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特開2024-11190耐火れんがおよびそれを用いた溶融金属容器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011190
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】耐火れんがおよびそれを用いた溶融金属容器
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/101 20060101AFI20240118BHJP
   B22D 41/02 20060101ALI20240118BHJP
   C21C 7/00 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
C04B35/101
B22D41/02 A
C21C7/00 Q
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022113006
(22)【出願日】2022-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】000001971
【氏名又は名称】品川リフラクトリーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083172
【弁理士】
【氏名又は名称】福井 豊明
(72)【発明者】
【氏名】村上 晃陽
【テーマコード(参考)】
4K013
【Fターム(参考)】
4K013CF13
4K013CF19
(57)【要約】
【課題】アルミナ-マグネシア系の耐火れんがの耐食性、耐スラグ浸潤性を向上させるとともに亀裂・剥離を抑制する。
【解決手段】アルミナ原料65質量%以上85質量%以下、1mm以下のスピネル原料14質量%以上34質量%以下、300μm以下のマグネシア原料3質量%以下(ゼロを除く)およびバインダー5質量%以下(ゼロを除く)を含み、1500℃加熱後の残存寸法変化率が0%以上0.65%以下である耐火れんがとする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミナ原料65質量%以上85質量%以下、粒径1mm以下のスピネル原料14質量%以上34質量%以下、粒径300μm以下のマグネシア原料3質量%以下(ゼロを除く)およびバインダーを前記アルミナ原料、スピネル原料マグネシア原料の合量に対して外掛けで5質量%以下(ゼロを除く)を含み、1500℃加熱後の残存寸法変化率が0%以上0.65%以下である耐火れんが。
【請求項2】
請求項1の耐火れんがを内張りした電気炉二次精錬用取鍋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融金属容器の内張り、特に電気炉二次精錬用取鍋に好適に使用できる耐火れんがに関する。
【背景技術】
【0002】
溶融金属容器の内張り、特に電気炉二次精錬用取鍋の内張りには、主としてアルミナ-マグネシア系の耐火れんがが使用される。
【0003】
例えば、特許文献1は、「組成が、Al:80~95重量%、MgO:2~10重量%、SiO:0~10重量%、不可避成分:0~3重量%からなり、マグネシア原料として、粒度3.36~1.0mmの電融マグネシアを1~5重量%、および粒度1.0mm以下の電融スピネルを5~20重量%配合することを特徴とする不焼成アルミナ-マグネシア系れんが。」を開示する。
【0004】
また、特許文献2は、「アルミナ原料と0.5mm以下の微粉を90質量%以上含有するマグネシア原料を使用し、AlとMgOとの合量が90質量%以上であり、MgOを4~16質量%、SiOを0.5~5質量%、NaOとKOの合量を0.3~2質量%含有し、残部が不可避不純物とAlである、プレス成形された後100℃以上1150℃以下で加熱処理された耐火れんが。」を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000-272956
【特許文献2】特開2007-145684
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1は、1mm以上の粗粒部にMgOを配合し、高温におけるスピネル化膨張を利用して目地開きを防止するとしている。しかしこの場合マグネシアの粒径が大きく、量も多いため膨張が過大となり、亀裂・剥離が発生する問題があった。
【0007】
また特許文献2は、アルミナとマグネシアの反応によりスピネル生成反応を生じさせるため、0.5mm以下の微粉を90質量%以上含むマグネシア原料をれんが中のMgO成分量として4~16質量%使用している。この場合もマグネシアの量が多いため、弾性率が上昇し、熱スポールによる亀裂・剥離が発生する問題があった。
【0008】
本発明は上記従来の事情に鑑みて提案されたものであって、膨張率と弾性率を制御することによって亀裂・剥離を抑制したアルミナ-マグネシア系の耐火れんがを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の耐火れんがは、アルミナ原料65質量%以上85質量%以下、粒径1mm以下のスピネル原料14質量%以上34質量%以下、粒径300μm以下のマグネシア原料3質量%以下(ゼロを除く)およびバインダー成分よりなる。
【0010】
また、上記耐火れんがを内張りすることによって電気炉二次精錬用取鍋を構成することができる。
【発明の効果】
【0011】
アルミナ-マグネシア系の耐火れんがに関し、膨張率と弾性率を制御することによって亀裂・剥離を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の耐火れんがは、上記したようにアルミナ原料65質量%以上85質量%以下、粒径1mm以下のスピネル原料14質量%以上34質量%以下、粒径300μm以下のマグネシア原料3質量%以下(ゼロを除く)およびバインダー成分よりなる。
【0013】
以下更に詳しく説明する。
【0014】
<アルミナ原料>
前記アルミナ原料は基材となる原料である。アルミナ原料の使用量は65質量%以上85質量%以下とする。アルミナ原料の使用量が65質量%を下回ると相対的にMgO成分が多くなって熱膨張係数が大きくなり、85質量%を上回ると相対的にMgO成分が少なくなってスラグ耐食性・スラグ耐浸潤性が低下する。
【0015】
アルミナ原料の粒径は特に限定されず、公知の最密充填が得られる粒度構成、例えば、粒径5-3mmを15質量%、3-1mmを33質量%、1mm以下を13質量%、45μm以下を12質量%とすることができる。
【0016】
アルミナ原料の種類は公知の電融アルミナ、焼結アルミナ、ばん土頁岩等が使用できる。アルミナ原料の純度はAlとして90質量%以上とすれば耐食性が向上するので好ましい。
【0017】
<スピネル原料>
前記スピネル原料は公知のアルミニウムマグネシウムスピネル(MgAl)が使用できる。スピネル組成は化学量論組成(MgO:Al=28:72)の他、Alが化学量論組成より多いもの、MgOが化学量論組成より多いものも使用できる。化学量論組成(MgO:Al=28:72)に近いものを使用すると膨張率、弾性率の制御がしやすくなり好ましい。
【0018】
スピネル原料の粒径は1mm以下とし、使用量は14質量%以上34質量%以下とする。スピネル原料の粒径が1mmより大きいと、れんが組織の中でスピネルが偏在し、スラグ耐食性が低下する。一方で、スピネル原料の粒径が1mmより小さいと、スピネル原料が均一に分散し、スラグ耐食性が向上する。スピネル原料の使用量が14%を下回ると相対的にMgO成分が少なくなってスラグ耐食性、スラグ耐浸潤性が低下する。スピネル使用量が34%を上回ると、相対的にMgO成分が多くなって熱膨張係数が大きくなり耐スポーリング性が低下する。
【0019】
<マグネシア原料>
前記マグネシア原料は、公知の電融マグネシア、海水マグネシア、天然マグネシアなどが使用できる。MgOの純度は90質量%以上が好ましい。マグネシア原料の粒径は300μm以下であり、65μm以下がより好ましい。マグネシア原料の粒径が300μmより大きいと、熱膨張係数が大きくなり耐スポーリング性が低下する。
【0020】
マグネシア原料の使用量は3質量%以下(ゼロを除く)とする。マグネシア原料の使用量が3質量%より上回ると、熱膨張係数が大きくなり耐スポーリング性が低下する。
【0021】
<バインダー>
バインダーは公知の耐火れんがに適用されるものが使用できる。例えばけい酸ナトリウム、フェノールレジン、りん酸塩などが例示できる。バインダーの使用量は、前記アルミナ原料、マグネシア原料、スピネル原料の合量に対して外掛けで5質量%以下が好ましい。
【実施例0022】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明を詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
アルミナ原料は、粒度5mm以下で純度99質量%の電融アルミナを使用した。スピネル原料は、粒度1mm以下でAl:MgO質量比が72:28の電融スピネルを使用した。マグネシア原料は、純度95質量%の電融マグネシアで、粒度が500μm以下、300μm以下、65μm以下のいずれかを使用した。
【0023】
バインダーとして、液体ケイ酸ソーダを用い、前記アルミナ原料、スピネル原料、マグネシア原料の合量を100質量%とした場合に、外掛けで2.5質量%添加した。
【0024】
表1の配合率に従い、耐火原料混合物を作成し、フリクションプレスを用いて177MPaで加圧成形し、当該成形品を熱風乾燥機を使用し180℃で12時間乾燥することによって耐火れんがを作成した。
【0025】
前記作成された各耐火れんが試料について、残存寸法変化率、弾性率、スラグ耐食性、スラグ耐浸潤性、耐熱スポーリング性を評価した。
【0026】
残存寸法変化率は、JIS R2208に準じて測定した。試験温度は1500℃とし、雰囲気は大気とした。残存寸法変化率は0%以上0.65%以下が好ましい。残存寸法変化率が0%以上であると目地開きが抑制され、0.65%以下であれば亀裂や剥離が低減する。
【0027】
弾性率は、J.W.LEMMENS-ELEKTONIKA製MK5を用い、試験片に衝撃を与えて発生する固有振動数から計算するグラインドソニック法により求めた。弾性率は80GPa以下とすれば耐スポーリング性が向上するので好ましい。
【0028】
スラグ耐食性、スラグ耐浸潤性は、高周波誘導炉を用いた内張り侵食法により評価した。試料の耐火れんがを高周波誘導炉に内張りし、当該高周波誘導炉内で鋼を溶解して1600℃に保持し、溶鋼表面にCaO:SiO=6:4の組成のスラグを投入した。試験時間は5時間とし、途中1時間毎にスラグを入れ替えた。
【0029】
スラグ耐食性は、試験前試料の厚みと試験後試料の厚み(スラグ浸食厚み)の差から求めた。スラグ耐浸潤性は、試験後切断面写真の浸潤層の厚み(スラグ浸食厚み)から求めた。スラグ侵食厚み、スラグ浸潤厚み共、数字が小さいほど耐食性、耐浸潤性が高いことを示す。
【0030】
耐熱スポーリング性は、急加熱-冷却による弾性率の変化で評価した。すなわち急加熱-冷却の熱衝撃で生じる亀裂が少ないほど試験前後での弾性率低下が小さく、耐スポーリング性に優れると評価できる。試験方法は溶銑浸漬法によった。40mm×40mm×230mmの試験片を準備し、あらかじめ試験前の弾性率を測定しておく。
【0031】
前記試験片は1700℃の溶銑に1分間浸漬後、自然空冷する。冷却後に試験後の弾性率を測定する。そして、前記試験前の弾性率と試験後の弾性率から以下の式(1)に示す弾性率変化率を求める。
【0032】
弾性率変化率=(試験前弾性率-試験後弾性率)/試験前弾性率×100・・・(1)
【0033】
表1に示す各実施例の配合は、アルミナ原料65質量%以上85質量%以下、1mm以下のスピネル原料14質量%以上35質量%以下、300μm以下のマグネシア原料3質量%以下(ゼロを除く)およびバインダー5質量%以下(ゼロを除く)を含む耐火れんがである。
【0034】
【表1】
【0035】
実施例1-5は、本発明範囲内でアルミナ原料、スピネル原料、マグネシア原料の量を変化させたものである。比較例1および2はアルミナ原料、スピネル原料の量が本発明の範囲外のものである。比較例3および4はマグネシア原料の量が本発明の範囲外のものである。比較例5はマグネシア原料の粒度が本発明の範囲外のものである。
【0036】
実施例1-5は、弾性率変化率が39.8~49.4%であり、比較例1、4、5に比べて耐スポーリング性に優れる。
【0037】
実施例1-5は、スラグ侵食厚みが2.3~2.8mmであり、比較例2に比べてスラグ耐食性に優れる。
【0038】
実施例1-5は、スラグ浸潤厚みが0.9~1.8mmであり、比較例1に比べてスラグ耐浸潤性に優れる。
【0039】
実施例1-5は、残存寸法変化率が0.08~0.57%であるのに対し、比較例3は0%未満であり、比較例4および5は0.65%を超えている。
【0040】
以上説明したように、本発明によれば、スラグ耐侵食性及びスラグ耐浸潤性の向上と、耐スポーリング性の向上を両立させた耐火れんがを実現することができる。当該耐火れんがは、例えば、電気炉二次製錬取鍋の内張りれんがとして適用する事で、耐用性を向上させる事ができる。