(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111855
(43)【公開日】2024-08-20
(54)【発明の名称】メンタルヘルスケアシステム、画像出力方法、及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
G16H 20/70 20180101AFI20240813BHJP
A61B 5/00 20060101ALI20240813BHJP
A61B 5/16 20060101ALI20240813BHJP
A61B 5/374 20210101ALI20240813BHJP
A61M 21/02 20060101ALI20240813BHJP
【FI】
G16H20/70
A61B5/00 G
A61B5/16 100
A61B5/374
A61M21/02 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023016513
(22)【出願日】2023-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】592032636
【氏名又は名称】学校法人トヨタ学園
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 淳也
(74)【代理人】
【識別番号】100195659
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 祐介
(72)【発明者】
【氏名】山下 勝司
(72)【発明者】
【氏名】山口 雄平
(72)【発明者】
【氏名】山田 整
(72)【発明者】
【氏名】成清 辰生
【テーマコード(参考)】
4C038
4C117
4C127
5L099
【Fターム(参考)】
4C038PP03
4C038PQ00
4C038PS03
4C117XB01
4C117XB18
4C117XD03
4C117XE18
4C117XG15
4C117XG16
4C117XP04
4C117XR01
4C127AA03
4C127CC06
4C127FF02
4C127GG03
4C127GG13
4C127HH00
4C127KK03
4C127KK05
5L099AA15
(57)【要約】
【課題】利用者の精神状態を所望の精神状態へ効率的に誘導できるメンタルヘルスケアシステムを提供することを目的とする。
【解決手段】メンタルヘルスケアシステムであって、脳波を取得する脳波取得部と、取得された脳波を解析して、脳波のα波比率を算出する脳波解析部と、算出されたα波比率を用いて、フラクタル形状の植物の形状制御に用いられるハイパーパラメータを算出する形状制御部と、算出されたハイパーパラメータに応じた植物の画像を生成する画像生成部と、生成された画像を出力させる画像出力部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メンタルヘルスケアシステムであって、
脳波を取得する脳波取得部と、
取得された前記脳波を解析して、前記脳波のα波比率を算出する脳波解析部と、
算出された前記α波比率を用いて、フラクタル形状の植物の形状制御に用いられるハイパーパラメータを算出する形状制御部と、
算出された前記ハイパーパラメータに応じた前記植物の画像を生成する画像生成部と、
生成された前記画像を出力させる画像出力部と、
を備える、メンタルヘルスケアシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のメンタルヘルスケアシステムであって、
前記ハイパーパラメータは、
方向に関する第1値と、
長さに関する第2値と、を含んでおり、
前記画像生成部は、
前記第1値を用いて、前記植物の枝または茎の伸長方向を決定すると共に、前記第2値を用いて、前記枝または前記茎の伸長長さを決定し、
現在の前記枝または前記茎の終点から、決定した前記伸長方向に向かって、決定した前記伸長長さだけ、前記枝または前記茎の描画を新たに行い、
予め設定されたタイミングごとに算出される前記ハイパーパラメータに応じて、前記伸長方向及び前記伸長長さの決定と、前記描画と、を繰り返すことで、前記画像を生成する、メンタルヘルスケアシステム。
【請求項3】
請求項2に記載のメンタルヘルスケアシステムであって、
前記形状制御部は、前記α波比率が目標値に追従するよう前記第1値と前記第2値とを算出する、メンタルヘルスケアシステム。
【請求項4】
請求項2に記載のメンタルヘルスケアシステムであって、
前記形状制御部は、前記α波比率が目標値から分散するよう前記第1値と前記第2値とを算出する、メンタルヘルスケアシステム。
【請求項5】
請求項2から請求項4のいずれか一項に記載のメンタルヘルスケアシステムであって、
前記画像生成部は、
前記第1値を上限とした一様乱数を用いて前記伸長方向の決定を行い、
前記第2値を下限とした一様乱数を用いて前記伸長長さの決定を行う、メンタルヘルスケアシステム。
【請求項6】
画像出力方法であって、
脳波を取得する脳波取得工程と、
取得された前記脳波を解析して、前記脳波のα波比率を算出する脳波解析工程と、
算出された前記α波比率を用いて、フラクタル形状の植物の形状制御に用いられるハイパーパラメータを算出する形状制御工程と、
算出された前記ハイパーパラメータに応じた前記植物の画像を生成する画像生成工程と、
生成された前記画像を出力させる画像出力工程と、
を備える、画像出力方法。
【請求項7】
画像の出力をコンピュータに実行させるコンピュータプログラムであって、
脳波を取得する脳波取得機能と、
取得された前記脳波を解析して、前記脳波のα波比率を算出する脳波解析機能と、
算出された前記α波比率を用いて、フラクタル形状の植物の形状制御に用いられるハイパーパラメータを算出する形状制御機能と、
算出された前記ハイパーパラメータに応じた前記植物の画像を生成する画像生成機能と、
生成された前記画像を出力させる画像出力機能と、
を前記コンピュータに実行させる、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メンタルヘルスケアシステム、画像出力方法、及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ストレス社会の深刻化により、メンタル面での健康維持が大きな社会課題になっている。例えば、仕事を中断して休憩を取る際、理想的には、精神状態を緊張状態からリラックス状態に切り替えることが望ましいが、長期的に緊張状態が継続していると、休憩してもリラックス状態に切り替えることが難しくなる。リラックス状態への誘導には、自然風景の画像が用いられることがある。例えば、特許文献1には、自然風景の画像を利用者に見せてリラックス状態に誘導したのち、利用者に呼吸を整えさせて集中状態に誘導するリフレッシュ誘導システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、利用者の反応には個人差があり、ある利用者にとってはリラックス状態への誘導に効果的である画像も、他の利用者にとってはあまり効果的でない場合がある。例えば、特許文献1では、利用者の反応を考慮せず一律な画像を利用者に見せてリラックス状態への誘導を促していることから、利用者によっては、リラックス状態へ効率的に誘導されない場合があるという課題があった。なお、このような課題は、利用者の精神状態をリラックス状態へ誘導する場合に限らず、利用者の精神状態を所望の精神状態(例えば、緊張状態とリラックス状態とのバランスが取れたフロー状態など)へと誘導する場合の全般に共通する。
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、利用者の精神状態を所望の精神状態へ効率的に誘導できるメンタルヘルスケアシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0007】
(1)本発明の一形態によれば、メンタルヘルスケアシステムが提供される。このメンタルヘルスケアシステムは、脳波を取得する脳波取得部と、取得された前記脳波を解析して、前記脳波のα波比率を算出する脳波解析部と、算出された前記α波比率を用いて、フラクタル形状の植物の形状制御に用いられるハイパーパラメータを算出する形状制御部と、算出された前記ハイパーパラメータに応じた前記植物の画像を生成する画像生成部と、生成された前記画像を出力させる画像出力部と、を備える。
【0008】
この構成によれば、脳波を解析して算出されたα波比率を用いて、フラクタル形状の植物の形状制御に用いられるハイパーパラメータが算出される。そして、そのハイパーパラメータに応じたフラクタル形状の植物の画像が生成される。すなわち、植物のフラクタル形状は脳波に応じて変化する。一般的にフラクタル形状を見ると、自律神経系が影響を受けて脳波に含まれるα波のリズムや心拍が変動することが知られている。この構成によれば、利用者の脳波に応じて植物のフラクタル形状をその都度変化させることによりフラクタル次元の異なる画像を生成し、その画像を出力して利用者に見せることから、利用者の自律神経系に効果的に影響を与えることができる。すなわち、この構成によれば、脳波と植物の画像とを介して、利用者とメンタルヘルスケアシステムとが相互に作用することにより、利用者の精神状態を所望の精神状態へ効率的に誘導することができる。
【0009】
(2)上記形態のメンタルヘルスケアシステムにおいて、前記ハイパーパラメータは、方向に関する第1値と、長さに関する第2値と、を含んでおり、前記画像生成部は、前記第1値を用いて、前記植物の枝または茎の伸長方向を決定すると共に、前記第2値を用いて、前記枝または前記茎の伸長長さを決定し、現在の前記枝または前記茎の終点から、決定した前記伸長方向に向かって、決定した前記伸長長さだけ、前記枝または前記茎の描画を新たに行い、予め設定されたタイミングごとに算出される前記ハイパーパラメータに応じて、前記伸長方向及び前記伸長長さの決定と、前記描画と、を繰り返すことで、前記画像を生成してもよい。
この構成によれば、予め設定されたタイミングごとに決定される伸長方向及び伸長長さに応じて、植物の枝(または茎)の描画が新たに行われ、そのような描画が繰り返されることでフラクタル形状の植物の画像が生成される。このため、定期的に算出されるハイパーパラメータの変動に応じて、植物を構成する枝(または茎)の各々の伸長方向及び伸長長さも変動する。したがって、多様な伸長方向及び伸長長さの枝(または茎)から構成されたフラクタル形状の植物の画像を生成することができる。このような植物の画像は、似通った伸長方向及び伸長長さの枝(または茎)から構成されたフラクタル形状の植物の画像と比べて、実際の植物を利用者に想起させやすいことから、利用者の自律神経系により一層効果的に影響を与えることができる。
【0010】
(3)上記形態のメンタルヘルスケアシステムにおいて、前記形状制御部は、前記α波比率が目標値に追従するよう前記第1値と前記第2値とを算出してもよい。
この構成によれば、そのような第1値及び第2値を用いて決定された伸長方向及び伸長長さにしたがって、枝(または茎)は伸長する。そして、そのように伸長した枝(または茎)から構成された植物の画像を出力して利用者に見せることにより、利用者の自律神経系に影響を与え、その結果、利用者の脳波から算出されるα波比率を目標値に追従させることができる。
【0011】
(4)上記形態のメンタルヘルスケアシステムにおいて、前記形状制御部は、前記α波比率が目標値から分散するよう前記第1値と前記第2値とを算出してもよい。
この構成によれば、そのような第1値及び第2値を用いて決定された伸長方向及び伸長長さにしたがって、枝(または茎)は伸長する。そして、そのように伸長した枝(または茎)から構成された植物の画像を出力して利用者に見せることにより、利用者の自律神経系に影響を与え、その結果、利用者の脳波から算出されるα波比率を目標値から分散させることができる。
【0012】
(5)上記形態のメンタルヘルスケアシステムにおいて、前記画像生成部は、前記第1値を上限とした一様乱数を用いて前記伸長方向の決定を行い、前記第2値を下限とした一様乱数を用いて前記伸長長さの決定を行ってもよい。
この構成によれば、このように決定された伸長方向及び伸長長さにしたがって伸長した枝(または茎)で植物を構成することによって、実際の植物のような揺らぎを利用者に想起させやすくすることができる。
【0013】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、メンタルヘルスケアシステム、フラクタル形状の植物の画像を出力させる画像出力方法、これらシステムや方法を実行するためのコンピュータプログラム、このコンピュータプログラムを配布するためのサーバ装置、およびコンピュータプログラムを記憶した一時的でない記憶媒体等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】メンタルヘルスケアシステムの構成を例示した説明図である。
【
図2】α波比率の算出の手順を説明する説明図である。
【
図3】ハイパーパラメータの変動を概念的に示す説明図である。
【
図5】画像の複雑度とxy座標上の点の位置との関連性を示した説明図である。
【
図6】精神状態の誘導効果を試験した結果を示す説明図である。
【
図7】精神状態の誘導効果を試験した結果を示す説明図である。
【
図8】精神状態の誘導効果を試験した結果を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第1実施形態>
図1は、本発明の一実施形態としてのメンタルヘルスケアシステム1の構成を例示した説明図である。メンタルヘルスケアシステム1は、植物の画像(
図5に例示)を生成したのち、その画像をモニタ30に出力させて利用者に見せることにより、利用者の精神状態を誘導するシステムである。メンタルヘルスケアシステム1は、計測デバイス10と、情報処理装置20と、モニタ30と、を備えている。
【0016】
計測デバイス10は、利用者の身体に装着されて、利用者の脳波信号を計測するデバイスである。計測デバイス10は、例えば、脳波計測用の電極が装着されたキャップ(帽子)である。計測デバイス10の脳波計測部は、利用者の頭部に装着された状態で脳波の微弱電気信号を生体計測用のアンプで増幅することにより、多チャンネルの時系列データである脳波信号を計測する。
【0017】
情報処理装置20は、いわゆるパーソナルコンピュータ(PC:Personal Computer)である。情報処理装置20は、図示しないCPU、ROM及びRAMを備えている。情報処理装置20は、CPUがROMに格納されているコンピュータプログラムをRAMに展開して実行することにより、脳波取得部21と、脳波解析部23と、形状制御部25と、画像生成部27と、画像出力部29と、の各機能を実行する。
【0018】
情報処理装置20のうち脳波取得部21は、計測デバイス10から、脳波計測部によって計測された脳波信号を取得する。情報処理装置20の脳波解析部23は、脳波取得部21によって取得された脳波信号を解析して、脳波のα波比率を算出する。
【0019】
図2は、脳波解析部23によるα波比率の算出の手順を説明する説明図である。脳波解析部23は、まず初めに、脳波信号に空間フィルタを適用して、脳波信号の信号分解能を向上させる。次に、脳波解析部23は、脳波信号から各周波数成分を分離する各々のバンドパスフィルタを脳波信号に適用し、分離された各周波数成分を整流する。そして、脳波解析部23は、整流後の各周波数成分にローパスフィルタを適用して、θ波成分、α波成分、β波成分を得たのち、θ波成分とα波成分とβ波成分との総和でα波成分を除することにより、α波比率を算出する。脳波取得部21が脳波信号を取得して脳波解析部23がα波比率を算出する工程は、周期的に行われる。本実施形態では、この工程は、0.00781秒ごとに行われる。
【0020】
図3は、形状制御部25が算出するハイパーパラメータの変動を概念的に示す説明図である。情報処理装置20の形状制御部25は、脳波解析部23によって算出されたα波比率を用いて、フラクタル形状の植物の形状制御に用いられるハイパーパラメータを算出する。フラクタル形状の植物とは、植物のうち一部と全体が自己相似になっている植物のことである。ハイパーパラメータは、メンタルヘルスケアシステム1により出力される植物の画像(
図5参照)において、その植物を構成する枝の伸長方向や伸長長さを決定する際に用いられるパラメータである。ハイパーパラメータは、方向に関する第1値y
k+1と、長さに関する第2値x
k+1と、を含んでいる。第1値y
k+1は、後述の
図4にて説明する枝の伸長方向を決定するパラメータであり、第2値x
k+1は、その枝の伸長長さを決定するパラメータである(詳細は
図4にて説明)。第1値y
k+1は以下の式(1)を用いて算出される。
y
k+1=y
k+K
y(ratio-Ref)・・・(1)
また、第2値x
k+1は以下の式(2)を用いて算出される。
x
k+1=x
k+K
x(ratio-Ref)・・・(2)
式(1)(2)において、ratioは、脳波解析部23が算出したα波比率の値を表す。上述したように、α波比率(ratio)は、0.00781秒ごとに算出されて更新されることから、y
k、x
kは、前回更新時のα波比率から算出された第1値、第2値を表す。K
y、K
xは、フィードバックゲインを表す。また、Refは、α波比率の目標値を表す。ここで、目標値とは、α波比率の目標とする値のことである。目標値は、情報処理装置20の入力部(不図示)への入力により、予め設定される。目標値について、例えば、利用者がリラックス状態であるときの脳波におけるα波比率の値を予め測定しておき、そのα波比率の値を目標値として設定してもよい。
【0021】
図3には、横軸をy軸とし、縦軸をx軸とするxy座標が示されている。このxy座標においては、yの値は図中の下方向に向かうほど大きく、xの値は図中の右方向に向かうほど大きい。また、このxy座標において、原点は(x
k+1、y
k+1)=(0,0)ではなく、いずれの象限(第1~4象限Q1~Q4)においても、x
k+1、y
k+1の値はともに正の値をとるものとする。
図3に示された点Pは、第1値y
k+1、第2値x
k+1で示されるxy座標上の点である。点Pは、上記式(1)(2)を用いて算出された第1値y
k+1、第2値x
k+1に応じて、矢印ARで例示するように、xy座標上を移動する。詳細には、α波比率が更新されるたび上記式(1)(2)により第1値y
k+1、第2値x
k+1が算出され、それら算出される値の変動に応じて、点Pは移動する。このような点Pの移動で表現されるように、形状制御部25は、脳波解析部23によりα波比率が更新されるたび、ハイパーパラメータとして第1値y
k+1、第2値x
k+1を算出する。
【0022】
図4は、画像生成部27による植物の画像の生成を説明する説明図である。情報処理装置20の画像生成部27は、形状制御部25によって算出されたハイパーパラメータに応じた植物の画像を生成する。詳細には、画像生成部27は、第1値y
k+1を用いて、植物の枝の伸長方向Φ
k+1を決定すると共に、第2値x
k+1を用いて、枝の伸長長さL
k+1を決定し、現在の枝の終点から、決定した伸長方向Φ
k+1に向かって、決定した伸長長さL
k+1だけ、枝の描画を新たに行う。例えば、
図4を用いて具体的に説明すると、次の通りである。
図4の植物PLは、フラクタル形状の樹木であり、枝B
k、枝B
k+1、枝B
k+2から構成されている。まず、画像生成部27は、枝B
kの伸長が終わったのちに更新されたα波比率を用いてハイパーパラメータが算出されると、第1値y
k+1を用いて枝B
k+1の伸長方向Φ
k+1を決定すると共に、第2値x
k+1を用いて枝B
k+1の伸長長さL
k+1を決定する。そして、画像生成部27は、枝B
kの終点E
kから、決定した伸長方向Φ
k+1に向かって、決定した伸長長さL
k+1だけ、2本の枝B
k+1の描画を新たに行うということである。なお、詳細には、2本の枝B
k+1の各々は、終点E
kから分岐し、枝B
kの伸長方向から左右にそれぞれ伸長方向Φ
k+1だけ傾いた方向に伸長する。このような予め設定されたタイミングごと(本実施形態ではα波比率が更新されるたび)に算出されるハイパーパラメータに応じた伸長方向Φ
k+1及び伸長長さL
k+1の決定と、その決定内容に応じた描画と、を繰り返すことで、画像生成部27は、植物の画像を生成する。本実施形態では、α波比率(ratio)は、0.00781秒ごとに更新されるとともに、画像生成の周期は5.6秒ごとであることから、1周期において、新たな枝の描画が717(≒5.6/0.00781)回行われることによって、1本の植物の画像生成が完了する。
【0023】
画像生成部27は、以下の式(3)に示される、第1値yk+1を上限とした一様乱数を用いて伸長方向Φk+1の決定を行う。
Φk+1=rand(0,yk+1)・・・(3)
式(3)に示された一様乱数の下限は0であり、上限はyk+1であることから、伸長方向Φk+1は、0からyk+1までの間の値に決定される。
【0024】
また、画像生成部27は、以下の式(4)に示される、第2値xk+1を下限とした一様乱数を用いて伸長長さLk+1の決定を行う。
Lk+1=rand(xk+1,γLk)・・・(4)
式(4)に示された一様乱数の下限はxk+1であり、上限はγLkであることから、伸長長さLk+1は、xk+1からγLkまでの間の値に決定される。ここで、γは1より小さい値に設定された定数である。このようにγが設定されていることにより、枝の描画が行われるたびに、その前に描画された枝よりも短い枝が新たに伸長されることになる。
【0025】
図5は、画像生成部27によって生成される植物の画像の複雑度とxy座標上の点Pの位置との関連性を示した説明図である。
図5中の上側には、植物の画像G1~G9が配列されている。また、
図5中の下側には、
図3の一部と同じ図が示されており、この図には、形状制御部25から算出されたハイパーパラメータの変動に応じてxy座標上を移動する点Pが示されている。画像G1~G9における複雑度は、画像G1~G9が示す各々の植物の大きさが大きいほど高くなり、概ねG1<G2≒G4<G3≒G5≒G7<G6≒G8<G9の順で高い(比較においては、便宜上、画像G1~G9の「画像」部分を省略した)。すなわち、画像G1~G9の9枚の画像は、図中の左上から右下に向かうにつれて複雑度が高くなるよう配列されており、画像G9の複雑度が最も高い。ここでいう複雑度は、フラクタル次元を基準とした指標であり、複雑度が高いというのは、フラクタル次元が大きいということである。フラクタル次元は、公知のボックスカウンティング法によって求められる。
【0026】
上述したように、ハイパーパラメータ(すなわち、点Pの位置)に応じて、植物の画像は生成される。点Pの位置が図中の右方向に向かうほど、すなわち、長さに関する第2値x
k+1が大きくなるほど、新たに伸長される枝の伸長長さL
k+1は長くなる可能性が高いことから、植物の大きさは大きくなる傾向にある。また、点Pの位置が図中の下方向に向かうほど、すなわち、方向に関する第1値y
k+1が大きくなるほど、新たに伸長される枝の伸長方向Φ
k+1は伸長される枝同士の間が広がる方向になる可能性が高いことから、植物の大きさは大きくなる傾向にある。換言すれば、点Pの位置が図中の右下方向に向かうほど、植物の大きさは大きくなり、その結果、生成される画像の複雑度が高まる傾向にある。また、画像G1~G9の9枚の画像は、図中の左上から右下に向かうにつれて複雑度が高くなるよう配列されている。したがって、
図5に示した、xy座標上を移動する点Pの位置と、その点Pの位置によって生成される植物の画像の複雑度と、は関連している。例えば、
図5において、画像生成の1周期の間、点Pの位置が第4象限Q4に留まっていた場合には、画像G5,G6,G8,G9のいずれかに示された程度の複雑度を有する植物の画像が生成されるということを示している。
【0027】
上述したように、ハイパーパラメータに含まれる第1値yk+1、第2値xk+1は、それぞれ以下の式(1)(2)を用いて算出される。
yk+1=yk+Ky(ratio-Ref)・・・(1)
xk+1=xk+Kx(ratio-Ref)・・・(2)
本実施形態では、形状制御部25は、α波比率(ratio)が目標値(Ref)に追従するよう第1値yk+1と第2値xk+1とを算出する。具体的には、α波比率(ratio)が目標値(Ref)に追従するよう、フィードバックゲインKy、Kxには、負の値が設定されている。このように設定することで、例えば、α波比率(ratio)が目標値(Ref)より大きい場合には、Ky(ratio-Ref)<0、Kx(ratio-Ref)<0となることから、yk+1<yk+Ky(ratio-Ref)、xk+1<xk+Kx(ratio-Ref)となる。すなわち、第1値yk+1、第2値xk+1が共に小さくなり、生成される画像中の植物の大きさも小さくなることにより、生成される画像の複雑度は低くなる。一般的には、利用者が見る画像の複雑度が高い(フラクタル次元が大きい)ほど、利用者の脳波におけるα波比率が大きくなることが知られている。このため、複雑度の低い画像を見た利用者の脳波におけるα波比率が小さくなることで、α波比率が目標値に追従することになる。一方、α波比率(ratio)が目標値(Ref)より小さい場合には、Ky(ratio-Ref)>0、Kx(ratio-Ref)>0となることから、yk+1>yk+Ky(ratio-Ref)、xk+1>xk+Kx(ratio-Ref)となる。すなわち、第1値yk+1、第2値xk+1が共に大きくなるため、生成される画像の複雑度は高くなる。そして、そのような画像を見た利用者の脳波におけるα波比率が大きくなることで、α波比率が目標値に追従することになる。
【0028】
情報処理装置20の画像出力部29は、画像生成部27によって生成された植物の画像を出力させる。この植物の画像は、上述したように、α波比率が更新されるたびに新たな枝の描画(伸長)が行われることを繰り返すことによって生成された画像である。本実施形態では、画像出力部29は、生成された植物の画像をモニタ30(
図1)に表示させる。メンタルヘルスケアシステム1では、着席させた状態の利用者に対して、計測デバイス10を装着するとともに画像が表示されるモニタ30を見せる。このとき表示される植物の画像は、利用者の脳波に応じてそのフラクタル形状が変化するため、利用者の精神状態を誘導する。
【0029】
図6は、本実施形態のメンタルヘルスケアシステム1を用いて、精神状態の誘導効果を試験した結果を示す説明図である。
図7は、比較例のメンタルヘルスケアシステム(以降、比較例と呼ぶ)を用いて、同様の試験を行った結果を示す説明図である。比較例では、本実施形態のように利用者の脳波に応じて植物のフラクタル形状を変化させることはせず、変化のない一定のフラクタル形状の植物の画像を利用者に見せ続ける。
図6,7の縦軸は、利用者の脳波におけるα波比率を表し、横軸は、時間(s)を表す。すなわち、
図6,7には、α波比率の時系列変動が示されている。また、
図6,7の各々には、利用者が開眼している開眼期間OP1,2と、利用者が閉眼している閉眼期間CL1,2が示されている。一般的に、α波は閉眼時に上昇することが知られており、
図6,7のいずれにおいても、開眼時よりも閉眼時においてα波比率が高くなっている。
図6,7に示された試験結果は、α波比率の目標値Refを0.25に設定して行った試験の結果である。
【0030】
図6の開眼期間OP1において、α波比率の平均値は0.2471であり、標準偏差は0.0188である。一方、
図7の開眼期間OP2において、α波比率の平均値は0.2840であり、標準偏差は0.0272である。したがって、メンタルヘルスケアシステム1では、比較例と比べて、開眼時において平均値と目標値との誤差が小さいとともに、平均値からのばらつきも小さくなっている。この結果は、メンタルヘルスケアシステム1では、利用者の脳波に応じて植物のフラクタル形状を変化させることによってα波比率を目標値に追従させていることに起因している。
図6に示された試験結果では、目標値Refを0.25に設定していたが、目標値を変化させることで、利用者の精神状態を緊張状態やリラックス状態に誘導することも可能である。
【0031】
以上説明したように、第1実施形態のメンタルヘルスケアシステム1によれば、脳波を解析して算出されたα波比率を用いて、フラクタル形状の植物の形状制御に用いられるハイパーパラメータが算出される。そして、そのハイパーパラメータに応じたフラクタル形状の植物の画像が生成される。すなわち、植物のフラクタル形状は脳波に応じて変化する。一般的にフラクタル形状を見ると、自律神経系が影響を受けて脳波に含まれるα波のリズムや心拍が変動することが知られている。第1実施形態のメンタルヘルスケアシステム1によれば、利用者の脳波に応じて植物のフラクタル形状をその都度変化させることによりフラクタル次元の異なる画像を生成し、その画像を出力して利用者に見せることから、利用者の自律神経系に効果的に影響を与えることができる。すなわち、第1実施形態のメンタルヘルスケアシステム1によれば、脳波と植物の画像とを介して、利用者とメンタルヘルスケアシステムとが相互に作用することにより、利用者の精神状態を所望の精神状態へ効率的に誘導することができる。
【0032】
また、第1実施形態のメンタルヘルスケアシステム1では、α波比率が更新されるたびに決定される伸長方向Φk+1及び伸長長さLk+1に応じて、植物の枝の描画が新たに行われ、そのような描画が繰り返されることでフラクタル形状の植物の画像が生成される。このため、定期的に算出されるハイパーパラメータの変動に応じて、植物を構成する枝の各々の伸長方向Φk+1及び伸長長さLk+1も変動する。したがって、多様な伸長方向及び伸長長さの枝から構成されたフラクタル形状の植物の画像を生成することができる。このような植物の画像は、似通った伸長方向及び伸長長さの枝から構成されたフラクタル形状の植物の画像と比べて、実際の植物を利用者に想起させやすいことから、利用者の自律神経系により一層効果的に影響を与えることができる。
【0033】
また、第1実施形態のメンタルヘルスケアシステム1では、α波比率が目標値に追従するよう第1値yk+1と第2値xk+1とが算出される。そして、そのような第1値yk+1及び第2値xk+1を用いて決定された伸長方向Φk+1及び伸長長さLk+1にしたがって、枝は伸長する。そして、そのように伸長した枝から構成された植物の画像を出力して利用者に見せることにより、利用者の自律神経系に影響を与え、その結果、利用者の脳波から算出されるα波比率を目標値に追従させることができる。
【0034】
また、第1実施形態のメンタルヘルスケアシステム1では、第1値yk+1を上限とした一様乱数を用いて伸長方向Φk+1の決定を行い、第2値xk+1を下限とした一様乱数を用いて伸長長さLk+1の決定を行う。そのため、このように決定された伸長方向Φk+1及び伸長長さLk+1にしたがって伸長した枝で植物を構成することによって、実際の植物のような揺らぎを利用者に想起させやすくすることができる。
【0035】
<第2実施形態>
第2実施形態のメンタルヘルスケアシステムは、形状制御部25が、α波比率(ratio)が目標値(Ref)から分散するよう第1値と第2値とを算出する点を除いて、第1実施形態のメンタルヘルスケアシステム1(
図1)と同じである。
【0036】
第2実施形態のメンタルヘルスケアシステムにおいては、α波比率(ratio)が目標値(Ref)から分散するよう、フィードバックゲインKy、Kxには、正の値が設定されている。このように設定することで、例えば、α波比率(ratio)が目標値(Ref)より大きい場合には、Ky(ratio-Ref)>0、Kx(ratio-Ref)>0となることから、yk+1>yk+Ky(ratio-Ref)、xk+1>xk+Kx(ratio-Ref)となる。すなわち、第1値yk+1、第2値xk+1が共に大きくなり、生成される画像中の植物の大きさも大きくなることにより、生成される画像の複雑度は高くなる。そして、そのような画像を見た利用者の脳波におけるα波比率が大きくなることで、α波比率が目標値から分散することになる。一方、α波比率(ratio)が目標値(Ref)より小さい場合には、Ky(ratio-Ref)<0、Kx(ratio-Ref)<0となることから、yk+1<yk+Ky(ratio-Ref)、xk+1<xk+Kx(ratio-Ref)となる。すなわち、第1値yk+1、第2値xk+1が共に小さくなるため、生成される画像の複雑度は低くなる。そして、そのような画像を見た利用者の脳波におけるα波比率が小さくなることで、α波比率が目標値から分散することになる。
【0037】
図8は、第2実施形態のメンタルヘルスケアシステムを用いて、精神状態の誘導効果を試験した結果を示す説明図である。
図8の縦軸、横軸は、
図6,7の縦軸、横軸と同じである。また、
図8には、
図6,7と同様に、開眼期間OP3と、閉眼期間CL3が示されている。
図8に示された試験結果についても、
図6,7と同様に、目標値Refを0.25に設定して行った試験の結果である。
【0038】
図8の開眼期間OP3において、α波比率の平均値は0.3017であり、標準偏差は0.0332である。また、
図8の閉眼期間CL3において、α波比率の平均値は0.4804であり、標準偏差は0.0666である。一方、
図7の開眼期間OP2において、α波比率の平均値は0.2840であり、標準偏差は0.0272である。
図7の閉眼期間CL2において、α波比率の平均値は0.3644であり、標準偏差は0.0535である。したがって、第2実施形態のメンタルヘルスケアシステムでは、比較例と比べて、開眼時、閉眼時のいずれにおいても、平均値と目標値との誤差が大きいとともに、平均値からのばらつきも大きくなっている。この結果は、第2実施形態のメンタルヘルスケアシステムでは、利用者の脳波に応じて植物のフラクタル形状を変化させることによってα波比率を目標値から分散させていることに起因している。
【0039】
このように、第2実施形態では、α波比率の分散は大きくなる方へと誘導される。このような誘導は、ポジティブフィードバックにあたる。なお、生体の神経系はシグモイド関数的な特性を持つため、α波比率が発散することはない。ニューロフィードバックにおいて、神経信号の増強には、ポジティブフィードバックの方がネガティブフィードバックより動機付けがしやすいことから、第2実施形態で説明したα波比率の誘導は、利用者の自律神経系により一層効果的に影響を与える可能性が高い。
【0040】
以上のような第2実施形態のメンタルヘルスケアシステムによっても、利用者の自律神経系に効果的に影響を与えることができることから、利用者の精神状態を所望の精神状態へ効率的に誘導することができる。また、第2実施形態のメンタルヘルスケアシステムによれば、α波比率が目標値から分散するよう第1値yk+1と第2値xk+1とが算出される。そして、そのような第1値yk+1及び第2値xk+1を用いて決定された伸長方向Φk+1及び伸長長さLk+1にしたがって、枝は伸長する。そして、そのように伸長した枝から構成された植物の画像を出力して利用者に見せることにより、利用者の自律神経系に影響を与え、その結果、利用者の脳波から算出されるα波比率を目標値から分散させることができる。
【0041】
<本実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0042】
[変形例1]
上記実施形態では、メンタルヘルスケアシステム1は、計測デバイス10と、情報処理装置20と、モニタ30と、を備えるシステムとした。しかし、メンタルヘルスケアシステムは、情報処理装置20単体で構成されてもよく、情報処理装置20が備える各機能を有するサーバ装置として構成されてもよい。この場合、脳波取得部21は、外部デバイスである脳波計測部から脳波信号を受信し、画像出力部29は、外部デバイスであるモニタに対して植物の画像を送信して表示させることで、上記実施形態と同様の処理を実現できる。
【0043】
[変形例2]
上記実施形態では、画像に表示される植物として樹木を想定していたことから、伸長される対象を枝としていたが、これに限らず、例えば、画像に表示される植物として草花を想定する場合には、伸長される対象を茎としてもよい。
【0044】
[変形例3]
上記実施形態では、ハイパーパラメータは、方向に関する第1値yk+1と、長さに関する第2値xk+1と、を含んでいたが、これに限らず、例えば、ハイパーパラメータは、方向及び長さに関する単独の値であってもよい。例えば、この単独の値が大きいほど枝の伸長長さは長くなるとともに伸長方向は伸長される枝同士の間が広がる方向になる。すなわち、第1値yk+1や第2値xk+1がそれぞれ独立して伸長方向と伸長長さを決定するパラメータであったのに対して、この単独の値は、伸長方向と伸長長さとを同時に決定するパラメータである。また、ハイパーパラメータは、第1値yk+1及び第2値xk+1に加えて、色に関する第3値を含んでいてもよい。第3値は、伸長する枝の色の濃淡を決定するパラメータであり、枝の伸長方向、伸長長さに加えて、枝の色の濃淡がハイパーパラメータに応じて決定され、その決定内容に応じて新たな枝の伸長が行われてもよい。
【0045】
[変形例4]
上記実施形態では、α波比率が更新されるたびにハイパーパラメータが算出されていたが、これに限られず、例えば、予め設定した時間間隔ごとに算出されてもよい。なお、利用者の脳波の変動を精度よく把握するためには、時間間隔が狭いほど好ましい。
【0046】
[変形例5]
第1実施形態において、一般的に、利用者が見る画像の複雑度が高い(フラクタル次元が大きい)ほど、利用者の脳波におけるα波比率が大きくなると説明したが、画像の複雑度とα波比率との関係は一意ではなく、利用者によっては、画像の複雑度が高くても、α波比率が大きくならなかったり、小さくなったりする場合もある。このため、そのような利用者の精神状態を所望の精神状態へ効率的に誘導する場合には、例えば、緊張状態やリラックス状態、もしくは、フロー状態(緊張状態とリラックス状態とのバランスが取れた状態)におけるα波比率の傾向を利用者ごとに予め測定しておくことが好ましい。そして、そのα波比率の傾向に沿うように、画像生成の1周期の間において、目標値や目標値に対するα波比率の追従や分散は、適宜変更されてもよい。
【0047】
[変形例6]
上記実施形態では、第1値yk+1や第2値xk+1を上限や下限とした一様乱数を用いて伸長方向Φk+1や伸長長さLk+1の決定を行っていたが、本発明はこれに限られない。例えば、算出された第1値yk+1や第2値xk+1に応じて、伸長方向Φk+1や伸長長さLk+1の決定を行ってもよい。すなわち、第1値yk+1や第2値xk+1が大きいほど、伸長方向Φk+1や伸長長さLk+1を大きな値に決定してもよい。
【0048】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【0049】
本発明は、以下の形態としても実現することが可能である。
[適用例1]
メンタルヘルスケアシステムであって、
脳波を取得する脳波取得部と、
取得された前記脳波を解析して、前記脳波のα波比率を算出する脳波解析部と、
算出された前記α波比率を用いて、フラクタル形状の植物の形状制御に用いられるハイパーパラメータを算出する形状制御部と、
算出された前記ハイパーパラメータに応じた前記植物の画像を生成する画像生成部と、
生成された前記画像を出力させる画像出力部と、
を備える、メンタルヘルスケアシステム。
[適用例2]
適用例1に記載のメンタルヘルスケアシステムであって、
前記ハイパーパラメータは、
方向に関する第1値と、
長さに関する第2値と、を含んでおり、
前記画像生成部は、
前記第1値を用いて、前記植物の枝または茎の伸長方向を決定すると共に、前記第2値を用いて、前記枝または前記茎の伸長長さを決定し、
現在の前記枝または前記茎の終点から、決定した前記伸長方向に向かって、決定した前記伸長長さだけ、前記枝または前記茎の描画を新たに行い、
予め設定されたタイミングごとに算出される前記ハイパーパラメータに応じて、前記伸長方向及び前記伸長長さの決定と、前記描画と、を繰り返すことで、前記画像を生成する、メンタルヘルスケアシステム。
[適用例3]
適用例1または適用例2に記載のメンタルヘルスケアシステムであって、
前記形状制御部は、前記α波比率が目標値に追従するよう前記第1値と前記第2値とを算出する、メンタルヘルスケアシステム。
[適用例4]
適用例1から適用例3のいずれかに記載のメンタルヘルスケアシステムであって、
前記形状制御部は、前記α波比率が目標値から分散するよう前記第1値と前記第2値とを算出する、メンタルヘルスケアシステム。
[適用例5]
適用例1から適用例4のいずれかに記載のメンタルヘルスケアシステムであって、
前記画像生成部は、
前記第1値を上限とした一様乱数を用いて前記伸長方向の決定を行い、
前記第2値を下限とした一様乱数を用いて前記伸長長さの決定を行う、メンタルヘルスケアシステム。
[適用例6]
画像出力方法であって、
脳波を取得する脳波取得工程と、
取得された前記脳波を解析して、前記脳波のα波比率を算出する脳波解析工程と、
算出された前記α波比率を用いて、フラクタル形状の植物の形状制御に用いられるハイパーパラメータを算出する形状制御工程と、
算出された前記ハイパーパラメータに応じた前記植物の画像を生成する画像生成工程と、
生成された前記画像を出力させる画像出力工程と、
を備える、画像出力方法。
[適用例7]
画像の出力をコンピュータに実行させるコンピュータプログラムであって、
脳波を取得する脳波取得機能と、
取得された前記脳波を解析して、前記脳波のα波比率を算出する脳波解析機能と、
算出された前記α波比率を用いて、フラクタル形状の植物の形状制御に用いられるハイパーパラメータを算出する形状制御機能と、
算出された前記ハイパーパラメータに応じた前記植物の画像を生成する画像生成機能と、
生成された前記画像を出力させる画像出力機能と、
を前記コンピュータに実行させる、コンピュータプログラム。
【符号の説明】
【0050】
1…メンタルヘルスケアシステム
10…計測デバイス
20…情報処理装置
21…脳波取得部
23…脳波解析部
25…形状制御部
27…画像生成部
29…画像出力部
30…モニタ