(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111890
(43)【公開日】2024-08-20
(54)【発明の名称】非水電解液二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/052 20100101AFI20240813BHJP
H01M 10/0569 20100101ALI20240813BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20240813BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20240813BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20240813BHJP
H01M 4/131 20100101ALI20240813BHJP
【FI】
H01M10/052
H01M10/0569
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/62 Z
H01M4/131
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023016580
(22)【出願日】2023-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】松田 和久
(72)【発明者】
【氏名】近藤 親平
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ06
5H029AK03
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL08
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM07
5H029DJ08
5H029DJ12
5H029EJ04
5H029HJ02
5H029HJ05
5H029HJ07
5H029HJ10
5H050AA12
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050DA02
5H050DA10
5H050EA08
5H050FA12
5H050HA02
5H050HA05
5H050HA07
5H050HA10
(57)【要約】
【課題】BET比表面積が小さい正極活物質を用いながらも、出力特性が高い非水電解液二次電池を提供する。
【解決手段】ここに開示される非水電解液二次電池は、正極と、負極と、非水電解液と、を備える。前記正極は、正極活物質を含有する正極活物質層を有する。前記正極活物質は、リチウムニッケルコバルトマンガン系複合酸化物である。前記正極活物質のBET比表面積は、1.8m
2/g~2.8m
2/gである。前記正極活物質の平均粒子径(D50)に対するBET比表面積の比は、0.62以上である。前記非水電解液は、非水溶媒と、電解質塩と、を含有する。前記非水溶媒は、酢酸メチルを含有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と、
負極と、
非水電解液と、
を備える非水電解液二次電池であって、
前記正極は、正極活物質を含有する正極活物質層を有し、
前記正極活物質は、リチウムニッケルコバルトマンガン系複合酸化物であり、
前記正極活物質のBET比表面積が、1.8m2/g~2.8m2/gであり、
前記正極活物質の平均粒子径(D50)に対するBET比表面積の比は、0.62以上であり、
前記非水電解液は、非水溶媒と、電解質塩と、を含有し、
前記非水溶媒は、酢酸メチルを含有する、非水電解液二次電池。
【請求項2】
前記非水溶媒が、前記酢酸メチルを3体積%~30体積%含有する、請求項1に記載の非水電解液二次電池。
【請求項3】
前記正極活物質の平均粒子径(D50)に対するBET比表面積の比が、0.80以上である、請求項1に記載の非水電解液二次電池。
【請求項4】
前記正極活物質層が、導電材としてカーボンナノチューブをさらに含有する、請求項1に記載の非水電解液二次電池。
【請求項5】
前記正極活物質が、中空粒子である、請求項1に記載の非水電解液二次電池。
【請求項6】
前記リチウムニッケルコバルトマンガン系複合酸化物において、リチウム以外の金属元素の合計に対するニッケルの割合が、50モル%以上である、請求項1に記載の非水電解液二次電池。
【請求項7】
ハイブリッド車の車両駆動電源用である、請求項1に記載の非水電解液二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解液二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウムイオン二次電池等の非水電解液二次電池は、パソコン、携帯端末等のポータブル電源や、電気自動車(BEV)、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)等の車両駆動用電源などに好適に用いられている。
【0003】
非水電解液二次電池の正極には、一般的に、正極活物質が用いられており、正極活物質として、リチウムニッケルマンガン系複合酸化物が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、正極活物質のBET比表面積によって、非水電解液二次電池の特性が変わることが知られており、使用される正極活物質のBET比表面積の範囲は、0.1m2/g程度から10m2/g超えまで、幅広い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
BET比表面積が小さい正極活物質は、安定性に優れ、非水電解液二次電池に優れた耐久性を付与できるという利点を有する。しかしながら、正極活物質のBET比表面積が小さいと、反応面積が小さくなるため、出力特性が低下するという背反がある。したがって、これらの両立は難題であり、BET比表面積が小さい正極活物質を用いながらも、出力特性が高い非水電解液二次電池の開発が望まれている。
【0006】
そこで本発明は、BET比表面積が小さい正極活物質を用いながらも、出力特性が高い非水電解液二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここに開示される非水電解液二次電池は、正極と、負極と、非水電解液と、を備える。前記正極は、正極活物質を含有する正極活物質層を有する。前記正極活物質は、リチウムニッケルコバルトマンガン系複合酸化物である。前記正極活物質のBET比表面積は、1.8m2/g~2.8m2/gである。前記正極活物質の平均粒子径(D50)に対するBET比表面積の比は、0.62以上である。前記非水電解液は、非水溶媒と、電解質塩と、を含有する。前記非水溶媒は、酢酸メチルを含有する。
【0008】
このような構成によれば、BET比表面積が小さい正極活物質を用いながらも、出力特性が高い非水電解液二次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係るリチウムイオン二次電池の内部構造を模式的に示す断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るリチウムイオン二次電池の捲回電極体の構成を示す模式分解図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るリチウムイオン二次電池に用いられる正極活物質の中空粒子の一例の模式断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るリチウムイオン二次電池に用いられる正極活物質の中空粒子の別の例の模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本発明に係る実施の形態を説明する。なお、本明細書において言及していない事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。また、以下の図面においては、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明している。また、各図における寸法関係(長さ、幅、厚み等)は実際の寸法関係を反映するものではない。なお、本明細書において「A~B」として表現される数値範囲には、AおよびBが含まれる。
【0011】
なお、本明細書において「二次電池」とは、繰り返し充放電可能な蓄電デバイスのことを指す。また、本明細書において「リチウムイオン二次電池」とは、電荷担体としてリチウムイオンを利用し、正負極間におけるリチウムイオンに伴う電荷の移動により充放電が実現される二次電池をいう。
【0012】
以下、扁平形状の捲回電極体と扁平形状の電池ケースとを有する扁平角型のリチウムイオン二次電池を例にして、本発明について詳細に説明するが、本発明をかかる実施形態に記載されたものに限定することを意図したものではない。
【0013】
図1に示すリチウムイオン二次電池100は、扁平形状の捲回電極体20と非水電解液80とが扁平な角形の電池ケース(即ち外装容器)30に収容されることにより構築される密閉型電池である。電池ケース30には外部接続用の正極端子42および負極端子44と、電池ケース30の内圧が所定レベル以上に上昇した場合に該内圧を開放するように設定された薄肉の安全弁36とが設けられている。また、電池ケース30には、非水電解液80を注入するための注入口(図示せず)が設けられている。正極端子42は、正極集電板42aと電気的に接続されている。負極端子44は、負極集電板44aと電気的に接続されている。電池ケース30の材質としては、例えば、アルミニウム等の軽量で熱伝導性の良い金属材料が用いられる。なお、
図1は、非水電解液80の量を正確に表すものではない。
【0014】
非水電解液80は、非水溶媒と電解質塩とを含有する。本実施形態においては、非水溶媒は、酢酸メチルを含有する。
【0015】
酢酸メチルは、非水電解液80の粘度を低減するように作用する。非水溶媒における酢酸メチルの体積割合は、本発明の効果が得られる限り特に限定されない。非水電解液80の好適な低粘度化の観点から、非水溶媒における酢酸メチルの体積割合は、例えば1体積%であり、好ましくは2質量%以上であり、より好ましくは3質量%以上である。一方、非水溶媒における酢酸メチルの体積割合は、例えば40質量%以下であり、好ましくは35質量%以下であり、より好ましくは30質量%以下である。
【0016】
非水溶媒は、酢酸エチル以外の有機溶媒を含み得る。当該有機溶媒の例としては、カーボネート類、エーテル類、ニトリル類、スルホン類、ラクトン類等が挙げられ、なかでも、カーボネート類が好ましい。カーボネート類の例としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、モノフルオロエチレンカーボネート(MFEC)、ジフルオロエチレンカーボネート(DFEC)、モノフルオロメチルジフルオロメチルカーボネート(F-DMC)、トリフルオロジメチルカーボネート(TFDMC)等が挙げられる。このような有機溶媒は、1種を単独で、あるいは2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。非水溶媒は、典型的に例えば、酢酸エチルおよびカーボネート類を含有し、酢酸エチルおよびカーボネート類のみを含有していてもよい。
【0017】
電解質塩としては、例えば、LiPF6、LiBF4、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)等のリチウム塩(好ましくはLiPF6)を好適に用いることができる。電解質塩の濃度は、0.7mol/L以上1.3mol/L以下が好ましい。
【0018】
なお、非水電解液80は、本発明の効果を著しく損なわない限りにおいて、上述した成分以外の成分、例えば、ビニレンカーボネート(VC)、オキサラト錯体等の被膜形成剤;ビフェニル(BP)、シクロヘキシルベンゼン(CHB)等のガス発生剤;増粘剤;等の各種添加剤を含んでいてもよい。
【0019】
捲回電極体20は、
図1および
図2に示すように、正極シート50と、負極シート60とが、2枚の長尺状のセパレータシート70を介して重ね合わされて長手方向に捲回された形態を有する。正極シート50は、長尺状の正極集電体52の片面または両面(ここでは両面)に長手方向に沿って正極活物質層54が形成された構成を有する。負極シート60は、長尺状の負極集電体62の片面または両面(ここでは両面)に長手方向に沿って負極活物質層64が形成されている構成を有する。正極活物質層非形成部分52a(すなわち、正極活物質層54が形成されずに正極集電体52が露出した部分)および負極活物質層非形成部分62a(すなわち、負極活物質層64が形成されずに負極集電体62が露出した部分)は、捲回電極体20の捲回軸方向(すなわち、上記長手方向に直交するシート幅方向)の両端から外方にはみ出すように形成されている。正極活物質層非形成部分52aおよび負極活物質層非形成部分62aには、それぞれ正極集電板42aおよび負極集電板44aが接合されている。
【0020】
正極シート50を構成する正極集電体52としては、リチウムイオン二次電池に用いられる公知の正極集電体を用いてよく、その例としては、導電性の良好な金属(例えば、アルミニウム、ニッケル、チタン、ステンレス鋼等)製のシートまたは箔が挙げられる。正極集電体52としては、アルミニウム箔が好ましい。
【0021】
正極集電体52の寸法は特に限定されず、電池設計に応じて適宜決定すればよい。正極集電体52としてアルミニウム箔を用いる場合には、その厚みは、特に限定されないが、例えば5μm以上35μm以下であり、好ましくは7μm以上20μm以下である。
【0022】
正極活物質層54は、正極活物質を含有する。正極活物質としては、リチウムニッケルコバルトマンガン系複合酸化物が少なくとも用いられる。リチウムニッケルコバルトマンガン系複合酸化物は、層状構造の結晶構造を有する。
【0023】
なお、本明細書において「リチウムニッケルコバルトマンガン系複合酸化物」とは、Li、Ni、Co、Mn、Oを構成元素とする酸化物の他に、それら以外の1種または2種以上の添加的な元素を含んだ酸化物をも包含する用語である。かかる添加的な元素の例としては、Mg、Ca、Al、Ti、V、Cr、Y、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、W、Na、Fe、Zn、Sn等の、遷移金属元素や典型金属元素等が挙げられる。また、添加的な元素は、B、C、Si、P等の半金属元素や、S、F、Cl、Br、I等の非金属元素であってもよい。
【0024】
リチウムイオン二次電池100の高いエネルギー密度の観点から、リチウムニッケルコバルトマンガン系複合酸化物においては、リチウム以外の金属元素の合計に対するニッケルの割合が、好ましくは30モル%以上であり、より好ましくは50モル%以上である。
【0025】
リチウムニッケルコバルトマンガン系複合酸化物としては、具体的には、下式(I)で表される組成を有するものが好ましい。
Li1+xNiyCozMn(1-y-z)MαO2-βQβ (I)
【0026】
式(I)中、x、y、z、α、およびβはそれぞれ、-0.3≦x≦0.3、0.1<y<0.9、0<z<0.5、0≦α≦0.1、0≦β≦0.5を満たす。Mは、Zr、Mo、W、Mg、Ca、Na、Fe、Cr、Zn、Sn、BおよびAlからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素である。Qは、F、ClおよびBrからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素である。
【0027】
xは、好ましくは0≦x≦0.3を満たし、より好ましくは0≦x≦0.15を満たす。リチウムイオン二次電池100の高いエネルギー密度の観点から、yおよびzはそれぞれ、0.30≦y≦0.88、0.02≦z≦0.45を満たすことが好ましく、0.50≦y≦0.88、0.02≦z≦0.25を満たすことがより好ましい。αは、好ましくは0≦α≦0.01を満たし、0であってもよい。βは、好ましくは0≦β≦0.1を満たし、より好ましくは0である。
【0028】
正極活物質として、1種類のみのリチウムニッケルコバルトマンガン系複合酸化物を用いてもよいし、組成や粒子形状などが異なる2種以上のリチウムニッケルコバルトマンガン系複合酸化物を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
本実施形態において、正極活物質のBET比表面積は1.8m2/g~2.8m2/gである。リチウムイオン二次電池に使用される正極活物質のBET比表面積の範囲は、0.1m2/g程度から10m2/gを超える範囲であるため、本実施形態においては、BET比表面積が小さい正極活物質が用いられる。上記の範囲のBET比表面積を有する正極活物質は、安定性に優れる。
【0030】
加えて、正極活物質の平均粒子径(D50)に対するBET比表面積の比が、0.62以上である。このような正極活物質と、酢酸メチルを含有する非水電解液と、を組合わせることにより、リチウムイオン二次電池100の出力特性を高めることができる。これは次の理由による。
【0031】
正極活物質の平均粒子径(D50)に対するBET比表面積の比が、0.62以上であることは、平均粒子径(D50)に対してBET比表面積が大きい正極活物質を使用することを意味する。平均粒子径(D50)に対するBET比表面積の比が0.62以上という構成は、正極活物質粒子を中空粒子とすることで達成できる構成である。すなわち、中空粒子は、内部空隙を有することによって粒子内部の表面積が大きいため、平均粒子径(D50)に対するBET比表面積の比を大きくすることが可能である。
【0032】
したがって、本実施形態において、正極活物質は、通常、中空粒子である。本実施形態では、非水電解液80に酢酸メチルを含有させることにより、非水電解液80を低粘度化している。したがって、このような正極活物質と非水電解液80との組み合わせによれば、低粘度化された非水電解液80が、中空粒子の中空部(すなわち、内部空隙)に入りやすくなり、非水電解液80と正極活物質との接触面積を大きくすることができる。その結果、反応面積を大きくすることができ、リチウムイオン二次電池100の出力特性を高めることができる。
【0033】
より高い出力特性の観点から、正極活物質の平均粒子径(D50)に対するBET比表面積の比は、好ましくは0.70以上であり、より好ましくは0.80以上である。当該比の上限は、技術的限界によって定まり、3.0以下、2.0以下、1.5以下、または1.0以下であってよい。
【0034】
本明細書において「比表面積」とは、吸着質として窒素(N2)ガスを用いたガス吸着法(定容量吸着法)によって測定されたガス吸着量に基づき、BET法(例えばBET一点法)により解析されて算出された表面積のことを意味する。BET比表面積は、市販の比表面積測定装置を用いて測定することができる。
【0035】
本明細書において「平均粒子径(D50)」とは、メジアン径(D50)を指し、レーザ回折・散乱法に基づく体積基準の粒度分布において、粒径が小さい微粒子側からの累積頻度50体積%に相当する粒径を意味する。よって、平均粒子径(D50)は、市販のレーザ回折・散乱式の粒度分布測定装置を用いて、求めることができる。
【0036】
なお、正極活物質のBET比表面積は1.8m2/g~2.8m2/gであり、かつ正極活物質の平均粒子径(D50)に対するBET比表面積の比が、0.62以上であるたため、正極活物質の平均粒子径(D50)は、最大でも約4.52μmである。正極活物質の平均粒子径(D50)は、好ましくは1.0μm以上であり、より好ましくは2.0μm以上である。
【0037】
上述のように、正極活物質は、通常、中空粒子である。本明細書において、「中空粒子」とは、一次粒子が単純に凝集して形成される二次粒子(いわゆる、中実粒子)における一次粒子間の隙間よりも大きな内部空隙を有する粒子のことをいう。よって、中空粒子は、典型的には、リチウムニッケルマンガンコバルト系複合酸化物で構成された殻部と、当該殻部の内部に形成された中空部とを有する。中空粒子はまた、典型的には、非水電解液80が中空部に浸入可能なように、当該殻部を貫通する貫通孔をさらに有する。中空部の数は特に限定されず、1つであってもよいし、2つ以上であってもよい。貫通孔の数は特に限定されず、1つであってもよいし、2つ以上であってもよい。
【0038】
中空粒子の空隙率は、特に限定されないが、典型的には、20%~50%である。なお、中空粒子の空隙率は、次のようにして求めることができる。中空粒子の断面電子顕微鏡画像を取得し、粒子全体の面積(粒子が占有する面積と空隙部分の合計面積の和)に対する空隙部分の合計面積の割合を百分率で算出する。100個以上の中空粒子に対して、この値を算出して、その平均値を中空粒子の空隙率とする。
【0039】
中空粒子のDBP吸油量は、特に限定されないが、典型的には、35mL/100g~50mL/100gである。なお、DBP吸収量は、試薬液体としてジブチルフタレート(DBP)を使用し、JIS K6217-4:2008に記載の方法に準拠して測定することができ、3回の測定結果の平均値として求めることができる。
【0040】
中空粒子の例を
図3および
図4に示す。
図3および
図4はそれぞれ、正極活物質の中空粒子の一例の模式断面図である。
図3に示す例では、中空粒子10Aは、一つの中空部14Aを有し、中空粒子10Aにおいて、リチウムニッケルマンガンコバルト系複合酸化物で構成された一次粒子12Aが環状に連なって殻部を形成している。図示例では、一次粒子12Aが単層を形成しているが、殻部の厚み方向に複数の一次粒子12Aが積み重なって複層を形成していてもよい。殻部は、中空部14Aを囲っている。殻部には貫通孔14Aaが形成されており、貫通孔14Aaの開口幅hは、非水電解液80が浸入可能な寸法を有する。
【0041】
図4に示す例では、通常よりも一次粒子12Bが緩く凝集し、そのため、中空粒子10Bは、比較的大きな複数の中空部14Bを有する。なお、
図4では、一部の一次粒子12Bが離れて存在しているが、これは、図が断面図であるためであり、実際は図面外の部分で他の一次粒子(図示せず)と接触している。中空粒子10Bにおいて、凝集した複数の一次粒子12Bが中空部14Bを囲う殻部を形成している。殻部には、貫通孔14Baが形成されており、貫通孔14Baの開口幅hは、非水電解液80が浸入可能な寸法を有する。
【0042】
なお、種々の粒子径、種々の空孔径、および種々の空隙率の中空粒子状の正極活物質の製造方法が公知である。よって、本実施形態に用いられる正極活物質は、公知方法に従って作製して得ることができる。
【0043】
正極活物質は、リチウムニッケルマンガンコバルト系複合酸化物以外の正極活物質を本発明の効果を阻害しない範囲内(例えば正極活物質の全質量に対し20質量%未満、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下)で含有していてもよい。正極活物質は、リチウムニッケルマンガンコバルト系複合酸化物のみから構成されていてもよい。
【0044】
正極活物質層54中の正極活物質の含有量(すなわち、正極活物質層54の全質量に対する正極活物質の含有量)は、特に限定されないが、例えば80質量%以上であり、87質量%以上が好ましく、より好ましくは90質量%以上であり、さらに好ましくは95質量%以上であり、最も好ましくは97質量%以上である。
【0045】
正極活物質層54は、正極活物質以外の成分、例えば、リン酸三リチウム、バインダ、導電材等を含んでいてもよい。
【0046】
正極活物質層54中のリン酸三リチウムの含有量は、特に制限はないが、1質量%以上15質量%以下が好ましく、2質量%以上12質量%以下がより好ましい。
【0047】
バインダとしては、例えばポリフッ化ビニリデン(PVdF)等を使用し得る。正極活物質層54中のバインダの含有量は、特に制限はないが、0.1質量%以上10質量%以下が好ましく、0.2質量%以上5質量%以下がより好ましく、0.3質量%以上2質量%以下がさらに好ましい。
【0048】
導電材としては、例えばカーボンブラック(例、アセチレンブラック(AB))、カーボンナノチューブ(CNT)、グラファイトなどの炭素材料を好適に使用し得る。導電材としては、CNTが好ましい。CNTは導電性が高く、加えて、CNTは中空構造を有する。このため、導電材にCNTを用いた場合には、CNTの中空部において、酢酸メチルによって低粘度化された非水電解液80を流通させることができ、正極活物質層54と非水電解液80との濡れ性を改善することができる。その結果、リチウムイオン二次電池100の出力特性等をより向上させることができる。
【0049】
CNTの種類は特に限定されず、例えば、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)、2層カーボンナノチューブ(DWCNT)、多層カーボンナノチューブ(MWCNT)などを用いることができる。これらは、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。CNTは、アーク放電法、レーザアブレーション法、化学気相成長法等により製造されたものであってよい。一般に、SWCNTよりもMWCNTの方が内径が大きい。よって、CNTの中空部において、酢酸メチルによって低粘度化された非水電解液80をより流通させやすいことから、CNTとしては、MWCNTが好ましい。
【0050】
CNTの平均長さは特に限定されない。CNTの平均長さが長過ぎると、CNTが凝集して分散性が低下する傾向にある。また、CNT内部を拡散するLiイオンが、CNTから出にくくなる。そのため、CNTの平均長さは、15μm以下が好ましく、8.0μm以下がより好ましく、5.0μm以下がさらに好ましい。一方、CNTの平均長さが短過ぎると、正極活物質表面をCNTが被覆し難くなり、正極活物質間の導電パスが形成され難くなる傾向にある。そのため、CNTの平均長さは、0.1μm以上が好ましい。
【0051】
CNTの平均直径は、特に限定されず、例えば0.1nm~150nmである。CNTの中空部において、非水電解液80を流通させやすいことから、CNTの平均直径は、好ましくは1.0nm以上であり、より好ましくは2.0nm以上である。一方、CNTの平均直径が大きすぎると、CNTの粒子の柔軟性が低下して、棒状形状に近くなり、CNTが正極活物質を被覆し難くなる。その結果、正極活物質表面の濡れ性向上の程度が小さくなるおそれがある。そのため、CNTの平均直径は、好ましくは100nm以下であり、より好ましくは50nm以下である。
【0052】
なお、CNTの平均長さおよび平均直径は、例えば、CNTの電子顕微鏡写真を撮影し、100個以上のCNTの長さおよび直径の平均値として、それぞれ求めることができる。具体的に例えば、CNT分散液を希釈した後乾燥して、測定試料を調製する。この試料について走査型電子顕微鏡(SEM)観察を行い、100個以上のCNTの長さおよび直径を求め、平均値を算出する。このとき、CNTが再凝集している場合には、凝集したCNTの束に対して、長さおよび直径を求める。
【0053】
導電材としてCNTを使用する場合、正極活物質層54中のCNTの含有量は、特に制限はない。正極活物質層54中のCNTの含有量が小さ過ぎると、上述の効果が小さくなるおそれがある。一方、CNTの含有量が多過ぎると、リチウムイオン二次電池100の製造時における、正極スラリーの増粘や、正極活物質層54への非水電解液80の含浸性の低下等が起こるおそれがある。そのため、正極活物質層54中のCNTの含有量は、0.1質量%以上3.0質量%以下が好ましく、0.3質量%以上2.5質量%以下がより好ましく、0.5質量%以上2.0質量%以下がさらに好ましい。
【0054】
導電材としてCNT以外を使用する場合、正極活物質層54中のその含有量は、特に制限はないが、1質量%以上15質量%以下が好ましく、3質量%以上13質量%以下がより好ましい。
【0055】
導電材としてCNTを用いる場合には、正極活物質層は、カーボンナノチューブ分散剤(CNT分散剤)をさらに含んでいてもよい。CNT分散剤としては、例えば、界面活性剤型分散剤(低分子型分散剤とも呼ばれる)、高分子型分散剤、無機型分散剤等を用いることができる。CNT分散剤は、アニオン性、カチオン性、両性または非イオン性のいずれであってもよい。よって、CNT分散剤は、その分子構造中に、アニオン性基、カチオン性基、およびノニオン性基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有していてもよい。なお、界面活性剤とは、分子構造内に親水性部位と親油性部位を備え、これらが共有結合で結合した化学構造を有する両親媒性物質をいう。
【0056】
CNT分散剤の具体例としては、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物アンモニウム塩、メチルナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩等の重縮合系の芳香族系界面活性剤;ポリアクリル酸およびその塩、ポリメタクリル酸およびその塩等のポリカルボン酸およびその塩;トリアジン誘導体系分散剤(好ましくはカルバゾリル基、またはベンゾイミダゾリル基を含むもの);ポリビニルピロリドン(PVP);ピレン、アントラセン等の多核芳香族を側鎖に有するポリマー;ピレンアンモニウム誘導体(例、ピレンにアンモニウムブロマイド基が導入された化合物)、アントラセンアンモニウム誘導体等の多核芳香族アンモニウム誘導体;などが挙げられる。これらのCNT分散剤は、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。CNT分散剤としては、多核芳香族を含むものが好ましい。具体的には、CNT分散剤としては、多核芳香族を側鎖に有するポリマー、および多核芳香族アンモニウム誘導体が好ましい。
【0057】
CNT分散剤の量は、CNTおよびCNT分散剤の種類に応じて適宜決定してよい。ここで、CNT分散剤の割合が小さ過ぎると、分散性が不十分となるおそれがある。一方、CNT分散剤の割合が大き過ぎると、CNT表面に過剰にCNT分散剤が付着して、抵抗増加を起こし得る。CNTがSWCNTである場合には、CNT分散剤の使用量は、CNT100質量部に対して、例えば1質量部~400質量部であり、好ましくは20質量部~200質量部である。CNTがMWNTである場合には、CNT分散剤の使用量は、CNT100質量部に対して、例えば1質量部~100質量部であり、好ましくは4質量部~40質量部である。
【0058】
正極活物質層54の厚みは、特に限定されないが、例えば、10μm以上400μm以下であり、好ましくは20μm以上300μm以下である。
【0059】
正極活物質層54の目付量は、特に限定されないが、好ましくは4mg/cm2以上であり、より好ましくは8mg/cm2以上であり、さらに好ましくは10mg/cm2以上であり、特に好ましくは20mg/cm2以上である。正極活物質層54の目付量は、50mg/cm2以下、または40mg/cm2以下であってよい。
【0060】
正極シート50は、正極活物質層非形成部分52aと正極活物質層54との境界部に絶縁層(図示せず)を含有していてもよい。当該絶縁層は、例えば、セラミック粒子等を含有する。
【0061】
負極シート60を構成する負極集電体62としては、リチウムイオン二次電池に用いられる公知の負極集電体を用いてよく、その例としては、導電性の良好な金属(例えば、銅、ニッケル、チタン、ステンレス鋼等)製のシートまたは箔が挙げられる。負極集電体62としては、銅箔が好ましい。
【0062】
負極集電体62の寸法は特に限定されず、電池設計に応じて適宜決定すればよい。負極集電体62として銅箔を用いる場合には、その厚みは、特に限定されないが、例えば5μm以上35μm以下であり、好ましくは6μm以上20μm以下である。
【0063】
負極活物質層64は負極活物質を含有する。当該負極活物質としては、例えば黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボン等の炭素材料を使用し得る。黒鉛は、天然黒鉛であっても人造黒鉛であってもよく、黒鉛が非晶質な炭素材料で被覆された形態の非晶質炭素被覆黒鉛であってもよい。
【0064】
負極活物質の平均粒子径(メジアン径:D50)は、特に限定されないが、例えば、0.1μm以上50μm以下であり、好ましくは1μm以上25μm以下であり、より好ましくは5μm以上20μm以下である。なお、負極活物質の平均粒子径(D50)は、例えば、レーザ回折散乱法により求めることができる。
【0065】
負極活物質層64は、活物質以外の成分、例えばバインダや増粘剤等を含み得る。バインダとしては、例えばスチレンブタジエンラバー(SBR)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)等を使用し得る。増粘剤としては、例えばカルボキシメチルセルロース(CMC)等を使用し得る。
【0066】
負極活物質層64中の負極活物質の含有量は、90質量%以上が好ましく、95質量%以上99質量%以下がより好ましい。負極活物質層64中のバインダの含有量は、0.1質量%以上8質量%以下が好ましく、0.5質量%以上3質量%以下がより好ましい。負極活物質層64中の増粘剤の含有量は、0.3質量%以上3質量%以下が好ましく、0.5質量%以上2質量%以下がより好ましい。
【0067】
負極活物質層64の厚みは、特に限定されないが、例えば、10μm以上400μm以下であり、好ましくは20μm以上300μm以下である。
【0068】
負極活物質層64の目付量は、特に限定されないが、好ましくは4mg/cm2以上であり、より好ましくは8mg/cm2以上であり、さらに好ましくは10mg/cm2以上であり、特に好ましくは20mg/cm2以上である。負極活物質層64の目付量は、50mg/cm2以下、または40mg/cm2以下であってよい。
【0069】
セパレータ70としては、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル、セルロース、ポリアミド等の樹脂から構成される多孔性シート(フィルム)が挙げられる。かかる多孔性シートは、単層構造であってもよく、二層以上の積層構造(例えば、PE層の両面にPP層が積層された三層構造)であってもよい。セパレータ70の表面には、セラミック粒子等を含有する耐熱層(HRL)が設けられていてもよい。
【0070】
セパレータ70の厚みは特に限定されないが、例えば5μm以上50μm以下であり、好ましくは10μm以上30μm以下である。セパレータ70のガーレー試験法によって得られる透気度は特に限定されないが、好ましくは350秒/100cc以下である。
【0071】
リチウムイオン二次電池100は、出力特性に優れる。また、BET比表面積が小さい正極活物質を使用しているため、正極活物質の安定性に優れ、よってリチウムイオン二次電池100は、耐久性にも優れる。リチウムイオン二次電池100は、各種用途に利用可能である。好適な用途としては、電気自動車(BEV)、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)等の車両に搭載される駆動用電源が挙げられる。また、リチウムイオン二次電池100は、小型電力貯蔵装置等の蓄電池として使用することができる。リチウムイオン二次電池100は、出力特性に優れるため、リチウムイオン二次電池100の特に好適な用途は、電気自動車(BEV)、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)等の車両に搭載される駆動用電源(なかでも、HEVの駆動用電源)である。リチウムイオン二次電池100は、典型的には複数個を直列および/または並列に接続してなる組電池の形態でも使用され得る。
【0072】
以上、一例として扁平形状の捲回電極体20を備える角形のリチウムイオン二次電池100について説明した。しかしながら、リチウムイオン二次電池は、積層型電極体(すなわち、複数の正極と、複数の負極とが交互に積層された電極体)を備えるリチウムイオン二次電池として構成することもできる。また、リチウムイオン二次電池は、円筒形リチウムイオン二次電池、ラミネートケース型リチウムイオン二次電池等として構成することもできる。
【0073】
本実施形態に係る二次電池は、公知方法に従ってリチウムイオン二次電池以外の非水電解液二次電池として構成することができる。
【0074】
以下、本発明に関する実施例を詳細に説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
【0075】
〔実施例1~9および比較例1~5〕
正極活物質として、表1に示すBET比表面積と平均粒子径(D50)を有するLiNi0.50Co0.20Mn0.30O2を用意した。なお、比較例3の正極活物質は、中実粒子であり、各実施例およびその他の比較例の正極活物質は、中空粒子であった。
【0076】
この正極活物質と、導電材としてのカーボンナノチューブと、バインダとしてのPVdFとを、活物質:導電材:PVdF=97.5:1.5:1.0の質量比でN-メチル-2-ピロリドン(NMP)中で混合し、正極スラリーを調製した。この正極スラリーを、アルミニウム箔上に塗布し、乾燥を行って正極シートを作製した。
【0077】
負極活物質としての天然黒鉛(C)と、バインダとしてのスチレンブタジエンゴム(SBR)と、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロース(CMC)とを、C:SBR:CMC=98:1:1の質量比で、純水中で混合し、負極スラリーを調製した。この負極スラリーを、銅箔上に塗布し、乾燥を行って負極シートを作製した。
【0078】
セパレータとしてのポリオレフィン多孔膜を、上記作製した正極シートおよび負極シートで挟み込んで電極体を作製した。電極体において、電極の対向面積は、約20cm2であった。この電極体を、端部に開口部を有するラミネートケース内に入れた。
【0079】
エチレンカーボネート(EC)と、エチルメチルカーボネート(EMC)と、ジメチルカーボネート(DMC)と、酢酸メチルとを、30:30-x:40:xの体積比で含む混合溶媒を用意した。xの値を表1に示す。この混合溶媒に、電解質塩としてのLiPF6を1.1mol/Lの濃度で溶解させて、非水電解液を調製した。この非水電解液を当該ラミネートケース内に注入し、ラミネートケースの開口部を熱融着することにより、ラミネートケースを封止した。このようにして、評価用リチウムイオン二次電池としての、容量約20mAhの単層ラミネートセルを得た。
【0080】
<出力評価>
各評価用リチウムイオン二次電池に対して、1/3Cの電流値で初期充電を施した後、60℃で24時間エージング処理を施した。その後、各評価用リチウムイオン二次電池をSOC(State of charge)50%に調整した後、25℃の環境下に置いた。種々の電流値で所定のカット電圧まで、各評価用リチウムイオン二次電池を放電させ、電池電圧がカット電圧に到達する時間(秒)を測定した。この測定結果に基づき、10秒でカット電圧に到達する出力(10秒出力)を求めた。比較例1の出力を「1.00」とした場合の、比較例1に対する各実施例およびその他の比較例の出力の比を算出した。結果を表1に示す。
【0081】
【0082】
表1の結果より、正極活物質にリチウムニッケルコバルトマンガン系複合酸化物を用い、正極活物質のBET比表面積が1.8m2/g~2.8m2/gであり、正極活物質の平均粒子径(D50)に対するBET比表面積の比が0.62以上であり、かつ非水電解液の非水溶媒が、酢酸メチルを含有する場合に、出力が特に高いことがわかる。よって、ここに開示される非水電解液二次電池によれば、BET比表面積が小さい正極活物質を用いながらも、出力特性を高くすることができることがわかる。
【0083】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0084】
すなわち、ここに開示される非水電解液二次電池は、以下の項[1]~[7]である。
[1]正極と、
負極と、
非水電解液と、
を備える非水電解液二次電池であって、
前記正極は、正極活物質を含有する正極活物質層を有し、
前記正極活物質は、リチウムニッケルコバルトマンガン系複合酸化物であり、
前記正極活物質のBET比表面積が、1.8m2/g~2.8m2/gであり、
前記正極活物質の平均粒子径(D50)に対するBET比表面積の比は、0.62以上であり、
前記非水電解液は、非水溶媒と、電解質塩と、を含有し、
前記非水溶媒は、酢酸メチルを含有する、非水電解液二次電池。
[2]前記非水溶媒が、前記酢酸メチルを3体積%~30体積%含有する、項[1]に記載の非水電解液二次電池。
[3]前記正極活物質の平均粒子径(D50)に対するBET比表面積の比が、0.80以上である、項[1]または[2]に記載の非水電解液二次電池。
[4]前記正極活物質層が、導電材としてカーボンナノチューブをさらに含有する、項[1]~[3]のいずれか1項に記載の非水電解液二次電池。
[5]前記正極活物質が、中空粒子である、項[1]~[4]のいずれか1項に記載の非水電解液二次電池。
[6]前記リチウムニッケルコバルトマンガン系複合酸化物において、リチウム以外の金属元素の合計に対するニッケルの割合が、50モル%以上である、項[1]~[5]のいずれか1項に記載の非水電解液二次電池。
[7]ハイブリッド車の車両駆動電源用である、項[1]~[6]のいずれか1項に記載の非水電解液二次電池。
【符号の説明】
【0085】
20 捲回電極体
30 電池ケース
36 安全弁
42 正極端子
42a 正極集電板
44 負極端子
44a 負極集電板
50 正極シート(正極)
52 正極集電体
52a 正極活物質層非形成部分
54 正極活物質層
60 負極シート(負極)
62 負極集電体
62a 負極活物質層非形成部分
64 負極活物質層
70 セパレータシート(セパレータ)
80 非水電解液
100 リチウムイオン二次電池