(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111772
(43)【公開日】2024-08-19
(54)【発明の名称】高力ボルト摩擦接合構造
(51)【国際特許分類】
E04B 1/61 20060101AFI20240809BHJP
C23C 28/00 20060101ALI20240809BHJP
F16B 5/02 20060101ALI20240809BHJP
【FI】
E04B1/61 502P
C23C28/00 C
F16B5/02 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023016477
(22)【出願日】2023-02-06
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】後藤 天志郎
(72)【発明者】
【氏名】莊司 浩雅
(72)【発明者】
【氏名】清水 真
【テーマコード(参考)】
2E125
3J001
4K044
【Fターム(参考)】
2E125AA51
2E125AB08
2E125AC14
2E125AE13
2E125AG12
2E125AG43
2E125BB02
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2E125CA06
3J001FA02
3J001GA02
3J001GB01
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3J001JA10
3J001KA24
3J001KB04
4K044AA02
4K044AB02
4K044BA10
4K044BA12
4K044BB03
4K044BC01
4K044CA11
4K044CA16
(57)【要約】
【課題】すべり係数を向上できる高力ボルト摩擦接合構造を提供する。
【解決手段】高力ボルト摩擦接合構造FSは、表面にめっき部を有し、ボルト孔が形成された複数のめっき鋼材(第1めっき鋼材20,第2めっき鋼材26)を、高力ボルト34、ナット36、及び座金によって摩擦接合させる高力ボルト接合構造であって、めっき鋼材が重ね合わせられた領域において、ボルト孔の径方向に沿ったボルト孔縁からの離隔距離が{(D-d)/2+t}mm以上であり(但し、D:座金の径[mm],d:ボルト孔の径[mm],t:座金と接する側のめっき鋼材の板厚[mm])、かつ、めっき鋼材の互いに対向する表面の間の隙間が10μm以上、600μm以下である範囲内のめっき部の上に設けられ、めっき鋼材のめっき部を構成する金属に由来する成分と酸素とを含む化合物を有する摩擦補助層を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面にめっき部を有し、ボルト孔が形成された複数のめっき鋼材を、高力ボルト、ナット、及び座金によって摩擦接合させる高力ボルト接合構造であって、
前記めっき鋼材が重ね合わせられた領域において、前記ボルト孔の径方向に沿ったボルト孔縁からの離隔距離が{(D-d)/2+t}以上であり、かつ、前記めっき鋼材の互いに対向する表面の間の隙間が10μm以上、600μm以下である範囲内の前記めっき部の上に設けられ、前記めっき鋼材の前記めっき部を構成する金属に由来する成分と酸素とを含む化合物を有する摩擦補助層を備える、
高力ボルト摩擦接合構造。
但し、D:座金の径[mm],d:ボルト孔の径[mm],t:座金と接する側のめっき鋼材の板厚[mm]
【請求項2】
前記摩擦補助層が有する前記化合物と前記めっき部を構成する化合物とは、互いに異なる、
請求項1に記載の高力ボルト摩擦接合構造。
【請求項3】
複数の前記めっき鋼材のうち少なくとも1つの前記めっき鋼材の端面の一部は、鉄を含む表面を有する非めっき部であり、
前記摩擦補助層が有する前記化合物は、前記めっき部を構成する金属に由来する成分と前記非めっき部の鉄との間で生じたガルバニック腐食に起因する鉄酸化物を含む、
請求項1又は2に記載の高力ボルト摩擦接合構造。
【請求項4】
前記めっき部は、Zn-Al-Mg系の成分を含む、
請求項1又は2に記載の高力ボルト摩擦接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、高力ボルト摩擦接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1のように、めっき処理が施されボルト孔を有する複数のめっき鋼材を、高力ボルト、ナット、及び座金によって摩擦接合させる高力ボルト摩擦接合構造が知られている。特許文献1では、めっき層のビッカース硬さを母材のめっき鋼材よりも大きくすることによって、すべり係数を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、めっき鋼材が重ね合わせられた領域では、対向するめっき鋼材の間に隙間が形成される。また、形成された隙間では、めっき鋼材の表面が互いに接触しない状態が生じる。すなわち、対向するめっき鋼材の間の隙間では、高力ボルトの張力による接触圧が得られない。しかし、特許文献1では、めっき鋼材の間の隙間を考慮した、すべり係数を向上させる技術は検討されていない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、上記に鑑みなされたものであって、すべり係数を向上できる高力ボルト摩擦接合構造を提供する。
【0006】
本開示に係る高力ボルト摩擦接合構造は、表面にめっき部を有し、ボルト孔が形成された複数のめっき鋼材を、高力ボルト、ナット、及び座金によって摩擦接合させる高力ボルト接合構造であって、めっき鋼材が重ね合わせられた領域において、ボルト孔の径方向に沿ったボルト孔縁からの離隔距離が{(D-d)/2+t}mm以上であり、かつ、めっき鋼材の互いに対向する表面の間の隙間が10μm以上、600μm以下である範囲内のめっき部の上に設けられ、めっき鋼材のめっき部を構成する金属に由来する成分と酸素とを含む化合物を有する摩擦補助層を備える。
(但し、D:座金の径[mm],d:ボルト孔の径[mm],t:座金と接する側のめっき鋼材の板厚[mm])
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、すべり係数を向上できる高力ボルト摩擦接合構造を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1(A)は、本開示の実施形態に係る高力ボルト摩擦接合構造の平面図であり、
図1(B)は、本開示の実施形態に係る高力ボルト摩擦接合構造の側面図である。
【
図2】本実施形態に係る高力ボルト摩擦接合構造の重ね合わせ部に形成される隙間を説明する部分拡大図である。
【
図3】本実施形態に係る離隔距離の設定方法を一部を切断して説明する図である。
【
図4】
図4(A)は、本実施形態に係る摩擦補助層としての鉄酸化物が形成される前の接合部の状態を説明する斜視図であり、
図4(B)は、本実施形態に係る摩擦補助層としての鉄酸化物が形成された後の接合部の状態を説明する斜視図である。
【
図5】
図5(A)は、実験用の試験体の仕様を説明する平面図であり、
図5(B)は、実験用の試験体の仕様を説明する側面図である。
【
図6】
図6(A)は、複合サイクル腐食試験開始前の接合面を表す写真であり、
図6(B)は、複合サイクル腐食試験の33サイクル後の時点における試験体の接合面のガルバニック腐食の進行状態を表す写真であり、
図6(C)は、複合サイクル腐食試験の48サイクル後の時点における試験体の接合面のガルバニック腐食の進行状態を表す写真である。
【
図7】複合サイクル腐食試験開始前である0サイクルの時点における、4つの断面位置でのそれぞれのミクロ観察の結果を説明する写真である。
【
図8】複合サイクル腐食試験の48サイクル後の時点における、4つの断面位置でのそれぞれのミクロ観察の結果を説明する写真である。
【
図9】3つの試験体のそれぞれにおける、すべり係数の測定値と各サイクル毎の平均値との算出結果を説明するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一の部分及び類似の部分には、同一の符号又は類似の符号を付している。ただし、図面における厚みと平面寸法との関係、各装置や各部材の厚みの比率等は現実のものとは異なる。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判定すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
【0010】
<高力ボルト摩擦接合構造>
まず、本実施形態に係る高力ボルト摩擦接合構造FSを
図1~
図3を参照して説明する。
図1(A)及び
図1(B)に示すように、本実施形態に係る高力ボルト摩擦接合構造FSでは、複数のめっき鋼材が、高力ボルト34、ナット36、及び座金38によって摩擦接合される。また、高力ボルト摩擦接合構造FSは、摩擦補助層40を備える。
【0011】
(めっき鋼材)
めっき鋼材は、表面にめっき部と非めっき部とを有する。めっき鋼材には、
図2及び
図3中のボルト孔24、ボルト孔28、ボルト孔32に例示されるように、高力ボルト34の軸部が貫通するボルト孔が形成される。
【0012】
本実施形態では、高力ボルト摩擦接合構造FSは、めっき鋼材として、一対の第1めっき鋼材20と、一対の第1めっき鋼材20を挟む第2めっき鋼材26及び第3めっき鋼材30からなる一組のめっき鋼材と、高力ボルト34と、を有する。なお、本実施形態のめっき鋼材の個数は4つであるが、本開示ではこれに限定されず、めっき鋼材の個数は2つ以上、任意である。以下、本実施形態のそれぞれのめっき鋼材について具体的に説明する。
【0013】
(第1めっき鋼材)
第1めっき鋼材20の板状部22は、
図1(A)及び
図1(B)に示すように、長手方向Lに沿って延びる。また、第1めっき鋼材20の板状部22は、
図1(A)中で長手方向Lに直交する幅方向Wに沿って一定の幅を有する。また、第1めっき鋼材20の板状部22は、
図1(B)に示すように、上下方向に厚み方向Tに沿って一定の厚みを有する。
【0014】
第1めっき鋼材20では、複数のボルト孔は、板状部22の長手方向Lの端部22E側であって、第2めっき鋼材26及び第3めっき鋼材30と厚み方向Tで重なる部分にそれぞれ形成される。端部22Eは、
図1(A)及び
図1(B)中の左右方向の中央に位置する。
【0015】
なお、本実施形態では、
図1(A)中の左側の第1めっき鋼材20では板状部22の第2めっき鋼材26及び第3めっき鋼材30と重なる部分に2つのボルト孔がされる。また、
図1(A)中の右側の第1めっき鋼材20では板状部22の第2めっき鋼材26及び第3めっき鋼材30と重なる部分に1つのボルト孔がされる。なお、本開示では、ボルト孔の個数は、1つ以上、任意である。
【0016】
また、一対の第1めっき鋼材20は、
図1(A)及び
図1(B)に示されるように、互いの板状部22の端部22E同士が対向配置された状態で、第2めっき鋼材26及び第3めっき鋼材30と、高力ボルト34によって接続される。なお、本実施形態で用いられる高力ボルト34は、高力六角ボルトであるが、本開示の高力ボルトの形状は、六角ボルトに限定されず、例えばトルシア形等であってもよい。また、本開示では、ナットや座金の形状についても、それぞれ適宜変更できる。
【0017】
また、第1めっき鋼材20は、母材と、めっき部としてのめっき層とを有する。本実施形態の母材は、厚み6mm未満の鋼板、いわゆる薄板である。なお、本開示では、母材は薄板に限定されず、例えば6mm以上の厚みを有する鋼板であってもよい。
【0018】
めっき層は、例えば、1~10質量%のマグネシウム(Mg)、2~19質量%のアルミニウム(Al)、及び、2質量%以下のシリコン(Si)を含む。また、めっき層の組成としては、Mg及びAlの合計量が30質量%以下であると共に、残部が亜鉛(Zn)及び不可避的不純物からなる。なお、本実施形態では、めっき層にSiが含められているが、本開示ではこの構成に限定されない。例えば、めっき層にSiが含められなくてもよい。
【0019】
Mg及びAlは、母材の耐食性を向上させるための成分である。また、Siは、母材へのめっき層の密着性を高めるための成分である。例えば、Mgは、3質量%程度、Alは、11質量%程度、Siは、0.2質量%程度、及び、残部は、Znである。本実施形態の第1めっき鋼材20としては、溶融Zn-Al-Mg-Si合金のめっき鋼材が用いられる。なお、本開示では、めっきの種類はこれに限定されず、適宜変更できる。
【0020】
めっき層は、所定の付着量で母材の表面に、例えば、浸漬法等のめっき処理が施されることによって、母材の表面に所定の厚みを有するように形成される。ここで、例えば、51~383g/m2の付着量で、第1めっき鋼材20に溶融Zn-Al-Mg-Si合金のめっき処理が施されることで、めっき層が母材の表面に設けられる、結果、母材とめっき層とが重なった状態が形成される。なお、本実施形態では、母材の表面全体にめっき層が形成される場合が例示されたが、本開示は、この構成に限定されず、例えば、母材の表面の一部にめっき層が形成されてもよい。
【0021】
(第2めっき鋼材)
第2めっき鋼材26は、
図1(A)及び
図1(B)に示されるように、第1めっき鋼材20と同様のめっき鋼材である。本実施形態では、第2めっき鋼材26が第1めっき鋼材20の板状部22と厚み方向Tで重なる部分に、3つのボルト孔が形成される。第2めっき鋼材26は、
図1(B)中の板状部22の下側の板面に重なった状態で、高力ボルト34によって板状部22に接合される。また、第2めっき鋼材26は、母材とめっき層とを有する。第2めっき鋼材26の母材とめっき層とは、第1めっき鋼材20の母材とめっき層と同様であるため、重複説明を省略する。
【0022】
(第3めっき鋼材)
第3めっき鋼材30は、
図1(A)及び
図1(B)に示すように、第1めっき鋼材20と同様のめっき鋼材である。また、本実施形態では、第3めっき鋼材30の形状は、第2めっき鋼材26と同一である。なお、本開示では、第3めっき鋼材の形状は、第2めっき鋼材と異なってもよい。
【0023】
本実施形態では、第3めっき鋼材30が第1めっき鋼材20の板状部22と厚み方向Tで重なる部分に、3つのボルト孔が形成される。第3めっき鋼材30は、
図1(B)中の板状部22の上側の板面に重なった状態で、高力ボルト34によって板状部22に接合される。また、第3めっき鋼材30は、母材とめっき層とを有する。第3めっき鋼材30の母材とめっき層とは、第1めっき鋼材20の母材とめっき層と同様であるため、重複説明を省略する。
【0024】
本実施形態のめっき部であるめっき層は、いずれもZn-Al-Mg系の成分を含む。なお、本開示では、複数のめっき層のうちのいずれかがZn-Al-Mg系の成分を含んでもよい。また、本開示では、めっき部がZn-Al-Mg系の成分を含むことは、必須ではない。
【0025】
(高力ボルト、ナット、座金)
高力ボルト34は、第1めっき鋼材20のボルト孔24、第2めっき鋼材26のボルト孔28、及び第3めっき鋼材30のボルト孔32を貫通する。高力ボルト34の軸部の先端は、ナット36にねじ込まれる。なお、高力ボルト34の頭部と第2めっき鋼材26との間、及び、ナット36と第3めっき鋼材30との間にはそれぞれ、座金38が配置される。
【0026】
(りん酸塩処理)
第1めっき鋼材20の板状部22と、第2めっき鋼材26及び第3めっき鋼材30とのそれぞれの接合面、換言すると、重ね合わせ面のそれぞれには、りん酸塩処理が施されている。本実施形態では、第1めっき鋼材20の板状部22と、第2めっき鋼材26及び第3めっき鋼材30とを摩擦接合した際に、第1めっき鋼材20の板状部22と第2めっき鋼材26とが重なる部分における、第1めっき鋼材20の板面を重ね合わせ面22Aと称する。また、第1めっき鋼材20の板状部22と第2めっき鋼材26とが重なる部分における、第2めっき鋼材26の板面を重ね合わせ面26Aと称する。
【0027】
また、第1めっき鋼材20の板状部22と第3めっき鋼材30とが重なる部分における、第1めっき鋼材20の板状部22の板面を重ね合わせ面22Bと称する。また、第1めっき鋼材20の板状部22と第3めっき鋼材30とが重なる部分における、第3めっき鋼材30の板面を重ね合わせ面30Aと称する。
【0028】
第1めっき鋼材20の重ね合わせ面22Aには、りん酸塩処理によってりん酸亜鉛被膜が形成されると共に、板状部22における重ね合わせ面22Bには、りん酸塩処理によってりん酸亜鉛被膜が形成される。具体的には、
図1(B)中に示す板状部22の厚み方向Tの一方側のめっき層上と他方側のめっき層上とのそれぞれに、りん酸亜鉛被膜が形成される。
【0029】
本実施形態のりん酸亜鉛被膜は、りん酸塩処理によって、重ね合わせ面の上側に形成することができる。摩擦接合構造の接合面におけるりん酸亜鉛被膜は、鋼材に作用するすべりによって、せん断される。換言すると、摩擦面において、りん酸亜鉛被膜の凝集破壊が生じる。摩擦接合部における本来のすべり耐力の大きさは、りん酸亜鉛被膜の凝集破壊によって決定される。
【0030】
第1めっき鋼材20へのりん酸塩処理には、例えば、通常の結晶性りん酸亜鉛被膜を形成させることのできるりん酸塩種が用いられる。なお、結晶性りん酸亜鉛被膜には、りん酸ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、Mg等の金属塩や金属等を混在させてもよい。
【0031】
りん酸塩処理としては、反応型処理、塗布型処理又は電解型処理等の処理方法が挙げられる。例えば、反応型のりん酸塩処理は、第1めっき鋼材20に所定のめっき処理を施した後、表面調整等のりん酸塩前処理、りん酸塩処理、水洗及び乾燥の各工程を経て処理される。りん酸塩前処理では、例えば、りん酸亜鉛水溶液やTiコロイド溶液が使用される。りん酸塩前処理は、りん酸塩結晶の析出サイトとなる作用を有して、緻密な被膜を形成させるために実施される。
【0032】
第2めっき鋼材26の重ね合わせ面26Aのめっき層上と、第3めっき鋼材30の重ね合わせ面30Aのめっき層上とにも、第1めっき鋼材20と同様に、りん酸塩処理が施されることによって、りん酸亜鉛被膜が形成され得る。
【0033】
(非めっき部)
本実施形態では、めっき鋼材の表面に、非めっき部が形成される。非めっき部の上には、りん酸亜鉛被膜は形成されない。このため、非めっき部の表面には、鉄(Fe)を含む鋼板の素地が露出する。具体的には本実施形態では、非めっき部は、矩形状の第2めっき鋼材26と矩形状の第3めっき鋼材30とのそれぞれにおいて側面の4辺のすべての端面に配置される。
【0034】
非めっき部としては、例えば、めっき部が浸漬法によって形成される場合、浸漬後のめっき鋼材を切断することによって形成される切断端面を、非めっき部として使用できる。
【0035】
なお、本開示では、非めっき部は、矩形状のめっき鋼材の側面の4辺のうちの1つ以上のいずれかの端面に配置されてもよいし、或いは、板面に配置されてもよい。また、非めっき部は、端面と板面との両方に配置されてもよい。すなわち、本開示では、複数のめっき鋼材のうち少なくとも1つのめっき鋼材の端面の一部は、Feを含む表面を有する非めっき部である。
【0036】
(摩擦接合層)
摩擦補助層40は、
図2に示すように、第1めっき鋼材20と第2めっき鋼材26との隙間に配置される。また、摩擦補助層40は、第1めっき鋼材20と第3めっき鋼材30との隙間に配置される。めっき鋼材間の隙間は、高力ボルトの締付けによるめっき鋼材の変形によって生じる。なお、
図2中では、長手方向Lの一端側に隙間が形成された場合が例示されているが、隙間は、長手方向Lの他端側を含め両側に形成され得る。
【0037】
摩擦補助層40は、めっき鋼材のめっき部を構成する金属に由来する成分と酸素とを含む化合物を有する。摩擦補助層40が有する化合物は、めっき部を構成する金属に由来する成分と非めっき部のFeとの間で生じたガルバニック腐食に起因する鉄酸化物を含む。すなわち、摩擦補助層40が有する化合物とめっき部を構成する化合物とは、互いに異なる。
【0038】
鉄酸化物は、端面の鉄素地のFeとめっき層のZnとの化合物の形成を促進するガルバニック腐食によって形成できる。具体的には例えば、鉄素地とめっき層との両方に接触するように水分を隙間に配置した状態を、酸素を含む大気中に一定時間保持すればよい。
【0039】
ここで、例えば浸漬法のように、めっき鋼材の表面全体にめっき処理が施される高力ボルト摩擦接合構造の場合、本実施形態のようなガルバニック腐食は生じない。しかし、浸漬法によってめっき処理が施される高力ボルト摩擦接合構造であっても、例えば、めっき処理後のめっき鋼材を切断することによって形成された切断端面を、非めっき部の端面として採用できる。端面に鉄素地が露出することによって、本実施形態のようなガルバニック腐食が生じ得る。なお、めっき鋼材の表面に鉄素地を露出させる方法としては、切断に限定されず、例えば、孔開け、研削等の他の加工方法が用いられてもよい。
【0040】
なお、本実施形態では、摩擦補助層40の化合物として、ガルバニック腐食によって形成された鉄酸化物が例示されたが、本開示では、摩擦接合層の化合物は、これに限定されない。摩擦接合層の化合物としては、例えば、Znとリン(P)との酸化物であってもよい。本開示では、例えば、ZnとPとの酸化物を隙間に充填することによって、摩擦接合層を形成できる。
【0041】
なお、本開示では、「摩擦補助層」は、断面視で、めっき層の上に一定の厚みを有する一連の領域が形成されることは必須ではない。例えば、摩擦補助層は、平面視で、1つ以上の島状であってもよい。本開示では、めっき部を構成する金属に由来する成分と酸素とを含む化合物を有する限り、摩擦補助層は、任意の形状で形成され得る。
【0042】
また、本開示では、体積膨張率が比較的大きな化合物を、摩擦接合層の化合物として採用できる。隙間に配置された化合物の体積膨張が大きくなる程、摩擦接合層全体の体積を大きくでき、結果、隙間の充填性が向上する。このため、摩擦接合層として体積膨張率が比較的小さな化合物が採用される場合に比べ、化合物の体積膨張時における高力ボルト摩擦接合構造のすべり係数をより向上できる。
【0043】
(隙間)
隙間が10μm未満の位置においては、摩擦補助層の形成が困難である。このため、摩擦補助層40が設けられる範囲に関する隙間の下限値は、10μmに設定される。すなわち、摩擦補助層40は、隙間が10μm以上の位置に配置される。
【0044】
また、隙間が、600μmを超えると、摩擦補助層40同士が接触しない状態が生じ得る。結果、摩擦補助層40同士の接触によって得られるすべり係数向上効果が、小さくなる。より具体的には、1つの摩擦補助層40の層厚の最大値は、300μm程度であることが分かった。このため、摩擦補助層40が設けられる範囲に関する隙間の上限値は、摩擦補助層40同士の接触によるすべり係数向上効果を得易い、隙間が600μm以下に設定される。すなわち、摩擦補助層40は、隙間が600μm以下の位置に配置される。
【0045】
(離隔距離)
次に、摩擦補助層40が設けられる範囲に関する、ボルト孔の径方向に沿ったボルト孔縁からの離隔距離Xの設定方法を、
図2及び
図3を参照しつつ説明する。
図2及び
図3中には、高力ボルト周辺において接触圧が発生する周辺領域Aが例示されている。
【0046】
具体的には、座金径をD[mm]、ボルト孔径をd[mm]、座金38と接する側のめっき鋼材の板厚をt[mm]と設定する。そして、本開示では、ボルト張力が座金38の縁端から第1めっき鋼材に向かって45度の角度が形成される方向に沿って伝達したと仮定された状態で、周辺領域Aは、ボルト孔縁から、以下の式1によって算出される値[mm]よりもボルト孔側の領域である。
式1:(D-d)/2+t [mm]
【0047】
このため、離隔距離Xが{(D-d)/2+t}mm未満の位置では、めっき鋼材の表面が互いに接触し、結果、高力ボルトの張力による接触圧を得ることができるので、高力ボルト摩擦接合構造が、本来の摩擦抵抗力を発揮する。換言すると、摩擦補助層40のボルト孔縁からの離隔距離Xが{(D-d)/2+t}mm以上の離隔領域Bでは、めっき鋼材の表面が互いに接触し難く、結果、隙間が形成され易い。このため、本開示では、摩擦補助層40のボルト孔縁からの離隔距離Xは、隙間の形成に起因して高力ボルトの張力による接触圧が得難くなる、{(D-d)/2+t}mm以上の離隔領域Bに設定される。
【0048】
なお、本実施形態では、
図3を用いた上記の説明では、座金38の縁端から第1めっき鋼材20に向かって張力が伝達する角度は45度であるように仮定されたが、本開示では、角度はこれに限定されない。本開示では、角度は、高力ボルト、座金、めっき鋼材及びボルト孔等の仕様に応じて適宜変更できる。また、本開示では、{(D-d)/2+t}mm以上の位置が周辺領域Aに含まれることによって、離隔領域Bが{(D-d)/2+t}mmを超える位置であるように設定されることも排除されない。
【0049】
すなわち、上記の隙間と離隔距離に関する考察にもとづき、本実施形態では、めっき部の上に設けられる摩擦補助層40の配置範囲が設定される。摩擦補助層40は、めっき鋼材が重ね合わせられた領域において、ボルト孔縁からの離隔距離が{(D-d)/2+t}mm以上であり、かつ、めっき鋼材の互いに対向する表面の間の隙間が10μm以上、600μm以下である範囲内のめっき部の上に設けられる。
【0050】
なお、本明細書では「めっき鋼材の互いに対向する表面」は、「めっき金属の表面」を意味する。換言すると例えば、めっき金属の表面上に形成されたりん酸塩皮膜等の被膜の表面は、「めっき鋼材の互いに対向する表面」に含まれない。本開示の隙間は、互いに対向する「めっき金属の表面」の間に設定される。
【0051】
(摩擦補助層の形成過程)
図4(A)中では、切断端面が矩形状のめっき鋼材26とめっき鋼材30とのそれぞれの4辺に配置された場合が例示されている。ガルバニック腐食は、まず、切断端面の鉄素地と板面の表面のめっき層との境界の位置で発生する。そして、毛細管現象によって、水分が接合部の隙間の内部に進入する。隙間の内部においてもガルバニック腐食の発生及び進行が生じることによって、摩擦補助層40としての鉄酸化物が形成される。
【0052】
図4(B)中には、切断端面の鉄素地と板面の表面のめっき層との境界の位置、及び、ボルト孔24の縁から数mm程度離れた位置まで摩擦補助層40が形成された状態が、点(ドット)状のパターンで例示されている。摩擦補助層40のボルト孔24の縁からの離隔距離は、例えば10mm程度である。
【実施例0053】
次に、本実施形態に係る実施例を
図5~
図9を参照しつつ説明する。実施例では、接合部の隙間に摩擦補助層40が形成された3つの高力ボルト摩擦接合構造の試験体が製造された。また、3つの試験体に対して、複合サイクル腐食試験(Cyclic Corrosion Test,CCT)が実施された。
【0054】
また、製造された試験体を4つの所定の位置で切断することによって摩擦補助層40の形成状態を4つの断面位置で微視的(ミクロ)に観察した。また、製造された試験体のすべり係数を測定した。
【0055】
(試験体)
図5(A)及び
図5(B)に示すように、試験体には、
図1(A)及び
図1(B)中に例示された高力ボルト摩擦接合構造の場合と同様に、矩形状のめっき鋼材が用いられた。なお、
図5(A)及び
図5(B)中に表示された数値の値は[mm]である。また、試験体では、座金径Dは、32mmであった。また、それぞれのめっき鋼材のボルト孔径dは、18mmであった。また、座金と接する側の第2めっき鋼材26の板厚tは、2.3mmであった。また、使用された高力ボルトは、F8T-M16であった。
【0056】
また、試験体では、
図1(B)に示すように、上下方向の中央で突き合わされた第1めっき鋼材20の板面の表面と側面の表面とには、亜鉛めっき処理及びりん酸塩処理が施された。
図1(B)中で第1めっき鋼材20を上下から挟む第2めっき鋼材26の板面の表面には、亜鉛めっき処理及びりん酸塩処理が施された。
【0057】
めっきとして、Zn、Al、Mg合金を含む3元系めっきが使用された。具体的には、試験体のめっき鋼板として、高耐食性亜鉛めっき鋼板(商品名「スーパーダイマ」)が採用された。また、鉄素地が露出した切断端面は、第2めっき鋼材26の4辺の側面の端面のすべてに配置された。
【0058】
また、
図5(A)中には、ミクロ観察が行われる4つの断面位置が例示されている。
図5(A)中のA-A部は、めっき鋼材同士の重ね合わせが形成されない部分の断面位置である。また、B-B部は、第2めっき鋼材26切断端面の付近の断面位置である。また、C-C部は、第1めっき鋼材20の端面と第2めっき鋼材26の端面との付近の断面位置である。また、D-D部は、ボルト孔の付近の断面位置である。実施例では、上記の4つの断面位置のそれぞれにおける表層の断面のミクロ観察を、高力ボルトが締結された状態で実施した。
【0059】
(複合サイクル腐食試験)
まず、複合サイクル腐食試験について説明する。複合サイクル腐食試験は、「JASO M609-91の中性塩水噴霧サイクル試験」に沿って行われた。具体的には、1サイクルは、以下の試験条件で実施された。
【0060】
(試験条件)
塩水(NaCl)噴霧処理 2時間、(塩水温度:35±1℃、塩水濃度:5%)
乾燥処理 4時間(乾燥温度:60±1℃、RH:20~30%)
(RH:相対湿度,Relative Humidity)
湿潤処理 2時間(湿潤温度:50±1℃、RH:95%以上)
【0061】
図6(A)~
図6(C)中では、高力ボルト摩擦接合構造から高力ボルトが取り外された後における、第1めっき鋼材20の重ね合わせ面との表面と第2めっき鋼材26の重ね合わせ面との表面とが、正面に表れるように例示されている。試験の結果、
図6(B)及び
図6(C)に示すように、複合サイクル腐食試験の33サイクル後と及び48サイクル後とでは、第1めっき鋼材20の表面と第2めっき鋼材26の表面とのそれぞれに摩擦補助層40が形成されたことが確認できた。また、複合サイクル腐食試験によってガルバニック腐食が促進されたことが確認できた。
【0062】
なお、図示を省略するが、第1めっき鋼材20と接合する第3めっき鋼材の表面にも、複合サイクル腐食試験後に摩擦補助層が同様に形成されると共に、複合サイクル腐食試験によってガルバニック腐食が促進されたことが確認できた。
【0063】
(ミクロ観察)
次に、4つの断面位置におけるミクロ観察の結果について説明する。
図7に示すように、B-B部、C-C部、及びD-D部には、隙間が形成された。なお、D-D部の下段の写真には、上段における端面からの一連の断面領域のうちの一部が拡大されている。
【0064】
また、試験体では、周辺領域の上限、すなわち、離隔距離に関し、D=32mm、d=18mm、t=2.3mmであるため、離隔距離は、上記の式1より、約9.3mmと算出された。この点、
図7中のD-D部に示すように、複合サイクル腐食試験(CCT)前の状態で、ボルト孔付近では、ボルト孔縁から9.3mmまでは、重なり合うめっき鋼材の表面同士が接触した。また、ボルト孔縁から9.3mm以上離れた場所では、重なり合うめっき鋼材の表面同士の間に10μm程度の隙間が生じた。
【0065】
また、
図8に示すように、48サイクル後は、摩擦補助層としての腐食物が形成されたことが確認された。特に、
図8中のC-C部及びD-D部に示すように、離隔距離以上の位置においては、隙間が摩擦補助層によって充填された状態が形成された。また、摩擦補助層は、ボルト孔縁から9.3mm以上離れた位置を含め、ボルト孔縁から数mm程度離れた位置まで形成された。また、形成された摩擦補助層の層厚の最大値は、片側のめっき鋼材において、300μm程度であった。
【0066】
また、
図9に示すように、3つの試験体のそれぞれのすべり係数を測定すると共に、各サイクル毎の平均値を算出した。0サイクルの場合のすべり係数の平均値は、0.52である一方、33サイクルの場合のすべり係数の平均値は、0.57であった。また、48サイクルの場合のすべり係数の平均値は、0.56であった。このため、33サイクル後に摩擦補助層40が形成される場合と、48サイクル後に摩擦補助層40が形成される場合とのいずれにおいても、摩擦補助層40が形成されない0サイクルの場合よりも、すべり係数が向上したことを確認できた。
【0067】
(作用効果)
本実施形態では、めっき鋼材が重ね合わせられた領域における、特定の範囲内のめっき部の上に、めっき鋼材のめっき部を構成する金属に由来する成分と酸素とを含む化合物を有する摩擦補助層40が設けられる。特定の範囲は、ボルト孔の径方向に沿ったボルト孔縁からの離隔距離が、{(D-d)/2+t}mm以上であり、かつ、めっき鋼材の互いに対向する表面の間の隙間が、10μm以上、600μm以下に設定される。
【0068】
本実施形態では、ボルト孔縁から特定の離隔距離を有し、かつ、特定の隙間が形成される範囲内に摩擦補助層40が設けられるため、高力ボルト摩擦接合構造が発揮する本来の摩擦抵抗力に加え、摩擦補助層40による摩擦抵抗力を更に追加できる。すなわち、接合部において、本来、摩擦抵抗に寄与しなかった範囲でも、摩擦補助層による摩擦抵抗が生じるので、摩擦抵抗に寄与できる範囲が増大する。よって、高力ボルト摩擦接合構造のすべり係数を向上できる。
【0069】
また、摩擦接合層を有さない高力ボルト摩擦接合の場合、比較的長期間が経過した後、リラクセーションに起因するボルト張力の低下によって、すべり係数が低下する。しかし、本開示では、長期間が経過した後であっても、高力ボルト摩擦接合構造が空気と接触する場合、時間の経過に伴って摩擦接合層の鉄酸化物が増大する。このため、ボルト張力の低下に起因するすべり係数の低下を補うことができると共に、すべり係数の更なる向上を図ることができる。
【0070】
また、本実施形態では、摩擦補助層40が有する化合物と、めっき部を構成する化合物とは、互いに異なる。このため、めっき部が本来発揮する摩擦力とは異なる摩擦力を、摩擦補助層40によって実現できる。
【0071】
また、本実施形態では、端面の一部がFeを含む表面を有する非めっき部であるため、ガルバニック腐食による腐食を促進させ易い。すなわち、腐食が生じ易く、Znの酸化物(いわゆる、白錆)の生成量を多くすることができる。さらに、端面のFeを含む化合物も形成されることで、摩擦補助層40の形成が、より促進される。結果、隙間の充填性が向上するため、すべり係数向上効果が高くなる。
【0072】
また、本実施形態では、めっき部は、Zn-Al-Mg系の成分を含む。すなわち、めっき部は、Zn、Al、Mgを含む3元系めっきである。3元系めっきは、2元系めっきの場合と比べ、Zn腐食生成物(酸化物)が緻密に形成され、結果、めっき鋼材の表面上から流出し難い。このため、3元系めっきは、すべり係数向上の観点から、より好ましい。
【0073】
<その他の実施形態>
本開示は、上記の実施形態によって説明されたが、この説明は、本開示を限定するものではない。本開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかになると考えられるべきである。本開示は、上記に記載していない様々な実施の形態等を含むと共に、本開示の技術的範囲は、上記の説明から妥当な特許請求の範囲の発明特定事項によってのみ定められるものである。
【0074】
≪付記≫
本明細書からは、以下の態様が概念化される。
【0075】
態様1は、
表面にめっき部を有し、ボルト孔が形成された複数のめっき鋼材を、高力ボルト、ナット、及び座金によって摩擦接合させる高力ボルト接合構造であって、
前記めっき鋼材が重ね合わせられた領域において、前記ボルト孔の径方向に沿ったボルト孔縁からの離隔距離が{(D-d)/2+t}mm以上であり、かつ、前記めっき鋼材の互いに対向する表面の間の隙間が10μm以上、600μm以下である範囲内の前記めっき部の上に設けられ、前記めっき鋼材の前記めっき部を構成する金属に由来する成分と酸素とを含む化合物を有する摩擦補助層40を備える、
高力ボルト摩擦接合構造。
但し、D:座金の径[mm],d:ボルト孔の径[mm],t:座金と接する側のめっき鋼材の板厚[mm]
【0076】
態様2は、
前記摩擦補助層が有する前記化合物と前記めっき部を構成する化合物とは、互いに異なる、
態様1の高力ボルト摩擦接合構造。
【0077】
態様3は、
複数の前記めっき鋼材のうち少なくとも1つの前記めっき鋼材の端面の一部は、鉄を含む表面を有する非めっき部であり、
前記摩擦補助層が有する前記化合物は、前記めっき部を構成する金属に由来する成分と前記非めっき部の鉄との間で生じたガルバニック腐食に起因する鉄酸化物を含む、
態様1又は2の高力ボルト摩擦接合構造。
【0078】
態様4は、
前記めっき部は、Zn-Al-Mg系の成分を含む、
態様1~3のいずれかの高力ボルト摩擦接合構造。