(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111843
(43)【公開日】2024-08-19
(54)【発明の名称】微粒子の浮遊抑制剤
(51)【国際特許分類】
C11D 7/22 20060101AFI20240809BHJP
B01D 47/06 20060101ALI20240809BHJP
A61L 9/14 20060101ALI20240809BHJP
【FI】
C11D7/22
B01D47/06 Z
A61L9/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024016245
(22)【出願日】2024-02-06
(31)【優先権主張番号】P 2023016400
(32)【優先日】2023-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000100539
【氏名又は名称】アース製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】長屋 ひろみ
【テーマコード(参考)】
4C180
4D032
4H003
【Fターム(参考)】
4C180AA02
4C180AA07
4C180AA17
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4H003BA08
4H003BA21
4H003EB02
4H003EB04
4H003ED03
4H003FA26
(57)【要約】
【課題】微粒子、特にアレルゲン微粒子の、空間での浮遊を抑制すること。
【解決手段】環状構造を持つ化合物からなる、微粒子の浮遊抑制剤とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状構造を持つ化合物からなる、微粒子の浮遊抑制剤。
【請求項2】
環状構造を持つ化合物を有効成分として含む、微粒子の浮遊抑制用組成物。
【請求項3】
環状構造を持つ化合物を粒子状で拡散させる、空間への微粒子の浮遊を抑制する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微粒子の浮遊抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、花粉、埃、塵、ダニ・ノミの糞や死骸、PM2.5、カビなどの微粒子により、アレルギー反応を引き起こすことが問題となっている。特に花粉が引き起こすアレルギー症状、いわゆる花粉症は、国民病とも言われる大きな問題である。
【0003】
これらのアレルゲン物質を含む微粒子(以下、アレルゲン微粒子ともいう。)は、空間を漂ったり、衣類に付着するなどして室内へ侵入し、室内空間に浮遊するため、室内で快適に過ごすためには室内空間に浮遊するアレルゲン微粒子を除去することが求められる。
【0004】
アレルゲン微粒子を除去するための技術は種々検討されており、例えば、特許文献1には、セピオライトを含有してなるハウスダスト除去用分散液が提案されている。このハウスダスト除去用分散液では、該分散液を家具や寝具に散布し、一定時間放置してハウスダストを凝集させて電気掃除機等によりハウスダストを除去できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のハウスダスト除去用分散液は、家具や寝具等の対象物に付着したアレルゲン微粒子を除去するために用いられるものであり、空間に浮遊する微粒子の除去を対象とするものではない。一方、室内空間には空間に浮遊する微粒子も多く存在する。
【0007】
例えば、スギ花粉は直径30μm程度の粒子であるが、その表面には直径0.3~1.2μmのユービッシュ小体が付着しており、スギ花粉が屋外で大気汚染物質や衝撃の影響を受けると、粉砕されたり、ユービッシュ小体が剥がれ、より小さい微粒子となって空間を浮遊する。アレルギーを引き起こすのは、花粉に含まれるたんぱく質(アレルゲン)であるが、粉砕されて小さくなった微粒子や花粉粒から剥がれ落ちたユービッシュ小体にも、アレルゲンの存在が確認されている。さらに、大気中の花粉粒子の粒径分布は、1.1μm以下でアレルゲン濃度が高くなることが知られているが、約1μm以下の微粒子は、空間中に舞い散って、浮遊しやすく、落下しにくいため、人が呼吸により吸入するリスクが高くなる。
【0008】
そこで、本発明は、微粒子、特にアレルゲン微粒子の、空間での浮遊を抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は上記課題を解決するために鋭意検討した結果、環状構造を持つ化合物を空間に粒子状で拡散させたときに、空間の微粒子の落下が促進され、微粒子の浮遊を抑制できることを見い出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち本発明は以下の(1)~(3)を特徴とする。
(1)環状構造を持つ化合物からなる、微粒子の浮遊抑制剤。
(2)環状構造を持つ化合物を有効成分として含む、微粒子の浮遊抑制用組成物。
(3)環状構造を持つ化合物を粒子状で拡散させる、空間への微粒子の浮遊を抑制する方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の微粒子の浮遊抑制剤は、これを空間に粒子状で拡散させることにより、該空間での微粒子の落下を促進して浮遊を抑えることができるので、人が呼吸により吸入するリスクを低下させ、アレルギーの発症を抑えることができる。また、空間に浮遊する微粒子を速やかに落下させることができるため、快適な空間を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の空間への微粒子の浮遊を抑制する方法に用いる電気加熱システムを説明するための電気加熱システムの装置の断面図である。
【
図2】落下促進試験の試験方法を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について更に詳しく説明する。
【0014】
(微粒子の浮遊抑制剤)
本発明の微粒子の浮遊抑制剤は、環状構造を持つ化合物からなる。
環状構造を持つ化合物を空間に粒子状で拡散させることで、当該空間における微粒子の浮遊を抑制できる。当該効果を奏するメカニズムは明らかではないが、空間中の微粒子同士が環状構造を持つ化合物によって凝集し、大きな粒子へと変化するためと考えられ、本発明者により、前記化合物には微粒子の落下を促進させる効果があり、これにより空間内での微粒子の浮遊を抑制できるという知見を得た。
【0015】
本明細書において、「微粒子」とは、直径(最大径)が500μm以下である粒子を指すものとする。本実施形態では、本発明の微粒子の浮遊抑制剤は、直径が0.005~500μmの範囲の微粒子に好ましく使用できる。本発明の微粒子の浮遊抑制剤が好ましく使用できる微粒子の直径は、0.01μm以上であるのがより好ましく、0.05μm以上がさらに好ましく、また、100μm以下であるのがより好ましく、50μm以下がさらに好ましい。微粒子としては、例えば、花粉、埃、塵、ダニ・ノミの糞や死骸、PM2.5、カビ、細菌、ウイルス等が挙げられる。
【0016】
環状構造を持つ化合物としては、例えば、メントール、チモール、メントン、3-(メントキシ)-1,2-プロパンジオール、リモネン、ダマスコン、p-サイメン、バニリン、エチルバニリン、アミルシンナミックアルデヒド、クミンアルデヒド、シンナムアルデヒド、アビエチン酸、カマズレン、サリチル酸メチル、ベンジルアルコール、アセトフェノン、α-、β-又はγ-イロン、マルトール、cis-ジャスモン、ジヒドロジャスモン、ヌートカトン、アントラニル酸メチル、テルピノレン、アニスアルデヒド、β-ダマセノン、リグストラール、ジヒドロテレピネオール、フェランドレン(α-フェランドレン、β-フェランドレン)、ジヒドロカルボン、イソメントン、カルボン、カルベオール、テルピネオール(α-テルピネオール、β-テルピネオール、γ-テルピネオール、δ-テルピネオール)、オイゲノール、カルバクロール、サルビオール、ヒノキチオール、レボピマル酸、アビエノール、ビサボロール、マノオール、δ-3-カレン、2,4,6-トリメチル-4-フェニル-1,3-ジオキサン、2-メチル-4-プロピル-1,3-オキサチアン、プロピオン酸ベンジル、酢酸フェニルエチル、4-エチル-α,α-ジメチルベンゼンプロパナール、ブルネセン、ツヨプセン、ピペリトン、プレゴン、インドール、カジネン、酢酸テルピニル、酢酸オイゲノール、酢酸ベンジル、イオノン、ローズオキシド、シクロヘキシルプロピオン酸アリル等が挙げられる。
環状構造を持つ化合物は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0017】
環状構造を持つ化合物の分子量は、空間中に拡散させやすくするため、300以下であることが好ましく、280以下がより好ましく、250以下がさらに好ましく、240以下が特に好ましい。また、微粒子とともに落下させやすくするため、分子量は40以上が好ましく、75以上がより好ましく、90以上がさらに好ましく、100以上が特に好ましく、120以上が最も好ましい。すなわち、環状構造を持つ化合物は、分子量40~300の範囲にあるものが好ましい。
【0018】
また、環状構造を持つ化合物は、空間中に拡散させやすくするため、20℃における密度が2.0g/cm3以下であることが好ましく、1.9g/cm3以下がより好ましく、1.8g/cm3以下がさらに好ましく、1.5g/cm3以下がよりさらに好ましく、1.3g/cm3以下が特に好ましく、1.2g/cm3以下が最も好ましい。また、微粒子とともに落下させやすくするため、密度は0.65g/cm3以上が好ましく、0.7g/cm3以上がより好ましく、0.75g/cm3以上がさらに好ましい。すなわち、環状構造を持つ化合物の20℃における密度は、0.65~2.0g/cm3の範囲であるのが好ましい。
【0019】
本発明の微粒子の浮遊抑制剤は、粒子状で拡散させる際、加熱により蒸散させる場合は、浮遊抑制剤の沸点が130℃~350℃の範囲にあるものを用いるのが好ましい。このような化合物としては、例えば、メントール、チモール、メントン、3-(メントキシ)-1,2-プロパンジオール、リモネン、ダマスコン、p-サイメン、バニリン、エチルバニリン、アミルシンナミックアルデヒド、クミンアルデヒド、シンナムアルデヒド、カマズレン、サリチル酸メチル、ベンジルアルコール、アセトフェノン、α-、β-又はγ-イロン、マルトール、cis-ジャスモン、ジヒドロジャスモン、ヌートカトン、アントラニル酸メチル、テルピノレン、アニスアルデヒド、β-ダマセノン、リグストラール、ジヒドロテレピネオール、フェランドレン(α-フェランドレン、β-フェランドレン)、ジヒドロカルボン、イソメントン、カルボン、カルベオール、テルピネオール(α-テルピネオール、β-テルピネオール、γ-テルピネオール、δ-テルピネオール)、オイゲノール、カルバクロール、ヒノキチオール、ビサボロール、マノオール、δ-3-カレン、2,4,6-トリメチル-4-フェニル-1,3-ジオキサン、2-メチル-4-プロピル-1,3-オキサチアン、プロピオン酸ベンジル、酢酸フェニルエチル、4-エチル-α,α-ジメチルベンゼンプロパナール、ブルネセン、ツヨプセン、ピペリトン、プレゴン、インドール、カジネン、酢酸テルピニル、酢酸オイゲノール、酢酸ベンジル、イオノン、ローズオキシド、シクロヘキシルプロピオン酸アリル等が挙げられる。
【0020】
環状構造としては、同素環、複素環が挙げられるが、本発明の効果がより得られやすいという観点から、環状構造を持つ化合物は同素環が好ましく、炭化水素系環状構造を持つ化合物がより好ましい。
【0021】
また、環状構造を持つ化合物は、単環式化合物であっても、多環式化合物であってもよいが、本発明の効果がより得られやすいという観点から、単環式化合物であるのが好ましい。
【0022】
すなわち、環状構造を持つ化合物は、炭化水素系の単環式化合物であるのが最も好ましく、このような化合物としては、具体的に、メントール、チモール、メントン、3-(メントキシ)-1,2-プロパンジオール、リモネン、ダマスコン、p-サイメン、バニリン、エチルバニリン、アミルシンナミックアルデヒド、クミンアルデヒド、シンナムアルデヒド、サリチル酸メチル、ベンジルアルコール、アセトフェノン、α-、β-又はγ-イロン、cis-ジャスモン、ジヒドロジャスモン、アントラニル酸メチル、テルピノレン、アニスアルデヒド、β-ダマセノン、リグストラール、ジヒドロテレピネオール、フェランドレン(α-フェランドレン、β-フェランドレン)、ジヒドロカルボン、イソメントン、カルボン、カルベオール、テルピネオール(α-テルピネオール、β-テルピネオール、γ-テルピネオール、δ-テルピネオール)、オイゲノール、カルバクロール、ヒノキチオール、ビサボロール、δ-3-カレン、プロピオン酸ベンジル、酢酸フェニルエチル、4-エチル-α,α-ジメチルベンゼンプロパナール、ピペリトン、プレゴン、酢酸テルピニル、酢酸オイゲノール、酢酸ベンジル、イオノン、シクロヘキシルプロピオン酸アリル等が挙げられ、メントール、チモール、メントン、3-(メントキシ)-1,2-プロパンジオール、オイゲノール、ヒノキチオールがより好ましい。
【0023】
また、環状構造をもつ化合物の中でも、OH基をもつ化合物は、本発明の効果をより得られやすい。OH基を持つ環状化合物はより極性が高く、空間中の浮遊微粒子を静電気的に引き寄せる力が強く、微粒子同士を凝集、落下させやすいためであると考えられる。環状構造をもつ化合物中のOH基の数は、1以上であるのが好ましく、1~2がより好ましい。
【0024】
(微粒子の浮遊抑制用組成物)
本発明の微粒子の浮遊抑制用組成物は、上記した本発明の微粒子の浮遊抑制剤である、環状構造を持つ化合物を有効成分として含む。なお、ここで有効成分とは、微粒子の浮遊抑制用組成物を空間に粒子状で拡散させたときに、微粒子の落下促進効果を発揮するものである。
【0025】
環状構造を持つ化合物の具体例及び好ましいものについては上記と同様である。
【0026】
微粒子の浮遊抑制用組成物中、環状構造を持つ化合物(微粒子の浮遊抑制剤)の含有量は、0.05質量%以上であるのが好ましい。微粒子の浮遊抑制剤の含有量が0.05質量%以上であると、本発明の効果が高まる。
組成物中の微粒子の浮遊抑制剤の含有量は、0.1質量%以上であるのがより好ましく、0.5質量%以上がさらに好ましい。上限は特に限定されず、微粒子の浮遊抑制用組成物が微粒子の浮遊抑制剤からなるもの(微粒子の浮遊抑制剤100質量%)であってもよい。
【0027】
本発明で用いる環状構造を持つ化合物は、常温(15~25℃)で固形であるものがある。環状構造を持つ化合物を空間に拡散させることができれば微粒子の浮遊抑制用組成物の形態は特に限定されないが、微粒子の浮遊抑制用組成物を液状で使用する場合は、固形の環状構造を持つ化合物は溶媒に溶解又は分散させるのが好ましい。また、溶媒は、浮遊抑制用組成物の拡散濃度や量、持続日数を調整するために用いることができる。
【0028】
溶媒としては、例えば、炭化水素系溶剤、グリコール系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、グリコール系溶剤以外のアルコール系溶剤、ケトン類、エステル類、水等が挙げられる。
【0029】
炭化水素系溶剤としては、例えば、飽和脂肪族炭化水素、不飽和脂肪族炭化水素、流動パラフィン等の脂肪族炭化水素やハロゲン化炭化水素等が挙げられる。
飽和脂肪族炭化水素としては、例えば、ノルマルパラフィン、イソパラフィン等が挙げられる。ノルマルパラフィンとしては、炭素数が8~17のものが代表的で、市販で入手できるものとして、例えば、ENEOS株式会社製の「ノルマルパラフィンSHNP」、「ノルマルパラフィンYHNP」等が挙げられる。イソパラフィンとしては、炭素数が8~16のものが代表的で、市販で入手できるものとして、例えば、出光興産株式会社製の「IPクリーンLX」、「IPソルベント1016」、「IPソルベント1620」、エクソンモービル株式会社製の「ISOPAR M」、「ISOPAR H」、「ISOPAR E」、「ISOPAR L」等が挙げられる。
不飽和脂肪族炭化水素としては、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、ブタンジエン等が挙げられる。
流動パラフィンとしては、市販で入手できるものとして、例えば、三光化学工業株式会社製の「流動パラフィン No.55-S」等が挙げられる。
ハロゲン化炭化水素としては、例えば、ジクロロエタンや四塩化炭素等が挙げられる。
【0030】
グリコール系溶剤としては、例えば、1,3-ブチレングリコール、2,3-ブチレングリコール、ジエチレングリコール、イソプレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、へキシレングリコール、1,6-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、1,2-ヘキサンジオール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、テトラプロピレングリコールおよび、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
【0031】
グリコールエーテル系溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノアリルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、3-メチル-3-メトキシブタノール等が挙げられる。
【0032】
グリコール系溶剤以外のアルコール系溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、2-プロパノール等の低級アルコール、グリセリン等の多価アルコール等が挙げられる。
【0033】
ケトン類としては、例えば、アセトン等が挙げられる。
【0034】
エステル類としては、例えば、マロン酸ジエチル等が挙げられる。
【0035】
水としては、精製水、蒸留水、イオン交換水、水道水等が挙げられる。
【0036】
溶媒は1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、炭化水素系溶剤、グリコール系溶剤、グリコールエーテル系溶剤が好ましく、飽和脂肪族炭化水素、流動パラフィン、炭素数4~6のグリコール系溶剤、炭素数1~4のアルキル基を有しエチレンオキサイドの付加モル数が1~10であるグリコールエーテル系溶剤がより好ましく、ノルマルパラフィン、流動パラフィン、1,3-ブチレングリコール、イソプレングリコール、へキシレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテルがさらに好ましい。
【0037】
溶媒は、微粒子の浮遊抑制用組成物中、0~99.5質量%の範囲で含まれるのが好ましく、20~99.5質量%の範囲で含まれるのがより好ましく、40~99.5質量%の範囲で含まれるのがさらに好ましい。
【0038】
微粒子の浮遊抑制用組成物には所望により本発明の効果を損なわない範囲でその他の成分を含んでもよい。該組成物に含むことのできる他の成分としては、例えば、酸化防止剤、香料、消臭剤、殺菌剤、除菌剤、抗菌剤、防カビ剤、ウイルス不活化剤、アレルゲン不活化剤、界面活性剤等が挙げられる。
【0039】
酸化防止剤としては、例えば、ピロ亜硫酸ナトリウム等が挙げられる。
【0040】
酸化防止剤は、微粒子の浮遊抑制用組成物中、0.01~10質量%の範囲で含まれるのが好ましい。
【0041】
香料としては、例えば、ゲラニオール、リナロール、シトロネロール、ヘキサナール、イソプロピルアルコール、ネロール等の鎖状テルペン系アルコール、ジアセチル、メチルアミルケトン、アリルアミルグリコレート等が挙げられる。
これらの香料は、1種を単独で使用しても、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
【0042】
香料は、微粒子の浮遊抑制用組成物中、0~99.5質量%の範囲で含まれるのが好ましい。
【0043】
消臭剤としては、例えば、リナロール、エチルへキシルグリセリン等が挙げられる。
【0044】
消臭剤は、微粒子の浮遊抑制用組成物中、0~99.5質量%の範囲で含まれるのが好ましい。
【0045】
殺菌剤、除菌剤、抗菌剤、防カビ剤としては、例えば、グルタルアルデヒド等が挙げられる。
【0046】
殺菌剤、除菌剤、抗菌剤、防カビ剤は、微粒子の浮遊抑制用組成物中、0~99.5質量%の範囲で含まれるのが好ましい。
【0047】
アレルゲン不活化剤としては、例えば、エタノール等のアルコール、カチオン性界面活性剤、スメクタイト粘土等の水膨潤性粘土鉱物、ポリビニルアルコール等が挙げられる。
【0048】
アレルゲン不活化剤は、微粒子の浮遊抑制用組成物中、0~99.5質量%の範囲で含まれるのが好ましい。
【0049】
界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル等のノニオン性界面活性剤等が挙げられる。
【0050】
界面活性剤は、微粒子の浮遊抑制用組成物中、0~99.5質量%の範囲で含まれるのが好ましい。
【0051】
微粒子の浮遊抑制用組成物は、上記した各成分を、撹拌機等を用いて均一に混合することにより調製できる。
【0052】
微粒子の浮遊抑制用組成物は固体状、液体状のいずれでもよいが、空間に粒子状で拡散させやすくするために液体状であるのが好ましい。また、液体状の微粒子の浮遊抑制用組成物を担持体に含浸させて固形の含浸体としてもよい。なお、「液体」とは、流動的であり、容器の形状に応じて形を変えることのできる物質の状態をいう。
【0053】
なお、微粒子の浮遊抑制用組成物が炭化水素系溶剤、グリコール系溶剤及びグリコールエーテル系溶剤からなる群から選択される少なくとも1つの溶媒を含む場合、これらの溶媒も粒子状で空間に拡散された際には空間中の微粒子同士を結合し、凝集させて大きな粒子へと変化させることができると考えられる。
よって、本実施形態の環状構造を持つ化合物を炭化水素系溶剤、グリコール系溶剤及びグリコールエーテル系溶剤からなる群から選択される少なくとも1つの溶媒とともに用いることで、当該溶媒による微粒子の浮遊抑制効果をさらに増強させることができ、優れた効果を発揮することができる。
【0054】
(空間への微粒子の浮遊を抑制する方法)
本発明の空間への微粒子の浮遊を抑制する方法は、上記した本発明の微粒子の浮遊抑制剤である、環状構造を持つ化合物を粒子状で拡散させることを含む。
上記した本発明の微粒子の浮遊抑制用組成物を用いて、公知の方法により、粒子状で空間に拡散させればよい。
【0055】
微粒子の浮遊抑制用組成物を粒子状で拡散させる方法としては、例えば、電気加熱システムを用いて蒸散させる方法、加水発熱システムを用いて蒸散させる方法、ノンガスタイプのスプレーやエアゾールスプレー(全量噴射タイプを含む)、超音波式噴霧器を用いて霧状に散布する方法、担持体に担持させたり、液剤やゲル剤等に添加して自然揮散させる方法、ファン等の風力を用いて揮散させる方法等が挙げられる。
【0056】
これらの中でも、室内空間全体への拡散性、持続性、取り扱い性の観点から、電気加熱システムを用いて蒸散させる方法、超音波式噴霧器を用いて霧状に散布する方法、担持体に担持させたり、液剤やゲル剤等に添加して自然揮散させる方法、ファン等の風力を用いて揮散させる方法が好ましく、電気加熱システムを用いて蒸散させる方法がより好ましい。
一例として、微粒子の浮遊抑制用組成物を電気加熱システムを用いて蒸散させる方法について説明する。
【0057】
電気加熱システムは、電気的現象によって発生する熱による加熱である。例えば、微粒子の浮遊抑制用組成物をヒーターで温め、電気加熱システム用の吸液芯に吸液させた前記組成物を、前記吸液芯から蒸散させる方法が挙げられる。
【0058】
図1は前記電気加熱システムの装置の一実施形態を示す断面図である。
図1に示すように、この電気加熱システムの装置11は、吸液芯1を支持するための芯支持体2を有する薬液収容容器3と、この薬液収容容器3内に挿入され上部が容器から突出した吸液芯1と、この吸液芯1の上側面部を間接的に加熱するための中空円筒状発熱体4と、この発熱体4を支持するための支持部5および支持脚6とを有する。この薬液収容容器3内には液状の本発明の微粒子の浮遊抑制用組成物7が収容されている。発熱体4は、これに通電して発熱させるためのコード(図示せず)を有しているが、コードレスタイプでもよい。なお、
図1中、8は外気取入口、9は周隙を示している。このような電気加熱システムの装置は、例えば特公昭52-12106号公報、実開昭58-45670号公報等に記載されている。
【0059】
吸液芯1としては、従来より薬液の電気加熱システムによる蒸散を目的として使用されているものが特に制限なく使用可能であり、例えばフェルト、木綿、パルプ、不織布、石綿、無機質成形物などが挙げられ、さらに合成樹脂の多孔質芯や合成繊維束を樹脂で固めた芯なども使用可能である。また、毛細管などの中空状吸液芯であってもよい。
【0060】
前記無機質成形物の具体例としては、磁器多孔質、グラスファイバー、石綿などの無機繊維を石膏やベントナイトなどの結合剤で固めたものや、カオリン、活性白土、タルク、ケイソウ土、クレー、パーライト、石膏、ベントナイト、アルミナ、シリカ、アルミナシリカ、チタニウム、ガラス質火山岩焼成粉末、ガラス質火山灰焼成粉末などの鉱物質粉末を単独でまたは木粉、炭粉、活性炭などと共に糊剤、例えばデキストリン、デンプン、アラビアゴム、CMCなどで固めたものを例示できる。例えば、前記鉱物質粉末を用いる場合には、この鉱物質粉末100質量部に、木粉または該木粉に等質量までの炭粉および/または活性炭を混合した混合物10~300質量部を配合し、さらに糊剤を全吸液芯質量の5~25質量%となるまで混合し、さらに水を加えて練合後、押出成形し乾燥することにより吸液芯1を得ることができる。
【0061】
また、前記発熱体4としては、通常、通電により発熱する発熱体、例えば、PTCヒーター(正特性サーミスタ)、セラミックヒーター、コイルヒーターなどが汎用されているが、これに限定されることなく、例えば空気酸化発熱材、白金触媒などを利用した発熱材などの公知のいかなる発熱体であってもかまわない。
【0062】
加熱温度は、微粒子の浮遊抑制用組成物の単位時間当りの蒸散量を考慮して決定され、通常、発熱体4の表面温度が70℃~150℃、好ましくは85℃~145℃の範囲とされ、これは吸液芯1の表面温度約55℃~135℃、好ましくは約70℃~130℃に相当する。
【0063】
上記のような吸液芯1を備えた電気加熱システムの装置11の薬液収容容器3に、本発明の微粒子の浮遊抑制剤を含有した微粒子の浮遊抑制用組成物7を収容し、これを吸液芯1に吸液させると共に、発熱体4で吸液芯1の上側の側面部を加熱することによって、微粒子の浮遊抑制用組成物が蒸散される。
【0064】
本発明の空間に拡散される微粒子の浮遊抑制用組成物の粒子径は、空間への拡散性を高める観点から15μm以下が好ましく、13μm以下がより好ましく、11μm以下がさらに好ましい。また特に、電気加熱システムを用いて蒸散させる場合、5μm以下が好ましく、3μm以下がより好ましく、2μm以下がさらに好ましい。粒子径の下限は特に限定されないが、例えば0.001μm以上である。
本明細書において浮遊抑制用組成物の粒子径とは、空間内へ揮散又は蒸散させた浮遊抑制用組成物の質量中位径を意味する。粒子径の測定方法は、具体的には、約25℃の密閉した6畳空間内(縦2.7m×横3.6m×高さ2.4m)の床面中央で微粒子の浮遊抑制用組成物を6時間揮散又は蒸散させ、その揮散又は蒸散場所から1.1m離れた床面に設置した粒子径測定器(例えば、東京ダイレック株式会社製「アンダーセン型ロープレッシャーインパクター LP-20型」)を用いて空間に拡散した浮遊抑制用組成物を粒子径ごとにろ紙に捕集する。捕集前後のろ紙の重量差から、粒子径ごとの重量を測り、累積百分率を対数正規確率紙にプロットし、粒度分布表を作成する。作成した粒度分布表より、累積50%となる粒子径(質量中位径)を算出する。
【0065】
本発明の微粒子の浮遊抑制組成物の空間中に対する1時間あたりの揮散量又は蒸散量は、0.001g~10gが好ましく、0.005g~5gがより好ましく、0.01g~0.5gがさらに好ましい。
【0066】
本発明の空間への微粒子の浮遊を抑制する方法は、室内で使用するのに適しており、屋外から室内に侵入したアレルゲン微粒子の落下を促進し、微粒子の浮遊を抑制できる。
使用する空間の大きさは、本発明の効果がより得られやすいため、16畳以下の空間が好ましく、14畳以下の空間がより好ましく、12畳以下の空間がさらに好ましい。また、空間内に汚れやべたつきを生じにくくするため、1畳以上の空間が好ましく、3畳以上の空間が好ましく、4畳以上の空間がさらに好ましい。
【実施例0067】
以下、下記試験例により更に説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。
【0068】
(実施例1~6、比較例1~2、参考例1)
1.試験検体の作製
表1の処方表に従い、各成分を常温で撹拌混合し、検体組成物を作製した。なお、炭化水素系溶剤は流動パラフィンとノルマルパラフィンの混合物(20℃における密度0.80g/cm3)を用い、他の成分の詳細は表2に示す。
検体組成物を容量50mLのボトルに45mL充填し、中栓を閉めて電気加熱システム用の吸液芯(直径7.2mm×長さ73.5mm)を打芯した。露出した吸液芯を覆うようにしてキャップ(材質:ポリアセタール)を取り付け、50℃恒温槽に1晩~2日(12~48時間)静置し、露出した吸液芯の先端まで検体組成物を吸液させた。
【0069】
【0070】
【0071】
2.落下促進試験
上記作製した試験検体を用いて粉体の落下確認試験を行った。
図2に示すような試験室を利用した。
1つの壁の中央の高さ170cmの位置に噴霧窓15を有する縦3.6m×横3.6m×高さ2.5mのステンレス製チャンバーの床中央に、室温に戻した試験検体をセットした電気加熱システムの装置11(
図1、ヒーター温度約140℃)を設置した。噴霧窓15を有する壁の反対側の壁の前に、サーキュレーター13を設置した。
そして、噴霧窓15を有する壁に直交する壁のうちの一方の壁側に、電気加熱システムの装置11から100cm離れたところに粒径分布測定装置12(TSI社製「OPS3330」)を設置した。このとき粒径分布測定装置12の吸引口が床から120cmの位置になるようにした。そして、0.5回/H換気条件(1時間あたり、チャンバー内の半分の容量の空気が入れ替わる条件)で試験検体を5時間蒸散させた。
その後、電気加熱システムの装置11への通電と換気を止め、噴霧窓15から、0.5gの粉体14(JIS試験用粉体1 11種)を粉体噴霧器(PALAS社製エアロゾルジェネレーター「RGB-1000」)を用いて噴霧した。具体的には、0.5gの粉体14をピストンが取り付けられたリザーバーに充填し、そのリザーバーを粉体噴霧器に取り付けた。粉体噴霧器のフィーダーを100mm/Hの速さで上昇させることでピストンが上昇し、粉体の噴霧が開始された。リザーバーからピストンによって押し上げられた粉体は、粉体噴霧器の噴口に取り付けられた導電性シリコンチューブ(内径:0.19インチ、外径:0.375インチ)を通り、噴霧窓15から試験室内に噴霧された。フィーダーの上昇が終わるまでの間(約10分間)、サーキュレーター13(ベルソス社製「CF-AC40」、モード:連続、風力:弱、首振り:ON)により粉体14を撹拌した。
噴霧終了後、サーキュレーター13を止めて試験室をそのままの状態で放置し、粉体噴霧から5時間後に、粒径分布測定装置12により粉体濃度(個/cm
3)を測定した。なお、測定は、粒径分布測定装置として用いたTSI社製「OPS3330」の設定範囲である粒子径範囲「下限0.579μm上限0.721μm」、「下限0.721μm上限0.897μm」、「下限0.897μm上限1.117μm」、「下限1.117μm上限1.391μm」、「下限1.391μm上限1.732μm」及び「下限1.732μm上限2.156μm」で行った。
対照として、電気加熱システムの装置を設置せず、無処理の状態で粉体噴霧のみを行ったときの粉体濃度(個/cm
3)を測定した(対照例1)。
【0072】
以下の式(1)を用いて、粉体濃度の減少率(%)を算出した。
減少率(%)=(無処理の粉体濃度-検体処理の粉体濃度)/無処理の粉体濃度×100 ・・・(1)
【0073】
各検体の粉体噴霧から5時間後の粉体濃度(個/cm3)の測定値を表3に、減少率(%)を表4に示す。なお、表3中、1時間あたりの蒸散量とは、検体組成物の1時間あたりの蒸散量である。
また、実施例1~6及び比較例1~2について参考例1との減少率の差(実施例又は比較例の減少率から参考例1の減量率を減じた値)を表5に示す。
【0074】
【0075】
【0076】
【0077】
表3~5より、炭化水素系溶剤のみを蒸散させた参考例1にも微粒子の落下促進効果が見られたが、環状構造を持つ化合物を含む実施例1~6は参考例1よりも微粒子の落下促進効果が高かった。一方、環状構造を持たない化合物を含む比較例1~2では微粒子の落下促進効果は見られなかった。この結果から、環状構造を持つ化合物には空間における微粒子の落下を促進する効果があり、また炭化水素系溶剤による同様の効果を減じることなく増強できることがわかった。