(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111798
(43)【公開日】2024-08-19
(54)【発明の名称】水分散型粘着剤組成物、および、再剥離用粘着シート
(51)【国際特許分類】
C09J 133/00 20060101AFI20240809BHJP
C09J 7/30 20180101ALI20240809BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20240809BHJP
C09J 4/00 20060101ALI20240809BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20240809BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20240809BHJP
【FI】
C09J133/00
C09J7/30
C09J11/06
C09J4/00
H01L21/78 M
H01L21/304 622J
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023186571
(22)【出願日】2023-10-31
(31)【優先権主張番号】P 2023016160
(32)【優先日】2023-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003845
【氏名又は名称】弁理士法人籾井特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】千葉 みずほ
(72)【発明者】
【氏名】北河 大葵
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
5F057
5F063
【Fターム(参考)】
4J004AA10
4J004AA17
4J004AB01
4J004CA02
4J004CA03
4J004CA04
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5F057AA04
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5F063FF21
(57)【要約】
【課題】優れた粘着力を有し、被着体への密着性と剥離性とを両立し得る水分散型粘着剤組成物、および、この水分散型粘着剤組成物を用いた再剥離用粘着シートを提供すること。
【解決手段】本発明の実施形態の水分散型粘着剤組成物は、水分散型アクリル系ポリマーと、活性エネルギー線硬化性樹脂と、光重合開始剤とを含み、この水分散型アクリル系ポリマーは、2以上のガラス転移温度を有するポリマーである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水分散型アクリル系ポリマーと、活性エネルギー線硬化性樹脂と、光重合開始剤とを含み、
該水分散型アクリル系ポリマーが、2以上のガラス転移温度を有するポリマーである、水分散型粘着剤組成物。
【請求項2】
前記水分散型アクリル系ポリマーが0℃以上であるガラス転移温度TgHと0℃未満であるガラス転移温度TgLとを有する、請求項1に記載の水分散型粘着剤組成物。
【請求項3】
前記水分散型アクリル系ポリマーがコアシェル型構造を有するポリマーである、請求項1に記載の水分散型粘着剤組成物。
【請求項4】
架橋剤をさらに含む、請求項1に記載の水分散型粘着剤組成物。
【請求項5】
水分散型アクリル系ポリマーと、活性エネルギー線硬化性樹脂と、光重合開始剤とを含み、
該水分散型アクリル系ポリマーが、コアシェル型構造を有するポリマーである、水分散型粘着剤組成物。
【請求項6】
粘着剤層と、基材と、を有し、
該粘着剤層が請求項1から5のいずれか1項に記載の水分散型粘着剤組成物を用いて形成された層である、再剥離用粘着シート。
【請求項7】
積算光量460mJ/cm2で紫外線照射した後のSiウエハに対する180°粘着力が0.1N/20mm未満である、請求項6に記載の再剥離用粘着シート。
【請求項8】
Siウエハに対する180°粘着力が4N/20mm以上である、請求項6に記載の再剥離用粘着シート。
【請求項9】
半導体ウエハ加工に用いられる、請求項6に記載の再剥離用粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水分散型粘着剤組成物、および、水分散型粘着剤組成物を用いて形成された粘着剤層を有する再剥離用粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
粘着シートは、被着体の表面保護、および、固定を目的として広く用いられている。例えば、半導体ウエハの加工工程では、被着体である半導体ウエハをバックグラインド工程、および、ダイシング工程で適切に保持するために用いられる。近年、チップの微細化および薄型化が進められており、加工時には薄く研削しても半導体ウエハを適切に保持可能な粘着力が要求される。しかしながら、粘着力の高い粘着シートでは剥離時にウエハを破損するおそれがある。そのため、加工後は容易に被着体から剥離することができる軽剥離な粘着シートが求められている。このような粘着剤組成物としては、紫外線硬化型粘着剤を用いる粘着シートが提案されている。半導体ウエハの加工工程に用いられる粘着シートは、使用後に半導体ウエハから剥離されるため、再剥離性を有する粘着シートが好ましく用いられている。再剥離性を有する粘着剤としては、溶剤系粘着剤が広く用いられている(例えば、特許文献1)。近年、環境負荷の低減が求められており、水系粘着剤を用いることが試みられている(例えば、特許文献2)。水系粘着剤を用いる場合、紫外線硬化型粘着剤とした場合であっても紫外線照射前の十分な粘着力と、紫外線照射後の軽剥離性とを両立することが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-31620号公報
【特許文献2】特開2009-73920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、優れた粘着力を有し、被着体への密着性と軽剥離性とを両立し得る水分散型粘着剤組成物、および、この水分散型粘着剤組成物を用いた再剥離用粘着シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
1.本発明の実施形態の水分散型粘着剤組成物は、水分散型アクリル系ポリマーと、活性エネルギー線硬化性樹脂と、光重合開始剤とを含み、この水分散型アクリル系ポリマーは、2以上のガラス転移温度を有するポリマーである。
2.上記1に記載の水分散型粘着剤組成物は、上記水分散型アクリル系ポリマーが0℃以上であるガラス転移温度TgHと0℃未満であるガラス転移温度TgLとを有していてもよい。
3.上記1または2に記載の水分散型粘着剤組成物は、上記水分散型アクリル系ポリマーがコアシェル型構造を有するポリマーであってもよい。
4.上記1から3のいずれかに記載の水分散型粘着剤組成物は、架橋剤をさらに含んでいてもよい。
5.本発明の別の局面において、水分散型粘着剤組成物は、水分散型アクリル系ポリマーと、活性エネルギー線硬化性樹脂と、光重合開始剤とを含み、該水分散型アクリル系ポリマーが、コアシェル型構造を有するポリマーである。
6.本発明の実施形態の別の局面においては再剥離用粘着シートが提供される。この再剥離用粘着シートは、粘着剤層と、基材と、を有し、この粘着剤層は上記1から5のいずれかに記載の水分散型粘着剤組成物を用いて形成された層であってもよい。
7.上記6に記載の再剥離用粘着シートは、積算光量460mJ/cm2で紫外線照射した後のSiウエハに対する180°粘着力が0.1N/20mm未満であってもよい。
8.上記6または7に記載の再剥離用粘着シートは、Siウエハに対する180°粘着力が4N/20mm以上であってもよい。
9.上記6から8のいずれかに記載の再剥離用粘着シートは、半導体ウエハ加工に用いられてもよい。
【発明の効果】
【0006】
本発明の実施形態によれば、優れた粘着力を有し、被着体への密着性と軽剥離性とを両立し得る水分散型粘着剤組成物、および、この水分散型粘着剤組成物を用いた再剥離用粘着シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の1つの実施形態による再剥離用粘着シートの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A.水分散型粘着剤組成物
本発明の実施形態の水分散型粘着剤組成物は、水分散型アクリル系ポリマーと、活性エネルギー線硬化性樹脂と、光重合開始剤とを含む。この水分散型アクリル系ポリマーは、2以上のガラス転移温度(以下、Tgともいう)を有するポリマーである。すなわち、本発明の実施形態の水分散型粘着剤組成物は、2以上のガラス転移温度を有するアクリル系ポリマーのエマルションを含む。このようなエマルションを用いれば、優れた粘着力を有し、被着体への密着性と軽剥離性とを両立し得る水分散型粘着剤組成物を提供することができる。本発明の実施形態の水分散型粘着剤組成物は水系粘着剤組成物でありながら、優れた粘着力を有し、被着体への密着性と軽剥離性とを両立することができる。そのため、溶剤の使用量を低減することで環境負荷を低減し、かつ、半導体ウエハの加工工程にも好適に用いることが可能な粘着剤組成物を提供することができる。
【0009】
A-1.水分散型アクリル系ポリマー
水分散型アクリル系ポリマー(以下、アクリル系ポリマーともいう)は、任意の適切なモノマー成分を水中で乳化重合することにより得ることができる。すなわち、水分散型アクリル系ポリマーは、アクリル系ポリマーのエマルションである。アクリル系ポリマーエマルションの平均粒子径は、好ましくは80nm~400nmであり、より好ましくは100nm~300nmであり、さらに好ましくは100nm~200nmである。本明細書において、水分散型アクリル系ポリマーの平均粒子径は、レーザー回折・散乱法により測定される体積基準のメディアン径(D50)をいう。
【0010】
水分散型アクリル系ポリマーは、0℃以上であるガラス転移温度TgHと0℃未満であるガラス転移温度TgLとを有することが好ましい。水分散型アクリル系ポリマーがTgHとTgLとを有していれば、優れた粘着力を有し、被着体への密着性と軽剥離性とを両立し得る水分散型粘着剤組成物を提供することができる。水分散型アクリル系ポリマーが3以上のガラス転移温度を有する場合、2以上のTgHと1つのTgLとを有する水分散型アクリル系ポリマーであってもよく、1つのTgHと2以上のTgLとを有する水分散型アクリル系ポリマーであってもよく、2以上TgHと2以上のTgLとを有する水分散型アクリル系ポリマーであってもよい。
【0011】
TgHは0℃以上であり、好ましくは5℃以上であり、より好ましくは10℃以上であり、さらに好ましくは15℃以上である。TgHが上記範囲であれば、優れた粘着力を有し、被着体への密着性と軽剥離性とを両立し得る水分散型粘着剤組成物を提供することができる。TgHが0℃未満である場合、バルク全体の弾性率が低くなり、紫外線照射後の粘着力が十分に低下しない場合がある。TgHは、例えば、80℃以下である。また、TgLは0℃未満であり、好ましくは-5℃以下であり、より好ましくは-10℃以下であり、さらに好ましくは-15℃以下であり、特に好ましくは-20℃以下である。TgLが上記範囲であれば、優れた粘着力を有し、被着体への密着性と軽剥離性とを両立し得る水分散型粘着剤組成物を提供することができる。TgLは、例えば、-50℃以上である。TgLが0℃以上である場合、粘着剤組成物を用いて形成された粘着剤層と、被着体との密着性が低く、紫外線照射前に十分な粘着力が得られない場合がある。
【0012】
本明細書において、水分散型アクリル系ポリマーのガラス転移温度は、各重合体を構成するモノマー単位とその割合から、Foxの式により算出される理論値をいう。Foxの式より求められる理論ガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)または動的粘弾性測定等の方法により求められる実測ガラス転移温度と一致し得る。なお、後述のとおり、理論値が算出できない場合には、実測ガラス転移温度を用いることができる。
【0013】
Foxの式とは、以下に示すように、アクリル系ポリマーのTgと、アクリル系ポリマーを構成するモノマーのそれぞれを単独重合したホモポリマーのガラス転移温度Tgiとの関係式である。
1/Tg=Σ(Wi/Tgi)
(式中、Tgはアクリル系ポリマーのガラス転移温度(単位:K)、Wiはアクリル系ポリマーにおけるモノマーiの重量分率(重量基準の共重合割合)、Tgiはモノマーiのホモポリマーのガラス転移温度(単位:K)を表す)。
【0014】
Tgの算出に使用するホモポリマーのガラス転移温度としては、任意の適切な資料に記載の値を用いることができる。例えば、以下に挙げるモノマーについては、該モノマーのホモポリマーのガラス転移温度として、以下の値を使用する。
アクリル酸2-エチルへキシル -70℃
メタクリル酸メチル 8℃
アクリル酸 106℃
ヒドロキシエチルメタクリレート 55℃
ダイアセトンアクリルアミド 77℃
【0015】
上記で例示した以外のモノマーのホモポリマーのガラス転移温度については、例えば、「Polymer Handbook」(第3版、John Wiley & Sons, Inc., 1989)に記載の数値を用いることができる。なお、複数種類の値が記載されている場合は、最も高い値を採用する。
【0016】
上記Polymer Handbookにホモポリマーのガラス転移温度が記載されていないモノマーについては、特開2007-51271号公報に記載の測定方法により得られる値を用いることができる。具体的には、温度計、攪拌機、窒素導入管および還流冷却管を備えた反応器に、モノマー100重量部、アゾビスイソブチロニトリル0.2重量部および重合溶媒として酢酸エチル200重量部を投入し、窒素ガスを流通させながら1時間攪拌する。このようにして重合系内の酸素を除去した後、63℃に昇温し10時間反応させる。次いで、室温まで冷却し、固形分濃度33重量%のホモポリマー溶液を得る。次いで、このホモポリマー溶液を剥離ライナー上に流延塗布し、乾燥して厚さ約2mmの試験サンプル(シート状のホモポリマー)を作製する。この試験サンプルを直径7.9mmの円盤状に打ち抜き、パラレルプレートで挟み込み、粘弾性試験機(ARES、レオメトリックス社製)を用いて周波数1Hzのせん断歪みを与えながら、温度領域-70℃~150℃、5℃/分の昇温速度でせん断モードにより粘弾性を測定し、tanδのピークトップ温度をホモポリマーのTgとする。
【0017】
1つの実施形態において、水分散型アクリル系ポリマーはコアシェル型構造を有するポリマー(以下、コアシェルポリマーともいう)であることが好ましい。水分散型アクリル系ポリマーがコアシェルポリマーである場合、上記のような2以上のガラス転移温度を有するポリマーを容易に得ることができる。水分散型アクリル系ポリマーがコアシェルポリマーである場合、好ましくはコア部がTgHを、シェル部がTgLを有する。このようなコアシェルポリマーである水分散型アクリル系ポリマーであれば、優れた粘着力を有し、被着体への密着性と軽剥離性とを両立し得る水分散型粘着剤組成物を提供することができる。水分散型アクリル系ポリマーが2以上のガラス転移温度を有するポリマーである場合、コアシェルポリマーである水分散型アクリル系ポリマーは2以上のシェル部を有し得る。2以上のシェル部を有することにより、水分散型アクリル系ポリマーは3以上のガラス転移温度を有し得る。以下、コアシェルポリマーである水分散型アクリル系ポリマーを代表例として詳細に説明する。
【0018】
コアシェルポリマーである水分散型アクリル系ポリマーは任意の適切なモノマー成分を段階的に乳化重合することにより得られる。例えば、コア部を形成するモノマー組成物を任意の適切な方法で乳化重合し、次いで生成したコア部となる重合体粒子の存在下でシェル部を形成するモノマー組成物を乳化重合することにより得られ得る。
【0019】
コアシェルポリマーである水分散型アクリル系ポリマーは、好ましくはコア比率が5重量%以上であり、より好ましくは10重量%以上である。コア部とシェル部の重量比が上記範囲であれば、優れた粘着力を有し、被着体への密着性と軽剥離性とを両立し得る水分散型粘着剤組成物を提供することができる。
【0020】
A-1-1.モノマー成分
コア部およびシェル部の形成に用いられるモノマー組成物は、任意の適切なガラス転移温度を有するコア部またはシェル部を形成するよう組成を調整することができる。例えば、上記Foxの式に基づいて、設計したTgHまたはTgLを有するコア部またはシェル部となるようモノマーを選択し、乳化重合すればよい。
【0021】
モノマー成分としては任意の適切なアクリル系モノマーが用いられる。代表的なモノマー成分としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが用いられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシル等の(メタ)アクリル酸C1-20アルキルエステルが挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルは1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。本明細書において、(メタ)アクリルとは、アクリルおよび/またはメタクリルをいう。
【0022】
モノマー組成物は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能な任意の適切な他のモノマーをさらに含んでいてもよい。例えば、アクリル酸、メタクリル酸等のカルボキシル基含有モノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物モノマー;(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8-ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10-ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12-ヒドロキシラウリル、(4-ヒドロキシメチルシクロへキシル)メチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル等のヒドロキシル基含有モノマー;スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸等のスルホン酸基含有モノマー;ダイアセトンアクリルアミド、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド等の(N-置換)アミド系モノマー;(メタ)アクリル酸アミノエチル等の(メタ)アクリル酸アミノアルキル系モノマー;(メタ)アクリル酸メトキシエチル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル系モノマー;N-シクロヘキシルマレイミド、N-イソプロピルマレイミド等のマレイミド系モノマー;N-メチルイタコンイミド、N-エチルイタコンイミド等のイタコンイミド系モノマー;スクシンイミド系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、N-ビニルピロリドン、メチルビニルピロリドン等のビニル系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアノアクリレートモノマー;(メタ)アクリル酸グリシジル等のエポキシ基含有アクリル系モノマー;(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール等のグリコール系アクリルエステルモノマー;(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、フッ素(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート等の複素環、ハロゲン原子、ケイ素原子等を有するアクリル酸エステル系モノマー;イソプレン、ブタジエン、イソブチレン等のオレフィン系モノマー;ビニルエーテル等のビニルエーテル系モノマー等が挙げられる。これらの単量体成分を含むことにより、凝集力、耐熱性、架橋性等を改質し得る。これらの単量体成分は、1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
A-1-2.界面活性剤
界面活性剤としては、任意の適切な界面活性剤を用いることができる。好ましくは、反応性界面活性剤を用いることができる。反応性界面活性剤は、界面活性剤としての機能とともに、分子中にラジカル重合性官能基(例えば、エテニル基、プロペニル基、アリル基やアリルエーテル基等のラジカル反応性基など)を有する。反応性界面活性剤を用いることにより、水分散型アクリル系ポリマーが用いられる粘着剤組成物による被着体の汚染を低減し、放射線照射処理前の粘着剤組成物の粘着力を向上させ得る。また、粘着剤組成物を用いた粘着シート(例えば、粘着剤層)の耐水性も向上し、加工時に水がかかった際にも粘着シートの剥がれを抑制することができる。
【0024】
反応性界面活性剤としては、任意の適切な界面活性剤(例えば、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤など)に、プロペニル基およびアリルエーテル基等のラジカル重合性官能基(ラジカル反応性基)が導入された界面活性剤が挙げられる。反応性界面活性剤は、エチレン性不飽和二重結合に係るラジカル重合性官能基を有するものであり、非反応性界面活性剤に比べ、形成される粘着剤層の飽和吸水率を小さくすることができる。さらに、水分散液の安定性、粘着剤層の耐久性の観点から、好ましく使用される反応性界面活性剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
アニオン系界面活性剤の具体例としては、オレイン酸ナトリウム等の高級脂肪酸塩類;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルアリールスルホン酸塩類;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム等のアルキル硫酸エステル塩類;ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類;ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸エステル塩類;モノオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルスルホコハク酸ナトリウム等のアルキルスルホコハク酸エステル塩およびその誘導体類;ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル硫酸エステル塩類等が挙げられる。ノニオン系界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類;ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリオレエート等のソルビタン高級脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート等のポリオキシエチレンソルビタン高級脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレート等のポリオキシエチレン高級脂肪酸エステル類;オレイン酸モノグリセライド、ステアリン酸モノグリセライド等のグリセリン高級脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン・ブロックコポリマー、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル等が挙げられる。
【0026】
反応性界面活性剤としては市販品を用いてもよい。アニオン系反応性界面活性剤の具体例としては、第一工業製薬株式会社製の商品名「アクアロンKH-05」、「アクアロンKH-10」、「アクアロンKH-20」、旭電化工業株式会社製の商品名「アデカリアソープSR-10N」、「アデカリアソープSR-20N」、花王株式会社製の商品名「ラテムルPD-104」等のアルキルエーテル系反応性界面活性剤;花王株式会社製の商品名「ラテムルS-120」、「ラテムルS-120A」、「ラテムルS-180P」、「ラテムルS-180A」、三洋化成株式会社製の商品名「エレミノールJS-20」等のスルフォコハク酸エステル系反応性界面活性剤;第一工業製薬株式会社製の商品名「アクアロンH-2855A」、「アクアロンH-3855B」、「アクアロンH-3855C」、「アクアロンH-3856」、「アクアロンHS-05」、「アクアロンHS-10」、「アクアロンHS-20」、「アクアロンHS-30」、「アクアロンBC-05」、「アクアロンBC-10」、「アクアロンBC-20」、旭電化工業株式会社製の商品名「アデカリアソープSDX-222」、「アデカリアソープSDX-223」、「アデカリアソープSDX-232」、「アデカリアソープSDX-233」、「アデカリアソープSDX-259」、「アデカリアソープSE-10N」、「アデカリアソープSE-20N」等のアルキルフェニルエーテル系またはアルキルフェニルエステル系反応性界面活性剤;日本乳化剤株式会社製の商品名「アントックスMS-60」、「アントックスMS-2N」、三洋化成工業株式会社製の商品名「エレミノールRS-30」等の(メタ)アクリレート硫酸エステル系反応性界面活性剤;第一工業製薬株式会社製の商品名「H-3330PL」、旭電化工業株式会社製の商品名「アデカリアソープPP-70」等のリン酸エステル系反応性界面活性剤が挙げられる。ノニオン系反応性界面活性剤の具体例としては、旭電化工業株式会社製の商品名「アデカリアソープER-10」、「アデカリアソープER-20」、「アデカリアソープER-30」、「アデカリアソープER-40」、花王株式会社製の商品名「ラテムルPD-420」、「ラテムルPD-430」、「ラテムルPD-450」等のアルキルエーテル系反応性界面活性剤;第一工業製薬株式会社製の商品名「アクアロンRN-10」、「アクアロンRN-20」、「アクアロンRN-30」、「アクアロンRN-50」、旭電化工業株式会社製の商品名「アデカリアソープNE-10」、「アデカリアソープNE-20」、「アデカリアソープNE-30」、「アデカリアソープNE-40」等のアルキルフェニルエーテル系またはアルキルフェニルエステル系反応性界面活性剤;日本乳化剤株式会社製の商品名「RMA-564」、「RMA-568」、「RMA-1114」等の(メタ)アクリレート硫酸エステル系反応性界面活性剤等が挙げられる。
【0027】
反応性界面活性剤としては好ましくはアニオン系反応性界面活性剤が用いられる。アニオン系反応性界面活性剤は、重合安定性に優れる場合が多く、粒子安定性・外観の観点から好ましい。なお、アニオン系反応性界面活性剤と、ノニオン系反応性界面活性剤とを併用してもよい。
【0028】
1つの実施形態において、反応性界面活性剤は好ましくはSO4
2-イオンの濃度が100μg/g以下である。また、反応性界面活性剤は、好ましくはアンモニウム塩型の界面活性剤である。本発明の実施形態の水分散型粘着剤組成物は半導体ウエハの加工工程に用いられる粘着シートに用いられる。そのため、水分散型粘着剤組成物に含まれる不純物イオンが問題となり得る。そのため、水分散型系粘着剤組成物としては、含まれる不純物イオンが少ないことが好ましい。SO4
2-イオンの濃度が上記範囲であり、アンモニウム塩型の界面活性剤を用いれば、不純物イオンによる悪影響が抑制され得る。なお、不純物イオンを低減または除去する方法としては、例えば、イオン交換樹脂法、膜分離法、アルコールを用いた不純物の沈殿ろ過法などの任意の適切な方法を用いることができる。
【0029】
反応性界面活性剤は任意の適切な量で用いられる。反応性界面活性剤は、モノマー組成物100重量部に対して好ましくは0.1重量部~5重量部であり、より好ましくは0.5重量部~3重量部である。反応性界面活性剤の含有量がモノマー組成物100重量部に対して5重量部を超えると、粘着剤組成物を半導体ウエハ加工用の粘着シートに用いる場合、ダイシング工程、または、その後の工程で、素子小片が粘着シートから剥離してしまうおそれがある。また、反応性界面活性剤の含有量がモノマー組成物100重量部に対して0.1重量部未満である場合、安定した乳化状態が維持できない恐れがある。
【0030】
また、反応性界面活性剤と、ラジカル重合性官能基を有していない界面活性剤とを組み合わせて用いてもよい。ラジカル重合性官能基を有していない界面活性剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルスルホコハク酸ナトリウムなどのアニオン系界面活性剤やノニオンアニオン系界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーなどのノニオン系界面活性剤などが挙げられる。これらの界面活性剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
A-1-3.水分散型アクリル系ポリマーの重合方法
水分散型アクリル系ポリマーは任意の適切な方法で重合することができる。例えば、イオン交換水等の水、モノマー組成物、界面活性剤、重合開始剤、および、任意の添加剤を反応容器に添加混合して、乳化重合を行うことにより水分散型アクリル系ポリマーを得ることができる。水分散型アクリル系ポリマーがコアシェルポリマーである場合、例えば、コア部を形成するモノマーを含むモノマー組成物、水、界面活性剤、重合開始剤、および、任意の添加剤を反応容器に添加混合して乳化重合を行うことによりコア部となるポリマー粒子を形成し、次いで、シェル部を形成するモノマーを含むモノマー組成物、水、界面活性剤、重合開始剤、および、任意の添加剤を反応容器に添加混合して乳化重合を行うことによりシェル部を形成し、コアシェルポリマーである水分散型アクリル系ポリマーを得られ得る。任意の添加剤としては、例えば、連鎖移動剤、シランカップリング剤等が挙げられる。
【0032】
重合開始剤としては、任意の適切な重合開始剤を用いることができる。例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2’-アゾビス[2-(5-メチル-2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2’-アゾビス(N,N’-ジメチレンイソブチルアミジン)などのアゾ系重合開始剤;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩;ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化水素などの過酸化物系重合開始剤;過酸化物と還元剤との組み合わせによるレドックス系開始剤[例えば、過酸化物とアスコルビン酸との組み合わせ(過酸化水素水とアスコルビン酸との組み合わせ等)、過酸化物と鉄(II)塩との組み合わせ(過酸化水素水と鉄(II)塩との組み合わせ等)、過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムとの組み合わせ等によるレドックス系重合開始剤など]が挙げられる。重合開始剤は、1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
重合開始剤は、用いる重合開始剤の種類およびモノマー組成物の組成などに応じて任意の適切な量で用いることができる。重合開始剤の含有量は、例えば、モノマー組成物100重量部に対して0.01重量部~1重量部であり、好ましくは0.02重量部~0.5重量部である。
【0034】
連鎖移動剤は、例えば、水分散型アクリル系ポリマーの分子量を調整するために用いることができる。連鎖移動剤としては、任意の適切な連鎖移動剤を用いることができる。具体的には、ラウリルメルカプタン、グリシジルメルカプタン、メルカプト酢酸、2-メルカプトエタノール、チオグリコール酸、チオグリコール酸2-エチルヘキシル、2,3-ジメチルカプト-1-プロパノールなどが挙げられる。連鎖移動剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。連鎖移動剤の含有量は、通常、モノマー組成物100重量部に対して0.001重量部~0.5重量部である。
【0035】
水分散型アクリル系ポリマーは、モノマー組成物、反応性界面活性剤、重合開始剤、および、連鎖移動剤等の任意の添加剤を乳化重合することにより得られる。したがって、水分散型アクリル系ポリマーは、エマルションの形態で調製され得る。乳化重合の方法としては、任意の適切な方法を用いることができる。具体的には、一般的な一括仕込み方法(一括重合方法)、モノマー滴下方法、モノマーエマルション滴下方法などを利用した乳化重合方法が挙げられる。モノマーなどを滴下する場合は、連続的に滴下してもよく、分割して滴下してもよい。なお、重合温度は、重合開始剤の種類などに応じて任意の適切な値に設定することができ、例えば、5℃~100℃の範囲に設定され得る。また、乳化重合により得られた水分散型アクリル系ポリマーの溶液に対して、さらに、アンモニア水、各種水溶性アミン、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液等のアルカリ水溶液を添加して、例えば、pH6~11、好ましくはpH7~10に調整することが好ましい。
【0036】
水分散型アクリル系ポリマーのゲル分率は、好ましくは50重量%以上であり、より好ましくは70重量%以上である。水分散型アクリル系ポリマーのゲル分率が50重量%未満であれば、放射線照射後の粘着力が低下しづらく、またゾル分による被着体汚染が生じやすい。水分散型アクリル系ポリマーのゲル分率は、例えば、99重量%以下である。水分散型アクリル系ポリマーのゲル分率は、任意の適切な方法で求めることができる。例えば、ゲル分率は、酢酸エチル等の溶媒に対する不溶分として求めることができ、具体的には、水分散型アクリル系ポリマーを酢酸エチル中に23℃で7日間浸漬した後の不溶成分の、浸漬前の試料に対する重量分率(単位:重量%)として求められる。
【0037】
A-2.活性エネルギー線硬化性樹脂
活性エネルギー線硬化性樹脂としては、紫外線等の活性エネルギー線で硬化し得る任意の適切な樹脂を用いることができる。好ましくは紫外線硬化型樹脂が用いられる。紫外線硬化型樹脂としては、例えば、紫外線硬化性のモノマーおよび/またはオリゴマーを用いることができる。紫外線硬化性モノマーとしては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリストールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。紫外線硬化性オリゴマーとしては、ウレタン系オリゴマー、ポリエーテル系オリゴマー、ポリエステル系オリゴマー、ポリカーボネート系オリゴマー、ポリブタジエン系オリゴマー等が挙げられる。オリゴマーとしては、好ましくは分子量が100~30000程度のものが用いられる。モノマーおよびオリゴマーは1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、活性エネルギー線硬化性樹脂は、必要に応じて、任意の適切な界面活性剤または自己乳化型ウレタン(メタ)アクリレートを用いて乳化してもよい。乳化することにより、水分散型粘着剤組成物の調製を容易に行うことができる。
【0038】
活性エネルギー線硬化性樹脂としては市販品を用いてもよい。例えば、UBE社製の商品名「ETERNACOLL UW-9102」、DIC社製の商品名「HYDRAN Exp UV-100S」、荒川化学工業社製の商品名「ビームセット EM-90」、「ビームセット EM-94」、ダイセル・オルネクス社製の商品名「UCECOAT7655」、「UCECOAT7200」、「UCECOAT7773」、富士フィルム和光純薬株式会社製の商品名「FOM-03006」、「FOM-03009」等が挙げられる。水分散型アクリル系ポリマーとの相溶性との観点から、水系樹脂(樹脂の水分散体)を適宜選択して用いてもよい。
【0039】
活性エネルギー線硬化性樹脂は、水分散型アクリル系ポリマーの種類等に応じて、任意の適切な量で用いられ得る。例えば、水分散型アクリル系ポリマー100重量部に対して、好ましくは5重量部~200重量部であり、より好ましくは20重量部~150重量部であり、さらに好ましくは20重量部~100重量部である。
【0040】
A-3.光重合開始剤
光重合開始剤としては、任意の適切な開始剤を用いることができる。光重合開始剤としては、例えば、エチル2,4,6-トリメチルベンジルフェニルホスフィネート、(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド等のアシルホスフィンオキシド系光重合開始剤;4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、α-ヒドロキシ-α,α’-ジメチルアセトフェノン、2-メチル-2-ヒドロキシプロピオフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のα-ケトール系化合物;メトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)-フェニル]-2-モルホリノプロパン-1等のアセトフェノン系化合物;ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、アニソインメチルエーテル等のベンゾインエーテル系化合物;ベンジルジメチルケタール等のケタール系化合物;2-ナフタレンスルホニルクロリド等の芳香族スルホニルクロリド系化合物;1-フェノン-1,1-プロパンジオン-2-(o-エトキシカルボニル)オキシム等の光活性オキシム系化合物;ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;チオキサンソン、2-クロロチオキサンソン、2-メチルチオキサンソン、2,4-ジメチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、2,4-ジクロロチオキサンソン、2,4-ジエチルチオキサンソン、2,4-ジイソプロピルチオキサンソン等のチオキサンソン系化合物;カンファーキノン;ハロゲン化ケトン;アシルホスフォナート、2-ヒドロキシ-1-(4-(4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル)フェニル)-2-メチルプロパン-1等のα―ヒドロキシアセトフェノン等が挙げられる。光重合開始剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。水分散型アクリル系ポリマー溶液に溶解(相溶)できるという点から、好ましくは室温(例えば23℃)で液状の光重合開始剤が用いられる。
【0041】
光重合開始剤としては、市販品を用いてもよい。例えば、IGM Resins社製の商品名:Omnirad 500、Omnirad TPO-L、Omnirad MBF、Omnirad 1173等が挙げられる。
【0042】
光重合開始剤は任意の適切な量で用いられ得る。光重合開始剤の含有量は、水分散型アクリル系ポリマー100重量部に対して、好ましくは0.5重量部~20重量部であり、より好ましくは1重量部~10重量部である。光重合開始剤の含有量が0.5重量部未満である場合、紫外線照射時に十分に硬化しないおそれがある。光重合開始剤の含有量が20重量部を超える場合、水分散型粘着剤組成物の保存安定性が低下するおそれがある。
【0043】
A-4.架橋剤
1つの実施形態において、水分散型粘着剤組成物は架橋剤をさらに含んでいてもよい。架橋剤を用いることにより、水分散型粘着剤組成物のゲル分率を調整することができる。架橋剤としては、特に制限されないが、例えば、2官能以上のエポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、メラミン樹脂系架橋剤、金属キレート系架橋剤、過酸化物系架橋剤、ヒドラジン系架橋剤などが挙げられる。架橋剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
具体的には、架橋剤としては、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン、1,3-ビス(N,N-グリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル等のエポキシ系架橋剤;トリレンジイソシアネート(ブロック)等のイソシアネート系架橋剤(ブロックイソシアネート系架橋剤など);商品名「カルボジライトV-01(日精紡社製)」等のカルボジイミド系架橋剤;ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル等のエポキシ系架橋剤;商品名「エラストロンBN-69(第一工業製薬社製)」等の水分散型イソシアネート系架橋剤;商品名「エポクロスWS-500(日本触媒社製)」等のオキサゾリン系架橋剤;商品名「ケミタイトPZ-33(日本触媒社製)」等のアジリジン系架橋剤;商品名「カルボジライトV-02、カルボジライトV-04(日清紡社製)」等の親水化処理カルボジイミド系架橋剤;ヘキサメチロールメラミンなどの活性メチロール、ヘキサメトキシメチルメラミンなどの活性アルコキシメチル等の活性メチロール基や活性アルコキシメチル基を含有する架橋剤;商品名「オルガチックスAI135(松本製薬工業社製)」等の金属キレート系架橋剤、アジピン酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジド等のヒドラジン系架橋剤などが挙げられる。
【0045】
架橋剤の含有量は、水分散型アクリル系ポリマー100重量部に対して、例えば、0.01重量部~10重量部であり、好ましくは0.05重量部~5重量部であり、より好ましくは0.1重量部~3重量部である。上記のとおり、水分散型粘着剤組成物は、架橋剤を含まなくても(すなわち、架橋剤の含有量が0重量部であっても)よい。
【0046】
A-5.添加剤
水分散型粘着剤組成物は、必要に応じて、任意の適切な添加剤を含み得る。添加剤としては、例えば、触媒(例えば、白金触媒)、粘着付与剤、可塑剤、顔料、染料、充填剤、老化防止剤、導電材、紫外線吸収剤、光安定剤、剥離調整剤、軟化剤、難燃剤、溶剤等が挙げられる。添加剤は目的に応じて任意の適切な量で用いられる。
【0047】
B.再剥離用粘着シート
B-1.再剥離用粘着シートの全体構成
図1は、本発明の実施形態による再剥離用粘着シートの概略断面図である。再剥離用粘着シート100は、基材20と、粘着剤層10と、をこの順に備える。粘着剤層10は上記水分散型粘着剤組成物を用いて形成される。上記のとおり、A項に記載の水分散型粘着剤組成物は光重合開始剤を含む。そのため、紫外線照射前においては被着体への優れた密着性を示し、紫外線照射後においては被着体への糊残り等を抑制し、容易に被着体から剥離することができる。再剥離用粘着シート100は、任意の適切な層をさらに含んでいてもよい。例えば、基材20と、粘着剤層10との間に、中間層(図示せず)が形成され得る。中間層を含む場合、表面に凹凸を有する被着体への密着性が向上し得る。
【0048】
再剥離粘着シートは、紫外線照射前の再剥離用粘着シートのSiウエハに対する粘着力が好ましくは4N/20mm以上であり、より好ましくは5N/20mm以上であり、さらに好ましくは6N/20mm以上であり、特に好ましくは7N/20mm以上である。紫外線照射前のSiウエハに対する粘着力が上記範囲であれば、被着体への十分な密着性を有する。また、Siウエハに対する粘着力は、例えば、15N/20mm以下である。本明細書において、Siウエハに対する粘着力は、以下の方法により測定される粘着力をいう。再剥離用粘着シートを幅20mm、長さ80mmに切断し、シリコンミラーウエハのミラー面に、23℃の雰囲気下、ハンドローラーを1往復させて圧着し、23℃で30分放置する。その後、粘着シートを剥離させるのに要する力を23℃、50%RH雰囲気下、引張速度300mm/分で180°剥離試験を行い測定する。
【0049】
再剥離粘着シートは、積算光量が460mJ/cm2となるよう紫外線を照射した後の再剥離用粘着シートのSiウエハに対する粘着力が好ましくは0.1N/20mm未満であり、より好ましくは0.08N/20mm以下であり、さらに好ましくは0.06N/20mm以下であり、特に好ましくは0.05N/20mm以下である。紫外線照射後のSiウエハに対する粘着力が上記範囲であれば、軽剥離性を有する。紫外線照射後の粘着力は小さいほど好ましい。本明細書において、積算光量が460mJ/cm2となるよう紫外線を照射した後の再剥離用粘着シートのSiウエハに対する粘着力は以下の方法で測定した値をいう。再剥離用粘着シートを幅20mm、長さ80mmに切断し、シリコンミラーウエハのミラー面に、23℃の雰囲気下、ハンドローラーを1往復させて圧着し、23℃で30分放置する。その後、紫外線(UV)を積算光量が460mJ/cm2(365nm換算)となるよう粘着シート面側から照射する。次いで、粘着シートを剥離させるのに要する力を23℃、50%RH雰囲気下、引張速度300mm/分の条件で180°剥離試験を行い測定する。
【0050】
本発明の実施形態の再剥離用粘着シートの厚みは任意の適切な厚みに設定され得る。再剥離用粘着シートの厚みは、好ましくは30μm~400μmであり、より好ましくは40μm~300μmであり、さらに好ましくは50μm~200μmである。
【0051】
B-2.基材
基材は、任意の適切な樹脂から構成され得る。基材を構成する樹脂の具体例としては、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンナフタレート(PBN)などのポリエステル系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体などのポリオレフィン系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリアミド、ポリイミド、セルロース類、フッ素系樹脂、ポリエーテル、ポリスチレンなどのポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン等が挙げられる。好ましくはポリオレフィン系樹脂、または、ポリエステル系樹脂である。これらの樹脂は紫外線を透過するため、紫外線硬化型粘着剤を用いて粘着剤層を形成し、軽剥離性を有する再剥離用粘着シートを提供することができる。
【0052】
基材は、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の成分をさらに含んでいてもよい。その他の成分としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤等が挙げられる。その他の成分の種類および使用量は、目的に応じて任意の適切な量で用いることができる。
【0053】
基材の厚みは、好ましくは30μm~200μmであり、より好ましくは40μm~180μmであり、さらに好ましくは45μm~180μmである。
【0054】
B-3.粘着剤層
粘着剤層は、A項に記載の水分散型粘着剤組成物を用いて形成される。上記のとおり、A項に記載の水分散型粘着剤組成物は優れた粘着力を有し、被着体への密着性と軽剥離性とを両立し得る。
【0055】
粘着剤層の厚みは、任意の適切な値に設定され得る。粘着剤層の厚みは、好ましくは2μm~200μmであり、より好ましくは3μm~150μmであり、さらに好ましくは5μm~100μmである。粘着剤層の厚みが上記範囲であれば、被着体に対し十分な粘着力を発揮し得る。
【0056】
C.再剥離用粘着シートの製造方法
本発明の実施形態の再剥離用粘着シートは、任意の適切な方法により製造され得る。例えば、剥離ライナーに水分散型粘着剤組成物を塗布し、乾燥させて、剥離ライナー上に粘着剤層を形成した後、基材に粘着剤層を転写することにより得られ得る。また、基材上に水分散型粘着剤組成物を塗布し、乾燥させて、再剥離用粘着シートを得てもよい。水分散型粘着剤組成物の塗布方法としては、バーコーター塗布、エアナイフ塗布、グラビア塗布、グラビアリバース塗布、リバースロール塗布、リップ塗布、ダイ塗布、ディップ塗布、オフセット印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷など種々の方法を採用することができる。乾燥方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。
【0057】
D.再剥離用粘着シートの用途
本発明の実施形態の再剥離用粘着シートは半導体ウエハの製造工程に好適に用いることができる。例えば、ダイシングテープ、および、バックグラインドテープ等として用いることができる。上記のとおり、本発明の実施形態の再剥離用粘着シートは粘着剤層の外観に優れる。そのため、冷却または異物除去のために水が噴射される半導体ウエハの加工工程に用いられる場合であっても、被着体を適切に保持し、ウエハ欠けおよびチップ飛び等の発生を抑制し得る。
【実施例0058】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。また、実施例において、特に明記しない限り、「部」および「%」は重量基準である。
【0059】
[合成例1]アクリル系ポリマーAの合成
冷却管、窒素導入管、温度計、攪拌装置を備えた反応容器に、水180重量部、アクリル酸2-エチルヘキシル(2EHA)32重量部、メタクリル酸メチル(MMA)60重量部、アクリル酸メチル(AA)4重量部、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)3重量部、ダイアセトンアクリルアミド(DAAM)1重量部、および、反応性界面活性剤(第一工業製薬社製、商品名「アクアロンKH-1025」)1.5重量部を混合し、ホモミキサーで攪拌して乳化した。その後、攪拌しながら1時間窒素置換した。以降、重合中の内浴温度は30℃に制御した。次いで、過酸化水素水(30重量%含有)0.1重量部を加え、アスコルビン酸水溶液(アスコルビン酸0.05重量部および水10重量部を混合した水溶液)を1ml添加し、重合を開始させた。重合反応を2時間行い、コア粒子が分散した水分散液を得た。
次いで、水180重量部、2EHA51重量部、MMA41重量部、AA4重量部、HEMA3重量部、DAAM1重量部、および、反応性界面活性剤(第一工業製薬社製、商品名「アクアロンKH-1025」)0.5重量部を混合し、ホモミキサーで攪拌して乳化し、モノマーエマルション溶液を得た。その後、コア粒子が分散した水分散溶液に、モノマーエマルション溶液を添加し、攪拌しながら1時間窒素置換を行った。次いで、上記アスコルビン酸水溶液を1ml添加し、重合を開始させた。重合開始から2時間後、残りのアスコルビン酸水溶液8mlを添加し、さらに3時間熟成反応を実施し、コアシェル型水分散型アクリル系ポリマーAを得た。
【0060】
[合成例2~5]アクリル系ポリマーB~Eの合成
コア部およびシェル部のモノマー組成を表1に記載のとおり変更した以外は合成例1と同様にして、コアシェル型水分散型アクリル系ポリマーB~Eを得た。
【0061】
[合成例6]アクリル系ポリマーFの合成
冷却管、窒素導入管、温度計、攪拌装置を備えた反応容器に、水180重量部、2EHA62重量部、MMA30重量部、AA4重量部、HEMA3重量部、DAAM1重量部、および、反応性界面活性剤(第一工業製薬株式会社製、商品名「アクアロンKH-1025」)2重量部を添加し、ホモミキサーで攪拌して乳化した。次いで、攪拌しながら1時間窒素置換した。以降、重合中の内浴温度は30℃に制御した。次いで、過酸化水素水(30重量%含有)0.1重量部を加えた後、アスコルビン酸水溶液(アスコルビン酸0.05重量部および水10重量部を含む水溶液)を1ml添加し、重合を開始させた。重合開始から2時間後、残りのアスコルビン酸水溶液9mlを添加し、さらに3時間熟成反応を実施し、水分散型アクリル系ポリマーFを合成した。
【0062】
【0063】
[実施例1]
コアシェル型水分散型アクリル系ポリマーA100重量部(固形分)、UV硬化樹脂(UBE社製、商品名「ETERNACOLL UW-9102」)50重量部、架橋剤(大塚化学社製、商品名「アジピン酸ヒドラジド」)0.5重量部、光重合開始剤(IGM ResinsB.V.社製、商品名「Omnirad500」、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(50%)とベンゾフェノン(50%)の混合物)3重量部を、添加混合し、次いで10%のアンモニア水で中和し、水分散型粘着剤溶液を得た。
得られた粘着剤溶液を、シリコーン剥離処理を施したポリエステルフィルム(厚み:50μm)のシリコーン剥離処理面に、乾燥後の厚みが20μmとなるように塗工し、125℃で3分間乾燥させ、粘着剤層を形成した。次いで、粘着剤層の粘着剤層側表面に、コロナ放電式で表面酸化処理を施したポリオレフィン(PO)フィルム(厚み80μm)を貼り合わせ、粘着剤層を転写し、粘着シートを作製した。
【0064】
[実施例2]
コアシェル型水分散型アクリル系ポリマーAに代えて、コアシェル型水分散型アクリル系ポリマーBを用いたこと以外は実施例1と同様にして粘着シートを得た。
【0065】
[実施例3]
コアシェル型水分散型アクリル系ポリマーAに代えて、コアシェル型水分散型アクリル系ポリマーCを用いたこと、架橋剤としてADHに代えてV-04(日清紡ケミカル社製、商品名「カルボジライト V-04」)を用いたこと以外は実施例1と同様にして粘着シートを得た。
【0066】
[実施例4]
UV硬化樹脂としてUW-9102に代えて、EM-94(荒川化学工業社製、商品名「ビームセットEM-94」)を用いたこと以外は実施例3と同様にして粘着シートを得た。
【0067】
[実施例5]
UV硬化樹脂としてUW-9102に代えて、UV-100S(DIC社製、商品名「HYDRAN Exp UV-100S」)を用いたこと以外は実施例3と同様にして粘着シートを得た。
【0068】
[実施例6]
コアシェル型水分散型アクリル系ポリマーAに代えて、コアシェル型水分散型アクリル系ポリマーDを用いたこと以外は実施例1と同様にして粘着シートを得た。
【0069】
[実施例7]
コアシェル型水分散型アクリル系ポリマーAに代えて、コアシェル型水分散型アクリル系ポリマーEを用いたこと以外は実施例1と同様にして粘着シートを得た。
【0070】
[実施例8]
UV硬化樹脂の含有量を100重量部としたこと、および、架橋剤を添加しなかったこと以外は実施例7と同様にして粘着シートを得た。
【0071】
[実施例9]
UV硬化樹脂の含有量を100重量部としたこと以外は実施例7と同様にして粘着シートを得た。
【0072】
(比較例1)
コアシェル型水分散型アクリル系ポリマーAに代えて、水分散型アクリル系ポリマーFを用いたこと以外は実施例1と同様にして粘着シートを得た。
【0073】
(比較例2)
コアシェル型水分散型アクリル系ポリマーCに代えて、水分散型アクリル系ポリマーFを用いたこと、および、UV硬化樹脂としてUW-9102に代えて、UV-100S(DIC社製、商品名「HYDRAN Exp UV-100S」)を用いたこと以外は実施例1と同様にして粘着シートを得た。
【0074】
<評価>
実施例および比較例で用いた水分散型アクリル系ポリマー、および、得られた粘着シートを用いて以下の評価を行った。結果を表2に示す。
1.ガラス転移温度
合成例1~6で得られた水分散型アクリル系ポリマーのガラス転移温度を、動的粘弾性測定装置(TA Instruments社製、製品名:ARES)用いて測定した。得られたTanδの値からコアおよびシェルのTgを求めた。
【0075】
2.粘着力
得られた粘着シートを、幅20mm、長さ80mmに切断し、シリコンミラーウエハ(信越半導体株式会社製)のミラー面に、23℃の雰囲気下、ハンドローラーを1往復させて圧着し、23℃で30分放置した。その後、粘着シートを剥離させるのに要する力を23℃、50%RH雰囲気下、180°剥離、引張速度300mm/分の条件で測定し、UV前粘着力とした。
また、同様の方法でシリコンミラーウエハに粘着シートを圧着し、23℃で30分放置した。次いで、紫外線(UV)(積算光量:460mJ/cm2(365nm換算))を粘着シート面側から照射した。その後、粘着シートを剥離させるのに要する力を、23℃、50%RH雰囲気下、180°剥離、引張速度300mm/分の条件で測定し、UV後粘着力とした。
【0076】
【0077】
本発明の実施例の粘着シートは、紫外線照射前においては高い粘着力を有し、紫外線の照射後には粘着力が十分に低下するものであり、被着体への密着性と軽剥離性とを両立し得るものであった。