(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111867
(43)【公開日】2024-08-20
(54)【発明の名称】インクジェットインク
(51)【国際特許分類】
C09D 11/328 20140101AFI20240813BHJP
C09K 11/06 20060101ALI20240813BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240813BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20240813BHJP
G06K 19/06 20060101ALI20240813BHJP
【FI】
C09D11/328
C09K11/06
B41J2/01 501
B41M5/00 120
G06K19/06 140
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023016537
(22)【出願日】2023-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】391040870
【氏名又は名称】紀州技研工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】599060847
【氏名又は名称】株式会社ウイスト
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 信也
(72)【発明者】
【氏名】森 正広
(72)【発明者】
【氏名】山本 智
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
4J039
【Fターム(参考)】
2C056FC01
2H186BA08
2H186DA08
2H186FA02
2H186FB03
2H186FB22
2H186FB29
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2H186FB31
2H186FB48
2H186FB50
2H186FB53
2H186FB54
2H186FB57
4J039AB02
4J039AD03
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4J039AE02
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4J039BC07
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4J039EA44
4J039EA46
4J039FA02
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】保存安定性及び接着性に優れつつ、可視光下では高い視認性を有しつつ、紫外光下でも蛍光によって高い視認性を有するインクジェットインクを提供する。
【解決手段】色材顔料及び蛍光染料を含有する、インクジェットインク。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
色材顔料及び蛍光染料を含有する、インクジェットインク。
【請求項2】
前記蛍光染料が蛍光増白剤及び/又はランタノイド化合物である、請求項1に記載のインクジェットインク。
【請求項3】
さらに、樹脂を含有する、請求項1に記載のインクジェットインク。
【請求項4】
前記樹脂が、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリオール樹脂、ブチラール樹脂、スチレンマレイン酸樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ケトンホルムアルデヒド樹脂、セルロースエステル樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、アミン系樹脂、エポキシ樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂及びウレタン樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項3に記載のインクジェットインク。
【請求項5】
さらに、溶剤を含有する、請求項1に記載のインクジェットインク。
【請求項6】
前記溶剤が、水、ケトン及びアルコールよりなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項5に記載のインクジェットインク。
【請求項7】
さらに、導電剤を含有する、請求項1に記載のインクジェットインク。
【請求項8】
さらに、顔料誘導体及び/又は顔料分散剤を含有する、請求項1に記載のインクジェットインク。
【請求項9】
可視光下においては非蛍光色を呈し、且つ、紫外光下においては蛍光を発する非蛍光色インクである、請求項1に記載のインクジェットインク。
【請求項10】
透明若しくは半透明の容器、又は下地にデザインを有する非蛍光色の容器に直接印刷される、請求項1に記載のインクジェットインク。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載のインクジェットインクが収容されたインクジェットインク収容体。
【請求項12】
請求項1~10のいずれか1項に記載のインクジェットインクを用いた印刷物。
【請求項13】
請求項1~10のいずれか1項に記載のインクジェットインクにより印字された透明若しくは半透明の容器、又は下地にデザインを有する非蛍光色の容器。
【請求項14】
請求項1~10のいずれか1項に記載のインクジェットインクによる印字後の文字検査方法であって、
可視光下において前記インクジェットインクによる印字を視認できる場合は可視光を照射し、
可視光下において前記インクジェットインクによる印字を視認できない場合は紫外光を照射する、
判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットインクに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、商品の消費期限や賞味期限を明確にしたり、商品の識別、認証、分類、管理等を行ったりするために、当該商品の容器等の各種媒体の表面には、消費期限や賞味期限や、ロット番号等の情報が印字される。これらの情報が誤字や欠落等なく正しく印字されているかどうかを判別する文字検査工程が、通常、カメラで撮影しながら行われている。
【0003】
黒インク等の濃色インク(例えば、特許文献1~2参照)は、可視光下で高い視認性を有するが、被印刷物の色彩や被印刷物である容器の内容物によっては視認性が低下することがある。例えば、被印刷物の色彩がインクの色彩と近い場合は視認性が低下する。また、被印刷物が透明又は半透明の容器である場合、内容物が振動等によって泡立つ場合(化粧品ボトル等)には視認性が低下する。このように視認性が低下する条件下においては、文字検査工程において正しく評価できないことがある。特に、被印刷物が透明又は半透明の容器であり、内容物が振動等によって泡立つ場合には、印字した情報と気泡とをいずれも認識してしまうために、機械での検査がほとんど不可能であるため、人手によって文字検査を行う必要があり、経済性に劣る。
【0004】
一方、蛍光インク(例えば、特許文献3参照)は、ブラックライト等から紫外光を照射することによって蛍光発光し、高い視認性を有する。蛍光インクは、紫外光下において視認性を有するものであり、紫外光下では気泡は認識されないため、被印刷物が透明又は半透明の容器であり、内容物が振動等によって泡立つ場合での問題点は解消される。しかしながら、蛍光インクは、通常可視光下では無色透明又は淡色を示すために、可視光下での視認性に劣るという根本的な問題が生ずる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-072236号公報
【特許文献2】特開2014-005401号公報
【特許文献3】特開2018-058999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、濃色インク及び蛍光インクの両者の特性を併用すべく、従来は当業者が想像さえもしてこなかった、両者を混合することに想起した。しかしながら、本発明者らの研究により、濃色染料及び蛍光染料を混合すると、可視光下での視認性は濃色インクほど高くないうえに、紫外光を照射した際には、発生するはずの蛍光が濃色染料の成分に吸収されてしまい、紫外光下での視認性は依然として低いことが判明した。また、濃色顔料及び蛍光顔料を混合した場合は、インクジェットインクとして安定ではないうえに、やはり、紫外光を照射した際には、発生するはずの蛍光が濃色顔料に吸収されてしまい、紫外光下での視認性は十分ではないことも判明した。
【0007】
そこで、本発明は、保存安定性及び接着性に優れつつ、可視光下では高い視認性を有しつつ、紫外光下でも蛍光によって高い視認性を有するインクジェットインクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記した目的を達成すべく鋭意研究を重ねてきた。その結果、色材顔料と蛍光染料とを組合せて使用した場合には特異的に、保存安定性及び接着性に優れつつ、可視光下では非蛍光色を呈するために高い視認性を有しつつ、紫外光下でも蛍光によって高い視認性を有することを見出した。本発明者らは、この知見に基づいて更に研究を重ね本発明を完成した。即ち、本発明は、以下の構成を包含する。
【0009】
項1.色材顔料及び蛍光染料を含有する、インクジェットインク。
【0010】
項2.前記蛍光染料が蛍光増白剤及び/又はランタノイド化合物である、項1に記載のインクジェットインク。
【0011】
項3.さらに、樹脂を含有する、項1又は2に記載のインクジェットインク。
【0012】
項4.前記樹脂が、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリオール樹脂、ブチラール樹脂、スチレンマレイン酸樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ケトンホルムアルデヒド樹脂、セルロースエステル樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、アミン系樹脂、エポキシ樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂及びウレタン樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも1種である、項3に記載のインクジェットインク。
【0013】
項5.さらに、溶剤を含有する、項1~4のいずれか1項に記載のインクジェットインク。
【0014】
項6.前記溶剤が、水、ケトン及びアルコールよりなる群から選ばれる少なくとも1種である、項5に記載のインクジェットインク。
【0015】
項7.さらに、導電剤を含有する、項1~6のいずれか1項に記載のインクジェットインク。
【0016】
項8.さらに、顔料誘導体及び/又は顔料分散剤を含有する、項1~7のいずれか1項に記載のインクジェットインク。
【0017】
項9.可視光下においては非蛍光色を呈し、且つ、紫外光下においては蛍光を発する非蛍光色インクである、項1~8のいずれか1項に記載のインクジェットインク。
【0018】
項10.透明若しくは半透明の容器、又は下地にデザインを有する非蛍光色の容器に直接印刷される、項1~9のいずれか1項に記載のインクジェットインク。
【0019】
項11.項1~10のいずれか1項に記載のインクジェットインクが収容されたインクジェットインク収容体。
【0020】
項12.項1~10のいずれか1項に記載のインクジェットインクを用いた印刷物。
【0021】
項13.項1~10のいずれか1項に記載のインクジェットインクにより印字された透明若しくは半透明の容器、又は下地にデザインを有する非蛍光色の容器。
【0022】
項14.項1~10のいずれか1項に記載のインクジェットインクによる印字後の文字検査方法であって、
可視光下において前記インクジェットインクによる印字を視認できる場合は可視光を照射し、
可視光下において前記インクジェットインクによる印字を視認できない場合は紫外光を照射する、
判定方法。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、保存安定性及び接着性に優れつつ、可視光下では非蛍光色を呈するために高い視認性を有しつつ、紫外光下でも蛍光によって高い視認性を有するインクジェットインクを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本明細書において、「含有」は、「含む(comprise)」、「実質的にのみからなる(consist essentially of)」、及び「のみからなる(consist of)」のいずれも包含する概念である。
【0025】
本明細書において、数値範囲をA~Bで表記する場合、A以上B以下を示す。
【0026】
1.インクジェットインク
本発明のインクジェットインクは、色材顔料及び蛍光染料を含有する。
【0027】
(1-1)色材顔料
色材顔料は、非蛍光色を呈することができる顔料であれば特に制限されない。色材顔料は、無機顔料及び有機顔料に大別できるが、いずれも採用できる。
【0028】
無機色材顔料としては、例えば、カーボンブラック、酸化チタン、炭酸カルシウム、酸化鉄、コバルトブルー等を好適に使用することができる。
【0029】
有機色材顔料としては、例えば、トルイジンレッド、トルイジンマルーン、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、ピラゾロンレッド等の不溶性アゾ顔料;アリザリン、インダントロン、チオインジゴマルーン等の建染染料からの誘導体である顔料;リトールレッド、ヘリオボルドー、ピグメントスカーレット、パーマネントレッド2B等の溶性アゾ顔料;フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等のフタロシアニン顔料;キナクリドンレッド、キナクリドンマゼンタ等のキナクリドン顔料;イソインドリノンイエロー、イソインドリノンオレンジ等のイソインドリノン顔料;ピランスロンレッド、ピランスロンオレンジ等のピランスロン顔料;フラバンスロンイエロー、アシルアミドイエロー、キノフタロンイエロー、ニッケルアゾイエロー、銅アゾメチンイエロー、ペリノンオレンジ、アンスロンオレンジ、ジアンスラキノニルレッド、ジオキサジンバイオレット等のその他の顔料等が挙げられる。なかでも、保存安定性及び接着性に優れつつ、可視光下では非蛍光色を呈するために高い視認性を有しつつ、紫外光下でも蛍光によって高い視認性を有する観点から、無機色材顔料、フタロシアニン顔料、イソインドリノン顔料等が好ましく、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、イソインドリノンイエロー等がより好ましい。
【0030】
上記した色材顔料をカラーインデックス(C.I.)ナンバーで示すと、C.I.ピグメントイエロー12,13,14,17,20,24,74,83,86,93,109,110,117,125,128,129,137,139,147,148,151,153,154,181,166,168,185等;C.I.ピグメントオレンジ16,36,43,51,55,59,61等;C.I.ピグメントレッド9,48,49,52,53,57,97,122,123,168,177,180,192,202,206,215,216,217,220,223,224,226,227,228,238,240等;C.I.ピグメントバイオレット19,23,30,37,40,50等;C.I.ピグメントブルー15,15:1,15:3,15:4,15:6,22,60,64等;C.I.ピグメントグリーン7,36等;C.I.ピグメントブラウン23,25,26等が挙げられる。
【0031】
上記した色材顔料は、単独で用いることもでき、可視光下での視認性や色味等を考慮して2種以上を組合せて用いることもできる。また、色材顔料は、公知又は市販品を使用することができる。
【0032】
上記した色材顔料は、色材染料とは異なり、インクジェットインク中で溶解せずに分散して存在している。このため、可視光下では非蛍光色を呈するために高い視認性を有しつつも、紫外光下で後述の蛍光染料により発生した蛍光の吸収も抑えることが可能であり、紫外光下でも高い視認性を有することができる。
【0033】
これらの色材顔料は、保存安定性及び接着性に優れつつ、可視光下では非蛍光色を呈するために高い視認性を有しつつ、紫外光下でも蛍光によって高い視認性を有する観点から、粒度分布計で計測した平均粒径(累積分布のメジアン径(D50))が10~300nm(好ましくは100~300nm)の範囲内であって最大粒径が0.5~2μm(0.5~1.0μm)となるように分散させることが好ましい。
【0034】
このように、本発明に用いる色材顔料は、微細な顔料粒子であることが好ましいが、分散剤とともに分散機で高速撹拌を行って、安定な分散液にしておくことも可能である。
【0035】
本発明のインクジェットインクにおいて、色材顔料の含有量は、特に制限されるわけではないが、保存安定性及び接着性に優れつつ、可視光下では非蛍光色を呈するために高い視認性を有しつつ、紫外光下でも蛍光によって高い視認性を有する観点から、本発明のインクジェットインクの総量を100質量%として、1.0~10.0質量%が好ましく、1.5~8.0質量%がより好ましい。なお、色材顔料を2種類以上使用する場合は、その合計含有量が上記範囲内となるように調整することが好ましい。
【0036】
(1-2)蛍光染料
蛍光染料としては、溶剤中に溶解して存在しており、可視光下では視認できない又は視認しにくいものの、ブラックライト等から紫外光を照射すると蛍光発光して可視化し得る種々の蛍光染料が使用可能である。
【0037】
このような蛍光染料としては、特に制限されるわけではないが、保存安定性及び接着性に優れつつ、可視光下では非蛍光色を呈するために高い視認性を有しつつ、紫外光下でも蛍光によって高い視認性を有する観点から、蛍光増白剤、ランタノイド化合物等が好ましい。
【0038】
蛍光増白剤としては、例えば、2,5-ビス(5-tert-ブチル-2-ベンゾオキサゾリル)チオフェン、1,4-ビス(2-ベンゾオキサゾリル)ナフタレン等のベンゾオキサゾール誘導体;4,4’-ビス(トリアジン-2-イルアミノ)スチルベン-2,2’-ジスルホン酸誘導体等のスチルベン誘導体であって、トリアジニル基が例えばアニリノ、スルファニル酸、メタニル酸、メチルアミノ、N-メチル-N-ヒドロキシエチルアミノ、ビス(ヒドロキシエチルアミノ)、モルフオリノ、ジエチルアミノ等の置換体で置換されているスチルベン誘導体;2-(スチルベン-4-イル)ナフトトリアゾール、2-(4-フェニルスチルベン-4-イル)ベンゾオキサゾール等のモノ(アゾール-2-イル)スチルベン誘導体;4,4’-ビス(トリアゾール-2-イル)スチルベン-2,2’-ジスルホン酸等のビス(アゾール-2-イル)スチルベン誘導体;1,4-ビス(スチリル)ベンゼン、4,4’-ビス(スチリル)ビフェニル等のベンゼン又はビフェニルのスチリル誘導体;1,3-ジフェニル-2-ピラゾリン等のピラゾリン誘導体;フェニル環置換体としてアルキル、COO-アルキルまたはSO2-アルキルを有するビス(ベンズアゾール-2-イル)誘導体;ビス(ベンズオキサゾール-2-イル)誘導体;2-(ベンゾフラン-2-イル)ベンズイミダゾール等のビス(ベンズイミダゾール-2-イル)誘導体;7-ヒドロキシクマリン、7-(アミノ置換)クマリン、7-ジエチルアミノ-4-メチルクマリン、エスクレチン(esculetin)、β-メチルウンベリフェロン(methylumbelliferone)、3-フェニル-7-(トリアジン-2-イル-アミノ)クマリン、3-フェニル-7-アミノクマリン、3-フェニル-7-(アゾール-2-イル)クマリン、3,7-ビス(アゾリル)クマリン、3-(2-ベンゾチアゾリル)-7-(ジエチルアミノ)クマリン(クマリン6)等のクマリン誘導体;カルボスチリル(carbostyril);ナフタルイミド;アルコキシナフタルイミド;ジベンゾチオフェン-5,5’-ジオキシドの誘導体;ピレン誘導体;ピリドトリアゾール等が挙げられる。これらの蛍光増白剤としては、(株)日本化学工業所製のNIKKABRIGHT、NIKKAFLUOR等;日本化薬(株)製のKAYAPHOR、KAYALIGHT等;昭和化工(株)製のILLUMINARL;住友化学(株)製のWHITEX、BASF製TINOPAL等も挙げられる。
【0039】
ランタノイド化合物において、ランタノイドとは、原子番号57~71の元素の総称である。具体的には、ランタノイドには、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム等が含まれる。
【0040】
ランタノイドでは原子番号の増加とともに4f軌道に電子が詰まっていく。ランタノイドの各元素は、最外殻(5d軌道と6s軌道)の電子の詰まり方があまり変わらないため、性質がよく類似している。
【0041】
ランタノイドは、特定の配位子と錯体を形成すると、紫外光によって蛍光発光を示しやすい。
【0042】
このような蛍光性ランタノイド錯体としては、ケトン系溶剤やアルコール系溶剤に溶解させやすく、保存安定性及び接着性に優れつつ、可視光下では非蛍光色を呈するために高い視認性を有しつつ、紫外光下でも蛍光によって高い視認性を有する観点からサマリウム、ユウロピウム、ジスプロシウム等の錯体が好ましく、サマリウム、ユウロピウム、ジスプロシウム等のβジケトン化合物錯体がより好ましい。サマリウム、ユウロピウム、ジスプロシウム等のβジケトン化合物錯体の中でも、サマリウム、ユウロピウム、ジスプロシウム等のアセチルアセトナート錯体、2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオナト錯体、ジケトン化合物錯体等がさらに好ましい。
【0043】
上記した蛍光染料は、単独で用いることもでき、紫外光下での視認性や蛍光の強度、色味等を考慮して2種以上を組合せて用いることもできる。また、蛍光染料は、公知又は市販品を使用することができる。
【0044】
上記した蛍光染料は、蛍光顔料とは異なり、インクジェットインク中で溶解して存在している。このため、保存安定性に優れるとともに、紫外光下で発生する蛍光の強度を高めることができ、紫外光下でも高い視認性を有することができる。
【0045】
本発明のインクジェットインクにおいて、蛍光染料の含有量は、特に制限されるわけではないが、保存安定性及び接着性に優れつつ、可視光下では非蛍光色を呈するために高い視認性を有しつつ、紫外光下でも蛍光によって高い視認性を有する観点から、本発明のインクジェットインクの総量を100質量%として、0.2~8.0質量%が好ましく、0.3~5.0質量%がより好ましい。なお、蛍光染料を2種類以上使用する場合は、その合計含有量が上記範囲内となるように調整することが好ましい。
【0046】
本発明のインクジェットインクにおいて、蛍光染料の含有量は、特に制限されるわけではないが、保存安定性及び接着性に優れつつ、可視光下では非蛍光色を呈するために高い視認性を有しつつ、紫外光下でも蛍光によって高い視認性を有する観点から、色材顔料100質量部に対して、10~200質量部が好ましく、15~150質量部がより好ましい。なお、色材顔料を2種類以上使用する場合や蛍光染料を2種類以上使用する場合は、その合計含有量が上記範囲内となるように調整することが好ましい。
【0047】
(1-3)樹脂
本発明のインクジェットインクには、さらに、樹脂を含ませることもできる。使用できる樹脂としては、特に制限はなく、種々様々なものを使用することができ、使用用途に応じて適宜調整することができる。
【0048】
具体的には、樹脂としては、例えば、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂、(変性)ポリオール樹脂、ブチラール樹脂、スチレンマレイン酸樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ケトンホルムアルデヒド樹脂、セルロースエステル樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、アミン系樹脂、エポキシ樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、ウレタン樹脂等が好ましく挙げられる。2種以上の樹脂を組み合わせてもよい。
【0049】
このような樹脂は、保存安定性及び接着性に優れつつ、可視光下では非蛍光色を呈するために高い視認性を有しつつ、紫外光下でも蛍光によって高い視認性を有する観点から、例えば、重量平均分子量は、4000~100000、好ましくは6000~80000とすることができる。また、樹脂中に酸性成分が含まれる場合には、可視光下では非蛍光色を呈するために高い視認性を有しつつ、紫外光下でも蛍光によって高い視認性を有する観点から、例えば、酸価は、1~1000mg・KOH/g、好ましくは3~500mg・KOH/gとすることができる。
【0050】
上記した樹脂は、単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。また、樹脂は、公知又は市販品を使用することができる。
【0051】
本発明のインクジェットインクにおいて、樹脂の含有量は、特に制限されるわけではないが、保存安定性及び接着性に優れつつ、可視光下では非蛍光色を呈するために高い視認性を有しつつ、紫外光下でも蛍光によって高い視認性を有する観点から、本発明のインクジェットインクの総量を100質量%として、1.0~30.0質量%が好ましく、1.5~20.0質量%がより好ましい。なお、樹脂を2種類以上使用する場合は、その合計含有量が上記範囲内となるように調整することが好ましい。
【0052】
(1-4)溶剤
本発明のインクジェットインクにおいて使用できる溶剤としては、特に限定されず、樹脂や蛍光染料の溶解性、色材顔料の分散性、インクの乾燥性等を考慮して適宜決定することができる。
【0053】
具体的には、溶剤としては、例えば、水、ケトン、アルコール等が好ましく挙げられる。
【0054】
ケトンとしては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルイソプロピルケトン等が挙げられる。
【0055】
アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール等が挙げられる。
【0056】
上記した溶剤は、単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。また、溶剤は、公知又は市販品を使用することができる。
【0057】
本発明のインクジェットインクにおいて、溶剤の含有量は、溶媒量であれば特に制限されるわけではないが、保存安定性及び接着性に優れつつ、可視光下では非蛍光色を呈するために高い視認性を有しつつ、紫外光下でも蛍光によって高い視認性を有する観点から、本発明のインクジェットインクの総量を100質量%として、50.0~98.0質量%が好ましく、65.0~95.0質量%がより好ましい。なお、溶剤を2種類以上使用する場合は、その合計含有量が上記範囲内となるように調整することが好ましい。
【0058】
(1-5)その他の成分
色材染料
上記のように、色材染料は、インクジェットインク中では溶解して存在しており、蛍光染料を混合すると、可視光下での視認性も十分ではないうえに、紫外光を照射した際には、発生するはずの蛍光が色材染料に吸収されてしまい、紫外光下での視認性も低下するものであるが、本発明の効果を損なわない範囲(例えば、本発明のインクジェットインクの総量を100質量%として、0.01~0.5質量%程度)であれば、色材染料を含ませることを除外するものではない。ただし、保存安定性及び接着性に優れつつ、可視光下では非蛍光色を呈するために高い視認性を有しつつ、紫外光下でも蛍光によって高い視認性を有する観点からは、色材染料は含まないことが好ましい。
【0059】
本発明のインクジェットインク中に色材染料を含ませる場合、使用できる色材染料としては、例えば、カラーインデックス(C.I.)ナンバーで示すと、C.I.ソルベントイエロー2,14,16,19,21,34,48,56,79,88,89,93,95,98,133,137,147等;C.I.ソルベントオレンジ5,6,45,60,63等;C.I.ソルベントレッド1,3,7,8,9,18,23,24,27,49,83,100,111,122,125,130,132,135,195,202,212等;C.I.ソルベントブルー2,3,4,5,7,18,25,26,35,36,37,38,43,44,45,47,48,51,58,59,59:1,63,64,67,68,69,70,78,79,83,94,97,98,99,100,101,102,104,105,111,112,122,124,128,129,132,136,137,138,139,143等;C.I.ソルベントグリーン5,7,14,15,20,35,66,122,125,131等;C.I.ソルベントブラック1,3,6,22,27,28,29等;C.I.ソルベントヴァイオレット13等;C.I.ソルベントブラウン1,53等が挙げられる。また、塩基性の油性染料を用いることも可能である。このような塩基性の油性染料としては、例えばC.I.BasicViolet3;C.I.BasicRed1, 8等;C.I.BasicBlack2等が挙げられる。
【0060】
これらの色材染料は、単独で用いることもでき、2種以上を用いることもできる。また、色材染料は、公知又は市販品を使用することができる。
【0061】
蛍光顔料
上記のように、蛍光顔料は、インクジェットインク中では溶解せずに分散して存在しており、色材顔料を混合すると、保存安定性が十分ではないうえに、紫外光を照射した際の蛍光も十分とは言えないものであるが、本発明の効果を損なわない範囲(例えば、本発明のインクジェットインクの総量を100質量%として、0.01~0.5質量%程度)であれば、蛍光顔料を含ませることを除外するものではない。ただし、保存安定性及び接着性に優れつつ、可視光下では非蛍光色を呈するために高い視認性を有しつつ、紫外光下でも蛍光によって高い視認性を有する観点からは、蛍光顔料は含まないことが好ましい。
【0062】
本発明のインクジェットインク中に蛍光顔料を含ませる場合、使用できる蛍光顔料としては、例えば、無機蛍光顔料として、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム等のアルミン酸塩等も挙げられ、有機蛍光顔料として、ペリレンレッド、ペリレンスカーレット等のペリレン顔料;キノフタロンイエロー、ジケトピロロピロール等のその他の顔料等が挙げられる。
【0063】
上記した蛍光顔料をカラーインデックス(C.I.)ナンバーで示すと、C.I.ピグメントイエロー138;C.I.ピグメントオレンジ71,73等;C.I.ピグメントレッド254,255,264等;C.I.ピグメントバイオレット29等が挙げられる。
【0064】
導電剤
本発明のインクジェットインクは、インクジェットプリンタ、特に荷電量制御式の連続式インクジェットプリンタ等に好適に用いることができる。この場合、プリンタから吐出されたインク滴の電界による偏向量を調整しやすくするため、通常、導電剤を用いることができる。
【0065】
導電剤としては、例えば、チオシアン酸アンモニウム、チオシアン酸カリウム、チオシアン酸ナトリウム、硝酸リチウム、テトラブチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラフェニルホウ素4級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0066】
これらの導電剤は、単独で用いることもでき、2種以上を用いることもできる。また、導電剤は、公知又は市販品を使用することができる。
【0067】
本発明のインクジェットインクにおいて、導電剤を使用する場合、導電剤の含有量は、特に制限されるわけではないが、保存安定性及び接着性に優れつつ、可視光下では非蛍光色を呈するために高い視認性を有しつつ、紫外光下でも蛍光によって高い視認性を有する観点から、本発明のインクジェットインクの総量を100質量%として、0.2~3.0質量%が好ましく、0.3~2.5質量%がより好ましい。なお、導電剤を2種類以上使用する場合は、その合計含有量が上記範囲内となるように調整することが好ましい。
【0068】
顔料誘導体又は顔料分散剤
本発明のインクジェットインクは、特に色材顔料の分散を目的として、顔料誘導体や顔料分散剤を使用することもできる。
【0069】
顔料誘導体としては、具体的には、例えば、ソルスパース5000S(ルーブリゾール社製)等が挙げられる。
【0070】
顔料分散剤としては、具体的には、例えば、水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、高分子量不飽和酸エステル、高分子共重合物、変性ポリウレタン、変性ポリ(メタ)アクリレート、ポリエーテルエステル型アニオン系活性剤、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物塩、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエステルポリアミン、ステアリルアミンアセテート等が挙げられる。
【0071】
エステル構造又は変性ポリ(メタ)アクリレート構造を有する顔料分散剤の具体例としては、例えば、ソルスパース9000、ソルスパース13940、ソルスパース17000、ソルスパース18000、ソルスパース28000、ソルスパース32000、ソルスパースJ-180、ソルスパースJ-200(以上、ルーブリゾール社製);DA-703-50、DA-7300、DA234(以上、楠本化成(株)製);DISPERBYK-2022、DISPERBYK-2025、DISPERBYK-2050、DISPERBYK-2096、BYKJET-9150、BYKJET-9051、BYKJET-9052(以上、BykCemie社製)等が挙げられる。
【0072】
これらの顔料誘導体及び顔料分散剤は、単独で用いることもでき、2種以上を用いることもできる。
【0073】
本発明のインクジェットインクにおいて、顔料誘導体及び顔料分散剤を使用する場合、顔料誘導体及び顔料分散剤の含有量は、特に制限されるわけではないが、保存安定性及び接着性に優れつつ、可視光下では非蛍光色を呈するために高い視認性を有しつつ、紫外光下でも蛍光によって高い視認性を有する観点から、本発明のインクジェットインクの総量を100質量%として、0.1~5.0質量%が好ましく、0.2~5.0質量%がより好ましい。なお、顔料誘導体及び顔料分散剤を2種類以上使用する場合は、その合計含有量が上記範囲内となるように調整することが好ましい。
【0074】
その他の添加剤
本発明のインクジェットインクには、本発明の効果を害しない範囲において、上記成分以外にも、種々の目的で種々の成分を含有させることができる。例えば、表面調整剤、界面活性剤、安定剤等、インクジェットインクに通常用いられている成分を通常使用される含有量の範囲で含有させることができる。
【0075】
(1-6)インクジェットインク
上記のような各成分を有するインクジェットインクの製造方法は、特に制限されない。例えば、各成分を同時に添加することもできるし、各成分を所定の順序で順次添加することも可能である。
【0076】
このようにして得られる本発明のインクジェットインクは、可視光下においては非蛍光色(黒色、赤色、青色、黄色等の濃色の他、白色等の視認性の有する色)を呈し、且つ、紫外光下においては蛍光を発する非蛍光色インクである。
【0077】
上記した本発明のインクジェットインクは、インクジェット記録装置でインクジェットインクを使用する前に、インクジェットインクの保管、輸送等に用いるために、本発明のインクジェットインクを収容体に収容してインクジェットインク収容体とし、インクジェットインクを使用する際にはインクジェットインクを記録装置に供給することができる。
【0078】
インクジェットインク収容体の形状としては、特に制限されず、例えば、パック、ボトル、タンク、ビン、缶等の任意の形状とすることができる。
【0079】
本発明のインクジェットインクは、種々の被印刷物への印刷に適用することができる。
【0080】
被印刷物としては、特に限定するわけではないが、例えば、紙、金属、ガラス、プラスチックスや、これらの材料の表面に塗装がなされた塗工物等が挙げられる。
【0081】
本発明のインクジェットインクは、上記のとおり、可視光下においては非蛍光色(黒色、赤色、青色、黄色等の濃色の他、白色等の視認性の有する色)を呈し、且つ、紫外光下においては蛍光を発する非蛍光色インクである。このため、本発明のインクジェットインクは、可視光下においても高い視認性を有するうえに、被印刷物の色彩がインクの色彩と近い場合や、被印刷物が透明若しくは半透明の容器であり、内容物が振動等によって泡立つ場合(化粧品ボトル等)や、下地にデザインを有する非蛍光色の容器である場合等のように、可視光下において視認性の低い場合であっても、紫外光下において蛍光を発し、この蛍光は気泡等と混同されないために、紫外光下において高い視認性を有する。このため、本発明のインクジェットインクは、特に、本発明のインクジェットインクと近似している色彩の被印刷物や下地にデザインを有する非蛍光色の容器等の他、気泡の存在により可視光下での視認性が低下していた透明又は半透明の容器に直接印刷される場合に特に有効である。
【0082】
このような被印刷物に対し、その表面に、インクジェットプリンタにより本発明のインクジェットインクのインク滴を噴きつけて、例えば、文字やバーコード、データマトリックスコード等の種々のコードの印字が施された印刷物を得ることができる。上記のとおり、本発明のインクジェットインクと近似している色彩の被印刷物や下地にデザインを有する非蛍光色の容器等の他、気泡の存在により可視光下での視認性が低下していた透明又は半透明の容器に直接印刷される場合に特に有効であるため、得られる印刷物も、本発明のインクジェットインクと近似している色彩の被印刷物に印字したものや下地にデザインを有する非蛍光色の容器等の他、気泡の存在により可視光下での視認性が低下していた透明又は半透明の容器に印字したものが、印刷物として特に有効である。
【0083】
上記した本発明のインクジェットインクを使用して、可視光下において前記インクジェットインクによる印字を視認できる場合は可視光を照射し、可視光下において前記インクジェットインクによる印字を視認できない場合は紫外光を照射することにより、印字後の文字検査を行うことが可能であり、被印刷物が透明又は半透明の容器であり、内容物が振動等によって泡立つ場合には、印字した情報と気泡とをいずれも認識してしまうために、機械での検査がほとんど不可能であるため、人手によって文字検査を行う必要であったことと比較して、機械による文字検査が可能であるため、経済的にも優れている。
【実施例0084】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらのみに限定されないことは言うまでもない。
【0085】
なお、実施例において、各種試薬は、以下のとおり市販品を使用した。
【0086】
色材顔料
カーボンブラック:BASF製のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)
フタロシアニンブルー:BASF製のフタロシアニンブルー(C.I.ピグメントブルー15:3)
イソインドリノンイエロー:Clariant Plastics and Coatings製のイソインドリノンイエロー(C.I.ピグメントイエロー139)。
【0087】
色材染料
ソルベントブラック29:オリエント化学工業(株)製のVALIFAST BLACK3810
ソルベントレッド8:オリエント化学工業(株)製のVALIFAST RED3310。
【0088】
蛍光染料
クマリン蛍光増白剤:(株)日本化学工業所製のNIKKAFLUOR MCT
ベンズオキサゾール蛍光増白剤:(株)日本化学工業所製のNIKKAFLUOR EFS
ジケトン化合物金属錯体:オリエント化学工業(株)製のOPTRON EXLN。
【0089】
蛍光顔料
アルミン酸塩蛍光体:富士フイルム和光純薬(株)製のアルミン酸塩蛍光体
キノフタロン顔料:富士色素工業(株)製のキノフタロン顔料(C.I.ピグメントイエロー138)。
【0090】
樹脂
塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂:日清化学工業(株)製のソルバインTAO(重量平均分子量46000)
ブチラール樹脂:積水化学工業(株)製のエスレックBL-1(重量平均分子量19000)
スチレンマレイン酸樹脂:荒川化学工業(株)製のアラスター700
ロジン変性フェノール樹脂:荒川化学工業(株)製のタマノル803L
ケトンホルムアルデヒド樹脂:エボニック社製のテゴバリプラスAP(Tg50℃、5mg KOH/g)
変性ポリオール樹脂:エボニック社製のテゴバリプラスSK(Tg90℃、325mg KOH/g)
セルロースエステル:イーストマンケミカル社製のCAB(重量平均分子量40000)。
【0091】
導電剤
テトラブチルアンモニウムヘキサフルオロフォスフェート:東京化成工業(株)製のテトラブチルアンモニウムヘキサフルオロフォスフェート
チオシアン酸アンモニウム:SIGMA ALDRICH製のチオシアン酸アンモニウム。
【0092】
分散剤
ソルスパース24000:ルーブリゾール社製
ソルスパース5000:ルーブリゾール社製。
【0093】
実施例1
表1に示すように、メチルイソプロピルケトン(MIPK;90.4質量部)に樹脂として塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂(2.2質量部)及びセルロースエステル(1.6質量部)を加えて溶解させ、分散剤としてソルスパース24000(1.3質量部)、色材顔料としてカーボンブラック(2.5質量部)を加えて混合し、横型サンドミル(ウィリー・エ・バッコーフェン社製のダイノーミルマルチラボ)にて周速12m/secで2時間分散処理した。得られた分散体に導電剤としてテトラブチルアンモニウムヘキサフルオロフォスフェート(1.0質量部)、蛍光染料としてクマリン蛍光増白剤(1.0質量部)を加えて溶解し、目開き1μmのフィルターで濾過し、実施例1のインクジェットインクを調製した。
【0094】
実施例2~9及び比較例1~6
表1に示すように、色材顔料、蛍光染料、樹脂、溶剤、導電剤及び分散剤の種類及び含有量を種々調整したこと以外は実施例1と同様に、実施例2~9及び比較例1~6のインクジェットインクを調製した。
【0095】
試験例1:可視光下での視認性
透明の化粧品ボトルに対して、実施例1~9及び比較例1~6で得られたインクジェットインクを用いてインクジェット印刷を行った。インクジェット印刷には、紀州技研工業(株)製の連続インクジェットプリンタ(型式CCS3000)を用いた。そのうえで、印字直後の印字部分を蛍光灯下、熟練者による目視により確認し、印字部分の濃度を
◎:印字が見え、背景が透けて見えない
○:印字が見え、背景が薄っすらと透けて見える
△:印字が見え、背景がはっきりと透けて見える
×:印字が見えない
として評価した。
【0096】
試験例2:紫外光下での視認性
透明の化粧品ボトルに対して、実施例1~9及び比較例1~6で得られたインクジェットインクを用いてインクジェット印刷を行った。インクジェット印刷には、紀州技研工業(株)製の連続インクジェットプリンタ(型式CCS3000)を用いた。そのうえで、印字直後の印字部分を波長365nmの紫外線を照射強度12000μWで照射しながら、その蛍光輝度を
◎:蛍光を強く示し、明瞭に見える
○:蛍光を示し、はっきりと見える
△:蛍光を示し、ぼんやりと見える
×:蛍光を示さない
として評価した。
【0097】
試験例3:保存安定性
実施例1~9及び比較例1~6で得られたインクジェットインクを収容体に入れ、密閉状態にして45℃において、初期の粘度と1ヶ月保存した後の粘度をそれぞれ E型粘度計(東機産業(株)製)により測定し、粘度増加率を以下の式:
粘度増加率(%)=(1ヶ月保存後の粘度)/(初期粘度)
により算出し、
さらに、粒度分布計(マイクロトラック・ベル(株)製のナノトラックUPA-EX)により平均粒径を測定し、
◎:粘度増加率5%以内かつ平均粒径増大なし
○:粘度増加率10%以内かつ平均粒径増大なし
△:粘度増加率10%以内かつ平均粒径増大あり
×:顔料沈降あり
として評価した。
【0098】
試験例4:接着性
透明の化粧品ボトルに対して、実施例1~9及び比較例1~6で得られたインクジェットインクを用いてインクジェット印刷を行った。インクジェット印刷には、紀州技研工業(株)製の連続インクジェットプリンタ(型式CCS3000)を用いた。そのうえで、印字部分にセロハンテープを貼り付けた後、セロハンテープを剥がして、印字部分の接着性を確認し、
◎:剥離なし
○:50%未満剥離あり
△:50%以上剥離あり
×:全て剥離
として評価した。
【0099】
試験例1~4の結果を表1に示す。
【0100】