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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111842
(43)【公開日】2024-08-19
(54)【発明の名称】微粒子の浮遊抑制剤
(51)【国際特許分類】
   C11D 7/24 20060101AFI20240809BHJP
   B01D 47/06 20060101ALI20240809BHJP
   A61L 9/14 20060101ALI20240809BHJP
   C11D 7/26 20060101ALI20240809BHJP
【FI】
C11D7/24
B01D47/06 Z
A61L9/14
C11D7/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024016244
(22)【出願日】2024-02-06
(31)【優先権主張番号】P 2023016399
(32)【優先日】2023-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000100539
【氏名又は名称】アース製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】長屋 ひろみ
【テーマコード(参考)】
4C180
4D032
4H003
【Fターム(参考)】
4C180AA02
4C180AA07
4C180AA13
4C180AA17
4C180AA18
4C180AA19
4C180CA03
4C180CA06
4C180CB01
4C180EA24X
4C180EA26X
4C180EB03X
4C180EB04X
4C180EB06X
4C180EB06Y
4C180EB07X
4C180EB07Y
4C180EB08Y
4C180EB12X
4C180EB17X
4C180EB21X
4C180EB29X
4C180EB29Y
4C180EB41X
4C180EB43X
4C180EC01
4C180GG06
4C180GG07
4C180GG08
4C180GG12
4C180GG17
4C180HH05
4C180HH10
4C180LL06
4D032AC01
4D032AC40
4D032DA01
4H003BA08
4H003BA21
4H003EB02
4H003EB04
4H003EB06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】微粒子、特にアレルゲン微粒子の、空間での浮遊を抑制すること。
【解決手段】炭化水素系化合物、グリコール系化合物及びグリコールエーテル系化合物からなる群から選択される少なくとも1つの化合物からなる、微粒子の浮遊抑制剤とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素系化合物、グリコール系化合物及びグリコールエーテル系化合物からなる群から選択される少なくとも1つの化合物からなる、微粒子の浮遊抑制剤。
【請求項2】
炭化水素系化合物、グリコール系化合物及びグリコールエーテル系化合物からなる群から選択される少なくとも1つの化合物を有効成分として含む、微粒子の浮遊抑制用組成物。
【請求項3】
炭化水素系化合物、グリコール系化合物及びグリコールエーテル系化合物からなる群から選択される少なくとも1つの化合物を粒子状で拡散させる、空間への微粒子の浮遊を抑制する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微粒子の浮遊抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、花粉、埃、塵、ダニ・ノミの糞や死骸、PM2.5、カビなどの微粒子により、アレルギー反応を引き起こすことが問題となっている。特に花粉が引き起こすアレルギー症状、いわゆる花粉症は、国民病とも言われる大きな問題である。
【0003】
これらのアレルゲン物質を含む微粒子(以下、アレルゲン微粒子ともいう。)は、空間を漂ったり、衣類に付着するなどして室内へ侵入し、室内空間に浮遊するため、室内で快適に過ごすためには室内空間に浮遊するアレルゲン微粒子を除去することが求められる。
【0004】
アレルゲン微粒子を除去するための技術は種々検討されており、例えば、特許文献1には、セピオライトを含有してなるハウスダスト除去用分散液が提案されている。このハウスダスト除去用分散液では、該分散液を家具や寝具に散布し、一定時間放置してハウスダストを凝集させて電気掃除機等によりハウスダストを除去できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-120262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のハウスダスト除去用分散液は、家具や寝具等の対象物に付着したアレルゲン微粒子を除去するために用いられるものであり、空間に浮遊する微粒子の除去を対象とするものではない。一方、室内空間には空間に浮遊する微粒子も多く存在する。
【0007】
例えば、スギ花粉は直径30μm程度の粒子であるが、その表面には直径0.3~1.2μmのユービッシュ小体が付着しており、スギ花粉が屋外で大気汚染物質や衝撃の影響を受けると、粉砕されたり、ユービッシュ小体が剥がれ、より小さい微粒子となって空間を浮遊する。アレルギーを引き起こすのは、花粉に含まれるたんぱく質(アレルゲン)であるが、粉砕されて小さくなった微粒子や花粉粒から剥がれ落ちたユービッシュ小体にも、アレルゲンの存在が確認されている。さらに、大気中の花粉粒子の粒径分布は、1.1μm以下でアレルゲン濃度が高くなることが知られているが、約1μm以下の微粒子は、空間中に舞い散って、浮遊しやすく、落下しにくいため、人が呼吸により吸入するリスクが高くなる。
【0008】
そこで、本発明は、微粒子、特にアレルゲン微粒子の、空間での浮遊を抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の化合物を空間に粒子状で拡散させたときに、空間の微粒子の落下が促進され、微粒子の浮遊を抑制できることを見い出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち本発明は以下の(1)~(3)を特徴とする。
(1)炭化水素系化合物、グリコール系化合物及びグリコールエーテル系化合物からなる群から選択される少なくとも1つの化合物からなる、微粒子の浮遊抑制剤。
(2)炭化水素系化合物、グリコール系化合物及びグリコールエーテル系化合物からなる群から選択される少なくとも1つの化合物を有効成分として含む、微粒子の浮遊抑制用組成物。
(3)炭化水素系化合物、グリコール系化合物及びグリコールエーテル系化合物からなる群から選択される少なくとも1つの化合物を粒子状で拡散させる、空間への微粒子の浮遊を抑制する方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の微粒子の浮遊抑制剤は、これを空間に粒子状で拡散させることにより、該空間での微粒子の落下を促進して浮遊を抑えることができるので、人が呼吸により吸入するリスクを低下させ、アレルギーの発症を抑えることができる。また、空間に浮遊する微粒子を速やかに落下させることができるため、快適な空間を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の空間への微粒子の浮遊を抑制する方法に用いる電気加熱システムを説明するための電気加熱システムの装置の断面図である。
図2】落下促進試験の試験方法を説明するための模式図である。
図3】舞い散り防止試験の試験方法を説明するための模式図である。
図4】舞い散り防止試験の試験方法を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について更に詳しく説明する。
【0014】
(微粒子の浮遊抑制剤)
本発明の微粒子の浮遊抑制剤は、炭化水素系化合物、グリコール系化合物及びグリコールエーテル系化合物からなる群から選択される少なくとも1つの化合物からなる。
これらの化合物を空間に粒子状で拡散させることで、当該空間における微粒子の浮遊を抑制できる。当該効果を奏するメカニズムは明らかではないが、空間中の微粒子同士が前記化合物によって凝集し、大きな粒子へと変化するためと考えられ、本発明者により、前記化合物には微粒子の落下を促進させる効果があり、これにより空間内での微粒子の浮遊を抑制できるという知見を得た。
【0015】
本明細書において、「微粒子」とは、直径(最大径)が500μm以下である粒子を指すものとする。本実施形態では、本発明の微粒子の浮遊抑制剤は、直径が0.005~500μmの範囲の微粒子に好ましく使用できる。本発明の微粒子の浮遊抑制剤が好ましく使用できる微粒子の直径は、0.01μm以上であるのがより好ましく、0.05μm以上がさらに好ましく、また、100μm以下であるのがより好ましく、50μm以下がさらに好ましい。微粒子としては、例えば、花粉、埃、塵、ダニ・ノミの糞や死骸、PM2.5、カビ、細菌、ウイルス等が挙げられる。
【0016】
炭化水素系化合物としては、例えば、飽和脂肪族炭化水素、不飽和脂肪族炭化水素、ナフテン系炭化水素、流動パラフィン等の脂肪族及び脂環式炭化水素や、芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素等が挙げられる。
飽和脂肪族炭化水素としては、例えば、ノルマルパラフィン、イソパラフィン等が挙げられる。ノルマルパラフィンとしては、炭素数が8~17のものが代表的で、市販で入手できるものとして、例えば、ENEOS株式会社製の「ノルマルパラフィンSHNP」、「ノルマルパラフィンYHNP」等が挙げられる。イソパラフィンとしては、炭素数が8~16のものが代表的で、市販で入手できるものとして、例えば、出光興産株式会社製の「IPクリーンLX」、「IPソルベント1016」、「IPソルベント1620」、エクソンモービル株式会社製の「ISOPAR M」、「ISOPAR H」、「ISOPAR E」、「ISOPAR L」等が挙げられる。
不飽和脂肪族炭化水素としては、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、ブタンジエン等が挙げられる。
ナフテン系炭化水素としては、市販で入手できるものとして、例えば、ENEOS株式会社製の「ナフテゾール160」、「ナフテゾール200」、「ナフテゾール220」等が挙げられる。
流動パラフィンとしては、例えば、三光化学工業株式会社製の「流動パラフィン No.55-S」等が挙げられる。
芳香族炭化水素としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられ、市販で入手できるものとして、例えば、ENEOS株式会社製の「高沸点芳香族溶剤S100」、「高沸点芳香族溶剤S150」、「カクタスソルベントP-100」、「カクタスソルベントP-150」、「カクタスソルベントP-180」、「カクタスファインSF-01」、「カクタスファインSF-02」、「ハイゾール100」、「SS-100」、「SS-150」、出光興産株式会社製の「イプゾール100番」、「イプゾール200番」等が挙げられる。
ハロゲン化炭化水素としては、例えば、ジクロロエタンや四塩化炭素等が挙げられる。
【0017】
これらの中でも飽和脂肪族炭化水素、流動パラフィンが好ましく、ノルマルパラフィン、流動パラフィンがより好ましい。
【0018】
グリコール系化合物としては、例えば、1,3-ブチレングリコール、2,3-ブチレングリコール、ジエチレングリコール、イソプレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、へキシレングリコール、1,6-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、1,2-ヘキサンジオール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、テトラプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オクチレングリコール等が挙げられる。
【0019】
これらの中でも、炭素数4~6のグリコール系化合物が好ましく、例えば、1,3-ブチレングリコール、2,3-ブチレングリコール、ジエチレングリコール、イソプレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、へキシレングリコール、1,6-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、1,2-ヘキサンジオール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコールが好ましく、中でも、1,3-ブチレングリコール骨格を有する炭素数4~6のグリコール系化合物がより好ましく、1,3-ブチレングリコール、イソプレングリコール、へキシレングリコールがさらに好ましい。
【0020】
グリコールエーテル系化合物としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノアリルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、3-メチル-3-メトキシブタノール等が挙げられる。
【0021】
これらの中でも、炭素数1~4のアルキル基を有しエチレンオキサイドの付加モル数が1~10であるエチレングリコール系エーテルが好ましく、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテルがさらに好ましい。
【0022】
上記した炭化水素系化合物、グリコール系化合物及びグリコールエーテル系化合物は、空間中に拡散させやすくするため、20℃における密度が1.5g/cm以下であることが好ましく、1.3g/cm以下であることがより好ましく、1.2g/cm以下であることがさらに好ましい。また、微粒子とともに落下させやすくするため、密度は0.65g/cm以上が好ましく、0.7g/cm以上がより好ましく、0.75g/cm以上がさらに好ましい。すなわち、炭化水素系化合物、グリコール系化合物及びグリコールエーテル系化合物の20℃における密度は、0.65~1.5g/cmの範囲であるのが好ましい。
このような化合物としては、例えば、流動パラフィン、ノルマルパラフィン、1,3-ブチレングリコール、2,3-ブチレングリコール、ジエチレングリコール、イソプレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、へキシレングリコール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-ヘキサンジオール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル等が挙げられる。
【0023】
本発明の微粒子の浮遊抑制剤は、上記した炭化水素系化合物、グリコール系化合物及びグリコールエーテル系化合物からなる群から選択される1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて、20℃における密度を0.65g/cm以上1.5g/cm以下として用いてもよい。
【0024】
また、上記したグリコール系化合物及びグリコールエーテル系化合物は、空間中に拡散させやすくするため、分子量が300以下であることが好ましく、280以下であることがより好ましく、250以下であることがさらに好ましい。また、微粒子とともに落下させやすくするため、分子量は40以上が好ましく、75以上がより好ましく、90以上がさらに好ましい。すなわち、グリコール系化合物及びグリコールエーテル系化合物の分子量は、40~300の範囲であるのが好ましい。
【0025】
本発明の微粒子の浮遊抑制剤は、粒子状で拡散させる際、加熱により蒸散させる場合は、浮遊抑制剤の沸点が130℃~350℃の範囲にあるものを用いるのが好ましく、150℃~350℃の範囲にあるものを用いるのがより好ましく、180℃~350℃の範囲あるものを用いるのがさらに好ましく、190℃~350℃の範囲あるものを用いるのが特に好ましい。
このような化合物としては、例えば、流動パラフィン、ノルマルパラフィン、1,3-ブチレングリコール、2,3-ブチレングリコール、ジエチレングリコール、イソプレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、へキシレングリコール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-ヘキサンジオール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル等が挙げられる。
【0026】
また、上記した化合物の中でも、流動パラフィン、1,3-ブチレングリコール、イソプレングリコール、へキシレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテルは、微粒子の落下促進に加え、微粒子の舞い散りを防止する効果も得られる。流動パラフィン、1,3-ブチレングリコール、イソプレングリコール、へキシレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル及びジエチレングリコールモノイソブチルエーテルのうちの少なくとも1つを用いることで、微粒子を速やかに落下させることができ、一方で床面に堆積している微粒子を舞い上がり難くさせることができるため、清掃も容易となり、清潔で快適な室内空間を提供することができる。
【0027】
微粒子の落下促進に加えて微粒子の舞い散り防止の効果を得るための、上記した炭化水素系化合物、グリコール系化合物及びグリコールエーテル系化合物は、空間中への拡散性を維持するため、20℃における密度が1.5g/cm以下であることが好ましく、1.3g/cm以下であることがより好ましい。また、落下しやすく、床面に体積した微粒子に付着して舞い上がりにくくするため、密度は0.78g/cm以上が好ましく、0.8g/cm以上がより好ましい。すなわち、微粒子の落下促進と舞い散り防止の効果を共に得るための、炭化水素系化合物、グリコール系化合物及びグリコールエーテル系化合物は、20℃における密度が0.78~1.5g/cmの範囲であるのが好ましい。
微粒子の落下促進に加え、舞い散りを防止する効果を得るために、本発明の微粒子の浮遊抑制剤は、上記した炭化水素系化合物、グリコール系化合物及びグリコールエーテル系化合物からなる群から選択される1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて、20℃における密度を0.78/cm以上1.5/cm以下として用いてもよい。
【0028】
また、微粒子の落下促進に加え、舞い散りを防止する効果を得るためには、微粒子の浮遊抑制剤は、空間中への拡散性を維持しつつも、より落下しやすく、舞い上がりにくいことが重要である。この場合、上記したグリコール系化合物及びグリコールエーテル系化合物は、空間中への拡散性を維持するため、280以下であることが好ましく、250以下であることがより好ましい。また、落下しやすく、床面に体積した微粒子に付着して舞い上がりにくくするため、分子量は75以上が好ましく、90以上がより好ましい。すなわち、微粒子の落下促進と舞い散り防止の効果を共に得るための、グリコール系化合物及びグリコールエーテル系化合物は、分子量が75~280の範囲であるのが好ましい。
【0029】
(微粒子の浮遊抑制用組成物)
本発明の微粒子の浮遊抑制用組成物は、上記した本発明の微粒子の浮遊抑制剤である、炭化水素系化合物、グリコール系化合物及びグリコールエーテル系化合物からなる群から選択される少なくとも1つの化合物を有効成分として含む。なお、ここで有効成分とは、微粒子の浮遊抑制用組成物を空間に粒子状で拡散させたときに、微粒子の落下促進効果を発揮するものである。
【0030】
炭化水素系化合物、グリコール系化合物及びグリコールエーテル系化合物の具体例及び好ましいものについては上記と同様である。
【0031】
微粒子の浮遊抑制用組成物中、微粒子の浮遊抑制剤の含有量は、40質量%以上であるのが好ましい。微粒子の浮遊抑制剤の含有量が40質量%以上であると、本発明の効果が高まる。
組成物中の微粒子の浮遊抑制剤の含有量は、50質量%以上であるのがより好ましく、60質量%以上がさらに好ましく、70質量%以上が特に好ましく、80質量%以上が最も好ましい。上限は特に限定されず、微粒子の浮遊抑制用組成物が本発明の微粒子の浮遊抑制剤からなるもの(微粒子の浮遊抑制剤100質量%)であってもよい。
【0032】
微粒子の浮遊抑制用組成物には所望により本発明の効果を損なわない範囲で他の成分を含んでもよい。該組成物に含むことのできる他の成分としては、例えば、酸化防止剤、香料、溶剤、消臭剤、殺菌剤、除菌剤、抗菌剤、防カビ剤、ウイルス不活化剤、アレルゲン不活化剤、微粒子凝集剤、界面活性剤等が挙げられる。
【0033】
酸化防止剤としては、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、アスコルビン酸塩、イソフラボン、ジエチル(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ホスホネート等が挙げられる。
【0034】
酸化防止剤は、微粒子の浮遊抑制用組成物中、0.01~10質量%の範囲で含まれるのが好ましい。
【0035】
香料としては、様々な植物や動物から抽出された天然香料や、化学的に合成される合成香料、さらにはこれらの香料成分を多数混合して作られる調合香料等が挙げられる。
天然香料としては、例えば、ペパーミント油、ユーカリ油、ローズ油等の天然精油等が挙げられる。
合成香料としては、例えば、ヘプタナール、オクタナール、デカナール、ベンズアルデヒド、サリシリックアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、シトロネラール、ハイドロキシシトロネラール、シトラール、α-ヘキシルシンナミックアルデヒド、アミルシンナミックアルデヒド、リリアール、シクラメンアルデヒド、リラール、ヘリオトロピン、ヘリオナール、青葉アルデヒド等のアルデヒド類;エチルフォーメート、メチルアセテート、メチルプロピオネート、メエチルイソブチレート、プロピルブチレート、イソブチルアセテート、イソブチルブチレート、イソブチルイソバレレート、エチル-2-メチルバレレート、イソアミルアセテート、アミルプロピオネート、アリルヘキサノエート、エチルアセトアセテート、エチルヘプチレート、メチルベンゾエート、エチルベンゾエート、エチルオクチレート、ベンジルアセテート、ノニルアセテート、オルト-ter-ブチルシクロヘキシルアセテート、安息香酸リナリル、エチルシンナメート、ヘキシルブチレート、メンチルアセテート、ターピニルアセテート、フェニルエチルイソブチレート、ジャスモン酸メチル、ジヒドロジャスモン酸メチル、エチレンブラシレート、γ―デカノラクトン、γ-ウンデカラクトン、γ-ノニルラクトン、シクロペンタデカノライド、クマリン、アンスラニル酸メチル等のエステル・ラクトン類;アニソール、p-クレジルメチルエーテル、ジメチルハイドロキノン、メチルオイゲノール、β-ナフトールメチルエーテル、β-ナフトールエチルエーテル、アネトール、ジフェニルオキサイド、ローズオキサイド、ガラクソリド、アンブロックス等のエーテル類;イソプロピルアルコール、cis-3-ヘキセノール、ヘプタノール、2-オクタノール、ジメトール、ジヒドロミルセノール、ベンジルアルコール、シトロネロール、ゲラニオール、ネロール、ターピネオール、L-メントール、セドロール、チモール、アニスアルコール、フェニルエチルアルコール、ヘキサノール、青葉アルコール等のアルコール類;ジアセチル、メントン、イソメントン、アセトフェノン、α-又はβ-ダマスコン、α-又はβ-ダマセノン、α-、β-又はγ-ヨノン、α-、β-又はγ-メチルヨノン、メチル-β-ナフチルケトン、ベンゾフェノン、テンタローム、アセチルセドレン、α-又はβ-イソメチルヨノン、α-、β-又はγ-イロン、cis-ジャスモン、ジヒドロジャスモン、L-カルボン、ジヒドロカルボン、メチルアミルケトン等のケトン類、カンファー、1,8-シネオール、アリルアミルグリコレート、イソプレゴール、リグストラル、アリルカプロエート、ヒノキチオール、プロピオン酸ベンジル、シクロへキシルプロピオン酸アリル、クミンアルデヒド等が挙げられる。
これらの香料は、1種を単独で使用しても、また2種以上を任意に組み合わせて、調合香料として使用してもよい。さらに、香料は香料成分、溶剤、香料安定化剤等を含有する混合物(香料組成物)として使用することもできる。
【0036】
香料は、微粒子の浮遊抑制用組成物中、1~30質量%の範囲で含まれるのが好ましい。
【0037】
溶剤は、微粒子の浮遊抑制用組成物の拡散濃度や量、持続日数等を調整するために用いる。
溶剤としては、上記した炭化水素系化合物、グリコール系化合物及びグリコールエーテル系化合物以外の溶剤が挙げられ、例えば、グリコール系化合物以外のアルコール系溶剤、ケトン類、エステル類、水等が挙げられる。
グリコール系化合物以外のアルコール系溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、2-プロパノール等の低級アルコール、グリセリン等の多価アルコール等が挙げられる。
ケトン類としては、例えば、アセトン、アセトフェノン等が挙げられる。
エステル類としては、例えば、アジピン酸ジオクチル、マロン酸ジエチル、フタル酸ジエチル等が挙げられる。
水としては、精製水、蒸留水、イオン交換水、水道水等が挙げられる。
これらの溶剤は、1種を単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0038】
溶剤は、微粒子の浮遊抑制用組成物中、0~60質量%の範囲で含まれるのが好ましい。
【0039】
消臭剤としては、例えば、植物抽出エキス(例えば、ツバキ、キク、マツ、スギ、オオバコ等から得られるエキス)、植物精油(例えば、カテキン、植物ポリフェノール、リナロール、ボルネオール)等が挙げられる。
【0040】
消臭剤は、微粒子の浮遊抑制用組成物中、0~60質量%の範囲で含まれるのが好ましい。
【0041】
殺菌剤、除菌剤、抗菌剤、防カビ剤、ウイルス不活化剤としては、例えば、グルタルアルデヒド、フェノール、クレゾール、イソプロピルメチルフェノール、o-フェニルフェノール、4-クロロ-3,5-ジメチルフェノール、チアベンダゾール、クロロタロニル、トリクロサン、ゼラニウム油、リナロール、ヘキサナール、塩化ベンザルコニウム、ベンザルコニウムサッカリネート、1,4-ビス{3,3’-(1-デシルピリジニウム)メチルオキシ}ブタンジブロマイド等が挙げられる。
【0042】
殺菌剤、除菌剤、抗菌剤、防カビ剤、ウイルス不活化剤は、微粒子の浮遊抑制用組成物中、0~60質量%の範囲で含まれるのが好ましい。
【0043】
アレルゲン不活化剤としては、例えば、ハイドロキシアパタイト、エピガロカテキン等のカテキン、没食子酸、タンニン酸、エタノール等のアルコール、塩化ベンザルコニウム等のカチオン性界面活性剤、スメクタイト粘土等の水膨潤性粘土鉱物、ポリビニルアルコール等が挙げられる。
アレルゲン不活化剤は、微粒子の浮遊抑制用組成物中、0~60質量%の範囲で含まれるのが好ましい。
【0044】
微粒子凝集剤としては、例えば、シクロデキストリン及び/又はその誘導体やスチレン系の樹脂等が挙げられる。
微粒子凝集剤は、微粒子の浮遊抑制用組成物中、0~60質量%の範囲で含まれるのが好ましい。
【0045】
界面活性剤としては、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤等の公知の界面活性剤が使用できる。
界面活性剤は、微粒子の浮遊抑制用組成物中、0~60質量%の範囲で含まれるのが好ましい。
【0046】
微粒子の浮遊抑制用組成物は、上記した各成分を、撹拌機等を用いて均一に混合することにより調製できる。
【0047】
微粒子の浮遊抑制用組成物は、空間に粒子状で拡散させやすくするために液体状であるのが好ましいが、担持体に含浸させた固形の含浸体であってもよい。なお、「液体」とは、流動的であり、容器の形状に応じて形を変えることのできる物質の状態をいう。
【0048】
(空間への微粒子の浮遊を抑制する方法)
本発明の空間への微粒子の浮遊を抑制する方法は、上記した本発明の微粒子の浮遊抑制剤である、炭化水素系化合物、グリコール系化合物及びグリコールエーテル系化合物からなる群から選択される少なくとも1つの化合物を粒子状で拡散させることを含む。
上記した本発明の微粒子の浮遊抑制用組成物を用いて、公知の方法により、粒子状で空間に拡散させればよい。
【0049】
微粒子の浮遊抑制用組成物を粒子状で拡散させる方法としては、例えば、電気加熱システムを用いて蒸散させる方法、加水発熱システムを用いて蒸散させる方法、ノンガスタイプのスプレーやエアゾールスプレー(全量噴射タイプを含む)、超音波式噴霧器を用いて霧状に散布する方法、担持体に担持させたり、液剤やゲル剤等に添加して自然揮散させる方法、ファン等の風力を用いて揮散させる方法等が挙げられる。
【0050】
これらの中でも、室内空間全体への拡散性、持続性、取り扱い性の観点から、電気加熱システムを用いて蒸散させる方法、超音波式噴霧器を用いて霧状に散布する方法、担持体に担持させたり、液剤やゲル剤等に添加して自然揮散させる方法、ファン等の風力を用いて揮散させる方法が好ましく、電気加熱システムを用いて蒸散させる方法がより好ましい。
一例として、微粒子の浮遊抑制用組成物を電気加熱システムを用いて蒸散させる方法について説明する。
【0051】
電気加熱システムは、電気的現象によって発生する熱による加熱である。例えば、微粒子の浮遊抑制用組成物をヒーターで温め、電気加熱システム用の吸液芯に吸液させた前記組成物を、前記吸液芯から蒸散させる方法が挙げられる。
【0052】
図1は前記電気加熱システムの装置の一実施形態を示す断面図である。図1に示すように、この電気加熱システムの装置11は、吸液芯1を支持するための芯支持体2を有する薬液収容容器3と、この薬液収容容器3内に挿入され上部が容器から突出した吸液芯1と、この吸液芯1の上側面部を間接的に加熱するための中空円筒状発熱体4と、この発熱体4を支持するための支持部5および支持脚6とを有する。この薬液収容容器3内には本発明の微粒子の浮遊抑制用組成物7が収容されている。発熱体4は、これに通電して発熱させるためのコード(図示せず)を有しているが、コードレスタイプでもよい。なお、図1中、8は外気取入口、9は周隙を示している。このような電気加熱システムの装置は、例えば特公昭52-12106号公報、実開昭58-45670号公報等に記載されている。
【0053】
吸液芯1としては、従来より薬液の電気加熱システムによる蒸散を目的として使用されているものが特に制限なく使用可能であり、例えばフェルト、木綿、パルプ、不織布、石綿、無機質成形物などが挙げられ、さらに合成樹脂の多孔質芯や合成繊維束を樹脂で固めた芯なども使用可能である。また、毛細管などの中空状吸液芯であってもよい。
【0054】
前記無機質成形物の具体例としては、磁器多孔質、グラスファイバー、石綿などの無機繊維を石膏やベントナイトなどの結合剤で固めたものや、カオリン、活性白土、タルク、ケイソウ土、クレー、パーライト、石膏、ベントナイト、アルミナ、シリカ、アルミナシリカ、チタニウム、ガラス質火山岩焼成粉末、ガラス質火山灰焼成粉末などの鉱物質粉末を単独でまたは木粉、炭粉、活性炭などと共に糊剤、例えばデキストリン、デンプン、アラビアゴム、CMCなどで固めたものを例示できる。例えば、前記鉱物質粉末を用いる場合には、この鉱物質粉末100質量部に、木粉または該木粉に等質量までの炭粉および/または活性炭を混合した混合物10~300質量部を配合し、さらに糊剤を全吸液芯質量の5~25質量%となるまで混合し、さらに水を加えて練合後、押出成形し乾燥することにより吸液芯1を得ることができる。
【0055】
また、前記発熱体4としては、通常、通電により発熱する発熱体、例えば、PTCヒーター(正特性サーミスタ)、セラミックヒーター、コイルヒーターなどが汎用されているが、これに限定されることなく、例えば空気酸化発熱材、白金触媒などを利用した発熱材などの公知のいかなる発熱体であってもかまわない。
【0056】
加熱温度は、微粒子の浮遊抑制用組成物の単位時間当りの蒸散量を考慮して決定され、通常、発熱体4の表面温度が70℃~150℃、好ましくは85℃~145℃の範囲とされ、これは吸液芯1の表面温度約55℃~135℃、好ましくは約70℃~130℃に相当する。
【0057】
上記のような吸液芯1を備えた電気加熱システムの装置11の薬液収容容器3に、本発明の微粒子の浮遊抑制剤を含有した微粒子の浮遊抑制用組成物7を収容し、これを吸液芯1に吸液させると共に、発熱体4で吸液芯1の上側の側面部を加熱することによって、微粒子の浮遊抑制用組成物が蒸散される。
【0058】
本発明の空間に拡散される微粒子の浮遊抑制用組成物の粒子径は、空間への拡散性を高める観点から15μm以下が好ましく、13μm以下がより好ましく、11μm以下がさらに好ましい。また特に、電気加熱システムを用いて蒸散させる場合、5μm以下が好ましく、3μm以下がより好ましく、2μm以下がさらに好ましい。粒子径の下限は特に限定されないが、例えば0.001μm以上である。
本明細書において浮遊抑制用組成物の粒子径とは、空間内へ揮散又は蒸散させた浮遊抑制用組成物の質量中位径を意味する。粒子径の測定方法は、具体的には、約25℃の密閉した6畳空間内(縦2.7m×横3.6m×高さ2.4m)の床面中央で微粒子の浮遊抑制用組成物を6時間揮散又は蒸散させ、その揮散又は蒸散場所から1.1m離れた床面に設置した粒子径測定器(例えば、東京ダイレック株式会社製「アンダーセン型ロープレッシャーインパクター LP-20型」)を用いて空間に拡散した浮遊抑制用組成物を粒子径ごとにろ紙に捕集する。捕集前後のろ紙の重量差から、粒子径ごとの重量を測り、累積百分率を対数正規確率紙にプロットし、粒度分布表を作成する。作成した粒度分布表より、累積50%となる粒子径(質量中位径)を算出する。
【0059】
本発明の微粒子の浮遊抑制剤の空間中に対する1時間あたりの揮散量又は蒸散量は、0.001g~10gが好ましく、0.005g~5gがより好ましく、0.01g~0.5gがさらに好ましく、0.02g~0.5gが特に好ましい。
【0060】
本発明の空間への微粒子の浮遊を抑制する方法は、室内で使用するのに適しており、屋外から室内に侵入したアレルゲン微粒子の落下を促進し、微粒子の浮遊を抑制できる。
使用する空間の大きさは、本発明の効果がより得られやすいため、16畳以下の空間が好ましく、14畳以下の空間がより好ましく、12畳以下の空間がさらに好ましい。また、空間内に汚れやべたつきを生じにくくするため、1畳以上の空間が好ましく、3畳以上の空間が好ましく、4畳以上の空間がさらに好ましい。
【実施例0061】
以下、下記試験例により更に説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。
【0062】
<試験例1>
(実施例1~8)
1.試験検体の作製
表1の処方表に従い、検体組成物を準備した。
次に、検体組成物を容量50mLのボトルに45mL充填し、中栓を閉めて電気加熱システム用の吸液芯(直径7.2mm×長さ73.5mm)を打芯した。露出した吸液芯を覆うようにしてキャップ(材質:ポリアセタール)を取り付け、50℃恒温槽に1晩~2日(12~48時間)静置し、露出した吸液芯の先端まで検体組成物を吸液させた。
【0063】
2.粒子径の測定
実施例1、2、5の試験検体について、試験検体を室温に戻した後、試験検体を電気加熱システムの装置(図1、ヒーター温度約140℃)にセットし、縦2.7m×横3.6m×高さ2.4mのチャンバーの床面中央に設置し、チャンバーを閉鎖した状態で、室温を25℃に設定し、電気加熱システムの装置の通電を開始し、6時間蒸散させた。装置の蒸散場所から1.1m離れた床面に粒子径測定器(東京ダイレック株式会社製「アンダーセン型ロープレッシャーインパクター LP-20型」)を設置しておき、空間に拡散した流動パラフィンを粒子径ごとにろ紙に捕集した。捕集前後のろ紙の重量差から、粒子径ごとの重量を測り、累積百分率を対数正規確率紙にプロットして粒度分布表を作成し、粒度分布表から累積50%となる粒子径(質量中位径)を算出した。粒子径はいずれも1.2μmであった。
【0064】
【表1】
【0065】
3.落下促進試験
上記作製した試験検体を用いて粉体の落下確認試験を行った。
図2に示すような試験室を利用した。
1つの壁の中央の高さ170cmの位置に噴霧窓15を有する縦3.6m×横3.6m×高さ2.5mのステンレス製チャンバーの床中央に、室温に戻した試験検体をセットした電気加熱システムの装置11(図1、ヒーター温度約140℃)を設置した。噴霧窓15を有する壁の反対側の壁の前に、サーキュレーター13を設置した。
そして、噴霧窓15を有する壁に直交する壁のうちの一方の壁側に、電気加熱システムの装置11から100cm離れたところに粒径分布測定装置12(TSI社製「OPS3330」)を設置した。このとき粒径分布測定装置12の吸引口が床から120cmの位置になるようにした。そして、0.5回/H換気条件(1時間あたり、チャンバー内の半分の容量の空気が入れ替わる条件)で試験検体を5時間蒸散させた。
その後、電気加熱システムの装置11への通電と換気を止め、噴霧窓15から、0.5gの粉体14(JIS試験用粉体1 11種)を粉体噴霧器(PALAS社製エアロゾルジェネレーター「RGB-1000」)を用いて噴霧した。具体的には、0.5gの粉体14をピストンが取り付けられたリザーバーに充填し、そのリザーバーを粉体噴霧器に取り付けた。粉体噴霧器のフィーダーを100mm/Hの速さで上昇させることでピストンが上昇し、粉体の噴霧が開始された。リザーバーからピストンによって押し上げられた粉体は、粉体噴霧器の噴口に取り付けられた導電性シリコンチューブ(内径:0.19インチ、外径:0.375インチ)を通り、噴霧窓15から試験室内に噴霧された。フィーダーの上昇が終わるまでの間(約10分間)、サーキュレーター13(ベルソス社製「CF-AC40」、モード:連続、風力:弱、首振り:ON)により粉体14を撹拌した。
噴霧終了後、サーキュレーター13を止めて試験室をそのままの状態で放置し、粉体噴霧から5時間後に、粒径分布測定装置12により粉体濃度(個/cm)を測定した。なお、測定は、粒径分布測定装置として用いたTSI社製「OPS3330」の設定範囲である粒子径範囲「下限0.579μm上限0.721μm」、「下限0.721μm上限0.897μm」、「下限0.897μm上限1.117μm」、「下限1.117μm上限1.391μm」、「下限1.391μm上限1.732μm」及び「下限1.732μm上限2.156μm」で行った。
対照として、電気加熱システムの装置を設置せず、無処理の状態で粉体噴霧のみを行ったときの粉体濃度(個/cm)を測定した(対照例1)。
【0066】
以下の式(1)を用いて、粉体濃度の減少率(%)を算出した。
減少率(%)=(無処理の粉体濃度-検体処理の粉体濃度)/無処理の粉体濃度×100 ・・・(1)
【0067】
各検体の粉体噴霧から5時間後の粉体濃度(個/cm)の測定値を表2に、減少率(%)を表3に示す。
【0068】
【表2】
【0069】
【表3】
【0070】
表2及び表3の結果より、実施例1~8は全て粉体噴霧から5時間後の粉体濃度(個/cm)の減少が確認できた。
この結果から、炭化水素系化合物、グリコール系化合物及びグリコールエーテル系化合物は、蒸散により空間中の微粒子同士を凝集したと考えられ、これらの化合物には微粒子の落下促進効果があることがわかった。
【0071】
<試験例2>
1.試験検体の準備
試験例1で作製した実施例1、3~8の試験検体を用いた。
【0072】
2.試験片の作製
布(ポリエステル)を5cm×5cmの大きさに裁断した。その布に、石松子(Lycopodium(ALDRICH chemistry))0.01gを塗り広げたものを試験片とした。
【0073】
3.舞い散り防止試験
実施例1、3~8の試験検体を用いて、粉体の舞い散り確認試験を行った。
図3に示すような試験室及び図4に示すような試験装置を利用した。
試験検体を室温に戻した後、試験検体を電気加熱システムの装置11(図1、ヒーター温度約140℃)にセットし、図3に示したように、縦1.8m×横1.8m×高さ1.8mのチャンバーの床中央に設置した。電気加熱システムの装置11から50cm離れたところの床に試験片16を設置した。試験チャンバーを閉鎖した状態で、電気加熱システムの装置11の通電を開始した。
通電から15時間後、試験片16を回収し、試験片16の中央をマイクロスコープ(KEYENCE社製「VHX-7000」)にて、200倍の倍率で観察した。そして、観察範囲内の石松子の面積を計測した。
次に、図4に示した試験装置20の壁19Aの底部から8cmの高さに試験片16を固定した。壁19Aに直交する壁19Bの、壁19Aから9cm離れ且つ底部から約16.5cmの高さに取り付けた棒に、糸18(長さ約10cm)を結び、糸18の先端にボール17(ブタンジエン樹脂、直径3cm、重さ14.2g)を取り付けた。ボール17は底部から約5cmの高さに位置していた。ボール17を糸18が地面に水平となる角度まで上げ、手を放し、ボール17を試験片16の表面にあてた。このボールを当てる操作を5回繰り返した後、試験片16を回収し、再度マイクロスコープで試験片16の中央を200倍の倍率で観察し、その観察範囲内の石松子の面積を計測した。
対照として、電気加熱システムの装置を設置せず、無処理の状態で同様の試験を行った(対照例2)。
【0074】
以下の式(2)を用いて、石松子の舞い散り率(%)を算出した。試験は2回行い、平均を求めた。
舞い散り率(%)=(ボールを当てる前の石松子の面積-ボールを当てた後の石松子の面積)/ボールを当てる前の石松子の面積×100 ・・・(2)
【0075】
対照例2の舞い散り率を100としたときの、各実施例の舞い散り率を表4に示す。
【0076】
【表4】
【0077】
表4に示すとおり、実施例1、3~8は対照例2に比べて石松子の舞い散りが抑えられた。これらの結果より、流動パラフィン、1,3-ブチレングリコール、イソプレングリコール、へキシレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル及びジエチレングリコールモノイソブチルエーテルには微粒子の落下促進効果に加え、微粒子の舞い散り防止効果もあることがわかった。
【符号の説明】
【0078】
1 吸液芯
2 芯支持体
3 薬液収容容器
4 中空円筒状発熱体
5 支持部
6 支持脚
7 微粒子の浮遊抑制用組成物
8 外気取入口
9 周隙
11 電気加熱システムの装置
12 粒径分布測定装置
13 サーキュレーター
14 粉体
15 噴霧窓
16 試験片
17 ボール
18 糸
19A,19B 壁
20 試験装置
図1
図2
図3
図4