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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111898
(43)【公開日】2024-08-20
(54)【発明の名称】蓋の取付構造
(51)【国際特許分類】
   B60K 15/05 20060101AFI20240813BHJP
   B60K 1/04 20190101ALI20240813BHJP
【FI】
B60K15/05 B
B60K1/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023016605
(22)【出願日】2023-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】308039414
【氏名又は名称】株式会社FTS
(71)【出願人】
【識別番号】596002767
【氏名又は名称】トヨタ自動車九州株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120765
【弁理士】
【氏名又は名称】小滝 正宏
(74)【代理人】
【識別番号】100097076
【弁理士】
【氏名又は名称】糟谷 敬彦
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 康行
(72)【発明者】
【氏名】松本 洋一
(72)【発明者】
【氏名】内山 佑輝
【テーマコード(参考)】
3D038
3D235
【Fターム(参考)】
3D038CA32
3D038CB01
3D038CC16
3D235AA01
3D235BB23
3D235BB41
(57)【要約】
【課題】全開時の蓋のバタ付き、異音の発生を防止し、且つコストアップを抑えた蓋の取付構造を提供する。
【解決手段】アーム収納部37の側壁に形成されたアーム収納部側係合部とアーム22に形成されたアーム側係合部26が係合してアーム22を回動可能にすると共にアーム22に形成されたバネ取付部24に取付けられたバネ40がアーム収納部37のバネ係合部36と係合し、バネ40は、アーム収納部37のバネ係合部36に保持されるアーム収納部側部42と、アーム22のバネ取付部24に取付けられるアーム側部41と、アーム収納部側部42とアーム側部41を接続するバネ本体部43と、アーム収納部側部42の先端から延設され、アーム収納部37の段差部39に当接する段差部当接部45と、を備えている。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の給油口又は充電口等を塞ぐ蓋を開閉する前記蓋の取付構造であって、
前記蓋には、蓋取付部と、前記蓋取付部から湾曲して延設されるアームを有する蓋取付部材が取付けられ、又は、一体化され、
前記給油口又は充電口等には、前記給油口又は充電口等のための開口部が形成されたボックス本体部と前記蓋取付部材の前記アームを収納するアーム収納部を有するボックスが取付けられ、
前記アーム収納部の長手方向であり、前記ボックス本体部とは反対側の端部には、前記アーム収納部の空間を画定する傾斜部と、前記傾斜部に接続する段差部が形成され、前記傾斜部と前記段差部が形成する角部の内面にバネ係合部が形成され、
前記アーム収納部に形成されたアーム収納部側係合部と前記アームに形成されたアーム側係合部が係合して前記アームを回動可能にすると共に前記アームに形成されたバネ取付部に取付けられたバネが前記アーム収納部の前記バネ係合部と係合し、
前記バネは、前記アーム収納部の前記バネ係合部に保持されるアーム収納部側部と、前記アームの前記バネ取付部に取付けられるアーム側部と、前記アーム収納部側部と前記アーム側部を接続するバネ本体部と、前記アーム収納部側部の先端から延設され、前記アーム収納部の前記段差部に当接する段差部当接部と、を備えていることを特徴とする蓋の取付構造。
【請求項2】
前記バネは、1本の金属の線状部材で形成され、前記段差部当接部は、前記アーム収納部側部の先端から屈曲し、前記アーム側部と前記アーム収納部側部によって形成されるバネ平面から外れて形成され、前記バネ平面と前記段差部当接部の角度は、前記アームが前記アーム収納部に取付けられ、前記蓋を閉じた時の、前記バネ平面と前記段差部の角度以下である請求項1に記載の蓋の取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等車両の車体に取付けられ、車体の給油口、充電口等を塞ぎ、開閉可能な蓋を有する蓋の取付構造、特に車体側とのロックが解除された時に、途中で停止することなく全開の位置まで移動することが可能な蓋の取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車用燃料タンクにガソリン等の燃料や水素を給油又は充填する場合には、車体に設けられた給油口又は充填口を塞ぐ給油口蓋、充填口蓋を開き、燃料キャップを外して給油口から燃料を給油する、又は、充填ポートに充填プラグを差し込んで水素を充填する。又、電気自動車やPHV(プラグインハイブリッド車)に電気を充電する場合には、充電蓋を開き、急速充電ポート又は普通充電ポートに充電コネクタを差し込んで充電する。
【0003】
例えば、自動車用燃料タンクに燃料を給油する場合には、図1に示すように、車体201に設けられた給油口101を塞ぐ蓋(給油口蓋)110を開いて、給油口101から燃料を給油する。蓋110の裏面には蓋取付部材200が取付けられている。蓋取付部材200は、蓋110を開閉可能にする大きく湾曲したアーム220を有し、ボックス(給油口ボックス)300に取付けられている。
【0004】
図8に示すように、ボックス300は、給油口101に対応する開口部340を有し、車体に取付けられるボックス本体部310と、蓋取付部材200のアーム220を回転自在に収納するアーム収納部370から構成されている。
【0005】
アーム220は、アーム収納部370に回動可能に取付けられ、又、アーム220には、アーム収納部370のバネ係合部360と係合するバネ400が取付けられている。
【0006】
バネ400は、図示しないが、略己字形状であり、アーム220のバネ取付部240に取付けられるアーム側部410と、ボックス300のアーム収納部370のバネ係合部360に係合して保持されるアーム収納部側部420と、アーム側部410とアーム収納部側部420との間に存在するバネ本体部430を有している。又、バネ400のアーム側部410に連結し、車体側とのロックが解除された時に、蓋110を車体面から少し浮き上がらせるポップアップのための突出部440が形成されている。
【0007】
蓋110を閉じた時(全閉時)には、バネ400のアーム側部410とアーム収納部側部420の間隔が狭まるようにバネ本体部430が撓み、突出部440は、アーム収納部370の内壁に当接してバネ本体部430側に撓み、いずれも元の形状に戻る方向に付勢されている。その結果、給油時等において、蓋110と車体側(ボックス300)とのロックが解除されると、突出部440とバネ本体部430の付勢力によって、アーム220が蓋110を開く方向に回動する。
【0008】
なお、特許文献1では、このアーム220の回動により、蓋110の先端が、車体201の面から若干浮き上がり、その後、先端が浮き上がった蓋110の先端を手で持ち上げて、蓋110を全開させる旨が記載されているが、突出部440の付勢力が開放された時に、バネ400のアーム側部410の位置がバネ係合部360とアーム220の回動中心を結んだ線よりボックス本体部310側となり、又、バネ本体部430の付勢力を大きくすれば、蓋110と車体側とのロックが解除された時に、蓋110を途中で停止することなく全開の位置まで移動させることができるので、手動で蓋110を全開にする必要がなくなる。
【0009】
ただし、蓋110を途中で停止することなく全開の位置まで移動させる場合は、蓋110が開く時には、バネ本体部430には元の形状に戻る方向の付勢力が作用し、蓋110が加速し続けるので、アーム220がボックス本体部310に衝突したり、衝突しないまでも、バネ400のバネ本体部430が元の形状に戻った時にアーム220の回動が急停止するので、その反動で全開時に蓋110がバタ付き、異音を生じる場合がある。
【0010】
上記の蓋のバタ付きや異音の発生を生じ難くする方法として、特許文献2には、以下の技術が記載されている。図9に示すように、リッド(蓋)110は、ハウジング内に設けられたベース600に対し第1リンク610及び第2リンク620を介して回動可能に支持されている。第1バネ体630は第1リンク610とベース600との間に配置され、第2バネ体640は第2リンク620とベース600との間に配置されている。そして、リッド110は、ハウジングの外周に装着されるロック手段により閉位置に係止されている。
【0011】
例えば、ロック手段が車室内のオープナーを介して係止解除操作されることで、又は、ドアロックの解除操作と連動して係止解除されると、図示しないプッシュリフタにより第1バネ体630などの付勢力に抗して閉位置から少しだけ開く。そこで、リッド110を手等で開方向にある第2位置まで回動操作すると、第2位置で第2バネ体640など付勢方向が大きく反転し、以後は付勢力で全開方向へ回動される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2019-85086号公報
【特許文献2】特開2019-209834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところで、特許文献2の技術は、構造が複雑であり、大きなコストアップとなる。又、第1位置から第2位置まで、手等で回動操作する必要がある。そこで、本発明は、特に車体とのロックが解除された時に、途中で停止することなく全開の位置まで移動する蓋の取付構造に関し、全開時の蓋のバタ付き、異音の発生を防止し、且つコストアップを抑えた蓋の取付構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために請求項1の本発明は、車体の給油口又は充電口等を塞ぐ蓋を開閉する蓋の取付構造であって、蓋には、蓋取付部と、蓋取付部から湾曲して延設されるアームを有する蓋取付部材が取付けられ、又は、一体化され、給油口又は充電口等には、給油口又は充電口等のための開口部が形成されたボックス本体部と蓋取付部材のアームを収納するアーム収納部を有するボックスが取付けられ、アーム収納部の長手方向であり、ボックス本体部とは反対側の端部には、アーム収納部の空間を画定する傾斜部と、傾斜部に接続する段差部が形成され、傾斜部と段差部が形成する角部の内面にバネ係合部が形成され、アーム収納部に形成されたアーム収納部側係合部とアームに形成されたアーム側係合部が係合してアームを回動可能にすると共にアームに形成されたバネ取付部に取付けられたバネがアーム収納部のバネ係合部と係合し、バネは、アーム収納部のバネ係合部に保持されるアーム収納部側部と、アームのバネ取付部に取付けられるアーム側部と、アーム収納部側部とアーム側部を接続するバネ本体部と、アーム収納部側部の先端から延設され、アーム収納部の段差部に当接する段差部当接部と、を備えていることを特徴とする蓋の取付構造である。
【0015】
請求項1の本発明では、バネは、アーム収納部側部の先端から延設され、アーム収納部の段差部に当接する段差部当接部を備えているので、アームが回動して蓋が開く方向に移動すると、バネのアーム側部とバネ本体部は、ボックス本体部側に移動するが、段差部当接部は、段差部に当接するので、アーム収納部側部は、アーム側部とバネ本体部の動きに追従することができず、アーム収納部側部内に捻れを生じる。
【0016】
そして、段差部当接部に連結するアーム収納部側部には、捻れを解消する方向の力が働き、その力は、アームの回動を抑制する方向、すなわち、蓋を閉じる方向に作用する。その結果、加速するバネ本体部の動きにブレーキをかけることができるので、アームがボックス本体部に衝突したり、衝突しないまでも、バネ本体部が元の形状に戻った時にアームの回動の急停止を防止し、その反動で全開時に蓋がバタ付き、異音を生じることを防止することができる。又、バネに段差部当接部を形成することにより上記効果を奏するので、コストアップを抑えることができる。
【0017】
請求項2の本発明は、請求項1の発明において、バネは、1本の金属の線状部材で形成され、段差部当接部は、アーム収納部側部の先端から屈曲し、アーム側部とアーム収納部側部によって形成されるバネ平面から外れて形成され、バネ平面と段差部当接部の角度は、アームがアーム収納部に取付けられ、蓋を閉じた時の、バネ平面と段差部の角度以下である蓋の取付構造である。
【0018】
請求項2の本発明では、バネは、1本の金属の線状部材で形成されているので、構造が簡単であり、製造が容易でコストも低く、アーム収納部やアームの形状、寸法が変化しても、調整が容易である。
【0019】
又、段差部当接部は、アーム収納部側部の先端から屈曲し、アーム側部とアーム収納部側部によって形成されるバネ平面から外れて形成され、バネ平面と段差部当接部の角度は、アームがアーム収納部に取付けられ、蓋を閉じた時の、バネ平面と段差部当接部の角度がバネ平面と段差部の角度以下であるので、バネ平面と段差部当接部の角度がバネ平面と段差部の角度と同じ場合は、蓋が閉じられた時に、アーム収納部側部がバネ係合部に保持されると共に段差部当接部が段差部に当接し、バネ平面と段差部当接部の角度がバネ平面と段差部の角度より小さい場合は、アームが回動して蓋が開く方向に移動した時に段差部当接部が段差部に当接する。
【0020】
アームが回動して蓋が開く方向に移動した時には、バネの段差部当接部によって、段差部当接部に連結するアーム収納部側部には、捻れを生じる。そして、段差部当接部に連結するアーム収納部側部には、捻れを解消する方向の力が働き、その力は、アームの回動を抑制する方向、すなわち、蓋を閉じる方向に作用する。その結果、加速するバネ本体部の動きにブレーキをかけることができ、アームがボックス本体部に衝突したり、衝突しないまでも、バネ本体部が元の形状に戻った時にアームの回動の急停止を防止し、その反動で全開時に蓋がバタ付き、異音を生じることを防止することができる。
【0021】
なお、本発明は、蓋が全閉から全開に至る間に効果を奏する必要があるので、バネのバネ平面と段差部当接部の角度は、全開時のバネ平面と段差部の角度より大きく設定する必要がある。
又、バネ平面と段差部当接部の角度が、蓋を閉じた時(全閉時)のバネ係合部に当接したバネ平面と段差部の角度より大きい場合は、バネのアーム収納部側部がアーム収納部のバネ係合部に当接する前に、段差部当接部と段差部が当接し、バネのアーム収納部側部がアーム収納部のバネ係合部に当接することができない、又は、バネのアーム収納部側部をアーム収納部のバネ係合部に当接させるには大きな力を必要とし、蓋が閉じ難くなるので望ましくない。
【発明の効果】
【0022】
車体の給油口又は充電口等を塞ぐ蓋を開閉する蓋の取付構造であって、蓋には、蓋取付部と、蓋取付部から湾曲して延設されるアームを有する蓋取付部材が取付けられ、又は、一体化され、給油口又は充電口等には、給油口又は充電口等のための開口部が形成されたボックス本体部と蓋取付部材のアームを収納するアーム収納部を有するボックスが取付けられ、アーム収納部の長手方向であり、ボックス本体部とは反対側の端部には、アーム収納部の空間を画定する傾斜部と、傾斜部に接続する段差部が形成され、傾斜部と段差部が形成する角部の内面にバネ係合部が形成され、アーム収納部に形成されたアーム収納部側係合部とアームに形成されたアーム側係合部が係合してアームを回動可能にすると共にアームに形成されたバネ取付部に取付けられたバネがアーム収納部のバネ係合部と係合し、バネは、アーム収納部のバネ係合部に保持されるアーム収納部側部と、アームのバネ取付部に取付けられるアーム側部と、アーム収納部側部とアーム側部を接続するバネ本体部と、アーム収納部側部の先端から延設され、アーム収納部の段差部に当接する段差部当接部と、を備えているので、アームが回動して蓋が開く方向に移動すると、バネのアーム側部とバネ本体部は、ボックス本体側に移動するが、段差部当接部は、段差部に当接するので、アーム収納部側部は、アーム側部とバネ本体部の動きに追従することができず、アーム収納部側部内に捻れを生じる。
【0023】
そして、アーム収納部側部に連結する段差部当接部には、捻れを解消する方向の力が働き、その力は、アームの回動を抑制する方向、すなわち、蓋を閉じる方向に作用する。その結果、加速するバネ本体部の動きにブレーキをかけることができるので、アームがボックス本体部に衝突したり、衝突しないまでも、バネ本体部が元の形状に戻った時にアームの回動の急停止を防止し、その反動で全開時に蓋がバタ付き、異音を生じることを防止することができる。又、バネに段差部当接部を形成することにより上記効果を奏するので、コストアップを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】蓋を開いた(全開)状態の給油口部分の斜視図である。
図2】本発明の実施形態を示すもので、図1におけるX-X断面の断面図である。
図3】本発明の実施形態に使用されるアームの先端部分の斜視図である。
図4】本発明の実施形態に使用されるバネの図面であり、(a)は平面図であり、(b)は(a)における矢印方向から見た側面図である。
図5】本発明の実施形態を示すものであり、蓋を閉じた(全閉)時のアームとバネとアーム収納部との関係を説明する図2の拡大断面図である。
図6】本発明の実施形態を示すものであり、蓋が約45度開いた位置に来た時のアームとバネとアーム収納部との関係を説明する図2の拡大断面図である。
図7】本発明の実施形態を示すものであり、蓋を開いた(全開)時のアームとバネとアーム収納部との関係を説明する図2の拡大断面図である。
図8】従来の蓋の取付け構造であり、アームと、ボックスのアーム収納部付近の拡大断面図である(特許文献1)。
図9】従来の蓋の付勢構造を模式的に示す要部拡大図である(特許文献2)。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施形態を図1から図7に基づいて説明する。なお、以下の実施形態は、車体2の給油口1を塞ぐと共に開閉可能な蓋11(給油口蓋)を有する蓋11の取付構造に関し説明するものであるが、充填ポートに充填プラグを差し込んで水素を充填する場合や電気自動車やPHV(プラグインハイブリッド車)に電気を充電する場合にも使用することができる。
【0026】
図1に示すように、蓋11は、車体2の給油口1を塞ぐために給油口1の形状に合わせて形成されている。自動車用燃料タンクに燃料を給油する場合に、車体2に設けられた給油口1を塞ぐ蓋11を開いて、給油口1から燃料を給油する。蓋11の裏面には蓋取付部材20が取付けられ、蓋取付部材20は、ボックス30に取付けられている。
【0027】
図1図2に示すように、蓋取付部材20は、蓋11に取付けられる蓋取付部21と、蓋11を開閉可能にする大きく湾曲した円弧状のアーム22を有している。又、蓋取付部21には、後述するボックス30のロックピン32と係合する蓋ロック部23が形成されている。なお、蓋11と蓋取付部材20を一体に形成してもよい。
【0028】
車体2に取付けられるボックス30は、給油口1部分に開口部34を有するボックス本体部31と、蓋取付部材20のアーム22を収納するアーム収納部37を有している。アーム22のボックス30内における開閉スペースを確保するため、アーム収納部37は、ボックス本体部31を車体2に保持するボックス保持部3よりも車体2の内側に入り込んで形成されている。したがって、アーム22の回転中心Oは、アーム収納部37内のさらに蓋11よりも横方向の奥の部分において、アーム収納部37と係合する。ボックス30とアーム22を含む蓋取付部材20は共に樹脂製である。
【0029】
ボックス本体部31の上端部の周囲には、シール部材33が取付けられ、若しくは上端部と一体に形成され、ボックス本体部31が、車体2のボックス保持部3に取付けられた時に、車体2のボックス保持部3とボックス本体部31の上端部との間をシールする。
【0030】
ボックス30のアーム収納部37と反対側のボックス本体部31には、ロックピン32が形成され、蓋11を閉じた時に、ロックピン32が蓋取付部材20の蓋ロック部23に係合して、蓋11をロックすることができる。又、蓋11を開く時は、蓋ロック部23を僅かに上方に移動させるようにしてロックピン32と蓋取付部21の蓋ロック部23との係合が解除される。
【0031】
図3に示すように、蓋取付部材20のアーム22の両側面22aの先端部分には、幅方向両端部にアーム側係合部26が形成され、アーム側係合部26の側面には、円柱形状の凹部28が形成されている。又、アーム22におけるアーム側係合部26よりボックス本体部31側には、後述するバネ40のアーム側部41を取付けるバネ取付部24が円柱形状の孔部として形成されている。
【0032】
又、図示しないが、アーム収納部37の側壁には、アーム側係合部26の凹部28に合致する位置に、アーム収納部側係合部としての孔部が形成され、アーム収納部側係合部にアーム22の凹部28に挿入される胴部を有するキャップを装着することにより、アーム収納部37にアーム22が回転可能に取付けられる。したがって、凹部28の中心がアーム22の回転中心Oとなる。
【0033】
図4(a)に示すように、バネ40は、1本の金属線状部材であるワイヤーを略己字形状に折り曲げることにより製造され、後述するアーム収納部37のバネ係合部36に保持されるアーム収納部側部42と、アーム22のバネ取付部24に取付けられるアーム側部41と、アーム収納部側部42とアーム側部41を接続するバネ本体部43を有している。そして、図4(b)に示すように、アーム収納部側部42、アーム側部41とバネ本体部43は、一平面として形成されている。ここで、アーム収納部側部42とアーム側部41が形成する面をバネ平面46という。
【0034】
又、図4(a)に示すように、バネ40のアーム収納部側部42の先端から略垂直方向で直線状に、且つ図4(b)に示すように、バネ平面46から外れる方向に、Yの角度を有して段差部当接部45が形成されている。
【0035】
図5は、アーム22のバネ取付部24にバネ40のアーム側部41を取付け、アーム22及びバネ40をボックス30のアーム収納部37に取付け、ロックピン32が蓋取付部材20の蓋ロック部23に係合して、蓋11を閉じた時のアーム22とバネ40とアーム収納部37との関係を説明する図2の拡大断面図である。
【0036】
アーム収納部37の長手方向であり、アーム収納部37のボックス本体部31とは反対側の端部には、車内側に向かってアーム収納部37の空間を画定する傾斜部38と、傾斜部38に接続する段差部39と、段差部39とボックス本体部31を接続する底面部52が形成されている。又、傾斜部38に接続する段差部39との間には、内面においてバネ40のアーム収納部側部42と係合するバネ係合部36が形成されている。
【0037】
本実施形態では、蓋11を閉じた状態において、バネ平面46とアーム収納部37の段差部39との角度αは、図4の角度Yと同じ(Y=α)に設定した。したがって、蓋11を閉じた(全閉)時には、バネ40のアーム収納部側部42がアーム収納部37のバネ係合部36に係合して保持されると共に、バネ40の段差部当接部45の全体がアーム収納部37の段差部39に当接する。
【0038】
蓋11を閉じた時、バネ40は、アーム側部41とアーム収納部側部42の間の距離が短くなるようにバネ本体部43が撓んで変形する。したがって、バネ本体部43には、F方向の付勢力が発生している。
【0039】
又、蓋11を閉じた状態では、アーム22のバネ取付部24の位置は、アーム22の回転中心Oとバネ40のアーム収納部側部42を結んだ線のほぼ線上に位置している。これは、ロックピン32と蓋取付部材20の蓋ロック部23の係合が解除された時に、蓋ロック部23が僅かに上方に移動し、アーム22のバネ取付部24の位置がアーム22の回転中心Oとバネ40のアーム収納部側部42を結んだ線よりボックス本体部31側になり、バネ本体部43が元の形状に戻るための力により、蓋11を開くように作用することに基づく。なお、ロックピン32と蓋取付部材20の蓋ロック部23の係合が解除された時に、蓋11の位置が上方に移動しない場合には、蓋11を閉じた時のアーム22のバネ取付部24の位置は、アーム22の回転中心Oとバネ40のアーム収納部側部42を結んだ線よりボックス本体部31になるように設計する。
【0040】
又、上記の特許文献1に記載された、アーム側部41に連結し、ポップアップのための突出部440が形成されているバネ40を用いてもよい。その場合には、アーム22のバネ取付部24の位置は、アーム収納部37の奥行側に位置していてもよく、ポップアップ後において、アーム22のバネ取付部24の位置がアーム22の回転中心Oとバネ40のアーム収納部側部42を結んだ線よりボックス本体部31側に移動すればよい。
【0041】
図6は、ロックピン32と蓋取付部材20の蓋ロック部23の係合が解除され、バネ本体部43の付勢力によりアーム側部41とアーム収納部側部42の間の距離が長くなり、蓋11が開いている途中であり、蓋11が約45度開いた時のアーム22とバネ40とアーム収納部37との関係を説明する図2の拡大断面図である。図6では、アーム22が回動して蓋11が開く方向に移動すると、バネ40のアーム側部41とバネ本体部43は、ボックス本体部31側に移動し、バネ平面46と段差部当接部45とのなす角度は、αからβ(βはαより小さい)に変化する。
【0042】
この時、段差部当接部45は段差部39に当接しており、段差部当接部45はアーム収納部側部42の先端から延設されているので、アーム収納部側部42は、バネ平面46の動き(破線A→破線B)に追従して回転できず、アーム収納部側部42内に捻れを生じる。そして、段差部当接部45に連結するアーム収納部側部42には、捻れを解消し、段差部当接部45との角度をYに戻そうとする力、すなわち、図6の矢印f方向の力が作用している。
【0043】
その結果、段差部当接部45により、バネ本体部43の動きによる開く方向のアーム22の回動にブレーキをかけることになり、蓋11の回動する速度を抑制することができる。
【0044】
図7は、蓋11が開いた(全開)時のアーム22とバネ40とアーム収納部37との関係を説明する図2の拡大断面図である。図5から図7に至る過程において、アーム22が回動して蓋11が開く方向に移動しており、バネ40のアーム側部41とバネ本体部43は、さらにボックス本体部31側に移動し、バネ平面46と段差部当接部45とのなす角度は、βからγ(γはβより小さい)に変化する。したがって、段差部当接部45に連結するアーム収納部側部42の捻れを解消しようとする力f’は、図6の約45度開いた時より増大している。
【0045】
その結果、蓋11が全開に至る途中で蓋11の回動する速度が抑制されているので、アーム22がボックス本体部31に衝突したり、衝突しないまでも、バネ40のバネ本体部43が元の形状に戻った時にアーム22の回動の急停止を防止し、その反動で全開時に蓋11がバタ付き、異音を生じることを防止することができる。
【0046】
したがって、本発明では、ロックピン32と蓋取付部材20の蓋ロック部23の係合が解除され、バネ本体部43が取付け前の形状に戻るようにアーム側部41とアーム収納部側部42の間の距離が長くなることにより、アーム22が回動して蓋11が開くが、アーム収納部側部42から延設される段差部当接部45によって、回動の開始から全開に至る過程全般に蓋11を閉じる方向の力が働き、その力は回動につれて増大し、加速するバネ本体部43の動きにブレーキをかけ続けることになる。その結果、蓋11の開く速度を抑制し、アーム22がボックス本体部31に衝突したり、衝突しないまでも、バネ40のバネ本体部43が元の形状に戻った時にアーム22の回動の急停止を防止し、その反動で全開時に蓋11がバタ付き、異音を生じることを防止することができる。
【0047】
本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。
【0048】
上記実施形態では、蓋11を閉じた時(全閉)に、角度Y=角度αであり、バネ40のアーム収納部側部42がアーム収納部37のバネ係合部36に係合して保持されると共に、バネ40の段差部当接部45の全面がアーム収納部37の段差部39に当接したが、蓋11を閉じた状態では段差部当接部45が全面で段差部39に当接しない、すなわち、バネ40のバネ平面46と段差部当接部45の角度Yが角度αより小さく、アーム22が回動を開始した後に段差部当接部45が段差部39に全面で当接し、当接以降に段差部当接部45の上記効果が発生するようにしてもよい。
【0049】
ただし、本発明は、蓋11が全閉から全開に至る間に効果を奏する必要があるので、バネ40のバネ平面46と段差部当接部45の角度Yは、全開時のバネ平面46と段差部39の角度γより大きく設定する必要がある。つまり、バネ40のバネ平面46と段差部当接部45の角度Yは、γ<Y≦αであることが望ましい。
【0050】
例えば、上記実施形態では、段差部当接部45は、図4(a)に示すようにバネ40のアーム収納部側部42の先端から略垂直方向に形成したが、アーム収納部側部42から角度を有して形成してもよい。
【符号の説明】
【0051】
11 蓋
20 蓋取付部材
22 アーム
26 アーム側係合部
30 ボックス
31 ボックス本体部
36 バネ係合部
37 アーム部収納部
38 傾斜部
39 段差部
40 バネ
45 段差部当接部
46 バネ平面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9