(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111884
(43)【公開日】2024-08-20
(54)【発明の名称】端子構造
(51)【国際特許分類】
H01M 50/507 20210101AFI20240813BHJP
H01M 50/517 20210101ALI20240813BHJP
H01M 50/503 20210101ALI20240813BHJP
H01M 50/209 20210101ALI20240813BHJP
H01M 50/553 20210101ALI20240813BHJP
H01M 50/55 20210101ALI20240813BHJP
H01M 50/588 20210101ALI20240813BHJP
H01M 50/591 20210101ALI20240813BHJP
【FI】
H01M50/507
H01M50/517
H01M50/503
H01M50/209
H01M50/553
H01M50/55 101
H01M50/588
H01M50/591
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023016563
(22)【出願日】2023-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒川 健也
(72)【発明者】
【氏名】坂本 浩太郎
【テーマコード(参考)】
5H040
5H043
【Fターム(参考)】
5H040AA18
5H040AT02
5H040AY05
5H040AY06
5H040DD03
5H043AA04
5H043BA19
5H043CA04
5H043FA04
5H043GA23
5H043GA25
5H043JA01D
5H043JA02D
5H043KA09F
5H043KA24
5H043KA28
5H043KA30
5H043LA02
(57)【要約】
【課題】セル間バスバーを取り外す際、締結部材が脱落しても二次電池間短絡を起こさない。
【解決手段】外装容器上部に形成された端子を備える二次電池に配設され、該上部を覆うキャップと、該キャップ上に配設されるバスバーと、を備え、該キャップは、前記端子を露出させる開口部と、前記バスバーの一端部が載置される端子面と、該バスバーの他端部が載置される締結具配置面と、該締結具配置面に形成され締結具を空転しないように収容する窪み部と、該窪み部に収容された該締結具及び該締結具配置面上に載置された該バスバー側方に立設し該バスバーの前記一端部から前記他端部に向かう第一方向に延在する保護壁と、を備え、前記二次電池が複数並べられセル間バスバーで接続される場合に、前記保護壁が1つの前記二次電池の端子に接続された前記締結具と該1つの二次電池の隣の別の該二次電池の端子に接続された前記締結具との間を仕切る端子構造。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電要素が内部に収容された外装容器、及び該外装容器の上面に形成された端子を備える二次電池に配設され、
樹脂材で形成され該外装容器の上部に接続され該上部を覆うキャップと、
該キャップ上に配設され、前記端子に溶接された一端部と、該一端部に一体的に接続され該一端部から立ち上がる接続片と、該接続片に一体的に接続された他端部と、を有するバスバーと、を備え、
前記キャップは、前記端子を上方に向かって露出させる開口部と、前記バスバーの一端部が載置される端子面と、該端子面との間に段差を設け前記バスバーの他端部が載置される締結具配置面と、該締結具配置面に形成され締結具を空転しないように収容する窪み部と、該窪み部に収容され前記バスバーにより前記端子と接続された前記締結具と、該窪み部に収容された該締結具及び該締結具配置面上に載置された前記バスバーの側方において立設し前記バスバーの前記一端部から前記他端部に向かう第一方向に沿って延在する保護壁と、を備え、
前記二次電池が複数並べられてセル間バスバーで接続されモジュールを形成する場合に、前記保護壁が、1つの前記二次電池の端子に接続された前記締結具と該1つの二次電池の隣に位置する別の該二次電池の端子に接続された前記締結具との間を仕切る端子構造。
【請求項2】
前記窪み部に収容された前記締結具は、六角ボルトであり、
ワッシャを有し、該六角ボルトに螺合し、前記セル間バスバーを該六角ボルトと共に挟み込む固定ナットを備え、
前記二次電池が複数並べられてセル間バスバーで接続されモジュールを形成し、
1つの前記二次電池の端子と該1つの二次電池の隣に位置する別の該二次電池の端子との間の距離が、前記ワッシャ及び前記固定ナットの最大寸法よりも小さい場合には、前記保護壁の高さは前記固定ナットよりも高くし、
1つの前記二次電池の端子と該1つの二次電池の隣に位置する別の該二次電池の端子との間の距離が、前記ワッシャ及び前記固定ナットの最大寸法以上である場合には、前記保護壁の高さは、下記式(1)を満たす高さHである請求項1に記載の端子構造。
x=a+c
y=b+(d-b)/2
B=(x2+y2)1/2
z=y-(B/2+f)
保護壁の高さH>(x×z/y)+e・・・(1)
a:固定ナットの高さ
c:ワッシャの高さ
b:固定ナットの対角距離
d:ワッシャの外径
B:ワッシャ及び固定ナットの最大寸法
f:保護壁の厚さ
e:セル間バスバーの厚さ
【請求項3】
前記キャップは、前記バスバーの前記窪み部に収容された前記締結具及び前記締結具配置面上に載置された該バスバーの側方において立設し、前記第一方向に直交する第二方向に沿って延在する第二保護壁を備える、請求項1または2に記載の端子構造。
【請求項4】
前記保護壁に、該保護壁の厚さ方向に向かって窪む形状のノッチが該保護壁の延在方向に沿って形成された請求項1または2に記載の端子構造。
【請求項5】
前記キャップは、前記バスバーの一端部を前記端子面に向かって押圧するスナップフィットを備える請求項1または2に記載の端子構造。
【請求項6】
前記二次電池の前記端子が、柱状のボルト端子であり、
前記キャップの開口部から該ボルト端子が上方に向かって突出した、請求項1に記載の端子構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、端子構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高エネルギー密度電池として、リチウムイオン二次電池や非水電解質二次電池などの研究開発が盛んに進められている。二次電池(セル)は、ハイブリッド自動車や電気自動車といった車両用電源、又は携帯電話基地局の無停電電源等として期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
角型リチウムイオン二次電池のセル端子は、例えば、アルミニウムからなる凸部として形成されている。そして、大容量の電流を流す導体であるバスバーは、レーザ溶接等によって該セル端子に接合されている。そして、二次電池を複数組み合わせてモジュール(組電池)を形成する場合等において、二次電池間を接続するセル間バスバーもアルミニウムで形成されたセル端子と溶接できるアルミ材で形成されている必要がある。そして、複数の二次電池を並列させて、セル間バスバーを隣り合う二次電池間に架け渡してから、二次電池とセル間バスバーとをレーザ溶接により接合するが、大がかりなレーザ溶接設備が必要になる。また、多数の二次電池でモジュールを構成する場合、溶接作業に多くの時間が掛かる。
【0005】
セル間バスバーのレーザ溶接を行わずに済む方法として、セル端子をねじ構造とすることで、セル間バスバーをセル端子のネジ構造にはめ込んでナットで締結する構造がある。この構造を採用する場合、二次電池の上部にキャップを被せて、ねじ締結時にセル間バスバー、及びセル端子等に過度の力が作用しないようにしている。
【0006】
二次電池のリユースに関しては、製造した組電池単位でのリユースが一般的である。ここで、最大劣化した二次電池によるモジュール特性が基準となり、組電池単位での性能差が生じる。そのため、一定期間使用した後の二次電池をリユースする場合に、同じ劣化度合いの二次電池を複数選定して再度組み合わせる。該再度の組み合わせにおいて、二次電池のセル端子とセル間バスバーとをレーザ溶接している構造を採用していた場合には、二次電池単位での分解は難しく、リユース自体が難しい。
【0007】
セル端子のネジ構造にナットを嵌め込んでセル間バスバーを締結する構造を採用している場合には、二次電池のリユースが可能となる。しかし、ナット等の締結又は取り外し作業においてナット等の脱落があった際に、落下したナット等が隣り合うセル端子を接続して二次電池間で短絡が発生するおそれがある。
【0008】
よって、例えば二次電池同士をセル間バスバーによって接続する場合、又は二次電池間をつなぐセル間バスバーを取り外す場合等に、ナット等の締結部材が脱落しても、二次電池間で短絡が発生してしまうことを防ぐという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施形態である端子構造は、発電要素が内部に収容された外装容器、及び該外装容器の上面に形成された端子を備える二次電池に配設される。そして、本実施形態の端子構造は、樹脂材で形成され該外装容器の上部に接続され該上部を覆うキャップと、該キャップ上に配設され、前記端子に溶接された一端部と、該一端部に一体的に接続され該一端部から立ち上がる接続片と、該接続片に一体的に接続された他端部と、を有するバスバーと、を備え、前記キャップは、前記端子を上方に向かって露出させる開口部と、前記バスバーの一端部が載置される端子面と、該端子面との間に段差を設け前記バスバーの他端部が載置される締結具配置面と、該締結具配置面に形成され締結具を空転しないように収容する窪み部と、該窪み部に収容され前記バスバーにより前記端子と接続された前記締結具と、該窪み部に収容された該締結具及び該締結具配置面上に載置された前記バスバーの側方において立設し前記バスバーの前記一端部から前記他端部に向かう第一方向に沿って延在する保護壁と、を備え、前記二次電池が複数並べられてセル間バスバーで接続されモジュールを形成する場合に、前記保護壁が、1つの前記二次電池の端子に接続された前記締結具と該1つの二次電池の隣に位置する別の該二次電池の端子に接続された前記締結具との間を仕切る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、二次電池、及び端子構造の一例を示す分解斜視図である。
【
図2】
図2は、二次電池の上部をキャップが覆った状態で、キャップ上にバスバーが配設された状態を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、二次電池の上部を覆ったキャップの窪み部に締結具の別例である六角ナットが嵌め込まれた状態で、キャップ上にバスバーが配設された状態を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、Y軸方向における保護壁が計2枚であるキャップが二次電池の上部を覆った状態を説明する斜視図である。
【
図5】
図5は、二次電池に配設された実施形態2の端子構造を示し、実施形態2の端子構造のキャップの窪み部に締結具として六角ボルトが配設された状態を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、二次電池に配設された実施形態2の端子構造を示し、実施形態2の端子構造のキャップの窪み部に締結具として六角ナットが配設された状態を示す斜視図である。
【
図7】
図7は、二次電池に配設された実施形態3の端子構造を示し、実施形態3の端子構造のキャップの窪み部に締結具として六角ボルトが配設された状態を示す斜視図である。
【
図8】
図8は、二次電池に配設された実施形態3の端子構造を
図7のF1-F1線で切断した断面図である。
【
図9】
図9は、二次電池に配設された実施形態3の端子構造において、キャップに形成された断面三角形状の別例のノッチを説明する断面図である。
【
図10】
図10は、二次電池に配設された実施形態3の端子構造を示し、実施形態3の端子構造のキャップの窪み部に締結具として六角ナットが配設された状態を示す斜視図である。
【
図11】
図11は、二次電池に配設された実施形態4の端子構造を示し、実施形態4の端子構造のキャップの窪み部に締結具として六角ボルトが配設された状態を示す斜視図である。
【
図12】
図12は、二次電池に配設された実施形態4の端子構造を
図11のF2-F2線で切断した断面図である。
【
図13】
図13は、二次電池に配設された実施形態4の端子構造を示し、実施形態4の端子構造のキャップの窪み部に締結具として六角ナットが配設された状態を示す斜視図である。
【
図14】
図14は、二次電池に配設された実施形態4の端子構造のキャップがスナップフィットを計8つ備えており、実施形態4の端子構造のキャップの窪み部に締結具として六角ボルトが配設された状態を示す斜視図である。
【
図15】
図15は、二次電池に配設された実施形態4の端子構造のキャップがスナップフィットを計8つ備えており、実施形態4の端子構造のキャップの窪み部に締結具として六角ナットが配設された状態を示す斜視図である。
【
図16】
図16は、端子がボルト端子である変形例の二次電池上に実施形態1の端子構造が配設されており、実施形態1の端子構造のキャップの窪み部に締結具として六角ボルトが配設された状態を示す斜視図である。
【
図17】
図17は、端子がボルト端子である変形例の二次電池上に実施形態2の端子構造が配設されており、実施形態2の端子構造のキャップの窪み部に締結具として六角ボルトが配設された状態を示す斜視図である。
【
図18】
図18は、端子がボルト端子である変形例の二次電池上に実施形態3の端子構造が配設されており、実施形態3の端子構造のキャップの窪み部に締結具として六角ボルトが配設された状態を示す斜視図である。
【
図19】
図19は、端子がボルト端子である変形例の二次電池上に実施形態4の端子構造が配設されており、実施形態4の端子構造のキャップの窪み部に締結具として六角ボルトが配設された状態を示す斜視図である。
【
図20】
図20は、端子構造が配設された複数の二次電池、二次電池を収容してモジュールを形成するケース、及び隣り合う二次電池を接続するセル間バスバーを示す斜視図である。
【
図21】
図21は、セル間バスバーによって一つの二次電池の正極端子と隣に位置する別の二次電池の負極端子とが接続されてモジュールが形成された状態を示す断面図である。
【
図22】
図22は、取り外されて落下したワッシャ付きの固定ナットが隣り合う端子間を接続してショートを発生させてしまうことがないように、保護壁によって防止している状態を説明する断面図である。
【
図23】
図23は、落下したワッシャ付きの固定ナットが隣り合う端子に同時に接触してしまうことがないようにするための保護壁の必要な高さについて説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1に示す二次電池10は、電池セル、又は単電池とも称される。二次電池10は、一例として、リチウムイオン電池などの非水電解質二次電池であり、例えば、アルミニウムまたはアルミニウム合金で形成された扁平又は略直方形状の外装容器2と、外装容器2内に非水電解液又は水系電解液と共に収容された発電要素27と、を備えている。
【0012】
なお、以下の説明では、X軸Y軸Z軸直交座標系を用いる。X軸方向は、+X方向と-X方向とを含む。Y軸方向は、+Y方向と-Y方向とを含む。Z軸方向は、+Z方向と-Z方向とを含む。例えば、X軸Y軸平面は水平面であり、Z軸方向は鉛直方向である。
【0013】
外装容器2は、有底矩形筒状の容器本体20と、容器本体20の図示しない開口に溶融等によって取り付けられた矩形板状の蓋21とを有する。蓋21の上面22で二次電池10の長手方向(X軸方向)の両側となる領域に正極端子23と負極端子24との2種の端子が配設されている。また、二次電池10は、該上面22に外装容器2内に発生したガスを排出するラブチャー25、及び非水電解液を外装容器2の内部に注入するための注液口26を備えている。
【0014】
電流入出力用の正極端子23及び負極端子24は、蓋21にかしめ固定されるか、あるいは蓋21を成形する際に鋳込まれることで、蓋21に取り付けられている。蓋21と正極端子23及び負極端子24は、電気的に絶縁されている。正極端子23及び負極端子24は、例えば、略平坦な平板状に形成されている。
【0015】
破線で簡略化して示す発電要素27の正極は、正極端子23と電気的に接続している。発電要素27の負極は、負極端子24と電気的に接続している。発電要素27は例えば、倦回型電極群を含む。
【0016】
ラブチャー25は、蓋21の正極端子23と負極端子24との間に位置する薄肉部にX字状の溝部を設けたものである。
【0017】
二次電池10に配設される本実施形態1の端子構造12は、樹脂材で形成され外装容器2の上部に接続され上部を覆うキャップ3と、キャップ3上に配設され、例えば正極端子23にろう材を用いて溶接される一端部41と、一端部41に一体的に接続され一端部41から立ち上がる接続片42と、接続片42に一体的に接続された他端部43と、を有するバスバー4と、を備えている。なお、負極端子24にも上記バスバー4が接続される。即ち、キャップ3上に、バスバー4は2つ配設されている。
【0018】
キャップ3を形成するプラスチック等の樹脂材は、電気伝導性を持たず、電解液に対する耐食性を有するものであれば、特に限定されない。樹脂材の具体例には、ポリプロピレン、ポリエチレン(例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、又は低密度ポリエチレン(LDPE))、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等が含まれる。
【0019】
キャップ3は、全体の外形が長手方向を二次電池10の長手方向(X軸方向)と平行とする平面視矩形に形成された基台30と、基台30の下面の外周側の領域において垂下したスカート部31と、基台30の上面の中央に貫通形成されたラブチャー露出口32と、基台30の上面でキャップ3の長手方向(X軸方向)の両側となる領域にラブチャー露出口32を挟んでそれぞれ形成された2つの開口部33と、を備えている。
【0020】
基台30の下面とスカート部31で囲まれた略直方体状の空間に、二次電池10の上部側が嵌合する。そして、例えば、基台30の下面に対して、蓋21の上面22の正極端子23、注液口26、ラブチャー25、及び負極端子24を除いた領域が接着剤等によって接着され、キャップ3が二次電池10の上部側にかぶせられて接続された状態になる。該接着剤は、例えば、2液硬化型のエポキシ樹脂系接着剤等であるが、これに限定されず、極薄の両面テープであってもよい。なお、キャップ3と二次電池10との接続は、接着剤を用いた例に限定されない。
【0021】
例えば、基台30の上面の-X方向側の領域には、正極端子23側であることを示す+マーク300等が印字されている。また、例えば、ラブチャー露出口32の周囲は基台30の上面に立設された壁によって4方から囲繞されている。
【0022】
基台30の上面に形成された2つの開口部33の周囲には、例えば、基台30の上面に一体的に形成された平面視矩形の枠330と、枠330のY軸方向における2つの上端に立設され基台30の長手方向(X軸方向)に延在する2枚の保護壁34と、がそれぞれ配設されている。なお、キャップ3の構造をわかりやすくするために、保護壁34を
図1においては2点鎖線で示している。
【0023】
基台30の上面の枠330の内側の領域は、例えば、一段段差が設けられており、基台30の上面の中で一段高い位置にある締結具配置面304と、締結具配置面304よりも一段低く基台30の上面の枠330よりも外側の領域と同じ高さにある端子面306と、を備えている。
【0024】
端子面306には、基台30を厚さ方向に貫通する開口部33が形成されている。開口部33は、例えば平面視略矩形状となっており、正極端子23、又は負極端子24の全体を上方に露出させる大きさに設定されている。
【0025】
締結具配置面304には、例えば、平面視六角形の窪み部305が基台30の厚さ方向に切り欠かれて形成されている。該窪み部305には、締結具の一例である
図1、
図2に示す六角ボルト37の頭部370を嵌め込むことができる。また、例えば、窪み部305から六角ボルト37の頭部370は、上方にはみ出ないようになっている。
【0026】
キャップ3が二次電池10の上部側に被せられた状態において、キャップ3の基台30の一方の開口部33から正極端子23が露出し、ラブチャー露出口32からラブチャー25が露出し、また、基台30の他方の開口部33から負極端子24が露出した状態になる。
【0027】
図1に示す2つのバスバー4は、2つの枠330にそれぞれ1つずつ収容される。バスバー4は、アルミニウムまたはアルミニウム合金が平面視矩形状に形成されたものである。バスバー4は、Y軸方向から見て側面視略Z字型に構成されている。より詳細には、バスバー4は、例えば正極端子23に溶接固定される平板状の一端部41と、一端部41から直角に折れ曲がり、端子面306から離れる方向(+Z方向)に立ち上がる接続片42と、接続片42に接続し一端部41と平行な板状の他端部43とを有している。なお、接続片42を一端部41および他端部43に対して直角に折り曲げているが、必ずしも直角にする必要はない。
【0028】
一端部41の略中央となる位置には、ろう材を用いたレーザ溶接用の座繰り穴411が貫通形成されている。バスバー4は、他端部43と一端部41との間を接続片42により接続することで、基台30の段差のある締結具配置面304と端子面306とに対応している。
【0029】
例えば、
図1に示す例においては、キャップ3の基台30の端子面306の上面に係合突起306aが配設されており、バスバー4の一端部41に係合突起306aに係合する係合孔410が形成されている。そして、係合突起306aが係合孔410に係合することで、バスバー4の基台30上での水平方向におけるズレが規制される。
【0030】
図2に示すように、例えば、バスバー4の他端部43の略中央となる位置には、六角ボルト37の雄ネジ部371が挿通される貫通孔430が形成されている。
図1に示す締結具配置面304に形成された窪み部305に、六角ボルト37の頭部370が嵌め込まれる。窪み部305に頭部370が収容された六角ボルト37は、窪み部305内で空転しない状態となっている。なお、
図2においては、
図1に示す係合突起306a等の構成の一部を省略して示している。
【0031】
そして、
図2に示すように、六角ボルト37の雄ネジ部371にバスバー4の貫通孔430が挿通されて、他端部43が
図1に示す締結具配置面304に載置されるとともに、一端部41が端子面306に載置される。この状態で、一端部41の座繰り穴411及びキャップ3の基台30の開口部33から露出した正極端子23、又は負極端子24と、バスバー4の一端部41とが溶接(例えば、レーザろう付け)される。なお、
図2においては、ろう材を省略して示している。また、六角ボルト37の雄ネジ部371は、バスバー4の他端部43から所定長さ上方に突出しており、該雄ネジ部371に図示しないセル間バスバーを挿入した状態で、ワッシャ374付きの固定ナット373を雄ネジ部371に締結することができる。なお、固定ナット373は、六角ナットである。固定ナット373が六角ボルト37に締結されることで、バスバー4によって締結具である六角ボルト37と正極端子23とが電気的に接続された状態になる。同様に、バスバー4によって締結具である六角ボルト37と負極端子24とが電気的に接続された状態になる。
【0032】
例えば、枠330内の締結具配置面304にバスバー4の他端部43が載置され、端子面306に一端部41が載置された状態において、バスバー4の他端部43の上面と枠330の上端面とは略面一となる。
【0033】
例えば、基台30の締結具配置面304の窪み部305には、
図1、
図2に示す六角ボルト37に代えて、
図3に示す締結具の別例である六角ナット38を嵌め込んでもよい。なお、六角ナット38は、窪み部305から上方に飛び出ないようになっている。窪み部305に収容された六角ナット38は、窪み部305内で空転しない状態となる。
【0034】
図1に示す締結具配置面304に形成された窪み部305に
図3に示す六角ナット38が嵌め込まれた状態で、バスバー4の他端部43が基台30の締結具配置面304に載置されるとともに、一端部41が端子面306に載置される。そして、
図3に示す一端部41の座繰り穴411及びキャップ3の基台30の開口部33から露出した負極端子24とバスバー4の一端部41とがろう材を用いたレーザ溶接される。また、バスバー4上に図示しないセル間バスバーをかました状態で、固定ボルト386を貫通孔430を通して、バスバー4の下に位置し窪み部305に嵌め込まれた六角ナット38に螺合させることができる。なお、固定ボルト386は、ワッシャ付きのものを使用してもよい。
【0035】
図1、
図2に示すように、保護壁34は、窪み部305に収容された例えば六角ボルト37及び締結具配置面304上に載置されたバスバー4のY軸方向における側方において、枠330の上端から一体的に立設しバスバー4の一端部41から他端部43に向かう第一方向(X軸方向)に沿って延在している。例えば、保護壁34のX軸方向における長さは、バスバー4のX軸方向における長さと略同一、又はそれ以上の長さとなっている。
【0036】
図1、
図2に示す例においては、保護壁34は、正極端子23側の窪み部305に収容された六角ボルト37及び締結具配置面304上に載置されたバスバー4の側方において、Y軸方向において対向して2枚配設され、また、負極端子24側の窪み部305に収容された六角ボルト37及び締結具配置面304上に載置されたバスバー4の側方において、Y軸方向において対向して2枚配設されている。即ち、
図1、及び
図2の例においては、キャップ3は保護壁34を計4枚備えている。
【0037】
図4は、実施形態1の端子構造12におけるキャップ3の変形例を示している。
図4の該変形例においては、正極端子23側の窪み部305に収容された例えば六角ナット38及び締結具配置面304上に載置されたバスバー4の側方片側(+Y方向側)のみに、保護壁34が一枚配設され、また、負極端子24側の窪み部305に収容された例えば六角ナット38及び締結具配置面304上に載置されたバスバー4の側方片側のみに保護壁34が一枚配設されている。即ち、
図4に示す変形例においては、キャップ3は保護壁34を計2枚備えている。なお、
図4において、締結具として六角ボルト37が窪み部305に配設されてもよい。
【0038】
図1に示すように、キャップ3は、例えば、基台30の下面にスカート部31とともに垂下する板状のセパレータ307を2つ備えている。セパレータ307は、少なくとも外表面が電気的絶縁性を有する材料から形成される。セパレータ307は、
図1に示す二次電池10をY軸方向において複数並列させた場合において、隣り合う二次電池10の間を仕切る役割を果たす。なお、キャップ3は、セパレータ307を備えていなくてもよい。
【0039】
図5は、実施形態2の端子構造12Aである。端子構造12Aは、
図1、
図2に示す実施形態1の端子構造12の構成の一部を変更したものであり、端子構造12と同様の構成については同様の符号を付して説明を省略する。端子構造12Aのキャップ3Aの基台30の上面には、例えば、正極端子23側(-X方向側)の2枚の保護壁34に加えて、枠330のX軸方向における2つの上端に立設され基台30の短手方向(Y軸方向)に延在する2枚の第二保護壁342を備えている。2枚の第二保護壁342と2枚の保護壁34とは互いに独立している。また、第一方向(X軸方向)に延在する保護壁34と第二方向(Y軸方向)に延在する第二保護壁342とは、直交している。したがって、正極端子23側の窪み部305(
図2参照)に収容された六角ボルト37及び締結具配置面304上に載置されたバスバー4は、2枚の保護壁34及び2枚の第二保護壁342によって周囲を囲繞された状態になっている。なお、負極端子24側の構造も上記と同様となっている。
【0040】
図5に示す実施形態2の端子構造12Aでは、六角ボルト37を締結具として用いている。なお、例えば、実施形態2の端子構造12Aにおいては、
図6に示すように、キャップ3Aの締結具配置面304(
図1参照)に形成された窪み部305に締結具の別例である六角ナット38が嵌め込まれた状態で、バスバー4がキャップ3A上に配設されてもよい。
【0041】
図7は、実施形態3の端子構造12Bである。端子構造12Bは、
図1、
図2に示す実施形態1の端子構造12の構成の一部を変更したものであり、端子構造12と同様の構成については同様の符号を付して説明を省略する。端子構造12Bのキャップ3Bの保護壁34には、保護壁34の厚さ方向(Y軸方向)に向かって窪む形状のノッチ344が保護壁34の延在方向(X軸方向)に沿って直線状に延びるように形成されている。
【0042】
図8は、
図7のF1-F1線に沿って切断して示す断面図である。なお、
図7においては、固定ナット373が六角ボルト37に取り付けられていない状態を示し、
図8においては、固定ナット373が六角ボルト37に取り付けられた状態を示している。
図8に示すように、ノッチ344は、例えば保護壁34の外側面から内側面に向かう断面V字状に形成されている。また、例えば、ノッチ344の先端が保護壁34と枠330との境界線上に位置している。
図7の例において、ノッチ344は、保護壁34の外側面のX軸方向における端から端まで一本連続的に形成されている。なお、ノッチ344は、例えば、+Y方向又は-Y方向のいずれか片側の2枚の保護壁34のみに形成されていてもよい。
【0043】
ノッチは、上記のようなV字状のノッチ344に限定されるものではなく、
図9に示すように、例えば保護壁34の外側面から内側面に向かう断面三角形状にノッチ345が形成されていてもよい。そして、ノッチ345の断面における先端が保護壁34と枠330との境界線上に位置している。ノッチ345の角度は例えば45度である。
【0044】
ノッチ344は、
図7に示すように保護壁34の外側面のX軸方向における端から端まで一本連続的に形成されている例に限定されるものではない。即ち、複数のノッチ344が、保護壁34の外側面のX軸方向における端から端まで連続的に1本の破線状に形成されていてもよい。
【0045】
図7に示す実施形態3の端子構造12Bでは、六角ボルト37を締結具として用いている。なお、
図10に示すように、実施形態3の端子構造12Bにおいては、キャップ3Bの締結具配置面304(
図1参照)に形成された窪み部305に締結具の別例である六角ナット38が嵌め込まれた状態で、バスバー4の他端部43が基台30の締結具配置面304に載置されるとともに、一端部41が端子面306に載置されてもよい。
【0046】
図11は、実施形態4の端子構造12Cである。端子構造12Cは
図1、
図2に示す端子構造12の構成の一部を変更したものであり、端子構造12と同様の構成については同様の符号を付して説明を省略する。端子構造12Cのキャップ3Cは、例えば、その枠330の内側面又は保護壁34の内側面に、バスバー4の一端部41を端子面306に向かって下方に押圧するスナップフィット347を備えている。
【0047】
スナップフィット347は、例えば枠330のY軸方向におけるそれぞれの内側面に1つずつ形成されている。スナップフィット347は、枠330の側壁を厚さ方向(Y軸方向)に矩形状に切り欠いた切り欠き孔347aと、切り欠き孔347a内に配設され上方から下方に向かって傾斜する傾斜面を備えるスロープ部347bと、を備えている。
【0048】
図12は、
図11のF2-F2線に沿って切断して示す断面図である。
図12に示すように、バスバー4を枠330内に上から押し入れることで、キャップ3CのY軸方向における外側面側に向かって各スロープ部347bが弾性変形して、バスバー4の通過を許容した後に自然体に戻る。そして、
図12に示すように、2つのスロープ部347bの下面と基台30の端子面306との間でバスバー4が上下から挟み込まれた状態になる。なお、
図12の412は、負極端子24とバスバー4の一端部41とを溶接したろう材412である。
図11、
図12に示すスナップフィット347は、例えば、バスバー4の一端部41に形成された座繰り穴411の中心を通りY軸方向に延びる仮想線上に位置している。また、
図11に示す例においては、端子構造12Cのキャップ3Cは、スナップフィット347を計4つ備えている。
【0049】
図11に示す実施形態4の端子構造12Cでは、六角ボルト37を締結具として用いている。なお、
図13に示すように、実施形態4の端子構造12Cにおいては、キャップ3Cの締結具配置面304(
図1参照)に形成された窪み部305に締結具の別例である六角ナット38が嵌め込まれた状態で、バスバー4の他端部43が基台30の締結具配置面304に載置されるとともに、一端部41が端子面306に載置されてもよい。
【0050】
スナップフィット347の配設個数及び配置位置は、
図11に示す例に限定されるものではない。例えば、
図14及び
図15に示すように、枠330のY軸方向におけるそれぞれの内側面に、スナップフィット347が例えば2つずつ形成されていてもよい。そして、
図14及び
図15においては、例えば、バスバー4の座繰り穴411の中心を通りY軸方向に延びる仮想線が、X軸方向に並ぶ2つのスナップフィット347の間の中間点を通るように設定されている。
図14及び
図15に示す実施形態4の端子構造12Cのキャップ3Cは、スナップフィット347を計8つ備えている。なお、
図14は締結具として六角ボルト37をキャップ3C上に配設した状態を示しており、
図15は締結具として六角ナット38をキャップ3C上に配設した状態を示している。
【0051】
図16に示す二次電池10Aは、
図1、
図2に示す二次電池10の変形例であり、二次電池10と同様の構成については同様の符号を付して説明を省略する。
図16に示すように、二次電池10Aは、正極端子23a、及び負極端子24aが、それぞれ
図1に示す外装容器2の上面22から+Z方向に延在する柱状のボルト端子となっている。そして、実施形態1の端子構造12を構成するキャップ3の2つの開口部33(
図1参照)から、正極端子23a及び負極端子24aが上方に向かって突出して開口部33から露出している。
【0052】
図16においては、六角ボルト37の雄ネジ部371にバスバー4の貫通孔430が挿通されて、他端部43が締結具配置面304に載置されるとともに、一端部41が端子面306に載置される。この状態で、キャップ3の基台30の開口部33及び一端部41の座繰り穴411から上方に突出した例えば負極端子24aと、バスバー4の一端部41とが図示しないろう材を用いてレーザ溶接されている。なお、
図16に示す例において、六角ボルト37の代わりに、締結具として
図3に示す六角ナット38を用いてもよい。
【0053】
図17は、実施形態2の端子構造12Aが変形例の二次電池10A上に配設された状態を示している。そして、正極端子23a側の窪み部305に収容された六角ボルト37及び締結具配置面304上に載置されたバスバー4は、2枚の保護壁34及び2枚の第二保護壁342によって周囲を囲繞された状態になっている。また、負極端子24a側の構造も上記と同様となっている。なお、
図17に示す例において六角ボルト37の代わりに、締結具として
図3に示す六角ナット38を用いてもよい。
【0054】
図18は、実施形態3の端子構造12Bが、変形例の二次電池10A上に配設された状態を示している。そして、ボルト端子である正極端子23a側の窪み部305に収容された六角ボルト37及び締結具配置面304上に載置されたバスバー4の側方には、二枚の保護壁34が立設しており、二枚の保護壁34はノッチ344によってY軸方向に折りやすくなっている。また、ボルト端子である負極端子24a側の構造も上記と同様となっている。なお、
図18に示す例において六角ボルト37の代わりに、締結具の別例である
図3に示す六角ナット38を用いてもよい。
【0055】
図19は、実施形態4の端子構造12Cが、変形例の二次電池10A上に配設された状態を示している。そして、ボルト端子である正極端子23a側の窪み部305に収容された六角ボルト37及び締結具配置面304上に載置されたバスバー4の側方には、二枚の保護壁34が立設している。また、キャップ3Cが備えるスナップフィット347によって、開口部33(
図1参照)から上方に突出した正極端子23aと溶接されたバスバー4の一端部41が下方の端子面306に向かって押圧されている。なお、ボルト端子である負極端子24a側の構造も上記と同様となっている。
【0056】
図1、
図2に示す二次電池10は、例えば、
図20に示す樹脂ケース51に収容されて、セル間バスバー53により、隣り合う二次電池10同士が所望の電圧電流となるように、一つの二次電池10の正極端子23と該一つの二次電池10の隣の別の二次電池10の負極端子24とが接続される。そして、複数の二次電池10によりモジュール1が形成される。モジュール1は組電池1とも称される。なお、複数の二次電池10が樹脂ケース51に収容されて形成されるモジュール1では、複数の二次電池10が電気的に直列に接続される直列接続構造、及び、複数の二次電池10が電気的に並列に接続される並列接続構造の少なくとも一方が、形成される。
【0057】
樹脂ケース51は、電気的絶縁性を有する材料から形成される。樹脂ケース51を形成する材料としては、例えば、ポリフェニレンエーテル、ポリカーボネート及びポリブチレンテレフタレート等の樹脂が挙げられる。
【0058】
樹脂ケース51は、樹脂ケース51の長手方向(Y軸方向)において対向する一対の側壁512、樹脂ケース51の短手方向(X軸方向)において対向する一対の側壁513、及び底板515を備える。各側壁512と各側壁513と底板515とは例えば一体的に接続されている。
【0059】
一例として、樹脂ケース51は、11枚の仕切り壁516を備える。各仕切り壁516は、Y軸方向において一対の側壁512の間に配置され、互いに対して等間隔を空けて離れて配置される11枚の仕切り壁516によって樹脂ケース51の内部は、Y軸方向において12の収容室517に仕切られる。仕切り壁516は、少なくとも外表面が電気的絶縁性を有する材料から形成される。
【0060】
図20、及び
図21に示すセル間バスバー53は、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金を矩形平板状に形成したものであり、例えば長手方向(Y軸方向)の両側にボルト挿通孔530が1つずつ形成されている。
【0061】
樹脂ケース51の各収容室517に、二次電池10が1つずつ収容される。そして、1つの二次電池10の正極端子23にバスバー4を介して接続された六角ボルト37は、隣の二次電池10の負極端子24にバスバー4を介して接続された六角ボルト37と、セル間バスバー53によって接続される。また、該1つの二次電池10の負極端子24は、前記の隣とは反対側の隣の二次電池10の正極端子23とセル間バスバー53によって接続される。なお、セル間バスバー53によって接続されていない正極端子23は、回路を介して図示しない正極の電源入出力用端子と接続される。また、セル間バスバー53によって接続されていない負極端子24は、回路を介して図示しない負極の電源入出力用端子と接続される。図示しない正極の電源入出力用端子及び図示しない負極の電源入出力用端子は、充電電源や負荷と接続し、モジュール1の充電や利用がなされる。
【0062】
このように複数の二次電池10は、複数のセル間バスバー53により例えば直列に接続されてモジュール1となる。なお、電気的に並列に接続されている複数の二次電池10を含むモジュール1では、例えば、負極端子24同士がセル間バスバー53により接続されるとともに正極端子23同士がセル間バスバー53により接続されることで、複数の二次電池10が電気的に接続され得る。
【0063】
1つの二次電池10の正極端子23と隣の二次電池10の負極端子24とのセル間バスバー53による接続について具体的に説明する。セル間バスバー53を1対の二次電池10間で架け渡すために、1つの二次電池10と該二次電池10の隣に位置する別の二次電池10とについて、それぞれ対向する保護壁34をキャップ3から必要に応じて
図21に示すように切り取る。該切り取りについては、カッター等の工具を用いてもよいし、作業者が力を加えて保護壁34を折って切り取ってもよい。
図21においては、切り取られてキャップ3上から無くなった保護壁34を二点鎖線で示している。
【0064】
なお、予めY軸方向における片側のみに保護壁34を備える
図4に示す変形例のキャップ3を備える端子構造12を二次電池10上に配設していてもよい。また、
図7に示す実施形態3の端子構造12Bを二次電池10上に配設していてもよい。この場合には、
図7に示す端子構造12Bのキャップ3Bの保護壁34には、保護壁34の厚さ方向(Y軸方向)に向かって窪む形状のノッチ344が保護壁34の延在方向(X軸方向)に沿って直線状に形成されている。そのため、セル間バスバー53を1対の二次電池10間で架け渡すために、1つの二次電池10と該二次電池10の隣に位置する別の二次電池10とについて、それぞれ対向する保護壁34をキャップ3Bから必要に応じて切り取る際に、ノッチ344を起点として切り取りたい保護壁34を容易に折り取ることが可能となる。
【0065】
図21に示すように、隣り合う二次電池10と二次電池10との間の保護壁34が必要に応じて切り取られて無くなった状態で、セル間バスバー53の片方のボルト挿通孔530(
図20参照)が一つの二次電池10の正極端子23側の六角ボルト37に挿通され、ワッシャ374が付いた固定ナット373が六角ボルト37に螺合される。セル間バスバー53のもう片方のボルト挿通孔530が、別の隣り合う一つの二次電池10の負極端子24側の六角ボルト37に挿通され、また、ワッシャ374が付いた固定ナット373が六角ボルト37に螺合されることで、1つの二次電池10の正極端子23は、バスバー4、六角ボルト37、固定ナット373、及びセル間バスバー53に隣に位置する別の二次電池10の負極端子24と接続される。なお、
図21においては、モジュール1の一部を断面図で示している。
【0066】
なお、窪み部305に
図3に示す六角ナット38が嵌め込まれた状態においても、セル間バスバー53による二次電池10間の接続は、上記とほぼ同様に行われる。即ち、
図3に示す固定ボルト386を
図21に示すセル間バスバー53の片方のボルト挿通孔530に挿通して、二次電池10の正極端子23側の六角ナット38に固定ボルト386を螺合させる。同様に、セル間バスバー53のもう片方のボルト挿通孔530に挿通された別の固定ボルト386が、隣り合う別の一つの二次電池10の負極端子24側の六角ナット38に対して螺合される。
【0067】
なお、
図11に示す実施形態4の端子構造12Cを二次電池10上に配設していた場合において、六角ボルト37に対して固定ナット373が締結され締め込まれることで、バスバー4の他端部43側に下方向への押圧力が加えられた際に、一端部41側には上方向に持ち上げようとするモーメントが掛かる。実施形態4の端子構造12Cは、キャップ3Cがスナップフィット347を備えているため、このモーメントによって例えば負極端子24とバスバー4の一端部41とのろう材412(
図11には不図示、
図12参照)による溶接が外れてしまうことがないように、スナップフィット347によってバスバー4の一端部41を端子面306に向かって押圧することができる。
【0068】
上記のように、
図21に示す隣り合う2つの二次電池10がセル間バスバー53で電気的に接続される。また、モジュール1においては、1つの二次電池10の例えば負極端子24にバスバー4を介して接続された六角ボルト37と、該1つの二次電池10の隣に位置しセル間バスバー53で電気的に接続されていない別の二次電池10の例えば正極端子23にバスバー4を介して接続された六角ボルト37との間を、保護壁34が仕切った状態になる。なお、以下において、説明上、
図21、及び
図22において+Y方向側から-Y方向側に向かって並ぶ六角ボルト37について仮の番号を付す。即ち、
図21、
図22において、最も-Y方向側に位置する六角ボルト37を一番目の六角ボルト37とし、-Y方向側に向かって順に2番目の六角ボルト37、3番目の六角ボルト37、4番目の六角ボルト37とする。
図20に示す例えば正極端子23とバスバー4により接続されている1番目の六角ボルト37と、
図20に示す例えば負極端子24とバスバー4により接続されている2番目の六角ボルト37とが、セル間バスバー53によって接続されている。2番目の六角ボルト37と3番目の六角ボルト37とは、セル間バスバー53で接続されておらず、保護壁34によってその間が仕切られている。また、
図20に示す正極端子23とバスバー4により接続されている3番目の六角ボルト37と、
図20に示す負極端子24とバスバー4により接続されている4番目の六角ボルト37とが、セル間バスバー53によって接続されている。なお、
図21、及び
図22に示す二次電池10についても、+Y方向側から-Y方向側に向かって並ぶ順番に1番目の二次電池~4番目の二次電池10とする。
【0069】
以下に、
図22に示す1つの二次電池10の正極端子23(
図20参照)と隣の二次電池10の負極端子24(
図20参照)との、六角ボルト37、ワッシャ374を有する固定ナット373、及びセル間バスバー53による接続を解除する場合における、本実施形態1の端子構造12の効果について説明する。
【0070】
例えば、
図22において最も-Y方向側に位置する1番目の二次電池10の六角ボルト37に締結されていた固定ナット373が、作業者等によって回されて、1番目の六角ボルト37から外される。
【0071】
この際に、作業者が固定ナット373を搬出途中にモジュール1上で誤って落としてしまう場合がある。しかし、
図22に示すように、モジュール1においては、1つの二次電池10の負極端子24と接続された六角ボルト37と、該1つの二次電池10の隣に位置しセル間バスバー53で電気的につながれていない別の二次電池10の正極端子23に接続された六角ボルト37との間を、保護壁34が仕切っている。即ち、
図22に示す例においては、2番目の六角ボルト37を有するキャップ3が配設された二次電池10の負極端子24と、3番目の六角ボルト37を有するキャップ3が配設された二次電池10の正極端子23とが、落下した固定ナット373によって接続されてショートが発生してしまうことが防がれる。なぜならば、保護壁34によって、落下した固定ナット373が2番目の六角ボルト37及び固定ナット373と、3番目の六角ボルト37及び固定ナット373とに同時に接触することが遮断されるためである。
【0072】
なお、保護壁34による上記落下した固定ナット373によるショートの発生をより確実に防止するために、保護壁34の高さHは、以下に
図22、及び
図23を用いて説明するように設定されている。なお、
図23は、
図22の2番目の六角ボルト37を有するキャップ3が配設された二次電池10と、3番目の六角ボルト37を有するキャップ3が配設された二次電池10とを示している。
【0073】
(保護壁の高さの一例)
図23に示す1つの二次電池10の例えば正極端子23と1つの二次電池10の隣に位置する別の二次電池10の例えば負極端子24との間のY軸方向における距離Lが、ワッシャ374及び固定ナット373の最大寸法Bよりも小さい場合に、保護壁34の高さHは固定ナット373よりも高くなっていることで、上記ショートの発生をより確実に防止できる。
【0074】
具体的には、
図1、
図2に示す六角ボルト37は、例えば、二次電池10における負極端子24及び正極端子23の中心を通りX軸方向に延びる仮想線上に位置している。よって、
図23に示す2番目の二次電池10の負極端子24と3番目の二次電池10の正極端子23との間のY軸方向における距離Lは、2番目の二次電池10の負極端子24の中心と3番目の二次電池10の正極端子23の中心とのY軸方向における距離Lであり、換言すれば、
図23に示すように、2番目の六角ボルト37の中心と3番目の六角ボルト37の中心とのY軸方向における距離Lである。
【0075】
また、ワッシャ374及び固定ナット373の最大寸法Bとは、六角ナットである固定ナット373の一つの角頂点からワッシャ374の下面の外周淵までの最大寸法である。ここで、
図23に示す固定ナット373の高さa+ワッシャ374の高さc=xとする。また、六角ナットである固定ナット373の対角距離b+(ワッシャ374の外径d-固定ナット373の対角距離b)/2=yとする。そして、ピタゴラスの定理より最大寸法B=(x
2+y
2)
1/2となる。
【0076】
仮に、
図23に示す2番目の六角ボルト37の中心と3番目の六角ボルト37の中心とのY軸方向における距離L<ワッシャ374及び固定ナット373の最大寸法Bである場合には、保護壁34の高さHが固定ナット373の高さ(固定ナット373の上面の高さ)よりも高くなっていることで、落下した固定ナット373が2番目の六角ボルト37と3番目の六角ボルト37とに同時に接触することがより確実に防がれ、上記ショートの発生をより確実に防ぐことが可能となる。
【0077】
(保護壁の高さの別例)
図23に示す1つの二次電池10の例えば正極端子23と1つの二次電池10の隣に位置する別の二次電池10の例えば負極端子24との間のY軸方向における距離L、即ち、2番目の六角ボルト37の中心と3番目の六角ボルト37の中心とのY軸方向における距離Lが、ワッシャ374及び固定ナット373の最大寸法B以上である場合に、落下した固定ナット373が2番目の六角ボルト37と3番目の六角ボルト37とに同時に接触することをより確実に防ぐための、保護壁34の必要な高さHについて以下に説明する。なお、
図23においては、取り外されたワッシャ374を有する固定ナット373が、2番目の固定ナット373及び3番目の固定ナット373に接触してしまっている状態を示している。
【0078】
図23に示すように、a=固定ナット373の高さ、c=ワッシャ374の高さ、b=固定ナット373の対角距離、d=ワッシャ374の外径、B=ワッシャ374及び固定ナット373の最大寸法、f=保護壁34の厚さ、及びe=セル間バスバー53の厚さである。
【0079】
まず、
図23に示す相似条件から、x:(h-e)=y:zが成立する。したがって、
図23に示すh=(x×z/y)+eとなり、落下した固定ナット373が2番目の六角ボルト37と3番目の六角ボルト37とに同時に接触することをより確実に防ぐために必要な保護壁34の高さH>h=(x×z/y)+eとなる。なお、必要な保護壁34の高さH>h=(x×z/y)+eを式(1)とする。また、
図23に示すz=y-(B/2+f)が成立するため、式(1)を合わせて、必要な保護壁34の高さHを算出できる。
【0080】
例えば、1つの二次電池10の正極端子23と1つの二次電池10の隣に位置する別の二次電池10の負極端子24との間のY軸方向における距離L=約25mmであり、固定ナット373の高さa=5mm、ワッシャ374の高さc=1.6mm、固定ナット373の対角距離b=11.5mm、ワッシャ374の外径d=12.5mm、セル間バスバー53の厚さe=1mm、及び保護壁34の厚さf=1mmであるとする。この場合には、
x=a+c=5+1.6=6.6
y=11.5+(12.5-11.5)/2=12
B=(x2+y2)1/2=(6.62+122)1/2=13.7
z=y-(B/2+f)=12-(13.7/2+1)=4.15
保護壁34の高さH>h=(x×z/y)+e=(6.6×4.15/12)+1=3.28となる。したがって、保護壁34の高さH>3.28mmであれば、落下した固定ナット373が2番目の六角ボルト37と3番目の六角ボルト37とに同時に接触することをより確実に防ぐことができ、上記ショートの発生をより確実に防止できる。
【0081】
例えば、1つの二次電池10の例えば正極端子23と1つの二次電池10の隣に位置する別の二次電池10の例えば負極端子24との間のY軸方向における距離L=約17.5mmであり、固定ナット373の高さa=3.2mm、ワッシャ374の高さc=0.8mm、固定ナット373の対角距離b=8.1mm、ワッシャ374の外径d=9mm、セル間バスバー53の厚さe=1mm、及び保護壁34の厚さf=1mmであるとする。この場合には、
x=a+c=3.2+0.8=4
y=8.1+(9-8.1)/2=8.55
B=(x2+y2)1/2=(42+8.552)1/2=9.44
z=y-(B/2+f)=8.55-(9.44/2+1)=2.83
保護壁34の高さH>h=(x×z/y)+e=(4×2.83/8.55)+1=2.32となる。したがって、保護壁34の高さH>2.32mmであれば、落下した固定ナット373が2番目の六角ボルト37と3番目の六角ボルト37とに同時に接触することをより確実に防ぐことができ、上記ショートの発生をより確実に防止できる。
【0082】
以上の説明のように、発電要素27が内部に収容された外装容器2、及び外装容器2の上面に形成された正極端子23、負極端子24を備える二次電池10に配設される実施形態1の端子構造12は、樹脂材で形成され外装容器2の上部に接続され上部を覆うキャップ3と、キャップ3上に配設され、正極端子23(負極端子24)に溶接された一端部41と、一端部41に一体的に接続され一端部41から立ち上がる接続片42と、接続片42に一体的に接続された他端部43と、を有するバスバー4と、を備え、キャップ3は、正極端子23(負極端子24)を上方に向かって露出させる開口部33と、バスバー4の一端部41が載置される端子面306と、端子面306との間に段差を設けバスバー4の他端部43が載置される締結具配置面304と、締結具配置面304に形成され締結具(例えば六角ボルト37)を空転しないように収容する窪み部305と、窪み部305に収容されバスバー4により正極端子23(負極端子24)と接続された締結具である六角ボルト37と、窪み部305に収容された六角ボルト37及び締結具配置面304上に載置されたバスバー4のY軸方向における側方において立設しバスバー4の一端部41から他端部43に向かう第一方向(X軸方向)に沿って延在する保護壁34と、を備えている。したがって、二次電池10が複数並べられてセル間バスバー53で接続されモジュール1を形成する場合に、保護壁34が、1つの二次電池10の例えば正極端子23に接続された六角ボルト37と1つの二次電池10の隣に位置する別の二次電池10の例えば負極端子24に接続された六角ボルト37との間を仕切ることができる。そのため、六角ボルト37から取り外された固定ナット373を作業者がモジュール1上で誤って落下させることがあっても、落下した固定ナット373によって隣り合う二次電池10間でショートが発生してしまうといった事態が発生することを防止できる。
【0083】
例えば、モジュール1を複数の二次電池10で形成する場合に、
図20に示す例では、X軸方向には二次電池10を並列させていないが、二次電池10をX軸方向においても並列させてよい。この場合に、例えば、
図5に示す実施形態2の端子構造12Aを二次電池10上に配設してもよい。端子構造12Aのキャップ3Aの基台30の上面には、例えば、正極端子23側、及び負極端子24側のそれぞれにおいて、基台30の長手方向(X軸方向)に延在する2枚の保護壁34に加えて、基台30の短手方向(Y軸方向)に延在する2枚の第二保護壁342を備えている。よって、例えば六角ボルト37から取り外された固定ナット373を、作業者がモジュール1上で誤って落下させることがあっても、落下した固定ナット373によってX軸方向において隣り合う二次電池10間でショートが発生してしまうといった事態が発生することを、第二保護壁342によって防止できる。即ち、1つの二次電池10の例えば正極端子23に接続された六角ボルト37及び固定ナット373と、X軸方向において該1つの二次電池10の隣に位置する別の二次電池10の例えば負極端子24に接続された六角ボルト37及び固定ナット373との間を、
図5に示す第二保護壁342によって仕切ることができるため、落下した固定ナット373がX軸方向において隣り合う上記2つの六角ボルト37に同時に接触してしまうことが防がれる。
【0084】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0085】
1:モジュール
10:二次電池
12:実施形態1の端子構造
2:外装容器
20:容器本体 21:蓋 23:正極端子 24:負極端子 27:発電要素
3:キャップ
30:基台 304:締結具配置面 305:窪み部 306:端子面
33:開口部 330:枠
34:保護壁
37:六角ボルト 373:固定ナット 374:ワッシャ
38:六角ナット 386:固定ボルト
4:バスバー
41:一端部 42:接続片 43:他端部
12A:実施形態2の端子構造 342:第二保護壁
12B:実施形態3の端子構造 344:ノッチ
12C:実施形態4の端子構造 347:スナップフィット
10A:別例の二次電池 23a:ボルト端子である正極端子 24a:ボルト端子である負極端子
51:樹脂ケース 516:仕切り壁 517:収容室
53:セル間バスバー