(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111844
(43)【公開日】2024-08-19
(54)【発明の名称】組成物
(51)【国際特許分類】
C09J 4/02 20060101AFI20240809BHJP
C08F 20/00 20060101ALI20240809BHJP
C08F 255/10 20060101ALI20240809BHJP
C08L 51/06 20060101ALI20240809BHJP
C08L 33/14 20060101ALI20240809BHJP
C08F 4/00 20060101ALI20240809BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20240809BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20240809BHJP
C08F 20/10 20060101ALI20240809BHJP
C08F 20/20 20060101ALI20240809BHJP
【FI】
C09J4/02
C08F20/00 510
C08F255/10
C08L51/06
C08L33/14
C08F4/00
C09J11/08
C09J11/06
C08F20/10
C08F20/20
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024072979
(22)【出願日】2024-04-26
(62)【分割の表示】P 2022524472の分割
【原出願日】2021-05-17
(31)【優先権主張番号】P 2020089229
(32)【優先日】2020-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020198857
(32)【優先日】2020-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】内田(濱口) 留智
(72)【発明者】
【氏名】荒井 亨
(72)【発明者】
【氏名】堂本 高士
(72)【発明者】
【氏名】谷川(星野) 貴子
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 淳
(72)【発明者】
【氏名】須藤(稲葉) 恵
(72)【発明者】
【氏名】吉田 準
(57)【要約】 (修正有)
【課題】仮固定用途における硬化速度、スピンコートプロセス適合性、耐熱性、高温真空下の低アウトガス性、剥離速度が向上した、仮固定組成物を提供する。
【解決手段】下記(A)~(C)を含有する仮固定組成物。
(A)下記(A-1)と(A-2)を含有する(メタ)アクリレート
(A-1)側鎖が炭素数18以上のアルキル基で、ホモポリマーのTgが-100℃~60℃である単官能(メタ)アクリレート
(A-2)多官能(メタ)アクリレート
(B)ポリイソブテン単独重合体及び/又はポリイソブテン共重合体
(C)光ラジカル重合開始剤
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)~(C)を含有する仮固定組成物。
(A)下記(A-1)と(A-2)を含有する(メタ)アクリレート
(A-1)側鎖が炭素数18以上のアルキル基で、ホモポリマーのTgが-100℃~60℃である単官能(メタ)アクリレート
(A-2)多官能(メタ)アクリレート
(B)ポリイソブテン単独重合体及び/又はポリイソブテン共重合体
(C)光ラジカル重合開始剤
【請求項2】
更に下記(D)を含有する、請求項1に記載の仮固定組成物。
(D)UV吸収剤
【請求項3】
(A-1)単官能(メタ)アクリレートの分子量が550以下である請求項1又は2に記載の仮固定組成物。
【請求項4】
(A-1)成分が、直鎖構造又は分岐鎖構造のアルキル基を側鎖に有する単官能(メタ)アクリレートである請求項1~3のいずれか一項に記載の仮固定組成物。
【請求項5】
(A-1)成分が、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、2-デシル-1-テトラデカニル(メタ)アクリレート、2-ドデシル-1-ヘキサデカニル(メタ)アクリレート、2-テトラデシル-1-オクタデカニル(メタ)アクリレートからなる群から選択される1種以上である、請求項1~4のいずれか一項に記載の仮固定組成物。
【請求項6】
(A-2)多官能(メタ)アクリレートの分子量が900以下である請求項1~5のいずれか一項に記載の仮固定組成物。
【請求項7】
(A-2)成分が、脂環式骨格を有する多官能(メタ)アクリレートである請求項1~6のいずれか一項に記載の仮固定組成物。
【請求項8】
(A-2)成分が、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、及び1,3-ジ(メタ)アクリロイルオキシアダマンタンからなる群から選択される1種以上である、請求項1~7のいずれか一項に記載の仮固定組成物。
【請求項9】
(B)成分が、重量平均分子量が1,000以上5,000,000以下であり、且つ、分子量分布が1.1以上5.0以下であるポリイソブテン単独重合体及び/又はポリイソブテン共重合体である、請求項1~8のいずれか一項に記載の仮固定組成物。
【請求項10】
(C)成分が、350nm以上の波長の光でラジカルを生成する光ラジカル重合開始剤である、請求項1~9のいずれか一項に記載の仮固定組成物。
【請求項11】
(C)成分が、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタニウム、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタン-1-オン、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルフォリン-4-イルフェニル)-ブタン-1-オン、1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-1,2-オクタンジオン 2-O-ベンゾイルオキシム、及び1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]エタノン 1-(O-アセチルオキシム)からなる群から選択される1種以上である請求項1~10のいずれか一項に記載の仮固定組成物。
【請求項12】
(A)~(B)成分の合計100質量部に対して(C)成分0.01~5質量部を含有する請求項1~11のいずれか一項に記載の仮固定組成物。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の仮固定組成物を含む、仮固定接着剤。
【請求項14】
請求項1~12のいずれか一項に記載の仮固定組成物を硬化して得られる硬化体。
【請求項15】
加熱質量減少率が2質量%となる温度が250℃以上である請求項14に記載の硬化体。
【請求項16】
請求項13に記載の仮固定接着剤を使用して基材を接着した接着体。
【請求項17】
下記(A)~(C):
(A)下記(A-1)と(A-2)を含有する(メタ)アクリレート
(A-1)側鎖が炭素数18以上のアルキル基で、ホモポリマーのTgが-100℃~60℃である単官能(メタ)アクリレート
(A-2)多官能(メタ)アクリレート
(B)ポリイソブテン単独重合体及び/又はポリイソブテン共重合体
(C)光ラジカル重合開始剤
を含有する仮固定接着剤を使用して、基材を接着した接着体であって、波長385nm~700nmの光により前記仮固定接着剤が硬化し、かつ波長385nm未満のレーザー光により前記基材が剥離する、接着体。
【請求項18】
請求項13に記載の仮固定接着剤を用いた薄型ウエハの製造方法。
【請求項19】
仮固定接着剤を半導体ウエハ基材及び/又は支持部材に塗布して、前記半導体ウエハ基材と前記支持部材を接着するステップと、
波長350nm~700nmの光を照射することで前記仮固定接着剤を硬化させ、接着体を得るステップと、
前記接着体に波長385nm未満のレーザー光を照射して、前記半導体ウエハ基材を剥離するステップと
を含む、半導体ウエハの製造方法。
【請求項20】
硬化した仮固定接着剤が、接着体中で単層を構成する、請求項18又は19に記載の製造方法。
【請求項21】
用途が、メカニカル剥離、IRレーザー剥離、又はUVレーザー剥離用からなる群から選択される1種以上である請求項13に記載の仮固定接着剤。
【請求項22】
請求項1~12のいずれか一項に記載の仮固定組成物からなる単層硬化体。
【請求項23】
(A-1)成分、(A-2)成分、(B)成分、及び(C)成分を含み、かつ(D)成分を含まない第一の硬化層と、請求項2に記載の仮固定組成物からなる第二の硬化層とを有し、厚み方向に関して成分の濃度分布が異なる硬化体。
【請求項24】
(A-1)成分、(A-2)成分、(B)成分、及び(C)成分を含む請求項1に記載の仮固定組成物を硬化した第一の硬化層と、前記第一の硬化層の上にUV吸収剤を塗布して得られる第二の硬化層とを有し、厚み方向に関して成分の濃度分布が異なる硬化体。
【請求項25】
(A-1)成分、(A-2)成分、(B)成分、及び(C)成分を含む請求項1に記載の仮固定組成物を硬化した第一の硬化層と、光熱変換(LTHC)硬化層とを有する、硬化体。
【請求項26】
下記条件の全てを満たす、請求項22~25のいずれか一項に記載の硬化体。
・厚さ50μmの前記硬化体の光透過率の内、硬化に用いる光源の波長の内の395nm以上の波長領域の光透過率が70%以上であること。
・厚さ50μmの前記硬化体の光透過率の内、硬化に用いる光源の波長の内の385nm以上395nm未満の波長領域の光透過率が20%以上であること。
・厚さ50μmの前記硬化体の光透過率の内、UVレーザー剥離に用いるUVレーザーの波長(355nm)での光透過率が1%以下であること。
【請求項27】
請求項22~26のいずれか一項に記載の硬化体と、被着体とを含む構造体。
【請求項28】
ウエハ上に(A-1)成分、(A-2)成分、(B)成分、及び(C)成分を含み、かつ(D)成分を含まない仮固定組成物を塗布し部分硬化させるステップと、
上記の部分硬化した仮固定組成物の上に請求項2に記載の仮固定組成物を塗布するステップと、
塗布した仮固定組成物の上に透明基板を更に載せ、光硬化させるステップと
を含む、構造体の製造方法。
【請求項29】
ウエハ上に(A-1)成分、(A-2)成分、(B)成分、及び(C)成分を含みかつ(D)成分を含まない仮固定組成物を塗布し、必要に応じて部分硬化させるステップと、
透明基板上に請求項2に記載の仮固定組成物を塗布し、必要に応じて部分硬化させるステップと、
前記ウエハと前記透明基板の、仮固定組成物を塗布した側の面同士を密着させてから、光硬化により接合するステップと
を含む、構造体の製造方法。
【請求項30】
ウエハ上に(A-1)成分、(A-2)成分、(B)成分、及び(C)成分を含みかつ(D)成分を含まない請求項1に記載の仮固定組成物を塗布し、必要に応じて部分硬化させるステップと、
透明基板上に光熱変換(LTHC)層を塗布し、乾燥し硬化させるステップと、
前記ウエハの仮固定組成物を塗布した側の面と、前記透明基板のLTHC層を塗布した側の面とを密着させてから、光硬化により接合するステップと
を含む、構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仮固定用に用いる仮固定組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
電子デバイスは、シリコンに代表される無機系の材質の基板を主材料とし、その表面への絶縁膜形成、回路形成、研削による薄化等の加工を施すことで得られる。加工に際しては、ウエハ型の基板を用いる場合、厚さ数百μm程度のものが多く用いられるが、基板には脆くて割れやすい材質のものが多いため、特に研削による薄化に際しては破損防止措置が必要である。この措置には、従来、研削対象面の反対側の面(裏面ともいう)に、加工工程終了後に剥離することが可能な、仮固定用保護テープを貼るという方法がとられている。このテープは、有機樹脂フィルムを基材に用いており、柔軟性がある反面、強度や耐熱性が不充分であり、高温となる工程での使用には適さない。
【0003】
そこで、電子デバイス基板をシリコン、ガラス等の支持体に接着剤を介して接合することによって、裏面研削や裏面電極形成の工程の条件に対する充分な耐久性を付与するシステムが提案されている。この際に重要なのが、基板を支持体に接合する際の接着剤層である。これは基板を支持体に隙間なく接合でき、後の工程に耐えるだけの充分な耐久性が必要で、最後に薄化したウエハを支持体から簡便に剥離できることが必要である。
【0004】
接着剤の必要特性としては、(1)塗布に適した粘度を有すること及びニュートン流体であること(又はせん断粘度のせん断速度非依存性)、(2)基板を薄化する際に研削・研磨に耐え得るせん断接着力、(3)同じく基板を薄化する際に研削・研磨で基板に加わる砥石の荷重の局所的な集中による基板の破損を避けるため、荷重を面内方向に分散させつつ基板の局所的な沈下を防いで平面性を保てる適度な硬度、(4)絶縁膜形成やはんだリフロー工程に耐え得る耐熱性、(5)薄化やレジスト工程に耐え得る耐薬品性、(6)基板を支持体から簡便に剥離できる易剥離性、(7)剥離後、基板上に接着剤の残渣が残らないための凝集特性、(8)易洗浄性が挙げられる。
【0005】
接着剤とその剥離方法としては、光吸収性物質を含む接着剤に高強度の光を照射し、接着剤層を分解することによって支持体から接着剤層を剥離する技術(特許文献1)、熱溶融性の炭化水素系化合物を接着剤に用い、加熱溶融状態で接合・剥離を行う技術(特許文献2)が提案されている。前者の技術はレーザー等の高価な装置が必要であり、且つ、基板1枚あたりの処理時間が長くなる等の問題があった。後者の技術は加熱だけで制御するため簡便である反面、200℃を超える高温での熱安定性が不充分であるため、適用範囲は狭かった。
【0006】
1個以上のアクリロイル基を有する1種又は2種以上の(メタ)アクリレートを含有してなる接着剤組成物を用いて基材同士を貼り合わせ、該接着剤組成物を硬化させることにより形成した接着体に対して、中心波長が172nm又は193nmのエキシマ光を照射する工程を含み、少なくとも一方の基材は該エキシマ光に対して透過性を示す接着体の解体方法が開示されている(特許文献3)。しかし、特許文献3は、より長波長の光を使用することについて記載がない。本発明は、剥離のためにエネルギーの強いエキシマ光を使用する必要がない。
【0007】
樹脂組成として、ポリイソブテン樹脂及び多官能(メタ)アクリレートを含み、かつ粘着付与剤を含まない、電子デバイスで用いるための接着性封入用組成物の技術が開示されている(特許文献4)。また単官能(メタ)アクリレートをモノマーとして使うことも記載されているが、単官能(メタ)アクリレートのガラス転移温度が記載されていないため、該樹脂組成物を電子デバイス製造工程用仮固定剤として応用する際に必要とされる柔軟性の発現方法が不明であるという問題があった。
【0008】
樹脂組成として、単官能(メタ)アクリレート、多官能(メタ)アクリレート、及びポリイソブテン系重合体を含む、有機エレクトロルミネッセンスデバイス等の電子デバイスのための接着性封入用組成物の技術も開示されている(特許文献5)。しかし、単官能(メタ)アクリレートのガラス転移温度が記載されていないため、該樹脂組成物を電子デバイス製造工程用仮固定剤として応用する際に必要とされる柔軟性の発現方法が不明であるという問題があった。
【0009】
樹脂組成として、単官能(メタ)アクリレート、多官能(メタ)アクリレート、及びイソブテン・無水マレイン酸共重合ポリマーを含む、異種基材間接着のための樹脂組成物及び接着・解体方法が開示されている(特許文献6)。しかし、特許文献6のポリマーは無水マレイン酸由来成分を含有するという点で種類が限定されており、接着方法についても詳述されていない。特許文献6は、粘度等のスピンコート適合性について記載がない。
【0010】
活性エネルギー線による硬化が可能な、オレフィン系ポリマー構造を含むウレタン(メタ)アクリレート樹脂とポリイソブチレン樹脂からなる複合樹脂組成物の技術が開示されている(特許文献7)。(A)成分:ポリイソブチレン骨格を有する(メタ)アクリレート化合物及び(B)成分:(メタ)アクリルアミド化合物を含み、(A)成分100質量部に対して(B)成分0.1~15質量部を含む光硬化性組成物が開示されている(特許文献8)。しかし、特許文献7~8は、仮固定用途について記載がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2004-064040号公報
【特許文献2】特開2006-328104号公報
【特許文献3】国際公開第2011/158654号
【特許文献4】特許第5890177号公報
【特許文献5】特表2009-524705号公報
【特許文献6】特許第6139862号公報
【特許文献7】特開2017-226785号公報
【特許文献8】国際公開第2020/080309号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って例えば、従来技術に係る組成物を仮固定に用いても、硬化速度、スピンコートプロセス適合性、耐熱性、高温真空下の低アウトガス性、剥離速度が十分ではないこと、又特にUVレーザー剥離プロセスへの適性も同様に十分でないこと、という課題が解決できていなかった。
【課題を解決するための手段】
【0013】
即ち、本発明では以下の態様を提供できる。
【0014】
<1>下記(A)~(C)を含有する仮固定組成物。
(A)下記(A-1)と(A-2)を含有する(メタ)アクリレート
(A-1)側鎖が炭素数18以上のアルキル基で、ホモポリマーのTgが-100℃~60℃である単官能(メタ)アクリレート
(A-2)多官能(メタ)アクリレート
(B)ポリイソブテン単独重合体及び/又はポリイソブテン共重合体
(C)光ラジカル重合開始剤
【0015】
<2>更に下記(D)を含有する、態様1に記載の仮固定組成物。
(D)UV吸収剤
【0016】
<3>(A-1)単官能(メタ)アクリレートの分子量が550以下である態様1又は2に記載の仮固定組成物。
【0017】
<4>(A-1)成分が、直鎖構造又は分岐鎖構造のアルキル基を側鎖に有する単官能(メタ)アクリレートである態様1~3のいずれかに記載の仮固定組成物。
【0018】
<5>(A-1)成分が、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、2-デシル-1-テトラデカニル(メタ)アクリレート、2-ドデシル-1-ヘキサデカニル(メタ)アクリレート、2-テトラデシル-1-オクタデカニル(メタ)アクリレートからなる群から選択される1種以上である、態様1~4のいずれかに記載の仮固定組成物。
【0019】
<6>(A-2)多官能(メタ)アクリレートの分子量が900以下である態様1~5のいずれかに記載の仮固定組成物。
【0020】
<7>(A-2)成分が、脂環式骨格を有する多官能(メタ)アクリレートである態様1~6のいずれかに記載の仮固定組成物。
【0021】
<8>(A-2)成分が、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、及び1,3-ジ(メタ)アクリロイルオキシアダマンタンからなる群から選択される1種以上である、態様1~7のいずれかに記載の仮固定組成物。
【0022】
<9>(B)成分が、重量平均分子量が1,000以上5,000,000以下であり、且つ、分子量分布が1.1以上5.0以下であるポリイソブテン単独重合体及び/又はポリイソブテン共重合体である、態様1~8のいずれかに記載の仮固定組成物。
【0023】
<10>(C)成分が、350nm以上の波長の光でラジカルを生成する光ラジカル重合開始剤である、態様1~9のいずれかに記載の仮固定組成物。
【0024】
<11>(C)成分が、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタニウム、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタン-1-オン、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルフォリン-4-イルフェニル)-ブタン-1-オン、1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-1,2-オクタンジオン 2-O-ベンゾイルオキシム、及び1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]エタノン 1-(O-アセチルオキシム)からなる群から選択される1種以上である態様1~10のいずれかに記載の仮固定組成物。
【0025】
<12>(A)~(B)成分の合計100質量部に対して(C)成分0.01~5質量部を含有する態様1~11のいずれかに記載の仮固定組成物。
【0026】
<13>態様1~12のいずれかに記載の仮固定組成物を含む、仮固定接着剤。
【0027】
<14>態様1~12のいずれかに記載の仮固定組成物を硬化して得られる硬化体。
【0028】
<15>加熱質量減少率が2質量%となる温度が250℃以上である態様14に記載の硬化体。
【0029】
<16>態様13に記載の仮固定接着剤を使用して基材を接着した接着体。
【0030】
<17>下記(A)~(C):
(A)下記(A-1)と(A-2)を含有する(メタ)アクリレート
(A-1)側鎖が炭素数18以上のアルキル基で、ホモポリマーのTgが-100℃~60℃である単官能(メタ)アクリレート
(A-2)多官能(メタ)アクリレート
(B)ポリイソブテン単独重合体及び/又はポリイソブテン共重合体
(C)光ラジカル重合開始剤
を含有する仮固定接着剤を使用して、基材を接着した接着体であって、波長385nm~700nmの光により前記仮固定接着剤が硬化し、かつ波長385nm未満のレーザー光により前記基材が剥離する、接着体。
【0031】
<18>態様13に記載の仮固定接着剤を用いた薄型ウエハの製造方法。
【0032】
<19>仮固定接着剤を半導体ウエハ基材及び/又は支持部材に塗布して、前記半導体ウエハ基材と前記支持部材を接着するステップと、
波長350nm~700nmの光を照射することで前記仮固定接着剤を硬化させ、接着体を得るステップと、
前記接着体に波長385nm未満のレーザー光を照射して、前記半導体ウエハ基材を剥離するステップと
を含む、半導体ウエハの製造方法。
【0033】
<20>硬化した仮固定接着剤が、前記接着体中で単層を構成する、態様18又は19に記載の製造方法。
【0034】
<21>用途が、メカニカル剥離、IRレーザー剥離、又はUVレーザー剥離用からなる群から選択される1種以上である態様13に記載の仮固定接着剤。
【0035】
<22>態様1~12のいずれかに記載の仮固定組成物からなる単層硬化体。
【0036】
<23>(A-1)成分、(A-2)成分、(B)成分、及び(C)成分を含み、かつ(D)成分を含まない第一の硬化層と、態様2に記載の仮固定組成物からなる第二の硬化層とを有し、厚み方向に関して成分の濃度分布が異なる硬化体。
【0037】
<24>(A-1)成分、(A-2)成分、(B)成分、及び(C)成分を含む態様1に記載の仮固定組成物を硬化した第一の硬化層と、前記第一の硬化層の上にUV吸収剤を塗布して得られる第二の硬化層とを有し、厚み方向に関して成分の濃度分布が異なる硬化体。
【0038】
<25>(A-1)成分、(A-2)成分、(B)成分、及び(C)成分を含む態様1に記載の仮固定組成物を硬化した第一の硬化層と、光熱変換(LTHC)硬化層とを有する、硬化体。
【0039】
<26>下記条件の全てを満たす、態様22~25のいずれか一項に記載の硬化体。
・厚さ50μmの前記硬化体の光透過率の内、硬化に用いる光源の波長の内の395nm以上の波長領域の光透過率が70%以上であること。
・厚さ50μmの前記硬化体の光透過率の内、硬化に用いる光源の波長の内の385nm以上395nm未満の波長領域の光透過率が20%以上であること。
・厚さ50μmの前記硬化体の光透過率の内、UVレーザー剥離に用いるUVレーザーの波長(355nm)での光透過率が1%以下であること。
【0040】
<27>態様22~26のいずれかに記載の硬化体と、被着体とを含む構造体。
【0041】
<28>ウエハ上に(A-1)成分、(A-2)成分、(B)成分、及び(C)成分を含み、かつ(D)成分を含まない仮固定組成物を塗布し部分硬化させるステップと、
上記の部分硬化した仮固定組成物の上に態様2に記載の仮固定組成物を塗布するステップと、
塗布した仮固定組成物の上に透明基板を更に載せ、光硬化させるステップと
を含む、構造体の製造方法。
【0042】
<29>ウエハ上に(A-1)成分、(A-2)成分、(B)成分、及び(C)成分を含みかつ(D)成分を含まない仮固定組成物を塗布し、必要に応じて部分硬化させるステップと、
透明基板上に態様2に記載の仮固定組成物を塗布し、必要に応じて部分硬化させるステップと、
前記ウエハと前記透明基板の、仮固定組成物を塗布した側の面同士を密着させてから、光硬化により接合するステップと
を含む、構造体の製造方法。
【0043】
<30>ウエハ上に(A-1)成分、(A-2)成分、(B)成分、及び(C)成分を含みかつ(D)成分を含まない態様1に記載の仮固定組成物を塗布し、必要に応じて部分硬化させるステップと、
透明基板上に光熱変換(LTHC)層を塗布し、乾燥し硬化させるステップと、
前記ウエハの仮固定組成物を塗布した側の面と、前記透明基板のLTHC層を塗布した側の面とを密着させてから、光硬化により接合するステップと
を含む、構造体の製造方法。
【発明の効果】
【0044】
本発明によって、例えば、硬化速度、スピンコートプロセス適合性、耐熱性、高温真空下の低アウトガス性、剥離速度に優れる組成物が得られ、メカニカル剥離プロセス及び/又は各種レーザー剥離プロセス(UVレーザー剥離プロセス等)に適合する仮固定組成物が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下本発明を説明する。本明細書においては別段の断わりがないかぎりは、数値範囲はその上限値及び下限値を含むものとする。
【0046】
単官能(メタ)アクリレートとは、1分子中に1個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物をいう。多官能(メタ)アクリレートとは、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物をいう。n官能(メタ)アクリレートとは、1分子中にn個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物をいう。
【0047】
本発明の実施形態で提供できるのは、先ず第一に仮固定用に用いる仮固定組成物(以下、組成物ということもある。)であって、下記(A)~(C)成分を含有する。
(A)下記(A-1)と(A-2)を含有する(メタ)アクリレート
(A-1)側鎖が炭素数18以上のアルキル基で、ホモポリマーのTgが-100℃~60℃である単官能(メタ)アクリレート
(A-2)多官能(メタ)アクリレート
(B)ポリイソブテン単独重合体及び/又はポリイソブテン共重合体
(C)光ラジカル重合開始剤
【0048】
また第二に、更に下記(D)成分を含有する当該仮固定組成物も提供できる。
(D)UV吸収剤
【0049】
また第三に、(A)~(C)を含有する層と、(A)~(D)の内の1種以上を含有する層とを含む多層(複層)構造体も提供できる。
【0050】
(A-1)側鎖が炭素数18以上のアルキル基で、ホモポリマーのTgが-100℃~60℃である単官能(メタ)アクリレートとは、単独で重合した際に得られるホモポリマーのガラス転移温度(以下、Tgと略記することもある)が-100℃~60℃で、ホモポリマーの側鎖がアルキル基(鎖状構造又は環状構造の脂肪族炭化水素よりなる官能基)である単官能(メタ)アクリレートをいう。ホモポリマーのTgが-50℃~0℃である単官能(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0051】
側鎖が炭素数18以上のアルキル基で、ホモポリマーのTgが-100~60℃を示す単官能(メタ)アクリレートとしては、ステアリル(メタ)アクリレート(アクリレートのホモポリマーのTg:30℃、メタクリレートのホモポリマーのTg:38℃)、イソステアリル(メタ)アクリレート(アクリレートのホモポリマーのTg:-18℃、メタクリレートのホモポリマーのTg:30℃)、ベヘニル(メタ)アクリレート(アクリレートのホモポリマーのTg:50℃、メタクリレートのTg:47℃)、2-デシル-1-テトラデカニル(メタ)アクリレート(アクリレートのホモポリマーのTg:-36℃、メタクリレートのホモポリマーのTg:-29℃)、2-ドデシル-1-ヘキサデカニル(メタ)アクリレート(アクリレートのホモポリマーのTg:-23℃、メタクリレートのホモポリマーのTg:-14℃)、2-テトラデシル-1-オクタデカニル(メタ)アクリレート(アクリレートのホモポリマーのTg:-8℃、メタクリレートのホモポリマーのTg:1℃)等が挙げられる。これらの(メタ)アクリレートは1種以上を使用できる。
【0052】
ガラス転移とは、高温では液体であるガラス等の物質が温度降下により、ある温度範囲で急激にその粘度を増し、ほとんど流動性を失って非晶質固体になるという変化を指す。ガラス転移温度の測定方法としては特に限定はないが、一般に示差走査熱量測定、示差熱測定、動的粘弾性測定等より算出されるガラス転移温度を指す。これらの中では、動的粘弾性測定が好ましい。
(メタ)アクリレートのホモポリマーのガラス転移温度は、J.Brandrup,E.H.Immergut,Polymer Handbook,2nd Ed.,J.Wiley,New York 1975、光硬化技術データブック(テクノネットブックス社)等に記載されている。
【0053】
(A-1)としては、分子量が550以下の単官能(メタ)アクリレートが好ましい。
【0054】
(A-1)としては、アルキル基を有する単官能アルキル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0055】
アルキル基としては、直鎖状アルキル基、分岐鎖状アルキル基、及び脂環式アルキル基から選択される1種以上が好ましく、直鎖状アルキル基、及び分岐鎖状アルキル基から選択される1種以上がより好ましい。(B)成分との相溶性向上(特に高分子量の(B)成分との相溶性向上)の観点からは、(A-1)成分は長鎖かつ分岐鎖状又は環状のアルキル基を有することが好ましく、例えば炭素数18~40、より好ましくは炭素数18~32の、例えばイソステアリル基、イソテトラコサニル基(2-デシル-1-テトラデカニル基等)、イソトリアコンタニル基(2-テトラデシル-1-オクタデカニル基等)等の分岐鎖状アルキル基、又はシクロアルキル基を有することが好ましい。このような長鎖・高分子量かつ脂肪族炭化水素の性格の強い成分を用いること(更に好ましくは系全体の脂肪族炭化水素的性質を高めること)で、仮固定組成物に求められる低揮発性、耐薬品性及び耐熱性を向上できる。
【0056】
(A-1)としては、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、2-デシル-1-テトラデカニル(メタ)アクリレート、2-ドデシル-1-ヘキサデカニル(メタ)アクリレート、2-テトラデシル-1-オクタデカニル(メタ)アクリレートからなる群から選択される1種以上が好ましい。
(A-1)アルキル基を有する単官能アルキル(メタ)アクリレートとしては、下記式1の(メタ)アクリレートが好ましい。
【0057】
【化1】
R
1は水素原子又はメチル基である。R
2はアルキル基である。
【0058】
R1は水素原子がより好ましい。
【0059】
R2の炭素数は18~32が好ましい。これらの(メタ)アクリレートは1種以上を使用できる。
【0060】
R2が炭素数18~32のアルキル基である単官能アルキル(メタ)アクリレートとしては、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、エイコデシル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、2-デシル-1-テトラデカニル(メタ)アクリレート、2-テトラデシル-1-オクタデカニル(メタ)アクリレート等といった、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリレートが好ましい。
【0061】
(A-1)単官能(メタ)アクリレートの使用量は、(A)~(B)成分の合計100質量部中、35質量部以上が好ましく、40質量部以上がより好ましく、45質量部以上が更に好ましい。(A-1)単官能(メタ)アクリレートの使用量は、(A)~(B)成分の合計100質量部中、54~90質量部が好ましく、54~80質量部がより好ましく、54~75質量部が更に好ましい。54質量部以上であれば混合後の樹脂組成物が相分離する恐れがないと同時に室温での柔軟性が得られ、90質量部以下であれば塗布に必要な粘度と耐熱性と硬化性が得られる。特許文献7に記載の組成物は、単官能(メタ)アクリレートの使用量が53質量部未満であり、電子デバイス製造用仮固定組成物として必要な柔軟性が得られない恐れがある。
【0062】
(A-2)多官能(メタ)アクリレートとは、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物をいう。重合性官能基としては、アクリロイル基のみを有してもよく、メタクリロイル基のみを有してもよく、アクリロイル基とメタクリロイル基の両方を有してもよい。
【0063】
(A-2)多官能(メタ)アクリレートの分子量は900以下が好ましく、700以下がより好ましく、500以下が最も好ましく、400以下が尚更好ましい。
【0064】
(A-2)多官能(メタ)アクリレートとしては、2官能(メタ)アクリレート、3官能(メタ)アクリレート、4官能以上の(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0065】
2官能(メタ)アクリレートとしては、1,3-ジ(メタ)アクリロイルオキシアダマンタン、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ステアリン酸変性ペンタエリストールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロキシプロポキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロキシテトラエトキシフェニル)プロパン、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0066】
3官能(メタ)アクリレートとしては、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス[(メタ)アクリロイルオキシエチル]イソシアヌレート等が挙げられる。
【0067】
4官能以上の(メタ)アクリレートとしては、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0068】
(A-2)の中では、脂環式骨格を有する多官能(メタ)アクリレートが好ましく、炭素数5以上の脂環式骨格を有する多官能(メタ)アクリレートがより好ましい。炭素数5以上の脂環式骨格を有する多官能(メタ)アクリレートとしては、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート及び1,3-ジ(メタ)アクリロイルオキシアダマンタンから選択される1種以上が好ましい。
【0069】
(A-2)多官能(メタ)アクリレートの使用量は、(A)~(B)成分の合計100質量部中、1~40質量部が好ましく、20~30質量部がより好ましい。1質量部以上であれば良好な硬化性、耐熱性、及び剥離性が得られ、40質量部以下であれば混合後の組成物が相分離する恐れがなく、及び耐熱性が低下する恐れがない。
【0070】
(B)成分の選択肢のうちポリイソブテン単独重合体とは、イソブテンを原料モノマーとして用いた重合によって得られるホモポリマーのことをいう。単独重合体としては、例えばオパノール(Oppanol)がBASF社から入手できる。また(B)成分の選択肢のうちポリイソブテン共重合体とは、イソブテンを原料モノマーとして用いた重合によって得られる共重合体(又はヘテロポリマー)のことをいう。該共重合体はランダム共重合体でもブロック共重合体でもよく、特に好ましくはブロック共重合体を用いる。ブロック共重合体としては、例えば、ポリイソブテンブロック鎖とポリスチレンブロック鎖を含むシブスター(SIBSTAR)が、カネカ社から入手できる。なお、これらのイソブテンの重合体は、片方又は両方の末端に(メタ)アクリレート基を有していてもよい。そのような重合体としては、カネカ社から入手可能なエピオン(EPION)シリーズのEP400Vが、両末端にアクリレート基を含有したイソブテン重合体の例として挙げられる。
【0071】
またこれらのイソブテン重合体は片方又は両方の末端に(メタ)アクリレート基以外の重合性官能基を有してもよい。例えば、エチレン性不飽和基を有するイソブテン重合体の「日油ポリブテン(商標)」は日油社から入手できる。
【0072】
(B)成分は、(A)成分と配合した際に適度な粘度を得られる観点から、いわゆる高分子グレードであることが好ましく、例えば重量平均分子量が1,000以上5,000,000以下、更に好ましくは80,000以上5,000,000以下であることが好ましい。又(B)成分は、分子量分布が1.1以上5.0以下であることが好ましく、2.2以上2.9以下であることがより好ましい。特に好ましくは、重量平均分子量が80,000以上5,000,000以下かつ分子量分布が2.2以上2.9以下であってよい。(B)成分としては、これらのポリイソブテン単独重合体及び/又はポリイソブテン共重合体を1種以上使用できる。
【0073】
好ましい実施形態では、(B)成分としてポリイソブテン共重合体を含むのがよい。本ポリイソブテン共重合体は、イソブテン単量体単位とそれ以外の単量体単位を含み、その共重合形式はブロック共重合体及びランダム共重合体、交互共重合体を包含する概念である。好ましくはブロック共重合体を用いる。その理由は以下のとおりである。ブロック共重合体とランダム共重合体を比較した場合、一般的に、ランダム共重合体ではその構成成分である複数のモノマーのそれぞれよりなる単独重合体のガラス転移温度等の諸特性の平均値が得られるのに対し、ブロック共重合体ではそれぞれのモノマーよりなる単独重合体のガラス転移温度等の諸特性が平均化されずにそのまま維持され、両方同時に発現するという特徴がある。また、特にトリブロック共重合体では、両末端のブロックの物理的性質が中央のブロックと比較してより強く発現することが知られている。例えば、ガラス転移温度が約-60℃のポリイソブテンブロック鎖の両端を同約100℃のポリスチレンブロック鎖が挟む構造を有するトリブロック共重合体の場合、両端のポリスチレンブロック鎖が高いガラス転移温度を有することにより、同じ分子量のポリイソブテン単独重合体に比して高い増粘効果を示す。この比較的高い増粘効果により、用いる共重合体の分子量はポリイソブテン単独重合体と比較して低くて済むが、用いる重合体の分子量が低いと、5℃程度の低温で保管した際にポリマーが分離析出しにくいという利点も得られる。加えて、脂肪族炭化水素であるポリイソブテンに比べて極性が高い芳香族炭化水素であるポリスチレンを成分に含むことにより、(A-1)成分である脂肪族炭化水素側鎖を有する(メタ)アクリレートモノマーよりも、複数の(メタ)アクリル基を有することで高極性である(A-2)成分との相溶性もより高くなるという利点がある。
【0074】
本明細書における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法によって測定される標準ポリスチレン換算の値である。具体的には、平均分子量は、下記の条件にて、溶剤としてテトラヒドロフランを用い、GPCシステム(東ソー株式会社製SC-8010)を使用し、市販の標準ポリスチレンで検量線を作成して求められる。
【0075】
流速:1.0ml/min
設定温度:40℃
カラム構成:東ソー株式会社製「TSK guardcolumn MP(×L)」6.0mmID×4.0cm1本、及び東ソー株式会社製「TSK-GELMULTIPOREHXL-M」7.8mmID×30.0cm(理論段数16,000段)2本、計3本(全体として理論段数32,000段)
サンプル注入量:100μl(試料液濃度1mg/ml)
送液圧力:39kg/cm2
検出器:RI検出器(示差屈折率検出器)
【0076】
(B)成分の使用量は、(A)~(B)成分の合計100質量部中、30質量部以下が好ましく、25質量部以下がより好ましい。(B)成分の使用量は、(A)~(B)成分の合計100質量部中、1~20質量部が好ましく、5~20質量部がより好ましい。(B)成分が1質量部以上であれば塗布に際して必要な粘度が得られ、20質量部以下であれば混合後の組成物が相分離する恐れがなく、良好な硬化性と耐熱性が得られる。上述したいわゆる高分子グレードの(B)成分を用いることで、少量の添加であっても所望の粘度を得やすい効果のみならず、更にスピンコート適合性だけでなくバーコート適合性をも得られる(すなわち、適合させる対象のプロセスを選択できる)という効果も奏される。
【0077】
(C)光ラジカル重合開始剤とは、例えば、紫外線或いは可視光線(例えば波長350nm~700nm、好ましくは385nm~700nm又は365nm~500nm、より好ましくは385nm~450nm)の照射により分子が切断され、2つ以上のラジカルに分裂する化合物をいう。
【0078】
(C)光ラジカル重合開始剤としては、反応速度、硬化後の耐熱性、低アウトガス性、後述するUVレーザー剥離に用いるUVレーザーの波長とも該UVレーザー剥離に用いるUV吸収剤の吸収波長領域とも異なる領域での吸収特性を有する点で、アシルフォスフィンオキサイド系化合物、チタノセン系化合物、又はα-アミノアルキルフェノン系化合物から選択される1種以上が好ましい。また、後述する構造を有する仮固定組成物の内の、UVレーザー剥離プロセスに対応するための層ではない、加工対象基材のサポート基材との接合から加熱工程までの破損防止の仮固定用途のための樹脂組成物用光ラジカル重合開始剤としては、上記以外に、オキシムエステル系化合物を選択することもできる。
【0079】
アシルフォスフィンオキサイド系化合物としては、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。これらの中では、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイドが特に好ましい。
【0080】
チタノセン系化合物としては、ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタニウムが挙げられる。
【0081】
α-アミノアルキルフェノン系化合物としては、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタン-1-オン、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルフォリン-4-イルフェニル)-ブタン-1-オン等が挙げられる。
【0082】
オキシムエステル系化合物としては、1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-1,2-オクタンジオン 2-O-ベンゾイルオキシム、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]エタノン 1-(O-アセチルオキシム)等が挙げられる。これらの中では、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]エタノン 1-(O-アセチルオキシム)が好ましい。
【0083】
(C)光ラジカル重合開始剤としては、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタニウム、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタン-1-オン、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルフォリン-4-イルフェニル)-ブタン-1-オン、1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-1,2-オクタンジオン 2-O-ベンゾイルオキシム、及び1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]エタノン 1-(O-アセチルオキシム)からなる群から選択される1種以上が好ましい。
【0084】
本発明のUVレーザー剥離工程用の仮固定組成物を提供する場合には、最も好ましい光ラジカル重合開始剤は、アシルフォスフィンオキサイド系化合物である。好ましいアシルフォスフィンオキサイド系化合物は、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、及び/又は、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドである。これら光ラジカル重合開始剤は、高感度であること、光褪色性を有することから深部硬化性に優れることに加え、ラジカルを発生させるための吸収波長領域が比較的長波長領域にまで広がっており、具体的にビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイドは波長約440nmまでの範囲であり、後述するUVレーザー剥離工程で用いるUV吸収剤の吸収波長領域との差が大きい。つまり、添加するUV吸収剤によるUV硬化阻害の度合いが小さい、より長波長の光でラジカル重合を開始できる。そのため、UV吸収剤の共存下であっても比較的高速度で効率良くラジカル重合を開始し、硬化させることが可能となる。
【0085】
最も好ましくは、光ラジカル重合開始剤を吸光度から選定できる。具体的には、300nm~500nmの波長領域に極大吸収をもたない溶媒(例えば、アセトニトリルやトルエンなど)に0.1質量%の濃度で溶解させた際に、365nmの波長において吸光度が0.5以上であること、385nmの波長において吸光度が0.5以上であること、及び405nmの波長において吸光度が0.5以上であることのいずれかひとつ以上の条件を満たすような化合物の1種以上から、光ラジカル重合開始剤を選択できる。そのような条件を満たす化合物としては例えば、溶媒としてのアセトニトリルに対して0.1質量%の濃度で溶解させた際において、365nmの波長において吸光度が0.5以上である1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]エタノン 1-(O-アセチルオキシム)、365nmと385nmの波長において吸光度が0.5以上である1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-1,2-オクタンジオン 2-O-ベンゾイルオキシム、365nmと385nmと405nmの波長において吸光度が0.5以上であるビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド及び2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドが挙げられる。
【0086】
また、光ラジカル重合開始剤による硬化性とUVレーザー剥離を両立する観点からは、400~500nmの範囲に吸収波長領域を有するビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタニウムも、光ラジカル重合開始剤として使用できる。
【0087】
(C)光ラジカル重合開始剤の使用量は、反応速度及び硬化後の耐熱性、低アウトガス性の点で、(A)~(B)の合計100質量部に対して、0.01~5質量部が好ましく、0.1~1質量部がより好ましい。0.01質量部以上だと十分な硬化性が得られ、5質量部以下だと低アウトガス性及び耐熱性が損なわれる恐れがない。
【0088】
また(D)成分として使用可能なUV吸収剤とは、例えば、紫外線或いは可視光線のレーザーの照射により分子が切断されて分解・気化し、該分解・気化がサポート基材(又は支持体)と仮固定剤の界面で発生することにより、剥離工程直前まで維持されていた仮固定剤・サポート基材(又は支持体)間の接着力を喪失させる化合物をいう。
【0089】
(D)UV吸収剤としては、UV吸収波長領域のUVレーザー波長との重なりの度合い、同波長でのUV吸収特性、低アウトガス性、耐熱性の点で、ベンゾトリアゾール系化合物、及びヒドロキシフェニルトリアジン系化合物から選択される1種以上が好ましい。
【0090】
ベンゾトリアゾール系化合物としては、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール、2,2'-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール]、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-(1-メチル-1-フェニルエチル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール、及び2-[2-ヒドロキシ-3-(3, 4, 5, 6-テトラヒドロフタルイミド-メチル)-5-メチルフェニル]ベンゾトリアゾールからなる群から選択される1種以上が、樹脂成分との相溶性、UV吸収特性、低アウトガス性、耐熱性の点から特に好ましい。
【0091】
ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物としては、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-(2'-エチル)ヘキシル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(2-ヒドロキシ-4-ブチルオキシフェニル)-6-(2,4-ビス-ブチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、及び2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-ヘキシルオキシ-3-メチルフェニル)-1,3,5-トリアジンからなる群から選択される1種以上が、樹脂成分との相溶性、UV吸収特性、低アウトガス性、耐熱性の点から特に好ましい。
【0092】
本発明のUVレーザー剥離工程用の仮固定組成物を提供する場合、最も好ましいUV吸収剤は、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-ヘキシルオキシ-3-メチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(2-ヒドロキシ-4-ブチルオキシフェニル)-6-(2,4-ビス-ブチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、又は2,2'-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール] からなる群から選択される1種以上である。これらは樹脂成分(A)~(B)との相溶性に優れ、融点が高く、300℃以下程度の温度条件下で蒸気圧が比較的低いため、使用量の広い範囲内での選択が可能で、且つ硬化後の仮固定組成物からの本温度条件下でのアウトガス低減に寄与することができる。
【0093】
(D)UV吸収剤として最も好ましくは以下に挙げる、UV透過率から選定された吸収剤を用いることができる。(D)成分がこのようなUV透過率を有することで、組成物の硬化と剥離を適切に制御可能となる効果が得られる。
【0094】
290~410nmの波長において極大吸収を持たない溶媒に対して、UV吸収剤を0.002質量%の濃度で溶解させた際に、光路長1cmにおける355nmの波長において透過率が50%以下であり、かつ波長385~420nmで50%より高い透過率であることが好ましい。更に好ましくは、355nmの波長において透過率が40%以下であり、かつ385~420nmで60%以上の透過率であってよい。
【0095】
最も好ましい(D)UV吸収剤としては例えば下記が挙げられる。
溶媒として用いるトルエンに対して、0.002質量%の濃度で溶解させた際に、光路長1cmにおける355nmの波長において透過率が20%以下であり、かつ波長385~420nmで60%以上の透過率である2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール (BASF社製Tinuvin 900、アデカ社製アデカスタブ LA-24、Everlight Chemical社製EVERSORB 76 / EVERSORB 234、分子量447)。
溶媒としてのトルエンに対して0.002質量%の濃度で溶解させた際に、光路長1cmにおける355nmの波長において透過率が30%以下であり、かつ波長385~420nmで70%以上の透過率である2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-(1-メチル-1-フェニルエチル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール (BASF社製Tinuvin 928、Everlight Chemical社製EVERSORB 89/89FD、分子量442)。
溶媒としてのテトラヒドロフランに対して0.002質量%の濃度で溶解させた際に、光路長1cmにおける355nmの波長において透過率が40%以下であり、かつ波長385~420nmで90%以上の透過率である2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-(2'-エチル)ヘキシル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン(BASF社製Tinuvin405、分子量584)。
溶媒としてのテトラヒドロフランに対して0.002質量%の濃度で溶解させ、光路長1cmにおける355nmの波長において透過率が10%以下であり、かつ波長385~420nmで80%以上の透過率である2,4-ビス(2-ヒドロキシ-4-ブチルオキシフェニル)-6-(2,4-ビス-ブチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン (BASF社製Tinuvin 460、分子量630)。
【0096】
本明細書における硬化体のUV透過率は、反射率測定分光法により得られる値である。具体的には、透過率は、下記の条件にて、PET樹脂のシートに挟んで作製した厚さ約50μmの硬化体のフィルムを用い、反射率分光測定装置(日本分光株式会社製V-650)を使用して得られる。
【0097】
セル長:10mm
測光モード:T (Transmittance)
測定範囲:450-200nm
データ取込間隔:1nm
UV/visバンド幅:2.0nm
レスポンス:medium
走査速度:40nm/min
光源切換:340nm
光源:D2/WI
フィルタ切換:ステップ
補正:ベースライン
【0098】
(D)成分であるUV吸収剤の使用量は(A)~(B)の合計100質量部に対して0.01~5質量部が好ましく、0.5~2.5質量部がより好ましい。0.01質量部以上だと十分なUVレーザー剥離速度が得られ、5質量部以下だと低アウトガス性及び耐熱性が損なわれる恐れがない。
【0099】
このような特性を持つ組成物は、特に薄化後の裏面工程においてイオン注入、アニーリングやスパッタによる電極形成といった高温真空プロセスを含むプロセスに、好適に使用することができる。
【0100】
また、本発明の仮固定組成物を用いて厚さ50μmの硬化フィルムを作製した場合、以下の条件をひとつ以上満たすことが好ましく、全て満たすことがより好ましい。以下の条件は、例えば、UV吸収剤や前記光ラジカル重合開始剤を用いることにより、満たすことができる。
・該硬化フィルムの光透過率の内、硬化に用いる光源の波長の内の395nm以上の波長領域の光透過率が70%以上であること。
・該硬化フィルムの光透過率の内、硬化に用いる光源の波長の内の385nm以上395nm未満の波長領域の光透過率が20%以上であること。
・該硬化フィルムの光透過率の内、UVレーザー剥離に用いるUVレーザーの波長(355nm)での光透過率が1%以下であること。
これらの条件を満たすことで、実用上十分に高い硬化速度とUVレーザー剥離速度を両立させることが可能である。更には、十分に高い硬化速度とUVレーザー剥離速度の両立に加え、硬化後の加熱条件下における質量減少の割合を低下(又は高温真空下におけるアウトガス量を低減)させることができる。このような特性を持つ仮固定剤は、特に薄化後の裏面工程においてイオン注入、アニーリングやスパッタによる電極形成といった高温真空プロセスを含むプロセスに、好適に使用することができる。
【0101】
本発明の組成物は、高温に暴露された後の剥離性を維持するために、酸化防止剤を使用してもよい。酸化防止剤としては、メチルハイドロキノン、ハイドロキノン、2,2-メチレン-ビス(4-メチル-6-ターシャリーブチルフェノール)、カテコール、ハイドロキノンモノメチルエーテル、モノターシャリーブチルハイドロキノン、2,5-ジターシャリーブチルハイドロキノン、p-ベンゾキノン、2,5-ジフェニル-p-ベンゾキノン、2,5-ジターシャリーブチル-p-ベンゾキノン、ピクリン酸、クエン酸、フェノチアジン、ターシャリーブチルカテコール、2-ブチル-4-ヒドロキシアニソール、2,6-ジターシャリーブチル-p-クレゾール及び4-((4,6-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2-イル)アミノ)-2,6-ジ-t-ブチルフェノール等が挙げられる。
【0102】
酸化防止剤の使用量は、(A)~(D)の合計100質量部に対して、0.001~3質量部が好ましい。0.001質量部以上だと高温に暴露された後の剥離性の維持が確保され、3質量部以下だと良好な接着性が得られ、未硬化になることもない。
【0103】
組成物の塗布方法としては、スピンコート、スクリーン印刷、各種コーター等の公知の塗布方法を用いることができる。本発明の組成物の粘度は、23℃(大気圧下)において、塗布性や作業性の点で、100mPa・s以上が好ましく、1000mPa・s以上がより好ましく、2000mPa・s以上が最も好ましい。本発明の組成物の粘度は、塗布性や作業性の点で、10000mPa・s以下が好ましく、5000mPa・s以下がより好ましく、4000mPa・s以下が最も好ましい。100mPa・s以上だと塗布性、特にスピンコートによる塗布性に優れる。10000mPa・s以下だと作業性に優れる。
【0104】
スピンコートとは、例えば、基板に液状組成物を滴下し、基板を所定の回転数で回転させることにより、組成物を基板表面に塗布する方法である。スピンコートにより、高品質な塗膜を効率良く生産できる。
【0105】
本発明の組成物は、仮固定用樹脂組成物、仮固定接着剤、粘着シート、又は電子デバイス製造用仮固定接着剤として使用できる。本発明では、仮固定組成物、仮固定用樹脂組成物、仮固定接着剤を、仮固定剤と総称することもある。
【0106】
本発明の組成物を用いて加工対象基材と光学的に透明なサポート基材(又は支持体)を接着する際は、可視光線若しくは紫外線(波長又は中心波長365~405nm)においてエネルギー量が1~20000mJ/cm2になるように照射することが好ましい。エネルギー量が1mJ/cm2以上だと十分な接着性が得られ、20000mJ/cm2以下だと生産性が優れ、光ラジカル重合開始剤からの分解生成物が発生しにくく、アウトガスの発生が抑制される。生産性、接着性、低アウトガス性、易剥離性の点で、1000~10000mJ/cm2であることが好ましい。
【0107】
本発明の組成物によって接着される基材は、特に制限はないものの、少なくとも一方の基材は光を透過する透明基材が好ましい。透明基材としては、水晶、ガラス、石英、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム等の無機基材、プラスチック等の有機基材等が挙げられる。これらの中では、汎用性があり、大きい効果が得られる点で、無機基材が好ましい。無機基材の中では、ガラス、及び石英から選択される1種以上が好ましい。
【0108】
本発明の組成物は一実施形態において、光硬化型であり、それにより提供される硬化体は優れた耐熱性及び剥離性を有する。本発明の組成物の硬化体は一実施形態において、高温で暴露されてもアウトガス量が少なく、種々の光学部品や光学デバイス、電子部品の接合、封止、コーティングに好適である。本発明の組成物は、耐溶剤性、耐熱性、接着性等といった、多岐にわたる耐久性が必要とされる用途、特に半導体製造プロセス用途に適している。
【0109】
本発明の組成物の硬化体は、室温から高温までの幅広い温度範囲におけるプロセスに使用できる。プロセス中の加熱温度は、350℃以下が好ましく、300℃以下がより好ましく、250℃以下が最も好ましい。好ましい実施形態においては、当該硬化体の加熱質量減少率が2%となる温度が、250℃以上であってよい。本発明の仮固定接着剤で接着した接着体は、高いせん断接着力を有するため薄化工程等には耐えることができ、絶縁膜形成等の加熱工程を経た後には容易に剥離できる。高温で使用する場合、本発明の組成物の硬化体は、例えば、好ましくは200℃以上、より好ましくは250℃以上の高温のプロセスで使用できる。
【0110】
更に本発明では一実施形態において、接着剤により基材を接着した接着体が得られ、当該接着体に外力を加えることにより剥離できる効果が得られる。例えば、刃物、シート又はワイヤーを、接合部分に差し込むことにより剥離できる。
【0111】
更に本発明では一実施形態において、接着剤により基材を接着した接着体が得られ、当該接着体の光学的に透明な基材側からUVレーザー又はIRレーザーを全面に走査するように照射することにより剥離できる効果が得られる。
【0112】
<薄型ウエハの製造方法>
本発明の実施形態では、薄型ウエハの製造方法も提供できる。当該製造方法は、半導体回路等を有するウエハと支持体との接着剤層として、上述した仮固定組成物又は仮固定接着剤(以下、単に接着剤又は仮固定剤ということもある)を用いることを特徴とする。本発明の薄型ウエハの製造方法は下記(a)~(e)の工程を有する。
【0113】
[工程(a)]
工程(a)は、表面に回路形成面を有し、裏面に回路非形成面を有するウエハの前記回路形成面を、接着剤を介して、支持体に接合する際に、前記支持体又は回路付きウエハ上にスピンコート法で接着剤を塗布し、もう一方の支持体又は回路付きウエハと真空下で貼り合わせる工程である。
【0114】
回路形成面及び回路非形成面を有するウエハは、一方の面が回路形成面であり、他方の面が回路非形成面であるウエハである。本発明が適用できるウエハは、通常、半導体ウエハである。該半導体ウエハとしては、シリコンウエハのみならず、窒化ガリウムウエハ、タンタル酸リチウムウエハ、ニオブ酸リチウムウエハ、炭化ケイ素ウエハ、ゲルマニウムウエハ、ガリウム-ヒ素ウエハ、ガリウム-リンウエハ、ガリウム-ヒ素-アルミニウムウエハ等が挙げられる。該ウエハの厚さは、特に制限はないが、600~800μmが好ましく、625~775μmがより好ましい。支持体としては、例えば、光を透過する透明基材が用いられる。
【0115】
[工程(b)]
工程(b)は、接着剤を光硬化させる工程である。前記ウエハ加工体(積層体基板)が形成された後、可視光線若しくは紫外線(波長又は中心波長は350~405nmが好ましく、365~405nmがより好ましく、385~405nmが最も好ましい)領域においてエネルギー量が1~20000mJ/cm2になるように照射することが好ましい。エネルギー量が1mJ/cm2以上だと十分な接着性が得られ、20000mJ/cm2以下だと生産性が優れ、光ラジカル重合開始剤からの分解生成物が発生しにくく、アウトガスの発生も抑制される。生産性、接着性、低アウトガス性、易剥離性の点で、1000~10000mJ/cm2がより好ましい。
【0116】
組成物の硬化にあたっては、光源としてブラックライトやUV-LEDや可視光-LEDを使用可能であり、例えば以下のような光源を用いることができる。ブラックライトとしては、その中心波長にかかわらず、波長385nm以上の成分を含むライトが好ましく用いられる。なお、本明細書において波長の範囲が記載されているときには、中心波長がその範囲に含まれているか否かで、その範囲に含まれるか否かを判断するものとする。
・ブラックライト(中心波長365nm、照度10mW/cm2、株式会社トーヨーアドテック製TUV-8271)
・UV-LED (波長385±5nm、照度350mW/cm2(条件:ミラーユニット先端からのワークディスタンス20mm)、HOYA株式会社製H-4MLH200-V2-1S19+専用設計ミラーユニット)
・UV-LED (波長395±5nm、照度375mW/cm2(条件:ミラーユニット先端からのワークディスタンス20mm)、HOYA株式会社製H-4MLH200-V3-1S19+専用設計ミラーユニット)
・UV-LED (波長405±5nm、照度400mW/cm2(条件:ミラーユニット先端からのワークディスタンス20mm)、HOYA株式会社製H-4MLH200-V4-1S19+専用設計ミラーユニット)
・UV-LED (中心波長405nm、照度10mW/cm2、CCS社製HLDL-120V0-NWPSC)
・可視光-LED (波長451±5nm、照度550mW/cm2(条件:照射ユニット先端からのワークディスタンス10mm)、CCS株式会社製HLDL-155VL450‐PSC)
・可視光-LED (波長492±5nm、照度400mW/cm2(条件:照射ユニット先端からのワークディスタンス10mm)、CCS株式会社製HLDL-155BG‐PSC)
【0117】
好ましい実施形態においては、照射波長が一般にbroadであるため積算光量が多く、照射時間が長くなる傾向にあるブラックライトよりも、積算光量が少なくて済む(照射時間が短くて済む)UV-LED又は可視光-LEDを光源としてよい。すなわち、照射波長帯域がnarrowであるLED光源を使用することで、仮固定を短時間で行い、結果として製造工程に掛かる時間を短縮できるという効果が得られる。
【0118】
[工程(c)]
工程(c)は、支持体と接合したウエハの回路非形成面を研削及び/又は研磨する工程、即ち、工程(a)にて貼り合わせて得られたウエハ加工体のウエハ裏面側を研削して、該ウエハの厚みを薄くする工程である。薄化されたウエハの厚さは、10~300μmが好ましく、30~100μmがより好ましい。ウエハ裏面の研削/研磨加工の方式には特に制限はなく、公知の研削/研磨方式が採用される。研削は、ウエハと砥石(ダイヤモンド刃付き砥石等)に水をかけて、冷却しながら行うことが好ましい。
【0119】
[工程(d)]
工程(d)は、回路非形成面を研削/研磨したウエハ加工体、即ち、裏面研削/研磨によって薄化されたウエハ加工体の回路非形成面に加工を施す工程である。この工程にはウエハレベルで用いられる様々なプロセスが含まれる。例えば、電極形成、金属配線形成、保護膜形成等が挙げられる。より具体的には、電極等の形成のための金属スパッタリング、金属スパッタリング層をエッチングするためのウェットエッチング、金属配線形成のマスクとするためのレジストの塗布、露光、及び現像によるパターンの形成、レジストの剥離、ドライエッチング、金属めっきの形成、TSV形成のためのシリコンエッチング、シリコン表面の酸化膜形成等、従来公知のプロセスが挙げられる。
【0120】
[工程(e)]
工程(e)は剥離工程である。本工程は工程(d)で加工を施したウエハをウエハ加工体から剥離する工程である。例えば、薄化したウエハに様々な加工を施した後、ダイシングする前にウエハ加工体からウエハを剥離する工程である。この際、あらかじめ薄化、加工した面にダイシングテープを貼り付けておくことができる。この剥離工程は、一般に室温から60℃程度までの比較的低温の条件で実施される。この剥離工程としては、公知のUVレーザー剥離工程、IRレーザー剥離工程、又はメカニカル剥離工程のいずれも採用することができる。
【0121】
UVレーザー剥離工程とは、例えば、ウエハ加工体の光学的に透明な支持体側の端部から接線方向に直線状に往復しながら走査するようにUVレーザーを全面に照射してレーザーのエネルギーにより接着剤層を分解させて剥離する工程である。このような剥離工程は、例えば、特表2019-501790号や特表2016-500918号に記載されている。本発明の仮固定組成物は、特に(D)成分を含み、かつ前記(C)成分及び/又は(D)成分の好ましい要件を満たすことにより、特にUVレーザー剥離工程に適する。
【0122】
IRレーザー剥離工程とは、例えば、ウエハ加工体の光学的に透明な支持体側の端部から接線方向に直線状に往復しながら走査するようにIRレーザーを全面に照射してレーザーのエネルギーにより接着剤層を加熱・分解させて剥離する工程である。このような剥離工程は例えば特許第4565804号公報に記載されている。このIRレーザー剥離工程を実施するために、仮固定剤層とガラス支持体の間にIRレーザー光を吸収して熱に変換する光熱変換層(例えば3M社のLTHC; Light-To-Heat-Conversion release coating)を設けてもよい。3M社のLTHCを用いる場合、例えば、LTHCをガラス支持体上にスピンコートして硬化し、仮固定剤層はウエハ上にスピンコートしてからLTHC層が形成された前記ガラス支持体と貼り合わせてUV硬化することができる。3M社のLTHCを用いてIRレーザー剥離工程を実施する方法は、例えば上記と同じ特許第4565804号公報に記載されている。
【0123】
メカニカル剥離工程とは、例えば、ブレードをウエハ加工体の界面端部に挿入してウエハ・支持体間に開裂を発生させるためにウエハ加工体のウエハを下側にして水平に固定しておき、該ブレード挿入後に上方の支持体及び/又は該ブレードに上向きの応力を印加して前記開裂を進展させてウエハ・支持体を剥離させる工程を含む剥離工程である。このような剥離工程は、例えば、特許第6377956号公報や特開2016-106404号公報に記載されている。
【0124】
本発明の実施形態に係る組成物の剥離に当たっては、これらの剥離方法のいずれかが使用できる。この時、ウエハ加工体のウエハ又は支持体の一方を水平に固定しておき、ブレードを入れることや溶剤(例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等の脂肪族系又は芳香族系炭化水素系の溶剤)で接着剤層の外周部を膨潤させて剥離のきっかけを作った後、他方を水平方向から一定の角度を付けて持ち上げることが好ましい。これらの剥離方法は、通常、室温で実施されるが、上限90℃程度で加温することも好ましい。レーザーを用いる場合は、YAGレーザー又はYVO4レーザーを用いることが好ましい。
【0125】
上記の工程(e)の加工を施したウエハを支持体から剥離する工程は、メカニカル剥離工程の場合には更に、
(f)加工を施したウエハのウエハ面にダイシングテープを接着する工程と、
(g)ダイシングテープ面を吸着面に真空吸着する工程と、
(h)吸着面の温度が10~100℃の温度範囲で、前記支持体を、加工を施した前記ウエハから剥離する工程と、
を含むことが好ましい。このようにすると、支持体を、加工を施したウエハから容易に剥離することができ、後のダイシング工程を容易に行うことができる。
【0126】
またUVレーザー又はIRレーザーで剥離する場合は、当該製造方法が更に例えば
(i)加工を施したウエハを光学的に透明な支持体側を上にして、水平な場所に、好ましくはダイシングテープを介して設置/固定する工程と、
(j)加工を施した前記ウエハの支持体側からレーザーを走査するように全面に照射する工程と、
を含むことが好ましい。このようにすると、支持体を、加工を施したウエハから容易に剥離することができ、後のダイシング工程を容易に行うことができる。
【0127】
また、工程(e)の加工を施したウエハを支持体からUVレーザー又はIRレーザーにより剥離する工程の次には、
(k)ウエハの表面に残存している仮固定剤を除去する工程、
を実施する必要がある。仮固定剤の除去方法としては、薄化した面を吸着面に真空吸着させた状態で、もう片方の、仮固定剤が残存している面の全面にダイシングテープのような粘着テープを貼り、そのテープごと仮固定剤を剥離する方法、及びウエハを溶剤(例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等の脂肪族系又は芳香族系炭化水素系の溶剤)中に浸漬し、接着剤層を膨潤させて剥離させる方法がある。これらの方法の内、工程数の少なさ、所要時間の短さの点から、テープ剥離方式が好ましい。
【0128】
仮固定剤除去後のウエハは、表面を洗浄せずにそのまま次の工程に進ませることもできる。洗浄する場合は更に、
(l)支持体と仮固定剤を除去したウエハを、回路形成面を上にした状態で溶剤(例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等の脂肪族系又は芳香族系炭化水素系の溶剤)を用いて洗浄する工程
を行うことが好ましい。
【0129】
工程(k)により、仮固定剤を除去したウエハの回路形成面には、接着剤(仮固定剤)が一部残存している場合がある。また、剥離した支持体は洗浄し再利用することが好ましいが、この支持体の表面にも接着剤残渣が固着している場合がある。これらの接着剤残渣を除去する方法としては、溶剤(例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等の脂肪族系又は芳香族系炭化水素系の溶剤)に浸漬し、膨潤させて剥離させる方法等が挙げられる。
【0130】
或る実施形態では、上記組成物を硬化して硬化体を得るにあたって、下記のような種々の手法を採用できる。
【0131】
まず第一の手法として、(A)~(D)成分を含む仮固定組成物からなる層を硬化し、単層硬化体を得ることが可能である。
【0132】
そして第二の手法としては、(A-1)成分、(A-2)成分、(B)成分、及び(C)成分を含有しかつ(D)成分を含まない仮固定組成物からなる第一の層と、(A)~(D)成分を含む仮固定組成物からなる第二の層とをそれぞれ用意し、硬化させることで、一体化した単層又は多層(複層)を有する硬化体を得る手法が挙げられる。この硬化体では、その厚み方向に関して成分の濃度分布が異なること、又は硬化体の厚み方向に関しての上面と下面において成分の濃度分布が異なっていることが好ましい。成分の濃度分布が異なっていることは、上述した反射率測定分光法により、硬化体の両面についてUV透過率を定量することにより確認可能である。この手法により、光透過性の異なる層を組み合わせることで、最適な硬化を実現可能になる効果が得られる。また上述した硬化にあたっては、光源としてブラックライトやUV-LEDを使用可能である(下記の手法も同様)。ブラックライトの例としては、株式会社トーヨーアドテック製TUV-8271(中心波長365nm、照度10mW/cm2)が挙げられる。またUV-LEDとしては、HOYA株式会社製H-4MLH200-V2-1S19+専用設計ミラーユニット(波長385±5nm、照度350mW/cm2、条件:ミラーユニット先端からのスキャンピッチ20mm)、HOYA株式会社製H-4MLH200-V3-1S19+専用設計ミラーユニット(波長395±5nm、照度375mW/cm2、条件:ミラーユニット先端からのワークディスタンス20mm)、HOYA株式会社製H-4MLH200-V4-1S19+専用設計ミラーユニット(波長405±5nm、照度400mW/cm2、条件:ミラーユニット先端からのワークディスタンス20mm)、といったものが挙げられる。
【0133】
また第三の手法としては、(A-1)成分、(A-2)成分、(B)成分、及び(C)成分を含む仮固定組成物からなる硬化層の上に、(D)成分を塗布(例えばスピンコートによる塗布)することで、少なくとも部分的に一体化した単層を有する硬化体を得る手法も可能である。この場合、当該硬化体の厚み方向に関して成分の濃度分布が異なる。成分の濃度分布は、上述したように対象層ごとの反射率測定分光法により定量可能である。この手法により、UV吸収特性を精密に制御できる、といった効果が得られる。
【0134】
また第四の手法として、(A-1)成分、(A-2)成分、(B)成分、及び(C)成分を含む仮固定組成物からなる層の上に、市販のLTHC剤(光熱変換剤)の層を載せて硬化させることで、多層硬化体を得てもよい。これにより簡便に硬化体を得られるという効果が得られる。
【0135】
上述したような手法で得られた硬化体を、被着体と組み合わせて構造体として提供可能である。
【0136】
上述したような構造体の製造方法としても、種々の例を挙げられる。例えば第一の製造方法には、ウエハ上に(A-1)成分、(A-2)成分、(B)成分、及び(C)成分を含有しかつ(D)成分を含まない第一の仮固定組成物を塗布し部分硬化させるステップと、上記の部分硬化した仮固定組成物の上に、(A)~(D)成分を含有する第二の仮固定組成物を塗布するステップと、塗布した第二の仮固定組成物の上に透明基板を更に載せ、光硬化させるステップとを含めてよい。
【0137】
また構造体の第二の製造方法として、ウエハ上に(A-1)成分、(A-2)成分、(B)成分、及び(C)成分を含有しかつ(D)成分を含まない第一の仮固定組成物を塗布し、必要に応じて部分硬化させるステップと、透明基板上に(A)~(D)成分を含有する第二の仮固定組成物を塗布し、必要に応じて部分硬化させるステップと、ウエハと透明基板のそれぞれ仮固定組成物を塗布した側の面同士を密着させてから、光硬化により接合するステップと、を含むものがあってもよい。
【0138】
また構造体の第三の製造方法として、ウエハ上に(A-1)成分、(A-2)成分、(B)成分、及び(C)成分を含有しかつ(D)成分を含まない仮固定組成物を塗布し、必要に応じて部分硬化させるステップと、透明基板上にLTHC層を塗布し、乾燥し硬化させるステップと、ウエハの仮固定組成物を塗布した側の面と、透明基板のLTHC層を塗布した側の面とを密着させてから、光硬化により接合するステップとを含むものがあってもよい。
【0139】
上記仮固定組成物とは別に、本発明の仮固定組成物に用いられるものと同じ組成物は、特許第4565804号公報に記載のIRレーザー光を吸収して熱に変換する光熱変換(LTHC)層の原料としても使用可能である。本組成物を光熱変換(LTHC)層の成分として加えることで、その耐熱性を向上させることが可能となる。
【0140】
本発明の別な側面としては、仮固定接着剤を半導体ウエハ基材及び/又は支持部材に塗布して、前記半導体ウエハ基材と前記支持部材を接着するステップと、波長350~700nm(好ましくは365~500nm又は385~700nm、より好ましくは385~450nm)の光を照射することで前記仮固定接着剤を硬化させ、接着体を得るステップと、前記接着体に波長385nm未満のレーザー光(好ましくは波長200nm以上波長385nm未満のレーザー光)を照射して、前記半導体ウエハ基材を剥離するステップとを含む、半導体ウエハの製造方法を提供できる。本製造方法は、硬化及び剥離のステップが共に常温下での工程で有り、部材を加熱したり冷却したりする必要が無く、一般的には溶媒等を用いる必要が無く、簡単で、かつタクトタイム(cycle time)が短いという利点がある。
【0141】
更には、硬化した仮固定接着剤が、前記接着体中で単層を構成してもよい。そうすることで、工程の簡略化やタクトタイムの短縮が可能になる。
【0142】
このような本製造方法に好ましく用いられる仮固定接着剤としては、UV硬化性単量体と前記吸光度から選定された(C)光ラジカル重合開始剤成分、及び最も好ましいUV透過率から選定された(D)UV吸収剤成分を含む仮固定剤が用いられる。ここでUV硬化性単量体としては、好ましくは単官能(メタ)アクリレート又は多官能(メタ)アクリレートであり、最も好ましくは前記(A-1)、(A-2)成分である。更に前記(B)ポリイソブテン単独重合体及び/又はポリイソブテン共重合体、又は従来仮固定接着剤に用いられる公知の樹脂成分を含んでいても良い。
【0143】
好ましい実施形態においては、上述した好ましい(C)光ラジカル重合開始剤成分と(D)UV吸収剤成分を共に組成物が含むことにより、たとえ単層の仮固定接着剤であっても、早い硬化速度と早い剥離速度を両立させることが可能である。更に、仮固定接着剤をUV硬化した際に硬化体に残留する未硬化のUV硬化性単量体成分を著しく少なくすることが可能で、硬化体の耐熱性を向上させ、かつ、真空下での揮発分を減少させることが可能となる。すなわち、例えば硬化体のTg/DTA測定における2%加熱質量減少温度を高くすることが可能となる。硬化体の高い耐熱性や、真空下での揮発分を減少させた仮固定接着剤は、最近の半導体製造プロセスにとって極めて有用である。
【実施例0144】
以下に、実験例をあげて、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0145】
(実験例)
特記しない限り、23℃、湿度50%で実験した。表1、2、4に示す組成(単位は質量部)の硬化性樹脂組成物(以下、液状樹脂組成物ということもある)を調製し、評価した。実験例に記載の硬化性樹脂組成物中の各成分としては、以下の化合物を選択した。
【0146】
(組成)
(A-1) ホモポリマーのTgが-100℃~60℃である単官能アクリレートとして、以下の化合物を選択した。
イソステアリルアクリレート(大阪有機化学工業株式会社製「ISTA」、ホモポリマーのガラス転移温度:-18℃、分子量325)
2-ドデシル-1-ヘキサデカニルアクリレート(共栄社化学株式会社製「ライトアクリレートDHD-A(DHD-A)」、ホモポリマーのガラス転移温度:-23℃、分子量465)
2-テトラデシル-1-オクタデカニルアクリレート(共栄社化学株式会社製「ライトアクリレートDOD-A(DOD-A)」、ホモポリマーのガラス転移温度:-8℃、分子量521)
2-デシル-1-テトラデカニルアクリレート(共栄社化学社製「ライトアクリレートDTD-A(DTD-A)」、ホモポリマーのガラス転移温度:-36℃、分子量409)
【0147】
(A-2) 多官能アクリレートとして、以下の化合物を選択した。
トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(新中村化学工業株式会社製「NKエステルA-DCP(A-DCP)」、分子量304)
【0148】
(B) ポリイソブテン単独重合体及び/又はポリイソブテン共重合体として、以下の化合物を選択した。
ポリイソブテン単独重合体として、以下の化合物を選択した。
Oppanol N 50SF(BASF社製、PS換算重量平均分子量(Mw):565,000、分子量分布2.4)
ポリイソブテン-ポリスチレンブロック共重合体として、以下の化合物を選択した。
SIBSTAR 103T(株式会社カネカ製、ポリスチレン-ポリイソブテン-ポリスチレントリブロック共重合体、PS換算重量平均分子量(Mw):100,000、分子量分布2.0、ポリスチレンセグメントの合計質量比率30%)
エピオンEP400V(カネカ社製、両末端アクリル変性ポリイソブテン、PS換算重量平均分子量(Mw):17,000、分子量分布1.2)
【0149】
(C) 光ラジカル重合開始剤として、以下の化合物を選択した。
ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド(BASF社製「Irgacure 819」)
【0150】
(D) UV吸収剤として以下の化合物を選択した。
2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール (BASF社製Tinuvin 900、株式会社アデカ製アデカスタブ LA-24、Everlight Chemical社製EVERSORB 76/EVERSORB 234、分子量447)
2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-(1-メチル-1-フェニルエチル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール (BASF社製Tinuvin 928、Everlight Chemical社製EVERSORB 89/89FD、分子量442)
2-[2-ヒドロキシ-3-(3,4,5,6-テトラヒドロフタルイミド-メチル)-5-メチルフェニル]ベンゾトリアゾール(住化ケムテックス株式会社製Sumisorb 250、分子量389)
2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-(2'-エチル)ヘキシル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン(BASF社製Tinuvin405、分子量584)
2,4-ビス(2-ヒドロキシ-4-ブチルオキシフェニル)-6-(2,4-ビス-ブチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン(BASF社製Tinuvin 460、分子量630)
【0151】
酸化防止剤として、以下の化合物を選択した。
4-((4,6-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2-イル)アミノ)-2,6-ジ-t-ブチルフェノール(BASF社製「IRGANOX 565」)
【0152】
(液状サンプル作製)
材料を80℃で加温混合することで均一な混合物とした。
【0153】
(ブラックライトを用いた硬化サンプル作製)
上記の加温混合により均一化した液状樹脂組成物をPETフィルムに挟み込み、厚さ50μm(後述の弾性率測定用サンプルのみ0.5mm)になるまで押し広げ、積算光量10000mJ/cm2の条件にて硬化させ、硬化体を作製した。硬化にはブラックライト(中心波長365nm、照度10mW/cm2、株式会社トーヨーアドテック製TUV-8271)を用いた。
【0154】
(405nmUV-LEDを用いた硬化サンプル作製)
上記の加温混合により均一化した液状樹脂組成物をPETフィルムに挟み込み、厚さ50μm(後述の弾性率測定用サンプルのみ0.5mm)になるまで押し広げ、積算光量5000mJ/cm2の条件にて硬化させ、硬化体を作製した。硬化にはUV-LED(中心波長405nm、照度100mW/cm2、CCS社製HLDL-120V0-NWPSC)を用いた。
【0155】
UVレーザー剥離プロセス適合性評価用試験体の作製工程:作製した液状樹脂組成物を、自動ウエハボンダー中で8インチシリコンウエハ(直径200mm×厚さ0.725mm)上に厚さが50μmになる条件でスピンコートし、次に同装置内で10Paの減圧条件下で8インチガラスウエハ(直径201mm×厚さ0.7mm)と接合した。接合後、ガラスウエハ側から上記のいずれかのUV光源を用いて該液状樹脂化合物を硬化させ、接合体を得た。次に、得られた接合体のシリコンウエハ面を研削研磨して厚さ50μmまで薄化した後、250℃・13Paの高温減圧環境下で1時間加熱処理を行った。
【0156】
IRレーザー剥離/メカニカル剥離プロセス適合性評価用試験体の作製工程:作製した液状樹脂組成物を用いて、4インチシリコンウエハ(直径100mm×厚さ0.47mm)と4インチガラスウエハ(直径100mm×厚さ0.7mm)を貼り合わせ、液状樹脂組成物が基材間全面に厚さ50μmで展開するまで押し広げ、上記いずれかの光源を用いて積算光量5000~10000mJ/cm2の条件にて硬化させ、剥離・解体試験片を作製した。硬化のための光は、4インチガラスウエハ表面から照射した。
【0157】
(評価)
液状樹脂組成物の材料の相溶性(表1、2、4の「材料の相溶性」、「吸光度」):上記の加温混合により均一化した仮固定組成物を23℃まで冷やして均一状態が維持されるかを確認した。日本分光株式会社製の紫外可視分光光度計V-650を用い、光路長方向の幅10mmのセルに入れたサンプルの、波長660nmでの吸光度(OD660)を測定した。吸光度が0.1未満の場合は相溶で可、0.1以上の場合、及び目視で相分離等の不均一化が確認された場合は非相溶で不可とした。吸光度は、相溶性の点で、0.1未満が好ましい。なお、「不可」になった例については以降の評価を省略した。以下も同様である。
【0158】
粘度(表1、2、4の「スピンコートプロセス適合性」、「粘度」):上記「材料の相溶性」において、23℃で均一状態が維持される液状樹脂組成物の粘度を測定し、実際のプロセスで想定される基材上面へのスピンコートに対する適合性を評価した。Anton-Paar社製レオメーターMCR302を用い、コーンプレートCP50-2を用いて23℃の温度条件で粘度を測定した。せん断速度が1s-1の点でのせん断粘度が1000mPa・s以上4000mPa・s未満であるものを優、4000mPa・s以上10000mPa・s以下、又は、100mPa・s以上1000mPa・s未満であるものを可、10000mPa・sを超える、又は、100mPa・s未満であるものを不可とした。粘度は、スピンコートプロセスへの適合性の点で、100~10000mPa・sが好ましい。なお、「不可」になった例については以降の評価を省略した。以下も同様である。
【0159】
硬化体の加熱質量減少率(表1、2、4の「耐熱性1」、「硬化体の2%加熱質量減少温度」):
得られた硬化体10mgを、ブルカー・エイエックスエス株式会社製示差熱・熱質量同時測定装置「TG-DTA2000SA」により、窒素気流下、昇温速度10℃/分で30℃から350℃まで、その後続けて空気気流下にて昇温速度20℃/分で350℃から800℃まで昇温し、得られた硬化体の加熱質量減少率を測定した。硬化体の2%加熱質量減少温度を示した。250℃以上の値を示したものを優、200℃以上250℃未満の値を示したものを良、150℃以上200℃未満の値を示したものを可、150℃未満の値を示したものを不可とした。加熱質量減少率が2%となる温度は、半導体製造高温工程適合性の点で、150℃以上が好ましく、250℃以上がより好ましい。なお、「不可」になった例については以降の評価を省略した。以下も同様である。
【0160】
硬化体の弾性率範囲(表1、2、4の「耐熱性2」・「-50~250℃での貯蔵弾性率」):ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製粘弾性測定装置RSA-G2を用いて硬化体サンプルの動的粘弾性を測定した。測定はチャック間距離10mm、サンプル幅8mm、サンプル厚み0.5mm、歪み0.1%、引張周波数1Hz、昇温速度3℃/min、温度範囲-50~250℃の範囲で行った。本条件で温度領域全域にわたって貯蔵弾性率E’が10kPa以上であるサンプルを可、いずれかの温度領域で10kPa未満となるサンプルを不可とした。弾性率は、10kPa以上が好ましい。なお、「不可」になった例については以降の評価を省略した。以下も同様である。
【0161】
高温での接着性(表1、2、4の「高温条件下(250℃・1h・減圧30Pa)での接着性」、「外縁部の変色の幅」、「加熱による剥離」):作製した液状樹脂組成物を用いて、4インチシリコンウエハ(直径10cm×厚さ0.47mm)と4インチガラスウエハ(直径10cm×厚さ0.7mm)を貼り合わせた。貼り合わせに際し、樹脂組成物の厚みは仮固定剤に宇部エクシモ社製のシリカ粒子(商品名ハイプレシカ TS N3N 平均粒径50μm)を0.1質量%添加し、混合したものを用いることで調整した。貼り合わせ後、積算光量10000mJ/cm2の条件にて硬化させ、高温減圧条件下での接着性評価用試験片を作製した。接着剤は貼り合わせ面の全面に塗布した。ブラックライトは、4インチガラスウエハ表面から照射した。完成した試験片を予め所定の温度に加熱したホットプレート上に4インチシリコンウエハ側を下にして載せ、外縁部の変色領域のウエハ中心方向への幅、及びガラス側から目視で確認できる剥離の有無を観察した。30Paの減圧下、ホットプレートの温度は250℃、加熱継続時間は1時間とした。表の「高温条件下(250℃・1h・減圧30Pa)での接着性」において、各温度条件で変色領域の外縁部から中心方向への広がりの幅が5mm以下で且つ剥離が認められないもの(表の「加熱による剥離」が「無」)は可、幅が5mmを超えたものや剥離が認められたものは不可とした。変色領域の外縁部から中心方向への広がりの幅は、5mm以下が好ましい。ここで示す変色とは、仮固定剤がガラスとシリコンの何れかの基材から剥離して起こる変化により確認される色の変化をいう。
【0162】
(1)UV硬化プロセス・UVレーザー剥離プロセス同時適合性(表1、2の「光透過率」):
得られた厚み50μmの硬化フィルムの、波長200nmから450nmまでの範囲内の光透過率を測定した。以下の条件を全て満たすものを可、2つ以下の条件しか満たさないものを不可とした。
[1] 395nm以上の波長領域の光透過率が70%以上
[2] 385nm以上395nm未満の波長領域の光透過率が20%以上
[3] 波長355nmでの光透過率が1%以下
【0163】
(1)UVレーザー剥離プロセス適合性(表1、2、4の「UVレーザー剥離性」、「完全剥離達成所要時間最小値」、及び表3の「UVレーザー照射条件」):得られた8インチ試験体のガラス支持体側から該試験体全面を走査するように、同試験体を中心に固定した210mm四方の面積にUVレーザーを照射した。UVレーザー照射条件として表3に示す各条件を、表1の実施例それぞれに対して順次適用し評価を行った。UVレーザーは株式会社クォークテクノロジー製QLA-355(波長350nm)を、出力9.3W、パルスエネルギー235μJ、エネルギー密度11968mJ/cm2、周波数40kHz、ビーム径(スポット径)50μm、スキャンピッチ500μm、スキャン速度20m/sという表3の条件番号9に示した条件で使用した(表3は、この最適な条件を検討するための試行を記載したものである)。照射後の剥離性は、接着力が完全に失われていてガラス支持体がシリコンウエハ上を自由に滑る(又は動く)状態になっているもの(接着力=0)を完全剥離と定義し、この完全剥離の状態を得るのに必要なUVレーザー照射プロセスの所要時間の最小値によってUVレーザー剥離プロセス適合性を評価した。同所要時間の最小値が15秒未満のものを優、15秒以上30秒未満のものを良、30秒以上60秒未満のものを可、60秒以上を不可とした。
【0164】
(2)IRレーザー剥離プロセス適合性評価:本方法は、例えば特許第4565804号公報に記載されている方法を用いることができる。特許第4565804号公報には、例えば特許第4405246号公報に記載の、光を吸収して熱に変換する光熱変換層(LTHC層)を液状樹脂組成物と併用する方法が記載されている。LTHC層は、支持体表面に塗布して硬化させることで形成される。特許第4565804号公報にはLTHC層が表面に形成された支持体の同層形成面側と、液状樹脂組成物をスピンコートしたシリコンウエハの液状樹脂組成物塗布面を接合し、支持体側からUV照射して硬化する方法により作製した積層体を、支持体を上面にして固定装置に固定し、上面からYAGレーザー又は半導体レーザーを照射して解体する方法が記載されている。この解体は、LTHC層がIRレーザーの光エネルギーを吸収して熱に変換し、その熱が隣接する樹脂層を分解・気化させ、気化により発生した気体の層が支持体と樹脂層の間の接着力を消失させることでなされる。IRレーザー照射後の剥離性は、上記UVレーザー照射後の剥離性の評価と同様の方法によって評価することができる。
【0165】
(3)メカニカル剥離プロセス適合性(表1、2の「メカニカル剥離性(可/不可)」):上記の高温での接着性評価用サンプルと同様の試験体の両基材間にPETシートを差し込み、試験体をダイシングテープ(デンカ株式会社製ERK-3580)に、シリコンウエハ面を下にして貼り付けた。貼り付けたものをバキュームチャックの上に載せて固定した状態で試験体の端部に直径50mmの吸盤を貼り付け、その吸盤の中央に電子バネ秤の測定部を取り付けて同秤を上方へ垂直に引き上げる方法で剥離性を評価した。剥離に要する力(接着力)が50Nを超えたもの、又はPETシートを差し込むことができなかったものを不可とした。
【0166】
【0167】
【0168】
【0169】
表1と表2の実施例及び表4の比較例の結果から、本発明の樹脂組成物は、相溶性、スピンコートプロセス適合性、耐熱性に優れる組成物であることが分かる。
(A-1)を用いず、モノマーを全て(A-2)とした場合、(B)が析出し、相溶性を有さない(比較例1、2)。
(A-2)を用いず、モノマーを全て(A-1)とした場合、要求される耐熱性(2%加熱質量減少温度、弾性率)を有さない(比較例3、4)。
(B)を用いないと粘度が必要最低限の値に達しない(比較例5)。
【0170】
また表1、2の結果から、本発明の組成物が、UVレーザー剥離性に優れることがわかる。
【0171】
本発明の樹脂組成物は、材料の相溶性とスピンコートに際して必要な最低粘度が確保できており、室温及び高温条件での接着性、耐熱性及び剥離性に優れる。
【0172】
本実施例に係る樹脂組成物は、UVレーザー剥離プロセスに対する適合性、及びメカニカル剥離プロセスに対する適合性を有する。上記実施例に記載の方法で作製したシリコンウエハ/ガラス支持体積層体の端部の基材界面に開裂発生用の薄くて鋭利な金属のブレードを挿入してからガラス支持体を上側にして水平に固定しておき、ブレード挿入後に上方の支持体に上向きの応力を印加して前記開裂を進展させてウエハ・支持体を剥離させる方法により、剥離が可能であった。
【0173】
また、剥離に要するエネルギーの評価方法として、上記同様に薄くて鋭利なブレードを一定距離だけ挿入し、その時に開裂が進展する距離を測定するMaszara試験という方法を用いた。同試験においても、実施例1の組成の液状樹脂を用いて接合したサンプルは充分に低い値を示す。
【0174】
本実施例に係る樹脂組成物は、UVレーザー剥離プロセスに対する適合性を有する。上記実施例に記載の方法で作製したシリコンウエハ/ガラス支持体積層体について、シリコンウエハを下側にして固定装置に固定し、ガラス支持体側から株式会社クォークテクノロジー製UVレーザーQLA-355を、出力9.3W、周波数40kHz、スキャンピッチ200μm、ビーム径50μmで照射後、上記(3)メカニカル剥離プロセス適合性評価と同じ手順で剥離力を測定したところ、剥離力UV照射前は3Nだった値が0Nまで低下していた。
本発明の組成物は、種々の電子部品、光学部品や光学デバイスの製造において、紫外線又は可視光線を照射するだけで容易に強い接着性を発現するために、作業性、生産性に優れる。本発明の組成物の硬化体は、更に250℃という高温でもアウトガスの量が極めて少ない。本発明の組成物は、加工後に剥離するのが容易である。そのため、本発明の組成物を用いて接着した種々の電子部品、光学部品、光学デバイスは、200℃を超えるような高温での蒸着処理や、高温での焼付塗装が施される場合でも、適用可能である。
ICや抵抗、インダクタ等の電子部品以外にイメージセンサ等の光学部品も回路基板への表面実装が適用されるようになっている。その場合は高温のハンダリフローに通される。近年、特にハンダの鉛フリー化に伴い、ハンダリフローの温度条件も厳しくなってきている。このような生産工程において、光学部品や光学デバイスの品質を高めるために、又は、生産性や生産歩留まりを高めるために、本発明の組成物の使用箇所は、高温加熱処理に十分に耐えることが要求される。本発明の組成物を使用して製造された光学部品や光学デバイスは、前記高温加熱処理に十分耐えることができるため、産業上大変有用である。