(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111911
(43)【公開日】2024-08-20
(54)【発明の名称】内燃機関の制御システム
(51)【国際特許分類】
B60W 10/06 20060101AFI20240813BHJP
B60K 6/442 20071001ALI20240813BHJP
B60W 10/08 20060101ALI20240813BHJP
B60W 20/16 20160101ALI20240813BHJP
F02P 5/145 20060101ALI20240813BHJP
F01N 3/22 20060101ALI20240813BHJP
F02D 41/04 20060101ALI20240813BHJP
F02D 41/34 20060101ALI20240813BHJP
【FI】
B60W10/06 900
B60K6/442 ZHV
B60W10/08 900
B60W20/16
F02P5/145 B
F01N3/22 311C
F01N3/22 311L
F02D41/04
F02D41/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023016630
(22)【出願日】2023-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002424
【氏名又は名称】ケー・ティー・アンド・エス弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】山下 正行
(72)【発明者】
【氏名】廣江 健太
【テーマコード(参考)】
3D202
3G022
3G091
3G301
【Fターム(参考)】
3D202AA02
3D202AA10
3D202BB05
3D202BB09
3D202BB12
3D202CC42
3D202CC43
3D202CC47
3D202DD16
3D202DD21
3D202DD22
3D202FF12
3G022GA10
3G091AA14
3G091AA17
3G091AB03
3G091AB10
3G091AB13
3G091BA03
3G091BA15
3G091CB02
3G091CB05
3G091DA01
3G091EA01
3G091EA07
3G091EA18
3G091EA34
3G091EA39
3G091FC07
3G091HA08
3G091HA19
3G091HA20
3G091HA36
3G091HA37
3G301HA01
3G301HA04
3G301JA21
3G301KA05
3G301LB04
3G301MA01
3G301NE12
3G301NE15
3G301PD09
3G301PD12
3G301PF01
3G301PF03
(57)【要約】
【課題】トラップ触媒からの物質の離脱と酸化をより早く完了できる内燃機関の制御システムを提供する。
【解決手段】内燃機関の制御システムは、内燃機関と、前記内燃機関を駆動可能な回転電機と、前記内燃機関から排出される排気成分を吸着するトラップ触媒と、前記内燃機関が前記回転電機によって回転を維持する点火時期まで遅角する第1リタード制御と、前記内燃機関の空燃比を前記内燃機関が前記回転電機によって回転を維持する空燃比まで薄くするリーン制御と、を実行する制御装置と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関と、
前記内燃機関を駆動可能な回転電機と、
前記内燃機関から排出される排気成分を吸着するトラップ触媒と、
前記内燃機関が前記回転電機によって回転を維持する第1点火時期まで遅角する第1リタード制御と、前記内燃機関の空燃比を前記内燃機関が前記回転電機によって回転を維持する空燃比まで薄くするリーン制御と、を実行する制御装置と、
を備える、
内燃機関の制御システム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記第1リタード制御を実行したのち、前記リーン制御を実行する、
請求項1に記載の内燃機関の制御システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記第1リタード制御を実行する第1運転と、前記第1リタード制御と前記リーン制御とを実行する第2運転と、を前記トラップ触媒の温度に応じて切り替える、
請求項1に記載の内燃機関の制御システム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記内燃機関が前記内燃機関の回転を維持する第2点火時期まで遅角する第2リタード制御を含み、
前記内燃機関の排気温度に応じて、前記第1リタード制御と、前記第2リタード制御と、を切り替える、
請求項1から3のいずれか1項に記載の内燃機関の制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、内燃機関の制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、内燃機関に用いられる触媒を昇温するための制御システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の内燃機関の制御システムでは、空燃比を14.5から17程度までリーン化することによって触媒を昇温している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、内燃機関の制御システムには、排気中に含まれる物質を吸着するトラップ触媒が用いられることもある。内燃機関の制御システムは、このようなトラップ触媒に吸着した物質を、より早く離脱させ酸化させることが求められる。
【0005】
本開示の課題は、トラップ触媒からの物質の離脱と酸化をより早く完了できる内燃機関の制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る内燃機関の制御システムは、内燃機関と、前記内燃機関を駆動可能な回転電機と、前記内燃機関から排出される排気成分を吸着するトラップ触媒と、前記内燃機関が前記回転電機によって回転を維持する点火時期まで遅角する第1リタード制御と、前記内燃機関の空燃比を前記内燃機関が前記回転電機によって回転を維持する空燃比まで薄くするリーン制御と、を実行する制御装置と、を備える。
【0007】
この内燃機関の制御システムは、第1リタード制御を実行することによってトラップ触媒の離脱が始まる温度まで素早く昇温させ、リーン制御によってトラップ触媒から離脱した物質を酸化させることができる。この間、回転電機が内燃機関を駆動するため、排気流量の低下が抑制できる。これによって、この内燃機関の制御システムは、トラップ触媒からの物質の離脱と酸化をより早く完了できる。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、トラップ触媒からの物質の離脱と酸化をより早く完了できる内燃機関の制御システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の一実施形態による電動車両のシステム図。
【
図2】本開示の一実施形態による内燃機関のシステム図。
【
図3】本開示の一実施形態による制御装置が実行する制御手順を示すフローチャート。
【
図4】本開示の一実施形態による内燃機関の運転状態を示すタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0011】
図1および
図2に示すように、内燃機関1の制御システム3は、内燃機関1と、発電機4と、トラップ触媒37と、車両制御装置(制御装置の一例)12と、を備える。本実施形態の内燃機関1の制御システム3は、内燃機関1と、モータ(FrM)2と、を動力源として車輪C1を駆動する電動車両Cに搭載される。しかし、内燃機関1は、モータリングが実行できる内燃機関1であれば、内燃機関1のみを動力源とする車両に搭載されてもよい。
【0012】
電動車両Cは、内燃機関1と、モータ2と、発電機(GEN:回転電機の一例)4と、リチウムイオン電池などの二次電池を含む駆動用電池(BT:電池の一例)6と、トランスアクスル8と、を有する。トランスアクスル8は、複数のギヤとクラッチ8aを有する。内燃機関1は、トランスアクスル8を介して発電機4と、車軸10と連結される。トランスアクスル8は、クラッチ8aが開放状態の場合、内燃機関1と車軸10との動力伝達が遮断され、クラッチ8aが接続状態の場合、内燃機関1の動力が車軸10に伝達される。モータ2は、トランスアクスル8を介して車軸10と連結される。電動車両Cはこのほか、車両制御装置12と、内燃機関1を制御するエンジン制御装置14と、電動車両Cのユーザが操作するアクセルペダル16と、モータ2および発電機4を制御するインバータ18と、充電ボタン(図示なし)と、給電ボタン(図示なし)と、を有してもよい。また、本実施形態では電動車両Cは、外部電源に接続可能な充電器20と、駆動用電池6からの電力を、例えば家電などの外部機器に供給可能な給電装置22と、を有するプラグインハイブリッド車(PHEV)である。しかし、電動車両Cはこのような装置を有さないハイブリッド車両であってもよい。
【0013】
本実施形態の電動車両Cは、EVモード、シリーズモード、パラレルモード、充電モード、給電モードなどの各モードを有する。電動車両Cは、EVモードの場合、駆動用電池6からの電力によってモータ2を駆動する。電動車両Cは、シリーズモードの場合、内燃機関1によって発電機4を駆動し、発電機4によって発電した電力を用いてモータ2を駆動する。電動車両Cは、パラレルモードの場合、クラッチ8aを接続し、内燃機関1の動力を用いて車軸10を駆動する。電動車両Cは、充電モードでは、内燃機関1によって発電機4を駆動し、発電機4によって発電した電力を駆動用電池6に蓄電する。電動車両Cは、アクセルペダル16の踏み込み状態や、充電ボタンもしくは給電ボタンの操作状態に応じて、車両制御装置12が各モードを切り替え、インバータ18を介してモータ2および発電機4を制御するとともに、エンジン制御装置14に内燃機関1を制御させる。
【0014】
図2に示すように、内燃機関1は、筒内噴射弁30と、高圧ポンプ32と、点火プラグ34と、フロント触媒36と、トラップ触媒37と、アンダーフロア触媒38と、スロットル40と、第1温度センサ46と、空燃比センサ48と、第2温度センサ50と、第3温度センサ52と、を備える。本実施形態では内燃機関1は、筒内噴射弁30から噴射される燃料と吸気との混合気に、点火プラグ34によって火花を点火するガソリンエンジンである。フロント触媒36、およびアンダーフロア触媒38は、ガソリンエンジンの排気を浄化する三元触媒である。
【0015】
トラップ触媒37は、ガソリンエンジンから排気される物質を吸着可能な触媒である。本実施形態ではトラップ触媒37は、ガソリンエンジンから排気される炭化水素(HC)を吸着するHCトラップ触媒である。フロント触媒36、トラップ触媒37、およびアンダーフロア触媒38(以下明細書において各触媒と記す)の触媒の種類は、これに限定されるものではない。各触媒は、ガソリンエンジンの排気に含まれる物質を吸着できるトラップ触媒37を少なくとも一個含めば、その他の触媒は、ガソリンエンジンの排気を浄化するために使用できる触媒であればどのようなものであってもよい。例えば、各触媒は、ガソリンパーティキュレートフィルタをフロント触媒36に用いてもよい。
【0016】
トラップ触媒37は、吸着した物質(排気成分の一例であり、本実施形態では炭化水素)の離脱が開始する温度である離脱温度TDが、フロント触媒36およびアンダーフロア触媒38が活性化する温度である活性化温度TLよりも低い。離脱温度TDは、例えば150℃程度であり、活性化温度TLは例えば300℃程度である。トラップ触媒37から離脱した物質は、アンダーフロア触媒38が活性下した状態において浄化される。これによって、トラップ触媒37は再生される。このため、各触媒を昇温する場合、離脱温度TDから活性化温度TLまでの時間を短くすることが好ましい。また、トラップ触媒37から離脱した物質を酸化させるために、離脱温度TDから活性化温度TLに到達するまでの時間において排気中が高酸素濃度となることが好ましい。
【0017】
筒内噴射弁30は、各気筒のシリンダ内に燃料を噴射する装置である。筒内噴射弁30は、高圧ポンプ32に接続され、高圧の燃料が供給される。高圧ポンプ32は、燃料タンク42の低圧ポンプ42aを介して供給される燃料を昇圧する装置である。本実施形態の高圧ポンプ32は、内燃機関1のカム軸44と同軸上に配置されるポンプカム44aによってプランジャ32aを駆動する機械式ポンプである。高圧ポンプ32は、このような機械式ポンプに限らず、モータによってプランジャ、またはインペラを駆動する電動式ポンプであってもよい。
【0018】
第1温度センサ46は、フロント触媒36の温度Tfccを検知するセンサである。本実施形態では第1温度センサ46は、フロント触媒36に配置される。第2温度センサ50は、トラップ触媒37の温度Ttrapを検知するセンサである。本実施形態では第2温度センサ50は、トラップ触媒37に配置される。第3温度センサ52は、アンダーフロア触媒38の温度Tuccを検知するセンサである。本実施形態では第3温度センサ52は、アンダーフロア触媒38に配置される。しかし、第1温度センサ46、第2温度センサ50、および第3温度センサ52(以下明細書において各温度センサ)は、各触媒の温度を検知できれば、どのような場所に配置されてもよい。また、各触媒の温度は、必ずしも各温度センサを用いて検知する必要はなく、例えば内燃機関1の運転状態などから車両制御装置12またはエンジン制御装置14が排気温度Texを推定し、車両制御装置12またはエンジン制御装置14が排気温度Texから各触媒の温度を推定してもよい。さらに、各温度センサのうちいずれか1個または2個の温度センサを用いて、車両制御装置12またはエンジン制御装置14が各触媒の温度を推定してもよい。
【0019】
空燃比センサ48は、排気中の空燃比を検知するセンサである。本実施形態では空燃比センサ48は、フロント触媒36とアンダーフロア触媒38との間に配置される。しかし、空燃比センサ48は、排気中の空燃比を検知できれば、例えばアンダーフロア触媒38の下流などに配置されてもよい。
【0020】
発電機4は、内燃機関1に接続され、内燃機関1を駆動可能である。発電機4は、駆動用電池6からの電力によって力行する間は、内燃機関1を駆動するモータリングを行う。一方、内燃機関1の運転中は、内燃機関1に駆動されて発電する。したがって、発電機4は、力行と発電が可能なモータ・ジェネレータである。
【0021】
車両制御装置12は、インバータ18を介して発電機4と電気的に接続され、発電機4を制御する。また、車両制御装置12は、少なくとも後述する第1リタード制御を実行する第1運転、第1リタード制御と後述するリーン制御を実行する第2運転、第2リタード制御を実行する第3運転などの指示をエンジン制御装置14に発信し、エンジン制御装置14に内燃機関1を制御させる。車両制御装置12は、演算装置と、メモリと、入出力バッファ等とを含むマイクロコンピュータによって構成されるECU(Electrоnic Control Unit)である。車両制御装置12は、メモリに格納されたマップおよびプログラムに基づいて、電動車両Cの様々な制御を実行する。
【0022】
また、車両制御装置12は、駆動用電池6のコントロールユニット(図示せず)と電気的に接続され、駆動用電池6の充電率SOC、電池温度Tなどの情報を、駆動用電池6のコントロールユニットから取得可能である。
【0023】
エンジン制御装置14は、少なくとも、筒内噴射弁30、高圧ポンプ32、点火プラグ34、およびスロットル40と電気的に接続され、内燃機関1を制御する制御装置である。エンジン制御装置14は、実際には、演算装置と、メモリと、入出力バッファ等とを含むマイクロコンピュータによって構成されるECU(Electrоnic Control Unit)である。エンジン制御装置14は、メモリに格納されたマップおよびプログラムに基づいて、内燃機関1の様々な制御を実行する。なお、内燃機関1の制御はエンジン制御装置14のほか、車両制御装置12によって実行してもよい。
【0024】
エンジン制御装置14は、第1運転の指示を取得すると、発電機4によって内燃機関1のモータリングを行いながら点火時期を遅角させる超リタード制御(第1リタード制御の一例)を実行する。超リタード制御における点火時期は、20°ATDC(After Top Dead Center)より大きい値から35°ATDC程度の値であり、より好ましくは30°ATDC以上の値であり、30°ATDCから35°ATDC程度の値である(第1点火時期の一例)。20°ATDCを超えると燃焼変動が顕著になり、内燃機関1の回転が安定しない。また、30°ATDCから35°ATDCの点火時期では、内燃機関1は出力(トルク)をほとんど発生させない。このため、内燃機関1の回転は、発電機4がモータリングを行うことで維持される。一方、20°ATDCより大きい値から35°ATDCの点火時期では、排気が後燃えしやすい。このため、触媒の昇温にかかる時間は、後述する通常リタード制御よりも短くなる。
【0025】
エンジン制御装置14は、第2運転の指示を取得すると、超リタード制御を実行しながら、空燃比(空気と燃料の比率)をストイキ(理論空燃比:14程度)から30程度まで薄くするリーン制御を実行する。エンジン制御装置14は、リーン化することによって触媒への酸素供給量をさらに上昇させることができる。なお、本実施形態のリーン制御は、通常の内燃機関1の駆動のために用いられるリーン状態(後述する
図4のt0からt1までの空燃比)よりもリーン側になるように空燃比を制御する。
【0026】
エンジン制御装置14は、第3運転の指示を取得すると、内燃機関1が自立して回転ができる程度に点火時期を遅角させる通常リタード制御(第2リタード制御の一例)を実行する。通常リタード制御における点火時期は、1°ATDCから20°ATDC以下の値である(第2点火時期の一例)。エンジン制御装置14は、通常リタード制御を実行しながら各触媒を昇温する通常触媒昇温制御を実行する。エンジン制御装置14は、通常触媒昇温制御において、空燃比を濃くするリッチ化制御を実行し、触媒へのCO(一酸化炭素)供給量を増加させ辱倍上での酸化反応を促進させることで、触媒温度を上昇させてもよい。このとき、車両制御装置12は、発電機4が内燃機関1によって駆動されながら発電するように制御してもよい。
【0027】
次に車両制御装置12が実行する制御手順について、
図3のフローチャートを用いて説明する。車両制御装置12は、図示しないイグニッションスイッチがオンされると制御手順を開始する。
【0028】
ステップS1では車両制御装置12は、アクセルペダル16の開度であるアクセル開度Thを取得する。また、車両制御装置12は、車輪C1の回転から演算し、電動車両Cの速度(車速)Vを取得する。車両制御装置12は、アクセル開度Thと、車速Vと、を取得するとステップS2に処理を進める。
【0029】
ステップS1では車両制御装置12は、アクセル開度Thおよび車速Vから、電動車両Cに要求されている出力である要求出力PWを算出する。車両制御装置12は、要求出力PWを算出するとステップS3に処理を進める。
【0030】
ステップS3では車両制御装置12は、各触媒の暖機が必要か否か判断する。車両制御装置12は、各温度センサの温度を検知することによって、各触媒の暖機が必要か否か判断してもよい。また、車両制御装置12は、内燃機関1の運転時間などを積算し、各触媒の暖機が必要か否か判断してもよい。車両制御装置は、各触媒の暖機が必要と判断すると(ステップS3 YES)、ステップS4に処理を進める。
【0031】
ステップS4では車両制御装置12は、フロント触媒36の温度Tfccが活性化温度TL以下か否か判断する。車両制御装置12は、フロント触媒36の温度Tfccが活性化温度TL以下の場合(ステップSS4 YES)、ステップS5に処理を進める。
【0032】
ステップS5では車両制御装置12は、アンダーフロア触媒38の温度Tuccが活性化温度TL以下か否か判断する。車両制御装置12は、アンダーフロア触媒38の温度Tuccが活性化温度TL以下の場合(ステップSS5 YES)、ステップS6に処理を進める。
【0033】
ステップS6では車両制御装置12は、トラップ触媒37の温度Ttrapが離脱温度TD未満か否か判断する。車両制御装置12は、アンダーフロア触媒38の温度Tuccが離脱温度TD未満の場合(ステップS7 YES)、ステップS7に処理を進める。
【0034】
ステップS7では車両制御装置12は、第1運転をエンジン制御装置14に指示する。エンジン制御装置14は、第1運転の指示を取得し、超リタード制御を実行する。車両制御装置12は、第1運転の指示をエンジン制御装置14に送信すると、ステップS8に処理を進め、モータリングを実行する。具体的には、車両制御装置12は、要求出力PWに基づきモータ2を力行しながら、モータリング出力MW1に基づき発電機4を力行する。
このとき車両制御装置12は、モータリング出力MW1を後述するステップS11のモータリング出力MW2よりも小さくする。これによって車両制御装置12は、充電率SOCの低下を抑制できる。車両制御装置12は、モータリングを実行するとステップS9に処理を進める。
【0035】
ステップS9では、車両制御装置12は、各触媒が活性化したか否か判断する。車両制御装置12は、各触媒が活性化したか否かを、例えば、アンダーフロア触媒38の温度Tuccが活性化温度TLに到達したか否かによって判断してもよい。また、車両制御装置12は、暖機がオンとなってから(ステップS3)から所定時間Pt経過後に触媒が活性化したと判断してもよい。車両制御装置12は、各触媒が活性化したと判断すると、ステップS1に処理を進める。
【0036】
ステップS3において車両制御装置12が各触媒の暖機が不要と判断した場合(ステップS3 NO)、車両制御装置12は、ステップS10に処理を進め、要求出力PWに基づいてモータ2および発電機4を制御する通常運転を実行する。車両制御装置12は、通常運転を実行するとステップS11に処理を進め、充電率SOC、および要求出力PWに基づいて内燃機関1に発電機4を駆動させて発電する通常発電を実行する。車両制御装置12は、通常発電を実行するとステップS1に処理を進める。
【0037】
ステップS4において、車両制御装置12がフロント触媒36の温度Tfccが活性化温度TLより大きいと判断した場合(ステップS4 NO)、車両制御装置12は、ステップS12に処理を進める。ステップS12では車両制御装置12は、エンジン制御装置14に第3運転を指示する。エンジン制御装置14は、第3運転の指示を取得すると、通常リタード制御を実行する。車両制御装置12は、エンジン制御装置14に第3運転を指示すると、ステップS13に処理を進める。ステップS13では車両制御装置12は、ステップS11と同様に通常発電を実行する。車両制御装置12は、ステップS13の処理を実行するとステップS9に処理を進める。
【0038】
ステップS5において、車両制御装置12がアンダーフロア触媒38の温度Tuccが活性化温度TLより大きいと判断した場合(ステップS5 NO)、ステップS10に処理を進める。すなわち車両制御装置12は、この状態では既に暖機が完了していると判断する。
【0039】
ステップS6において、車両制御装置12がトラップ触媒37の温度Ttrapが離脱温度TD以上であると判断した場合(ステップS6 NO)、車両制御装置12は、ステップS14に処理を進める。ステップS14では車両制御装置12は、エンジン制御装置14に第2運転への切り替えを指示する。エンジン制御装置14は、第2運転の指示を取得すると、第1リタード制御、およびリーン制御を実行する。すなわち、エンジン制御装置14は、第1運転の指示を取得した際に第1リタード制御を実行したのち、第2運転の指示を取得した際にリーン制御を実行する。これによって、排気中の酸素濃度が上昇し、トラップ触媒37から離脱した物質の酸化が促進される。
【0040】
車両制御装置12は、第2運転の指示をエンジン制御装置14に送信すると、ステップS15に処理を進め、モータリングを実行する。このとき車両制御装置12は、モータリング出力MW2をステップS8のモータリング出力MW1よりも大きくする。具体的には、車両制御装置12は、要求出力PWによってモータ2を力行しながら、モータリング出力MW1からモータリング出力MW2に出力を増加させ発電機4を力行する。これによって車両制御装置12は、内燃機関1の回転を安定させるとともに、各触媒に供給する排気流量の低下を抑制する。このため、排気温度Texの熱および排気中に含まれる酸素が各触媒に安定的に供給される。この結果、各触媒の活性化が促進されるとともに、トラップ触媒37から離脱した物質の酸化も促進される。
【0041】
一方、要求出力PWに加えて、モータリング出力MW2も必要となるため、駆動用電池6の充電率SOCは低下しやすい。しかし、車両制御装置12は、この段階では各触媒の暖機を優先する。さらに、車両制御装置12は、駆動用電池6の充電率SOCが低下している場合、各触媒の暖機を優先するために要求出力PWに制限を加える制御を実行してもよい。
【0042】
次に、
図4のタイミングチャートを用いて上記制御手順の具体例を説明する。
図4のタイミングチャートは、駆動用電池6の充電率SOCが低下し、内燃機関1による発電が必要となり、EV走行からシリーズ走行に切り替わった直後の制御手順を示している。また
図4のタイミングチャートは、内燃機関1の暖機が必要と判断した状態(
図3のステップS3 YESの状態)を示している。また、
図4の各グラフの実線は、本実施形態において第1運転から第2運転への切り替えが実行された状態を示している。
図4の各グラフの破線は、本実施形態と比較するために設けた、従来の通常リタード制御のみを実行する場合のグラフである。
【0043】
図4の時刻t1に示すように、車両制御装置12は要求出力PWが上昇し、充電率SOCが不足すると内燃機関1を始動させる。時刻t1から時刻t2のエンジン回転のグラフに示すように、車両制御装置12は内燃機関1を始動させたのち内燃機関1を完爆させ、内燃機関1のエンジン回転を安定させる。車両制御装置12は、これら手順を実行することによって内燃機関1の始動を完了させる。
図4のエンジン直後の排気ガス中のHCの実線グラフに示すように、この間に排出された炭化水素がトラップ触媒37に吸着される。
【0044】
時刻t2から時刻t3の各グラフに示すように、車両制御装置12が暖機を開始すると、車両制御装置12は、第1運転をエンジン制御装置14に指示する。時刻t2から時刻t4の点火時期の実線グラフに示すように、第1運転の指示を受けたエンジン制御装置14は、点火時期を徐々に遅角(リタード)させ、第1点火時期まで遅角させる。時刻t2から時刻t4の点火時期の破線グラフに示すように、通常リタード制御における点火時期は第2点火時期である。
【0045】
時刻t2から時刻t4の空燃比のグラフに示すように、エンジン制御装置14は、第1運転の指示を車両制御装置12から受けている間、空燃比をストイキに維持する。時刻t3から時刻t4の発電機出力の実線グラフに示すように、点火時期が遅角してくると、車両制御装置12は、発電機4を力行しモータリングする。このため、要求出力とモータリング出力の合算値(要求出力とモータリング出力の合算値の実線グラフ参照)は、通常リタード制御(要求出力とモータリング出力の合算値の破線グラフ参照)よりも、モータリング出力MW1分だけ高くなる。
【0046】
時刻t4手前の触媒温度の実線グラフに示すように、第1運転によって、各触媒の温度が上昇し、トラップ触媒の温度Ttrapが離脱温度TDに到達すると炭化水素の離脱が開始される。なお、時刻t4手前の触媒温度の実線グラフと破線グラフとを比較してわかるように、本実施形態による内燃機関1の制御システムでは、離脱温度TDに達するまでの時間もはやい。なお、本実施形態の触媒温度のグラフは、各触媒の温度のうちトラップ触媒37の温度Ttrapのものを示している。
【0047】
温度Ttrapが離脱温度TDに到達すると、車両制御装置12はエンジン制御装置14に第2運転を指示する。エンジン制御装置14は、第2運転の指示を取得し、時刻t4の空燃比の実線グラフに示すように、リーン制御を実行する。本実施形態では、触媒温度が離脱温度TDに到達してからわずかに時間を空けて、車両制御装置12が第2運転を指示している。また、車両制御装置12はこの間に、排気流量を抑制するため、スロットル40を絞るもしくは、一部の気筒の吸気バルブを停止させている。これによって、車両制御装置12は、脱離した炭化水素がアンダーフロア触媒38を通過して漏れていくことを抑制している(時刻t4手前の各触媒通過後のHC排出量の実線参照)。しかし、車両制御装置12は、このような制御を必ずしも実行する必要はなく、触媒温度が離脱温度TD以上であれば、第2運転への切り替えをいつ実行してもよい。
【0048】
第2運転が開始されると、時刻t4から時刻t5の発電機出力の実線グラフに示すように、車両制御装置12はモータリングの出力を上昇させ、モータリング出力MW2によって内燃機関1を駆動する。このため、要求出力とモータリング出力の合算値は、第1運転時および通常リタード制御時よりも増加する。本実施形態では、時刻t4から時刻t5の間はリーン制御により空燃比が薄くなることで内燃機関1の出力(回転数)が低下しようとするが、モータリング出力MW2によって内燃機関1の回転を維持している。
【0049】
第2運転が開始されると、時刻t4から時刻t5の各触媒通過後のHC排出量の実線グラフに示すように、酸素濃度の増加による酸化反応の促進と、各触媒の昇温効果によって炭化水素が浄化され、HC排出量が通常リタード制御(各触媒通過後のHC排出量の破線グラフ参照)に比べ減る。
【0050】
時刻t5以降の触媒温度に示すように、触媒温度のうちフロント触媒36の温度Tfccが活性化温度TLに到達した場合(
図3のステップS4 YESの状態)、車両制御装置12は、エンジン制御装置14に第3運転への切り替えを指示する。なお、上記のとおり本実施形態の触媒温度のグラフは、各触媒の温度のうちトラップ触媒37の温度Ttrapのものを示している。しかし、車両制御装置12は、実際にはフロント触媒36の温度Tfccおよびアンダーフロア触媒38の温度Tuccも取得または推定している。時刻t5の点火時期の実線グラフおよび空燃比の実線グラフに示すように、エンジン制御装置14は、第3運転の指示を取得すると点火時期を第2点火時期に戻し、空燃比をストイキに戻す。
【0051】
時刻t6以降の触媒温度の実線グラフに示すように、触媒温度のうちアンダーフロア触媒38の温度Tuccが活性化温度TLに到達し触媒暖機が完了した場合(ステップS9 YESの状態)、車両制御装置12は通常運転を実行する。
【0052】
以上説明した通り、この内燃機関1の制御システム3は、第1運転によって第1リタード制御を実行することによってトラップ触媒の離脱が始まる温度まで素早く昇温させ、第2運転によってリーン制御を実行することによってトラップ触媒37から離脱した物質を酸化させることができる。この間、発電機4が内燃機関1を駆動するため、排気流量の低下が抑制できる。これによって、この内燃機関1の制御システム3は、トラップ触媒37からの炭化水素の離脱と酸化をより早く完了できる。
【0053】
<他の実施形態>
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の変形例は必要に応じて任意に組合せ可能である。
【0054】
(a)上記実施形態では、内燃機関1は、筒内噴射弁30を有するガソリンエンジンを例に説明したが本開示はこれに限定されない。内燃機関1は、ポート噴射弁を有する内燃機関1であってもよい。
【0055】
(b)上記実施形態では、リーン制御において内燃機関1の空燃比全体を薄くする例を用いて説明したが、本開示はこれに限定されない。例えば、内燃機関1が複数の気筒を有する場合、車両制御装置12は第2運転におけるリーン制御において、一部気筒だけ空燃比をストイキとした燃焼を実行させ、残りの気筒の燃料噴射を停止するパーシャルフューエルカット制御を実行してもよい。この場合、車両制御装置12は、モータリング出力MW2を低減することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 :内燃機関
4 :発電機(回転電機の一例)
6 :駆動用電池
12 :車両制御装置(制御装置の一例)
37 :トラップ触媒
Ttrap :トラップ触媒の温度