使用したコンクリート柱は、防食鉄筋とコンクリートとの付着性に乏しいため、ひび割れ制御性能が低く、JIS規格で規定されたひび割れ制御性能(設計時0.25mm以下)を維持できない。このため、コンクリートに生じたひび割れにより腐食環境因子が入り込み、螺旋筋の腐食により錆汁が発生し、結果として内部鉄筋の劣化判定が困難になる。他方、実施の形態に係る防食コンクリート柱は、内部鉄筋として被覆のない鉄筋を用いることで、JIS規格で規定されたひび割れ制御性能を維持でき、内部鉄筋の劣化判定も容易である。
【0028】
以上説明したように、実施の形態に係る防食コンクリート柱は、コンクリート柱本体と、コンクリート柱本体の表面に定着されたポリウレア樹脂の層を含むライニングと、を備える。このため、防食鉄筋を使用したコンクリート柱と比較して特殊な製造技術が不要であり、低コストで入手できる。また、コンクリートにひび割れが生じたとしても防食性能を長期にわたって維持でき、耐久性の面でも有利である。そして、防食コンクリート柱であっても内部鉄筋を被覆する必要がないため、高強度コンクリート柱であっても製造できる。
【0029】
本発明は上記実施の形態に限られず、以下に述べる変形も可能である。
【0030】
(変形例)
上記実施の形態では、ポリウレア樹脂の上に上塗り材を塗布していたが、本発明はこれに限られない。例えば、コンクリート柱がモルタルで覆われる場合や室内の日光が当たらない場所で使用する場合には、上塗り材を省略してもよい。
【0031】
上記実施の形態では、ポリウレア樹脂の下に下塗り材を塗布していたが、本発明はこれに限られない。中塗り材及びコンクリートの膨張特性が類似し、接着力の観点でも相性がよい場合には下塗り材を省略してもよい。
【0032】
上記実施の形態では、コンクリート柱本体に対するライニングの施工を建物内で行っていたが、本発明はこれに限られない。例えば、雨風が発生せず、気温が安定している場合にはライニングの施工を屋外で行ってもよい。また、対象とするコンクリート柱は新品や現場から取り外されたものに限られず、既に現場に立設されているコンクリート柱に対してライニングの施工を行ってもよい。
【0033】
上記実施の形態では、コンクリート柱本体の主筋として鉄筋が用いられていたが、本発明はこれに限られない。主筋としては、複合材料、例えば、FRP(Fiber Reinforced Plastics)を用いてもよい。
【0034】
上記実施の形態は例示であり、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の趣旨を逸脱しない範囲でさまざまな実施の形態が可能である。実施の形態や変形例で記載した構成要素は自由に組み合わせることが可能である。また、特許請求の範囲に記載した発明と均等な発明も本発明に含まれる。
【0035】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0036】
(実施例1)
実施例1では、曲げ変形時のライニング材の追従状況を検証するため、コンクリート柱の実機に対してひび割れ追従性試験を行った。具体的には、まず、長さ16mのコンクリート柱表面に下処理を施した後、下塗り材、ポリウレア樹脂、上塗り材の順に塗布を行い、3層からなるライニングを定着させた。次に、曲げ変形時のコンクリート表面のひび割れ発生状況を確認するために、図4に示すように曲げモーメントが大きく発生するコンクリート柱の地際側の固定部位においてライニングを縦方向に切り取り、コンクリート柱表面を一部露出させた。次に、コンクリート柱の元口側を試験装置で固定した状態で末口側をロープでコンクリート柱の径方向に牽引し、図4の拡大図に示すようにコンクリート柱にひび割れを発生させ、さらにコンクリートの破壊寸前まで曲げ変形を加えた。
【0037】
その結果、設計荷重及び破壊荷重がそれぞれ加えられた時点、並びにコンクリートの破壊寸前でも、ライニングはコンクリート柱の変形に追従し続け、破損することはなかった。以上から、ポリウレア樹脂を含むライニングは、コンクリートの破壊寸前までコンクリート柱の変形に追従でき、コンクリート柱表面を安定的に保護できることを確認できた。
【0038】
(実施例2)
実施例2では、ライニング材としてポリウレア樹脂を施した試験片を対象にして耐久性評価試験を行った。具体的には、コンクリート標準示方書に示すライニング材の耐久性評価試験(コンクリートライブラリー119号 表面保護工法 設計施工指針(案)147ページ、公益社団法人土木学会、2005年4月)をそれぞれ実施した。
【0039】
耐久性評価試験に含まれる要求性能項目は、耐久性能、劣化抑制性能及び柔軟性である。耐久性能については、耐候性及びコンクリートとの付着性に関する照査項目について、劣化抑制性能については、遮塩性、水蒸気透過防止性に関する照査項目についてそれぞれ試験を行った。また、柔軟性については、各条件下でひび割れ追従性試験を実施した。いずれの試験も平板状のモルタルにポリウレア樹脂がライニングされた試験片を対象に実施した。その結果、図5に示すように、ポリウレア樹脂はライニング材として要求される全ての要求性能項目をクリアしていることが確認できた。
【0040】
以下、図5で示した要求性能項目のうちひび割れ追従性試験を説明する。ひび割れ追従性試験は、実施例1のひび割れ追従性試験とは異なり、試験片を用いて行った室内試験である。試験片は、図6(a)に示すように、平板状のモルタルにポリウレア樹脂がライニングされ、ポリウレア樹脂と反対の面にひび割れを模擬した切り欠きが形成されている。この試験片を引張試験機に取り付け、図6(b)に示すように長手方向に牽引し、破断時の試験片の伸び(変位量)ΔWを読み取った。温度条件毎に3つの試験片を用いて3回試験を繰り返した。なお、ライニングの規格では、図5に示すように1.0mm以上の伸びが要求されているが、コンクリート柱の最大ひび割れ幅(伸び)は0.25mmであるため、試験片が伸びに関するライニングの規格を満たせば、ポリウレア樹脂はコンクリート柱のライニング材として十分な性能を有することになる。
【0041】
ひび割れ追従性試験の結果、いずれの温度条件においても、ポリウレア樹脂の伸びが1.0mm以上であることが確認できた。具体的に説明すると、温度21.7℃(常温)の試験では、図7に示すようにコンクリート柱の想定最大ひび割れに対する破断時の伸びの最小値は31.41mmであり、コンクリート柱の最大ひび割れ幅に対して約126倍以上であった。温度-40℃の試験では、図8に示すように破断時の伸びの最小値は1.56mmであり、コンクリート柱の最大ひび割れ幅に対して約6.24倍以上であった。温度+40℃の試験では、図9に示すように破断時の伸びの最小値は36.68mmであり、コンクリート柱の最大ひび割れ幅に対して約147倍以上であった。なお、図7図9のグラフ上の各線は、各試験片における測定結果に対応している。以上から、ポリウレア樹脂の伸び率は、コンクリート柱の最大ひび割れ幅を基準にすると少なくとも400%以上であり、コンクリート柱のライニング材として十分な伸び率を有することが確認できた。
【符号の説明】
【0042】
1 塗布機
2 リアクター
3 スプレーガン

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2023-09-15
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0001
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0001】
本発明は、防食コンクリート柱及びライニングの施工方法に関する。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0005
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0005】
本発明は、このような背景に基づいてなされたものであり、低コストで入手でき、耐久性に優れた防食コンクリート柱及びライニングの施工方法を提供することを目的とする。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る防食コンクリート柱は、
元口から末口に向かって長手方向に延びるコンクリート柱本体と、
前記コンクリート柱本体の表面に定着されたポリウレア樹脂の層を含むライニングと、
を備える。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
本発明によれば、低コストで入手でき、耐久性に優れた防食コンクリート柱及びライニングの施工方法を提供できる。
【手続補正6】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
元口から末口に向かって長手方向に延びるコンクリート柱本体と、
前記コンクリート柱本体の表面に定着されたポリウレア樹脂の層を含むライニングと、
を備える防食コンクリート柱。
【請求項2】
前記コンクリート電柱本体には、前記コンクリート電柱本体の長手方向の軸周りに螺旋状に巻かれた螺旋筋が埋設されている、
請求項1に記載の防食コンクリート電柱。
【請求項3】
前記ポリウレア樹脂の層の厚さは、少なくとも1mm以上である、
請求項1又は2に記載の防食コンクリート柱。
【請求項4】
前記ライニングは、前記コンクリート柱本体の表面に塗布された下塗り層と、前記下塗り層の上に塗布された前記ポリウレア樹脂からなる中塗り層と、前記中塗り層の上に塗布された上塗り層と、を備える、
請求項1又は2に記載の防食コンクリート柱。
【請求項5】
前記コンクリート柱本体は、被覆が施されていない内部鉄筋を備える、
請求項1又は2に記載の防食コンクリート柱。
【請求項6】
元口から末口に向かって長手方向に延びるコンクリート柱本体の表面を下処理する工程と、
下処理が施された前記コンクリート柱本体の表面にライニング材としてポリウレア樹脂を塗布する工程と、
を含むライニングの施工方法。
【手続補正書】
【提出日】2023-12-15
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0001
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0001】
本発明は、防食コンクリート柱及びライニングの施工方法に関する。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0005
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0005】
本発明は、このような背景に基づいてなされたものであり、低コストで入手でき、耐久性に優れた防食コンクリート柱及びライニングの施工方法を提供することを目的とする。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る防食コンクリート柱は、
元口から末口に向かって長手方向に延びるコンクリート柱本体と、
前記コンクリート柱本体の表面に定着されたポリウレア樹脂の層を含むライニングと、
を備える。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
本発明によれば、低コストで入手でき、耐久性に優れた防食コンクリート柱及びライニングの施工方法を提供できる。
【手続補正6】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
元口から末口に向かって長手方向に延びるコンクリート柱本体と、
前記コンクリート柱本体の表面に定着されたポリウレア樹脂の層を含むライニングと、
を備える防食コンクリート柱
【請求項2】
前記ポリウレア樹脂の層の厚さは、少なくとも1mm以上である、
請求項1に記載の防食コンクリート柱
【請求項3】
前記ライニングは、前記コンクリート柱本体の表面に塗布された下塗り層と、前記下塗り層の上に塗布された前記ポリウレア樹脂からなる中塗り層と、前記中塗り層の上に塗布された上塗り層と、を備える、
請求項1又は2に記載の防食コンクリート柱
【請求項4】
前記コンクリート柱本体は、被覆が施されていない内部鉄筋を備える、
請求項1又は2に記載の防食コンクリート柱
【請求項5】
元口から末口に向かって長手方向に延びるコンクリート柱本体の表面を下処理する工程と、
下処理が施された前記コンクリート柱本体の表面にライニング材としてポリウレア樹脂を塗布する工程と、
を含むライニングの施工方法。