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特開2024-111754ポリオレフィン系多層フィルム、包装体及び包装体の包装方法
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  • 特開-ポリオレフィン系多層フィルム、包装体及び包装体の包装方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111754
(43)【公開日】2024-08-19
(54)【発明の名称】ポリオレフィン系多層フィルム、包装体及び包装体の包装方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20240809BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20240809BHJP
【FI】
B32B27/32 E
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023016445
(22)【出願日】2023-02-06
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165951
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 憲悟
(74)【代理人】
【識別番号】100173473
【弁理士】
【氏名又は名称】高井良 克己
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 幸子
(72)【発明者】
【氏名】高橋 宏達
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AA23
3E086AB03
3E086AD01
3E086AD03
3E086BA15
3E086BA33
3E086BA35
3E086BB41
3E086BB51
3E086BB85
3E086CA01
3E086DA03
4F100AK04B
4F100AK04C
4F100AK07A
4F100AK07D
4F100BA04
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100EH20
4F100EJ38
4F100EJ42
4F100GB15
4F100GB23
4F100JD03
4F100JK03
4F100JK06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】目的に応じて種々のガスを封入して得られる包装体に用いることができる包装用フィルム。
【解決手段】ポリプロピレン系樹脂を含む第1の表面層(S1)と、ポリエチレン系樹脂を含む第2の表面層(S2)と、前記第1の表面層(S1)と隣接するポリエチレン系樹脂を含む第1の内部層(M1)と、前記第2の表面層(S2)と隣接するポリプロピレン系樹脂を含む第2の内部層(M2)とを備え、前記第1の表面層(S1)と前記第1の内部層(M1)間の層間剥離強度、及び前記第2の表面層(S2)と前記第2の内部層(M2)間の層間剥離強度の両方が、0.5(gf/15mm幅)未満であり、ポリオレフィン系多層フィルム中でフィルム各層が材破せずに剥離可能な層界面数が、3以上であり、かつ、ポリオレフィン系多層フィルムの酸素透過度が、50,000~200,000cc/(m・day・MPa)である、ポリオレフィン系多層フィルム。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
4層以上が積層してなるポリオレフィン系多層フィルムであって、
ポリプロピレン系樹脂を含む第1の表面層(S1)と、
ポリエチレン系樹脂を含む第2の表面層(S2)と、
前記第1の表面層(S1)と隣接するポリエチレン系樹脂を含む第1の内部層(M1)と、
前記第2の表面層(S2)と隣接するポリプロピレン系樹脂を含む第2の内部層(M2)と
を備え、
前記第1の表面層(S1)と前記第1の内部層(M1)間の層間剥離強度、及び前記第2の表面層(S2)と前記第2の内部層(M2)間の層間剥離強度の両方が、0.5(gf/15mm幅)未満であり、
ポリオレフィン系多層フィルム中でフィルム各層が材破せずに剥離可能な層界面数が、3以上であり、かつ、
ポリオレフィン系多層フィルムの酸素透過度が、50,000~200,000cc/(m・day・MPa)である、
ポリオレフィン系多層フィルム。
【請求項2】
各層の引裂強度の和が、全層が積層してなるポリオレフィン系多層フィルムの引裂強度未満である、請求項1に記載のポリオレフィン系多層フィルム。
【請求項3】
請求項1に記載のポリオレフィン系多層フィルムで密封した包装体であって、窒素を80~100%充填し、密封した包装体の24時間経過後の包装体内部ガス組成が、酸素が5~25%、窒素が75~95%であり、ポリオレフィン系多層フィルムが、3方以上のシール部を有する、包装体。
【請求項4】
請求項1に記載のポリオレフィン系多層フィルムで密封した包装体であって、二酸化炭素を99%以上充填し、密封した包装体の24時間経過後の包装体内部ガス組成が、酸素が18~27%、窒素が73~82%であり、ポリオレフィン系多層フィルムが、3方以上のシール部を有する、包装体。
【請求項5】
被包装体を、請求項1に記載のポリオレフィン系多層フィルムで密封することと、
窒素を80~100%充填することと
を含む、密封した包装体の24時間経過後の包装体内部ガス組成が、酸素が5~25%、窒素が75~95%であり、ポリオレフィン系多層フィルムが、3方以上のシール部を有する、包装体の包装方法。
【請求項6】
被包装体を、請求項1に記載のポリオレフィン系多層フィルムで密封することと、
二酸化炭素を99%以上充填することと
を含む、密封した包装体の24時間経過後の包装体内部ガス組成が、酸素が18~27%、窒素が73~82%であり、ポリオレフィン系多層フィルムが、3方以上のシール部を有する、包装体の包装方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオレフィン系多層フィルム、包装体及び包装体の包装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食料品を覆う包装方法として、例えば、家庭用ラップ包装、オーバーラップ包装、ひねり包装、袋詰め包装、スキン包装、ピローシュリンク包装、ストレッチ包装、トップシール包装が挙げられる。特に、ピローシュリンク包装及びトップシール包装の連続包装機は高速包装でき、仕上がりが良好であるため広く流通している。
さらに、近年では環境への配慮から、スーパーやコンビニ等で売れ残った食品等の廃棄量を削減する意識が高まり、食品の長期保存、常温保存を目的としたガスパック包装が注目されている。ガスパック包装は、容器内を窒素ガスや二酸化炭素ガスで封入することにより細菌等の繁殖を抑制し、長期保存を実現するツールであり、使用する包装フィルムには酸素透過性の低いガスバリア性フィルムが適している。ガスバリア性フィルムとしては、バリア性の樹脂と低温シール性を有するポリオレフィン系樹脂とを積層したフィルムが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、熱収縮性積層フィルムが記載されている。特許文献2には、熱収縮性多層フィルムおよびその製造方法が記載されている。特許文献3には、両表面層EVAのオーバーラップフィルムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-221507号公報
【特許文献2】特開2009-248394号公報
【特許文献3】特開平2-258526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、高速密封包装が可能であり、引裂強度が高く、開封時にはフィルムが細かくなりづらいため、開封性に優れ、食品への異物混入が防止でき、また気体透過性に優れているため、目的に応じて種々のガスを封入して得られる包装体に用いることができる包装用フィルムが要求されていた。本発明が解決しようとする課題は、高速密封包装が可能であり、引裂強度が高く、開封時にはフィルムが細かくなりづらいため、開封性に優れ、食品への異物混入が防止でき、また気体透過性に優れているため、目的に応じて種々のガスを封入して得られる包装体に用いることができる包装用フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、4層以上が積層してなるポリオレフィン系多層フィルムであって、ポリプロピレン系樹脂を含む第1の表面層(S1)と、ポリエチレン系樹脂を含む第2の表面層(S2)と、前記第1の表面層(S1)と隣接するポリエチレン系樹脂を含む第1の内部層(M1)と、前記第2の表面層(S2)と隣接するポリプロピレン系樹脂を含む第2の内部層(M2)とを備え、前記第1の表面層(S1)と前記第1の内部層(M1)間の層間剥離強度、及び前記第2の表面層(S2)と前記第2の内部層(M2)間の層間剥離強度の両方が、0.5(gf/15mm幅)未満であり、ポリオレフィン系多層フィルム中でフィルム各層が材破せずに剥離可能な層界面数が、3以上であり、かつ、ポリオレフィン系多層フィルムの酸素透過度が、50,000~200,000cc/(m・day・MPa)である、ポリオレフィン系多層フィルムが、高速密封包装が可能であり、引裂強度が高く、開封時にはフィルムが細かくなりづらいため、開封性に優れ、食品への異物混入が防止でき、また気体透過性に優れているため、目的に応じて種々のガスを封入して得られる包装体に用いることができる包装用フィルムとして用いることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、下記のとおりである。
[1]
4層以上が積層してなるポリオレフィン系多層フィルムであって、
ポリプロピレン系樹脂を含む第1の表面層(S1)と、
ポリエチレン系樹脂を含む第2の表面層(S2)と、
前記第1の表面層(S1)と隣接するポリエチレン系樹脂を含む第1の内部層(M1)と、
前記第2の表面層(S2)と隣接するポリプロピレン系樹脂を含む第2の内部層(M2)と
を備え、
前記第1の表面層(S1)と前記第1の内部層(M1)間の層間剥離強度、及び前記第2の表面層(S2)と前記第2の内部層(M2)間の層間剥離強度の両方が、0.5(gf/15mm幅)未満であり、
ポリオレフィン系多層フィルム中でフィルム各層が材破せずに剥離可能な層界面数が、3以上であり、かつ、
ポリオレフィン系多層フィルムの酸素透過度が、50,000~200,000cc/(m・day・MPa)である、
ポリオレフィン系多層フィルム。
[2]
各層の引裂強度の和が、全層が積層してなるポリオレフィン系多層フィルムの引裂強度未満である、[1]に記載のポリオレフィン系多層フィルム。
[3]
[1]又は[2]に記載のポリオレフィン系多層フィルムで密封した包装体であって、窒素を80~100%充填し、密封した包装体の24時間経過後の包装体内部ガス組成が、酸素が5~25%、窒素が75~95%であり、ポリオレフィン系多層フィルムが、3方以上のシール部を有する、包装体。
[4]
[1]又は[2]に記載のポリオレフィン系多層フィルムで密封した包装体であって、二酸化炭素を99%以上充填し、密封した包装体の24時間経過後の包装体内部ガス組成が、酸素が18~27%、窒素が73~82%であり、ポリオレフィン系多層フィルムが、3方以上のシール部を有する、包装体。
[5]
被包装体を、[1]又は[2]に記載のポリオレフィン系多層フィルムで密封することと、
窒素を80~100%充填することと
を含む、密封した包装体の24時間経過後の包装体内部ガス組成が、酸素が5~25%、窒素が75~95%であり、ポリオレフィン系多層フィルムが、3方以上のシール部を有する、包装体の包装方法。
[6]
被包装体を、[1]又は[2]に記載のポリオレフィン系多層フィルムで密封することと、
二酸化炭素を99%以上充填することと
を含む、密封した包装体の24時間経過後の包装体内部ガス組成が、酸素が18~27%、窒素が73~82%であり、ポリオレフィン系多層フィルムが、3方以上のシール部を有する、包装体の包装方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明のポリオレフィン系多層フィルムによれば、高速密封包装が可能であり、引裂強度が高く、開封時にはフィルムが細かくなりづらいため、開封性に優れ、食品への異物混入が防止でき、また気体透過性に優れているため、目的に応じて種々のガスを封入して得られる包装体に用いることができる包装用フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】ピロー包装機による本発明のポリオレフィン系多層フィルムを用いた包装体の包装方法のスキームを示す。
図2】本発明のポリオレフィン系多層フィルムを用いた包装体の底面図の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳述する。
【0011】
(ポリオレフィン系多層フィルム)
本発明のポリオレフィン系多層フィルムは、4層以上が積層してなり、ポリプロピレン系樹脂を含む第1の表面層(S1)と、ポリエチレン系樹脂を含む第2の表面層(S2)と、前記第1の表面層(S1)と隣接するポリエチレン系樹脂を含む第1の内部層(M1)と、前記第2の表面層(S2)と隣接するポリプロピレン系樹脂を含む第2の内部層(M2)とを備える。また、前記第1の表面層(S1)と前記第1の内部層(M1)間の層間剥離強度、及び前記第2の表面層(S2)と前記第2の内部層(M2)間の層間剥離強度の両方が、0.5(gf/15mm幅)未満である。また、ポリオレフィン系多層フィルム中でフィルム各層が材破せずに剥離可能な層界面数が、3以上である。また、ポリオレフィン系多層フィルムの酸素透過度が、50,000~200,000cc/(m・day・MPa)である。
【0012】
[第1の表面層(S1)]
「第1の表面層(S1)」とは、ポリオレフィン系多層フィルムで包装体を形成した際に、包装体の外側表面を形成する表面層である。第1の表面層(S1)は、ポリプロピレン系樹脂を含む。
【0013】
第1の表面層(S1)に含まれるポリプロピレン系樹脂とは、プロピレンに由来する構成単位を含む重合体をいい、例えば、プロピレン単独重合体、プロピレンと他のαオレフィン(例、エチレン等)との共重合体(例、エチレン-プロピレン共重合体等)が挙げられる。ポリプロピレン系樹脂がプロピレンと他のαオレフィンとの共重合体である場合、他のαオレフィンとしては、例えば、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、イソペンテン、1-ヘキセン、3,3-ジメチル-1-ブテン等が挙げられる。他のαオレフィンは、1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、フィルムに耐熱性と適度な柔軟性を付与し、易開封性及び包装時の破断破れにくさが一層向上する観点から、ポリプロピレン系樹脂は、プロピレン単独重合体、またはエチレン-プロピレン共重合体が好ましい。ポリプロピレン系樹脂全量に対するプロピレンに由来する構成単位の含有割合は、50質量%以上が好ましく、55質量%以上がより好ましく、60質量%以上がさらに好ましい。
【0014】
上記ポリプロピレン系樹脂の融点としては、包装時に第1の表面層(S1)がシールバーに直接接触する観点から、130℃以上であることが好ましく、ヒートシール時の耐熱性が一層向上する観点から、140℃以上であることがより好ましい。
【0015】
上記ポリプロピレン系樹脂のMFR(メルトフローレート)は、押出性と延伸製膜性の観点から、0.5~10g/10分であることが好ましく、より好ましくは1.0~5.0g/10分である。なお、MFRは、JIS K7210に準じて、温度230℃、2.16kg荷重の条件で測定した値をいう。
【0016】
上記ポリプロピレン系樹脂の結晶化熱量は、ヒートシール時の耐熱性及び包装時の破断が生じ難くなる観点から、5J/g以上であることが好ましく、15J/g以上であることがより好ましく、100J/g以下であることが好ましく、90J/g以下であることがより好ましい。なお、結晶化熱量は、示差操作熱量計の冷却温度プロファイルより測定することができる。
【0017】
第1の表面層(S1)は、ポリプロピレン系樹脂以外の成分を含んでもよい。ポリプロピレン系樹脂以外の成分としては、例えば、防曇剤、酸化防止剤、可塑剤等の添加剤等が挙げられる。
【0018】
第1の表面層(S1)は、融点100℃以下のポリオレフィン系エラストマーを含んでもよい。上記ポリオレフィン系エラストマーとしては、プロピレンに由来する構成単位を含むエラストマーが好ましく、エチレン-プロピレン共重合体エラストマー、プロピレン-ブテン1共重合体エラストマー等のプロピレンと他のαオレフィンとの共重合体エラストマーがより好ましく、エチレン-プロピレン共重合体エラストマーがさらに好ましく、成形性付与等必要に応じて、プロピレン-ブテン1共重合体を含んでもよい。
【0019】
上記ポリオレフィン系エラストマーの密度としては、フィルムへの柔軟性付与、易開封性及び包装時の破断破れにくさが一層向上する観点から、0.860~0.900g/cmであることが好ましく、より好ましくは0.865~0.895g/cm、更に好ましくは0.870~0.890g/cmである。
なお、上記密度は、JIS K 7112に準じて、D法(密度勾配管)で測定した値をいう。
【0020】
上記ポリオレフィン系エラストマーの融点としては、フィルムへの柔軟性付与、易開封性及び包装時の破断破れにくさが一層向上する観点から、60~100℃であることが好ましく、より好ましくは70~90℃である。
【0021】
上記ポリオレフィン系エラストマーのMFR(メルトフローレート)は、フィルムへの柔軟性付与、易開封性及び包装時の破断破れにくさが一層向上する観点から、0.5~10g/10分であることが好ましく、より好ましくは1.0~5.0g/10分である。
なお、MFRは、JIS K7210に準じて、温度230℃、2.16kg荷重の条件で測定した値をいう。
【0022】
第1の表面層(S1)中の融点100℃以下のポリオレフィン系エラストマーの質量割合としては、フィルムへの柔軟性付与、易開封性及び包装時の破断破れにくさが一層向上する観点から、第1の表面層(S1)100質量%に対して、5~60質量%が好ましく、より好ましくは10~50質量%、さらに好ましくは15~40質量%である。ポリプロピレン系樹脂としては、耐熱性付与の観点から、ホモポリマーであるアイソタクチック(iPP)、シンジオタクチック(sPP)、アタクチック(aPP)が好適で、好ましくは5~80%、より好ましくは10~70%である。包装時の柔軟性付与の観点から、融点が150℃以下のエチレン-プロピレンランダム共重合体(EPC)を含むと良い。20~70%が好ましく、より好ましくは30~60%である。柔軟性を更に付与するために融点が100℃未満のポリプロピレン系エラストマーや、エチレン-ブテン1共重合体、プロピレン-ブテン1共重合体等の各種ポリオレフィン系エラストマーを配合でき、5~50%が好ましく、より好ましくは10~40%である。
【0023】
第1の表面層(S1)中の上記ポリプロピレンの質量割合としては、易開封性及び包装時の破断破れにくさが一層向上する観点から、第1の表面層(S1)100質量%に対して、40~95質量%が好ましく、より好ましくは50~90質量%、さらに好ましくは60~85質量%である。
【0024】
第1の表面層(S1)は、耐熱性を付与する点で融解ピーク温度は、140℃以上が好ましく、145℃以上がより好ましく、150℃以上がさらに好ましい。
【0025】
[第2の表面層(S2)]
「第2の表面層(S2)」とは、ポリオレフィン系多層フィルムで包装体を形成した際に、包装体の内側表面を形成する表面層である。第2の表面層(S2)は、ポリエチレン系樹脂を含む。
【0026】
第2の表面層(S2)に含まれるポリエチレン系樹脂とは、エチレンに由来する構成単位を含み、プロピレンに由来する構成単位を含まないか又は含有量がわずかである重合体をいい、例えば、エチレン単独重合体、エチレンと、エチレン及びプロピレン以外の他のαオレフィンとの共重合体(エチレン-αオレフィン共重合体)が挙げられる。エチレン-αオレフィン共重合体としては、エチレンと炭素数6以上20以下のαオレフィンとの共重合体が挙げられる。エチレン-αオレフィン共重合体は、1種を単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0027】
上記炭素数6以上20以下のαオレフィンとしては、例えば、1-へキセン、1-オクテン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン等が挙げられる。中でも、シール強度や低温ヒートシール性に一層優れる観点から、1-へキセン、1-オクテンが好ましい。これらは、1種を単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0028】
エチレン-αオレフィン共重合体は、エチレン、プロピレン及びαオレフィン以外の他の単量体(以下、「αオレフィン以外の他の単量体」という。)をさらに含んでもよい。上記αオレフィン以外の他の単量体としては、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0029】
上記エチレン-αオレフィン共重合体としては、低温ヒートシール性に一層優れる観点から、エチレンと炭素数6~8のαオレフィンとの共重合体(VLDPE)が好ましい。
【0030】
ポリエチレン系樹脂全量に対するエチレンに由来する構成単位の含有割合は、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。
【0031】
ポリエチレン系樹脂全量に対する他のαオレフィンに由来する構成単位の含有割合は、25質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、15質量%以下がさらに好ましい。
【0032】
ポリエチレン系樹脂は、プロピレンに由来する構成単位を含まないか又は含有量がわずかである。ポリエチレン系樹脂全量に対するプロピレンに由来する構成単位の含有割合は、5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、1質量%以下がさらに好ましく、0質量%が最も好ましい。
【0033】
上記ポリエチレン系樹脂の密度は、低温ヒートシール性の観点から、0.875g/cm以上であることが好ましく、0.880g/cm以上であることがより好ましく、0.885g/cm以上であることが更に好ましく、0.920g/cm以下であることが好ましく、0.915g/cm以下であることがより好ましく、0910g/cm以下であることが更に好ましい。なお、上記密度は、JIS K 7112に準じて、D法(密度勾配管)で測定した値をいう。
【0034】
上記ポリエチレン系樹脂のMFR(メルトフローレート)は、低温ヒートシール性の観点から、0.5g/10分以上であることが好ましく、1.0g/10分以上であることがより好ましく、10.0g/10分以下であることが好ましく、5.0g/10分以下であることがより好ましい。なお、MFRは、JIS K7210に準じて、温度190℃、2.16kg荷重の条件で測定した値をいう。
【0035】
上記ポリエチレン系樹脂の結晶化ピーク温度(Tc)は、フィルムの滑り性を向上させる観点から、70℃以上であることが好ましく、75℃以上であることがより好ましく、低温シール性に一層優れる観点から、110℃未満であることが好ましく、100℃以下であることがより好ましい。なお、結晶化ピーク温度(Tc)は、示差操作熱量計の冷却温度プロファイルに現れるピーク値を採用する。
【0036】
上記ポリエチレン系樹脂に用いる重合体(例、エチレン-αオレフィン共重合体)は、好ましくは、Tcが70℃以上110℃未満の範囲のものから適宜選んでもよいが、2種以上の重合体を使用する場合は、Tcが85℃以上110℃未満の重合体(例、エチレン-αオレフィン共重合体)を60質量%以上95質量%以下、Tcが60℃以上85℃未満の重合体(例、エチレン-αオレフィン共重合体)を5質量%以上40質量%以下含有する(但し、何れか一方の重合体(例、エチレン-αオレフィン共重合体)のTcは70℃以上110℃未満とする)ことで、フィルムの滑り性と低温シール性を向上できる場合がある。
【0037】
第2の表面層(S2)は、上記ポリエチレン系樹脂以外に、50%を超えない範囲で他の樹脂;防曇剤、酸化防止剤、可塑剤等の添加剤等を含んでいてもよい。
【0038】
第2の表面層(S2)は、上記ポリエチレン系樹脂を含むことが好ましく、低温ヒートシール性に一層優れる観点から、上記ポリエチレン系樹脂のみからなることがより好ましい。第2の表面層(S2)中の上記ポリエチレン系樹脂の含有量としては、第2の表面層(S2)100質量%に対して、80質量%以上100質量%以下であることが好ましく、90質量%以上100質量%以下であることがより好ましい。
【0039】
第2の表面層(S2)は、フィルムの成形性の観点から、MFRは10g/10分以下が好ましく、9g/10分以下がより好ましく、8g/10分以下がさらに好ましい。また、ヒートシール時に樹脂を流動しやすくする点でMFRは2g/10分以上が好ましく、3g/10分以上がより好ましく、4g/10分以上がさらに好ましい。
【0040】
[第1の内部層(M1)]
「第1の内部層(M1)」とは、ポリオレフィン系多層フィルム中で第1の表面層(S1)と内側で隣接する内部層である。第1の内部層(M1)は、ポリエチレン系樹脂を含む。
【0041】
第1の内部層(M1)に含まれるポリエチレン系樹脂とは、エチレンに由来する構成単位を含み、プロピレンに由来する構成単位を含まないか又は含有量がわずかである重合体をいい、例えば、エチレン単独重合体、エチレンと、エチレン及びプロピレン以外の他のαオレフィンとの共重合体(エチレン-αオレフィン共重合体)が挙げられる。エチレン-αオレフィン共重合体としては、エチレンと炭素数6以上20以下のαオレフィンとの共重合体が挙げられる。エチレン-αオレフィン共重合体は、1種を単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0042】
上記炭素数6以上20以下のαオレフィンとしては、例えば、1-へキセン、1-オクテン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン等が挙げられる。中でも、シール強度や低温ヒートシール性に一層優れる観点から、1-へキセン、1-オクテンが好ましい。これらは、1種を単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0043】
エチレン-αオレフィン共重合体は、エチレン、プロピレン及びαオレフィン以外の他の単量体(以下、「αオレフィン以外の他の単量体」という。)をさらに含んでもよい。上記αオレフィン以外の他の単量体としては、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0044】
上記エチレン-αオレフィン共重合体としては、低温ヒートシール性に一層優れる観点から、エチレンと炭素数6~8のαオレフィンとの共重合体(VLDPE)が好ましい。
【0045】
ポリエチレン系樹脂全量に対するエチレンに由来する構成単位の含有割合は、60質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。
【0046】
ポリエチレン系樹脂全量に対する他のαオレフィンに由来する構成単位の含有割合は、25質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、15質量%以下がさらに好ましい。
【0047】
ポリエチレン系樹脂は、プロピレンに由来する構成単位を含まないか又は含有量がわずかである。ポリエチレン系樹脂全量に対するプロピレンに由来する構成単位の含有割合は、5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、1質量%以下がさらに好ましく、0質量%が最も好ましい。
【0048】
上記ポリエチレン系樹脂の密度は、低温ヒートシール性の観点から、0.875g/cm以上であることが好ましく、0.880g/cm以上であることがより好ましく、0.885g/cm以上であることが更に好ましく、0.920g/cm以下であることが好ましく、0.915g/cm以下であることがより好ましく、0910g/cm以下であることが更に好ましい。なお、上記密度は、JIS K 7112に準じて、D法(密度勾配管)で測定した値をいう。
【0049】
上記ポリエチレン系樹脂のMFR(メルトフローレート)は、低温ヒートシール性の観点から、0.5g/10分以上であることが好ましく、1.0g/10分以上であることがより好ましく、10.0g/10分以下であることが好ましく、5.0g/10分以下であることがより好ましい。なお、MFRは、JIS K7210に準じて、温度190℃、2.16kg荷重の条件で測定した値をいう。
【0050】
上記ポリエチレン系樹脂の結晶化ピーク温度(Tc)は、フィルムの滑り性を向上させる観点から、70℃以上であることが好ましく、75℃以上であることがより好ましく、低温シール性に一層優れる観点から、110℃未満であることが好ましく、100℃以下であることがより好ましい。なお、結晶化ピーク温度(Tc)は、示差操作熱量計の冷却温度プロファイルに現れるピーク値を採用する。
【0051】
上記ポリエチレン系樹脂に用いる重合体(例、エチレン-αオレフィン共重合体)は、好ましくは、Tcが70℃以上110℃未満の範囲のものから適宜選んでもよいが、2種以上の重合体を使用する場合は、Tcが85℃以上110℃未満の重合体(例、エチレン-αオレフィン共重合体)を60質量%以上95質量%以下、Tcが60℃以上85℃未満の重合体(例、エチレン-αオレフィン共重合体)を5質量%以上40質量%以下含有する(但し、何れか一方の重合体(例、エチレン-αオレフィン共重合体)のTcは70℃以上110℃未満とする)ことでフィルムの滑り性と低温シール性を向上できる場合がある。
【0052】
第1の内部層(M1)は、上記ポリエチレン系樹脂以外に、50%を超えない範囲で他の樹脂;防曇剤、酸化防止剤、可塑剤等の添加剤等を含んでいてもよい。
【0053】
第1の内部層(M1)は、上記ポリエチレン系樹脂を含むことが好ましく、低温ヒートシール性に一層優れる観点から、上記ポリエチレン系樹脂のみからなることがより好ましい。第1の内部層(M1)中の上記ポリエチレン系樹脂の含有量としては、第1の内部層(M1)100質量%に対して、80質量%以上100質量%以下であることが好ましく、90質量%以上100質量%以下であることがより好ましい。
上記表面層(S2)は、上記エチレン-αオレフィン共重合体以外に、50%を超えない範囲で他の樹脂、添加剤等を含んでいてもよい。
【0054】
第1の内部層(M1)は、強度を付与するために、MFRは5g/10分以下が好ましく、4g/10分以下がより好ましく、3g/10分以下がさらに好ましい。
【0055】
[第2の内部層(M2)]
「第2の内部層(M2)」とは、ポリオレフィン系多層フィルム中で第2の表面層(S2)と内側で隣接する内部層である。第2の内部層(M2)は、ポリプロピレン系樹脂を含む。
【0056】
第2の内部層(M2)に含まれるポリプロピレン系樹脂とは、プロピレンに由来する構成単位を含む重合体をいい、例えば、プロピレン単独重合体、プロピレンと他のαオレフィン(例、エチレン等)との共重合体(例、エチレン-プロピレン共重合体等)が挙げられる。ポリプロピレン系樹脂がプロピレンと他のαオレフィンとの共重合体である場合、他のαオレフィンとしては、例えば、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、イソペンテン、1-ヘキセン、3,3-ジメチル-1-ブテン等が挙げられる。他のαオレフィンは、1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、フィルムに耐熱性と適度な柔軟性を付与し、易開封性及び包装時の破断破れにくさが一層向上する観点から、ポリプロピレン系樹脂は、プロピレン単独重合体、またはエチレン-プロピレン共重合体が好ましい。ポリプロピレン系樹脂全量に対するプロピレンに由来する構成単位の含有割合は、40質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、60質量%以上がさらに好ましい。
【0057】
上記ポリプロピレン系樹脂の融点としては、130℃以上であることが好ましく、ヒートシール時の耐熱性が一層向上する観点から、140℃以上であることがより好ましい。
【0058】
上記ポリプロピレン系樹脂のMFR(メルトフローレート)は、押出性と延伸製膜性の観点から、0.5~10g/10分であることが好ましく、より好ましくは1.0~5.0g/10分である。なお、MFRは、JIS K7210に準じて、温度230℃、2.16kg荷重の条件で測定した値をいう。
【0059】
上記ポリプロピレン系樹脂の結晶化熱量は、ヒートシール時の耐熱性及び包装時の破断が生じ難くなる観点から、5J/g以上であることが好ましく、15J/g以上であることがより好ましく、100J/g以下であることが好ましく、90J/g以下であることがより好ましい。なお、結晶化熱量は、示差操作熱量計の冷却温度プロファイルより測定することができる。
【0060】
第2の内部層(M2)は、ポリプロピレン系樹脂以外の成分を含んでもよい。ポリプロピレン系樹脂以外の成分としては、例えば、ポリプロピレン系樹脂以外の樹脂;防曇剤、酸化防止剤、可塑剤等の添加剤等が挙げられる。
【0061】
第2の内部層(M2)は、融点100℃以下のポリオレフィン系エラストマーを含んでもよい。上記ポリオレフィン系エラストマーとしては、プロピレンに由来する構成単位を含むエラストマーが好ましく、エチレン-プロピレン共重合体エラストマー、プロピレン-ブテン1共重合体エラストマー等のプロピレンと他のαオレフィンとの共重合体エラストマーがより好ましく、エチレン-プロピレン共重合体エラストマーがさらに好ましく、成形性付与等必要に応じて、プロピレン-ブテン1共重合体を含んでもよい。
【0062】
上記ポリオレフィン系エラストマーの密度としては、フィルムへの柔軟性付与、易開封性及び包装時の破断破れにくさが一層向上する観点から、0.860~0.900g/cmであることが好ましく、より好ましくは0.865~0.895g/cm、更に好ましくは0.870~0.890g/cmである。なお、上記密度は、JIS K 7112に準じて、D法(密度勾配管)で測定した値をいう。
【0063】
上記ポリオレフィン系エラストマーの融点としては、フィルムへの柔軟性付与、易開封性及び包装時の破断破れにくさが一層向上する観点から、60~100℃であることが好ましく、より好ましくは70~90℃である。
【0064】
上記ポリオレフィン系エラストマーのMFR(メルトフローレート)は、フィルムへの柔軟性付与、易開封性及び包装時の破断破れにくさが一層向上する観点から、0.5~10g/10分であることが好ましく、より好ましくは1.0~5.0g/10分である。
なお、MFRは、JIS K7210に準じて、温度230℃、2.16kg荷重の条件で測定した値をいう。
【0065】
第2の内部層(M2)中の融点100℃以下のポリオレフィン系エラストマーの質量割合としては、フィルムへの柔軟性付与、易開封性及び包装時の破断破れにくさが一層向上する観点から、第2の内部層(M2)100質量%に対して、5~60質量%が好ましく、より好ましくは10~50質量%、さらに好ましくは15~40質量%である。
【0066】
ポリプロピレン系樹脂としては、耐熱性付与の観点から、ホモポリマーであるアイソタクチック(iPP)、シンジオタクチック(sPP)、アタクチック(aPP)が好適で、好ましくは5~80%、より好ましくは10~70%である。包装時の柔軟性付与の観点から、融点が150℃以下のエチレン-プロピレンランダム共重合体(EPC)を含むと良い。20~70%が好ましく、より好ましくは30~60%である。柔軟性を更に付与するために融点が100℃未満のポリプロピレン系エラストマーや、エチレン-ブテン1共重合体、プロピレン-ブテン1共重合体等の各種ポリオレフィン系エラストマーを配合でき、5~50%が好ましく、より好ましくは10~40%である。
【0067】
第2の内部層(M2)中の上記ポリプロピレンの質量割合としては、易開封性及び包装時の破断破れにくさが一層向上する観点から、第2の内部層(M2)100質量%に対して、40~95質量%が好ましく、より好ましくは50~90質量%、さらに好ましくは60~85質量%である。
【0068】
第2の内部層(M2)は、耐熱性を付与する点で、融解ピーク温度は140℃以上が好ましく、145℃以上がより好ましく、150℃以上がさらに好ましい。
【0069】
[追加の内部層]
本発明のポリオレフィン系多層フィルムは、任意で、第1の内部層(M1)と第2の内部層(M2)との間に1層以上の追加の内部層を備えていてもよい。追加の内部層は、例えば、ポリプロピレン系樹脂又はポリエチレン系樹脂を含んでいてもよい。ポリプロピレン系樹脂又はポリエチレン系樹脂の例としては、上述したものが挙げられる。また、追加の内部層は、ポリプロピレン系樹脂及びポリエチレン系樹脂以外の樹脂をさらに含んでもよい。ポリプロピレン系樹脂及びポリエチレン系樹脂以外の樹脂の例としては、上述した「ポリプロピレン系樹脂以外の樹脂」及び「ポリエチレン系樹脂以外の樹脂」の例が挙げられる。また、追加の内部層は、防曇剤、酸化防止剤、可塑剤等の添加剤等をさらに含んでもよい。添加剤等の例としては、上述したものが挙げられる。
【0070】
[各層のその他の成分]
本発明のポリオレフィン系多層フィルムにおいて、単独層として、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)を主として含む層を備えないことが好ましい。なお、M1層、M2層又は、追加の内部層では、50%を超えない範囲でEVOHを溶融混合してもよい。
【0071】
[ポリオレフィン系多層フィルムの諸特性]
<剥離可能な層界面数>
ポリオレフィン系多層フィルム中でフィルム各層が材破せずに剥離可能な層界面数は、3以上である。
【0072】
<形状及びサイズ>
本発明のポリオレフィン系多層フィルムの形状は、特に限定されないが、包装機に用いる観点から長尺シート形状であることが好ましい。本発明のポリオレフィン系多層フィルムが長尺シート形状である場合、ポリオレフィン系多層フィルムの幅は、包装体のサイズや包装機によって適宜決めることができ、例えば300mm以上650mm以下であってもよい。
【0073】
本発明のポリオレフィン系多層フィルムの合計厚みは、8μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましく、20μm以下であることが好ましく、15μm以下であることがより好ましい。
【0074】
<層厚み比率>
本発明のポリオレフィン系多層フィルムにおいて、必須の層である第1の表面層(S1)、第1の内部層(M1)、第2の内部層(M2)及び第2の表面層(S2)の層厚み比率はいずれも、特に限定されないが、ポリオレフィン系多層フィルムの合計厚みに対して、10%以上であることが好ましく、15%以上であることがより好ましく、40%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましい。
【0075】
<引裂強度>
本発明のポリオレフィン系多層フィルムにおいて、各層の引裂強度の和が、全層が積層してなるポリオレフィン系多層フィルムの引裂強度未満であることが好ましい。ポリオレフィン系多層フィルムが長尺シート形状である場合、引裂強度としては、流れ方向(MD)の引裂強度及び垂直方向(TD)の引裂強度があり、MD引裂強度及びTD引裂強度のいずれかで、各層の引裂強度の和が、全層が積層してなるポリオレフィン系多層フィルムの引裂強度未満であることが好ましく、MD引裂強度及びTD引裂強度の両方で、各層の引裂強度の和が、全層が積層してなるポリオレフィン系多層フィルムの引裂強度未満であることがより好ましい。このことは、各層が積層することにより各層が有する引裂強度が相乗的に合算されることを示し、ポリオレフィン系多層フィルム全体の優れた強度が得られる。引裂強度は、後述の実施例に記載の方法で測定することができる。
【0076】
本発明のポリオレフィン系多層フィルムのMD引裂強度は、10gf以上であることが好ましく、12gf以上であることがより好ましく、20gf以下であることが好ましく、18gf以下であることがより好ましい。本発明のポリオレフィン系多層フィルムのTD引裂強度は、20gf以上であることが好ましく、22gf以上であることがより好ましく、30gf以下であることが好ましく、28gf以下であることがより好ましい。
【0077】
<層間剥離強度>
本発明のポリオレフィン系多層フィルムにおいて、第1の表面層(S1)と第1の内部層(M1)との間の層間剥離強度は、0.1gf/15mm巾以上であることが好ましく、0.5gf/15mm巾以上であることがより好ましく、1.5gf/15mm巾以下であることが好ましく、1.0gf/15mm巾以下であることがより好ましい。第2の表面層(S2)と第2の内部層(M2)との間の層間剥離強度は、0.03gf/15mm巾以上であることが好ましく、0.06gf/15mm巾以上であることがより好ましく、1.0gf/15mm巾以下であることが好ましく、0.5gf/15mm巾以下であることがより好ましい。層間剥離強度は、後述の実施例に記載の方法で測定することができる。
【0078】
<酸素透過度>
本発明のポリオレフィン系多層フィルムの酸素透過度は、50,000cc/(m・day・MPa)以上であり、75,000cc/(m・day・MPa)以上であることが好ましく、100,000cc/(m・day・MPa)以上であることがより好ましく、200,000cc/(m・day・MPa)以下であり、175,000cc/(m・day・MPa)以下であることが好ましく、150,000cc/(m・day・MPa)以下であることがより好ましい。酸素透過度は、後述の実施例に記載の方法で測定することができる。
【0079】
(ポリオレフィン系多層フィルムの製造方法)
本発明のポリオレフィン系多層フィルムは、例えば各層の原料又は原料混合物を層状ダイを有する溶融押出機で層状に溶融押出し、急冷固化し、延伸することによって製造することができる。また、溶融押出を、層状環状ダイを有する溶融押出機で行い、チューブ状多層フィルムを得て、チューブ状多層フィルムをチューブの長手方向で切開して、シート状のポリオレフィン系多層フィルムを得てもよい。
【0080】
(包装体)
本発明のポリオレフィン系多層フィルムは、被包装物を密封した包装体に用いることができる。本発明のポリオレフィン系多層フィルムで密封した包装体は、3方以上のシール部を有することが好ましい。3方以上のシール部を有する包装体としては、例えば、図2に示すような、下部センターシール部11及び2箇所の前後シール部12を有するピロー包装機による包装体10が挙げられる。
【0081】
本発明のポリオレフィン系多層フィルムで密封した包装体は、窒素を80~100%充填し、密封して24時間経過後の包装体内部ガス組成が、酸素が5~25%、窒素が75~95%であることが好ましい。
【0082】
本発明のポリオレフィン系多層フィルムで密封した包装体は、二酸化炭素を99%以上充填し、密封して24時間経過後の包装体内部ガス組成が、酸素が18~27%、窒素が73~82%であることが好ましい。
【0083】
(包装体の包装方法)
一実施形態において、本発明のポリオレフィン系多層フィルムは、密封した包装体の24時間経過後の包装体内部ガス組成が、酸素が5~25%、窒素が75~95%であり、ポリオレフィン系多層フィルムが、3方以上のシール部を有する、包装体の包装方法に用いることができる。このような包装体の包装方法は、被包装体を、本発明の記載のポリオレフィン系多層フィルムで密封することと、窒素を80~100%充填することとを含んでもよい。
【0084】
別の実施形態において、本発明のポリオレフィン系多層フィルムは、密封した包装体の24時間経過後の包装体内部ガス組成が、酸素が5~25%、窒素が75~95%であり、ポリオレフィン系多層フィルムが、3方以上のシール部を有する、包装体の包装方法に用いることができる。このような包装体の包装方法は、被包装体を、請求項1に記載のポリオレフィン系多層フィルムで密封することと、窒素を80~100%充填することとを含んでもよい。
【0085】
包装体の包装方法は、例えば、図1に示すようなガスパックピロー用包装機を用いて行うことができる。包装体の包装方法では、例えば、シート状の本発明のポリオレフィン系多層フィルム(例、ロールされている)を穴を開けずに繰り出し、繰り出したフィルムが被包装物(内容物の載ったトレー)を上面から覆うように筒状に包み、フィルムの両端を合掌させて、コンベアの下部にある回転式のロール状ヒートシーラーでフィルムの第2の表面層(S2)同士をヒートシール(下部センターシール)し、次いで筒状の包装体の中にガスを噴射してガス置換しながら、前後ヒートシーラーで前側をシールした後、前後ヒートシーラーに内包されている刃によって前方の包装体単位を切り離し、次いで、後方の包装体単位も同様に前後ヒートシーラーで後側をシールすることにより密封し、刃で切り離された後、シュリンクトンネルでタイトに収縮することで仕上がりの良い包装体が得られる。
【実施例0086】
(多層フィルムの作成)
実施例1~5では、外側から順に第1の表面層(S1)、第1の内部層(M1)、第2の内部層(M2)及び第2の表面層(S2)が積層してなる4層の多層フィルムを作成した。実施例6~10及び比較例1~4では、外側から順に第1の表面層(S1)、第1の内部層(M1)、第3の内部層(M3)、第2の内部層(M2)及び第2の表面層(S2)が積層してなる5層の多層フィルムを作成した。
【0087】
多層フィルムは、次のとおりに作成した。表1~表3に記載の組成を有する各層の原料又は原料混合物を、5種5層環状ダイで溶融押出し、冷水にて急冷固化し、4層又は5層の未延伸積層チューブを得た。未延伸積層チューブを延伸機に誘導し、1対のニップロール間で再加熱した後、未延伸積層チューブ内に空気を封入し縦横各3倍に延伸し、延伸積層チューブをチューブの長手方向で切開して、合計厚み12μm、幅400mmのシート状多層フィルムを得た。
【0088】
(包装体の作成)
PSP製トレー(エフピコ社製「FLBーA150-30」、サイズ193×147×30mm、質量4g)に100gのゴム板を載せ、上記で作成した400mm幅の多層フィルムで、ピロー包装機(大森機械製ガスパック包装機「DW2003G」)を用いて包装した。包装速度は60パック/分、包装時のセンターシール温度は140℃、トップシール温度は125℃とした。包装時に包装体を以下のように窒素充填又は二酸化炭素充填した。ガス充填された包装体を以下のように評価した。
【0089】
(層間剥離強度)
得られた熱収縮性積層フィルムの層(A)と層(B)との層間剥離強度は、(株)島津製作所製のオートグラフAG-IS MO形シリーズで、23℃、50%RH環境下、15mm幅にスリットしたサンプルを用いて、サンプル長50mm、チャック間20mm、引張速度200mm/minの条件でT型剥離試験を行い、測定した。
【0090】
(引裂強度)
得られた熱収縮性積層フィルムの引裂強度は、株式会社東洋精機製作所製の軽荷重引裂試験機No.193で、23℃、50%RH環境下、50mm幅、63.5mm長にスリットしたサンプルを用いて、50mmの辺に長さ12.7mmで切り込みを入れた後、測定レンジ980mNで引裂試験を行い、測定した。
【0091】
(酸素透過度)
MOCON社製の酸素透過分析装置(OX-TRAN(登録商標2/20MH))を用いて、酸素の条件を65%RH、測定温度を23℃として酸素透過度を測定し、測定開始6時間経過後の酸素透過度の値により酸素バリア性の評価を行った。なお、酸素透過度の測定値単位は「cc/(m・day・MPa)」である。
【0092】
(窒素充填)
窒素ガスを充填しながら、包装機に付帯されている押さえ装置にて、包装体内部のガス量を調整し、トレー縁より5mmの深さでフィルム上面中央部が凹むようにした。協和電機製シュリンクトンネル「DS-1300」で、トンネル温度120℃でフィルムを収縮させて、タイトな窒素充填包装体を得た。
【0093】
(二酸化炭素充填)
長さ200mm、幅150mm、厚み4mmのPSP発泡シートに100gのゴム板を載せ、二酸化炭素を充填しながら包装機に付帯されている押さえ装置にて、包装体内部のガス量を減少させて、無収縮の二酸化炭素充填包装体を得た。
【0094】
(多層フィルムのガス交換性評価)
<窒素充填包装体でのガス交換性評価>
24時間後、トレー縁より膨らんだものをOK、凹んだものをNGとした。
<二酸化炭素充填包装体でのガス交換性評価>
24時間後、ゴム板の5面にフィルムが密着し、スキンパック状になったものをOK、5面のうち、ゴム板の横面にフィルムが密着していないものをNGとした。
【0095】
(ホットタック強度)
THELLER社製のホットタックテスターで、23℃、50%RH環境下、25mm幅にスリットしたサンプルを用いて、サンプル長300mm、チャック間200mm、シール温度120℃あるいは130℃の条件でシール直後にシール強度を測定した。
【0096】
(包装状態の評価(窒素充填時))
上記と同じ方法で作成した窒素充填包装体について、包装状態を以下のように評価した。
<シール部の開口>
包装体前後のトップシール部が密封されたものをOK、開口して、ガスが密封できないものをNGとした。
<シール線の形状>
シール線が密封され、かつ白化していないものをOK、過加熱となり、表面荒れやシールバーに融着して樹脂が糸状になったものをNGとした。
<フィルムの伝播切れ>
包装機供給部にて、フィルムが裂けずに製袋できるものをOK、フィルムが進行方向に裂けて、製袋できないものをNGとした。
【0097】
【表1】
【0098】
【表2】
【0099】
【表3】
【0100】
表1~表3に記載の樹脂成分及び添加剤(防曇剤)は、以下のとおりである。
<樹脂成分>
PP1:プロピレン系共重合体(MFR3.5g/10分(230℃)、融点161℃)
PP2:プロピレン系共重合体(MFR5.3g/10分(230℃)、融点135℃)
POエラストマー1:エチレン―プロピレン共重合体(MI8g/10分(230℃)、融点85℃)
VLDPE1:超低密度ポリエチレン(MFR1.2g/10分(190℃)、融点80-120℃)
VLDPE2:超低密度ポリエチレン(MFR3.8g/10分(190℃)、融点80-120℃)
EVAC1:エチレン-酢酸ビニル共重合体(MFR1.0g/10分(190℃)、融点90℃、酢酸ビニル含有量15%)
EVAC2:エチレン-酢酸ビニル共重合体(MFR1.4g/10分(190℃)、融点105℃、酢酸ビニル含有量5%)
EVOH:エチレン-ビニルアルコール共重合体ケン化物(MI4.0g/10分(210℃)、融点160℃、エチレン含有量38mol%)
LLDPE1:線状低密度ポリエチレン(MFR2.0g/10分(190℃)、融点110―140℃
LLDPE2:線状低密度ポリエチレン(MFR2.3g/10分(190℃)、融点116℃)
<添加剤(防曇剤)>
AF1:ジグリセリンオレート/グリセリンモノオレート
【0101】
表2中「工程内リサイクル」とは、本フィルムの製造工程で出たトリムや破材をペレット状に再形成したものをいう。
【0102】
表1~表3から、本発明のポリオレフィン系多層フィルムが気体透過性及び引裂強度に優れていることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明のポリオレフィン系多層フィルムによれば、高速密封包装が可能であり、引裂強度が高く、開封時にはフィルムが細かくなりづらいため、開封性に優れ、食品への異物混入が防止でき、また気体透過性に優れているため、目的に応じて種々のガスを封入して得られる包装体に用いることができる包装用フィルムを提供することができる。
【符号の説明】
【0104】
1 多層フィルム
2 被包装物
10 包装体
10’ シュリンク前包装体
11 下部センターシール部
12 前後シール部
100 ピロー包装機
101 下部センターシーラー
102 ガス置換用ノズル
103 前後シーラー
104 シュリンクトンネル
図1
図2