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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111794
(43)【公開日】2024-08-19
(54)【発明の名称】車載部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 11/30 20060101AFI20240809BHJP
   B23K 11/14 20060101ALI20240809BHJP
   B23K 11/00 20060101ALI20240809BHJP
【FI】
B23K11/30 310
B23K11/14
B23K11/00 570
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023126235
(22)【出願日】2023-08-02
(31)【優先権主張番号】P 2023016377
(32)【優先日】2023-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】391002498
【氏名又は名称】フタバ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】林 克洋
(72)【発明者】
【氏名】小川 茂
(57)【要約】
【課題】溶接部材の溶接不良を生じにくくする技術を提供する。
【解決手段】本体部材と、当該本体部材に第1電極及び第2電極を用いた抵抗溶接により取り付けられる溶接部材と、を備え、車両に搭載される車載部品の製造方法である。車載部品の製造方法は、溶接端部及び当該溶接端部とは反対側の非溶接端部を有する溶接部材の溶接端部を本体部材の溶接面に当接させることを備える。また、車載部品の製造方法は、本体部材の溶接面とは反対側の非溶接面に第1電極を接触させ、かつ、溶接部材の外周面における当該溶接端部近傍に、第2電極を接触させた状態で、抵抗溶接により、本体部材に溶接部材を溶接することを備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部材と、当該本体部材に第1電極及び第2電極を用いた抵抗溶接により取り付けられる溶接部材と、を備え、車両に搭載される車載部品の製造方法であって、
溶接端部及び当該溶接端部とは反対側の非溶接端部を有する前記溶接部材の前記溶接端部を前記本体部材の溶接面に当接させることと、
前記本体部材の前記溶接面とは反対側の非溶接面に前記第1電極を接触させ、かつ、前記溶接部材の外周面における当該溶接端部近傍に、前記第2電極を接触させた状態で、前記抵抗溶接により、前記本体部材に前記溶接部材を溶接することと、
を備える、車載部品の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の車載部品の製造方法であって、
前記溶接部材は、前記溶接端部から前記非溶接端部まで延びる軸を有し、当該軸が前記溶接面に対し傾斜した、又は、当該軸が曲がった状態で、前記本体部材に固定される、車載部品の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の車載部品の製造方法であって、
前記溶接部材は、姿受け治具によって保持され、
前記姿受け治具は、前記抵抗溶接の際に押圧される押圧面であって、前記溶接面と対面する押圧面を有する、車載部品の製造方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の車載部品の製造方法であって、
前記第2電極は、3以上の電極部を有し、
前記抵抗溶接を行う際、前記電極部は、前記溶接部材の前記外周面を周回する周方向に並んで配置され、それぞれの前記電極部が前記溶接部材の前記外周面に接触する
車載部品の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の車載部品の製造方法であって、
前記抵抗溶接を行う際、前記第2電極におけるそれぞれの前記電極部から、前記溶接部材の前記外周面に対し、略同一の大きさの荷重が加えられる
車載部品の製造方法。
【請求項6】
請求項4に記載の車載部品の製造方法であって、
3以上の前記電極部のうちの一部を、特定電極部とし、
前記抵抗溶接を行う際、前記特定電極部から、前記溶接部材の前記外周面に対し、他の前記電極部よりも大きな荷重が加えられる
車載部品の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の車載部品の製造方法であって、
それぞれの前記電極部は、前記抵抗溶接の際に前記溶接部材の前記外周面と接触する接触面を有し、
前記特定電極部の前記接触面における前記周方向の長さは、他の前記電極部の前記接触面における前記周方向の長さよりも短い
車載部品の製造方法。
【請求項8】
請求項4に記載の車載部品の製造方法であって、
それぞれの前記電極部は、前記抵抗溶接の際に前記溶接部材の前記外周面と接触する接触面を有し、それぞれの前記電極部の前記接触面における前記周方向の長さは、略同一である
車載部品の製造方法。
【請求項9】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の車載部品の製造方法であって、
当該車載部品は、排気ガスを通過させるための排気系部品である、車載部品の製造方法。
【請求項10】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の車載部品の製造方法であって、
前記抵抗溶接は、プロジェクション溶接である、車載部品の製造方法。
【請求項11】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の車載部品の製造方法であって、
前記溶接部材は、前記溶接端部が上方を向いた状態で、前記本体部材に溶接される、車載部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、溶接部材が抵抗溶接により取り付けられた本体部材を備える車載部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、リングプロジェクション溶接機に備えた接合用の治具にプロジェクションが形成された排気管と他部材とを装着させ、排気管及び他部材をリングプロジェクション溶接により接合する溶接方法が開示されている。この溶接方法では、接合用の治具によって排気管及び他部材が上下方向から挟み込まれた状態で、加圧及び通電が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-150397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、抵抗溶接によって、本体部材に取り付けられる溶接部材には、様々な形状及び構成のものがあり、用途及び使用環境などによって、選ばれる溶接部材は異なる。特許文献1の溶接方法では、溶接部材の形状及び構成によって、溶接部材に均一な圧力を加えにくかったり、溶接部材に均一な電流が流れにくかったりするため、本体部材に対する溶接部材の溶接不良が生じる可能性があるという問題があった。
【0005】
本開示の一局面は、溶接部材の溶接不良を生じにくくする技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、本体部材と、当該本体部材に第1電極及び第2電極を用いた抵抗溶接により取り付けられる溶接部材と、を備え、車両に搭載される車載部品の製造方法である。車載部品の製造方法は、溶接端部及び当該溶接端部とは反対側の非溶接端部を有する溶接部材の溶接端部を本体部材の溶接面に当接させることを備える。また、車載部品の製造方法は、本体部材の溶接面とは反対側の非溶接面に第1電極を接触させ、かつ、溶接部材の外周面における当該溶接端部近傍に、第2電極を接触させた状態で、抵抗溶接により、本体部材に溶接部材を溶接することを備える。
【0007】
このような構成では、第2電極が溶接部材の外周面における溶接端部近傍に配置されるため、溶接部材の形状及び構成に関わらず、抵抗溶接に際、溶接部材の本体部材との接合箇所に電流が均一に流れやすい。したがって、本体部材に対する溶接部材の溶接不良を生じにくくすることができる。
【0008】
本開示の一態様では、溶接部材は、溶接端部から非溶接端部まで延びる軸を有し、当該軸が溶接面に対し傾斜した、又は、当該軸が曲がった状態で、本体部材に固定されてもよい。このような構成によれば、軸が溶接面に対し傾斜した、又は、軸が曲がった状態で、本体部材に固定されるような形状の溶接部材でも、溶接部材全体における電流の経路の長さのばらつきを抑制することができる。
【0009】
本開示の一態様では、溶接部材は、姿受け治具によって保持されてもよい。姿受け治具は、抵抗溶接の際に押圧される押圧面であって、溶接面と対面する押圧面を有してもよい。このような構成によれば、溶接部材の形状に関わらず、押圧面を有する姿受け治具によって溶接部材が安定して保持されるため、押圧面を介して溶接部材に圧力を均一に加えやすくすることができる。
【0010】
本開示の一態様では、第2電極は、3以上の電極部を有し、抵抗溶接を行う際、電極部は、溶接部材の外周面を周回する周方向に並んで配置され、それぞれの電極部が溶接部材の外周面に接触してもよい。このような構成によれば、第2電極が、全体として均一に溶接部材の外周面に接触するよう促すことができ、抵抗溶接の際の電流の流れが良好になる。したがって、抵抗溶接をより良好に行うことができる。
【0011】
本開示の一態様では、抵抗溶接を行う際、第2電極におけるそれぞれの電極部から、溶接部材の外周面に対し、略同一の大きさの荷重が加えられてもよい。このような構成によれば、各電極部と溶接部材の外周面との間の接触抵抗が同程度となるように促すことができる。このため、各電極部と溶接部材との間の電流の流れが均一となるよう、促すことができる。したがって、抵抗溶接をより良好に行うことができる。
【0012】
本開示の一態様では、3以上の電極部のうちの一部を、特定電極部とし、抵抗溶接を行う際、特定電極部から、溶接部材の外周面に対し、他の電極部よりも大きな荷重が加えられてもよい。このような構成によれば、特定電極部と溶接部材の外周面との間の接触抵抗が相対的に低下するため、抵抗溶接の際、特定電極部側に溶融金属が流出するよう促すことができる。したがって、抵抗溶接の際の溶融金属の流出方向を制御できる。
【0013】
本開示の一態様では、それぞれの電極部は、抵抗溶接の際に溶接部材の外周面と接触する接触面を有し、特定電極部の接触面における周方向の長さは、他の電極部の接触面における周方向の長さよりも短くてもよい。このような構成によれば、抵抗溶接の際、溶融金属の流出先となる特定電極部側の領域を狭めることができる。したがって、より好適に、抵抗溶接の際の溶融金属の流出方向を制御できる。
【0014】
本開示の一態様では、それぞれの電極部は、抵抗溶接の際に溶接部材の外周面と接触する接触面を有し、それぞれの電極部の接触面における前記周方向の長さは、略同一であってもよい。このような構成によれば、各電極部の接触面の大きさが同程度となるよう促すことができる。このため、各電極部と溶接部材の外周面との間の電流の流れが均一となるよう、促すことができ、その結果、抵抗溶接をより良好に行うことができる。
【0015】
本開示の一態様では、当該車載部品は、排気ガスを通過させるための排気系部品であってもよい。このような構成によれば、排気系部品における溶接部材の溶接不良を生じにくくすることができる。
【0016】
本開示の一態様では、抵抗溶接は、プロジェクション溶接であってもよい。このような構成によれば、溶接部材又は本体部材に設けられる1つ又は複数のプロジェクションに均一に電流を流しやすくすることができる。その結果、車載部品における溶接部材の溶接不良を生じにくくすることができる。
【0017】
本開示の一態様では、溶接部材は、溶接端部が上方を向いた状態で、本体部材に溶接されてもよい。このような構成によれば、溶接部材の上方に本体部材を配置した状態で、上方から本体部材を加圧することで抵抗溶接が可能であるため、抵抗溶接に用いられる装置の構造が複雑化することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1実施形態における車載部品の一部を模式的に示す図である。
図2】第1実施形態における本体部材及びワークのリングプロジェクション溶接前の状態を模式的に示す断面図である。
図3】第1実施形態におけるワークの外周面に第2電極が接触した状態を上方から見た図である。
図4】第1実施形態における本体部材及びワークのリングプロジェクション溶接を説明するための模式的な断面図である。
図5】第1実施形態におけるワークの外周面から第2電極に電流が均一に流れる様子を模式的に示す図である。
図6】変形例として示す挿入部を有する姿受け治具を用いたリングプロジェクション溶接前の状態を模式的に示す断面図である。
図7】第2実施形態におけるワークの外周面に第2電極が接触した状態を上方から見た図である。
図8】第2実施形態におけるワークの外周面に第2電極が接触した状態を上方から見た図である。
図9】変形例におけるワークの外周面に第2電極が接触した状態を上方から見た図である。
図10】変形例におけるワークの外周面に第2電極が接触した状態を上方から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本開示の例示的な実施形態について図面を参照しながら説明する。
[1.第1実施形態]
[(1)車載部品の構成]
図1に示す車載部品100は、車両に搭載されて用いられる。本実施形態の車載部品100は、排気系部品である。排気系部品は、車両に搭載された内燃機関からの排気ガスを通過させるための流路の少なくとも一部を構成する部品である。排気系部品としては、例えば、エキゾーストマニホールド、排気管、触媒コンバータ、マフラ等が挙げられる。
【0020】
図1に示すように、車載部品100は、本体部材1と、ワーク2と、を備える。車載部品100は、本体部材1及びワーク2が、抵抗溶接によって溶接された部品である。抵抗溶接では、本体部材1及びワーク2を加圧しつつ、電気を流すことによって、他の部位よりも電流の断面積の小さい加圧部分が発熱して溶融することで溶接が行われる。詳細は後述するが、本実施形態では、抵抗溶接の一種であるリングプロジェクション溶接により、ワーク2が本体部材1に溶接される。なお、図1図2図4及び図6において、本体部材1は、一部のみが模式的に示されている。
【0021】
<本体部材>
本体部材1は、排気ガスを通過させるための流路を形成する。本体部材1は、金属製であり、板状の部材により構成されている。例えば、板状の金属部材を巻いて筒状の本体部材1が形成されている。本体部材1は、溶接面11と、非溶接面12と、挿入孔13と、を有する。
【0022】
溶接面11は、ワーク2が溶接される面であり、本体部材1における外面、すなわち流路とは反対側の面である。本実施形態では、溶接面11におけるワーク2が溶接される領域は、平面状である。
【0023】
非溶接面12は、溶接面11とは反対側の面であり、本体部材1における内面である。
挿入孔13は、本体部材1に形成された貫通孔であり、溶接面11及び非溶接面12を貫通する。挿入孔13は、本体部材1の外部から本体部材1が形成する流路内に、所定の物3を挿入可能な孔である。なお、挿入孔13は、所定の物3の先端が該流路内に到達可能となるよう、その大きさが調整されていてもよい。
【0024】
<ワーク>
ワーク2は、車載部品100に所定の物3を取り付けるための接合部材である。本実施形態では、ワーク2は、車載部品100に所定の物3としてセンサを取り付けるためのセンサボスである。センサボスは、本体部材1の挿入孔13に挿入されたセンサを保持するように構成された部材である。ワーク2は、本体部材1の溶接面11に取り付けられる。
【0025】
ワーク2は、金属製であり、筒状である。本実施形態では、ワーク2は、円筒状であり、後述する溶接端部21から非溶接端部22まで延びる中心軸Aが曲がった形状を有する。図1及び図2に示すように、ワーク2は、溶接端部21と、非溶接端部22と、外周面23と、連通路24と、突起部25と、を有する。
【0026】
溶接端部21は、本体部材1の溶接面11に溶接される端部である。
非溶接端部22は、溶接端部21とは反対側の端部である。溶接端部21の端面及び非溶接端部22の端面は、いずれも平面状であり、中心軸Aと略垂直に交わる。
【0027】
中心軸Aは、当該中心軸Aに直交するワーク2の断面の略中央を通過する。換言すると、中心軸Aは、一例として、溶接端部21の中心から非溶接端部22の中心まで延びる。本実施形態では、図1に示すように、中心軸Aは、溶接端部21から直線状に延び出して湾曲した後、溶接端部21の端面に対して傾いた状態で非溶接端部22まで直線状に延びる。このため、ワーク2は、中心軸Aが曲がった状態で、本体部材1に固定される。また、中心軸Aは、溶接端部21の端面に対して傾いた状態で延びる部分を有するため、ワーク2は、中心軸Aが本体部材1の溶接面11に対し傾斜した状態で、本体部材1に固定されるとも言える。なお、中心軸Aが本体部材1の溶接面11に対し傾斜した状態とは、溶接面11に対して略垂直に延びる線に対して中心軸Aが角度を有することとも言い換えられる。
【0028】
これにより、本体部材1の溶接面11とワーク2の溶接端部21の端面とは略平行に配置される。また、ワーク2の非溶接端部22の端面は、本体部材1の溶接面11及びワーク2の溶接端部21の端面に対し、交差した配置となる。
【0029】
外周面23は、溶接端部21から非溶接端部22まで広がる面である。ワーク2の溶接端部21近傍には、溶接端部21の端面に対し略垂直に当該溶接端部21から延び出す直線部20が設けられる。直線部20は、外周面23の一部である。
【0030】
連通路24は、ワーク2に形成された貫通孔であり、溶接端部21の端面及び非溶接端部22の端面を貫通する。本実施形態では、図1に示すように、連通路24は、溶接端部21から非溶接端部22まで直線状に延びており、溶接端部21の端面に対して傾いている。連通路24は、所定の物3の先端部が挿通可能である。本実施形態では、連通路24は、小径部241と、大径部242と、を有する。小径部241は、第1の開口が溶接端部21に位置し、第2の開口が大径部242と連通する。大径部242は、小径部241よりも径が大きい。大径部242は、小径部241と連通しない開口が非溶接端部22に位置する。また、所定の物3にはネジ切りが形成されており、大径部242には所定の物3のネジ切りに螺合するネジ切りが形成されていてもよい。
【0031】
図2に示すように、突起部25は、溶接端部21に設けられ、溶接端部21の端面から突出する。本実施形態では、図3に示すように、突起部25は、連通路24の溶接端部21側の開口を囲むように、環状に形成される。換言すると、突起部25は、溶接端部21の縁に沿って周回するように設けられる。本実施形態では、突起部25は、周回する方向に直交する断面形状が台形状である。また、本実施形態では、突起部25は、溶接端部21の縁と溶接端部21側の開口との略中央辺りに配置される。
【0032】
なお、突起部の形状及び配置は、本体部材に集中して圧力がかけられるものであれば、他の形状及び他の配置であってもよい。例えば、突起部は、周回する方向に直交する断面形状が、三角形状、四角形状、四角形状の上面の中央に凹みを有するような形状であってもよい。また、例えば、突起部は、溶接端部21の縁寄りに配置、又は、溶接端部21側の開口寄りに配置されてもよい。突起部25には、リングプロジェクション溶接によって、圧力が加わり、かつ、電気が流れる。これにより、突起部25が溶融され、ワーク2が本体部材1に溶接される。
【0033】
[(2)車載部品の製造方法]
次に、車載部品100の製造方法について説明する。具体的には、車載部品100の製造方法に含まれるワーク2の溶接方法について説明する。車載部品100の製造方法は、図2に示す当接工程と、図4に示す溶接工程と、を備える。本実施形態の車載部品100の製造方法では、第1電極4と、第2電極5と、固定台6と、姿受け治具7と、を備える溶接装置を用いたリングプロジェクション溶接により、ワーク2が本体部材1に溶接される。
【0034】
<第1電極及び第2電極>
図2に示すように、第1電極4は、本体部材1の上方に非溶接面12と当接するように配置される。
【0035】
第2電極5は、ワーク2の外周面23における溶接端部21近傍に当接する。具体的には、第2電極5は、ワーク2の直線部20に当接し、図3に示すように、当該直線部20を周回するように配置される。すなわち、ワーク2の直線部20は、第2電極5によって、ワーク2の中心軸Aを中心とする周方向全周が覆われている。
【0036】
本実施形態では、第2電極5は、図3における左方に位置する第1部分5a、及び、図3における右方に位置する第2部分5bを有する。第1部分5a及び第2部分5bは、ワーク2を左右方向から挟み込むように配置される。第1部分5a及び第2部分5bの互いに対面する端面には、ワーク2の外周面23の湾曲に沿った形状の切欠きがそれぞれ形成されている。当該切欠きを対面させ、第1部分5a及び第2部分5bのそれぞれの切欠きの両側の端面を互いに当接させた状態で、第1部分5a及び第2部分5bを突き合わせる。これにより、第1部分5a及び第2部分5bによって、ワーク2の外周面23が周方向全周覆われた状態で挟み込まれる。
【0037】
第1電極4の本体部材1と対向する面と、第2電極5の本体部材1と対向する面は、略平行に延びる。上述した第1電極4と第2電極5との配置により、第1電極4から第2電極5までの距離は、本体部材1の厚さと突起部25の高さとを足した距離と略同じとなる。
【0038】
<固定台>
固定台6は、移動しないように固定され、後述する姿受け治具7を上方に配置可能な部材である。固定台6の上面61は平面状である。固定台6は、例えばナイロン等の絶縁素材によって絶縁されている。
【0039】
<姿受け治具>
姿受け治具7は、上述したワーク2を保持する部材である。本実施形態では、図2に示すように、姿受け治具7は、ワーク2の非溶接端部22を下方から保持するように構成される。具体的には、ワーク2は、姿受け治具7に形成される後述する嵌め込み穴74にワーク2の非溶接端部22が挿入されることによって保持される。姿受け治具7は、絶縁素材により形成される。絶縁素材としては、例えば、ナイロン、プラスチック、絶縁性の金属等が挙げられる。姿受け治具7は、底面71と、上面72と、側面73と、嵌め込み穴74と、を有する。
【0040】
底面71は、固定台6の上面61と当接し、リングプロジェクション溶接の際に押圧される面である。底面71は、リングプロジェクション溶接の際に押圧される方向である図4に示す押圧方向に、本体部材1の溶接面11と対面する。本実施形態では、押圧方向は、図4の上下方向であり、換言すると、底面71に対し略垂直な方向である。本実施形態では、底面71は、平面状であり、本体部材1の溶接面11と平行に広がる。
【0041】
上面72は、底面71よりも上方に位置する面である。
側面73は、底面71から上面72に広がる面である。
嵌め込み穴74は、上面72に開口し、当該開口からワーク2の非溶接端部22を挿入することで、ワーク2を嵌め込み可能な穴である。嵌め込み穴74は、非溶接端部22から直線部20の直前までの範囲(すなわち、ワーク2における直線部20を除いた範囲)における当該ワーク2の形状と略同一の形状を有する。嵌め込み穴74は、穴底面741及び内周面742を有する。穴底面741は、ワーク2の非溶接端部22の端面と当接する。内周面742は、穴底面741から上面72まで広がる。内周面742は、ワーク2の外周面23と当接する。嵌め込み穴74にワーク2の非溶接端部22が挿入されると、ワーク2の非溶接端部22及びワーク2の直線部20以外の外周面23が、嵌め込み穴74の穴底面741及び内周面742によって隙間なく全部覆われる。なお、ワーク2の嵌め込み穴74への挿入の観点から、ワーク2の外周面23と嵌め込み穴74の内周面742との間には、わずかな隙間を有するように、嵌め込み穴74は形成されていてもよい。
【0042】
<当接工程>
図2に示すように、当接工程では、ワーク2の溶接端部21に形成された突起部25を本体部材1の溶接面11に当接させる。
【0043】
具体的には、まず、固定台6の上に配置した姿受け治具7の嵌め込み穴74に、嵌め込み穴74の穴底面741とワーク2の非溶接端部22の端面とが当接するまでワーク2を挿入させる。これにより、溶接端部21が上方を向いた状態で、ワーク2が姿受け治具7によって保持される。
【0044】
次に、第2電極5をワーク2の直線部20に当接するように配置する。具体的には、第1部分5a及び第2部分5bによって、左右方向からワーク2の直線部20を周方向全周覆うように挟み込む。
【0045】
次に、ワーク2の連通路24と本体部材1の挿入孔13とが重なるように、ワーク2の溶接端部21の上方に本体部材1を配置し、ワーク2の溶接端部21に形成された突起部25と本体部材1の溶接面11とを当接させる。
【0046】
そして、本体部材1の上方に第1電極4を配置し、本体部材1の非溶接面12に第1電極4を当接させる。
<溶接工程>
図4に示すように、溶接工程では、姿受け治具7に保持されたワーク2及び本体部材1が当接し、本体部材1の非溶接面12に第1電極4が接触し、かつ、ワーク2の直線部20に第2電極5が接触した状態で、リングプロジェクション溶接が行われる。これにより、本体部材1にワーク2が溶接される。
【0047】
具体的には、まず、第1電極4を下方に移動させ、本体部材1をワーク2に押し当てるように、図4に示す矢印Xの方向への圧力を本体部材1及びワーク2に加える。このとき、ワーク2が姿受け治具7により安定して保持された状態で、当該姿受け治具7の底面71が、押圧方向に沿って、矢印Xの方向とは反対向きの力により押圧される。このため、本実施形態のように中心軸Aが曲がった形状のワーク2でも、押圧方向に沿ってワーク2に圧力が均一に加わりやすい。すなわち、第1電極4による押圧方向は、本体部材1、第2電極5、姿受け治具7及び固定台6に対して略垂直であるため、ワーク2に圧力が均一に加わりやすい。
【0048】
上述した本体部材1及びワーク2への加圧と共に、第1電極4と第2電極5との間で通電を行う。これにより、電流は、図4に示す矢印Yのように、第1電極4からワーク2の突起部25及びワーク2の外周面23を介して第2電極5へ流れる。本実施形態では、第2電極5が、ワーク2の直線部20に配置される。このため、本実施形態のように中心軸Aが曲がった形状のワーク2でも、第1電極4から第2電極5までの距離が略同一であるため、図5に示すように、ワーク2の突起部25に電流が均一に流れやすい。
【0049】
[2.第2実施形態]
[(1)第2電極]
第2実施形態の車載部品100の製造方法は、第2電極8の構成において第1実施形態と相違する(図7~10参照)。以下では、第2実施形態の第2電極8の構成について説明する。
【0050】
第2電極8は、板状の部位である3つ以上の電極部80を有する。一例として、第2電極8は、3つの電極部80を有する(図7参照)。しかし、これに限らず、第2電極8は、4つ(図8参照)、又は5つ以上の電極部80を有し得る。
【0051】
各電極部80の端面には、抵抗溶接の際にワーク2の外周面23における溶接端部21近傍の部分(以後、単に近傍部分とも記載)に接触する接触面81が形成されている。接触面81は、近傍部分に適合した形状を有しており、一例として、円弧状に延びる。
【0052】
また、各電極部80は、一例として、略同一の形状を有しており、各電極部80は、略同一の厚さを有すると共に、接触面81の周方向の長さは略同一である。つまり、各電極部80の接触面81は、略同一の面積を有する。
【0053】
[(2)溶接工程]
第2実施形態の溶接工程では、第1実施形態と同様にして、第1及び第2電極4,8により電流を流すことでリングプロジェクション溶接が行われるが、第2電極8の配置において第1実施形態と相違する。
【0054】
すなわち、抵抗溶接の際、各電極部80は、ワーク2の外周面23における溶接端部21の近傍部分を囲むように配置される(図7~10参照)。この時、3以上の電極部80は、中央に略円形の穴を有する板状の第2電極8を形成する。該穴には、ワーク2の溶接端部21が配置され、ワーク2の直線部20は、第2電極8に対し略直交した状態になる。
【0055】
つまり、各電極部80は、ワーク2の近傍部分を、中心軸Aを中心に周回する周方向に並んで配置され、各電極部80の接触面81の略全域が、近傍部分に接触する。また、各電極部80の接触面81もまた、周方向に並んだ状態になり、各接触面81の周方向の両端は、隣接する他の接触面81の周方向の端部と実質的に接触し、近傍部分は、略全周にわたって各電極部80の接触面81に接触する。無論、これに限らず、隣接する電極部80の接触面81の間には、間隔が設けられていてもよい。
【0056】
また、ワーク2の近傍部分を囲む各電極部80は、図示しない固定部材により、接触面81から近傍部分に荷重をかけた状態で、その位置が固定される。具体的には、例えば、各電極部80は、ボルト締めにより固定部材に固定されてもよく、ボルト締めの度合いにより、近傍部分に加えられる荷重の大きさが調整されてもよい。無論、これに限らず、図示しないアクチュエータ等により、各電極部80から近傍部分に加えられる荷重の大きさが調整されてもよい。そして、図7,8に示す様に、抵抗溶接の際には、各電極部80からワーク2の近傍部分に対し、略同一の荷重が加えられる。
【0057】
[(3)変形例]
3以上の電極部80のうちの一部を、特定電極部80Aとしてもよい。なお、一例として、本変形例では、1つの特定電極部80Aが設けられるが、2以上の特定電極部80Aが設けられてもよい。そして、抵抗溶接の際、特定電極部80Aから近傍部分に加えられる荷重は、特定電極部80A以外の他の電極部80から近傍部分に加えられる荷重よりも大きくなっていてもよい(図9,10参照)。
【0058】
ここで、特定電極部80Aの接触面81の周方向の長さ(換言すれば、接触面81の面積)と、他の電極部80の接触面81の周方向の長さとは、図9に示す様に略同一であってもよい。また、これに限らず、特定電極部80Aの接触面81の周方向の長さは、他の電極部80の接触面81の周方向の長さよりも短くてもよい。
【0059】
一例として、図10では、厚さが略同一である板状の10の電極部80が設けられていると共に、これらのうちの1つが、特定電極部80Aとして構成されており、特定電極部80Aは、接触面81の周方向の長さが最も短くなっている。なお、図10では、特定電極部80A以外の他の電極部80のうちの1つは、相対的に接触面81の周方向の長さが短くなっているが、他の電極部80における接触面81の周方向の長さは、略同一であってもよい。そして、抵抗溶接の際、特定電極部80Aから近傍部分に加えられる荷重は、他の電極部80から近傍部分に加えられる荷重よりも大きくなっている。
【0060】
[3.効果]
上記実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(3a)上記実施形態では、リングプロジェクション溶接の際に、第1電極4が本体部材1の非溶接面12に配置され、かつ、第2電極5がワーク2の直線部20(すなわち、外周面23における溶接端部21近傍)に配置される。これにより、第1電極4から本体部材1及びワーク2の外周面23を経て第2電極5へ流れる電流の経路の長さ(すなわち、ワーク2における電流の経路の長さ)が、第2電極5がワーク2の非溶接端部22に配置される構成と比較して短くなりやすい。これに対し、第2電極5がワーク2の非溶接端部22に配置される構成では、ワーク2における電流の経路の長さも長くなるため、電流の流れ具合がワーク2の形状や構成による影響を受けやすい。このため、ワーク2が、中心軸Aが本体部材1の溶接面11に対し傾斜した、又は、中心軸Aが曲がった形状の場合には、電流の流れ具合がワーク2全体においてばらつきやすい。また、ワークが複数の異なる材質により構成されることで電流の流れ方が場所によって異なる構成の場合には、電流の流れ具合がワーク全体においてばらつきやすい。
【0061】
一方、上記実施形態では、上述したように、ワーク2における電流の経路の長さも短くなるため、電流の流れ具合がワーク2の形状や構成による影響を受けにくくなり、その結果電流の流れ具合がワーク2全体においてばらつきにくくなる。
【0062】
このため、ワーク2の形状及び構成に関わらず、図5に示すように、リングプロジェクション溶接の際に、ワーク2の突起部25に電流が均一に流れやすい。したがって、本体部材1に対するワーク2の溶接不良を生じにくくすることができる。また、リングプロジェクション溶接によって、ワーク2と本体部材1との間を隙間なく溶接することができる。
【0063】
(3b)上記実施形態では、ワーク2の中心軸Aが曲がった(換言すると、ワーク2の中心軸Aが本体部材1の溶接面11に対し傾斜した)状態で、ワーク2が本体部材1に固定される。このため、リングプロジェクション溶接の際に、ワーク2の溶接端部21と非溶接端部22との間に電圧をかけた場合のワーク2における電流の経路の長さが一定ではない。しかし、上記実施形態の構成では、第2電極5がワーク2の直線部20に配置される。このため、中心軸Aが曲がった形状のワーク2の場合でも、リングプロジェクション溶接の際に、ワーク2全体における電流の経路の長さのばらつきを抑制することができる。
【0064】
(3c)上記実施形態では、車載部品100が排気系部品であり、ワーク2がセンサを取り付けるためのセンサボスである。このため、排気系部品におけるセンサボスの溶接不良を生じにくくすることができる。
【0065】
(3d)上記実施形態では、ワーク2が姿受け治具7によって保持され、リングプロジェクション溶接の際に、姿受け治具7が有する底面71が押圧方向に押圧される。このため、上記実施形態のように、ワーク2の中心軸Aが曲がったり、ワーク2の中心軸Aが本体部材1の溶接面11に対し傾斜したりする場合でも、ワーク2が姿受け治具7によって安定して保持される。換言すると、中心軸Aが本体部材1の溶接面11から押圧方向に真っ直ぐ延びない形状のワーク2であっても、ワーク2が姿受け治具7によって安定して保持される。このため、リングプロジェクション溶接の際に加わる圧力によって、ワーク2の重心が偏りにくい。したがって、底面71を介してワーク2に圧力を均一に加えやすくすることができる。
【0066】
(3e)上記実施形態では、ワーク2の溶接端部21が上方を向いた状態で、ワーク2が本体部材1に溶接される。これにより、ワーク2の上方に配置された本体部材1を第1電極4によって加圧することで、リングプロジェクション溶接が可能である。このため、リングプロジェクション溶接に用いられる装置の構造が複雑化することを抑制することができる。
【0067】
(3f)第2実施形態では、第2電極8は、3以上の電極部80を有し、各電極部80により電流を流すことで、抵抗溶接が行われる。このため、ワーク2の近傍部分の形状の精度や、各電極部80の接触面81の形状の精度が低くても、第2電極8全体としてのワーク2の近傍部分への接触面積が増加するよう促すことができる。また、第2電極8全体として、より均一に溶接部材の外周面23に接触するよう促すことができる。したがって、抵抗溶接の際の電流の流れが良好になり、抵抗溶接をより良好に行うことができる。
【0068】
(3g)また、第2実施形態において、抵抗溶接の際、各電極部80からワーク2の近傍部分に略同一の荷重を加えることで、各電極部80の接触面81と近傍部分との間の接触抵抗が同程度となるように促すことができる。このため、各電極部80と近傍部分との間の電流の流れが均一となるよう促すことができる。したがって、抵抗溶接をより良好に行うことができる。
【0069】
(3h)また、第2実施形態において、各電極部80における接触面81の周方向の長さを略同一とすることで、各電極部80の接触面81の大きさが同程度となるよう促すことができる。このため、各電極部80とワーク2の近傍部分との間の電流の流れが均一となるよう促すことができ、その結果、抵抗溶接をより良好に行うことができる。
【0070】
(3i)また、第2実施形態の変形例において、抵抗溶接の際、特定電極部80Aを介して相対的に大きな荷重を加えることで、特定電極部80Aとワーク2の近傍部分との間の接触抵抗が相対的に低下する。このため、抵抗溶接の際、特定電極部80A側に溶融金属等(換言すれば、チリやはみ出し)が流出するよう促すことができ、これにより、抵抗溶接の際の溶融金属の流出方向を制御できる。
【0071】
(3j)また、第2実施形態の変形例において、特定電極部80Aの接触面81の周方向の長さを相対的に短くすることで、抵抗溶接の際、溶融金属の流出先となる特定電極部80A側の領域を狭めることができる。したがって、より好適に、抵抗溶接の際の溶融金属の流出方向を制御できる。
【0072】
なお、上記実施形態では、ワーク2が溶接部材の一例に相当し、底面71が押圧面の一例に相当し、ワーク2の中心軸Aが軸の一例に相当する。
[4.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0073】
(4a)上記実施形態では、ワーク2を本体部材1に溶接する抵抗溶接としてリングプロジェクション溶接を例示したが、ワークを本体部材に溶接する方法はこれに限定されるものではない。例えば、抵抗溶接は、リングプロジェクション溶接以外のプロジェクション溶接であってもよい。当該プロジェクション溶接の場合、ワークは、溶接端部に複数の突起部を有し、当該複数の突起部は、間隔を空けて配置される。そして、複数の突起部に圧力が加わりかつ電流が流れ、複数の突起部が電流により溶融されかつ加圧により潰されることで、ワークが本体部材に溶接される。また、例えば、抵抗溶接は、スポット溶接であってもよい。スポット溶接の場合、ワークは、溶接端部に突起部を有せず、本体部材1の非溶接面12に配置される第1電極は、非溶接面12と当接する先端部が先細りの形状を有する。そして、第1電極の先端部により本体部材1を加圧し、当該加圧により抵抗が上がった加圧部分に電流を流すことによって、当該加圧部分が発熱して溶融することで、ワークが本体部材に溶接される。
【0074】
(4b)上記実施形態では、突起部25は、ワーク2の溶接端部21に設けられていたが、突起部が設けられる位置はこれに限定されるものではない。例えば、ワークが溶接端部にフランジを有する構成では、当該フランジに突起部が設けられていてもよい。また、例えば、本体部材の溶接面の挿入孔の周囲に突起部が設けられていてもよい。また、例えば、スポット溶接を行う場合であれば、ワーク及び本体部材のいずれにも突起部が設けられていなくてもよい。
【0075】
(4c)上記実施形態では、第2電極5は、左右方向に2つに分割される構成を例示したが、第2電極が分割される方向、又は、第2電極が分割される数はこれに限定されるものではない。例えば、第2電極は、前後方向に2つに分割されていてもよい。また、例えば、第2電極は、3つ以上に分割されていてもよい。
【0076】
(4d)上記実施形態では、姿受け治具7が、嵌め込み穴74を有し、当該嵌め込み穴74にワーク2の非溶接端部22が挿入されることでワーク2を保持する構成を例示したが、姿受け治具の形状はこれに限定されるものではない。
【0077】
例えば、本実施形態のような嵌め込み穴を有する姿受け治具は、2つ以上の部材により構成され、それらの部材によって、ワーク2の非溶接端部22及びワーク2の直線部20以外の外周面23を覆うようにワーク2を挟み込んで、保持するような構成であってもよい。
【0078】
また、例えば、姿受け治具は、ワーク2の非溶接端部22の少なくとも一部を覆うように構成されていてもよいし、ワーク2の直線部20以外の外周面23の少なくとも一部を覆うように構成されていてもよい。
【0079】
また、例えば、図6に示すように、姿受け治具7aは、本体部75aと、挿入部76aと、を有してもよい。本体部75aは、断面形状がU字状の部材である。本体部75aは、底部751aと、第1壁部752aと、第2壁部753aと、を有する。
【0080】
底部751aは、固定台6の上面61と当接し、平面状である押圧面754aを有する。
第1壁部752a及び第2壁部753aは、それぞれ底部751aから略垂直に延び出し、互いに間隔を空けて対面する。
【0081】
挿入部76aは、底部751aから、第1壁部752a及び第2壁部753aに挟み込まれた空間内に突出する。挿入部76aの中心軸は、第1壁部752aから第2壁部753aに向かう方向へ、底部751aの押圧面754aに対し傾斜する。具体的には、挿入部76aの中心軸は、第1壁部752a及び第2壁部753aに挟み込まれた空間内にワーク2の非溶接端部22が挿入された状態において、ワーク2の連通路24における大径部242の中心軸と一致する。挿入部76aの外径は、ワーク2の連通路24の大径部242の内径と略同一であり、挿入部76aは、大径部242に挿入可能である。
【0082】
第1壁部752a及び第2壁部753aに挟み込まれた空間内にワーク2の非溶接端部22が挿入されると、ワーク2の連通路24の大径部242に挿入部76aが挿入される。そして、挿入部76aの先端が、大径部242及び小径部241が繋がることにより形成される段部に当接した状態では、ワーク2の外周面23の一部が第2壁部753aに当接し、ワーク2の非溶接端部22の一部が底部751a及び第1壁部752aと当接する。これにより、ワーク2の図6における左右方向への移動が第1壁部752a及び第2壁部753aによって規制され、ワーク2の図6における前後方向への移動が挿入部76aによって規制される。その結果、ワーク2が姿受け治具7aによって、安定して保持される。なお、姿受け治具7aでは、第1壁部752a及び第2壁部753aが図6で示すように左右方向に対面して並ぶ構成を例示したが、第1壁部及び第2壁部の位置はこれに限定されるものではない。例えば、第1壁部及び第2壁部は、図6における前後方向に対面して並ぶ構成であってもよい。
【0083】
(4e)上記実施形態では、ワーク2は、中心軸Aが曲がった(換言すると、中心軸Aが溶接端部21の端面に対して傾いている部分を有する)構成を例示したが、ワークの形状はこれに限定されるものではない。
【0084】
例えば、ワークは、中心軸が、ワークの溶接端部の端面に対し傾斜した状態で、溶接端部から非溶接端部まで直線状に延びていてもよい。この場合、ワークは、ワークの中心軸が本体部材1の溶接面11に対し傾斜した状態で、本体部材1に固定される。このような形状のワークの場合も、第2電極をワークの直線部に配置することによって、抵抗溶接の際、ワークの本体部材との接合箇所に電流が均一に流れやすい。また、姿受け治具によってワークを保持することによって、ワークが安定して保持されるため、ワークに圧力を均一に加えやすくすることができる。したがって、本体部材1に対するワークの溶接不良を生じにくくすることができる。
【0085】
また、例えば、ワークは、当該ワークの両端部に電極を配置して抵抗溶接を行う場合に、加圧されるときに重心が偏るような形状、又は、電流の流れる経路の長さが異なるような形状であってもよい。
【0086】
(4f)上記実施形態では、車載部品100の製造方法における溶接工程において、第1電極4が下方に移動することで圧力が加えられたが、圧力が加えられる方向はこれに限定されるものではない。例えば、本体部材1及び本体部材1の非溶接面12に配置される第1電極4が固定された状態において、第2電極5がワーク2の直線部20に接触した状態のワーク2を保持する姿受け治具7が、下方から上方に移動することで圧力が加えられてもよい。
【0087】
(4g)上記実施形態では、車載部品100は排気系部品であったが、例えば、車載部品は熱交換器等に用いられる他の部品であってもよい。
(4h)上記実施形態では、ワーク2がセンサを保持するためのセンサボスであったが、車載部品100に所定の物を取り付けるための他の接合部材であってもよい。
【0088】
(4i)上記実施形態では、ワーク2の溶接端部21が上方を向いた状態で、本体部材1に溶接されたが、例えば、ワーク2の溶接端部21が下方を向いた状態で、本体部材1に溶接されてもよい。
【0089】
(4j)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。
【0090】
[5.本明細書が開示する技術思想]
[項目1]
本体部材と、当該本体部材に第1電極及び第2電極を用いた抵抗溶接により取り付けられる溶接部材と、を備え、車両に搭載される車載部品の製造方法であって、
溶接端部及び当該溶接端部とは反対側の非溶接端部を有する前記溶接部材の前記溶接端部を前記本体部材の溶接面に当接させることと、
前記本体部材の前記溶接面とは反対側の非溶接面に前記第1電極を接触させ、かつ、前記溶接部材の外周面における当該溶接端部近傍に、前記第2電極を接触させた状態で、前記抵抗溶接により、前記本体部材に前記溶接部材を溶接することと、
を備える、車載部品の製造方法。
【0091】
[項目2]
項目1に記載の車載部品の製造方法であって、
前記溶接部材は、前記溶接端部から前記非溶接端部まで延びる軸を有し、当該軸が前記溶接面に対し傾斜した、又は、当該軸が曲がった状態で、前記本体部材に固定される、車載部品の製造方法。
【0092】
[項目3]
項目2に記載の車載部品の製造方法であって、
前記溶接部材は、姿受け治具によって保持され、
前記姿受け治具は、前記抵抗溶接の際に押圧される押圧面であって、前記溶接面と対面する押圧面を有する、車載部品の製造方法。
【0093】
[項目4]
項目1から項目3までのいずれか1項に記載の車載部品の製造方法であって、
前記第2電極は、3以上の電極部を有し、
前記抵抗溶接を行う際、前記電極部は、前記溶接部材の前記外周面を周回する周方向に並んで配置され、それぞれの前記電極部が前記溶接部材の前記外周面に接触する
車載部品の製造方法。
【0094】
[項目5]
項目4に記載の車載部品の製造方法であって、
前記抵抗溶接を行う際、前記第2電極におけるそれぞれの前記電極部から、前記溶接部材の前記外周面に対し、略同一の大きさの荷重が加えられる
車載部品の製造方法。
【0095】
[項目6]
項目4に記載の車載部品の製造方法であって、
3以上の前記電極部のうちの一部を、特定電極部とし、
前記抵抗溶接を行う際、前記特定電極部から、前記溶接部材の前記外周面に対し、他の前記電極部よりも大きな荷重が加えられる
車載部品の製造方法。
【0096】
[項目7]
項目6に記載の車載部品の製造方法であって、
それぞれの前記電極部は、前記抵抗溶接の際に前記溶接部材の前記外周面と接触する接触面を有し、
前記特定電極部の前記接触面における前記周方向の長さは、他の前記電極部の前記接触面における前記周方向の長さよりも短い
車載部品の製造方法。
【0097】
[項目8]
項目4に記載の車載部品の製造方法であって、
それぞれの前記電極部は、前記抵抗溶接の際に前記溶接部材の前記外周面と接触する接触面を有し、それぞれの前記電極部の前記接触面における前記周方向の長さは、略同一である
車載部品の製造方法。
【0098】
[項目9]
項目1から項目8までのいずれか1項に記載の車載部品の製造方法であって、
当該車載部品は、排気ガスを通過させるための排気系部品である、車載部品の製造方法。
【0099】
[項目10]
項目1から項目9までのいずれか1項に記載の車載部品の製造方法であって、
前記抵抗溶接は、プロジェクション溶接である、車載部品の製造方法。
【0100】
[項目11]
項目1から項目10までのいずれか1項に記載の車載部品の製造方法であって、
前記溶接部材は、前記溶接端部が上方を向いた状態で、前記本体部材に溶接される、車載部品の製造方法。
【符号の説明】
【0101】
1…本体部材、2…ワーク、3…所定の物、4…第1電極、5…第2電極、5a…第1部分、5b…第2部分、6…固定台、7,7a…姿受け治具、11…溶接面、12…非溶接面、13…挿入孔、20…直線部、21…溶接端部、22…非溶接端部、23…外周面、24…連通路、25…突起部、71…底面、61,72…上面、73…側面、74…嵌め込み穴、75a…本体部、76a…挿入部、100…車載部品、241…小径部、242…大径部、741…穴底面、742…内周面、751a…底部、752a…第1壁部、753a…第2壁部、754a…押圧面、A…中心軸。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10