(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111885
(43)【公開日】2024-08-20
(54)【発明の名称】車両用駆動装置
(51)【国際特許分類】
H02K 7/116 20060101AFI20240813BHJP
F16H 63/34 20060101ALI20240813BHJP
【FI】
H02K7/116
F16H63/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023016566
(22)【出願日】2023-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂野 友哉
(72)【発明者】
【氏名】中垣 徹
【テーマコード(参考)】
3J067
5H607
【Fターム(参考)】
3J067DA03
3J067DA34
3J067DB31
3J067FA57
3J067FA63
3J067FB45
3J067FB81
3J067GA01
5H607AA12
5H607BB01
5H607BB02
5H607BB14
5H607BB26
5H607CC03
5H607DD03
5H607DD19
5H607EE31
5H607EE36
5H607HH01
5H607HH09
(57)【要約】
【課題】回転センサとして機能するインダクティブセンサの組み付け効率を高める。
【解決手段】回転軸の回転角度に関する信号を生成する回転センサと、駆動源と車輪との間の動力伝達機構を形成し、回転軸と一体的に回転するギヤとを備え、回転センサは、回転軸に固定されるセンサロータと、センサロータに軸方向に対向し、センサロータに生じる渦電流の変化に応じた信号を生成する検出部とを含み、センサロータは、ギヤと一体化されている、車両用駆動装置が開示される。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸の回転角度に関する信号を生成する回転センサと、
駆動源と車輪との間の動力伝達機構を形成し、前記回転軸と一体的に回転するギヤとを備え、
前記回転センサは、前記回転軸に固定されるセンサロータと、前記センサロータに軸方向に対向し、前記センサロータに生じる渦電流の変化に応じた前記信号を生成する検出部とを含み、
前記センサロータは、前記ギヤと一体化されている、車両用駆動装置。
【請求項2】
前記センサロータ及び前記ギヤは、同一材料の一ピースの部材を形成する、請求項1に記載の車両用駆動装置。
【請求項3】
前記ギヤは、パーキングギヤである、請求項2に記載の車両用駆動装置。
【請求項4】
前記パーキングギヤは、前記回転軸まわりかつ軸方向に垂直に延在する平坦部と、前記回転軸まわりかつ前記平坦部の径方向外側に延在するギヤ部と、前記回転軸まわりかつ前記平坦部の径方向内側に延在する前記センサロータとを含む、請求項3に記載の車両用駆動装置。
【請求項5】
前記駆動源は、回転電機を含み、
前記ギヤは、軸方向で前記回転電機と前記回転センサの前記検出部との間に配置される、請求項1から4のうちのいずれか1項に記載の車両用駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
回転軸上に回転センサ(インダクティブセンサ)を単体で、同軸上のモータに対して軸方向に隣接して配置する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような従来技術では、回転センサが単体で配置されるため、車両用駆動装置の他の構成要素とは別に単独で組み付ける必要があり、組み付け効率が良好でないという問題がある。
【0005】
そこで、1つの側面では、本開示は、回転センサとして機能するインダクティブセンサの組み付け効率を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの側面では、回転軸の回転角度に関する信号を生成する回転センサと、
駆動源と車輪との間の動力伝達機構を形成し、前記回転軸と一体的に回転するギヤとを備え、
前記回転センサは、前記回転軸に固定されるセンサロータと、前記センサロータに軸方向に対向し、前記センサロータに生じる渦電流の変化に応じた前記信号を生成する検出部とを含み、
前記センサロータは、前記ギヤと一体化されている、車両用駆動装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
1つの側面では、本開示によれば、回転センサとして機能するインダクティブセンサの組み付け効率を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】車両における車両用駆動装置の搭載状態を示した上面視の概略図である。
【
図3】パーキングロック機構の構成の概略を作動状態において示す構成図である。
【
図4】パーキングロック機構の構成の概略を非作動状態において示す構成図である。
【
図5】本実施例によるパーキングギヤ及び回転センサの搭載位置付近の車両用駆動装置の断面図である。
【
図7】本実施例による回転センサのセンシング部とセンサロータとの関係を示す図である。
【
図8】本実施例によるセンサロータにおけるセンシング部と軸方向に対向する部分を、軸方向に視て示す図である。
【
図9】本実施例によるセンシング部により生成されるセンサ出力の波形を説明する概略図である。
【
図10】比較例によるパーキングギヤ及び回転センサの搭載位置付近の車両用駆動装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら各実施例について詳細に説明する。なお、図面の寸法比率はあくまでも一例であり、これに限定されるものではなく、また、図面内の形状等は、説明の都合上、部分的に誇張している場合がある。
【0010】
以下の説明では、各部材についての寸法、配置方向、配置位置等に関する用語は、誤差(製造上許容され得る程度の誤差)による差異を有する状態を含む概念である。A方向(
図1等参照)は、軸方向に対応し、
図1等には、A方向に沿ったA1側とA2側が定義されている。L方向(
図1等参照)は、車両VCの前後方向に対応し、
図1には、L方向に沿ったL1側とL2側が定義されている。
【0011】
本明細書では、「駆動連結」とは、2つの回転要素が駆動力(トルクと同義)を伝達可能に連結された状態を指し、当該2つの回転要素が一体的に回転するように連結された状態、あるいは当該2つの回転要素が1つ又は2つ以上の伝動部材を介して駆動力を伝達可能に連結された状態を含む。このような伝動部材としては、回転を同速で又は変速して伝達する各種の部材(例えば、軸、歯車機構、ベルト、チェーン等)が含まれる。なお、伝動部材として、回転及び駆動力を選択的に伝達する係合装置(例えば、摩擦係合装置、噛み合い式係合装置等)が含まれていてもよい。
【0012】
また、本明細書では、「連通」とは、2つの空間的要素が互いに流体的に連通している状態を指す。すなわち、2つの空間的要素間で流体が行き来できる状態を指す。この際、2つの空間的要素は、直接的に連通してもよいし、間接的に(すなわち他の空間的要素を介して)連通してもよい。
【0013】
本明細書では、「回転電機」は、モータ(電動機)、ジェネレータ(発電機)、及び必要に応じてモータ及びジェネレータの双方の機能を果たすモータ・ジェネレータのいずれをも含む概念として用いている。また、本明細書では、2つの部材の配置に関して、「特定方向に視て重なる」とは、その視線方向に平行な仮想直線を当該仮想直線に直交する各方向に移動させた場合に、当該仮想直線が2つの部材の双方に交わる領域が少なくとも一部に存在することを意味する。また、本明細書では、2つの部材の配置に関して、「特定方向の配置領域が重なる」とは、一方の部材の特定方向の配置領域内に、他方の部材の特定方向の配置領域の少なくとも一部が含まれることを意味する。
【0014】
図1は、車両VCにおける車両用駆動装置100の搭載状態を示した上面視の概略図である。
図2は、車両用駆動装置100を示すスケルトン図である。
【0015】
車両用駆動装置100は、
図2に模式的に示すように、回転電機1と、一対の車輪W(
図1参照)にそれぞれ駆動連結される一対の出力部材6と、回転電機1と一対の出力部材6との間で駆動力を伝達する伝達機構3と、を備える。車両用駆動装置100は、更に、回転電機1を収容するケース2を備える。ケース2は、一対の出力部材6及び伝達機構3も収容している。なお、変形例では、ケース2は、一対の出力部材6のうちの一方(例えば第1出力部材61)だけを収容してもよい。また、車両用駆動装置100の用途は、電気自動車やハイブリッド車のような、回転電機1を有する任意の車両に適用可能であり、駆動方式も前輪駆動や後輪駆動など任意の車両に適用可能である。また、駆動源は、エンジン(内燃機関)のみであってもよい。
【0016】
一対の出力部材6の一方である第1出力部材61は、一対の車輪Wの一方である第1車輪W1に駆動連結され、一対の出力部材6の他方である第2出力部材62は、一対の車輪Wの他方である第2車輪W2に駆動連結される。
図1に示すように、車両用駆動装置100が搭載される車両VCは、第1車輪W1と一体的に回転する第1ドライブシャフト63と、第2車輪W2と一体的に回転する第2ドライブシャフト64と、を備える。第1ドライブシャフト63は、例えば等速ジョイントを介して第1車輪W1に連結され、第2ドライブシャフト64は、例えば等速ジョイントを介して第2車輪W2に連結されてよい。そして、第1出力部材61は、第1ドライブシャフト63と一体的に回転するように第1ドライブシャフト63に連結され、第2出力部材62は、第2ドライブシャフト64と一体的に回転するように第2ドライブシャフト64に連結されてよい。
【0017】
車両用駆動装置100は、回転電機1の出力トルクを、一対の出力部材6を介して一対の車輪Wに伝達させて、車両用駆動装置100が搭載された車両VCを走行させる。すなわち、回転電機1は、一対の車輪Wの駆動力源である。一対の車輪Wは、車両VCにおける左右一対の車輪(例えば、左右一対の前輪、又は左右一対の後輪)である。回転電機1は、例えば、3相交流で駆動される交流回転電機であってよい。
【0018】
図2に示すように、回転電機1と一対の出力部材6とは、同軸に配置される。具体的には、回転電機1が、第1軸C1上に配置され、一対の出力部材6が、第1軸C上に配置される。伝達機構3は、一対の出力部材6の少なくとも一方に駆動連結される出力ギヤ(リングギヤ)30を、一対の出力部材6と同軸に備える。
【0019】
回転電機1は、電源BA(
図1参照)から電力供給を受けて動作する。回転電機1は、例えばインナーロータタイプである。回転電機1は、ステータ11(
図2参照)の径方向内側に、第1軸C1を中心として回転可能なロータ14が配置される。ロータ14は、入力部材16に同軸に連結される。なお、ロータ14のロータシャフト340(
図5参照)は、入力部材16と共通の軸部材により形成されてもよい。
【0020】
伝達機構3は、回転電機1と出力ギヤ30との間の動力伝達経路に、減速機構34を備える。減速機構34は、任意であり、カウンタギヤを用いる減速機構や、遊星歯車を用いる減速機構等を含んでよい。本実施例では、一例として、減速機構34は、遊星歯車機構を含む。
【0021】
本実施例では、減速機構34は、回転電機1に駆動連結される態様で、回転電機1と同軸に(すなわち、第1軸C1上に)配置される。本実施例では、一例として、回転電機1のロータ14は、減速機構34のサンギヤ341とともに入力部材16と一体的に回転する。減速機構34の出力ギヤ(キャリア)342は、差動歯車機構5の出力ギヤ30に駆動連結される。
【0022】
また、伝達機構3は、差動歯車機構5を更に備える。差動歯車機構5は、回転電機1の側から伝達される駆動力を、一対の出力部材6に分配する。
図2に示す例では、差動歯車機構5は、出力ギヤ30の回転を、第1サイドギヤ51と第2サイドギヤ52とに分配する。差動歯車機構5は、一対の出力部材6と同軸に(すなわち、第1軸C1上に)配置されてよい。なお、差動歯車機構5は、傘歯車式の差動歯車機構であってよく、出力ギヤ30は、差動歯車機構5が備える差動ケース部50と一体的に回転するように当該差動ケース部50に連結されてよい。
【0023】
なお、本実施例では、車両用駆動装置100は、第1軸C1の1軸構成であるが、変形例では、車両用駆動装置100は、2軸や3軸以上を有してもよい。
【0024】
本実施例では、
図2に模式的に示すように、第1軸C1上にパーキングギヤ41が配置される。パーキングギヤ41は、入力部材16と一体的に回転するように、入力部材16に連結される。パーキングギヤ41は、例えばスプライン嵌合等によりロータシャフト340に嵌合されてもよい。そして、パーキングギヤ41には、後述するパーキングロック機構40(
図3及び
図4参照)が接続される。なお、変形例では、パーキングギヤ41(及びそれに伴いパーキングロック機構40)は、伝達機構3における他の位置に設けられてもよい。
【0025】
図3及び
図4は、パーキングロック機構40の構成の概略を示す構成図である。
図3は、パーキングロック状態の様子を示し、
図4は、パーキングロック解除状態の様子を示す。
図3及び
図4には、Y方向と、Y方向に沿ったY1側及びY2側が定義され、また、Z方向と、Z方向に沿ったZ1側及びZ2側が定義されている。Y方向は、後述するパーキングロッド43の軸方向に対応する。Z方向は、後述するカム機構49の従動部材493の軸方向に対応する。
【0026】
パーキングロック機構40は、
図3及び
図4に示すように、パーキングギヤ41に加えて、パーキングポール42、パーキングロッド43、カム部材44、支持ローラ45、カムスプリング46、及びディテントレバー48を備える。
【0027】
パーキングギヤ41は、入力部材16と一体的に回転するように、入力部材16に連結される。パーキングギヤ41は、軸方向に視て円環状の形態であり、外周に複数の歯41aを有する。パーキングポール42は、パーキングギヤ41と係合可能な突部42aを有する。また、パーキングポール42は、スプリング42bによりパーキングギヤ41から離間するように付勢されている。パーキングロッド43は、その軸方向(Y方向)に沿って往復移動可能に設けられ、基端部(
図3や
図4におけるY2側の端部)がディテントレバー48に回転可能に連結されている。カム部材44は、筒状に形成されており、パーキングロッド43の軸方向に移動可能にパーキングロッド43が挿通されている。支持ローラ45は、例えば車両用駆動装置100のケース2(
図1参照)に回転可能に支持され、パーキングポール42と共にカム部材44を挟持する。カムスプリング46は、パーキングロッド43により一端部が支持されると共にパーキングポール42をパーキングギヤ41に押し付けるようにカム部材44を付勢する。
【0028】
ディテントレバー48は、略L字状に形成されており、基部481と第1遊端部482と第2遊端部483とを有する。基部481は、第1遊端部482及び第2遊端部483の基部(コーナー部)であり、例えば車両用駆動装置100のケース2(
図1参照)に取り付けられたシャフト486により回動可能に支持されている。第1遊端部482は、パーキングロッド43の基端部(
図3や
図4におけるY2側の端部)に回転可能に連結されている。第2遊端部483の外周には、後述するカム機構49の従動部材493の一端面(
図3や
図4におけるZ1側の端面)と当接する当接面483aが形成されている。
【0029】
このようなパーキングロック機構40では、
図3に示すように、パーキングポール42の突部42aがパーキングギヤ41の隣り合う2つの歯41aの間の凹部に係合するときは、入力部材16がロックされる。すなわち、入力部材16の回転がロックされたパーキングロック状態(作動状態)が実現される。また、
図4に示すように、パーキングポール42の突部42aがパーキングギヤ41の隣り合う2つの歯41aの間の凹部に係合しないときは、入力部材16が回転可能である。このとき、入力部材16の回転のロックが解除されたパーキングロック解除状態(非作動状態)が実現される。
【0030】
このようなパーキングロック機構40は、モータ(図示せず)を介してカム機構49により駆動される。
【0031】
カム機構49は、カム491と、カム491の回転に伴って往復動する従動部材493とを有する。
【0032】
カム491は、カム回転軸49aと一体的に回転するように、カム回転軸49aに連結される。
【0033】
カム491は、カム回転軸49aを基準とした外周面までの径方向の長さが、カム回転軸49aまわりの周方向に沿って周期的に変化する。カム491は、例えば円形の形態であり、カム回転軸49aに対して偏心して設けられてもよい。本実施例では、一例として、カム491は、非円形の形態であり、カム回転軸49aを基準とした外周面までの径方向の長さが最も小さいカム小径部4911と、カム回転軸49aを基準とした外周面までの径方向の長さが最も長いカム大径部4912とを有する。カム小径部4911とカム大径部4912とは、対角関係に位置し、180度ずれた位相に設定される。なお、変形例では、カム小径部4911とカム大径部4912は、90度ごとのような、他の角度ごとに交互に形成されてもよい。
【0034】
従動部材493は、円柱状に形成され、一端面がディテントレバー48の第2遊端部483の当接面483aに当接するとともに他端面がカム491の外周面に当接する。この従動部材493は、その軸方向(
図3及び
図4におけるZ方向)に沿って移動可能に図示しない支持部材により支持されており、かつ、図示しないスプリングによりカム回転軸49a側(
図3や
図4におけるZ2側)に付勢されている。
【0035】
従動部材493は、カム491がカム回転軸49aと共に回転することに伴って、その軸方向(
図3及び
図4におけるZ方向)に沿って移動する。具体的には、従動部材493は、
図3に示すように、カム491のカム小径部4911にZ方向で当接するときは、最もZ2側に位置する。また、従動部材493は、
図4に示すように、カム491のカム大径部4912にZ方向で当接するときは、最もZ1側に位置する。
【0036】
図4に示すパーキングロック解除状態(非作動状態)からカム回転軸49aの回転(及びそれに伴うカム491の回転)により従動部材493が最もZ2側に移動されると、
図3に示すパーキングロック状態(作動状態)が実現される。具体的には、従動部材493のZ2側への移動に伴って、ディテントレバー48が
図4に示す状態から反時計回りに回動し、パーキングロッド43が
図4におけるY1側に移動し、カムスプリング46により付勢されたカム部材44によりパーキングポール42がパーキングギヤ41と係合するように押圧され、パーキングポール42の突部42aが
図3に示すようにパーキングギヤ41の隣り合う2つの歯41aの間の凹部に係合する。
【0037】
また、
図3に示すパーキングロック状態(作動状態)からカム回転軸49aの回転(及びそれに伴うカム491の回転)により従動部材493が最もZ1側に移動されると、
図4に示すパーキングロック解除状態(非作動状態)が実現される。具体的には、従動部材493のZ1側への移動に伴って、ディテントレバー48が
図3に示す状態から時計回りに回動し、パーキングロッド43が
図3におけるY2側に移動し、カム部材44によるパーキングポール42の押圧が解除され、パーキングポール42の突部42aが
図4に示すようにパーキングギヤ41の隣り合う2つの歯41aの間の凹部から離間する。
【0038】
このようにして、本実施例では、カム回転軸49aの回転に伴ってカム機構49によりパーキングロック機構40が駆動される。本実施例では、パーキングギヤ41が、回転電機1のロータシャフト340とともに一体回転するので、例えば減速機構34により減速される他の軸部材とともに一体回転するように配置される場合に比べて、パーキングロック状態(作動状態)の保持に必要な係合力を低減できる。
【0039】
なお、ここでは、
図3及び
図4を参照して、本実施例による車両用駆動装置100が適用可能な特定の構造のパーキングロック機構40について説明したが、本実施例による車両用駆動装置100が適用可能なパーキングロック機構は、かかる特定の構造に限られず、多様なパーキングロック機構に適用可能である。例えば、
図3及び
図4に示す例では、パーキングロッド43は、Y方向に往復動するが、パーキングロッド43は、パーキングギヤ41の回転軸である軸方向に沿って往復動するように配置されてもよい。
【0040】
次に、
図5以降を参照して、パーキングギヤ41とともに回転センサ80の構成を説明する。
【0041】
図5は、パーキングギヤ41及び回転センサ80の搭載位置付近の車両用駆動装置100の断面図であり、第1軸C1を通る平面による断面図である。
図6は、センサロータ81を一体的に含むパーキングギヤ41の斜視図である。
【0042】
本実施例では、回転電機1は、ロータ14の回転に係るパラメータの値を検出する回転センサ80を有する。ロータ14の回転に係るパラメータは、任意であり、例えば、ロータ14の回転の有無や、ロータ14の所定基準角度からの回転角度、回転速度、磁極位置等であってよい。以下では、一例として、回転センサ80は、ロータ14の回転角度を検出するものとする。すなわち、回転センサ80は、ロータ14の回転角度(=入力部材16の回転角度)に関する信号を生成する。
【0043】
回転センサ80は、ロータシャフト340の一端側に設けられる。本実施例では、回転センサ80は、
図5に示すように、パーキングギヤ41とともに、回転電機1のステータ11よりもA2側に設けられる。
【0044】
回転センサ80は、インダクティブセンサであり、センサロータ81と、センシング部82とを備える。
【0045】
センサロータ81は、導体により形成され、ロータ14と一体に回転する。センサロータ81は、第1軸C1を中心とした円形状の中心孔811を有する円環状の形態である。
【0046】
本実施例では、センサロータ81は、パーキングギヤ41と一体化される。センサロータ81は、パーキングギヤ41に固定されることで一体化されてもよいし、パーキングギヤ41と一体的に形成されてもよい。すなわち、センサロータ81は、パーキングギヤ41に固定される別ピースであってもよいし、パーキングギヤ41と一体的に形成された一ピースの部材を形成してもよい。センサロータ81がパーキングギヤ41と一体的に形成される場合、センサロータ81(及びパーキングギヤ41)は、例えば鉄系の材料により形成されてよい。本実施例では、一例として、センサロータ81がパーキングギヤ41と一体的に形成されるものとする。
【0047】
より具体的には、パーキングギヤ41は、第1軸C1まわりかつ軸方向に垂直に延在する平坦部410を備えるとともに、第1軸C1まわりかつ平坦部410の径方向内側に延在するセンサロータ81を備える。また、パーキングギヤ41は、第1軸C1まわりかつ平坦部410の径方向外側に延在するギヤ部として、複数の歯41aを有する。なお、歯41aの本数は、
図6に示す例と
図2及び
図3に示した例とが異なるように、任意である。
【0048】
パーキングギヤ41(及びそれに伴いセンサロータ81)は、その中心孔811にロータシャフト340が通されることで、ロータシャフト340とともに回転する。例えば、ロータシャフト340に径方向の凹部又は凸部が形成され、中心孔811の内周縁に、ロータシャフト340の径方向の凹部又は凸部に嵌合する径方向の凸部又は凹部が形成されてもよい。
【0049】
センサロータ81は、平坦部410よりも厚みがわずか大きく、平坦部410よりもA2側に突出する。なお、センサロータ81と平坦部410との間の肉厚差は、切削等により実現されてもよい。
【0050】
センサロータ81は、周期的に変化する外径を有する。これにより、センサロータ81は、センシング部82と軸方向に対向する周方向位置での外径が、ロータ14の回転角度が所定角度変化するごとに周期的に変化する。所定角度は、設計時に、磁極数等に応じて適宜決定されてよい。本実施例では、センサロータ81は、1周あたり、4つの径方向の凸部と凹部とを交互に有する。この場合、センサロータ81は、センシング部82と軸方向に対向する周方向位置での外径が、ロータ14の回転角度が90度変化するごとに周期的に変化する。
【0051】
なお、変形例では、センサロータ81は、周期的に変化する外径に代えて又は加えて、周期的に変化する厚み(軸方向の厚み)を有してもよい。この場合、センサロータ81は、センシング部82と軸方向に対向する周方向位置での厚みが、ロータ14の回転角度が所定角度変化するごとに周期的に変化する。
【0052】
センシング部82は、例えば基板の形態であってよい、センサロータ81に軸方向に対向しつつ近接するように配置される。この場合、センシング部82は、図示しないが、軸方向に視て円弧状であってよく、全周のうちの一部の周区間のみに延在してよい。センシング部82は、回転電機1の非回転部に支持されてよい。この場合、回転電機1の非回転部は、例えば、ケース2の一部(例えば回転電機1が収容されるモータ収容室)と、ケース2の他の一部(伝達機構3が収容される収容室)とを仕切る隔壁部であってよい。なお、この場合、回転センサ80は、モータ収容室内側に配置される。
【0053】
センシング部82は、渦電流を利用して、ロータ14の回転角度を検出する。
図7から
図9は、センシング部82による検出原理の説明図である。
図7は、回転センサ80のセンシング部82とセンサロータ81との関係を示す図であり、
図8は、センサロータ81におけるセンシング部82と軸方向に対向する部分を、軸方向に視て示す図である。
図9は、センシング部82により生成されるセンサ出力(電気信号)の波形を説明する概略図である。
図9では、横軸にロータ14の回転角度を取り、縦軸にセンサ出力の大きさを取り、センシング部82により生成されるセンサ出力(電気信号)の時系列波形が模式的に示されている。なお、
図9では、ロータ14の回転角度における90度分(機械角度で90度分)の時系列波形が模式的に示されている。
【0054】
センシング部82は、センサコイル821及び処理回路部(図示せず)が実装された基板820の形態であってよい。なお、処理回路部(図示せず)の機能の一部又は全部は、外部の制御装置(図示せず)により実現されてもよい。
【0055】
センサコイル821は、例えば
図7に示すように、基板820の両側の表面に形成されてもよい。なお、変形例では、センサコイル821は、基板820の両側の表面に代えて又は加えて、基板820の内層に形成されてもよい。センサコイル821は、例えばプリントされた導体により形成されてよい。センサコイル821は、軸方向に平行な中心軸Oまわりに巻回されてなる。
【0056】
センシング部82は、センサコイル821への通電によりセンサロータ81に渦電流を発生させる。具体的には、
図7に模式的に示すように、センサコイル821が通電されると、センサコイル821を貫く磁束B1が発生する。センサコイル821を貫く磁束B1は、センサコイル821に軸方向に対向するセンサロータ81の表面に接触すると、センサロータ81の表面に渦電流が発生する。
図8には、渦電流の発生態様が矢印Ieで模式的に示されている。なお、
図8においては特定の向きの渦電流が模式的に示されているが、渦電流の向きは、センサコイル821を流れる電流の向きに応じて決まる。渦電流は、磁束B1を減らす磁束を発生させる向きに生じる。従って、渦電流に起因して、磁束B1を減らす磁束B2(図示せず)が発生する。磁束B2の大きさは、渦電流の大きさに比例する。渦電流の大きさは、センサコイル821に軸方向に対向するセンサロータ81の部位の表面積が増加するほど大きくなる。本実施例では、上述したようにセンサロータ81は、周期的に変化する外径を有するので、センサコイル821に軸方向に対向するセンサロータ81の部位の表面積は、ロータ14の回転角度が変化すると変化する。より具体的には、センサコイル821に軸方向に対向するセンサロータ81の部位の表面積は、ロータ14の回転角度が変化すると、正弦波状に変化する。このため、本実施例では、センシング部82により生成されるセンサ出力(電気信号)の時系列波形は、
図9に示すように、ロータ14の回転角度が90度変化するごとに、1周期の正弦波を描く。従って、このようなセンサ出力(電気信号)に基づいて、ロータ14の回転角度を検出できる。
【0057】
ところで、センサロータ81の外周などに配置される他の部材(以下、「センサ隣接部」とも称する)は、センサロータ81の近傍に配置されかつセンサロータ81よりも径方向外側に延在するがゆえに、センサコイル821を貫く磁束B1(
図7の磁束B1参照)に影響を与える可能性がある。すなわち、センサコイル821を貫く磁束B1に起因してセンサ隣接部において渦電流が発生する可能性がある。かかる渦電流は、センサロータ81における渦電流と同様、磁束B1を減らす方向の磁束(図示せず)を発生する。
【0058】
この点、本実施例によれば、センサ隣接部は、上述したようにパーキングギヤ41の平坦部410を含む。パーキングギヤ41の平坦部410は、センサロータ81まわりの周方向各位置で同じ厚さで、比較的長い径方向範囲(例えばパーキングギヤ41の径方向全幅の1/3又は半分以上)に延在する。従って、本実施例によれば、センサ隣接部の影響を受けがたい高精度な回転センサ80の検出結果を得ることができる。
【0059】
次に、
図10に示す比較例と対比して、本実施例の効果について説明する。
【0060】
図10は、比較例によるパーキングギヤ41’及び回転センサ80’の搭載位置付近の車両用駆動装置100’の断面図であり、第1軸C1を通る平面による断面図である。
【0061】
比較例では、パーキングギヤ41’及び回転センサ80’のセンサロータ81’は、
図10に示すように、一体化されておらず、別々に配置される。センサロータ81’は、固定用リング810’を用いてロータシャフト340に固定されている。
【0062】
このような比較例では、パーキングギヤ41’及び回転センサ80’のセンサロータ81’が別体であることから、固定用リング810’の分も含めて部品点数が増加するとともに、組み付け効率が良好でないという問題がある。組み付け効率については、パーキングギヤ41’及び回転センサ80’のセンサロータ81’をそれぞれ別々に入力部材16(又はロータシャフト340)に組み付ける必要があるためである。
【0063】
これに対して、本実施例によれば、上述したように、パーキングギヤ41及び回転センサ80のセンサロータ81が一体であることから、比較例で生じる問題をなくすことができる。なお、パーキングギヤ41及び回転センサ80のセンサロータ81が別ピースで一体化される場合も、部品点数は比較例と近くなるものの、組み付け効率は向上する。これは、パーキングギヤ41及び回転センサ80のセンサロータ81を一体化したサブアセンブリ状態で入力部材16(又はロータシャフト340)に組み付けることができるためである。
【0064】
また、比較例では、パーキングギヤ41’及び回転センサ80’のセンサロータ81’が別体であることから、それぞれ異なる軸方向位置に配置されることになる。この場合、車両用駆動装置の軸方向の体格低減を図れないという不都合がある。特に、回転センサ80’がインダクティブセンサの場合、上述した検出原理からわかるように、センサ隣接部となりうるパーキングギヤ41’を、センサロータ81’に対して軸方向で比較的離して配置する必要性が高くなる。この結果、車両用駆動装置の軸方向の体格が増加する傾向となる。
【0065】
これに対して、本実施例によれば、上述したように、パーキングギヤ41及び回転センサ80のセンサロータ81が一体であることから、比較例で生じる問題をなくすことができる。すなわち、本実施例によれば、パーキングギヤ41及び回転センサ80のセンサロータ81を同一の軸方向位置に配置できるので、車両用駆動装置100の軸方向の体格低減を図ることができる。
【0066】
以上、各実施例について詳述したが、特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。また、前述した実施例の構成要素を全部又は複数を組み合わせることも可能である。
【0067】
例えば、上述した実施例では、回転センサ80のセンサロータ81は、パーキングギヤ41と一体化されているが、一体化される対象のギヤは、パーキングギヤ41に限られない。例えば、回転センサ80のセンサロータ81は、減速機構34を形成するギヤと一体化されてもよい。また、車両用駆動装置100が2軸構成でありかつ減速機構34がカウンタギヤ機構により実現される場合、回転センサ80のセンサロータ81は、カウンタギヤと一体化されてもよい。
【0068】
また、上述した実施例では、駆動源は回転電機1であるが、回転電機1に代えて又は加えて、エンジンが駆動源として利用されてもよい。
【符号の説明】
【0069】
100・・・車両用駆動装置、1・・・回転電機(駆動源)、3・・・伝達機構(動力伝達機構)、41・・・パーキングギヤ(ギヤ)、410・・・平坦部、41a・・・歯(ギヤ部)、80・・・回転センサ、81・・・センサロータ、82・・・センシング部(検出部)、C1 第1軸(回転軸)