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特開2024-111817パーフルオロポリエーテル基含有アクリル化合物及びそれを含む組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111817
(43)【公開日】2024-08-19
(54)【発明の名称】パーフルオロポリエーテル基含有アクリル化合物及びそれを含む組成物
(51)【国際特許分類】
   G02B 1/14 20150101AFI20240809BHJP
   G02B 1/18 20150101ALI20240809BHJP
   G02B 1/111 20150101ALI20240809BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20240809BHJP
   C08J 7/046 20200101ALI20240809BHJP
   C08G 65/48 20060101ALI20240809BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20240809BHJP
【FI】
G02B1/14
G02B1/18
G02B1/111
G02B5/30
C08J7/046 CFD
C08G65/48
C08F290/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024013942
(22)【出願日】2024-02-01
(31)【優先権主張番号】10-2023-0015838
(32)【優先日】2023-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】514217912
【氏名又は名称】東友ファインケム株式会社
【氏名又は名称原語表記】DONGWOO FINE-CHEM CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】132,Yakchon-ro,Iksan-si Jeollabuk-do 570-977,Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】パク,ミン キュ
(72)【発明者】
【氏名】キム,シエ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,キョンムン
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ユンソク
【テーマコード(参考)】
2H149
2K009
4F006
4J100
【Fターム(参考)】
2H149AA02
2H149AA18
2H149AA19
2H149AB15
2H149BA02
2H149FA08Z
2H149FC03
2H149FC05
2K009AA02
2K009AA15
2K009BB13
2K009BB14
2K009BB23
2K009BB24
2K009BB28
2K009CC09
2K009CC24
2K009CC26
2K009CC33
2K009DD02
2K009DD06
2K009EE05
4F006AA35
4F006AA39
4F006AB43
4F006AB64
4F006BA02
4F006CA05
4F006CA08
4F006DA04
4F006EA03
4J100JA01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】通常用いられる溶剤に可溶性であり且つ優れた初期接触角及び耐摩耗性を付与することができるパーフルオロポリエーテル基含有アクリル化合物を提供する。
【解決手段】本発明は、アリーレン骨格の中心構造単位を有し、ウレタン結合を媒介として一方の末端にパーフルオロポリエーテル基が結合され、他方の末端に多官能(メタ)アクリロイル基が結合された構造を有する化合物を提供する。本発明に係る化合物は、通常用いられる溶剤に対して可溶性であり且つ優れた初期接触角及び耐摩耗性を付与することができる。したがって、本発明に係る化合物は、初期接触角及び耐摩耗性の確保のための添加剤としてコーティング剤に有効に用いることができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表される化合物。
【化1】

前記式中、
Zは、フッ素原子によって置換若しくは非置換のC~C16のアルキル基であり、
Yは、-(OCa-(OC-(OC-(OCF-を示し、このとき、a、b、c、及びdは、それぞれ独立して、0~200の整数であり、a、b、c、及びdの和は5以上であり、
Ar及びArは、それぞれ独立して、C~Cのアルキル基、C~Cのアルコキシ基、ヒドロキシ基又はハロゲン原子によって置換若しくは非置換のアリーレン基であり、
Xは、存在しないか、酸素原子、硫黄原子、スルホニル基、又はC~Cのハロアルキル基によって置換若しくは非置換のC~Cのアルキレン基であり、
Aは、(メタ)アクリロイルオキシ基であり、
n及びmは、それぞれ独立して、0又は1である。
【請求項2】
Ar及びArは、それぞれ独立して、C~Cのアルキル基によって置換若しくは非置換のフェニレン基である請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Xは、存在しないか、C~Cのハロアルキル基によって置換若しくは非置換のC~Cのアルキレン基である請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
下記化学式1-1~1-5のいずれかで表される請求項1に記載の化合物。
【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

前記式中、
Zは、フッ素原子によって置換若しくは非置換のC~C16のアルキル基であり、
Yは、-(OCa-(OC-(OC-(OCF-を示し、このとき、a、b、c、及びdは、それぞれ独立して、0~200の整数であり、a、b、c、及びdの和は5以上である。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物を含むハードコート組成物。
【請求項6】
前記請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物は、ハードコート組成物の全体100重量%に対し、2.5~10重量%の量で含まれる請求項5に記載のハードコート組成物。
【請求項7】
透光性樹脂、光開始剤、及び溶剤を更に含む請求項5に記載のハードコート組成物。
【請求項8】
請求項5に記載のハードコート組成物を用いて形成されるハードコートフィルム。
【請求項9】
請求項8に記載のハードコートフィルムが備えられた画像表示装置。
【請求項10】
請求項8に記載のハードコートフィルムが備えられたフレキシブル(flexible)表示装置のウィンドウ。
【請求項11】
請求項8に記載のハードコートフィルムが備えられた偏光板。
【請求項12】
請求項8に記載のハードコートフィルムが備えられたタッチセンサ。
【請求項13】
請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物を含む低反射層形成用組成物。
【請求項14】
前記請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物は、低反射層形成用組成物の全体100重量%に対し、2.5~10重量%の量で含まれる請求項13に記載の低反射層形成用組成物。
【請求項15】
透光性樹脂、空隙を有する微粒子、光開始剤、及び溶媒を更に含む請求項13に記載の低反射層形成用組成物。
【請求項16】
請求項13に記載の低反射層形成用組成物を用いて形成された塗膜。
【請求項17】
請求項16に記載の塗膜を含む画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーフルオロポリエーテル基含有アクリル化合物及びそれを含む組成物に係り、より詳しくは、通常用いられる溶剤に可溶性であり且つ優れた初期接触角及び耐摩耗性を付与することができるパーフルオロポリエーテル基含有アクリル化合物及びそれを含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置、エレクトロルミネセンス(EL)表示装置、プラズマディスプレイ(PD)、電界放出ディスプレイ(FED:Field Emission Display)などの画像表示装置において表面保護の目的から種々の透明コーティング剤が用いられている。
【0003】
例えば、ハードコート組成物を用いて形成されるハードコートフィルムが画像表示装置を保護するために用いられる。
【0004】
このようなハードコートフィルムは、画像表示装置の最外郭に配置されて用いられる場合が多く、耐摩耗性、耐スクラッチ性などのような機械的物性や耐薬品性のような化学的物性に加え、指紋、マーカーなどによる表示に対する耐汚染性及び/又は易除去性に関連した防汚性が主な性能として要求されている。
【0005】
かかる機械的/化学的物性、耐汚染性及び/又は防汚性のために用いられる材料としては、フッ素含有ポリマーが知られている。しかし、従来知られているフッ素含有ポリマーは、通常用いられる溶剤に溶け難いという不具合がある。
【0006】
韓国公開特許第10-2005-0010064号は、複合ハードコート層付き物体及び複合ハードコート層の形成方法に関するものである。具体的に、韓国公開特許第10-2005-0010064号は、物体の表面に設けられたハードコート層と、ハードコート層の表面に設けられた防汚表面層を含む複合ハードコート層付き物体であって、ハードコート層は、活性エネルギー線硬化性化合物を含むハードコート剤組成物の硬化物からなり、防汚表面層は、フルオロを含有する多官能(メタ)アクリレート化合物とフルオロを含有する単官能(メタ)アクリレート化合物を含む表面材料の硬化物からなり、前記防汚表面層は前記ハードコート層に固着されている、複合ハードコート層付き物体に関する内容を開示している。
【0007】
しかしながら、依然として、通常用いられる溶剤に可溶性であり且つ優れた初期接触角と耐摩耗性を付与することができる材料の開発が求められている実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】韓国公開特許第10-2005-0010064号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の一目的は、通常用いられる溶剤に可溶性であり且つ優れた初期接触角及び耐摩耗性を付与することができるパーフルオロポリエーテル基含有アクリル化合物を提供することである。
【0010】
本発明の他の目的は、前記パーフルオロポリエーテル基含有アクリル化合物を含む組成物を提供することである。
【0011】
本発明のまた他の目的は、前記組成物を用いて形成されたハードコートフィルム及び塗膜を提供することである。
【0012】
本発明のさらなる目的は、前記ハードコートフィルム及び/又は塗膜を含む画像表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
一方で、本発明は、下記化学式1で表される化合物を提供する。
【0014】
【化1】
【0015】
前記式中、
Zは、フッ素原子によって置換若しくは非置換のC~C16のアルキル基であり、
Yは、-(OCa-(OC-(OC-(OCF-を示し、このとき、a、b、c、及びdは、それぞれ独立して、0~200の整数であり、a、b、c、及びdの和は5以上であり、
Ar及びArは、それぞれ独立して、C~Cのアルキル基、C~Cのアルコキシ基、ヒドロキシ基又はハロゲン原子によって置換若しくは非置換のアリーレン基であり、
Xは、存在しないか、酸素原子、硫黄原子、スルホニル基、又はC~Cのハロアルキル基によって置換若しくは非置換のC~Cのアルキレン基であり、
Aは、(メタ)アクリロイルオキシ基であり、
n及びmは、それぞれ独立して、0又は1である。
【0016】
本発明の一実施形態において、Ar及びArは、それぞれ独立して、C~Cのアルキル基によって置換若しくは非置換のフェニレン基であってよい。
【0017】
本発明の一実施形態において、Xは、存在しないか、C~Cのハロアルキル基によって置換若しくは非置換のC~Cのアルキレン基であってよい。
【0018】
本発明の一実施形態に係る化合物は、下記化学式1-1~1-5のいずれかで表される化合物であってよい。
【0019】
【化2】
【0020】
【化3】
【0021】
【化4】
【0022】
【化5】
【0023】
【化6】
【0024】
前記式中、
Zは、フッ素原子によって置換若しくは非置換のC~C16のアルキル基であり、
Yは、-(OCa-(OC-(OC-(OCF-を示し、このとき、a、b、c、及びdは、それぞれ独立して、0~200の整数であり、a、b、c、及びdの和は5以上である。
【0025】
他の一方で、本発明は、前記化合物を含むハードコート組成物を提供する。
【0026】
本発明の一実施形態において、前記化合物は、ハードコート組成物の全体100重量%に対し、2.5~10重量%の量で含まれてよい。
【0027】
本発明の一実施形態に係るハードコート組成物は、透光性樹脂、光開始剤、及び溶剤を更に含んでよい。
【0028】
また他の一方で、本発明は、前記ハードコート組成物を用いて形成されるハードコートフィルムを提供する。
【0029】
また他の一方で、本発明は、前記ハードコートフィルムが備えられた画像表示装置を提供する。
【0030】
また他の一方で、本発明は、前記ハードコートフィルムが備えられたフレキシブル(flexible)表示装置のウィンドウを提供する。
【0031】
また他の一方で、本発明は、前記ハードコートフィルムが備えられた偏光板を提供する。
【0032】
また他の一方で、本発明は、前記ハードコートフィルムが備えられたタッチセンサを提供する。
【0033】
また他の一方で、本発明は、前記化合物を含む低反射層形成用組成物を提供する。
【0034】
本発明の一実施形態において、前記化合物は、低反射層形成用組成物の全体100重量%に対し、2.5~10重量%の量で含まれてよい。
【0035】
本発明の一実施形態に係る低反射層形成用組成物は、透光性樹脂、空隙を有する微粒子、光開始剤、及び溶剤を更に含んでよい。
【0036】
また他の一方で、本発明は、前記低反射層形成用組成物を用いて形成された塗膜を提供する。
【0037】
また他の一方で、本発明は、前記塗膜を含む画像表示装置を提供する。
【発明の効果】
【0038】
本発明に係る化合物は、アリーレン骨格の中心構造単位を有し、ウレタン結合を媒介として一方の末端にパーフルオロポリエーテル基が結合され、他方の末端に多官能(メタ)アクリロイル基が結合された構造を有して、通常用いられる溶剤に対して可溶性であり且つ優れた初期接触角及び耐摩耗性を付与することができる。特に、前記化合物は、(メタ)アクリル系透明コーティング剤に対する相溶性に優れている。したがって、前記化合物は、初期接触角及び耐摩耗性の確保のための添加剤として(メタ)アクリル系透明コーティング剤に有効に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明をより詳しく説明する。
【0040】
本発明の一実施形態は、下記化学式1で表される化合物に関するものである。
【0041】
【化7】
【0042】
前記式中、
Zは、フッ素原子によって置換若しくは非置換のC~C16のアルキル基であり、
Yは、-(OCa-(OC-(OC-(OCF-を示し、このとき、a、b、c、及びdは、それぞれ独立して、0~200の整数であり、a、b、c、及びdの和は5以上であり、
Ar及びArは、それぞれ独立して、C~Cのアルキル基、C~Cのアルコキシ基、ヒドロキシ基又はハロゲン原子によって置換若しくは非置換のアリーレン基であり、
Xは、存在しないか、酸素原子、硫黄原子、スルホニル基、又はC~Cのハロアルキル基によって置換若しくは非置換のC~Cのアルキレン基であり、
Aは、(メタ)アクリロイルオキシ基であり、
n及びmは、それぞれ独立して、0又は1である。
【0043】
本明細書において用いられるフッ素原子によって置換若しくは非置換のC~C16のアルキル基は、フッ素原子で置換若しくは非置換の炭素数1~16個からなる直鎖状又は分岐状の1価炭化水素を意味し、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、t-ブチル、ペンチル、ヘキシル、2-エチルヘキシル、ヘプチル、2-エチルヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、トリフルオロメチル、トリフルオロエチル、トリフルオロプロピル、トリフルオロブチルなどが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0044】
本明細書において用いられるC~Cのアルキル基は、炭素数1~4個からなる直鎖状又は分岐状の1価炭化水素を意味し、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、t-ブチルなどが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0045】
本明細書において用いられるC~Cのアルコキシ基は、炭素数1~4個からなる直鎖状又は分岐状のアルコキシ基を意味し、メトキシ、エトキシ、n-プロパノキシなどが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0046】
本明細書において用いられるアリーレン基は、2価の芳香族基とヘテロ芳香族基及びそれらの部分的に還元された誘導体をいずれも含む。前記芳香族基は、5員~15員の単純又は縮合環状であり、ヘテロ芳香族基は、酸素、硫黄又は窒素を一つ以上含む芳香族基を意味する。代表的なアリーレン基の例としては、フェニレン、ナフチレン、ピリジニレン(pyridinylene)、フラニレン(furanylene)、チオフェニレン(thiophenylene)、インドリレン(indolylene)、キノリニレン(quinolinylene)、イミダゾリニレン(imidazolinylene)、オキサゾリレン(oxazolylene)、チアゾリレン(thiazolylene)、テトラヒドロナフチレンなどがあるが、これらに限定されるものではない。
本明細書において用いられるスルホニル基は、-S(=O)-の基を示す。
【0047】
本明細書において用いられるC~Cのハロアルキル基は、フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素からなる群より選択される一つ以上のハロゲンで置換された炭素数1~4の直鎖状又は分岐状の炭化水素を意味し、例えば、トリフルオロメチル、トリクロロメチル、トリフルオロエチルなどが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0048】
本明細書において用いられるC~Cのアルキレン基は、炭素数1~4個からなる直鎖状又は分岐状の2価炭化水素を意味し、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレンなどが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0049】
本発明の一実施形態において、Zは、C~C16のパーフルオロアルキル基、特にC~Cのパーフルオロアルキル基であってよい。
【0050】
本発明の一実施形態において、Yは、-(OCa-(OC-(OC-(OCF-を示す官能基であって、パーフルオロポリエーテル基である。このとき、a、b、c、及びdは、それぞれ独立して、0~200の整数であり、a、b、c、及びdの和は5以上であり、より好ましくは、10以上、例えば、10以上200以下である。前記各繰り返し単位である-(OC)-、-(OC)-、-(OC)-、及び-(OCF)-の順序はランダムであってよい。
【0051】
これらの繰り返し単位のうち、-(OC)-は、-(OCFCFCFCF)-、-(OCF(CF)CFCF)-、-(OCFCF(CF)CF)-、-(OCFCFCF(CF))-、-(OC(CFCF)-、-(OCFC(CF)-、OCF(CF)CF(CF))-、-(OCF(C)CF)-、及び-(OCFCF(C))-のいずれかであってよく、好ましくは、-(OCFCFCFCF)-であってよい。また、-(OC)-は、-(OCFCFCF)-、-(OCF(CF)CF)-、及び-(OCFCF(CF))-のいずれかであってよく、好ましくは、-(OCFCFCF)-であってよい。さらに、-(OC)-は、-(OCFCF)-及び-(OCF(CF)-のいずれかであってよく、好ましくは、-(OCFCF)-であってよい。
【0052】
本発明の一実施形態において、Ar及びArは、溶剤への可溶性、初期接触角及び/又は耐摩耗性の面から、それぞれ独立して、C~Cのアルキル基によって置換若しくは非置換のフェニレン基であってよい。
【0053】
本発明の一実施形態において、Xは、溶剤への可溶性、初期接触角及び/又は耐摩耗性の点から、存在しないか、C~Cのハロアルキル基によって置換若しくは非置換のC~Cのアルキレン基であってよい。
【0054】
特に、本発明の一実施形態に係る化合物は、下記化学式1-1~1-5のいずれかで表される化合物であってよい。
【0055】
【化8】
【0056】
【化9】
【0057】
【化10】
【0058】
【化11】
【0059】
【化12】
【0060】
前記式中、
Zは、フッ素原子によって置換若しくは非置換のC~C16のアルキル基であり、
Yは、-(OCa-(OC-(OC-(OCF-を示し、このとき、a、b、c、及びdは、それぞれ独立して、0~200の整数であり、a、b、c、及びdの和は5以上である。
【0061】
前記化学式1で表される化合物は、当該分野における公知の方法にて容易に製造することができる。
【0062】
例えば、前記化学式1で表される化合物は、後述する合成例に従い製造することができる。
【0063】
前記化学式1で表される化合物は、アリーレン骨格の中心構造単位を有し、ウレタン結合を媒介として一方の末端にパーフルオロポリエーテル基が結合され、他方の末端に多官能(メタ)アクリロイル基が結合された構造を有することにより、メチルエチルケトン(MEK)、酢酸エチル(EA)などの透明コーティング剤に通常用いられる溶剤に対して可溶性であり且つ優れた初期接触角及び耐摩耗性を付与することができる。特に、前記化学式1で表される化合物は、多官能(メタ)アクリロイル基を有することで(メタ)アクリル系透明コーティング剤に対する相溶性に優れている。また、前記化学式1で表される化合物は、(メタ)アクリル系透明コーティング剤に含まれた他の硬化性成分と共に硬化が可能であるため、より優れた耐摩耗性を付与することができる。よって、前記化学式1で表される化合物は、初期接触角及び耐摩耗性の確保のための添加剤として、(メタ)アクリル系透明コーティング剤に有効に用いることができる。
【0064】
したがって、本発明の一実施形態は、前記化学式1で表される化合物を含むハードコート組成物に関する。
【0065】
前記化学式1で表される化合物は、ハードコート組成物の全体100重量%に対し、2.5~10重量%、好ましくは、3~5重量%の量で含まれてよい。前記化学式1で表される化合物がハードコート組成物の全体100重量%に対し、2.5重量%未満の量で含まれると、初期接触角及び耐摩耗性が不良になることがあり、また10重量%を超える量で含まれると、ハードコート組成物から形成された塗膜の物性が低下することがある。
【0066】
本発明の一実施形態に係るハードコート組成物は、透光性樹脂、光開始剤、及び溶剤を更に含んでよい。
【0067】
前記透光性樹脂は光硬化型樹脂であり、前記光硬化型樹脂は、光硬化型(メタ)アクリレートオリゴマー及び/又はモノマーを含んでよいが、これに限定されるものではない。
【0068】
前記光硬化型(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリヘドラルオリゴメリックシルセスキオキサン(メタ)アクリレートなどを用いてよい。特に、ウレタン(メタ)アクリレートが前記化学式1で表される化合物との相溶性及び耐摩耗性の向上の面から好ましい。
【0069】
前記ウレタン(メタ)アクリレートは、分子内にヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートとイソシアネート基を有する化合物を触媒の存在下で反応させて製造してよい。前記分子内にヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートの具体的な例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシイソプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、カプロラクトン開環ヒドロキシ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートなどがある。また、前記イソシアネート基を有する化合物の具体的な例としては、1,4-ジイソシアナートブタン、1,6-ジイソシアナートヘキサン、1,8-ジイソシアナートオクタン、1,12-ジイソシアナートドデカン、1,5-ジイソシアナート-2-メチルペンタン、トリメチル-1,6-ジイソシアナートヘキサン、1,3-ビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサン、トランス-1,4-シクロヘキセンジイソシアネート、4,4'-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート、トルエン-2,4-ジイソシアネート、トルエン-2,6-ジイソシアネート、キシレン-1,4-ジイソシアネート、テトラメチルキシレン-1,3-ジイソシアネート、1-クロロメチル-2,4-ジイソシアネート、4,4'-メチレンビス(2,6-ジメチルフェニルイソシアネート)、4,4'-オキシビス(フェニルイソシアネート)、ヘキサメチレンジイソシアネートから誘導される三官能イソシアネート、トリメチロールプロパンアダクトトルエンジイソシアネートなどがある。
【0070】
前記モノマーは、通常用いられるものを制限されることなく用いてよい。具体的に、前記モノマーは、光硬化型官能基として(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基などの不飽和基を分子内に有するモノマーが好ましい。特に、それらの中でも、(メタ)アクリロイル基を有するモノマーが、前記化学式1で表される化合物との相溶性及び耐摩耗性の向上の面から好ましい。
【0071】
前記(メタ)アクリロイル基を有するモノマーは、具体的な例として、ネオペンチルグリコール(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、1,2,4-シクロヘキサンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソデキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、及びイソボルネオール(メタ)アクリレートからなる群より選択される1種以上であってよい。
【0072】
前記例示した光硬化型(メタ)アクリレートオリゴマー及びモノマーは、それぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて用いてよい。
【0073】
前記透光性樹脂は、ハードコート組成物の全体100重量%に対し、1~80重量%の量で含まれてよい。前記透光性樹脂の含量が1重量%未満であると、十分な硬度向上を図り難く、また80重量%を超えると、カーリングが激しくなるという不具合がある。
【0074】
前記光開始剤は、ハードコート組成物の光硬化の誘導のために含まれる。前記光開始剤としては、例えば、光照射によってラジカルを形成することができる光ラジカル開始剤を含んでよい。
【0075】
前記光開始剤の例として、化学構造又は分子結合エネルギーの差による分子の分解でラジカルを生成させるI型開始剤、及び三級アミンと共存して水素奪還を誘導するII型開始剤などが挙げられる。
【0076】
例えば、前記I型開始剤としては、4-フェノキシジクロロアセトフェノン、4-t-ブチルジクロロアセトフェノン、4-t-ブチルトリクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-l-フェニルプロパン-1-オン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-l-オン、1-(4-ドデシルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどのアセトフェノン類;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタールなどのベンゾイン類;ホスフィンオキサイド類;チタノセン化合物などが挙げられる。
【0077】
例えば、II型開始剤としては、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチルエーテル、4-フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4-ベンゾール-4'-メチルジフェニルサルファイド、3,3'-メチル-4-メトキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類;チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントンなどのチオキサントン類などが挙げられる。
【0078】
上述した光開始剤は、単独で又は2種以上を混合して用いてよい。また、前記I型及びII型開始剤を単独で又は併用してもよい。
【0079】
前記光開始剤は、ハードコート組成物の全体100重量%に対し、約0.1~10重量%、好ましくは、約1~5重量%の量で含まれてよい。前記光開始剤の含量が0.1重量%未満であると、十分な硬化が行われず、所望のハードコートフィルム又はハードコート層の機械的物性や密着力が得られないことがある。また前記光開始剤の含量が10重量%を超えると、硬化収縮による接着不良、クラック、カール現象が生じることがある。
【0080】
前記溶剤は、当該技術分野において用いられるものであれば特に制限されることなく用いてよい。例えば、前記溶剤は、アルコール系(メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブなど)、ケトン系(メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、シクロヘキサノンなど)、アセテート系(エチルアセテート、プロピルアセテート、n-ブチルアセテート、t-ブチルアセテート、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、メトキシブチルアセテート、メトキシペンチルアセテートなど)、ヘキサン系(ヘキサン、ヘプタン、オクタンなど)、ベンゼン系(ベンゼン、トルエン、キシレンなど)、エーテル系(ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなど)が好ましく用いられてよい。前記例示された溶剤は、それぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて用いてよい。
【0081】
前記溶剤は、ハードコート組成物が全体として100重量%になるように残部として含まれてよい、例えば、ハードコート組成物の全体100重量%に対し、10~95重量%の量で含まれてよい。前記溶剤の含量が10重量%未満であると、粘度が高くて作業性に劣り、また95重量%を超えると、乾燥過程で多くの時間が掛かり経済性に劣るという不具合がある。
【0082】
前記ハードコート組成物は、前記成分の他にも、当該技術分野において一般に用いられる成分、例えば、レベリング剤、熱安定剤、抗酸化剤、界面活性剤、潤滑剤、防汚剤などが更に含まれてよい。
【0083】
本発明の一実施形態は、上述したハードコート組成物を用いて形成されるハードコートフィルムに関する。本発明の一実施形態に係るハードコートフィルムは、基材の片面に上述したハードコート組成物の硬化物を含むコート層が形成されていることを特徴とする。
【0084】
前記基材は、当該技術分野において用いられる基材であれば特に制限されることなく用いてよい。具体的には、前記基材としては、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽性、等方性などに優れるフィルムが用いられてよい。より具体的に、前記基材としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂;ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロースなどのセルロース系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレートなどのアクリル系樹脂;ポリスチレン、アクリロニトリル-スチレン共重合体などのスチレン系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロ系又はノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン-プロピレン共重合体などのポリオレフィン系樹脂;塩化ビニル系樹脂;ナイロン、芳香族ポリアミドなどのアミド系樹脂;イミド系樹脂;スルホン系樹脂;ポリエーテルスルホン系樹脂;ポリエーテルエーテルケトン系樹脂;硫化ポリフェニレン系樹脂;ビニルアルコール系樹脂;塩化ビニリデン系樹脂;ビニルブチラール系樹脂;アリレート系樹脂;ポリオキシメチレン系樹脂;エポキシ系樹脂などのような熱可塑性樹脂からなるフィルムが挙げられる。また、前記基材としては、前記熱可塑性樹脂のブレンド物からなるフィルムも用いてよい。また、(メタ)アクリル系、ウレタン系、(メタ)アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコン系などの熱硬化性樹脂又は紫外線硬化型樹脂からなるフィルムやUTG(ultra thin glass)を用いてもよい。本発明の一実施形態によれば、繰り返しの曲げに対する耐久性に優れることでフレキシブルな画像表示装置により容易に適用し得るポリイミド系樹脂或いはポリエステル系樹脂を用いてよい。
【0085】
前記基材の厚さは特に制限されないが、8~1000μm、具体的には、20~150μmであってよい。前記基材の厚さが8μm未満であると、フィルムの強度が低下して加工性に劣るようになり、また1000μmを超えると、透明性が低下したりハードコートフィルムの重量が大きくなるという不具合が生じる。
【0086】
前記ハードコートフィルムは、基材の片面に前記ハードコート組成物を塗布し硬化させてコート層を形成させることにより製造してよい。
【0087】
前記ハードコート組成物は、ダイコーター、エアナイフ、リバースロール、スプレー、ブレード、キャスティング、グラビア、マイクログラビア、スピンコーティングなどの公知の方式を適宜用いて、透明基材に塗工(Coating Process)してよい。
【0088】
前記ハードコート組成物を基材に塗布した後は、30~150℃の温度で10秒~1時間、より具体的には、30秒~30分間揮発物を蒸発させて乾燥させてから、UV光を照射して硬化させる。前記UV光の照射量は、具体的に約0.01~10J/cmであってよく、より具体的に0.1~2J/cmであってよい。
【0089】
このとき、形成されるコート層の厚さは、具体的に2~30μm、より具体的に3~20μmであってよい。前記コート層の厚さが前記範囲内に含まれると、優れた硬度効果を得ることができる。
【0090】
本発明の一実施形態は、上述したハードコートフィルムが備えられた画像表示装置に関する。一例として、本発明のハードコートフィルムは、画像表示装置、特にフレキシブル表示装置又は折り畳み式表示装置のウィンドウとして用いられてよい。また、本発明のハードコートフィルムは、偏光板、タッチセンサなどに貼り付けて用いてもよい。
【0091】
本発明の一実施形態に係るハードコートフィルムは、反射型、透過型、半透過型LCD又はTN型、STN型、OCB型、HAN型、VA型、IPS型などの各種の駆動方式のLCDに用いられてよい。また、本発明の一実施形態に係るハードコートフィルムは、プラズマディスプレイ、電界放出ディスプレイ、有機ELディスプレイ、無機ELディスプレイ、電子ペーパーなどの各種の画像表示装置にも用いられてよい。
【0092】
本発明の一実施形態は、前記化学式1で表される化合物を含む低反射層形成用組成物に関する。
【0093】
前記化学式1で表される化合物は、低反射層形成用組成物の全体100重量%に対し、2.5~10重量%、好ましくは、3~5重量%の量で含まれてよい。前記化学式1で表される化合物が低反射層形成用組成物の全体100重量%に対し、2.5重量%未満の量で含まれると、初期接触角及び耐摩耗性が不良になることがあり、また10重量%を超える量で含まれると、低反射層形成用組成物から形成された塗膜の物性が低下することがある。
【0094】
本発明の一実施形態に係る低反射層形成用組成物は、透光性樹脂、空隙を有する微粒子、光開始剤、及び溶剤を更に含んでよい。
【0095】
前記空隙を有する微粒子は、低反射層形成用組成物から形成される塗膜の強度を維持し且つ屈折率を下げることを可能にする。
【0096】
前記空隙を有する微粒子とは、微粒子の内部に気体が充填された構造及び/又は気体を含む多孔質構造体であって、微粒子本来の屈折率に比べて微粒子中の気体の占有率に反比例して屈折率が低下する微粒子のことを意味する。
【0097】
本発明においては、微粒子の形態、構造、凝集状態、塗布膜の内部における微粒子の分散状態に応じて、内部、及び/又は表面の少なくとも一部にナノポーラス構造の形成が可能な微粒子も含まれる。
【0098】
前記空隙を有する微粒子は、製造が容易であり且つそれ自体の硬度が高いため、塗膜の強度が向上すると共に塗膜の屈折率を1.25~1.45程度の範囲内に調節可能にする。
【0099】
前記空隙を有する微粒子としては、具体的に、充填用カラム及び表面の多孔質部に各種の化学物質を吸着させる除放材、触媒固定用に用いられる多孔質微粒子、又は断熱材や低誘電材に組み込むことを目的とする中空微粒子の分散体や凝集体が挙げられる。より具体的な例としては、市販品としての日揮触媒化成株式会社製の商品名ELECOM中空シリカ粒子、日本シリカ工業株式会社製の商品名ニップシール(Nipsil)やニップジェル(Nipgel)のうちの多孔質シリカ微粒子の集合体、日産化学工業株式会社製のシリカ微粒子が鎖状に繋がった構造を有するコロイダルシリカUPシリーズ(商品名)から選択されたものを用いてよい。
【0100】
前記空隙を有する微粒子の平均粒子径は5nm~300nmであり、好ましくは、8nm~100nmであり、より好ましくは、40nm~80nmであってよい。前記空隙を有する微粒子の平均粒子径が前記範囲内にあると、塗膜に優れた透明性を付与することが可能になる。
【0101】
前記空隙を有する微粒子は、前記低反射層形成用組成物の全体100重量%に対し、0.5~10重量%の量で含まれてよい。前記空隙を有する微粒子が前記範囲内に含まれると、塗膜の屈折率調節が可能であり、且つ反射防止効果に優れる。
【0102】
前記透光性樹脂、光開始剤、及び溶剤の種類についての説明は、前記ハードコート組成物で説明したのと同一であるので、具体的な説明は省略する。
【0103】
前記透光性樹脂は、前記低反射層形成用組成物の全体100重量%に対し、1~80重量%の量で含まれてよい。前記透光性樹脂が前記範囲内に含まれると、塗膜の屈折率調節が可能であり、且つ反射防止効果に優れる。
【0104】
前記光開始剤は、前記低反射層形成用組成物の全体100重量%に対し、0.1~10重量%、好ましくは、1~5重量%の量で含まれてよい。前記光開始剤の含量が0.1重量%未満であると、組成物の硬化速度が遅く未硬化が発生して機械的物性に劣ることがあり、また10重量%を超えると、過硬化により塗膜にクラックが発生することがある。
【0105】
前記溶剤は、低反射層形成用組成物が全体として100重量%になるように残部として含まれてよく、例えば、前記低反射層形成用組成物の全体100重量%に対し、10~95重量%の量で含まれてよい。前記溶剤の含量が10重量%未満であると、粘度が高くて作業性に劣り、また95重量%を超えると、乾燥過程で多くの時間が掛かり経済性に劣るという不具合がある。
【0106】
前記低反射層形成用組成物は、前記成分の他にも、本発明の効果を損なわない範囲内で、当該分野において一般に用いられる抗酸化剤、UV吸収剤、光安定剤、レベリング剤、界面活性剤、防汚剤、無機ナノ粒子などを更に含んでよい。
【0107】
本発明の一実施形態は、上述した低反射層形成用組成物を用いて形成された塗膜に関する。
【0108】
前記塗膜は、前記低反射層形成用組成物を基材上に塗布し乾燥してから、UV硬化させて形成してよい。
【0109】
前記基材としては、前記ハードコート組成物で用いたものと同一のものを用いてよい。
【0110】
前記低反射層形成用組成物は、ダイコーター、エアナイフ、リバースロール、スプレー、ブレード、キャスティング、グラビア、マイクログラビア、スピンコーティングなどの公知の方式を適宜用いて、塗工(Coating Process)してよい。
【0111】
前記低反射層形成用組成物を基材上に塗布した後は、30~150℃の温度で10秒~1時間、より具体的には30秒~30分間、揮発物を蒸発させて乾燥させてから、UV光を照射して硬化させる。前記UV光の照射量は、具体的に約0.01~10J/cmであってよく、より具体的に0.1~2J/cmであってよい。
【0112】
前記塗膜の厚さは、50~200nm、好ましくは、50~100nmであってよい。
【0113】
本発明の一実施形態は、上述した塗膜を含む画像表示装置に関する。このとき、前記塗膜は低反射層として用いられる。
【0114】
前記画像表示装置についての説明は、前記ハードコートフィルムが備えられた画像表示装置で説明したのと同一であるので、具体的な説明は省略する。
【実施例0115】
以下、実施例、比較例、及び実験例によって本発明をより具体的に説明することにする。なお、これらの実施例、比較例、及び実験例は単に本発明を説明するためのものであって、本発明の範囲がこれらに限定されないことは当業者にとって自明である。
【0116】
<合成例1:化学式1-1で表される化合物の合成>
【0117】
【化13】
【0118】
還流冷却器、温度計及び攪拌機を設置した250ml丸底フラスコに不活性雰囲気下においてメチルエチルケトン(MEK)50.0gを投入した後、4,4'-ジイソシアネート-3,3'-ジメチルビフェニル8gを投入し、エチルアセテートで希釈したジブチル錫ジラウレート(DBTDL)20%溶液0.10g、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール(BHT)0.02gを投入した後、CFO(CFCFO)a1(CFO)a2CFCHOH(平均MW=2358;a1/a2=1.14;(Fが1.29になるようにする比で存在する))で表される4.0gのパーフルオロポリエーテルアルコールを反応器内に添加し、温度を55℃まで上昇させた。
【0119】
次いで、40.0gのペンタエリスリトールトリアクリレートを加えてから、約6時間攪拌した。
【0120】
2250cm-1イソシアネート吸収帯の消失をモニタリングすることでFT IR分析により、そして-81.3及び-83.3ppm(-CHOH基に連結される場合)から-77.5及び-79.5ppm(部分-CHOC(O)NH-に連結される場合)へと末端前(pre-terminal)-CF-の移動を観察するF-NMR分析により、転換の程度をモニタリングした。次いで、溶媒を真空下(10-1mbar及び60℃)において蒸留し、52gの標題化合物を得た。
【0121】
<合成例2:化学式1-2で表される化合物の合成>
【0122】
【化14】
【0123】
還流冷却器、温度計及び攪拌機を設置した250ml丸底フラスコに不活性雰囲気下においてメチルエチルケトン(MEK)50.0gを投入した後、トリレン-2,4-ジイソシアネート5gを投入し、エチルアセテートで希釈したジブチル錫ジラウレート(DBTDL)20%溶液0.10g、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール(BHT)0.02gを投入した後、CFO(CFCFO)a1(CFO)a2CFCHOH(平均MW=2358;a1/a2=1.14;(Fが1.29になるようにする比で存在する))で表される4.0gのパーフルオロポリエーテルアルコールを反応器内に添加し、温度を55℃まで上昇させた。
【0124】
次いで、40.0gのペンタエリスリトールトリアクリレートを加えてから、約6時間攪拌した。
【0125】
2250cm-1イソシアネート吸収帯の消失をモニタリングすることでFT IR分析により、そして-81.3及び-83.3ppm(-CHOH基に連結される場合)から-77.5及び-79.5ppm(部分-CHOC(O)NH-に連結される場合)へと末端前(pre-terminal)-CF-の移動を観察するF-NMR分析により、転換の程度をモニタリングした。次いで、溶媒を真空下(10-1mbar及び60℃)で蒸留し、48gの標題化合物を得た。
【0126】
<合成例3:化学式1-3で表される化合物の合成>
【0127】
【化15】
【0128】
還流冷却器、温度計及び攪拌機を設置した250ml丸底フラスコに不活性雰囲気下においてメチルエチルケトン(MEK)50.0gを投入した後、トリレン-2,4-ジイソシアネート5gを投入し、エチルアセテートで希釈したジブチル錫ジラウレート(DBTDL)20%溶液0.10g、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール(BHT)0.02gを投入した後、CFO(CFCFO)a1(CFO)a2CFCHOH(平均MW=2358;a1/a2=1.14;(Fが1.29になるようにする比で存在する))で表される4.0gのパーフルオロポリエーテルアルコールを反応器内に添加し、温度を55℃まで上昇させた。
【0129】
次いで、50.0gのジペンタエリスリトールペンタアクリレートを加えてから、約6時間攪拌した。
【0130】
2250cm-1イソシアネート吸収帯の消失をモニタリングすることでFT IR分析により、そして-81.3及び-83.3ppm(-CHOH基に連結される場合)から-77.5及び-79.5ppm(部分-CHOC(O)NH-に連結される場合)へと末端前(pre-terminal)-CF-の移動を観察するF-NMR分析により、転換の程度をモニタリングした。次いで、溶媒を真空下(10-1mbar及び60℃)において蒸留し、58gの標題化合物を得た。
【0131】
<合成例4:化学式1-4で表される化合物の合成>
【0132】
【化16】
【0133】
還流冷却器、温度計及び攪拌機を設置した250ml丸底フラスコに不活性雰囲気下においてメチルエチルケトン(MEK)50.0gを投入した後、メチレンジフェニル4,4'-ジイソシアネート5gを投入し、エチルアセテートで希釈したジブチル錫ジラウレート(DBTDL)20%溶液0.10g、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール(BHT)0.02gを投入した後、CFO(CFCFO)a1(CFO)a2CFCHOH(平均MW=2358;a1/a2=1.14;(Fが1.29になるようにする比で存在する))で表される4.0gのパーフルオロポリエーテルアルコールを反応器内に添加し、温度を55℃まで上昇させた。
【0134】
次いで、40.0gのペンタエリスリトールトリアクリレートを加えてから、約6時間攪拌した。
【0135】
2250cm-1イソシアネート吸収帯の消失をモニタリングすることでFT IR分析により、そして-81.3及び-83.3ppm(-CHOH基に連結される場合)から-77.5及び-79.5ppm(部分-CHOC(O)NH-に連結される場合)へと末端前(pre-terminal)-CF-の移動を観察するF-NMR分析により、転換の程度をモニタリングした。次いで、溶媒を真空下(10-1mbar及び60℃)において蒸留し、48gの標題化合物を得た。
【0136】
<合成例5:化学式1-5で表される化合物の合成>
【0137】
【化17】
【0138】
還流冷却器、温度計及び攪拌機を設置した250ml丸底フラスコに不活性雰囲気下においてメチルエチルケトン(MEK)50.0gを投入した後、2,2-ビス(4-イソシアネートフェニル)ヘキサフルオロプロパン5gを投入し、エチルアセテートで希釈したジブチル錫ジラウレート(DBTDL)20%溶液0.10g、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール(BHT)0.02gを投入した後、CFO(CFCFO)a1(CFO)a2CFCHOH(平均MW=2358;a1/a2=1.14;(Fが1.29になるようにする比で存在する))で表される4.0gのパーフルオロポリエーテルアルコールを反応器内に添加し、温度を55℃まで上昇させた。
【0139】
次いで、40.0gのペンタエリスリトールトリアクリレートを加えてから、約6時間攪拌した。
【0140】
2250cm-1イソシアネート吸収帯の消失をモニタリングすることでFT IR分析により、そして-81.3及び-83.3ppm(-CHOH基に連結される場合)から-77.5及び-79.5ppm(部分-CHOC(O)NH-に連結される場合)へと末端前(pre-terminal)-CF-の移動を観察するF-NMR分析により、転換の程度をモニタリングした。次いで、溶媒を真空下(10-1mbar及び60℃)において蒸留し、47gの標題化合物を得た。
【0141】
<実施例1>
20重量%の三官能アクリレート(MIRAMER M340、ミウォン社製)、20重量%の六官能アクリレート(UA-110H、新中村化学工業株式会社製)、光開始剤として3.5重量%の1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、及び溶剤として51.5重量%のメチルエチルケトン(MEK)を混合して得たハードコート組成物に、前記合成例1で得た化学式1-1で表される化合物を5重量%の量で添加して、ハードコート組成物を製造した。
【0142】
前記ハードコート組成物をポリエステルフィルム(PET、50μm)の片面に硬化後の厚さが5μmになるようにコーティングし、溶剤を乾燥した後、窒素雰囲気下においてUV積算光量600mJ/cmを照射して、ハードコートフィルムを製造した。
【0143】
<実施例2>
化学式1-1で表される化合物の代わりに前記合成例2で得た化学式1-2で表される化合物を用いたことを除いては、前記実施例1と同様にしてハードコートフィルムを製造した。
【0144】
<実施例3>
化学式1-1で表される化合物の代わりに前記合成例3で得た化学式1-3で表される化合物を用いたことを除いては、前記実施例1と同様にしてハードコートフィルムを製造した。
【0145】
<実施例4>
化学式1-1で表される化合物の代わりに前記合成例4で得た化学式1-4で表される化合物を用いたことを除いては、前記実施例1と同様にしてハードコートフィルムを製造した。
【0146】
<実施例5>
化学式1-1で表される化合物の代わりに前記合成例5で得た化学式1-5で表される化合物を用いたことを除いては、前記実施例1と同様にしてハードコートフィルムを製造した。
【0147】
<実施例6>
化学式1-1で表される化合物を5重量%の代わりに3重量%の量で添加し、溶剤としてメチルエチルケトン(MEK)を53.5重量%の量で添加したことを除いては、前記実施例1と同様にしてハードコートフィルムを製造した。
【0148】
<比較例1>
化学式1-1で表される化合物を添加せず、溶剤を56.5重量%の量で含むハードコート組成物を用いたことを除いては、前記実施例1と同様にしてハードコートフィルムを製造した。
【0149】
<実施例7>
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート2重量%、中空シリカ微粒子(日揮触媒化成株式会社製、THRULYA4320、固形分20重量%)6重量%、光開始剤(BASF社製、イルガキュア184)0.5重量%、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテル86.2重量%、レベリング剤(BYK社製、BYKUV3570)0.3重量%、及び前記合成例1で得た化学式1-1で表される化合物5重量%を混合して、低屈折組成物を製造した。
【0150】
前記比較例1で製造されたハードコートフィルムのハードコート層の上に硬化後の厚さが80nmになるように前記低屈折組成物をコーティングし、溶剤を乾燥した後、窒素雰囲気下においてUV積算光量600mJ/cmを照射して、低反射フィルムを製造した。
【0151】
<実施例8>
化学式1-1で表される化合物の代わりに前記合成例2で得た化学式1-2で表される化合物を用いたことを除いては、前記実施例7と同様にして、低反射フィルムを製造した。
【0152】
<実施例9>
化学式1-1で表される化合物の代わりに前記合成例3で得た化学式1-3で表される化合物を用いたことを除いては、前記実施例7と同様にして、低反射フィルムを製造した。
【0153】
<実施例10>
化学式1-1で表される化合物の代わりに前記合成例4で得た化学式1-4で表される化合物を用いたことを除いては、前記実施例7と同様にして、低反射フィルムを製造した。
【0154】
<実施例11>
化学式1-1で表される化合物の代わりに前記合成例5で得た化学式1-5で表される化合物を用いたことを除いては、前記実施例7と同様にして、低反射フィルムを製造した。
【0155】
<実施例12>
化学式1-1で表される化合物を3重量%の量で添加し、溶剤を88.2重量%の量で添加したことを除いては、前記実施例7と同様にして、低反射フィルムを製造した。
【0156】
<比較例2>
化学式1-1で表される化合物を添加せず、溶剤を91.2重量%の量で添加したことを除いては、前記実施例7と同様にして、低反射フィルムを製造した。
【0157】
<実験例1>
前記実施例及び比較例で製造されたハードコートフィルム及び低反射フィルムの物性を下記の方法にて測定し、その結果を下記の表1に表した。
【0158】
(1)接触角
KRUSS社製の接触角測定器DSA100を用いて水接触角を測定した。常温で液滴量は2μlにした。
【0159】
(2)スクラッチ試験
コーティング面が表側になるように基材フィルムを透明粘着剤を用いてガラスに貼り合わせた。その後、スチールウール(#0000)を用いて500g/cmの荷重で10回往復摩擦させてから、測定部に対し3波長ランプの光を透過及び反射して発生したスクラッチの個数を確認した。
【0160】
(3)スチールウール試験
コーティング面が表側になるように基材フィルムを透明粘着剤を用いてガラスに貼り合わせた。その後、スチールウール(#0000)を用いて500g/cmの荷重で往復摩擦させてから、接触角100°以上であった回数を確認した。
【0161】
(4)消しゴム試験
DAESUNG PRECISION社製の耐摩耗測定装置にて測定を行った。MINOAN SAFETY APPARATUS社製の硬度80、直径6mmの消しゴムを用いてコーティング表面を1kgの荷重で往復摩擦させてから、接触角100°以上であった回数を確認した。
【0162】
【表1】
【0163】
前記表1から、化学式1で表される化合物を含むハードコート組成物から形成された実施例1~6のハードコートフィルム及び化学式1で表される化合物を含む低反射層形成用組成物から形成された実施例7~12の低反射フィルムは、初期接触角が高いだけでなく、耐摩耗性にも優れることを確認することができる。
【0164】
これに対し、化学式1で表される化合物を含まないハードコート組成物から形成された比較例1のハードコートフィルムと、化学式1で表される化合物を含まない低反射層形成用組成物から形成された比較例2の低反射フィルムは、初期接触角が大きく不良である結果を示した。このため、比較例1のハードコートフィルムと比較例2の低反射フィルムに対しては、スチールウール試験と消しゴム試験を実施しなかった。
【0165】
一方、化学式1で表される化合物を含む低反射層形成用組成物から形成された実施例7~12の低反射フィルムの場合、反射率の低減のための中空シリカ微粒子により耐摩耗特性が低下することが確認された。このため、実施例7~12の低反射フィルムに対してはスチールウール実験を実施しなかった。
【0166】
以上、本発明の特定の部分について詳しく記述したが、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者にとってこのような具体的な記述は単に好適な具現例であるに過ぎず、これらによって本発明の範囲が制限されるものではないことは明らかである。本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者であれば、前記内容を基に本発明の範疇内で種々の応用および変形を行うことが可能であろう。
【0167】
したがって、本発明の実質的な範囲は、特許請求の範囲とその等価物によって定義されると言えよう。