(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111816
(43)【公開日】2024-08-19
(54)【発明の名称】電池熱暴走の早期検出を可能にするバッテリセル封入
(51)【国際特許分類】
H01M 10/48 20060101AFI20240809BHJP
H01M 50/317 20210101ALI20240809BHJP
H01M 50/375 20210101ALI20240809BHJP
H01M 50/342 20210101ALI20240809BHJP
H01M 50/204 20210101ALI20240809BHJP
H02H 7/18 20060101ALI20240809BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240809BHJP
【FI】
H01M10/48 301
H01M50/317 101
H01M50/375
H01M50/342 101
H01M50/204 401D
H02H7/18
H02J7/00 S
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024013032
(22)【出願日】2024-01-31
(31)【優先権主張番号】18/165,121
(32)【優先日】2023-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】500575824
【氏名又は名称】ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】Honeywell International Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100138759
【弁理士】
【氏名又は名称】大房 直樹
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ シー.フォスター
【テーマコード(参考)】
5G053
5G503
5H012
5H030
5H040
【Fターム(参考)】
5G053AA14
5G053BA09
5G053FA05
5G503BA01
5G503BB02
5G503CA10
5G503CB04
5G503CB11
5G503FA06
5G503FA18
5G503GD03
5G503GD06
5H012AA03
5H012BB04
5H012EE01
5H012FF08
5H012JJ09
5H030AA06
5H030AA10
5H030AS08
5H030FF21
5H030FF31
5H030FF52
5H040AA37
5H040AS07
5H040AT04
5H040DD26
(57)【要約】 (修正有)
【課題】電池における熱暴走の早期警告を提供するための製品、装置及びシステムを提供する。
【解決手段】バッテリセル本体202と、バッテリセル本体を封入するガス放出材料と、を備えるバッテリセルユニット200であって、ガス放出材料204は、ある範囲のオフガス温度で1つ以上のオフガス208を放出する化合物を含み、オフガス温度の範囲は、熱暴走保留事象に対応付けられ、1つ以上のオフガスは、ガスセンサによって検出可能である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリセルユニットであって、
バッテリセル本体と、
前記バッテリセル本体を封入するガス放出材料であって、(i)前記ガス放出材料は、ある範囲のオフガス温度で1つ以上のオフガスを放出する化合物を含み、(ii)前記オフガス温度の範囲は、熱暴走保留事象に対応付けられ、(iii)前記1つ以上のオフガスは、ガスセンサによって検出可能である、ガス放出材料と、を備える、バッテリセルユニット。
【請求項2】
前記ガス放出材料は、前記オフガス温度の範囲に対応付けられた特定の蒸気圧を含む1つ以上の化学成分が組み込まれたポリマーフィルムを含む、請求項1に記載のバッテリセルユニット。
【請求項3】
バッテリシステムであって、
1つ以上のバッテリセルを含むバッテリパックであって、前記1つ以上のバッテリセルは、バッテリセル本体と、前記バッテリセル本体を封入するガス放出材料であって、(i)前記ガス放出材料は、ある範囲のオフガス温度で1つ以上のオフガスを放出する化合物を含み、(ii)前記オフガス温度の範囲は、熱暴走保留事象に対応付けられ、(iii)前記1つ以上のオフガスは、ガスセンサによって検出可能である、ガス放出材料と、を含む、バッテリパックと、
前記オフガスを検出するよう構成された前記ガスセンサと、
前記ガスセンサに結合されたバッテリ管理システムであって、前記オフガスの検出に基づいて1つ又は複数のアクションを実行するように構成されたバッテリ管理システムと、を備える、バッテリシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の様々な実施形態は、バッテリセルの封入に関し、より詳細には、熱暴走の早期表示を可能にするポリマーフィルムの処理に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池などの電池の熱暴走は、十分に立証された問題である。電池が、電池内で不可逆的な発熱連鎖反応を引き起こす可能性がある条件にさらされると、熱暴走から火災又は激しい爆発が生じる可能性がある。電気自動車製造業者は、バッテリ管理システムを利用してバッテリバンク内の電気的状態を監視するが、多くの場合、監視は、熱暴走の前に、状況に安全かつ適切に反応するのに十分な時間を乗員に与えるのに十分な通知を提供しない。可能な限り多くの予測時間で熱暴走事象を予測する手段が必要である。
【発明の概要】
【0003】
本明細書に記載される様々な実施形態は、電池における熱暴走の早期警告を提供するための製品、装置、及びシステムに関する。
【0004】
本開示の様々な実施形態によれば、バッテリセルユニットが提供される。いくつかの実施形態では、バッテリセルユニットは、バッテリセル本体と、バッテリセル本体を封入するガス放出材料とを備え、(i)ガス放出材料は、ある範囲のオフガス温度で1つ以上のオフガスを放出する化合物を含み、(ii)オフガス温度の範囲は、熱暴走保留事象に対応付けられ、(iii)1つ以上のオフガスは、ガスセンサによって検出可能である。
【0005】
いくつかの実施形態では、ガスセンサは、金属酸化物センサ、電気化学センサ、全揮発性有機化合物センサ、又はエアロゾルセンサのうちの少なくとも1つを備える。いくつかの実施形態において、ガス放出材料は、オフガス温度の範囲に対応付けられた特定の蒸気圧を含む1つ以上の化学成分が組み込まれたポリマーフィルムを含む。いくつかの実施形態では、ガス放出材料はサーモクロミック添加剤を含む。いくつかの実施形態では、ガス放出材料は1つ以上のポリマーを含む。いくつかの実施形態では、ガス放出材料は、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル、又はポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)のうちの少なくとも1つを含む1つ以上のポリオレフィンを含む。いくつかの実施形態において、オフガス温度の範囲は、熱暴走事象に対応付けられた温度未満である。いくつかの実施形態では、オフガス温度の範囲は、セル通気に対応付けられた温度未満である。いくつかの実施形態では、オフガス温度の範囲は、120℃~140℃(248°F~284°F)の範囲を含む。いくつかの実施形態において、化学成分は、ガス放出材料に別個に組み込まれ、オフガス温度の範囲を含むそのガス放出特性を改変する。
【0006】
別の実施形態によれば、バッテリシステムが提供される。いくつかの実施形態では、バッテリシステムは、1つ以上のバッテリセルを備えるバッテリパックを備え、1つ以上のバッテリセルは、バッテリセル本体と、バッテリセル本体を封入するガス放出材料とを備え、(i)ガス放出材料は、ある範囲のオフガス温度で1つ以上のオフガスを放出する化合物を含み、(ii)オフガス温度の範囲は、熱暴走保留事象に対応付けられ、(iii)1つ以上のオフガスは、ガスセンサによって検出可能であり、ガスセンサは、オフガスを検出するように構成され、バッテリ管理システムは、ガスセンサに結合され、バッテリ管理システムは、オフガスの検出に基づいて1つ以上の動作を実行するように構成される。いくつかの実施形態では、ガスセンサは、信号をバッテリ管理システムに送信するように更に構成され、信号は、オフガスの検出に基づいて、1つ又は複数のバッテリセルのうちの少なくとも1つがオフガス温度の範囲に到達したという指示を含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の動作は、バッテリパックの利用を無効にすることを含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の動作は、警告信号を生成することを含む。いくつかの実施形態では、ガスセンサは、金属酸化物センサ、電気化学センサ、全揮発性有機化合物センサ、又はエアロゾルセンサのうちの少なくとも1つを備える。いくつかの実施形態において、ガス放出材料は、オフガス温度の範囲に対応付けられた特定の蒸気圧を含む1つ以上の化学成分が組み込まれたポリマーフィルムを含む。いくつかの実施形態では、ガス放出材料は1つ以上のポリマーを含む。いくつかの実施形態では、ガス放出材料は1つ以上のポリマーを含む。いくつかの実施形態において、オフガス温度の範囲は、熱暴走事象に対応付けられた温度未満である。いくつかの実施形態では、オフガス温度の範囲は、セル通気に対応付けられた温度未満である。いくつかの実施形態において、オフガス温度の範囲は、248°F~266°Fの範囲を含む。
【0007】
別の態様によれば、方法が提供される。いくつかの実施形態では、方法は、コンピューティングデバイスによって、ガスセンサからオフガス測定データをサンプリングするステップを含み、オフガス測定データは、1つ以上のバッテリセルと、バッテリセル本体を封入するガス放出材料とを含むバッテリパッケージに対応付けられ、(i)ガス放出材料は、ある範囲のオフガス温度で1つ以上のオフガスを放出する化合物を含み、(ii)オフガス温度の範囲は、熱暴走保留事象に対応付けられ、(iii)1つ以上のオフガスは、ガスセンサによって検出可能である。いくつかの実施形態では、方法は、コンピューティングデバイスによって、オフガス測定データに基づいて1つ又は複数のバッテリセルの温度又は温度変化率を決定するステップと、コンピューティングデバイスによって、1つ又は複数のバッテリセルの温度又は温度変化率に基づいて熱暴走保留事象を決定するステップと、コンピューティングデバイスによって、熱暴走保留事象に基づいて1つ又は複数のアクションを実行するステップとを更に含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本開示の教示を組み込む実施形態は、本明細書に提示される図に関連して示され、説明される。
【
図2】本明細書で論じられるいくつかの実施形態に従う例示的なバッテリセルユニットを示す。
【
図3】本開示の様々な実施形態による、熱暴走検出を組み込んだ例示的なバッテリシステムの例示的な概略図を示す。
【
図4】本開示の様々な実施形態による、熱暴走保留事象を監視するための方法のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本開示のいくつかの実施形態について添付図面を参照しながら以下により詳細に説明するが、本開示の全てではなくいくつかの実施形態を示すものである。実際に、本開示は、多くの異なる形態で具現化されてもよく、本明細書に記載される実施形態に限定されるものとして解釈されるべきではなく、むしろ、これらの実施形態は、本開示が適用可能な法的要件を満たすように提供される。同様の数字は、全体を通して同様の要素を指す。
【0010】
本明細書で使用される場合、「実質的に」及び「およそ」などの用語は、参照された要素又は関連する説明が、適用可能な工学公差内で正確であることを示す。
【0011】
本明細書で使用するとき、用語「備える(comprising)」は、限定するものではないが、含むことを意味しており、特許文脈で典型的に使用される手法で解釈されるべきである。「備える(comprises)」、「含む(includes)」、及び「有する(having)」などのより広範な用語の使用は、「からなる(consisting of)」、「から本質的になる(consisting essentially of)」、及び「から実質的に構成される(comprised substantially of)」などのより狭い用語へのサポートを行うことを理解されたい。
【0012】
語句「一実施形態では」、「一実施形態によると」及び同様の語句は、その語句に続く特定の特徴、構造又は特性が、本開示の少なくとも1つの実施形態に含まれ得ること、及び本開示の2つ以上の実施形態に含まれ得る(重要なことに、そのような語句は必ずしも同じ実施形態に言及しない)ことを一般に意味する。
【0013】
本明細書で使用するとき、用語「例」又は「例示的な」は、「一例、事例、又は実例としての役割を果たすこと」を意味する。「例示的な」として本明細書に記載される任意の実装形態は、必ずしも他の実装形態よりも好ましい又は有利であると解釈されなくてよい。
【0014】
本明細書が、ある構成要素又は特徴が、「含まれてもよい」、「含むことできる」、「含み得る」、「含むべきである」、「含むであろう」、「好ましくは含む」、「場合により含む」、「典型的には含む」、「任意選択的に含む」、「例えば含む」、「多くの場合含む」又は「含むかもしれない」(又は他のそのような言語)、あるいはある特性を有することを提示する場合、その特定の部品又は特徴は、含まれることを必要としないか又はその特性を有することを必要としない。そのような構成要素又は特徴は、いくつかの実施形態に任意選択的に含まれてもよく、又は除外されてもよい。
【0015】
電池の熱暴走検出に関連する多くの技術的課題及び困難がある。特に、熱暴走を検出するための従来の方法(例えば、熱暴走事象へのリードアップから生じるバッテリからの温度変化を検出するための温度センサの使用)は、熱暴走の初期段階を検出するように設計されていない。ガスセンサが熱暴走事象を予測することができる時間の長さは、特定の誤用状態(例えば、パンクvs.過充電vs.過熱)、バッテリ組成物タイプ、使用されるバッテリ電解質システム、バッテリの充電状態、欠陥バッテリに対するセンサの位置、及びセンサの応答時間を含む多数の要因に依存する。変数の数が多いと、予測時間及び性能の変動性及び不確実性が導入され、その結果、乗員に対する警告時間が一貫しなくなる可能性があり、場合によっては、車両から出るのに必要な措置を開始するのに十分な時間が与えられない可能性がある。したがって、電池の早期熱暴走検出におけるそのような課題及び困難を克服する必要がある。
【0016】
加えて、新興の電気自動車市場内で熱暴走を検出するために標準センサが設計されている業界標準バッテリはない。更に、バッテリ技術は急速に進化し続けており、現在のバッテリ技術の制御不能状態を検出又は予測するようなセンサを設計することは、将来のバッテリ設計に対して効果的に機能することを意味しない。したがって、バッテリ技術が成熟するにつれて、異なるバッテリタイプのための一意のセンサ技術展開が必要とされる場合があり、これは、高価で時間のかかる再適格性確認を必要とすることになる。
【0017】
図1に示すように、リチウムイオン電池の熱暴走は、典型的には約150℃(302°F)で起こり始め、セル通気は、典型的には約134℃(272°F)で起こり始める。セル通気は、過度の動作温度に起因してバッテリセル内に蓄積された過度の圧力によって引き起こされ得るバッテリセルの破裂から生じる、バッテリセルからのガスの放出を指し得る。熱暴走は、バッテリセルの局所温度の急速な上昇によって現れる、制御されない発熱化学反応を指すことがある。熱暴走が起こると、バッテリセルは自己破壊し、車両火災の条件を確立する可能性がある。熱滑走路状態が検出され、その時に警報が発せられた場合、乗員が車両から出るために利用できるのは数分(例えば、5分未満)だけである。しかしながら、セル通気が検出されて警報が発せられた場合、
図1に示す温度曲線に基づいて車両から出るために追加の時間(例えば、8分)が与えられてもよい。
【0018】
セル通気は、バッテリセル内のガス圧力の上昇の結果として起こり得る。ガス圧力の上昇は、温度の機能としてもよく、その結果、セル通気検出は、代用温度インジケータとみなすことができる。いくつかの車両は何千ものセルを含み得るので、各バッテリセル上で直接温度を測定することが実現可能でない場合があることを考慮すると、セル通気を検出すること(例えば、ガス検出又はエアロゾル検出)は、信頼性のある代替案を提供し得る。換言すれば、セル通気の検出は、温度とバッテリセルからのガス放出の両方の監視を提供することができる。しかしながら、セル通気を検出することの欠点は、セルから通気されるガスの化学的構成が、主にバッテリ内で使用される電解質システムに依存し得ることであり、したがって、ガスセンサを介したセル通気の検出は、センサ技術及び特定のガスに対するその感度、並びにオゾン、窒素酸化物、二酸化炭素、一酸化炭素、及び揮発性有機化合物(VOC)を含有し得る排気蒸気又はスモッグ等の周囲環境に存在する他のガスに対するその交差感度に依存し得る。
【0019】
本開示の種々の実施形態によれば、バッテリのセル通気を検出するのではなく、システムは、バッテリパックのバッテリセルを封入するために使用されるポリマーフィルム等の選択されたガス放出材料のガス放出を検出するように構成されてもよい。用語「オフガス(off-gas)」、「オフガス処理(off-gassing)」及び「ガス放出(outgassing)」並びに/又は同様の語は、本明細書では、ガス放出材料に溶解、捕捉、吸収、又は組み込まれたガスの放出を指すために互換的に使用される。本開示の様々な実施形態によるバッテリセルを封入するために使用可能なポリマーフィルムの例としては、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル、PCTFEなどのポリオレフィンを含むポリマー、及び当業者に公知の他の種類のポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、選択されたガス放出材料は、1つ以上の合成織物又はエラストマーを含んでもよい。
【0020】
バッテリは、本明細書で説明されるように、任意のタイプの1つ以上のバッテリセルを備えるバッテリパックを指し得る。例示的なバッテリセルタイプは、いくつか例を挙げると、リチウムイオン(例えば、リン酸鉄リチウムvs.リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物vs.リチウムマンガン酸化物vs.リチウムコバルト酸化物)、鉛酸、ニッケルカドミウム、ニッケル金属水素化物を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、ガス放出材料は、熱暴走保留事象に対応付けられたオフガス温度の範囲と、オフガス温度の範囲において、オフガスを放出する、ある閾値量のオフガスを放出する、又は所与の変化率でオフガスを放出することが可能な既知の特定の材料又は化合物とを備えてもよい。オフガスは、金属酸化物センサ、電気化学センサ、全揮発性有機化合物センサ、エアロゾルセンサ、又は異なる種類のガスを検出することが可能な任意の他の一般的な電子ガス感知機器及び/もしくは方法等のガスセンサによって検出されてもよい。したがって、前駆事象(例えば、セル通気温度未満のセル温度)は、電池電解質変数を決定する必要なく、既知のガス放出特性を有する選択されたガス放出材料で封入された任意のタイプのバッテリセルについて検出することができる。選択されたガス放出材料でバッテリセルを封入することはまた、既知の一貫した特性を有する1つ以上の特定のオフガス成分に対してセンサをカスタマイズする能力を提供し得る。したがって、バッテリ自体に取り付けられた既知の制御された一貫したガス放出材料を使用してバッテリ状態を監視することによって、センサを使用して、バッテリ技術又は材料とは無関係に熱暴走を正確に予測することができる。更に、ガス放出材料は、所与のセンサ技術に合わせて選択又は調整されてもよい。
【0021】
本開示の様々な実施形態によれば、ガスセンサは、バッテリパックによって放出される1つ以上のオフガスに基づいて、熱暴走事象を検出するように構成されてもよい。特に、バッテリパックは、所与の温度において、ガス放出材料がガスセンサによって検出可能なオフガスを放出し得るように、ガス放出材料で封入された1つ以上のバッテリセルを備えてもよい。いくつかの実施形態では、ガス放出材料は、所与の温度でガスセンサによって検出可能なオフガスを放出するために、特定の蒸気圧を含む1つ又は複数の化学成分で処理された、染み込ませられた、コーティングされた、加工された、又は他の方法で組み込まれたポリマーを含む。リチウムイオン電池用途では、所与の温度は、熱暴走が起こるときの温度(約150℃/302°F)よりも十分に低い温度、又はセル通気が起こり始めるときの温度(約134℃/272°F)よりも低い温度を含み得る。一例として、所与の温度は、120℃~140℃(248°F~284°F)の範囲であってもよい。しかしながら、例えば、異なる熱暴走温度特性又は曲線を含む様々な他の電池タイプのために、様々なガス放出温度を有する他のガス放出材料を選択することもできる。
【0022】
開示されたガス放出材料は、バッテリセルとガス放出材料の温度が平衡状態になるように、バッテリセル自体と密接に接触して配置されてもよく、したがって、ガス放出材料のガス放出がバッテリセルの温度を表すことを可能にする。ガス放出材料の特性は、ガスセンサが、ガス放出の検出を介して、確立された温度(例えば、セル通気温度又は熱暴走温度未満)を含む温度閾値を検出することを可能にする温度及びガス放出条件に対応し得る。閾値温度を超えると、ガス放出材料は、予測可能な速度及び温度でガス放出することができる。言い換えれば、ガスセンサは、温度センサとして機能的に作用し、ガス放出材料の温度がガス放出を引き起こす特定の温度に達したことを示すことができる。
【0023】
例示的な例として、有機エステルである酢酸イソアミルは、約142℃/288°Fの沸点温度を有し、これは、その最高オフガス速度を達成する温度であってもよく、電池の第1のセルベントのおおよその範囲内である。いくつかの実施形態において、酢酸イソアミルは、バッテリセルを封入するために、ポリマーなどのガス放出材料に組み込まれてもよい(例えば、播種されてもよい)。したがって、酢酸イソアミルは、周囲条件で蒸発しないが、ポリマーが酢酸イソアミルのオフガス温度閾値を超える温度に達すると、VOCセンサなどの特定のセンサによって検出可能であり得る。ガス放出材料がエステルから脱ガスする温度は、熱暴走温度より低い温度を示すように選択することができる。
【0024】
本開示の別の態様によれば、開示されたガス放出材料はまた、閾値温度に達すると、影響を受けたバッテリセルの視覚的表示を提供するために、色インジケータに組み込まれてもよい。例えば、ガス放出材料として選択されたポリマーは、130℃~150℃(266°F~302°F)の範囲を上回る任意の温度等の特定の量の熱への暴露によってポリマーの色を変化させるサーモクロミック添加剤とともに埋め込まれてもよい。サーモクロミック要素をガス放出材料に組み込むことは、複数のバッテリセルの各々を試験する必要なしに、複数のバッテリセル(例えば、バッテリパックの)のうちのどれが潜在的な損傷を示す過度の温度に暴露されたかの表示を提供し得る。そのような特徴は、バッテリパックを修理又は修理するときに技術者又は製造業者にとって有益であり得る。ポリマーなどのガス放出材料に温度活性化色表示を組み込むための方法は、当業者に知られている技法によって実施することができる。
【0025】
図2は、本開示の一実施形態による例示的なバッテリセルユニット200を示す。バッテリセルユニット200は、バッテリセル本体202及びガス放出材料204を含む。バッテリセル本体202は、容器内に密封されたカソード、アノード、及び電解質を含む容器を備えてもよい。いくつかの実施形態において、バッテリセル本体202は、リチウムバッテリセルを含む。他の実施形態では、バッテリセル本体202は、当業者に知られている他のタイプのバッテリセルを含むことができる。説明のために、バッテリセル本体202は矩形形状として示されているが、本開示の実施形態は、円筒形、角柱形、又はポーチなどの任意のタイプのバッテリタイプ又は形状因子に対して実装されてもよい。また、説明のために、バッテリセル本体202の全体が、ガス放出材料204に封入されているものとして示されている。しかしながら、他の実施形態では、バッテリセル本体202は、電気的接続を行うためにガス放出材料204を破る露出した接触部分又は接続リードを含むことができる。例えば、バッテリセル本体202は、アノードを絶縁し、外部導電性表面への短絡を防止するために、ポリマースリーブを含むガス放出材料204で包まれてもよい。ポリマーは、バッテリセル本体202の本体に適合する非導電性熱収縮ポリマーを含んでもよい。別の実施形態によれば、バッテリセル本体202は、ポリマーフィルムの形態の開示されたガス放出材料が取り付けられたケーシングを含むことができる。
【0026】
ガス放出材料204は、ガス放出材料204にオフガス208を発生させる特定の温度及び/又はガス放出条件に対応する選択された材料特性を含むことができる。オフガス208は、ある温度範囲(例えば、約120℃~140℃(248°F~284°F)の温度範囲)にわたって発生する1つ以上のガス成分を含むことができる。温度閾値は、セル通気又はセル通気前の確立された温度を含むことができる。ガス放出材料204によるバッテリセル本体202の封入は、バッテリセル本体202と密接に接触するガス放出材料204を含んでもよい。熱伝達206は、バッテリセル本体202及びガス放出材料204の温度を平衡状態にさせ、したがって、オフガス208が、温度閾値に到達すると、バッテリセル本体202の温度を表すことを可能にする。例えば、バッテリセル本体202が最初に通気する温度に一致する閾値温度を超えたとき、ガス放出材料204は、予測可能な速度及び温度でオフガス208を生成し得る。オフガス208の特定の閾値量(例えば、百万分の一(ppm)などの濃度単位及び/又はオフガスの変化率によって測定される)及び/又は目標変化率の存在は、セル通気又はプレセル通気を示す温度閾値をガスセンサが検出することを可能にするために使用され得る。
【0027】
いくつかの実施形態において、ガスセンサは、開示されたガス放出材料(例えば、ガス放出材料204)で封入された1つ以上のバッテリセル(例えば、バッテリセル本体202)を含むバッテリパックで構成されてもよく、バッテリ管理システムに結合されてもよい。ガスセンサは、ガス放出材料からのガス放出に基づいて、バッテリパックの少なくとも1つのバッテリセルが、熱暴走条件に先立つ所与の温度に到達したことを示す信号をバッテリ管理システムに送信することができる。そのような信号を受信すると、バッテリ管理システムは、バッテリパックの利用を停止又は無効にし、警告信号を生成し、例えば電気自動車の場合、危険な状態を示す車載コンピュータに警告信号を送信することができる。
【0028】
図3は、本開示の実施形態による熱暴走検出を組み込んだ例示的なバッテリシステムを示す。バッテリシステム300は、バッテリパック302、ガスセンサ306、バッテリ管理システム308、及び充電コントローラ312を備える。バッテリパック302は、複数のバッテリセル(例えば、バッテリセル本体202)を備えてもよく、各セルは、本開示の種々の実施形態に従って説明されるように、ガス放出材料内に封入又は包装されてもよい。複数のバッテリセルは、所望の電圧、容量、及び/又は電力密度を送達するように、直列、並列、又はそれらの組み合わせで構成されてもよい。複数のバッテリセルのうちの1つ以上の各々は、ガス放出前の閾値動作温度、例えば、約120℃~140℃(248°F~284°F)の温度範囲を備えてもよい。
【0029】
十分な熱(例えば、ガス放出材料を沸点に到達させる温度)がバッテリパック302の1つ以上のバッテリセルからガス放出材料に伝導される場合、オフガス310は、バッテリパック302から放出され得る。オフガス310は、ガス放出材料をガス放出させる臨界温度まで加熱した結果として放出されるガス放出材料に含まれる1つ以上のガスを含むことができる。ガスセンサ306は、オフガス310の組成にかかわらず、ガス放出材料から放出されるオフガスを検出することができるセンサを含むことができる。ガスセンサ306は、金属酸化物センサ、電気化学センサ、全揮発性有機化合物センサ、エアロゾルセンサ、又は異なるタイプのガスを検出することができる任意の他の一般的な電子ガス検知機器及び/又は方法を含むことができる。したがって、システム300は、バッテリパック302内の1つ又は複数のバッテリセルがセル通気温度及び/又は熱暴走温度未満の特定の温度に達したときに、ガス放出材料からのオフガスを監視することによって、熱暴走の早期検出を提供することができる。
【0030】
バッテリパック302がオフガス310を放出すると、ガスセンサ306は、オフガス310の存在、特定の閾値量、及び/又は目標変化率を検出し、事象、例えば、オフガス310の検出に対応する又はそれを表すデータ信号をバッテリ管理システム308に送信することができる。一実施形態では、データ信号は、オフガスの検出に基づいて、1つ以上のバッテリセルのうちの少なくとも1つがオフガス温度の範囲に到達したという指示を含む。バッテリ管理システム308は、ガスセンサ306からのデータ信号に少なくとも部分的に基づいて、バッテリパック302の更なる温度上昇及び損傷を防止するための適切な機能を実行することができる。バッテリ管理システム308は、バッテリパック302の安全な動作を保護及び保証するように構成されたコンピューティングデバイス又はプロセッサを備えてもよい。例えば、バッテリ管理システム308は、バッテリセルを監視し、バッテリセルに保護を提供し、バッテリセルの性能を最適化し、バッテリセルの動作状態をデバイス制御ユニットに報告してもよい。
【0031】
一実施形態によれば、バッテリ管理システム308は、ガスセンサ306からのデータ信号を監視又は受信することができる。したがって、バッテリ管理システム308は、ガスセンサ306によるオフガス310の検出を表すデータ信号に少なくとも部分的に基づいて早期熱暴走を判定するように構成することができる。バッテリ管理システム308は、バッテリパック302の状態(例えば、オフガス310の検出を含む)を監視し、充電コントローラ312と通信して、その監視に少なくとも部分的に基づいてバッテリパック302の充電パラメータを管理することができる。充電コントローラ312は、所与の電流及び電圧でバッテリパック302の充電を提供するように構成されるコンピューティングデバイス又はプロセッサを備えてもよい。本明細書で開示されるように、プロセッサは、プログラマブル論理デバイス、マイクロプロセッサ、マルチコアプロセッサ、共処理エンティティ、特定用途向け命令セットプロセッサ(ASIP)、マイクロコントローラ、及び/又はコントローラを備え得る。
【0032】
図4は、本開示のいくつかの実施形態による熱暴走保留事象を監視するための例示的な方法を示す例示的なフロー図である。
図4において、例示的な方法400は、メモリ及び1つ又は複数のプロセッサを備えるコンピューティングデバイスによって実行され得る。コンピューティングデバイスは、バッテリ管理システムなどのバッテリ監視システムに対応付けられてもよい。ステップ402において、コンピューティングデバイスは、1つ以上のバッテリセルを含むバッテリパッケージに対応付けられたオフガス測定データをサンプリングする。1つ以上のバッテリセルは、本開示の種々の実施形態に従って説明されるように、ガス放出材料で封入されてもよい。
【0033】
コンピューティングデバイスは、1つ以上のガスセンサからオフガス測定データを受信してもよい。コンピューティングデバイスは、1つ又は複数のガスの存在、量、及び/又は濃度を検出するように構成された1つ又は複数のガスセンサに通信可能に結合され得る。特に、1つ以上のガスセンサは、バッテリパッケージの少なくとも1つのバッテリセルを封入するガス放出材料に対応付けられた1つ以上のオフガスのオフガス測定を行うことが可能であってもよい。オフガス測定データは、1つ以上のガスセンサによって検出された1つ以上のガスの存在、量、及び/又は濃度に基づく1つ以上の値を含んでもよい。いくつかの実施形態では、サンプリングされ、1つ以上のガスセンサから受信されたオフガス測定データは、オフガス事象を示す定量値(例えば、ppm)、定性値(例えば、高、中、低)、又はブール/バイナリ値(例えば、はい/いいえ)を備えてもよい。
【0034】
いくつかの実施形態では、ステップ402に続いて、例示的な方法はステップ404に進み、コンピューティングデバイスは、オフガス測定データに基づいて1つ又は複数のバッテリセルの温度又は温度変化率を決定する。例えば、オフガスの存在、特定の閾値量、及び/又は標的変化率は、バッテリパッケージの少なくとも1つのバッテリセルを封入するガス放出材料の特定のガス放出特性に基づいて、特定のバッテリセル温度又はバッテリ温度の範囲(例えば、120℃~140℃(248°F~284°F))に対応付けられてもよい。逆に、オフガスの不在、閾値未満の量、及び/又は非目標変化率は、特定のバッテリセル温度未満の温度と対応付けられてもよい。
【0035】
いくつかの実施形態では、ステップ404に続いて、例示的方法は、ステップ406に進み、コンピューティングデバイスは、1つ以上のガスセンサによって提供されるオフガス測定データによって示されるように、1つ以上のバッテリセルの温度及び/又は1つ以上のバッテリセルの温度変化率に基づいて、熱暴走保留事象があるかどうかを判定する。1つ又は複数のバッテリセルの温度が熱暴走保留事象に対応付けられていない場合、例示的な方法はステップ402に戻り、コンピューティングデバイスは、バッテリパッケージに対応付けられたオフガス測定データをサンプリングし続ける。そうではなく、1つ以上のバッテリセルの温度が熱暴走保留事象(例えば、120℃~140℃(248°F~284°F))に対応付けられている場合、例示的な方法はステップ408に進み、コンピューティングデバイスは、熱暴走保留事象に基づいて1つ以上のアクションを実行する。1つ又は複数のアクションは、バッテリパックの利用を停止又は無効にすることと、警告信号を生成することと、(例えば電気自動車の場合、危険な状態を示す車載コンピュータに)警告信号を送信することとを含むことができる。
【0036】
結論
本明細書中に記載される実施例及び実施形態は、例示目的のみのためであり、そしてそれらに照らして種々の改変又は変更が当業者に示唆され、そして本出願の精神及び範囲内に含まれることが理解されるべきである。
【0037】
本明細書に記載される本開示の多くの修正例及び他の実施形態は、前述の説明及び関連する図面に提示される教示の利益を有する、本開示に関係がある当業者に着想されるであろう。したがって、本開示は、開示される特定の実施形態に限定されるものではないこと、並びに修正及び他の実施形態は、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図されることを理解されたい。特定の用語が本明細書で用いられているが、これらは一般的かつ説明的な意味でのみ使用され、限定の目的では使用されない。
【外国語明細書】