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特開2024-11188ジベンゾチオフェン骨格を有するヒドロキサム酸イオンを有機配位子とする金属有機構造体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011188
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】ジベンゾチオフェン骨格を有するヒドロキサム酸イオンを有機配位子とする金属有機構造体
(51)【国際特許分類】
   C07F 1/08 20060101AFI20240118BHJP
   C07F 15/06 20060101ALI20240118BHJP
   C07F 11/00 20060101ALI20240118BHJP
   C07F 15/04 20060101ALI20240118BHJP
   C07F 13/00 20060101ALI20240118BHJP
   C07F 15/02 20060101ALI20240118BHJP
   C07F 5/06 20060101ALI20240118BHJP
   C07F 7/28 20060101ALI20240118BHJP
   C07F 7/00 20060101ALI20240118BHJP
   C07D 333/76 20060101ALI20240118BHJP
   B01J 20/22 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
C07F1/08 B
C07F15/06
C07F11/00 A
C07F15/04
C07F13/00 A
C07F15/02
C07F5/06 D
C07F7/28 F
C07F7/00 A
C07D333/76
B01J20/22 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022113004
(22)【出願日】2022-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】300071579
【氏名又は名称】学校法人立教学院
(71)【出願人】
【識別番号】000004307
【氏名又は名称】日本曹達株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】箕浦 真生
(72)【発明者】
【氏名】小林 翔
(72)【発明者】
【氏名】菅又 功
(72)【発明者】
【氏名】白井 昭宏
【テーマコード(参考)】
4G066
4H048
4H049
4H050
【Fターム(参考)】
4G066AB05B
4G066AB06B
4G066AB10B
4G066AB15B
4G066AB21B
4G066AB23B
4G066BA26
4G066BA36
4G066CA38
4G066DA01
4H048AA01
4H048AB99
4H048VA20
4H048VA30
4H048VA42
4H048VA56
4H048VA80
4H048VB10
4H049VN05
4H049VN06
4H049VP01
4H049VP10
4H049VQ37
4H049VQ62
4H049VR42
4H049VU31
4H049VW01
4H050AA01
4H050AB99
4H050WB13
4H050WB21
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、ガス貯蔵機能を有する新規な金属有機構造体並びにそれを用いたガス貯蔵剤及びガス貯蔵方法を提供することにある。
【解決手段】式(1)で表される化合物のジアニオンと多価金属イオンとが結合してなる金属有機構造体。
【化1】
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表される化合物のジアニオンと多価金属イオンとが結合してなる金属有機構造体。
【化1】
(式(1)中、
Xは硫黄原子、SO、又は酸素原子である。
は、ヒドロキシ基、C1~6アルキル基、C1~6アルコキシ基又はハロゲノ基である。
n1及びn2は0~3のいずれかの整数である。Rが2以上のとき各R1は互いに同一でも異なっていてもよい。
は、それぞれ独立に、水素原子、又はC1~6アルキル基である。
Lは、以下の式(2)で表されるいずれかの2価の基である。
m1及びm2は0又は1である。Lが2以上のとき各Lは互いに同一でも異なっていてもよい。
【化2】
式(2)中、
は、ヒドロキシ基、C1~6アルキル基、C1~6アルコキシ基又はハロゲノ基である。
n3は0~4のいずれかの整数である。Rが2以上のとき各Rは互いに同一でも異なっていてもよい。
*及び**は結合位置を表し、**はCON(R)OHで表される基との結合位置を表す。)
【請求項2】
多価金属イオンが、元素の周期表の第2族~第13族の金属からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属イオンである請求項1に記載の金属有機構造体。
【請求項3】
補助配位子を構成成分として更に含む請求項1又は2のいずれかに記載の金属有機構造体。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の金属有機構造体を含むガス貯蔵剤。
【請求項5】
請求項1~3のいずれかに記載の金属有機構造体にガスを接触させる工程を含むガスの貯蔵方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジベンゾチオフェン骨格を有するヒドロキサム酸イオンを有機配位子とする金属有機構造体、前記金属有機構造体を含むガス貯蔵剤、及び前記金属有機構造体にガスを接触させる工程を含むガスの貯蔵方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属有機構造体(以下「MOF」ということがある。)は、金属イオンとそれらを連結する架橋性の有機配位子を組み合わせることで内部に空間(つまり細孔)を持つ高分子構造を有する固体状の物質であり、ガスの貯蔵や分離などの機能をもつ多孔性材料として、この十数年高い興味が持たれてきた。例えば、塩化ジルコニウムとターフェニルジカルボン酸をジメチルホルムアミド中で加熱することにより得られる表面積が4000m/gのMOFが、水素、メタン、アセチレン等のガスを貯蔵できることが知られている(特許文献1参照)。また、下記式で表されるジカルボン酸とFeCoO(CHCOO)又はFeO(CHCOO)を酢酸存在下、N-メチルピロリドン中、150℃で24時間加熱することにより、暗褐色の結晶としてMOFが得られ、このMOFは、水素、メタン、二酸化炭素、窒素等のガスを貯蔵できることが知られている(特許文献2参照)。
【0003】
【化1】
【0004】
また、特許文献2には下記式で表されるジカルボン酸から得られるジカルボン酸イオンとFeが結合した金属有機構造体が開示されている。
【0005】
【化2】
【0006】
このような開発が行われるなか、金属有機構造体は、用いる金属化合物、有機配位子、反応条件により大きく構造が変化することが知られており、ガス貯蔵機能を有する新規な金属有機構造体の開発が更に求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2009-133366号
【特許文献2】国際公開第2015-079229号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、ガス貯蔵機能を有する新規な金属有機構造体並びにそれを用いたガス貯蔵剤及びガス貯蔵方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、ジベンゾチオフェン骨格又はジベンゾフラン骨格を有する特定のジヒドロキサム酸を有機配位子として得られる新規な金属有機構造体を見いだした。また、それらの新規な金属有機構造体には、高い水素貯蔵能力があることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は以下に示す事項により特定されるものである。
[1]式(1)で表される化合物のジアニオンと多価金属イオンとが結合してなる金属有機構造体。
【化3】
(式(1)中、
Xは硫黄原子、SO、又は酸素原子である。
は、ヒドロキシ基、C1~6アルキル基、C1~6アルコキシ基又はハロゲノ基である。
n1及びn2は0~3のいずれかの整数である。Rが2以上のとき各R1は互いに同一でも異なっていてもよい。
は、それぞれ独立に、水素原子、又はC1~6アルキル基である。
Lは、以下の式(2)で表されるいずれかの2価の基である。
m1及びm2は0又は1である。Lが2以上のとき各Lは互いに同一でも異なっていてもよい。
【化4】
式(2)中、
は、ヒドロキシ基、C1~6アルキル基、C1~6アルコキシ基又はハロゲノ基である。
n3は0~4のいずれかの整数である。Rが2以上のとき各Rは互いに同一でも異なっていてもよい。
*及び**は結合位置を表し、**はCON(R)OHで表される基との結合位置を表す。)
[2]多価金属イオンが、元素の周期表の第2族~第13族の金属からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属イオンである上記[1]記載の金属有機構造体。
[3]補助配位子を構成成分として更に含む上記[1]又は[2]記載の金属有機構造体。
[4]上記[1]~[3]のいずれかに記載の金属有機構造体を含むガス貯蔵剤。
[5]上記[1]~[3]のいずれかに記載の金属有機構造体にガスを接触させる工程を含むガスの貯蔵方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の金属有機構造体は新規であり、水素、二酸化炭素、窒素等のガスを貯蔵することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の金属有機構造体は、式(1)で表される化合物のジアニオンと多価金属イオンとが結合してなる金属有機構造体である。
【0013】
【化5】
【0014】
式(1)中、Xは硫黄原子、SO、又は酸素原子である。Rは、ヒドロキシ基、C1~6アルキル基、C1~6アルコキシ基又はハロゲノ基である。n1及びn2は、Rの数を示し、0~3のいずれかの整数である。Rが2以上のとき各Rは互いに同一でも異なっていてもよい。Rは、それぞれ独立に、水素原子、又はC1~6アルキル基である。Lは、以下の式(2)で表されるいずれかの2価の基である。m1及びm2は、Lの数を示し、0又は1である。Lが2以上のとき各Lは互いに同一でも異なっていてもよい。
【0015】
【化6】
【0016】
およびRのC1~6アルキル基としては、直鎖でも、分岐鎖であってもよく、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、i-プロピル基、i-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、i-ペンチル基、ネオペンチル基、2-メチル-n-ブチル基、i-ヘキシル基等を挙げることができる。
のC1~6アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、s-ブトキシ基、i-ブトキシ基、t-ブトキシ基等を挙げることができる。
のハロゲノ基としては、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、イオド基等を挙げることができる。
【0017】
式(2)中、Rは、ヒドロキシ基、C1~6アルキル基、C1~6アルコキシ基又はハロゲノ基である。n3はRの数を示し、0~4のいずれかの整数である。Rが2以上のとき各Rは互いに同一でも異なっていてもよい。RのC1~6アルキル基としては、直鎖でも、分岐鎖であってもよく、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、i-プロピル基、i-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、i-ペンチル基、ネオペンチル基、2-メチル-n-ブチル基、i-ヘキシル基等を挙げることができる。RのC1~6アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、s-ブトキシ基、i-ブトキシ基、t-ブトキシ基等を挙げることができる。Rのハロゲノ基としては、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、イオド基等を挙げることができる。*及び**は結合位置を表し、**はCON(R)OHとの結合位置を表す。「C1~6」などの用語は、母核となる基の炭素原子数が1~6個などであることを表している。
式(1)で表される化合物として具体的には、以下の式に表す化合物等を例示することができる。以下の式ではXがSの場合を例示したが、XがO又はSOの場合も同様の構造を例示することができる。
【0018】
【化7】
【0019】
本発明の金属有機構造体における多価金属イオンとしては、2価以上の金属のイオンであれば、特に制限されないが、元素周期表の第2族~第13族の金属からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属のイオンが好ましく、Zn、Al、Cu、Zr、Ni、Co、Cr、Fe、Sc、Mo、Mn、Ti及びMgから選ばれる少なくとも1種の金属のイオンがより好ましい。本発明の金属有機構造体において、式(1)で表される化合物のジアニオンと結合する多価金属イオンは、1種でもよく2種以上でもよい。
【0020】
多価金属イオン源には、種々の金属化合物を用いることができる。具体的には、硝酸亜鉛(Zn(NO・xHO)、硝酸チタン(Ti(NO・xHO)、硝酸コバルト(Co(NO・xHO)、硝酸鉄(III)(Fe(NO・xHO)、硝酸鉄(II)(Fe(NO・xHO)、硝酸ニッケル(II)(Ni(NO・xHO)、硝酸銅(II)(Cu(NO・xHO)、硝酸アルミニウム(III)(Al(NO・xHO)、硝酸マグネシウム(II)(Mg(NO・xHO);塩化亜鉛(ZnCl・xHO)、塩化チタン(TiCl・xHO)、塩化ジルコニウム(ZrCl・xHO)、塩化コバルト(CoCl・xHO)、塩化鉄(III)(FeCl・xHO)、塩化鉄(II)(FeCl・xHO)、塩化クロム(III)(CrCl・xHO)、塩化スカンジウム(III)(ScCl・xHO)、塩化マンガン(II)(MnCl・xHO);酢酸亜鉛(Zn(CHCOO)・xHO)、酢酸チタン(Ti(CHCOO)・xHO)、酢酸ジルコニウム(Zr(CHCOO)・xHO)、酢酸コバルト(Co(CHCOO)・xHO)、酢酸鉄(III)(Fe(CHCOO)・xHO)、酢酸鉄(II)(Fe(CHCOO)・xHO);硫酸亜鉛(ZnSO・xHO)、硫酸チタン(Ti(SO・xHO)、硫酸ジルコニウム(Zr(SO・xHO)、硫酸コバルト(CoSO・xHO)、硫酸鉄(III)(Fe(SO・xHO)、硫酸鉄(II)(FeSO・xHO)、硫酸マグネシウム(II)(MgSO・xHO);水酸化亜鉛(Zn(OH)・xHO)、水酸化チタン(Ti(OH)・xHO)、水酸化ジルコニウム(Zr(OH)・xHO)、水酸化コバルト(Co(OH)・xHO)、水酸化鉄(III)(Fe(OH)・xHO)、水酸化鉄(II)(Fe(OH)・xHO);臭化亜鉛(ZnBr・xHO)、臭化チタン(TiBr・xHO)、臭化ジルコニウム(ZrBr・xHO)、臭化コバルト(CoBr・xHO)、臭化鉄(III)(FeBr・xHO)、臭化鉄(II)(FeBr・xHO);炭酸亜鉛(ZnCO・xHO)、炭酸コバルト(CoCO・xHO)、炭酸鉄(III)(Fe(CO・xHO);塩化酸化ジルコニウム(ZrOCl・xHO)、酢酸モリブデン(II)二量体((Mo(CHCOO))等が挙げられる。なお、xは、0~12の数である。これらは1種単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
【0021】
本発明の金属有機構造体は、式(1)で表わされる化合物以外の有機配位子を補助配位子として含むことができる。
金属有機構造体に補助配位子を含有させることで、金属有機構造体に高次構造を導入することができる。そのような補助配位子としては、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、5-シアノイソフタル酸、1,3,5-トリメシン酸、1,3,5-トリス(4-カルボキシフェニル)ベンゼン、4,4’-ジカルボキシビフェニル、3,5-ジカルボキシピリジン、2,3-ジカルボキシピラジン、1,3,5-トリス(4-カルボキシフェニル)ベンゼン、1,2,4,5-テトラキス(4-カルボキシフェニル)ベンゼン、9,10-アントラセンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、[1,1’:4’,1”]ターフェニル-3,3”,5,5”-テトラカルボン酸、ビフェニル-3,3”,5,5”-テトラカルボン酸、3,3’,5,5’-テトラカルボキシジフェニルメタン、1,3,5-トリス(4’-カルボキシ[1,1’-ビフェニル]-4-イル)ベンゼン、1,3,5-トリス(4-カルボキシフェニル)トリアジン、1,2-ビス(4-カルボキシ-3-ニトロフェニル)エテン、1,2-ビス(4-カルボキシ-3-アミノフェニル)エテン、trans,trans-ムコン酸、フマール酸、ピコリン酸、ニコチン酸、イソニコチン酸、4-(ピリジン-4-イル)安息香酸、ベンゾイミダゾール、イミダゾール、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、ピラジン、4,4’-ジピリジル、1,2-ジ(4-ピリジル)エチレン、1,2-ジ(4-ピリジル)エタン、2,7-ジアザピレン、4,4’-アゾビスピリジン、1,5-ナフチリジン、フェナジン、2ビス(3-(4-ピリジル)-2,4-ペンタンジオナト)銅等が挙げられる。
式(1)で表される化合物と補助配位子を用いる場合の混合モル比は特に制限されない。
【0022】
本発明の金属有機構造体の製造方法として、特に制限されず、溶媒拡散法、溶媒撹拌法、水熱法等の溶液法、反応溶液にマイクロ波を照射して系全体を短時間に均一に加熱するマイクロ波法、反応容器に超音波を照射することにより、反応容器中で圧力の変化が繰り返し起こり、この圧力の変化により、溶媒が気泡を形成し崩壊するキャビテーションと呼ばれる現象がおき、その際に約5000K、10000barもの高エネルギー場が局所的に形成される結晶の各生成の反応場となる超音波法、溶媒を用いずに、金属イオン発生源と有機配位子を混合する固相合成法、結晶水程度の水を添加して金属イオン発生源と有機配位子を混合するLAG(liquid assisted grinding)法等のいずれの方法も用いることができる。
【0023】
例えば、金属イオンの発生源となる金属化合物と溶媒とを含有する第一溶液、式(1)で表される化合物又はそのジアニオンと溶媒とを含有する第二溶液、及び、必要に応じて、補助配位子と溶媒とを含有する第三溶液をそれぞれ調製する工程と、第一溶液と、第二溶液及び第三溶液を混合して反応液を調製し、この反応液を加熱することで、金属有機構造体を得る工程と、を備える。第一~第三溶液は別々に調製する必要はなく、例えば、上記金属化合物、式(1)で表される化合物又はそのジアニオン、補助配位子、溶媒とを1度に混合して1つの溶液を調製してもよい。
【0024】
上記金属化合物と式(1)で表される化合物又はそのジアニオンとの混合モル比は、得られてくる金属有機構造体の細孔サイズ、表面特性に応じて任意に選択することができるが、式(1)で表される化合物又はそのジアニオン1モルに対して金属化合物を0.8モル以上用いるのが好ましく、さらに1モル以上用いるのが好ましい。
【0025】
反応液中の上記金属イオンの濃度は、20~200ミリモル/Lの範囲が好ましい。式(1)で表される化合物又はそのジアニオンの反応液中の濃度は、10~100ミリモル/Lの範囲が好ましい。補助配位子の反応液中の濃度は、10~100ミリモル/Lであるのが好ましい。
【0026】
用いる溶媒としては、特に限定されないが、N,N-ジメチルホルムアミド(以下「DMF」と記載することがある。)、N,N-ジエチルホルムアミド(以下「DEF」と記載することがある。)、N,N-ジメチルアセトアミド(以下「DMA」と記載することがある。)、N-メチル-2-ピロリドン(以下「NMP」と記載することがある。)、ジメチルスルホキシド(以下「DMSO」と記載することがある。)及び水からなる群より選ばれる1種又は2種以上を混合して用いることができる。また、これらの溶媒にメチルアルコール、エチルアルコール等のアルコールを混合して用いてもよい。
【0027】
反応液の加熱温度は、特に制限されないが、例えば、室温~140℃の範囲、70~140℃の範囲、80~130℃等の範囲を挙げることができる。
【0028】
本発明のガス貯蔵剤は、本発明の金属有機構造体を含む。本発明のガス貯蔵剤は、本発明の金属有機構造体のみからなっていてもよく、ガス貯蔵剤としての使用に支障をきたさない範囲で他の成分を含んでもよい。本発明のガス貯蔵剤の形状は特に制限されず、例えば、粉状、顆粒状、ペレット状等を挙げることができる。本発明の金属有機構造体は、水素、メタン、アセチレン、二酸化炭素、窒素等のガスを吸着または吸蔵することで、前記ガスを貯蔵することができる。本発明の金属有機構造体を用いたガスの貯蔵方法は、特に制限されないが、本発明の金属有機構造体とガスを接触させる方法が好ましく、接触させる方法は、特に制限されない。例えば、タンク中に、本発明の金属有機構造体を充填してガス貯蔵タンクとし、該タンク内にガスを流入する方法、タンクの内壁を構成する表面に本発明の金属有機構造体を担持させてガス貯蔵タンクとし、該タンク内にガスを流入する方法、タンクを本発明の金属有機構造体を含む材料で成形してガス貯蔵タンクとし、該タンク内にガスを流入する方法等を挙げることができる。
【実施例0029】
以下、本発明の実施例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。本発明の金属有機構造体を構成する式(1)で表される化合物として、以下の表1に示す有機配位子1~4を用いた。
【0030】
【表1】
【0031】
補助配位子を含む場合、その補助配位子しては、表2に示す補助配位子1~6を用いた。
【0032】
【表2】
【0033】
[製造例1]有機配位子1の合成
ジベンゾチオフェン-2,8-ジカルボン酸(2.00mmol)をDMF40mLに溶解させ、塩化オキサリル(6.00mmol)を0℃でゆっくり加えた。その後室温に昇温し、2.5時間攪拌した。これに、あらかじめヒドロキシルアミン塩酸塩(20.0mmol)のDMF溶液(20mL)に0℃でN-メチルモルホリン(30.0mmol)を加えて30分間低温で攪拌した懸濁液をゆっくり加えた。その後昇温させ、終夜攪拌した。
得られた反応溶液の溶媒を減圧留去し、水、メタノールで洗浄することで、1.56mmolのジベンゾチオフェン-2,8-ジヒドロキサム酸(有機配位子1)を無色固体として得た。
【0034】
[製造例2]有機配位子2の合成
製造例1のジベンゾチオフェン-2、8-ジカルボン酸の代わりにジベンゾチオフェン-3、7-ジカルボン酸を用いた以外は製造例1と同様の操作で行い、有機配位子2を無色固体として得た。
【0035】
[製造例3]有機配位子3の合成
製造例1のジベンゾチオフェン-2、8-ジカルボン酸の代わりにジベンゾチオフェン-3、7-ジカルボン酸-5,5-ジオキシドを用いた以外は製造例1と同様の操作で行い、有機配位子3を無色固体として得た。
【0036】
[製造例4]有機配位子4の合成
製造例1のジベンゾチオフェン-2、8-ジカルボン酸の代わりにジベンゾチオフェン-4、6-ジカルボン酸を用いた以外は製造例1と同様の操作で行い、有機配位子4を無色固体として得た。
【0037】
得られた有機配位子の1H-NMRデータを以下に示す。
有機配位子1
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ: 7.93 (d, J=8.4Hz, 2H), 8.15 (d, J=8.4Hz, 2H), 8.83 (s, 2H), 9.16(s, 2H), 11.4(s, 2H).
有機配位子2
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ: 7.89 (d, J=8.4Hz, 2H), 8.43 (s, 2H), 8.49 (d, J=8.4Hz, 2H), 9.16(2H, s), 11.4(s, 2H).
有機配位子3
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ:8.19 (d, J=8.0Hz, 2H), 8.28 (s, 2H), 8.35 (d, J=8.0Hz, 2H), 9.34(s, 2H), 11.6(s, 2H).
有機配位子4
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ: 7.58 (t, J=8.0Hz, 2H), 7.91 (d, J=8.0Hz, 2H), 8.56 (d, J=8.0Hz, 2H), 9.24(s, 2H), 11.5(s,2H).
【0038】
[実施例1-1]
有機配位子1(0.15mmol)、硝酸亜鉛六水和物(0.15mmol)にDMF3mLを加え、オーブン(反応条件:温度120℃、加熱時間24時間)にて加熱した。
室温に戻し、上澄みを除去した。DMF10mLを用い洗浄後、溶媒を除去し、クロロホルムへと溶媒を交換した。クロロホルムを10mL加え、終夜浸漬させた。クロロホルムを除去後、150℃で真空乾燥を5時間行い、無色固体(性状)として金属有機構造体1-1を得た。
[実施例1-2]~[実施例1-10]
下記表3に示す金属化合物を用い、表3に示す反応条件で反応を行う以外は、実施例1-1と同様の操作を行い、金属有機構造体1-2~1-10を得た。その結果を表3に示す。
【0039】
【表3】
【0040】
[実施例2-1]
有機配位子1(0.15mmol)をDMF3mLに溶解させ、そこに補助配位子5(0.15mmol)および硝酸亜鉛六水和物(0.15mmol)を加え、オーブン(反応条件:温度90℃、加熱時間48時間)にて加熱した。
室温に戻し、上澄みを除去した。DMF10mLを用い洗浄後、溶媒を除去し、クロロホルムへと溶媒を交換した。クロロホルムを10mL加え、終夜浸漬させた。クロロホルムを除去後、150℃で真空乾燥を5時間行い、無色固体(性状)として金属有機構造体2-1を得た。
[実施例2-2]~[実施例2-13]
下記表4に示す金属化合物および補助配位子を用い、表4に示す反応条件で反応を行う以外は、実施例2-1と同様の操作を行い、金属有機構造体2-2~2-13を得た。その結果を表4に示す。
【0041】
【表4】
【0042】
[実施例3-1]
有機配位子2(0.1mmol)、硝酸亜鉛六水和物(0.1mmol)にDMF2mLを加え、オーブン(反応条件:温度120℃、加熱時間48時間)にて加熱した。
室温に戻し、上澄みを除去した。DMF10mLを用い洗浄後、溶媒を除去し、クロロホルムへと溶媒を交換した。クロロホルムを10mL加え、終夜浸漬させた。クロロホルムを除去後、150℃で真空乾燥を5時間行い、無色固体(性状)として金属有機構造体3-1を得た。
[実施例3-2]~[実施例3-17]
下記表5に示す金属化合物を用い、表5に示す反応条件で反応を行う以外は、実施例3-1と同様の操作を行い、金属有機構造体3-2~3-17を得た。その結果を表5に示す。
【0043】
【表5】
【0044】
[実施例4-1]
有機配位子2(0.1mmol)をDMF4mLに溶解させ、そこに補助配位子5(0.1mmol)および硝酸亜鉛六水和物(0.1mmol)を加え、オーブン(反応条件:温度90℃、加熱時間48時間)にて加熱した。
室温に戻し、上澄みを除去した。DMF10mLを用い洗浄後、溶媒を除去し、クロロホルムへと溶媒を交換した。クロロホルムを10mL加え、終夜浸漬させた。クロロホルムを除去後、150℃で真空乾燥を5時間行い、無色固体(性状)として金属有機構造体4-1を得た。
[実施例4-2]~[実施例4-44]
下記表6に示す金属化合物および補助配位子を用い、表6に示す反応条件で反応を行う以外は、実施例4-1と同様の操作を行い、金属有機構造体4-2~4-44を得た。その結果を表6に示す。なお、実施例4-10、および4-11では、補助配位子を表中に記載の当量数で添加した。
【0045】
【表6】
【0046】
[実施例5-1]
有機配位子3(0.1mmol)、硝酸亜鉛六水和物(0.1mmol)にDMF2mLを加え、オーブン(反応条件:温度120℃、加熱時間48時間)にて加熱した。
室温に戻し、上澄みを除去した。DMF10mLを用い洗浄後、溶媒を除去し、クロロホルムへと溶媒を交換した。クロロホルムを10mL加え、終夜浸漬させた。クロロホルムを除去後、150℃で真空乾燥を5時間行い、黄色固体(性状)として金属有機構造体5-1を得た。
[実施例5-2]~[実施例5-7]
下記表7に示す金属化合物を用い、表7に示す反応条件で反応を行う以外は、実施例5-1と同様の操作を行い、金属有機構造体5-2~5-7を得た。その結果を表7に示す。
【0047】
【表7】
【0048】
[実施例6-1]
有機配位子3(0.1mmol)をDMF2mLに溶解させ、そこに補助配位子5(0.1mmol)および硝酸亜鉛六水和物(0.1mmol)を加え、オーブン(反応条件:温度90℃、加熱時間48時間)にて加熱した。
室温に戻し、上澄みを除去した。DMF10mLを用い洗浄後、溶媒を除去し、クロロホルムへと溶媒を交換した。クロロホルムを10mL加え、終夜浸漬させた。クロロホルムを除去後、150℃で真空乾燥を5時間行い、無色固体(性状)として金属有機構造体6-1を得た。
[実施例6-2]~[実施例6-25]
下記表8に示す金属化合物および補助配位子を用い、表8に示す反応条件で反応を行う以外は、実施例6-1と同様の操作を行い、金属有機構造体6-2~6-25を得た。その結果を表8に示す。なお、実施例6-2、6-3、6-7、および6-8では、補助配位子を表中に記載の当量数で添加した。
【0049】
【表8】
【0050】
[実施例7-1]
有機配位子4(0.1mmol)、硝酸亜鉛六水和物(0.1mmol)にDMF2mLを加え、オーブン(反応条件:温度120℃、加熱時間24時間)にて加熱した。
室温に戻し、上澄みを除去した。DMF10mLを用い洗浄後、溶媒を除去し、クロロホルムへと溶媒を交換した。クロロホルムを10mL加え、終夜浸漬させた。クロロホルムを除去後、150℃で真空乾燥を5時間行い、無色固体(性状)として金属有機構造体7-1を得た。
[実施例7-2]~[実施例7-8]
下記表9に示す金属化合物を用い、表9に示す反応条件で反応を行う以外は、実施例7-1と同様の操作を行い、金属有機構造体7-2~7-8を得た。その結果を表9に示す。
【0051】
【表9】
【0052】
[実施例8-1]
有機配位子4(0.1mmol)をDMF3mLに溶解させ、そこに補助配位子5(0.1mmol)および硝酸亜鉛六水和物(0.1mmol)を加え、オーブン(反応条件:温度90℃、加熱時間48時間)にて加熱した。
室温に戻し、上澄みを除去した。DMF10mLを用い洗浄後、溶媒を除去し、クロロホルムへと溶媒を交換した。クロロホルムを10mL加え、終夜浸漬させた。クロロホルムを除去後、150℃で真空乾燥を5時間行い、無色固体(性状)として金属有機構造体8-1を得た。
[実施例8-2]~[実施例8-12]
下記表10に示す金属化合物および補助配位子を用い、表10に示す反応条件で反応を行う以外は、実施例8-1と同様の操作を行い、金属有機構造体8-2~8-12を得た。その結果を表10に示す。
【0053】
【表10】
【0054】
[実施例9]
(BET比表面積測定及び水素貯蔵量測定)
得られた金属有機構造体の一部について、BET比表面積及び77K-大気圧における水素貯蔵量を測定した。
BET比表面積及び77K-大気圧における水素貯蔵量の測定は、ガス吸着量測定装置Tristar-II(Micromeritics社製)を用いて行った。
BET比表面積は次の方法で算出した。金属有機構造体の50mg程度を、ガラスセルの内部に入れた。ガラスセルの内部は135℃の温度で真空まで減圧し、6時間乾燥させた。ガラスセルをガス吸着量測定装置に装着し、液体窒素入りの恒温槽に浸漬した。ガラスセルに含有される窒素の圧力を徐々に増加させた。ガラスセルの内部に導入された窒素の圧力が1.0×10Paとなるまで測定を行った。
77K常圧での水素貯蔵量は次の方法で算出した。窒素の測定後、水素へとガス種を変更し測定を行った。ガラスセルに含有される水素の圧力を徐々に増加させた。ガラスセルの内部に導入された水素の圧力が1.0×10Paとなるまで測定を行った。
測定したBET比表面積の結果を表11に示した。併せて、測定した77K-大気圧における水素貯蔵量を表11に示した。
【0055】
【表11】
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の金属有機構造体は、水素等のガスを実用的な水準で貯蔵できる。そのため、燃料電池等の水素を利用したエネルギー分野に好適に使用できる。