(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111877
(43)【公開日】2024-08-20
(54)【発明の名称】ウィルキンソン分配器
(51)【国際特許分類】
H01P 5/19 20060101AFI20240813BHJP
H03H 7/48 20060101ALI20240813BHJP
【FI】
H01P5/19 B
H03H7/48 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023016550
(22)【出願日】2023-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】000227892
【氏名又は名称】日本アンテナ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102635
【弁理士】
【氏名又は名称】浅見 保男
(74)【代理人】
【識別番号】110002767
【氏名又は名称】弁理士法人ひのき国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 和尭
(72)【発明者】
【氏名】曹 奇峰
(57)【要約】
【課題】 使用する周波数帯域において規格を満足する端子間結合損失を得る。
【解決手段】 ウィルキンソン分配器10の入力端子INの後にイコライザー回路部EQINを接続すると共に、出力端子OUT1,OUT2,OUT3の前にイコライザー回路部EQOUT1,EQOUT2,EQOUT3を接続する。イコライザー回路は、使用周波数帯域の高域より低域の損失が大きくされている周波数特性とされている。これにより、使用する周波数帯域において18dB以上の端子間結合損失が得られる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力端子と、
該入力端子に接続されているイコライザー回路からなる第1のイコライザー部と、
該第1のイコライザー部の出力側に接続されている分布定数型のウィルキンソン回路からなる第1のウィルキンソン回路部と、
該第1のウィルキンソン回路部の出力側の一端に接続されている分布定数型のウィルキンソン回路からなる第2のウィルキンソン回路部と、
前記第1のウィルキンソン回路部の出力側の他端に接続されている分布定数型のウィルキンソン回路からなる第3のウィルキンソン回路部と、
前記第2のウィルキンソン回路部の出力側に接続されている複数のイコライザー回路からなる第2のイコライザー部と、
前記第3のウィルキンソン回路部の出力側に接続されている複数のイコライザー回路からなる第3のイコライザー部と、
前記第2のイコライザー部および前記第3のイコライザー部の出力側にそれぞれ接続されている複数の出力端子と、
を備え、
前記第1のイコライザー部と前記第2のイコライザー部と前記第3とのイコライザー部とにおけるイコライザー回路は、使用周波数帯域の高域より低域の損失が大きくされている周波数特性とされていることを特徴とするウィルキンソン分配器。
【請求項2】
前記第1のウィルキンソン回路部と前記第2のウィルキンソン回路部と前記第3のウィルキンソン回路部とは少なくとも2段に縦続接続されたウィルキンソン回路から構成されていることを特徴とする請求項1に記載のウィルキンソン分配器。
【請求項3】
前記第2のイコライザー部と前記第3のイコライザー部とは、前記イコライザー回路が2段縦続接続されて構成されていることを特徴とする請求項1に記載のウィルキンソン分配器。
【請求項4】
前記第2のイコライザー部と前記第3のイコライザー部とは、前記イコライザー回路が2段縦続接続されている間とアースとの間に減衰器が接続されていることを特徴とする請求項3に記載のウィルキンソン分配器。
【請求項5】
前記第2のイコライザー部と前記第3のイコライザー部とは、前記イコライザー回路が2段縦続接続されている間とアースとの間に減衰器とインダクタとの直列回路が接続されていることを特徴とする請求項3に記載のウィルキンソン分配器。
【請求項6】
前記第1のウィルキンソン回路部と前記第2のウィルキンソン回路部と前記第3のウィルキンソン回路部とが、基板の一面上に形成されたストリップ線路の線路パターンから構成され、
前記第1のイコライザー部における前記イコライザー回路が、前記入力端子と前記第1のウィルキンソン回路部とを接続する前記基板の一面上に形成された入力側パターンに設けられ、
前記第2のイコライザー部および前記第3のイコライザー部における前記イコライザー回路が、前記第2のウィルキンソン回路部と前記第3のウィルキンソン回路部とのそれぞれの出力側と前記複数の出力端子とをそれぞれ接続する前記基板の一面上に形成された複数の出力側パターンのそれぞれに設けられていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載のウィルキンソン分配器。
【請求項7】
前記第1のイコライザー部における前記イコライザー回路は、抵抗と、該抵抗を挟むように配置された2つのキャパシタとが並列に前記入力側パターンに接続されており、
前記第2のイコライザー部および前記第3のイコライザー部とにおける前記イコライザー回路は、キャパシタと抵抗とが並列に前記複数の出力側パターンのそれぞれに接続されていることを特徴とする請求項6に記載のウィルキンソン分配器。
【請求項8】
前記第1のイコライザー部における前記イコライザー回路は、抵抗と、該抵抗を挟むように配置された2つのキャパシタとが並列に前記入力側パターンに接続されており、
前記第2のイコライザー部および前記第3のイコライザー部におけるイコライザー回路は、抵抗と、該抵抗を挟むように配置された2つのキャパシタとが前記複数の出力側パターンのそれぞれに接続されていることを特徴とする請求項6に記載のウィルキンソン分配器。
【請求項9】
前記基板が導電性のケースに収納されており、同軸端子とされた前記入力端子が前記ケースから突出するように設けられていると共に、同軸端子とされた前記複数の出力端子が前記ケースから突出するように設けられ、前記基板の他面とアースとして機能する前記ケースの内面との間に空気層が設けられており、前記アースは前記線路パターンと前記入力側パターンと前記出力側パターンに対するグランドとされていることを特徴とする請求項6に記載のウィルキンソン分配器。
【請求項10】
前記導電性のケースがU字状に折り曲げられて形成されて、前記基板は前記ケースの内部のU字状の溝内に折り曲げられて収納されており、前記入力端子と前記複数の出力端子とが、前記ケースの前面に並んで配置されていることを特徴とする請求項9に記載のウィルキンソン分配器。
【請求項11】
前記ケースの素材とは別素材とされた前記入力端子および前記出力端子が、前記ケースから突出するように前記ケースに固着されていることを特徴とする請求項9に記載のウィルキンソン分配器。
【請求項12】
前記基板の一面上に形成された前記第1のウィルキンソン回路部の前記線路パターンと、前記第2のウィルキンソン回路部の前記線路パターンおよび前記第3のウィルキンソン回路部の前記線路パターンとを接続する接続パターンが、折り返されて形成されており、前記ケースの一側面に、前記入力端子を中央として両側に前記複数の出力端子が配置されて固着されていることを特徴とする請求項9に記載のウィルキンソン分配器。
【請求項13】
多段に接続される際に、最終段の端末用分配器が請求項4または5に記載のウィルキンソン分配器とされ、初段から前記端末用分配器の前段までの中間用分配器が請求項3に記載のウィルキンソン分配器とされていることを特徴とするウィルキンソン分配器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広帯域のウィルキンソン分配器に関する。
【背景技術】
【0002】
数十ないし数百の世帯を住戸とする集合住宅等に設置される従来のテレビ共聴システムにおいては、地上デジタル放送やBS/CS放送の放送信号からなる共聴信号を分配器で分配して各住戸に供給している。このような従来のテレビ共聴システムにおいては、分配器として高周波トランスを用いたコア巻き分配器と云われる分配器を用いていた。
日本における衛星デジタル放送の歴史は、BSアナログ放送開始、BSデジタル放送開始、110°CS放送開始と続き、それに対するBS/CS中間周波数信号(BS/CS-IF信号)を伝送する周波数帯も順次更新され、最高伝送周波数が1335MHz→1550MHz→2150MHz→2602MHzと拡張されてきた。そして、2018年12月1日から高度広帯域衛星デジタル放送(ISDB-S3,4K8K放送,BS/CS左旋放送)の本放送が開始されている。高度広帯域衛星デジタル放送では、2224MHzないし3224MHzの周波数帯とされるBS/CS左旋IF信号がさらに追加されている。このため、従来のテレビ共聴システムにおいて、高度広帯域衛星デジタル放送のBS/CS左旋IF信号を伝送するには、伝送路とされる同軸ケーブル、増幅器、分岐器・分配器、受信者端子、直列ユニット等の受信設備の全てを2224MHz~3224MHzの周波数帯を伝送可能な機器とする必要がある。
【0003】
ここで、高周波トランスを用いた従来の分配器が特許文献1に開示されており、その回路図を
図46に示す。
図46に示す従来の分配器CSは分配数2の2分配器であり、フェライトコアを用いた高周波トランスを使用して広帯域で一定のインピーダンスにしている。すなわち、従来の分配器CSは、フェライトコアに絶縁被覆電線が巻かれたトランスL1001,L1002を備えており、トランスL1001はインピーダンス整合トランスとして作用し、入力端子INからトランスL1001に供給された信号は、トランスL1001の中途のタップから出力されて信号分配用のトランスL1002のセンタータップに供給される。トランスL1002の両端からは2分配された信号がそれぞれ出力され、一方の分配信号は第1出力端子OUT1から出力され、他方の分配信号は第2出力端子OUT2から出力される。トランスL1001のタップとトランスL1002のセンタータップとを接続するラインとアース間に接続されたコンデンサCはインピーダンス整合用として、第1出力端子OUT1と第2出力端子OUT2との間に接続された抵抗Rは第1出力端子OUT1と第2出力端子OUT2との間のアイソレーション用として設けられている。従来の分配器CSは、磁性体であるフェライトコアの特性を生かして広帯域(特に10~770MHz)で一定の値でインピーダンス変換することができる。また、トランスL1002は広帯域で第1出力端子OUT1と第2出力端子OUT2とのアイソレーションを大きく確保することができる。これにより、テレビ放送信号がアナログ放送とされている場合は、ゴースト障害などの影響を軽減することができる。
なお、従来の分配器CSは高帯域(2150M~3224MHz)では巻き線の浮遊容量の影響により特性インピーダンスが変わってしまい、入出力端子の特性インピーダンスが不整合になってしまう。特に周波数が高くなるにつれて影響が大きくなるため、従来の分配器CSの分配損失は、周波数に対して非線形で急峻な右肩下がりの特性となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-85640号公報
【特許文献2】特許第3015348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ウィルキンソン回路は、3端子型高周波2分配器として知られており、ウィルキンソン回路を利用した広帯域化されたウィルキンソン分配器における分配損失の周波数特性として、従来の分配器CSより平坦化された周波数特性が得られるようになる。そこで、特許文献2に開示されている分布定数型のウィルキンソン回路2000の回路図を
図47に示す。
図47に示すように、ウィルキンソン回路2000は、入力端子INと第1出力端子OUT1との間に接続された分布定数線路W1と、入力端子INと第2出力端子OUT2との間に接続された分布定数線路W2と、第1出力端子OUT1と第2出力端子OUT2との間に接続されたアイソレーション用の抵抗Rとから構成されている。このウィルキンソン回路2000の使用中心周波数をFoとすると、分布定数線路W1と分布定数線路W2の電気長は使用中心周波数Foの1/4波長としているから、使用中心周波数Foにおける位相遅延量θoは90°となる。また、ウィルキンソン回路2000に接続される入出力インピーダンスをZoとすると、分配比を1:1の均等分配とした場合、分布定数線路W1と分布定数線路W2の特性インピーダンスをZsとすると特性インピーダンスZsは√2×Zoになる。分布定数線路W1と分布定数線路W2は、いわゆるQマッチング回路として作用しているので、出力端子側のインピーダンスZoを特性インピーダンスZsである分布定数線路W1あるいは分布定数線路W2を介して見た入力端子IN側のインピーダンスをZxとすると、Qマッチング回路の動作原理から、
Zx=Zs
2 /Zo=( √2×Zo)
2/Zo=2Zo
となる。従って、入力端子INから見た合成インピーダンスは、この2ZoのインピーダンスZxが並列に接続されているので1/2のインピーダンスZoとなって入力端子INのインピーダンスZoと整合する。また、ウィルキンソン回路2000におけるアイソレーション用の抵抗Rの値は、均等分配のウィルキンソン回路において最大の出力端子間アイソレーションが得られる2Zoとされている。
このように、ウィルキンソン回路2000は、分布定数線路W1および分布定数線路W2からなる1/4波長インピーダンス変成器とアイソレーション用の抵抗Rとから構成されている。
【0006】
ところで、テレビ共聴システムなどに使用される分配器等の部品に関する電気的特性に関する規格がある。一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITAという)は、ホーム受信用に使用する超高精細度テレビジョン衛星放送の受信アンテナや受信システム機器に対し「スーパーハイビジョン受信マーク(SHマーク)」登録制度を設けており、SH規格を満足する製品にSHマークの表示を行うことができる。また、一般財団法人ベターリビングが優良住宅部品の認定を行っており、BL規格を満足するテレビ共同受信機器などが、優良住宅部品としてBLマークを表示することができる。
分配器におけるJEITA SH規格では、端子間結合損失(出力端子間アイソレーション)は、470~770MHzにおいて18dB以上、1032~2150MHzにおいて15dB以上、2150~3224MHzにおいて13dB以上と規定され、反射損失が、470~770MHzにおいて10.9dB以上、1032~2150MHzにおいて9.6dB以上、2150~3224MHzにおいて7.4dB以上と規定されている。
また、BL規格における分配器の端子間結合損失(出力端子間アイソレーション)は、300~770MHzにおいて18dB以上、1000~3224MHzにおいて15dB以上と規定され、反射損失が、300~770MHzにおいて12.8dB以上、1000~1489MHzにおいて10.9dB以上、2150~3224MHzにおいて9.6dB以上と規定されている。
【0007】
ウィルキンソン回路を利用するウィルキンソン分配器をテレビ共聴システムに使用する場合は、少なくとも地上デジタル放送とBS/CS放送の中間周波数信号との周波数帯域である470MHz~3224MHzの周波数帯域を使用周波数帯域と云うことができる。しかしながら、ウィルキンソン分配器は、従来の分配器CSと同等の端子間結合損失が得にくいことから、広帯域とされた使用周波数帯域において良好な端子間結合損失の周波数特性を得ることが困難になるという問題点があった。
そこで、本発明は、使用周波数帯域において良好な端子間結合損失の周波数特性を得ることができるウィルキンソン分配器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のウィルキンソン分配器は、入力端子と、該入力端子に接続されているイコライザー回路からなる第1のイコライザー部と、該第1のイコライザー部の出力側に接続されている分布定数型のウィルキンソン回路からなる第1のウィルキンソン回路部と、該第1のウィルキンソン回路部の出力側の一端に接続されている分布定数型のウィルキンソン回路からなる第2のウィルキンソン回路部と、前記第1のウィルキンソン回路部の出力側の他端に接続されている分布定数型のウィルキンソン回路からなる第3のウィルキンソン回路部と、前記第2のウィルキンソン回路部の出力側に接続されている複数のイコライザー回路からなる第2のイコライザー部と、前記第3のウィルキンソン回路部の出力側に接続されている複数のイコライザー回路からなる第3のイコライザー部と、前記第2のイコライザー部および前記第3のイコライザー部の出力側にそれぞれ接続されている複数の出力端子とを備え、前記第1のイコライザー部と前記第2のイコライザー部と前記第3とのイコライザー部とにおけるイコライザー回路は、使用周波数帯域の高域より低域の損失が大きくされている周波数特性とされていることを主要な特徴としている。
【0009】
上記本発明のウィルキンソン分配器において、前記第1のウィルキンソン回路部と前記第2のウィルキンソン回路部と前記第3のウィルキンソン回路部とは少なくとも2段に縦続接続されたウィルキンソン回路から構成されている。
また、上記本発明のウィルキンソン分配器において、前記第2のイコライザー部と前記第3のイコライザー部とは、前記イコライザー回路が2段縦続接続されて構成されている。
さらに、上記本発明のウィルキンソン分配器において、前記第2のイコライザー部と前記第3のイコライザー部とは、前記イコライザー回路が2段縦続接続されている間とアースとの間に減衰器が接続されている。
さらにまた、上記本発明のウィルキンソン分配器において、前記第2のイコライザー部と前記第3のイコライザー部とは、前記イコライザー回路が2段縦続接続されている間とアースとの間に減衰器とインダクタとの直列回路が接続されている。
さらにまた、上記本発明のウィルキンソン分配器において、前記第1のウィルキンソン回路部と前記第2のウィルキンソン回路部と前記第3のウィルキンソン回路部とが、基板の一面上に形成されたストリップ線路の線路パターンから構成され、前記第1のイコライザー部における前記イコライザー回路が、前記入力端子と前記第1のウィルキンソン回路部とを接続する前記基板の一面上に形成された入力側パターンに設けられ、前記第2のイコライザー部および前記第3のイコライザー部における前記イコライザー回路が、前記第2のウィルキンソン回路部と前記第3のウィルキンソン回路部とのそれぞれの出力側と前記複数の出力端子とをそれぞれ接続する前記基板の一面上に形成された複数の出力側パターンのそれぞれに設けられている。
さらにまた、上記本発明のウィルキンソン分配器において、前記第1のイコライザー部における前記イコライザー回路は、抵抗と、該抵抗を挟むように配置された2つのキャパシタとが並列に前記入力側パターンに接続されており、前記第2のイコライザー部および前記第3のイコライザー部とにおける前記イコライザー回路は、キャパシタと抵抗とが並列に前記複数の出力側パターンのそれぞれに接続されている。
さらにまた、上記本発明のウィルキンソン分配器において、前記第1のイコライザー部における前記イコライザー回路は、抵抗と、該抵抗を挟むように配置された2つのキャパシタとが並列に前記入力側パターンに接続されており、前記第2のイコライザー部および前記第3のイコライザー部におけるイコライザー回路は、抵抗と、該抵抗を挟むように配置された2つのキャパシタとが前記複数の出力側パターンのそれぞれに接続されている。
【0010】
さらにまた、上記本発明のウィルキンソン分配器において、前記基板が導電性のケースに収納されており、同軸端子とされた前記入力端子が前記ケースから突出するように設けられていると共に、同軸端子とされた前記複数の出力端子が前記ケースから突出するように設けられ、前記基板の他面とアースとして機能する前記ケースの内面との間に空気層が設けられており、前記アースは前記線路パターンと前記入力側パターンと前記出力側パターンに対するグランドとされている。
さらにまた、上記本発明のウィルキンソン分配器において、前記導電性のケースがU字状に折り曲げられて形成されて、前記基板は前記ケースの内部のU字状の溝内に折り曲げられて収納されており、前記入力端子と前記複数の出力端子とが、前記ケースの前面に並んで配置されている。
さらにまた、上記本発明のウィルキンソン分配器において、前記ケースの素材とは別素材とされた前記入力端子および前記出力端子が、前記ケースから突出するように前記ケースに固着されている。
さらにまた、上記本発明のウィルキンソン分配器において、前記基板の一面上に形成された前記第1のウィルキンソン回路部の前記線路パターンと、前記第2のウィルキンソン回路部の前記線路パターンおよび前記第3のウィルキンソン回路部の前記線路パターンとを接続する接続パターンが、折り返されて形成されており、前記ケースの一側面に、前記入力端子を中央として両側に前記複数の出力端子が配置されて固着されている。
さらにまた、上記本発明のウィルキンソン分配器において、多段に接続される際に、最終段の端末用分配器が請求項4または5に記載のウィルキンソン分配器とされ、初段から前記端末用分配器の前段までの中間用分配器が請求項3に記載のウィルキンソン分配器とされている。
【発明の効果】
【0011】
本発明のウィルキンソン分配器は、入力側と出力側とにイコライザー回路が接続されていることから、使用周波数帯域において良好な端子間結合損失の周波数特性を得ることができ、JEITA SH規格およびBL規格を満足するようになる。
また、ウィルキンソン分配器では出力端子が開放されると分配損失の周波数特性にリップルが生じるようになるが、本発明のウィルキンソン分配器では、2段縦続接続されているイコライザー回路の間とアースとの間に減衰器を接続したので、出力端子が開放された際に生じるリップルを軽減することができる。さらに、本発明のウィルキンソン分配器において、2段縦続接続されているイコライザー回路の間とアースとの間に減衰器とインダクタとの直列回路を接続すると、出力端子が開放された際に生じるリップルを軽減すると共に、分配損失の周波数特性を改善することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1実施例のウィルキンソン分配器の構成を示す回路図である。
【
図2】本発明の第1実施例のウィルキンソン分配器の分配損失の周波数特性を従来の分配器と対比して示す示すグラフである。
【
図3】本発明の第1実施例のウィルキンソン分配器の端子間結合損失の周波数特性を従来の分配器と対比して示す示すグラフである。
【
図4】本発明の第1実施例のウィルキンソン分配器の反射損失(入力)の周波数特性を従来の分配器と対比して示す示すグラフである。
【
図5】本発明の第1実施例のウィルキンソン分配器の反射損失(出力)の周波数特性を従来の分配器と対比して示す示すグラフである。
【
図6】本発明の第1実施例のウィルキンソン分配器における出力側の他のイコライザー回路の構成を示す回路図である。
【
図7】本発明の第1実施例のウィルキンソン分配器の分配損失の他の周波数特性を従来の分配器と対比して示す示すグラフである。
【
図8】本発明の第1実施例のウィルキンソン分配器の端子間結合損失の他の周波数特性を従来の分配器と対比して示す示すグラフである。
【
図9】本発明の第1実施例のウィルキンソン分配器の反射損失(入力)の他の周波数特性を従来の分配器と対比して示す示すグラフである。
【
図10】本発明の第1実施例のウィルキンソン分配器の反射損失(出力)の他の周波数特性を従来の分配器と対比して示す示すグラフである。
【
図11】本発明の第2実施例のウィルキンソン分配器の構成を示す回路図である。
【
図12】本発明の第2実施例のウィルキンソン分配器の分配損失の周波数特性を従来の分配器と対比して示す示すグラフである。
【
図13】本発明の第2実施例のウィルキンソン分配器の端子間結合損失の周波数特性を従来の分配器と対比して示す示すグラフである。
【
図14】本発明の第2実施例のウィルキンソン分配器の反射損失(入力)の周波数特性を従来の分配器と対比して示す示すグラフである。
【
図15】本発明の第2実施例のウィルキンソン分配器の反射損失(出力)の周波数特性を従来の分配器と対比して示す示すグラフである。
【
図16】本発明の第2実施例のウィルキンソン分配器における出力側の他のイコライザー回路の構成を示す回路図である。
【
図17】本発明の第2実施例のウィルキンソン分配器の分配損失の他の周波数特性を従来の分配器と対比して示す示すグラフである。
【
図18】本発明の第2実施例のウィルキンソン分配器の端子間結合損失の他の周波数特性を従来の分配器と対比して示す示すグラフである。
【
図19】本発明の第2実施例のウィルキンソン分配器の反射損失(入力)の他の周波数特性を従来の分配器と対比して示す示すグラフである。
【
図20】本発明の第2実施例のウィルキンソン分配器の反射損失(出力)の他の周波数特性を従来の分配器と対比して示す示すグラフである。
【
図21】本発明の第1実施例のウィルキンソン分配器の回路パターンを示す図である。
【
図22】本発明の第2実施例のウィルキンソン分配器の回路パターンを示す図である。
【
図23】本発明の実施例のウィルキンソン分配器におけるイコライザー回路、出力側の他のイコライザー回路の構成を示す回路図である。
【
図24】本発明の第2実施例のウィルキンソン分配器の分配損失の周波数特性をイコライザー回路が無い場合と出力側のイコライザー回路がある場合と出力側および入力側のイコライザー回路がある場合とを対比して示す示すグラフである。
【
図25】本発明の第2実施例のウィルキンソン分配器の端子間結合損失の周波数特性をイコライザー回路が無い場合と出力側のイコライザー回路がある場合と出力側および入力側のイコライザー回路がある場合とを対比して示す示すグラフである。
【
図26】本発明の第2実施例のウィルキンソン分配器の反射損失(入力)の周波数特性をイコライザー回路が無い場合と出力側のイコライザー回路がある場合と出力側および入力側のイコライザー回路がある場合とを対比して示す示すグラフである。
【
図27】本発明の第2実施例のウィルキンソン分配器を使用する態様の構成を示す図である。
【
図28】本発明の第2実施例のウィルキンソン分配器を
図27に示すように使用した際の分配損失の周波数特性を従来の分配器と対比して示すグラフである。
【
図29】本発明の第2実施例のウィルキンソン分配器を使用する他の態様の構成を示す図である。
【
図30】本発明の第2実施例のウィルキンソン分配器において出力端子を開放した際の分配損失の周波数特性を示すグラフである。
【
図31】本発明の第2実施例のウィルキンソン分配器において出力端子を開放した際の反射損失(出力)の周波数特性を示すグラフである。
【
図32】本発明の第2実施例のウィルキンソン分配器において出力端子を開放した際に、出力側のイコライザー回路に減衰器を設けた場合の分配損失の周波数特性を示すグラフである。
【
図33】本発明の第2実施例のウィルキンソン分配器において出力端子を開放した際に、出力側のイコライザー回路に減衰器を設けた場合の反射損失(出力)の周波数特性を示すグラフである。
【
図34】本発明の第2実施例のウィルキンソン分配器を使用するさらに他の態様の構成を示す図である。
【
図35】本発明の第2実施例のウィルキンソン分配器を
図33に示すように使用した際、出力側のイコライザー回路に減衰器を設けた場合の分配損失の周波数特性を従来の分配器と対比して示すグラフである。
【
図36】本発明の第2実施例のウィルキンソン分配器を
図33に示すように使用した際に、出力側のイコライザー回路に減衰器とインダクタとの直列回路を設けた場合の分配損失の周波数特性を従来の分配器と対比して示すグラフである。
【
図37】本発明の実施例のウィルキンソン分配器における出力側のイコライザー回路が設けられるEQ回路パターンの構成を示す図である。
【
図38】本発明の実施例のウィルキンソン分配器における出力側のさらに他のイコライザー回路の構成を示す回路図である。
【
図39】
図36に示すEQ回路パターンにチップ部品で出力側のイコライザー回路を設けた場合のEQ回路パターンの位相の周波数特性を示すグラフである。
【
図40】
図36に示すEQ回路パターンに他のチップ部品で出力側のイコライザー回路を設けた場合のEQ回路パターンの位相の周波数特性を示すグラフである。
【
図41】本発明の第3実施例のウィルキンソン分配器の構成を断面図で示す側面図および平面図である。
【
図42】本発明の第3実施例のウィルキンソン分配器の構成を示す平面図である。
【
図43】本発明の第4実施例のウィルキンソン分配器の構成を断面図で示す側面図、斜視図である。
【
図44】本発明の第5実施例のウィルキンソン分配器の蓋部を省いた構成を示す斜視図である。
【
図45】本発明の第6実施例のウィルキンソン分配器の蓋部を省いた構成を示す上面図である。
【
図47】ウィルキンソン回路の構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<第1実施例のウィルキンソン分配器>
本発明の第1実施例のウィルキンソン分配器の構成を示す回路図を
図1に示す。
図1に示す本発明の第1実施例のウィルキンソン分配器10は、ウィルキンソン回路で構成された分配数3のウィルキンソン分配器10である。
図1に示すように、分配数3のウィルキンソン分配器10は入力端子INと3つの出力端子OUT1,OUT2,OUT3を備えており、出力端子OUT1~OUT3が分配端子とされる。入力端子INと出力端子OUT1~OUT3のすべてが同じインピーダンスZoとされている。入力端子INには3つのキャパシタC001,C002,C003が並列接続された直流カット回路Aが接続され、直流カット回路Aに入力側のイコライザー回路部EQINが縦続接続されている。イコライザー回路部EQINは、中央に抵抗R011が配置され、抵抗R011の両側にキャパシタC011,C012がそれぞれ配置されており、使用周波数帯域の高域より低域の損失が大きくなる周波数特性とされている。使用周波数帯域は、少なくとも470MHz~3224MHzとされる。
【0014】
イコライザー回路部EQINの出力側にインピーダンスZ01の2本の第1分布定数線路の始端が並列に接続され、第1分布定数線路の終端間にアイソレーション抵抗R01が接続されている。2本の第1分布定数線路の終端にインピーダンスZ02の第2分布定数線路の始端がそれぞれ接続され、2本の第2分布定数線路の終端間にアイソレーション抵抗R02が接続されている。2本の第2分布定数線路の終端にインピーダンスZ03の第3分布定数線路の始端がそれぞれ接続され、2本の第3分布定数線路の終端間にアイソレーション抵抗R03が接続されている。さらに、アイソレーション抵抗R03の一端にインピーダンスZ11、Z11’の2本の第4分布定数線路の始端が並列に接続され、第4分布定数線路の終端間にアイソレーション抵抗R11が接続されている。2本の第4分布定数線路の終端にインピーダンスZ12、Z12’の第5分布定数線路の始端がそれぞれ接続され、2本の第5分布定数線路の終端間にアイソレーション抵抗R12が接続されている。
また、アイソレーション抵抗R03の他端にインピーダンスZ21,Z21’の2本の第6分布定数線路の始端が並列に接続され、第6分布定数線路の終端間にアイソレーション抵抗R21が接続されている。2本の第6分布定数線路の終端にインピーダンスZ22,Z22’の第7分布定数線路の始端がそれぞれ接続され、2本の第7分布定数線路の終端間にアイソレーション抵抗R22が接続されている。
【0015】
アイソレーション抵抗R12の一端に第1の出力側のイコライザー回路部EQOUT1が接続されている。イコライザー回路部EQOUT1は、使用周波数帯域の高域より低域の損失が大きくなる周波数特性とされており、イコライザー回路が2段縦続されて構成されている。1段目のイコライザー回路は中央に抵抗R110が配置され、抵抗R110の両側にキャパシタC111,C112がそれぞれ配置されており、2段目のイコライザー回路は中央に抵抗R120が配置され、抵抗R120の両側にキャパシタC121,C122がそれぞれ配置されている。そして、イコライザー回路部EQOUT1に直流カット回路Cが縦続接続されて、直流カット回路Cの出力側が第1出力端子OUT1に接続されている。直流カット回路Cは3つのキャパシタC101,C102,C103が並列接続されて構成されている。
また、アイソレーション抵抗R12の他端およびアイソレーション抵抗R22の一端が、直流カット回路Bを介して合成されている。直流カット回路BはキャパシタC201の一端がアイソレーション抵抗R12の他端に接続され、キャパシタC202の一端がアイソレーション抵抗R22の一端に接続され、キャパシタC201,C202の他端同士が接続されて構成されている。直流カット回路Bの出力側に、第2の出力側のイコライザー回路部EQOUT2が接続されている。イコライザー回路部EQOUT2は、イコライザー回路部EQOUT1と同様とされており、中央に抵抗R210が配置され、抵抗R210の両側にキャパシタC211,C212がそれぞれ配置された1段目のイコライザー回路に、中央に抵抗R220が配置され、抵抗R220の両側にキャパシタC221,C222がそれぞれ配置され2段目のイコライザー回路が縦続接続されて構成されている。そして、イコライザー回路部EQOUT2の出力側が第2出力端子OUT2に接続されている。
さらに、アイソレーション抵抗R22の他端に第3の出力側のイコライザー回路部EQOUT3が接続されている。イコライザー回路部EQOUT3は、イコライザー回路部EQOUT1と同様とされており、中央に抵抗R310が配置され、抵抗R310の両側にキャパシタC311,C312がそれぞれ配置された1段目のイコライザー回路に、中央に抵抗R320が配置され、抵抗R320の両側にキャパシタC321,C322がそれぞれ配置され2段目のイコライザー回路が縦続接続されて構成されている。そして、イコライザー回路部EQOUT3に直流カット回路Dが縦続接続されて、直流カット回路Dの出力側が第3出力端子OUT3に接続されている。直流カット回路Dは3つのキャパシタC301,C302,C303が並列接続されて構成されている。
【0016】
イコライザー回路部EQOUT1、イコライザー回路部EQOUT2、1イコライザー回路部EQOUT3において、2段縦続されたイコライザー回路の間のラインとアースとの間に破線で示す減衰器を構成する抵抗R130,R230,R330がそれぞれ接続されていることは後述するが、ウィルキンソン分配器10が多段に接続される際に、終段のウィルキンソン分配器10では抵抗R130,R230,R330が接続されたウィルキンソン分配器10とされ、初段から終段の前段までの中間段では、抵抗R130,R230,R330が接続されていないウィルキンソン分配器10とされる。このことから、抵抗R130,R230,R330が接続されたウィルキンソン分配器10を「端末用分配器」、抵抗R130,R230,R330が接続されていないウィルキンソン分配器10を「中間用分配器」と云うことにする。
【0017】
第1実施例のウィルキンソン分配器10の第1分布定数線路ないし第7分布定数線路の電気長は使用周波数帯域の中心周波数Foの1/4波長とされており、インピーダンスZ11とインピーダンスZ21とは同じインピーダンスとされると共に、インピーダンスZ11’とインピーダンスZ21’とは同じインピーダンスとされ、インピーダンスZ12とインピーダンスZ22とは同じインピーダンスとされ、インピーダンスZ12’とインピーダンスZ22’とは同じインピーダンスとされる。そして、入力端子INと出力端子OUT1~OUT3とのインピーダンスZoは、例えば75Ωとされる。
【0018】
第1実施例のウィルキンソン分配器10においては、イコライザー回路部EQINの出力側に接続されるウィルキンソン回路は、インピーダンスZ01の2本の第1分布定数線路とアイソレーション抵抗R01とからなるウィルキンソン回路と、インピーダンスZ02の2本の第2分布定数線路とアイソレーション抵抗R02とからなるウィルキンソン回路と、インピーダンスZ03の2本の第3分布定数線路とアイソレーション抵抗R03とからなるウィルキンソン回路とが3段縦続されて構成されている。また、アイソレーション抵抗R03の一端に接続されるウィルキンソン回路は、インピーダンスZ11,Z11’の2本の第4分布定数線路とアイソレーション抵抗R11とからなるウィルキンソン回路と、インピーダンスZ12、Z12’の2本の第5分布定数線路とアイソレーション抵抗R12とからなるウィルキンソン回路とが2段縦続されて構成されている。さらに、アイソレーション抵抗R03の他端に接続されるウィルキンソン回路は、インピーダンスZ21,Z21’の2本の第6分布定数線路とアイソレーション抵抗R21とからなるウィルキンソン回路と、インピーダンスZ22、Z22’の2本の第5分布定数線路とアイソレーション抵抗R22とからなるウィルキンソン回路とが2段縦続されて構成されている。このように、ウィルキンソン回路を多段に縦続接続することにより第1実施例のウィルキンソン分配器10は広帯域化されている。
なお、第1実施例のウィルキンソン分配器10の第1分布定数線路ないし第7分布定数線路は、ストリップラインまたはマイクロストリップラインで構成することができる。
【0019】
<第1実施例のウィルキンソン分配器10の電気的特性>
次に、
図1に示す第1実施例のウィルキンソン分配器10の電気的特性を
図2~
図5に示す。
図2は分配数3の第1実施例のウィルキンソン分配器10における中間用分配器および端末用分配器の分配損失の周波数特性を従来の3分配器と対比して示すグラフであり、
図3は端子間結合損失の周波数特性を示すグラフであり、
図4は反射損失(入力)の周波数特性を示すグラフであり、
図5は反射損失(出力)の周波数特性を示すグラフである。これらの図においては、第1実施例のウィルキンソン分配器10である3分配器における中間用分配器をWS3Int、端末用分配器をWS3Ter、従来の3分配器をCS3として示している。
図2に示す分配損失の周波数特性のグラフを参照すると、470MHz(m2)における分配損失はWS3Terで-9.4dB、WS3Intで-6.9dB、CS3で-5.9dBとなり、3.2GHz(m5)における分配損失はWS3Terで-7.1dB、WS3Intで-5.3dBと減少して良好になるが、CS3では-12.6dBと急激に増加していることが分かる。このように、第1実施例のウィルキンソン分配器10における分配損失は、中間用分配器および端末用分配器では470MHから3224MHzに向かって次第に減少する平坦化された周波数特性となっていることが分かる。これに対して、従来の3分配器はコア巻きコイルの分配器とされていることから、分配損失は470MHから3224MHzに向かって次第に増加していく周波数特性となって、特に、2GHzを超えると分配損失が急激に増加していく周波数特性となることが分かる。
【0020】
また、
図3に示す端子間結合損失の周波数特性のグラフを参照すると、470MHz(m2)における端子間結合損失はWS3Terで-24.3dB、WS3Intで-19.8dB、CS3で-32.7dBとなり、3.2GHz(m5)における端子間結合損失はWS3Terで-22.3dB、WS3Intで-18.5dB、CS3で-24.8dBとなる。このように、第1実施例のウィルキンソン分配器10における端子間結合損失は、中間用分配器では470MHz~3224MHzの使用周波数帯域において約-16dB以下、端末用分配器では上記使用周波数帯域において約-20dB以下が得られている。従来の3分配器では、上記使用周波数帯域において約-23dB以下が得られており、第1実施例のウィルキンソン分配器10における端子間結合損失より良好な周波数特性となっていることが分かる。
端子間結合損失は、出力端子間の結合損失であって出力端子間アイソレーションと云うことができる。
さらに、
図4に示す反射損失(入力)の周波数特性のグラフを参照すると、470MHz(m2)における反射損失(入力)はWS3Terで-17.6dB、WS3Intで-13.2dB、CS3で-17.0dBとなり、3.2GHz(m5)における反射損失(入力)はWS3Terで-14.8dB、WS3Intで-18.3dB、CS3で-11.2dBとなる。このように、第1実施例のウィルキンソン分配器10における反射損失(入力)は、中間用分配器では470MHz~3224MHzの使用周波数帯域において約-14dB以下、端末用分配器では上記使用周波数帯域において約-9.5dB以下が得られている。従来の3分配器では、上記使用周波数帯域において約-10dB以下が得られており、第1実施例のウィルキンソン分配器10における反射損失(入力)が従来の3分配器より若干良好な周波数特性となっていることが分かる。
さらにまた、
図5に示す反射損失(出力)の周波数特性のグラフを参照すると、470MHz(m2)における反射損失(出力)はWS3Terで-21.8dB、WS3Intで-13.0dB、CS3で-28.6dBとなり、3.2GHz(m5)における反射損失(出力)はWS3Terで-26.2dB、WS3Intで-15.6dB、CS3で-8.4dBとなる。このように、第1実施例のウィルキンソン分配器10における反射損失(出力)は、中間用分配器では470MHz~3224MHzの使用周波数帯域において-13.2dB以下、端末用分配器では上記使用周波数帯域において約-15dB以下が得られている。従来の3分配器では、上記使用周波数帯域において-8.4dB以下が得られており、第1実施例のウィルキンソン分配器10における反射損失(出力)が従来の3分配器より若干良好な周波数特性となっていることが分かる。
【0021】
図6は、第1実施例のウィルキンソン分配器10の端末用分配器における第1の出力側のイコライザー回路部EQOUT1の変形例のイコライザー回路部EQOUT1’の構成を示す回路図である。変形例のイコライザー回路部EQOUT1’では、
図6に示すように減衰器とされる抵抗R130にインダクタL130が直列に接続されてアースされている。この場合、第1実施例のウィルキンソン分配器10の端末用分配器における第2および第3の出力側のイコライザー回路部EQOUT2,EQOUT3においても変形例のイコライザー回路部EQOUT1’と同様のイコライザー回路部EQOUT2’,EQOUT3’とされる。
次に、第1実施例のウィルキンソン分配器10において、
図6に示すイコライザー回路部EQOUT1’,EQOUT2’,EQOUT3’とされた変形例の端末用分配器の電気的特性を
図7ないし
図10に示す。ただし、
図7ないし
図10においては
図2ないし
図5に示した第1実施例のウィルキンソン分配器10における中間用分配器および従来の3分配器の電気的特性を対比して示している。すなわち、
図7は分配数3の第1実施例のウィルキンソン分配器10における中間用分配器および変形例の端末用分配器の分配損失の周波数特性を従来の3分配器と対比して示すグラフであり、
図8は端子間結合損失の周波数特性を示すグラフであり、
図9は反射損失(入力)の周波数特性を示すグラフであり、
図10は反射損失(出力)の周波数特性を示すグラフである。これらの図においては、第1実施例のウィルキンソン分配器10である3分配器における中間用分配器をWS3Int、変形例の端末用分配器をWS3TerL、従来の3分配器をCS3として示している。
【0022】
図7に示す分配損失の周波数特性のグラフを参照すると、470MHz(m2)における分配損失はWS3TerLで-9.3dB、WS3Intで-6.9dB、CS3で-5.9dBとなり、3.2GHz(m5)における分配損失はWS3TerLで-5.7dB、WS3Intで-5.3dBと減少して良好になるが、CS3では-12.6dBと急激に増加していることが分かる。このように、第1実施例のウィルキンソン分配器10’における分配損失は、端末用分配器では470MHから3224MHzに向かって次第に減少する平坦化された周波数特性となると共に、減衰器とされる抵抗に直列接続されたインダクタの影響を受けて上記使用周波数帯域の高域の分配損失が約1dB減少することが分かる。また、中間用分配器および従来の3分配器では構成が同じとされていることから、分配損失の周波数特性も同様となっている。
また、
図8に示す端子間結合損失の周波数特性のグラフを参照すると、470MHz(m2)における端子間結合損失はWS3TerLで-24.2dB、WS3Intで-19.8dB、CS3で-32.7dBとなり、3.2GHz(m5)における端子間結合損失はWS3TerLで-19.8dB、WS3Intで-18.5dB、CS3で-24.8dBとなる。このように、第1実施例のウィルキンソン分配器10における分配損失は、端末用分配器では減衰器とされる抵抗に直列接続されたインダクタの影響を受けて上記使用周波数帯域で得られる端子間結合損失が約-18dB以下と若干減少することが分かる。また、中間用分配器および従来の3分配器では構成が同じとされていることから、端子間結合損失の周波数特性も同様となっている。
【0023】
さらに、
図9に示す反射損失(入力)の周波数特性のグラフを参照すると、470MHz(m2)における反射損失(入力)はWS3TerLで-19.7dB、WS3Intで-13.2dB、CS3で-17.0dBとなり、3.2GHz(m5)における反射損失(入力)はWS3TerLで-23.8dB、WS3Intで-18.3dB、CS3で-11.2dBとなる。このように、第1実施例のウィルキンソン分配器10における反射損失(入力)は、端末用分配器では減衰器とされる抵抗に直列接続されたインダクタの影響を受けて上記使用周波数帯域で得られる反射損失(入力)が中間用分配器の反射損失(入力)とほぼ同様となって改善されることが分かる。また、中間用分配器および従来の3分配器では構成が同じとされていることから、反射損失(入力)の周波数特性も同様となっている。
さらにまた、
図10に示す反射損失(出力)の周波数特性のグラフを参照すると、470MHz(m2)における反射損失(出力)はWS3TerLで-19.0dB、WS3Intで-13.0dB、CS3で-28.6dBとなり、3.2GHz(m5)における反射損失(出力)はWS3TerLで-17.9dB、WS3Intで-15.6dB、CS3で-8.4dBとなる。このように、第1実施例のウィルキンソン分配器10における反射損失(出力)は、端末用分配器では減衰器とされる抵抗に直列接続されたインダクタの影響を受けて上記使用周波数帯域で得られる反射損失(出力)が若干減少することが分かる。また、中間用分配器および従来の3分配器では構成が同じとされていることから、反射損失(出力)の周波数特性も同様となっている。
【0024】
第1実施例のウィルキンソン分配器10は、使用周波数帯域において良好な分配損失および端子間結合損失の周波数特性が得られると共に、変形例の端末用分配器ではより良好な端子間結合損失の周波数特性が得られるようになる。テレビ共聴システムに使用される分配器の電気的特性に関する規格は上述したとおりであり、
図3,
図8を参照すると、第1実施例のウィルキンソン分配器10では使用周波数帯域においてJEITA SH規格の端子間結合損失を満足していることが分かる。なお、BL規格では3分配器の規格は規定されていないが、第1実施例のウィルキンソン分配器10では使用周波数帯域において2,4,6分配器のBL規格相当の端子間結合損失を満足している。また、
図2,
図7を参照すると、第1実施例のウィルキンソン分配器10における中間用分配器では使用周波数帯域においてJEITA SH規格の分配損失を満足していることが分かる。
【0025】
<第2実施例のウィルキンソン分配器>
本発明の第2実施例のウィルキンソン分配器の構成を示す回路図を
図11に示す。
図11に示す本発明の第2実施例のウィルキンソン分配器20は、ウィルキンソン回路で構成された分配数4のウィルキンソン分配器40である。
図11に示すように、分配数4のウィルキンソン分配器20は入力端子INと4つの出力端子OUT1,OUT2,OUT3,OUT4を備えており、出力端子OUT1~OUT4が分配端子とされる。入力端子INと出力端子OUT1~OUT4のすべてが同じインピーダンスZoとされている。入力端子INには3つのキャパシタC401,C402,C403が並列接続された直流カット回路CU1が接続され、直流カット回路CU1に入力側のイコライザー回路部EQINが縦続接続されている。イコライザー回路部EQINは、中央に抵抗R041が配置され、抵抗R041の両側にキャパシタC041,C042がそれぞれ配置されており、使用周波数帯域の高域より低域の損失が大きくなる周波数特性とされている。使用周波数帯域は、少なくとも470MHz~3224MHzとされる。
【0026】
イコライザー回路部EQINの出力側にインピーダンスZ41の2本の第1分布定数線路の始端が並列に接続され、第1分布定数線路の終端間にアイソレーション抵抗R41が接続されている。続いて、2本の第1分布定数線路の終端にインピーダンスZ42の2本の第2分布定数線路の始端がそれぞれ接続され、第2分布定数線路の終端間にアイソレーション抵抗R42が接続されている。また、アイソレーション抵抗R42の一端にインピーダンスZ411の2本の第3分布定数線路の始端が接続され、第3分布定数線路の終端間にアイソレーション抵抗R411が接続されている。続いて、2本の第3分布定数線路の終端にインピーダンスZ412の2本の第4分布定数線路の始端がそれぞれ接続され、第4分布定数線路の終端間にアイソレーション抵抗R412が接続されている。続いて、2本の第4分布定数線路の終端にインピーダンスZ413の2本の第5分布定数線路の始端がそれぞれ接続され、第5分布定数線路の終端間にアイソレーション抵抗R413が接続されている。続いて、2本の第5分布定数線路の終端にインピーダンスZ414の2本の第6分布定数線路の始端がそれぞれ接続され、第6分布定数線路の終端間にアイソレーション抵抗R414が接続されている。
さらに、アイソレーション抵抗R42の他端にインピーダンスZ421の2本の第7分布定数線路の始端が並列に接続され、第7分布定数線路の終端間にアイソレーション抵抗R421が接続されている。続いて、2本の第7分布定数線路の終端にインピーダンスZ422の2本の第8分布定数線路の始端がそれぞれ接続され、第8分布定数線路の終端間にアイソレーション抵抗R422が接続されている。続いて、2本の第8分布定数線路の終端にインピーダンスZ423の2本の第9分布定数線路の始端がそれぞれ接続され、第9分布定数線路の終端間にアイソレーション抵抗R423が接続されている。続いて、2本の第9分布定数線路の終端にインピーダンスZ424の2本の第10分布定数線路の始端がそれぞれ接続され、第10分布定数線路の終端間にアイソレーション抵抗R424が接続されている。
【0027】
アイソレーション抵抗R414の一端に出力側の第1イコライザー回路を含むイコライザー回路部EQOUTが接続されている。第1イコライザー回路は、使用周波数帯域の高域より低域の損失が大きくなる周波数特性とされており、イコライザー回路が2段縦続されて構成されている。1段目のイコライザー回路は中央に抵抗Ra10が配置され、抵抗Ra10の両側にキャパシタCa11,Ca12がそれぞれ配置されており、2段目のイコライザー回路は中央に抵抗Ra20が配置され、抵抗Ra20の両側にキャパシタCa21,Ca22がそれぞれ配置されている。そして、第1イコライザー回路に第1直流カット回路を含む直流カット回路部CU2が縦続接続されて、第1直流カット回路の出力側が第1出力端子OUT1に接続されている。第1直流カット回路は3つのキャパシタC411,C412,C413が並列接続されて構成されている。
また、アイソレーション抵抗R414の他端に出力側の第2イコライザー回路を含むイコライザー回路部EQOUTが接続されている。第2イコライザー回路は、使用周波数帯域の高域より低域の損失が大きくなる周波数特性とされており、イコライザー回路が2段縦続されて構成されている。1段目のイコライザー回路は中央に抵抗Rb10が配置され、抵抗Rb10の両側にキャパシタCb11,Cb12がそれぞれ配置されており、2段目のイコライザー回路は中央に抵抗Rb20が配置され、抵抗Rb20の両側にキャパシタCb21,Cb22がそれぞれ配置されている。そして、第2イコライザー回路に第2直流カット回路を含む直流カット回路部CU2が縦続接続されて、第2直流カット回路の出力側が第2出力端子OUT2に接続されている。第2直流カット回路は3つのキャパシタC421,C422,C423が並列接続されて構成されている。
【0028】
さらに、アイソレーション抵抗R424の一端に出力側の第3イコライザー回路を含むイコライザー回路部EQOUTが接続されている。第3イコライザー回路は、使用周波数帯域の高域より低域の損失が大きくなる周波数特性とされており、イコライザー回路が2段縦続されて構成されている。1段目のイコライザー回路は中央に抵抗Rc10が配置され、抵抗Rc10の両側にキャパシタCc11,Cc12がそれぞれ配置されており、2段目のイコライザー回路は中央に抵抗Rc20が配置され、抵抗Rc20の両側にキャパシタCc21,Cc22がそれぞれ配置されている。そして、第3イコライザー回路に第3直流カット回路を含む直流カット回路部CU2が縦続接続されて、第3直流カット回路の出力側が第3出力端子OUT3に接続されている。第3直流カット回路は3つのキャパシタC431,C432,C433が並列接続されて構成されている。
さらにまた、アイソレーション抵抗R424の他端に出力側の第4イコライザー回路を含むイコライザー回路部EQOUTが接続されている。第4イコライザー回路は、使用周波数帯域の高域より低域の損失が大きくなる周波数特性とされており、イコライザー回路が2段縦続されて構成されている。1段目のイコライザー回路は中央に抵抗Rd10が配置され、抵抗Rd10の両側にキャパシタCd11,Cd12がそれぞれ配置されており、2段目のイコライザー回路は中央に抵抗Rd20が配置され、抵抗Rd20の両側にキャパシタCd21,Cd22がそれぞれ配置されている。そして、第4イコライザー回路に第4直流カット回路を含む直流カット回路部CU2が縦続接続されて、第4直流カット回路の出力側が第4出力端子OUT4に接続されている。第4直流カット回路は3つのキャパシタC441,C442,C443が並列接続されて構成されている。
【0029】
第1イコライザー回路と第2イコライザー回路と第3イコライザー回路と第4イコライザー回路からなるイコライザー回路部EQOUTにおいて、2段縦続されたイコライザー回路の間とアースとの間に破線で示す減衰器を構成する抵抗Ra30,Rb30,Rc30,Rd30がそれぞれ接続されていることは後述するが、ウィルキンソン分配器20が多段に接続される際に、終段のウィルキンソン分配器20では抵抗Ra30,Rb30,Rc30,Rd30が接続されたウィルキンソン分配器20とされ、初段から終段の前段までの中間段では、抵抗Ra30,Rb30,Rc30,Rd30が接続されていないウィルキンソン分配器20とされている。このことから、抵抗Ra30,Rb30,Rc30,Rd30が接続されたウィルキンソン分配器20を「端末用分配器」、抵抗Ra30,Rb30,Rc30,Rd30が接続されていないウィルキンソン分配器20を「中間用分配器」と云うことにする。
【0030】
第2実施例のウィルキンソン分配器20の第1分布定数線路ないし第10分布定数線路の電気長は使用周波数帯域の中心周波数Foの1/4波長とされており、インピーダンスZ411とインピーダンスZ421、インピーダンスZ412とインピーダンスZ422、インピーダンスZ413とインピーダンスZ423、インピーダンスZ414とインピーダンスZ424とは同じインピーダンスとされる。そして、入力端子INと出力端子OUT1~OUT4とのインピーダンスZoは、例えば75Ωとされる。
【0031】
第2実施例のウィルキンソン分配器20においては、イコライザー回路部EQINの出力側に接続されるウィルキンソン回路は、インピーダンスZ41の2本の第1分布定数線路とアイソレーション抵抗R41とからなるウィルキンソン回路と、インピーダンスZ42の2本の第2分布定数線路とアイソレーション抵抗R42とからなるウィルキンソン回路とが2段縦続されて構成されている。また、アイソレーション抵抗R42の一端に接続されるウィルキンソン回路は、インピーダンスZ411の2本の第3分布定数線路とアイソレーション抵抗R411とからなるウィルキンソン回路と、インピーダンスZ412の2本の第4分布定数線路とアイソレーション抵抗R412とからなるウィルキンソン回路と、インピーダンスZ413の2本の第5分布定数線路とアイソレーション抵抗R413とからなるウィルキンソン回路と、インピーダンスZ414の2本の第6分布定数線路とアイソレーション抵抗R414とからなるウィルキンソン回路とが4段縦続されて構成されている。さらに、アイソレーション抵抗R42の他端に接続されるウィルキンソン回路は、インピーダンスZ421の2本の第7分布定数線路とアイソレーション抵抗R421とからなるウィルキンソン回路と、インピーダンスZ422の2本の第8分布定数線路とアイソレーション抵抗R422とからなるウィルキンソン回路と、インピーダンスZ423の2本の第8分布定数線路とアイソレーション抵抗R423とからなるウィルキンソン回路と、インピーダンスZ424の2本の第10分布定数線路とアイソレーション抵抗R424とからなるウィルキンソン回路とが4段縦続されて構成されている。このように、ウィルキンソン回路を多段に縦続接続することにより第2実施例のウィルキンソン分配器20は広帯域化されている。
なお、第2実施例のウィルキンソン分配器20の第1分布定数線路ないし第10分布定数線路は、ストリップラインまたはマイクロストリップラインで構成することができる。
【0032】
<第2実施例のウィルキンソン分配器20の電気的特性>
次に、
図11に示す第2実施例のウィルキンソン分配器20の電気的特性を
図12~
図15に示す。
図12は分配数4の第2実施例のウィルキンソン分配器20における中間用分配器および端末用分配器の分配損失の周波数特性を従来の4分配器と対比して示すグラフであり、
図13は端子間結合損失の周波数特性を示すグラフであり、
図14は反射損失(入力)の周波数特性を示すグラフであり、
図15は反射損失(出力)の周波数特性を示すグラフである。これらの図においては、第2実施例のウィルキンソン分配器20である4分配器における中間用分配器をWS4Int、端末用分配器をWS4Ter、従来の4分配器をCS4として示している。
図12に示す分配損失の周波数特性のグラフを参照すると、470MHz(m2)における分配損失はWS4Terで-10.5dB、WS4Intで-7.8dB、CS4で-7.2dBとなり、3.2GHz(m5)における分配損失はWS4Terで-7.9dB、WS4Intで-6.5dBと減少して良好になるが、CS4では-12.4dBと急激に増加していることが分かる。このように、第2実施例のウィルキンソン分配器20における分配損失は、中間用分配器および端末用分配器では470MHから3224MHzに向かって次第に減少する平坦化された周波数特性となっていることが分かる。これに対して、従来の4分配器はコア巻きコイルの分配器とされていることから、分配損失は470MHから3224MHzに向かって次第に増加していく周波数特性となって、特に、2GHzを超えると分配損失が急激に増加していく周波数特性となることが分かる。
【0033】
また、
図13に示す端子間結合損失の周波数特性のグラフを参照すると、470MHz(m2)における端子間結合損失はWS4Terで-23.8dB、WS4Intで-19.5dB、CS4で-39.8dBとなり、3.2GHz(m5)における端子間結合損失はWS4Terで-21.9dB、WS4Intで-18.8dB、CS4で-29.9dBとなる。このように、第2実施例のウィルキンソン分配器20における端子間結合損失は、中間用分配器では470MHz~3224MHzの使用周波数帯域において約-18dB以下、端末用分配器では上記使用周波数帯域において約-21dB以下が得られている。従来の4分配器では、上記使用周波数帯域において約-22dB以下が得られており、第2実施例のウィルキンソン分配器20における端子間結合損失より良好な周波数特性となっていることが分かる。
端子間結合損失は、出力端子間の結合損失であって出力端子間アイソレーションと云うことができる。
さらに、
図14に示す反射損失(入力)の周波数特性のグラフを参照すると、470MHz(m2)における反射損失(入力)はWS4Terで-27.4dB、WS4Intで-20.1dB、CS4で-26.2dBとなり、3.2GHz(m5)における反射損失(入力)はWS4Terで-28.6dB、WS4Intで-17.2dB、CS4で-9.9dBとなる。このように、第2実施例のウィルキンソン分配器20における反射損失(入力)は、中間用分配器では470MHz~3224MHzの使用周波数帯域において約-15dB以下、端末用分配器では上記使用周波数帯域において約-14.5dB以下が得られている。従来の4分配器では、上記使用周波数帯域において約-9dB以下が得られており、第2実施例のウィルキンソン分配器20における反射損失(入力)が従来の4分配器より若干良好な周波数特性となっていることが分かる。
さらにまた、
図15に示す反射損失(出力)の周波数特性のグラフを参照すると、470MHz(m2)における反射損失(出力)はWS4Terで-24.2dB、WS4Intで-16.0dB、CS4で-29.0dBとなり、3.2GHz(m5)における反射損失(出力)はWS4Terで-20.4dB、WS4Intで-19.8dB、CS4で-19.9dBとなる。このように、第2実施例のウィルキンソン分配器20における反射損失(出力)は、中間用分配器では470MHz~3224MHzの使用周波数帯域において約-15.5dB以下、端末用分配器では上記使用周波数帯域において約-14.5B以下が得られている。従来の4分配器では、上記使用周波数帯域において-9dB以下が得られており、第2実施例のウィルキンソン分配器20における反射損失(出力)が従来の4分配器より若干良好な周波数特性となっていることが分かる。
【0034】
図16は、第2実施例のウィルキンソン分配器20の端末用分配器における出力側のイコライザー回路部EQOUTの変形例のイコライザー回路部EQOUT’の構成を示す回路図である。変形例のイコライザー回路部EQOUT’では、
図16に示すように減衰器とされる抵抗Ra30にインダクタLa30が直列に接続されてアースされている。この場合、
図16ではイコライザー回路部EQOUT’では第1イコライザー回路しか示していないが、第2イコライザー回路ないし第4イコライザー回路においても
図16に示す第1イコライザー回路と同様のイコライザー回路とされる。
次に、第2実施例のウィルキンソン分配器20において、
図16に示すイコライザー回路部EQOUT’とされた変形例の端末用分配器の電気的特性を
図17ないし
図20に示す。ただし、
図17ないし
図20においては
図12ないし
図15に示した第2実施例のウィルキンソン分配器20における中間用分配器および従来の4分配器の電気的特性を対比して示している。すなわち、
図17は分配数4の第2実施例のウィルキンソン分配器20における中間用分配器および変形例の端末用分配器の分配損失の周波数特性を従来の4分配器と対比して示すグラフであり、
図18は端子間結合損失の周波数特性を示すグラフであり、
図19は反射損失(入力)の周波数特性を示すグラフであり、
図20は反射損失(出力)の周波数特性を示すグラフである。これらの図においては、第2実施例のウィルキンソン分配器20である4分配器における中間用分配器をWS4Int、変形例の端末用分配器をWS4TerL、従来の4分配器をCS4として示している。
【0035】
図17に示す分配損失の周波数特性のグラフを参照すると、470MHz(m2)における分配損失はWS4TerLで-10.3dB、WS4Intで-7.8dB、CS4で-7.2dBとなり、3.2GHz(m5)における分配損失はWS4TerLで-6.9dB、WS4Intで-6.5dBと減少して良好になるが、CS4では-12.4dBと急激に増加していることが分かる。このように、第2実施例のウィルキンソン分配器20における分配損失は、変形例の端末用分配器では470MHから3224MHzに向かって次第に減少する平坦化された周波数特性となると共に、減衰器とされる抵抗に直列接続されたインダクタの影響を受けて上記使用周波数帯域の高域の分配損失が約1dB減少することが分かる。また、中間用分配器および従来の4分配器では構成が同じとされていることから、分配損失の周波数特性も同様となっている。
また、
図18に示す端子間結合損失の周波数特性のグラフを参照すると、470MHz(m2)における端子間結合損失はWS4TerLで-23.4dB、WS4Intで-19.5dB、CS3で-39.8dBとなり、3.2GHz(m5)における端子間結合損失はWS4TerLで-19.4dB、WS4Intで-18.8dB、CS4で-29.9dBとなる。このように、第2実施例のウィルキンソン分配器20における分配損失は、変形例の端末用分配器では減衰器とされる抵抗に直列接続されたインダクタの影響を受けて上記使用周波数帯域で得られる端子間結合損失が-18.8dB以下と若干減少することが分かる。また、中間用分配器および従来の4分配器では構成が同じとされていることから、端子間結合損失の周波数特性も同様となっている。
【0036】
さらに、
図19に示す反射損失(入力)の周波数特性のグラフを参照すると、470MHz(m2)における反射損失(入力)はWS4TerLで-33.0dB、WS4Intで-20.1dB、CS4で-26.2dBとなり、3.2GHz(m5)における反射損失(入力)はWS4TerLで-18.8dB、WS4Intで-17.2dB、CS4で-9.9dBとなる。このように、第2実施例の変形例のウィルキンソン分配器20における反射損失(入力)は、変形例の端末用分配器では減衰器とされる抵抗に直列接続されたインダクタの影響を受けて上記使用周波数帯域で得られる反射損失(入力)が中間用分配器の反射損失(入力)とほぼ同様となって改善されることが分かる。また、中間用分配器および従来の4分配器では構成が同じとされていることから、反射損失(入力)の周波数特性も同様となっている。
さらにまた、
図20に示す反射損失(出力)の周波数特性のグラフを参照すると、470MHz(m2)における反射損失(出力)はWS4TerLで-31.7dB、WS4Intで-16.0dB、CS4で-29.0dBとなり、3.2GHz(m5)における反射損失(出力)はWS4TerLで-16.9dB、WS4Intで-19.8dB、CS4で-19.9dBとなる。このように、第2実施例の変形例のウィルキンソン分配器20における反射損失(出力)は、変形例の端末用分配器では減衰器とされる抵抗に直列接続されたインダクタの影響を受けて上記使用周波数帯域の低域から中域で得られる反射損失(出力)が減少することが分かる。また、中間用分配器および従来の4分配器では構成が同じとされていることから、反射損失(出力)の周波数特性も同様となっている。
【0037】
第2実施例のウィルキンソン分配器20は使用周波数帯域において良好な分配損失および端子間結合損失の周波数特性を得られると共に、変形例の端末用分配器ではより良好な端子間結合損失の周波数特性を得られることができる。テレビ共聴システムに使用される分配器の電気的特性に関する規格は上述したとおりであり、
図13,
図18を参照すると、第2実施例のウィルキンソン分配器20では使用周波数帯域においてJEITA SH規格およびBL規格の端子間結合損失を満足していることが分かる。また、
図12,
図17を参照すると、第2実施例のウィルキンソン分配器20における中間用分配器では使用周波数帯域においてJEITA SH規格およびBL規格の分配損失を満足していることが分かる。
【0038】
<実施例のウィルキンソン分配器の回路パターン>
第1実施例のウィルキンソン分配器10は、ストリップラインまたはマイクロストリップラインとされた第1分布定数線路ないし第7分布定数線路とチップ部品とで構成することができる。そこで、基板11上に第1分布定数線路ないし第7分布定数線路となるマイクロストリップラインを形成し、チップ部品を所定位置に接続して構成した分配数3の第1実施例のウィルキンソン分配器10の回路パターンの一例をウィルキンソン分配器10Aとして
図21に示す。
図21に示すウィルキンソン分配器10Aは、
図1に示す回路図とほぼ同じとされているが、出力側のイコライザー回路部EQOUT1~EQOUT3と直流カット回路C,Dの回路構成が若干異なっている。ウィルキンソン分配器10Aの回路パターンは、高周波特性の良好な基板11のおもて面にマイクロストリップラインのパターンで形成されている。上述したように、第1実施例のウィルキンソン分配器10は7つのウィルキンソン回路から構成されており、7つのウィルキンソン回路を構成する第1分布定数線路ないし第7分布定数線路のパターンはU字状に折り返されたマイクロストリップラインで形成されている。第1分布定数線路ないし第7分布定数線路における各線路の終端間にはアイソレーション抵抗R01~R03,R11,R12のチップ部品がそれぞれ接続されている。各マイクロストリップラインの幅は、マイクロストリップラインで構成する第1分布定数線路ないし第7分布定数線路のインピーダンスZ01~Z03,Z11,Z12,Z11’,Z12’に応じた幅とされている。また、U字状に折り返されたマイクロストリップラインとするのは、ウィルキンソン分配器10Aを小型化するためである。この場合、U字状に折り返された第1分布定数線路の折り返し間隔d1は線幅の1.5倍以上とされ、第2分布定数線路の折り返し間隔d2は線幅以上とされ、第3分布定数線路の折り返し間隔d3は線幅の0.5倍以上とされ、第4,6分布定数線路の折り返し間隔d4は線幅の2倍以上とされ、第5,7分布定数線路の折り返し間隔d5は線幅以上とされている。
【0039】
また、ウィルキンソン分配器10Aにおいて、2本の第1分布定数線路の始端と入力端子INとの間に3つのキャパシタのチップ部品が並列接続された直流カット回路Aと、抵抗を挟んで2つのキャパシタのチップ部品が並列接続された入力側のイコライザー回路部EQINとが設けられている。さらに、第1出力端子OUT1とアイソレーション抵抗R12の一端との間に直流カット回路Cと第1の出力側のイコライザー回路部EQOUT1とが設けられている。ただし、直流カット回路Cは2つのキャパシタのチップ部品が並列接続され、イコライザー回路部EQOUT1は
図37(a)に示すように抵抗と1つのキャパシタとのチップ部品が並列接続されている。そして、ウィルキンソン分配器10Aが端末用分配器とされている場合は、イコライザー回路部EQOUT1の2段縦続されたイコライザー回路の間とアースとの間に抵抗R130のチップ部品が接続されている。
さらにまた、第2出力端子OUT2とアイソレーション抵抗R12の他端およびアイソレーション抵抗R22の一端との間に第2の出力側のイコライザー回路部EQOUT2と2つの直流カット回路Bとが設けられている。ただし、直流カット回路Bのそれぞれは1つのキャパシタのチップ部品とされ、イコライザー回路部EQOUT2は
図37(a)に示すように抵抗と1つのキャパシタとのチップ部品が並列接続されている。そして、ウィルキンソン分配器10Aが端末用分配器とされている場合は、イコライザー回路部EQOUT2の2段縦続されたイコライザー回路の間とアースとの間に抵抗R230のチップ部品が接続されている。
さらにまた、第3出力端子OUT3とアイソレーション抵抗R22の他端との間に直流カット回路Dと第3の出力側のイコライザー回路部EQOUT3とが設けられている。ただし、直流カット回路Dは2つのキャパシタのチップ部品が並列接続され、イコライザー回路部EQOUT3は
図37(a)に示すように抵抗と1つのキャパシタとのチップ部品が並列接続されている。そして、ウィルキンソン分配器10Aが端末用分配器とされている場合は、イコライザー回路部EQOUT3の2段縦続されたイコライザー回路の間とアースとの間に抵抗R330のチップ部品が接続されている。
【0040】
次に、第2実施例のウィルキンソン分配器20は、ストリップラインまたはマイクロストリップラインとされた第1分布定数線路ないし第10分布定数線路とチップ部品とで構成することができる。そこで、基板21上に第1分布定数線路ないし第10分布定数線路となるマイクロストリップラインを形成し、チップ部品を所定位置に接続して構成した分配数4の第2実施例のウィルキンソン分配器20の回路パターンの一例をウィルキンソン分配器20Aとして
図22に示す。
図22に示すウィルキンソン分配器20Aは、
図11に示す回路図とほぼ同じとされているが、出力側のイコライザー回路部EQOUTと直流カット回路部CU2の回路構成が若干異なっている。ウィルキンソン分配器20Aの回路パターンは、高周波特性の良好な基板21のおもて面にマイクロストリップラインのパターンで形成されている。上述したように、第2実施例のウィルキンソン分配器20は10のウィルキンソン回路から構成されており、10のウィルキンソン回路を構成する第1分布定数線路ないし第10分布定数線路のパターンはU字状に折り返されたマイクロストリップラインで形成されている。第1分布定数線路ないし第10分布定数線路における各線路の終端間にはアイソレーション抵抗R41,R42,R411~R414,R421~R424のチップ部品がそれぞれ接続されている。各マイクロストリップラインの幅は、マイクロストリップラインで構成する第1分布定数線路ないし第10分布定数線路のインピーダンスZ41,Z42,Z411~Z414,Z421~Z424に応じた幅とされている。また、U字状に折り返されたマイクロストリップラインとするのは、ウィルキンソン分配器20Aを小型化するためである。この場合、U字状に折り返された第1分布定数線路の折り返し間隔d6は線幅の1.5倍以上とされ、第2分布定数線路の折り返し間隔d7は線幅の0.5倍以上とされ、第3,7分布定数線路の折り返し間隔d8は線幅の2倍以上とされ、第6,10分布定数線路の折り返し間隔d9は線幅以上とされている。
【0041】
また、ウィルキンソン分配器20Aにおいて、2本の第1分布定数線路の始端と入力端子INとの間に3つのキャパシタのチップ部品が並列接続された直流カット回路CU1と、抵抗を挟んで2つのキャパシタのチップ部品が並列接続された入力側のイコライザー回路部EQINとが設けられている。さらに、第1出力端子OUT1とアイソレーション抵抗R414の一端との間に直流カット回路部CU2の第1直流カット回路と出力側のイコライザー回路部EQOUTの第1イコライザー回路とが設けられている。ただし、第1直流カット回路は2つのキャパシタのチップ部品が並列接続され、第1イコライザー回路は
図37(a)に示すように抵抗と1つのキャパシタとのチップ部品が並列接続されている。そして、ウィルキンソン分配器20Aが端末用分配器とされている場合は、第1イコライザー回路の2段縦続されたイコライザー回路の間とアースとの間に抵抗Ra30のチップ部品が接続されている。
さらにまた、第2出力端子OUT2とアイソレーション抵抗R414の他端との間に直流カット回路部CU2の第2直流カット回路と出力側のイコライザー回路部EQOUTの第2イコライザー回路とが設けられている。ただし、第2直流カット回路は2つのキャパシタのチップ部品が並列接続され、第2イコライザー回路は
図37(a)に示すように抵抗と1つのキャパシタとのチップ部品が並列接続されている。そして、ウィルキンソン分配器20Aが端末用分配器とされている場合は、第2イコライザー回路の2段縦続されたイコライザー回路の間とアースとの間に抵抗Rb30のチップ部品が接続されている。
さらにまた、第3出力端子OUT3とアイソレーション抵抗R424の一端との間に直流カット回路部CU2の第3直流カット回路と出力側のイコライザー回路部EQOUTの第3イコライザー回路とが設けられている。ただし、第3直流カット回路は2つのキャパシタのチップ部品が並列接続され、第3イコライザー回路は
図37(a)に示すように抵抗と1つのキャパシタとのチップ部品が並列接続されている。そして、ウィルキンソン分配器20Aが端末用分配器とされている場合は、第3イコライザー回路の2段縦続されたイコライザー回路の間とアースとの間に抵抗Rc30のチップ部品が接続されている。
さらにまた、第4出力端子OUT4とアイソレーション抵抗R424の他端との間に直流カット回路部CU2の第4直流カット回路と出力側のイコライザー回路部EQOUTの第4イコライザー回路とが設けられている。ただし、第4直流カット回路は2つのキャパシタのチップ部品が並列接続され、第4イコライザー回路は
図37(a)に示すように抵抗と1つのキャパシタとのチップ部品が並列接続されている。そして、ウィルキンソン分配器20Aが端末用分配器とされている場合は、第4イコライザー回路の2段縦続されたイコライザー回路の間とアースとの間に抵抗Rd30のチップ部品が接続されている。
【0042】
<実施例の特徴的な回路構成>
次に、以上説明した本発明の第1実施例のウィルキンソン分配器10および第2実施例のウィルキンソン分配器20の特徴的な回路構成について説明する。
本発明の実施例にかかるウィルキンソン分配器10,20においては、入力側にイコライザー回路が設けられていると共に、出力側にもイコライザー回路が設けられている。これらのイコライザー回路は、使用周波数帯域の高域より低域の損失が大きくなる周波数特性とされている。
イコライザー回路を設ける理由について第2実施例のウィルキンソン分配器20を例に挙げて説明すると、第2実施例のウィルキンソン分配器20では
図11に示すように入力側および出力側にイコライザー回路が設けられている。そこで、4分配器とされたウィルキンソン分配器において、入力側および出力側に
図23(a)に示すイコライザー回路が設けられている場合と、出力側だけに
図23(a)に示すイコライザー回路が設けられている場合との電気的特性を、入力側および出力側のいずれにもイコライザー回路が設けられていない場合と対比して
図24,
図25,
図26に示す。なお、
図23(a)に示すイコライザー回路は、イコライザー回路が2段縦続されて構成されており、1段目のイコライザー回路は中央に抵抗R1が配置され、抵抗R1の両側にキャパシタC1,C2がそれぞれ配置されており、2段目のイコライザー回路は中央に抵抗R2が配置され、抵抗R2の両側にキャパシタC3,C4がそれぞれ配置されている。
【0043】
図24は分配数4のウィルキンソン分配器において、出力側だけに
図23(a)に示すイコライザー回路が設けられている場合、入力側および出力側に
図23(a)に示すイコライザー回路が設けられている場合、入力側および出力側のいずれにもイコライザー回路が設けられていない場合の分配損失の周波数特性を対比して示すグラフであり、
図25は端子間結合損失の周波数特性を示すグラフであり、
図25は反射損失(入力)の周波数特性を示すグラフである。これらの図においては、出力側だけに
図23(a)に示すイコライザー回路が設けられているウィルキンソン分配器をWS4EQOut、入力側および出力側に
図23(a)に示すイコライザー回路が設けられているウィルキンソン分配器をWS4EQInOut、イコライザー回路が設けられていないウィルキンソン分配器をWS4として示している。
図24に示す分配損失の周波数特性のグラフを参照すると、470MHz(m2)における分配損失はWS4で-6.1dB、WS4EQOutで-7.1dB、WS4EQInOutで-7.8dBとなり、3.2GHz(m5)における分配損失はWS4で-6.3dB、WS4EQOutで-6.5dB、WS4EQInOutで-6.5dBとなる。すなわち、WS4EQOutとWS4EQInOutとでは470MHzから3224MHzに向かって若干ではあるが次第に分配損失が減少する周波数特性となるのに対して、WS4では470MHzから3224MHzに向かって若干ではあるが次第に分配損失が増加する周波数特性となる。これは、イコライザー回路は使用周波数帯域の高域より低域の損失が大きくされている周波数特性とされているからであり、出力側のイコライザー回路では470MHzにおいて約1dBのロスが発生しており、入力側および出力側のイコライザー回路では470MHzにおいて約1.7dBのロスが発生していることが分かる。
【0044】
また、
図25に示す端子間結合損失の周波数特性のグラフを参照すると、470MHz(m2)における端子間結合損失はWS4で-16.8dB、WS4EQOutで-19.3dB、WS4EQInOutで-19.5dBとなり、3.2GHz(m5)における端子間結合損失はWS4で-19.2dB、WS4EQOutで-19.5dB、WS4EQInOutで-18.8dBとなる。このように、WS4EQOutおよびWS4EQInOutのウィルキンソン分配器では、470MHz~3224MHzの使用周波数帯域において端子間結合損失が最大2dB以上改善されるようになる。
さらに、
図26に示す反射損失(入力)の周波数特性のグラフを参照すると、470MHz(m2)における反射損失(入力)はWS4で-19.0dB、WS4EQOutで-29.6dB、WS4EQInOutで-20.1dBとなり、3.2GHz(m5)における反射損失(入力)はWS4で-14.2dB、WS4EQOutで-15.2dB、WS4EQInOutで-17.2dBとなる。このように、WS4EQInOutのウィルキンソン分配器では、10MHz~470MHzのケーブルテレビ(CATV)の伝送帯域において反射損失(入力)が改善されるようになり、CATVの伝送帯域まで使用周波数帯域が拡張されることになる。なお、入力側にイコライザー回路を設けても反射損失(出力)と端子間結合損失の周波数特性には影響を与えることはない。
これが、本発明の実施例にかかるウィルキンソン分配器10,20において、入力側にイコライザー回路が設けられると共に、出力側にもイコライザー回路が設けられる理由とされている。
【0045】
<実施例の使用態様>
次に、本発明の第2実施例のウィルキンソン分配器20を使用する態様の構成を
図27に示す。
図27に示す使用の態様では、所定長さの同軸ケーブルとされるケーブル41から第2実施例のウィルキンソン分配器20に共聴信号が入力されている。共聴信号には、UHF帯の地上デジタル放送信号およびBS/CS-IF信号が含まれている。そして、ケーブル41が7Cケーブルとされ25mの長さとされている場合は、地上デジタル上限周波数710MHzと下限周波数である470MHzのケーブルロスの差は1dB程度になる。また、共聴信号にケーブルテレビ(CATV)が含まれており、ケーブル41が7Cケーブルとされ25mの長さとされている場合は、CATV下り伝送帯域の上限周波数962MHzと下限周波数である90MHzのケーブルロスの差は3dB程度になる。
このようなケーブルロスは、第2実施例のウィルキンソン分配器20の後段に設けられた増幅器により補償されるが、増幅器にはケーブルロスを含めたウィルキンソン分配器20の出力レベルが一定に近いことが望まれる。上記したように、第2実施例のウィルキンソン分配器20においては、入力側および出力側に
図23(a)に示すイコライザー回路が設けられており、
図24に示すように470MHzから3224MHzに向かって次第に分配損失が減少する周波数特性となっていることから、ケーブル41のケーブルロスを含めたウィルキンソン分配器20の出力レベルが一定に近くなる。
【0046】
ここで、入力側および出力側に
図23(a)に示すイコライザー回路が設けられているウィルキンソン分配器20をWS4EQ、イコライザー回路が設けられていないウィルキンソン分配器をWS4とし、従来の4分配器CS4と対比して「ケーブルロス+分配損失」の周波数特性を
図28に示す。
図28に示す「ケーブルロス+分配損失」の周波数特性のグラフを参照すると、90.0MHz(m1)における「ケーブルロス+分配損失」はWS4EQで-10.8dB、WS4で-8.8dB、CS4で-8.2dBとなり、960.0MHz(m3)における「ケーブルロス+分配損失」はWS4EQで-11.3dB、WS4で-10.0dB、CS4で-11.6dBとなり、1.0GMHz(m4)における「ケーブルロス+分配損失」はWS4EQで-11.6dB、WS4で-10.2dB、CS4で-11.9dBとなり、3.2GHz(m5)における「ケーブルロス+分配損失」はWS4EQで-14.7dB、WS4で-14.5dB、CS4で-20.4dBとなる。上記した
図24を参照すると、WS4EQの「ケーブルロス+分配損失」の周波数特性が最も平坦化されていることが分かる。すなわち、第2実施例のウィルキンソン分配器20では、ケーブル41のケーブルロスを含めた出力レベルが一定に近くなることが分かる。
【0047】
次に、本発明の第2実施例のウィルキンソン分配器20を使用する他の態様の構成を
図29に示す。
図29に示す使用の他の態様では、所定長さの同軸ケーブルとされるケーブル41から第2実施例のウィルキンソン分配器20に共聴信号が入力され、第1出力端子OUT1に同軸ケーブルとされる所定長さのケーブル42が接続されて、ケーブル42の終端に第1テレビ端子TN1が接続されている。第2出力端子OUT2,第3出力端子OUT3,第4出力端子OUT4も同様に、所定長さのケーブル43,44,45がそれぞれ接続されて、ケーブル43,44,45の終端に第2テレビ端子TN2,第3テレビ端子TN3,第4テレビ端子TN4がそれぞれ接続されている。そして、第1テレビ端子TN1と第2テレビ端子TN2にはテレビあるいはレコーダが接続されているが、第3テレビ端子TN3と第4テレビ端子TN4には何も接続されておらず開放されている。このように、開放されているテレビ端子3,4では、ウィルキンソン分配器20の電気的特性にリップルが生じるようになる。
【0048】
そこで、
図29に示す使用の他の態様の入力側および出力側に
図23(a)に示すイコライザー回路が設けられているウィルキンソン分配器20をWS4EQとして分配損失の周波数特性を、従来の4分配器CS4と対比して
図30に示し、反射損失(出力)の周波数特性を、従来の4分配器CS4と対比して
図31に示す。
図30に示す分配損失の周波数特性のグラフを参照すると、90.0MHz(m1)における分配損失はWS4EQで-13.3dB、CS4で-11.7dBとなり、960.0MHz(m3)における分配損失はWS4EQで-14.5dB、CS4で-14.5dBとなり、1.0GMHz(m4)における分配損失はWS4EQで-14.9dB、CS4で-14.9dBとなり、3.2GHz(m5)における分配損失はWS4EQで-20.7dB、CS4で-20.9dBとなる。すなわち、
図30に示すように従来の4分配器CS4では分配損失にリップルが生じていないが、WS4EQでは分配損失にリップルが生じており、ケーブル44およびケーブル45におけるケーブルロスに応じて約450MHzまでの低域のリップルが影響を及ぼすリップルとなっている。これは、ケーブルロスが高域に行くほど大きくなるからである。
また、
図31に示す反射損失(出力)の周波数特性のグラフを参照すると、90.0MHz(m1)における反射損失(出力)はWS4EQで-10.9dB、CS4で-13.3dBとなり、960.0MHz(m3)における反射損失(出力)はWS4EQで-21.9dB、CS4で-21.9dBとなり、1.0GMHz(m4)における反射損失(出力)はWS4EQで-23.2dB、CS4で-23.3dBとなり、3.2GHz(m5)における反射損失(出力)はWS4EQで-24.5dB、CS4で-24.8dBとなる。すなわち、
図31に示すように従来の4分配器CS4では約300MHzまでの低域において反射損失(出力)にリップルが生じていないが、WS4EQではケーブル44およびケーブル45におけるケーブルロスに応じて約300MHzまでの低域において反射損失(出力)に影響を及ぼすリップルが生じるようになる。
【0049】
そこで、入力側および出力側に
図23(a)に示すイコライザー回路が設けられているウィルキンソン分配器20において、電気的特性に生じるリップルを抑制するために、出力側のイコライザー回路を
図23(b)に示すイコライザー回路とする。
図23(b)に示すイコライザー回路は、イコライザー回路が2段縦続されて構成されており、1段目のイコライザー回路と2段目のイコライザー回路の構成は、
図23(a)に示すイコライザー回路と同じとされており、1段目のイコライザー回路と2段目のイコライザー回路との間である両者を接続している線路とアース間に減衰器となる抵抗R3が接続されている。
図29に示すウィルキンソン分配器20を出力側のイコライザー回路において抵抗R3を設けたウィルキンソン分配器20に置き換えた場合の分配損失の周波数特性を
図32に、反射損失(出力)の周波数特性を
図33に示す。
図32および
図33では、出力側のイコライザー回路において抵抗R3を設けたウィルキンソン分配器20をWS4EQとして、従来の4分配器CS4と対比して示している。
図32に示す分配損失の周波数特性のグラフを参照すると、90.0MHz(m1)における分配損失はWS4EQで-16.0dB、CS4で-14.9dBとなり、960.0MHz(m3)における分配損失はWS4EQで-17.1dB、CS4で-17.0dBとなり、1.0GMHz(m4)における分配損失はWS4EQで-17.3dB、CS4で-17.3dBとなり、3.2GHz(m5)における分配損失はWS4EQで-22.2dB、CS4で-22.4dBとなる。すなわち、
図32を
図30と対比すると分かるようにWS4EQで分配損失の約500MHzまでに生じていたリップルは抑制されている。
【0050】
また、
図33に示す反射損失(出力)の周波数特性のグラフを参照すると、90.0MHz(m1)における反射損失(出力)はWS4EQで-15.8dB、CS4で-16.5dBとなり、960.0MHz(m3)における反射損失(出力)はWS4EQで-30.4dB、CS4で-30.4dBとなり、1.0GMHz(m4)における反射損失(出力)はWS4EQで-29.8dB、CS4で-29.8dBとなり、3.2GHz(m5)における反射損失(出力)はWS4EQで-23.1dB、CS4で-23.2dBとなる。すなわち、
図33を
図31と対比すると分かるようにWS4EQで反射損失(出力)の約300MHzまで生じていたリップルは抑制されている。
上述したように、出力側のイコライザー回路が
図23(a)に示す抵抗R3が接続されていないイコライザー回路とされている本発明の実施例のウィルキンソン分配器を中間用分配器とし、出力側のイコライザー回路が
図23(b)に示す抵抗R3が接続されているイコライザー回路とされている本発明の実施例のウィルキンソン分配器を端末用分配器としている。そうすると、
図30,
図31に示すWS4EQの分配損失および反射損失(出力)の周波数特性は本発明にかかる中間用分配器の周波数特性となる。この場合、中間用分配器においては通常は開放される出力端子はないので、出力端子が開放された際にリップルが生じている周波数特性とされていても支障は生じない。また、
図32,
図33に示すWS4EQの分配損失および反射損失(出力)の周波数特性は本発明にかかる端末用分配器の周波数特性であって、開放される出力端子があってもリップルは抑制されている。
なお、電気的特性に影響を及ぼすリップルは470MHz以下の帯域に生じていることから、CATVの伝送帯域に本発明にかかるウィルキンソン分配器を対応させなくてもよい場合は、使用される全ての分配器を中間用分配器としてもよい。
【0051】
次に、本発明の第2実施例のウィルキンソン分配器を使用するさらに他の態様の構成を
図34に示す。
図34に示すさらに他の使用の態様では、本発明にかかる分配数4の第2実施例のウィルキンソン分配器20がトーナメント方式で3段に縦続接続されており、1段目の第2実施例のウィルキンソン分配器20は中間用分配器(WS4Int)21Aとされ、2段目の第2実施例のウィルキンソン分配器20も中間用分配器(WS4Int)22Aとされ、3段目の第2実施例のウィルキンソン分配器20は端末用分配器(WS4Ter)23Bとされている。なお、2段目の中間用分配器(WS4Int)の数は4個、3段目の端末用分配器(WS4Ter)の数は16個とされているが、
図34においては2段目において1個の中間用分配器(WS4Int)21A、3段目において1個の端末用分配器(WS4Ter)23Bしか示しておらず、他の中間用分配器(WS4Int)および端末用分配器(WS4Ter)は省略して示している。
図34に示すさらに他の使用の態様において、所定長さ、例えば25mの7C同軸ケーブルとされるケーブルCa1からWS4Int21Aの入力端子INに共聴信号が入力されている。共聴信号には、UHF帯の地上デジタル放送信号およびBS/CS-IF信号が含まれており、CATVの下り信号が含まれていてもよい。WS4Int21Aで4分配され第1出力端子OUT1から出力される分配信号は、所定長さ、例えば25mの7C同軸ケーブルとされるケーブルCa2からWS4Int22Aの入力端子INに入力される。WS4Int22Aでは入力された分配信号がさらに4分配される。WS4Int22Aの第1出力端子OUT1から出力される分配信号は、所定長さ、例えば25mの7C同軸ケーブルとされるケーブルCa3からWS4Ter23Bの入力端子INに入力される。WS4Ter23Bでは入力された分配信号がさらに4分配されて、4つの出力端子OUT1~OUT4からそれぞれ出力される。WS4Ter23Bの4つの出力端子OUT1~OUT4から出力される分配信号のそれぞれは、所定長さ、例えば15mの5C同軸ケーブルとされるケーブルCa4~Ca7をそれぞれ介して、第1テレビ端子TN1ないし第4テレビ端子TN4のそれぞれから出力される。第1テレビ端子TN1ないし第4テレビ端子TN4にはテレビあるいはレコーダが接続されている。
【0052】
図34に示すさらに他の使用の態様では、ケーブルCa1~Ca7において上述したようにケーブルロスが生じるようになる。このようなケーブルロスは、WS4Int21AとWS4Int22Aとの間やWS4Int22AとWS4Ter23Bとの間に設けられた増幅器により補償されるが、増幅器に入力される分配信号にはケーブルロスを含めた出力レベルが一定に近いことが望まれる。
そこで、
図34に示すさらに他の使用の態様における「ケーブルロス+分配損失」の周波数特性を従来の4分配器CS4を3段縦続接続した場合と対比して
図35に示す。
図35では、WS4Int21AとWS4Int22AとWS4Ter23Bとが縦続接続された構成を「WS4Int*2+WS4Ter」として示し、従来の4分配器CS4を3段縦続接続した構成を「CS4*3」として示している。
図35に示す「ケーブルロス+分配損失」の周波数特性のグラフを参照すると、90.0MHz(m1)における「ケーブルロス+分配損失」はWS4Int*2+WS4Terで-36.5dB、CS4*3で-25.3dBとなり、960.0MHz(m3)における「ケーブルロス+分配損失」はWS4Int*2+WS4Terで-40.0dB、CS4*3で-37.9dBとなり、1.0GMHz(m4)における「ケーブルロス+分配損失」はWS4Int*2+WS4Terで-40.7dB、CS4*3で-39.3dBとなり、3.2GHz(m5)における「ケーブルロス+分配損失」はWS4Int*2+WS4Terで-51.7dB、CS4*3で-67.9dBとなる。すなわち、WS4Int*2+WS4Terの「ケーブルロス+分配損失」の周波数特性が平坦化されていることが分かる。これは、中間用分配器(WS4Int)と端末用分配器(WS4Ter)とでは、入力側および出力側にイコライザー回路が設けられているからである。
【0053】
また、端末用分配器(WS4Ter)において、出力側のイコライザー回路が
図16に示す変形例のイコライザー回路部EQOUT’とされた場合の
図34に示すさらに他の使用の態様における「ケーブルロス+分配損失」の周波数特性を従来の4分配器CS4を3段縦続接続した場合と対比して
図36に示す。
図36では、WS4Int21AとWS4Int22Aと変形例のイコライザー回路部EQOUT’とされたWS4Ter23Bとが縦続接続された構成を「WS4Int*2+WS4TerL」として示し、従来の4分配器CS4を3段縦続接続した構成を「CS4*3」として示している。
図36に示す「ケーブルロス+分配損失」の周波数特性のグラフを参照すると、90.0MHz(m1)における「ケーブルロス+分配損失」はWS4Int*2+WS4TerLで-36.4dB、CS4*3で-25.3dBとなり、960.0MHz(m3)における「ケーブルロス+分配損失」はWS4Int*2+WS4TerLで-39.4dB、CS4*3で-37.9dBとなり、1.0GMHz(m4)における「ケーブルロス+分配損失」はWS4Int*2+WS4TerLで-40.0dB、CS4*3で-39.3dBとなり、3.2GHz(m5)における「ケーブルロス+分配損失」はWS4Int*2+WS4TerLで-50.7dB、CS4*3で-67.9dBとなる。すなわち、WS4Int*2+WS4TerLの「ケーブルロス+分配損失」の周波数特性がより平坦化されていることが分かる。これは、端末用分配器(WS4Ter)において、出力側のイコライザー回路が
図16に示す変形例のイコライザー回路部EQOUT’とされているからである。
【0054】
以上説明したように、本発明にかかる実施例のウィルキンソン分配器においては、入力側および出力側に
図23(a)に示すイコライザー回路が設けられている構成を特徴的な回路構成としている。また、本発明の実施例にかかる端末用分配器において、出力側のイコライザー回路が
図16に示す変形例のイコライザー回路部EQOUT’とされている構成を特徴的な回路構成としている。この特徴的な構成を備える本発明にかかる実施例のウィルキンソン分配器を使用する
図34に示すさらに他の態様の構成においては、ケーブルCa1~Ca7とテレビ端子TN1~TN4の特性を含めると、従来分配器CS4の使用時と比較してCATV下り帯域(90MHz~962MHz)の周波数特性は平坦化され、3.2GHzのロスが16dB程度減るようになる。また、反射損失(入力)と図示しない反射損失(出力)も全帯域において10dB以下となり、端子間結合損失も15dB以上を確保できるようになると共に、CATV上り帯域(10~60MHz)での帯域内偏差も3dB以内に納まるようになる。このように、本発明にかかる実施例のウィルキンソン分配器においては、使用周波数帯域において良好な分配損失および端子間結合損失の周波数特性を得ることができるようになる。
【0055】
<イコライザー回路のパターン>
本発明の実施例にかかるウィルキンソン分配器における出力側に設けられるイコライザー回路のパターンを
図37(a)(b)(c)に示す。
図37(a)はイコライザー回路を設けない場合のEQ回路パターン70を示す図であり、
図37(b)はチップ部品を2並列に配置するチップ形状を3箇所設けたEQ回路パターン71を示す図であり、
図37(c)はチップ部品を3並列に配置するチップ形状を3箇所設けたEQ回路パターン72を示す図である。
図37(a)(b)(c)に示すEQ回路パターン70,EQ回路パターン71,EQ回路パターン72は、高周波特性の良好な基板、例えばガラスエポキシ基板等のおもて面に形成されている。EQ回路パターン70,EQ回路パターン71,EQ回路パターン72において長さLGおよび幅Wは同じとされており、長さLGは使用周波数帯域(470MHz~3224MHz)の中心周波数(1.85GHz)の波長をλとするとλ/4とされる。基板の比誘電率εrを4.0、板厚を1.0mm、基板とアース間のクリアランスを2.0mmとすると、75Ωの配線幅は約5.4mm、中心周波数1.85GHzでのλ/4は約33mmになる。すなわち、使用周波数帯域が470MHz~3224MHzとされる本発明の実施例にかかるウィルキンソン分配器における出力端子のインピーダンスが75Ωとされる時には、EQ回路パターン70,EQ回路パターン71,EQ回路パターン72の長さLGは約33mm、幅Wは例えば約5.4mmとされる。
【0056】
図37(b)に示すEQ回路パターン71は、
図38(a)に示すイコライザー回路用の回路パターンとされる。
図38(a)に示すイコライザー回路は、イコライザー回路が2段縦続され、その後段に直流カット回路が接続されて構成されている。1段目のイコライザー回路は抵抗R1とキャパシタC1との並列回路とされており、2段目のイコライザー回路は抵抗R2とキャパシタC2との並列回路とされてれており、直流カット回路はキャパシタC3,C4の並列回路とされている。イコライザー回路は、使用周波数帯域の高域より低域の損失が大きくなる周波数特性とされている。すなわち、EQ回路パターン71では、基板の中央と両脇との位置に3箇所のスリットが短辺方向に設けられており、第1のスリットの両端位置にまたがって長さDIの抵抗R1とキャパシタC1との2個のチップ部品Tip11がハンダ付け等で並列に接続されている。また、中央の第2のスリットの両端位置にまたがって長さDIの抵抗R2とキャパシタC2との2個のチップ部品Tip12がハンダ付け等で並列に接続されており、第3のスリットの両端位置にまたがって長さDIのキャパシタC3,C4との2個のチップ部品Tip13がハンダ付け等で並列に接続されている。
また、
図37(c)に示すEQ回路パターン72は、
図38(b)に示すイコライザー回路用の回路パターンとされる。
図38(b)に示すイコライザー回路は、イコライザー回路が2段縦続され、その後段に直流カット回路が接続されて構成されている。1段目のイコライザー回路は中央に抵抗R1が配置され、抵抗R1の両側にキャパシタC1,C2がそれぞれ並列に配置されており、2段目のイコライザー回路は中央に抵抗R2が配置され、抵抗R2の両側にキャパシタC3,C4がそれぞれ並列に配置されており、直流カット回路はキャパシタC5,C6,C7の並列回路とされている。イコライザー回路は、使用周波数帯域の高域より低域の損失が大きくなる周波数特性とされている。すなわち、EQ回路パターン72では、基板の中央と両脇との位置に3箇所のスリットが短辺方向に設けられており、第1のスリットのほぼ中央にまたがって抵抗R1、両端にまたがってキャパシタC1,C2の合計3個のチップ部品Tip21がハンダ付け等で並列に接続されている。また、中央の第2のスリットのほぼ中央にまたがって抵抗R2、両端にまたってキャパシタC3,C4の合計3個のチップ部品Tip22がハンダ付け等で並列に接続されており、第3のスリットのほぼ中央と両端にまたがってキャパシタC5,C6,C7の3個のチップ部品Tip23がハンダ付け等で並列に接続されている。
【0057】
チップ部品Tip11~Tip13,Tip21~Tip23は、長さDIが1.0mmで幅が0.5mmの1005型や長さDIが0.4mmで幅が0.2mmの0402型を用いることができる。
そこで、チップ部品Tip11~Tip13,Tip21~Tip23として1005型を用いた場合の
図37(b)(c)に示すEQ回路パターン71およびEQ回路パターン72で構成されたイコライザー回路の位相の周波数特性のグラフを、
図37(a)に示すイコライザー回路を設けていない場合と対比して
図39に示す。
図39では、
図37(a)に示すイコライザー回路を設けていない場合をθnonと、
図37(b)に示すEQ回路パターン71で構成されたイコライザー回路を「θEQ1005×2T」と、
図37(c)に示すEQ回路パターン72で構成されたイコライザー回路を「θEQ1005×3T」として示している。
図39に示す位相の周波数特性を参照すると、470MHz(m2)における位相はθnonで-22.71°、θEQ1005×2Tで-23.74°、θEQ1005×3Tで-22.92°となり、1.85GHz(m6)における位相はθnonで-90.10°、θEQ1005×2Tで-94.30°、θEQ1005×3Tで-91.04°となり、3.22GHz(m7)における位相はθnonで-159.01°、θEQ1005×2Tで-165.46°、θEQ1005×3Tで-160.35°となる。このように、1005型のチップ部品を2並列に設けた
図37(b)に示すEQ回路パターン71では3.22GHz(m7)における位相が約5%進み、1005型のチップ部品を3並列に設けた
図37(c)に示すEQ回路パターン72では3.22GHz(m7)における位相が約1%進み、進み位相に対応して波長が短縮されることから、進み位相に応じて基板を小型化することができる。
【0058】
また、チップ部品Tip11~Tip13,Tip21~Tip23として0402型を用いた場合の
図37(b)(c)に示すEQ回路パターン71およびEQ回路パターン72で構成されたイコライザー回路の位相の周波数特性のグラフを、
図37(a)に示すイコライザー回路を設けていない場合と対比して
図40に示す。
図40では、
図37(a)に示すイコライザー回路を設けていない場合をθnonと、
図37(b)に示すEQ回路パターン71で構成されたイコライザー回路を「θEQ0402×2T」と、
図37(c)に示すEQ回路パターン72で構成されたイコライザー回路を「θEQ0402×3T」として示している。
図40に示す位相の周波数特性を参照すると、470MHz(m2)における位相はθnonで-22.71°、θEQ0402×2Tで-24.27°、θEQ0402×3Tで-23.18°となり、1.85GHz(m6)における位相はθnonで-90.10°、θEQ0402×2Tで-96.35°、θEQ0402×3Tで-92.12°となり、3.22GHz(m7)における位相はθnonで-159.01°、θEQ0402×2Tで-168.85°、θEQ0402×3Tで-161.83°となる。このように、0402型のチップ部品を2並列に設けた
図37(b)に示すEQ回路パターン71では3.22GHz(m7)における位相が約10%進み、0402型のチップ部品を3並列に設けた
図37(c)に示すEQ回路パターン72では3.22GHz(m7)における位相が約3%進み、進み位相に対応して波長が短縮されることから、進み位相に応じて基板を小型化することができる。
上記したように、本発明の実施例にかかるウィルキンソン分配器における出力側に設けられるイコライザー回路のチップ部品を2並列に設けた場合は、イコライザー回路のチップ部品を3並列に設けた場合より進み位相となって、基板を小型化することができることから、
図21に示すウィルキンソン分配器10Aおよび
図22に示すウィルキンソン分配器20Aでは、出力側に設けられるイコライザー回路としてチップ部品を2並列に設けた
図37(b)に示すイコライザー回路を採用している。
【0059】
<第3実施例のウィルキンソン分配器>
次に、本発明の実施例のウィルキンソン分配器は筐体に収納されている。筐体に収納された本発明の第3実施例のウィルキンソン分配器100の構成を断面図で示す側面図を
図41に、平面図を
図42に示す。
これらの図に示すように、本発明の第3実施例のウィルキンソン分配器100は、筐体とされるケースを備えており、ケースは上面が開口された直方体の箱状の金属製とされたケース部101と、ケース部101の上面の開口を塞ぐようにケース部101の上面に固着される金属製の蓋部102とから構成されている。なお、
図42では蓋部102を省略して示している。ケース部101と蓋部102とから構成されているケースの内部には、ガラスエポキシ基板等の基板110が収納されており、基板110のおもて面には
図21あるいは
図22に示す本発明の実施例のウィルキンソン分配器10A,20Aのいずれかのパターンを形成することができる。
図42で図示する場合は、第2実施例のウィルキンソン分配器20Aのパターンが形成されている。ケース部101の底面から、アース接続用の3つの仕切り部101aが立設されて形成され、基板110には3つの仕切り部101aの形状に切り欠きが設けられている。なお、3つの仕切り部101a間の間隔およびケース部101の内側面との間隔は使用周波数帯域の中心周波数の1/4波長より狭い間隔とされている。ケース部101の前側面には同軸端子とされる入力端子103が設けられており、後側面には同軸端子とされる分配数に応じた数の出力端子104が設けられている。
図42で図示する場合は、分配数が4とされて、4個の出力端子104が設けられている。基板110に形成されたパターンを備える本発明の第3実施例のウィルキンソン分配器100には、共聴信号が基板110の一端に接続された入力端子103から入力され、基板110の他端に接続された出力端子104から分配出力が出力される。
【0060】
なお、基板110の裏面には何も形成されておらず、基板110のおもて面に形成されたパターンは、基板110の板厚と空気層111とを介してケース部101の底面の内面と対向している。この場合、ケース部101は金属製とされていることから、基板110のおもて面に形成されたパターンは、基板110の板厚に空気層111の厚さを足した間隔を隔ててケース部101の内面とされるアースと対向する。アースはパターンが対面するグランドであり、マイクロストリップラインとされる。この場合、パターンとグランド(アース)との間に基板110と空気層111とが介在する構成をサスペンデッド構造と云う。サスペンデッド構造とするのは次の理由による。
基板110をFR-4材のガラスエポキシ基板とすると、基板110の比誘電率εrは1GHzにおいて約4.3となり、
図41に示す構成において基板110の板厚を1.6mm、基板110と蓋部102とのクリアランスを10mmとすると、使用周波数帯域の中心周波数である1.85GHzでインピーダンス75Ω、150Ω、225Ωを得るためのパターンの導体幅はそれぞれ約1.42mm、約0.16mm、約0.01mmとなる。
また、基板110をCEM3材のガラスエポキシ基板とすると、基板110の比誘電率εrは1GHzにおいて約4.0となり、基板110の板厚を3.2mm、基板110と蓋部102とのクリアランスを10mmとすると、1.85GHzでインピーダンス75Ω、150Ω、225Ωを得るためのパターンの導体幅はそれぞれ約3.02mm、約0.40mm、約0.04mmとなる。
パターンの導体幅が0.01mmあるいは0.04mmの場合は、きわめて細い導体幅のパターンとなり電気抵抗が増大して配線損失が上昇するため、パターンとしては好適ではない。従って、225Ωのインピーダンスを用いる不等分配のウィルキンソン分配器には適合できないことになる。
ところで、10GHzの比誘電率εが約2.6とされ板厚3.2mmのマイクロ波用のふっ素樹脂系基板材を基板110とし、基板110と蓋部102とのクリアランスを10mmすれば、1.85GHzでのインピーダンス75Ω、150Ω、225Ωにおける導体幅がそれぞれ約4.27mm、約0.75mm、約0.12mmとなり、かろうじて約0.12mm以上となるが、板厚3.2mmは市場流通量が少なく、基板材コストおよび市場流通性を考慮すると、基板材として用いることは好適ではないことになる。
【0061】
そこで、
図41に示すようにサスペンデッド構造とすれば、空気層111の比誘電率は約1.0であることから、ガラスエポキシ基板とされた基板110の板厚を1.6mmとしても、実効比誘電率は1に近くなり、パターンの導体幅を広くできることから不等分配のウィルキンソン分配器にも適合できるようになる。この場合、基板110の取付位置のズレによる特性変化が大きくなるため、空気層111の厚さは基板110の板厚より大きくするのが好適とされる。また、ストリップラインをサスペンデッド構造で構成する場合は、基板110と蓋部102との距離を狭めることができる。この際には、ケース部101と蓋部102とがアースとされ、その間に基板110に形成されたパターンが挟まれることになる。
【0062】
<第4実施例のウィルキンソン分配器>
次に、筐体を小型にできる本発明の第4実施例のウィルキンソン分配器200の構成を断面図で示す平面図を
図43(a)に示し、斜視図を透過図で
図43(b)に示す。
これらの図に示すように、本発明の第4実施例のウィルキンソン分配器200は、筐体とされるケースがU字状に折り返されて形成されている。この場合、金属製とされたケース部201はU字状に折り返されて、内部にU字状の溝が形成されている。ケース部201の両側面は開口面とされており、ほぼ中央に配置された先端がU字状の形状とされたアース部となる中央部201aの周囲にガラスエポキシ基板等の基板210が配置されて、基板210は中央部201aの外表面から空気層211を介して所定間隔でU字状のケース部201内に収納されている。ケース部201を囲むように先端がU字状の形状とされた金属製の蓋部202が嵌挿されて、ケース部201の開口面を含む全面が覆われている。このように、第4実施例のウィルキンソン分配器200の筐体は、U字状に折り返されたケース部201と、ケース部201の全面を覆うように嵌挿されて固着された蓋部202とから構成されている。
【0063】
筐体内に収納された基板210のおもて面には
図21あるいは
図22に示す本発明の実施例のウィルキンソン分配器10A,20Aのいずれかのパターンを形成することができる。ケース部201の前面には同軸端子とされる入力端子203と、分配数に応じた数の出力端子204とが固着されている。基板210に形成されたパターンを備える本発明の第4実施例のウィルキンソン分配器200には、共聴信号が基板210の一端に接続された入力端子203から入力され、基板210の他端に接続された出力端子204から分配出力が出力される。なお、基板210の裏面には何も形成されておらず、基板210のおもて面に形成されたパターンは、基板210の板厚と空気層211を介してほぼ中央部201aの外表面と対向している。この場合、中央部201aを含むケース部201は金属製とされていることから、基板210のおもて面に形成されたパターンは、基板210の板厚と空気層211との厚さを隔てて中央部201aの外表面とされるアースと対向する。アースはパターンが対面するグランドであり、本発明の第4実施例のウィルキンソン分配器200においても、パターンとグランド(アース)との間に、基板210と空気層211とが介在するサスペンデッド構造とされている。本発明の第4実施例のウィルキンソン分配器200は、サスペンデッド構造とされていることから、パターンの導体幅を広くできるようになり不等分配のウィルキンソン分配器にも適合できる小型のウィルキンソン分配器200となる。
【0064】
<第5実施例のウィルキンソン分配器>
次に、本発明の第5実施例のウィルキンソン分配器300の構成を示す斜視図を
図44に示す。本発明の第5実施例のウィルキンソン分配器300は、本発明の第3実施例のウィルキンソン分配器100の変形例に相当し、
図44においては、蓋部を省略して示している。
図44に示すように、本発明の第5実施例のウィルキンソン分配器300の筐体とされるケースは、上面が開口された直方体の箱状の金属製とされたケース部301と、ケース部301の上面の開口を塞ぐようにケース部301の上面に固着される図示しない金属製の蓋部とから構成されている。ケース部301と蓋部とから構成されているケースの内部には、ガラスエポキシ基板等の図示しない基板が収納されており、基板のおもて面には
図21あるいは
図22に示す本発明の実施例のウィルキンソン分配器10A,20Aのいずれかのパターンを形成することができる。ケース部301の短辺側の一側面には同軸端子とされる入力端子311が固着されており、短辺側の他側面には同軸端子とされる分配数に応じた数の出力端子312が固着されている。図示する例では、分配数が4とされている。基板に形成されたパターンを備える本発明の第5実施例のウィルキンソン分配器300には、共聴信号が基板の一端に接続された入力端子311から入力され、基板の他端に接続された出力端子312から分配出力が出力される。
【0065】
ケース部301は加工しやすいアルミ材等の素材が用いられている。入力端子311と出力端子312には機械的強度が必要なことから、アルミ材等の素材は好適ではなく、例えば真鍮等の機械的強度が保てる素材が用いられている。そこで、本発明の第5実施例のウィルキンソン分配器300においては、ケース部301の短辺側の一側面の所定位置にネジが切られた取付孔301aを形成して、機械的強度の保てる素材で形成した入力端子311を取付孔301aに螺合して固着している。また、ケース部301の短辺側の他側面の所定位置にネジが切られた分配数に応じた数の取付孔301bを形成して、それぞれの取付孔301bに機械的強度の保てる素材で形成した出力端子312を螺合して固着している。これにより、入力端子311と出力端子312に十分な機械的強度が得られると共に、第5実施例のウィルキンソン分配器300を軽量化できるようになる。また、第5実施例のウィルキンソン分配器300はサスペンデッド構造とされるのが好適である。
【0066】
<第6実施例のウィルキンソン分配器>
次に、本発明の第6実施例のウィルキンソン分配器400の構成を示す平面図を
図45に示す。本発明の第6実施例のウィルキンソン分配器400は、本発明の第3実施例のウィルキンソン分配器100の変形例に相当し、
図45においては、蓋部を省略して示している。
図42を参照すると、ケース部101の長辺側の側面から突出して形成されている仕切り部101aとケース部101の角部の間の破線で囲んだスペースがデッドスペース120とされている。このため、ケース部101と蓋部102とからなる筐体が大きくなっている。
第6実施例のウィルキンソン分配器400では、基板410のおもて面に形成されたパターンを折り返して形成している。すなわち基板410のほぼ中央に入力端子側のパターンが配置され、入力端子側のパターンの両側に出力端子側のパターンが配置されるよう、パターンを中途で折り返して形成している。例えば、基板410のおもて面に第2実施例のウィルキンソン分配器20Aのパターンが形成されている場合は、パターン部410aで折り返してパターンを形成している。これにより、第6実施例のウィルキンソン分配器400では、筐体を小型化できるようになる。
第6実施例のウィルキンソン分配器400では、ケース部401の長辺側の一側面には、中央に入力端子403が設けられており、入力端子403の両側にそれぞれ2個ずつの出力端子404が設けられている。また、ケース部401の底面から立設して、アース接続用の2本の仕切り部401aが形成され、基板410には2本の仕切り部401aの形状に切り欠きが設けられて、入力端子側のパターンと出力端子側のパターンとが干渉しないよう仕切られている。また、第6実施例のウィルキンソン分配器400はサスペンデッド構造とされるのが好適である。
【産業上の利用可能性】
【0067】
以上説明した本発明の実施例にかかるウィルキンソン分配器は、使用周波数帯域の高域より低域の損失が大きくされている周波数特性とされているイコライザー回路が入力側と出力側とに接続されていることから、使用周波数帯域において良好な端子間結合損失の周波数特性を得ることができるようになる。
以上説明した本発明の実施例にかかるウィルキンソン分配器は、地上デジタル放送およびCS/BSの衛星放送のテレビ共聴システムや、CATVから送られてくる地上デジタル放送信号が含まれているCATV下り信号およびCS/BSの衛星放送のテレビ共聴システムの分配器として使用することができる。このようなテレビ共聴システムに用いられている分配器は多段に接続されるようになるが、本発明の実施例にかかるウィルキンソン分配器を多段に接続して使用した場合は、従来分配器の使用時と比較してCATV下り帯域の周波数特性は平坦化され、3.2GHzのロスが16dB程度減るようになる。
以上説明した本発明の実施例にかかるウィルキンソン分配器では、3.2GHzまでの電気特性への影響を考慮すると、使用される部品は対アース間の距離をとる必要があり、抵抗器の形状は電極間距離の広い大型チップ形状、もしくはリード抵抗が好適となる。この場合、3並列にする場合は、U字状に折り返された配線パターンにおいてもイコライザー回路のEQ特性を確保するために、内側に抵抗、両外側にコンデンサを配置することが好適となる。
また、本発明の実施例のウィルキンソン分配器における回路定数の一例を上げたが、回路定数は上げた回路定数に限られるものではなく、他の回路定数としてもよい。さらに、本発明の実施例のウィルキンソン分配器は470MHz~3224MHzの使用周波数帯域としたが、これに限ることはない。上記使用周波数帯域の比帯域は約150%となり、約150%の広帯域の比帯域の周波数帯域であれば、本発明の実施例のウィルキンソン分配器を適用することができる。
以上説明した本発明の実施例にかかるウィルキンソン分配器では、減衰器を抵抗1本の減衰器としたが、これに限ることはなく抵抗をπ型やL型に接続した減衰器としても良い。また、入力側のイコライザー回路を
図38(a)に示すイコライザー回路としても良い。すなわち、1段目と2段目のイコライザー回路を抵抗とキャパシタとの並列回路で構成した入力側のイコライザー回路としても良い。さらに、入力側および出力側のイコライザー回路を
図38(a)に示すイコライザー回路としても良い。
以上説明した本発明の実施例にかかるウィルキンソン分配器では、パターンとグランド(アース)との間に基板と空気層とが介在するサスペンデッド構造としたが、150Ω以下のインピーダンスを用いるウィルキンソン分配器の場合は、パターンの導体幅が広くなることからサスペンデッド構造としなくても良い。
【符号の説明】
【0068】
10 ウィルキンソン分配器、10A ウィルキンソン分配器、11 基板、20 ウィルキンソン分配器、20A ウィルキンソン分配器、21 基板、40 ウィルキンソン分配器、41,42,43 ケーブル、70,71,72 EQ回路パターン、100 ウィルキンソン分配器、101 ケース部、101a 仕切り部、102 蓋部、103 入力端子、104 出力端子、110 基板、111 空気層、120 デッドスペース、200 ウィルキンソン分配器、201 ケース部、202 蓋部、203 入力端子、204 出力端子、210 基板、211 空気層、300 ウィルキンソン分配器、301 ケース部、301a 取付孔、301b 取付孔、311 入力端子、312 出力端子、400 ウィルキンソン分配器、401 ケース部、401a 仕切り部、403 入力端子、404 出力端子、410 基板、410a パターン部、2000 ウィルキンソン回路、A,B,C,D 直流カット回路、CU,CU1,CU2 直流カット回路、Ca1~Ca7 ケーブル、D 直流カット回路、D 長さ、 イコライザー回路、EQIN,EQOUT イコライザー回路、EQOUT1,EQOUT2,EQOUT3 イコライザー回路、IN 入力端子、OUT1 第1出力端子、OUT2 第2出力端子、OUT3 第3出力端子、OUT4 第4出力端子、TN1 第1テレビ端子、TN2 第2テレビ端子、TN3 第3テレビ端子、TN4 第4テレビ端子、Tip11 チップ部品、Tip11,Tip12,Tip13,Tip21,Tip22,Tip23 チップ部品、W1,W2 分布定数線路