(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111910
(43)【公開日】2024-08-20
(54)【発明の名称】内燃機関の制御システム
(51)【国際特許分類】
B60W 10/06 20060101AFI20240813BHJP
B60K 6/442 20071001ALI20240813BHJP
B60W 10/08 20060101ALI20240813BHJP
B60W 20/16 20160101ALI20240813BHJP
F02P 5/145 20060101ALI20240813BHJP
F01N 3/22 20060101ALI20240813BHJP
【FI】
B60W10/06 900
B60K6/442 ZHV
B60W10/08 900
B60W20/16
F02P5/145 B
F01N3/22 311C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023016629
(22)【出願日】2023-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002424
【氏名又は名称】ケー・ティー・アンド・エス弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】山下 正行
(72)【発明者】
【氏名】廣江 健太
【テーマコード(参考)】
3D202
3G022
3G091
【Fターム(参考)】
3D202AA02
3D202AA10
3D202BB05
3D202BB09
3D202BB12
3D202CC42
3D202CC43
3D202CC47
3D202DD16
3D202DD22
3D202DD45
3D202FF12
3G022GA05
3G022GA10
3G022GA18
3G091AA14
3G091AA17
3G091AB03
3G091BA03
3G091CB05
3G091DB10
3G091EA01
3G091EA05
3G091EA07
3G091EA17
3G091EA18
3G091EA39
3G091FA04
3G091FB02
3G091FC07
3G091HA08
(57)【要約】
【課題】より早く触媒暖機を完了できる内燃機関の制御システムを提供する。
【解決手段】内燃機関の制御システムは、内燃機関と、前記内燃機関を駆動可能な回転電機と、前記回転電機に電力を供給する電池と、前記内燃機関および前記回転電機を制御する制御装置と、を備える。前記制御装置は、前記電池の充電状態に応じて、第1点火時期まで遅角し前記内燃機関による燃焼によって前記内燃機関を運転する第1リタード運転と、前記第1点火時期よりも遅角した第2点火時期まで遅角し前記内燃機関を前記回転電機によって回転させる第2リタード運転と、を切り替える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関と、
前記内燃機関を駆動可能な回転電機と、
前記回転電機に電力を供給する電池と、
前記内燃機関および前記回転電機を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記電池の状態に応じて、第1点火時期まで遅角し前記内燃機関による燃焼によって前記内燃機関を運転する第1リタード運転と、前記第1点火時期よりも遅角した第2点火時期まで遅角し前記内燃機関を前記回転電機によって回転させる第2リタード運転と、を切り替える、
内燃機関の制御システム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記電池が所定充電率以上の場合に、前記第2リタード運転を実行し、前記電池が前記所定充電率未満の場合に、前記第1リタード運転を実行する、
請求項1に記載の内燃機関の制御システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記第2リタード運転中の前記内燃機関の排気の熱量を積算し、
前記熱量が所定熱量となった場合、前記第2リタード運転を停止する、
請求項1に記載の内燃機関の制御システム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記第2リタード運転中の前記内燃機関の排気の温度の上昇割合を検知し、前記上昇割合が所定上昇割合以上となった場合、前記第2リタード運転を停止する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の内燃機関の制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、内燃機関の制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、内燃機関の回転をアシストするモータを有する内燃機関の制御システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の内燃機関の制御システムは、制御装置を備える。制御装置は、触媒を暖機する際に点火時期を遅角させる制御を実行する。制御装置は、点火時期の遅角によって内燃機関のトルクが低下した分を、モータによって補う制御を実行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、このような内燃機関は、より早い触媒暖機の完了が求められる。
【0005】
本開示の課題は、より早く触媒暖機を完了できる内燃機関の制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る内燃機関の制御システムは、内燃機関と、前記内燃機関を駆動可能な回転電機と、前記回転電機に電力を供給する電池と、前記内燃機関および前記回転電機を制御する制御装置と、を備える。前記制御装置は、前記電池の充電状態に応じて、第1点火時期まで遅角し前記内燃機関による燃焼によって前記内燃機関を運転する第1リタード運転と、前記第1点火時期よりも遅角した第2点火時期まで遅角し前記内燃機関を前記回転電機によって回転させる第2リタード運転と、を切り替える。
【0007】
この内燃機関の制御システムは、電池の状態に応じて、第2リタード運転を実行する。第2リタード運転では、回転電機によって内燃機関を回転させながら、第1点火時期よりも遅角した第2点火時期とすることができる。これによって、より早い触媒暖機が実現できる。
【0008】
また、この内燃機関の制御システムは、電池の状態に応じて、第1リタード運転を実行する。これによって、電池を保護できる。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、より早く触媒暖機を完了できる内燃機関の制御システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の一実施形態による電動車両のシステム図。
【
図2】本開示の一実施形態による内燃機関のシステム図。
【
図3】本開示の一実施形態による制御装置が実行する制御手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0012】
図1に示すように、内燃機関1の制御システム3は、内燃機関1と、発電機4と、駆動用電池6と、車両制御装置(制御装置の一例)12と、を備える。本実施形態の内燃機関1の制御システム3は、内燃機関1と、モータ(FrM)2と、を動力源として車輪C1を駆動する電動車両Cに搭載される。しかし、内燃機関1は、モータリングが実行できる内燃機関1であれば、内燃機関1のみを動力源とする車両に搭載されてもよい。
【0013】
電動車両Cは、内燃機関1と、モータ2と、発電機(GEN:回転電機の一例)4と、リチウムイオン電池などの二次電池を含む駆動用電池(BT:電池の一例)6と、トランスアクスル8と、を有する。トランスアクスル8は、複数のギヤとクラッチ8aを有する。内燃機関1は、トランスアクスル8を介して発電機4と、車軸10と連結される。トランスアクスル8は、クラッチ8aが開放状態の場合、内燃機関1と車軸10との動力伝達が遮断され、クラッチ8aが接続状態の場合、内燃機関1の動力が車軸10に伝達される。モータ2は、トランスアクスル8を介して車軸10と連結される。電動車両Cはこのほか、車両制御装置12と、内燃機関1を制御するエンジン制御装置14と、電動車両Cのユーザが操作するアクセルペダル16と、モータ2および発電機4を制御するインバータ18と、充電ボタン(図示なし)と、給電ボタン(図示なし)と、を有してもよい。また、本実施形態では電動車両Cは、外部電源に接続可能な充電器20と、駆動用電池6からの電力を、例えば家電などの外部機器に供給可能な給電装置22と、を有するプラグインハイブリッド車(PHEV)である。しかし、電動車両Cはこのような装置を有さないハイブリッド車両であってもよい。
【0014】
本実施形態の電動車両Cは、EVモード、シリーズモード、パラレルモード、充電モード、給電モードなどの各モードを有する。電動車両Cは、EVモードの場合、駆動用電池6からの電力によってモータ2を駆動する。電動車両Cは、シリーズモードの場合、内燃機関1によって発電機4を駆動し、発電機4によって発電した電力を用いてモータ2を駆動する。電動車両Cは、パラレルモードの場合、クラッチ8aを接続し、内燃機関1の動力を用いて車軸10を駆動する。電動車両Cは、充電モードでは、内燃機関1によって発電機4を駆動し、発電機4によって発電した電力を駆動用電池6に蓄電する。電動車両Cは、アクセルペダル16の踏み込み状態や、充電ボタンもしくは給電ボタンの操作状態に応じて、車両制御装置12が各モードを切り替え、インバータ18を介してモータ2および発電機4を制御するとともに、エンジン制御装置14に内燃機関1を制御させる。
【0015】
図2に示すように、内燃機関1は、筒内噴射弁30と、高圧ポンプ32と、点火プラグ34と、フロント触媒36と、アンダーフロア触媒38と、スロットル40と、温度センサ46と、空燃比センサ48と、を備える。本実施形態では内燃機関1は、筒内噴射弁30から噴射される燃料と吸気との混合気に、点火プラグ34によって火花を点火するガソリンエンジンである。フロント触媒36、およびアンダーフロア触媒38は、ガソリンエンジンの排気を浄化する三元触媒である。
【0016】
筒内噴射弁30は、各気筒のシリンダ内に燃料を噴射する装置である。筒内噴射弁30は、高圧ポンプ32に接続され、高圧の燃料が供給される。高圧ポンプ32は、燃料タンク42の低圧ポンプ42aを介して供給される燃料を昇圧する装置である。本実施形態の高圧ポンプ32は、内燃機関1のカム軸44と同軸上に配置されるポンプカム44aによってプランジャ32aを駆動する機械式ポンプである。高圧ポンプ32は、このような機械式ポンプに限らず、モータによってプランジャ、またはインペラを駆動する電動式ポンプであってもよい。
【0017】
温度センサ46は、フロント触媒36の温度Tfccを検知するセンサである。本実施形態では温度センサ46は、フロント触媒36に配置される。しかし、温度センサ46は、フロント触媒36の温度を検知できれば、例えばアンダーフロア触媒38の上流などに配置されてもよい。
【0018】
空燃比センサ48は、排気中の空燃比を検知するセンサである。本実施形態では空燃比センサ48は、フロント触媒36とアンダーフロア触媒38との間に配置される。しかし、空燃比センサ48は、排気中の空燃比を検知できれば、例えばアンダーフロア触媒38の下流などに配置されてもよい。
【0019】
発電機4は、内燃機関1に接続され、内燃機関1を駆動可能である。発電機4は、駆動用電池6からの電力によって力行する間は、内燃機関1を駆動するモータリングを行う。一方、発電機4は、内燃機関1の運転中において内燃機関1に駆動されて発電する。したがって、発電機4は、力行と発電が可能なモータ・ジェネレータである。
【0020】
車両制御装置12は、インバータ18を介して発電機4と電気的に接続され、発電機4を制御する。また、車両制御装置12は、少なくとも第1リタード運転、および第2リタード運転などの指示をエンジン制御装置14に発信し、エンジン制御装置14に内燃機関1を制御させる。車両制御装置12は、演算装置と、メモリと、入出力バッファ等とを含むマイクロコンピュータによって構成されるECU(Electrоnic Control Unit)である。車両制御装置12は、メモリに格納されたマップおよびプログラムに基づいて、電動車両Cの様々な制御を実行する。
【0021】
また、車両制御装置12は、駆動用電池6のコントロールユニット(図示せず)と電気的に接続され、駆動用電池6の充電率SOC、電池温度Tなどの情報を、駆動用電池6のコントロールユニットから取得可能である。
【0022】
エンジン制御装置14は、少なくとも、筒内噴射弁30、高圧ポンプ32、点火プラグ34、およびスロットル40と電気的に接続され、内燃機関1を制御する制御装置である。エンジン制御装置14は、実際には、演算装置と、メモリと、入出力バッファ等とを含むマイクロコンピュータによって構成されるECU(Electrоnic Control Unit)である。エンジン制御装置14は、メモリに格納されたマップおよびプログラムに基づいて、内燃機関1の様々な制御を実行する。なお、内燃機関1の制御はエンジン制御装置14のほか、車両制御装置12によって実行してもよい。
【0023】
エンジン制御装置14は、第1リタード運転の指示を取得すると、内燃機関1が自立して回転ができる程度に点火時期を遅角させる通常リタード制御を実行する。通常リタード制御における点火時期は、1°ATDC(After Top Dead Center)以上から20°ATDC以下である(第1点火時期の一例)。また、このとき車両制御装置12は、発電機4が内燃機関1によって駆動されながら発電するように制御する。
【0024】
エンジン制御装置14は、第2リタード運転の指示を取得すると、発電機4によってモータリングを行いながら点火時期を遅角させる超リタード制御を実行する。超リタード制御における点火時期は、20°ATDCより大きい値から35°ATDC程度の値であり、より好ましくは30°ATDC以上の値であり、30°ATDCから35°ATDC程度の値である(第2点火時期の一例)。20°ATDCを超えると燃焼変動が顕著になり、内燃機関1の回転が安定しない。また、30°ATDCから35°ATDCの点火時期では、内燃機関1は出力(トルク)をほとんど発生させない。このため、内燃機関1の回転は、発電機4がモータリングを行うことで維持される。一方、20°ATDCより大きい値から35°ATDCの点火時期では、排気が後燃えしやすい。このため、触媒の昇温にかかる時間は、通常リタード制御よりも短くなる。
【0025】
次に車両制御装置12が実行する制御手順について、
図3のフローチャートを用いて説明する。車両制御装置12は、図示しないイグニッションスイッチがオンされると制御手順を開始する。
【0026】
ステップS1では車両制御装置12は、アクセルペダル16の開度であるアクセル開度Thを取得する。また、車両制御装置12は、車輪C1の回転から演算し、電動車両Cの速度である車速Vを取得する。車両制御装置12は、アクセル開度Thと、車速Vと、を取得するとステップS2に処理を進める。
【0027】
ステップS2では車両制御装置12は、アクセル開度Thおよび車速Vから、電動車両Cに要求されている出力である要求出力PWを算出する。車両制御装置12は、するとステップS3に処理を進める。
【0028】
ステップS3では車両制御装置12は、フロント触媒36、またはアンダーフロア触媒38の暖機が必要か否か判断する。暖機が必要か否かは、フロント触媒36、またはアンダーフロア触媒38の温度が活性化温度(以下明細書においてライトオフ温度と記す)に到達しているかで判断してもよい。車両制御装置12は、温度センサ46による温度を検知することによって、フロント触媒36、またはアンダーフロア触媒38の暖機が必要か否か判断してもよい。車両制御装置12は、内燃機関1の運転時間などを積算し、フロント触媒36、またはアンダーフロア触媒38の暖機が必要か否か判断してもよい。車両制御装置は、フロント触媒36、またはアンダーフロア触媒38の暖機が必要と判断すると(ステップS3 YES)、ステップS4に処理を進める。
【0029】
ステップS4では車両制御装置12は、駆動用電池6の充電率SOCが所定充電率SOCt以上か否か判断する。所定充電率SOCtは、発電機4が内燃機関1のモータリングを行うことができる程度の充電率である。車両制御装置12は、充電率SOCが所定充電率SOCt以上の場合(ステップS4 YES)、ステップS5に処理を進める。
【0030】
なお、ステップS4において車両制御装置12は、充電率SOCの他、電池温度Tbtを取得し、電池温度Tbtが所定電池温度Tbt1以上の場合、ステップS5に処理を進めてもよい。駆動用電池6は、低温状態の場合、発電機4に十分な電力を供給できないことがある。このため、所定電池温度Tbt1は、発電機4がモータリングを行える温度であればよい。
【0031】
ステップS5では車両制御装置12は、第2リタード運転を実行する。より具体的には、車両制御装置12は、第2リタード運転の指示をエンジン制御装置14に送信する。エンジン制御装置14は、超リタード制御を実行する。車両制御装置12は、この間に発電機4を力行し、モータリングを行う。このように、モータリングを行いながら超リタード制御を実行することによって、車両制御装置12は、フロント触媒36、およびアンダーフロア触媒38に通常リタード制御よりも排気温度Texが高い排気を供給する。これによって、車両制御装置12は、フロント触媒36、およびアンダーフロア触媒38を早期に昇温する。
【0032】
車両制御装置12は、第2リタード運転中の空燃比を、第2リタード運転開始後の所定期間は、ストイキ(理論空燃比)とし、その後リーン化してもよい。車両制御装置12は、モータリングを行っている場合、空燃比(空気と燃料の比率)を30程度までリーン化してもよい。車両制御装置12は、この制御をエンジン制御装置14に実行させてもよい。車両制御装置12は、リーン化することによって排気温度Texを上昇させることができる。これによって、熱量Qの上昇割合が増加し、早期にフロント触媒36、およびアンダーフロア触媒38を昇温することができる。また、第2リタード運転の初期に空燃比をストイキとすることによって、例えばフロント触媒36およびアンダーフロア触媒38の間に吸着触媒がある場合に、車両制御装置12は、吸着触媒に吸着された物質の離脱を促進できる。車両制御装置12は、第2リタード運転を実行するとステップS6に処理を進める。
【0033】
ステップS6では車両制御装置12は、第2リタード運転中の内燃機関1の排気の熱量Qを積算し、熱量Qが所定熱量Qtに到達したか否か判断する。所定熱量Qtは、フロント触媒36、およびアンダーフロア触媒38がライトオフ温度に到達可能な熱量である。また、所定熱量Qtは、フロント触媒36、およびアンダーフロア触媒38の溶損を防止できる熱量である。本実施形態では、車両制御装置12は、温度センサ46によって、フロント触媒36の温度Tfccを検知することによって、フロント触媒36の温度Tfccから熱量Qの積算値を算出する。より具体的には、車両制御装置12は、フロント触媒36の温度Tfccが所定触媒温度Tfcctとなる時間が、所定時間Pt以上継続した場合、熱量Qの積算値が所定熱量Qtに到達したと判断する。車両制御装置12は、熱量Qの積算値が所定熱量Qtに到達したと判断した場合(ステップS6 YES)、ステップS7に処理を進める。
【0034】
このほか、ステップS6において車両制御装置12は、フロント触媒36の温度Tfccの上昇割合ΔTfccを検知し、上昇割合ΔTfccが所定上昇割合ΔTfcct以上となる場合に、熱量Qの積算値が所定熱量Qtに到達したと推定してもよい。所定上昇割合ΔTfcctは、フロント触媒36の温度Tfccが、数秒以内にライトオフ温度(約300℃程度)に到達する上昇割合ΔTfccであればよい。車両制御装置12は、上昇割合ΔTfccが所定上昇割合ΔTfcct以上となると、熱量Qの積算値が所定熱量Qtに到達したと判断し、ステップS7に処理を進めてもよい。
【0035】
ステップS7では車両制御装置12は、第2リタード運転を停止する。車両制御装置12は、第2リタード運転を停止すると、ステップS8に処理を進める。
【0036】
ステップS8では車両制御装置12は、第1リタード運転が必要か否か判断する。車両制御装置12は、第2リタード運転によって所定熱量Qtに到達した後、未だフロント触媒36およびアンダーフロア触媒38の少なくともいずれか一方が、ライトオフ温度に達成していない場合、第1リタード運転が必要と判断してもよい。例えば、フロント触媒36およびアンダーフロア触媒38が低温状態に晒されていた場合、熱量Qが所定熱量Qtに到達しても、フロント触媒36およびアンダーフロア触媒38のいずれか一方がライトオフ温度に達成しない場合もある。このような場合、フロント触媒36およびアンダーフロア触媒38の溶損を防止しつつ第1リタード運転によって暖機を継続することが好ましい。
【0037】
車両制御装置12は、第1リタード運転が必要と判断した場合(ステップS8 YES)、ステップS9に処理を進めて第1リタード運転を実行する。車両制御装置12は、第1リタード運転を実行するとステップS10に処理を進める。
【0038】
ステップS10では車両制御装置12は、フロント触媒36およびアンダーフロア触媒38の暖機が完了したか否か判断する。車両制御装置12は、フロント触媒36およびアンダーフロア触媒38の両方がライトオフ温度に到達した場合、暖機が完了したと判断してもよい。車両制御装置12は、フロント触媒36およびアンダーフロア触媒38の暖機が完了した場合(ステップS10 YES)、ステップS1に処理を進める。
【0039】
ステップS3において車両制御装置12がフロント触媒36、およびアンダーフロア触媒38の暖機が必要ないと判断した場合(ステップS3 NO)、車両制御装置12はステップS11に処理を進め、通常運転を実行する。通常運転とは、点火リタード制御などを実行せず、ステップS2において取得した要求出力に基づいて内燃機関1、モータ2、および発電機4を制御することである。車両制御装置12は、通常運転を実行するとステップS1に処理を進める。
【0040】
ステップS4において車両制御装置12が駆動用電池6の充電率SOCが所定充電率SOCt未満であると判断した場合(ステップS4 NO)、車両制御装置12はステップS12に処理を進め、第1リタード運転を実行する。車両制御装置12は、第1リタード運転では、発電機4による内燃機関1のモータリングは極力行なわず、内燃機関1を自立運転させる。車両制御装置12は、ステップS12において第1リタード運転を実行すると、ステップS10に処理を進める。
【0041】
ステップS6において車両制御装置12が第2リタード運転中の熱量Qが所定熱量Qtに到達していないと判断した場合(ステップS6 NO)、車両制御装置12は、ステップS5に処理を進め、第2リタード運転を継続する。
【0042】
ステップS8において車両制御装置12が、第1リタード運転が必要ないと判断した場合(ステップS8 NO)、車両制御装置12は、ステップS10に処理を進める。
【0043】
ステップS10において車両制御装置12がフロント触媒36およびアンダーフロア触媒38の暖機が完了していない場合(ステップS10 NO)、ステップS4に処理を進め、第1リタード運転、または第2リタード運転による暖機を継続する。
【0044】
以上説明した通り、本開示によれば、車両制御装置12は、駆動用電池6の状態に応じて、第2リタード運転を実行する。車両制御装置12は、第2リタード運転では、発電機4によって内燃機関1をモータリングしながら、第1点火時期よりも遅角した第2点火時期とすることができる。これによって、内燃機関1の制御システム3は、排気流量を確保しながら、より高温の排気を触媒に供給できる。これにより、内燃機関1の制御システム3は、より早い触媒暖機が実現できる。この結果、内燃機関1の制御システム3は、触媒暖機を早く完了できる。
【0045】
また、
図3に示すように、車両制御装置12は、充電率SOCが所定充電率SOCt未満となった場合は、第1リタード運転を実行する。すなわち、車両制御装置12は、第2リタード運転を実行している場合であっても、充電率SOCが所定充電率SOCt未満となった場合は、発電機4による内燃機関1のモータリングを停止し、第1リタード運転を実行する(
図3のステップS4参照)。これによって、内燃機関1の制御システム3は、充電率SOCの低下を抑制できる。この結果、内燃機関1の制御システム3は、充電率SOCの極度の低下を抑制しながら駆動用電池6を保護できる。
【0046】
本実施形態の給電装置22を有する電動車両Cは、例えば家電などの外部への給電により、走行以外によっても充電率SOCが低下することもある。車両制御装置12は、駆動用電池6の充電率SOCに応じて第2リタード運転と第2リタード運転とを切り替えることによって、駆動用電池6を保護しながらも、触媒暖機を早く完了できる。これによって、この内燃機関1の制御システム3は、電動車両Cの利便性と、性能(特に排気浄化性能)との両立を実現できる。
【0047】
さらに、車両制御装置12は、第2リタード運転によって熱量Qtに到達した後は、第2リタード運転を停止する。これによって触媒の溶損を抑制できる。また、車両制御装置12は、熱量Qの積算値をフロント触媒36の温度Tfccの上昇割合ΔTfccを用いて推定することもできる。これによって、熱量Qを早く演算できる。このため、内燃機関1の制御システム3は、第2リタード運転の停止を早く判断できる。この結果、内燃機関1の制御システム3は、フロント触媒36およびアンダーフロア触媒38の溶損を抑制できる。
【0048】
<他の実施形態>
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の変形例は必要に応じて任意に組合せ可能である。
【0049】
(a)上記実施形態では、筒内噴射弁30を用いるガソリンエンジンを例に内燃機関1について説明したが本開示はこれに限定されない。内燃機関1は、ポート噴射弁を有する内燃機関1であってもよい。
【0050】
(b)上記実施形態では、フロント触媒36およびアンダーフロア触媒38を昇温する例を用いて説明したが本開示はこれに限定されない。触媒は、三元触媒のほか、ガソリンパーティキュレートフィルタ、トラップ触媒など、種々の触媒を用いてもよい。また、フロント触媒36およびアンダーフロア触媒38にこれら触媒を用いてもよい。さらに、ガソリンパーティキュレートフィルタ、トラップ触媒などをフロント触媒36およびアンダーフロア触媒38の上流、下流、フロント触媒36とアンダーフロア触媒38との間に加えてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 :内燃機関
4 :発電機(回転電機の一例)
6 :駆動用電池(電池の一例)
12 :車両制御装置(制御装置の一例)
Q :熱量
Qt :所定熱量
SOC :充電率
SOCt :所定充電率
ΔTfcc :上昇割合
ΔTfcct :所定上昇割合