(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111920
(43)【公開日】2024-08-20
(54)【発明の名称】リールシート及び魚釣用リール
(51)【国際特許分類】
A01K 87/06 20060101AFI20240813BHJP
A01K 87/08 20060101ALI20240813BHJP
【FI】
A01K87/06 Z
A01K87/08 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023016649
(22)【出願日】2023-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】000002495
【氏名又は名称】グローブライド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097559
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 浩司
(74)【代理人】
【識別番号】100123674
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 亮
(72)【発明者】
【氏名】河合 一輝
(72)【発明者】
【氏名】川村 拓司
(72)【発明者】
【氏名】中川 敬介
(72)【発明者】
【氏名】安田 悠
【テーマコード(参考)】
2B019
【Fターム(参考)】
2B019AA06
2B019AC00
(57)【要約】
【課題】魚釣用リールを簡単な操作でリールシートに着脱することができ、安定した固定状態が得られるリールシートを提供する。
【解決手段】本発明のリールシート12は、リール脚90を固定する固定フード15と、固定フード15に形成され、リール脚を90スライドして、リール脚90を所定の設置位置に案内する挿通開口部と、本体12の表面13a、及び、本体の表面13aに対向するリール脚の対向面91aに形成され、所定の設置位置に案内されたリール脚の移動を規制する係止構造13Aと、リール脚90が所定の設置位置に固定された固定状態を解除する係脱機構20とを有する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
釣竿のグリップに設けられ、魚釣用リールの脚部を着脱可能にするリールシートであって、
前記リールシートの本体は、
前記リール脚の軸方向前側、及び、後側の少なくとも一部を固定する固定フードと、
前記固定フードに形成され、前記リール脚をスライドして、前記リール脚を所定の設置位置に案内する案内部と、
前記本体の表面、及び、前記本体の表面に対向する前記リール脚の対向面に形成され、前記リール脚を前記案内部に案内させると共に、前記設置位置に案内されたリール脚の移動を規制する係止構造と、
前記係止構造によって移動が規制されたリール脚の固定状態を解除する係脱機構と、
を有することを特徴とするリールシート。
【請求項2】
前記係止構造は、前記本体の表面、及び、前記本体の表面に対向する前記リール脚の対向面に形成され、互いに嵌合する凹凸部を有することを特徴とする請求項1に記載のリールシート。
【請求項3】
前記固定フードは、前記リール脚の軸方向前側、及び、後側を固定するように一対設けられていることを特徴とする請求項1に記載のリールシート。
【請求項4】
前記案内部は、前記一対の固定フードの夫々に、前記本体の中心軸に対して反対の側面に形成されて、前記リール脚を挿通させる挿通開口部であり、
前記リール脚を前記本体の表面に対して回動操作することで、前記リール脚を前記設置位置に案内することを特徴とする請求項3に記載のリールシート。
【請求項5】
前記係脱機構は、前記本体の表面に突没可能に設けられ、バネによって付勢される突起と、
前記リール脚の対向面に形成され、前記突起が嵌合する嵌合穴と、
前記本体に設けられ、前記突起と嵌合穴が前記バネの付勢力によって嵌合している状態を解除する解除機構と、
を有することを特徴とする請求項1に記載のリールシート。
【請求項6】
前記解除機構は、前記本体の表面から突出し、押圧操作することで前記突起に作用する前記バネの付勢力に抗して前記嵌合穴との嵌合状態を解除する操作ボタンを有することを特徴とする請求項5に記載のリールシート。
【請求項7】
前記リール脚には、前記嵌合穴を前記突起に向けて案内する溝が形成されていることを特徴とする請求項5に記載のリールシート。
【請求項8】
前記溝は、前記バネによって弾性付勢されている前記突起との接触部分が、リール脚の移動に伴って突起が次第に没するように、傾斜状に形成されていることを特徴とする請求項7に記載のリールシート。
【請求項9】
前記係脱機構は、前記本体の表面に突没可能に設けられ、バネによって付勢され、前記所定の設置位置に移動したリール脚に当て付く突起と、
前記本体に設けられ、前記突起とリール脚が当て付いている状態を解除する解除機構と、
を有することを特徴とする請求項1に記載のリールシート。
【請求項10】
前記凹凸部は、前記リール脚の軸方向の中央に設けられ、前記係脱機構は、前記リール脚の端部に設けられていることを特徴とする請求項2に記載のリールシート。
【請求項11】
請求項1に記載のリールシートに対して着脱可能な魚釣用リールであって、
前記魚釣用リールのリール脚の対向面には、中央に前記係止構造が設けられ、端部に前記係脱機構が設けられていることを特徴とする魚釣用リール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚釣用リールが着脱されるリールシート、及び、そのようなリールシートに適した魚釣用リールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、魚釣用リールが着脱される釣竿のグリップ(元竿杆を含む)には、リールシートが設けられている。リールシートは、魚釣用リールの脚部の前端と後端を保持する一対のフードを備えており、各フードを軸方向に相対的に移動させることで前記脚部を締め付けて固定できるように構成されている。
【0003】
ところで、上記したリールシートとして、魚釣用リールをワンタッチで着脱できる構成が知られている。例えば、特許文献1には、魚釣用リールの脚部に棒状部を形成し、これをリールシートに設けた嵌合凹部に挿入する構成が開示されている。また、特許文献2には、竿杆(グリップ)の中心に対してオフセットした位置で、軸方向にバネ付勢された固定爪によってリール脚を保持するリールシートが開示されている。このリールシートは、魚釣用リールを上方側から押し込むことでリールシートに固定することができ、魚釣用リールをバネの付勢力に抗して軸方向後方側に引くことで取り外しできるように構成されている。更に、特許文献3には、リール脚の前側端部と後側端部を挟持固定する一対の挟持部を備えたリールシートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭51-8993号
【特許文献2】実用新案登録第3102305号
【特許文献3】特開2018-143222号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した特許文献1に開示された構成では、凸部と凹部の嵌合で魚釣用リールを固定するだけであるため、大きな力が作用するとリール本体が動き易く、魚釣用リールを安定して固定することができない。また、上記した特許文献2に開示された構成では、魚釣用リールの脚部を軸方向にバネ付勢する構造であるため、固定力が十分ではなくガタ付きが発生し易い。更に、特許文献3に開示されたリールシートは、リール脚の両端を挟持して固定する構成であるため、固定力が十分ではなく、ガタ付きが発生し易い。
【0006】
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、魚釣用リールを簡単な操作でリールシートに着脱することができ、安定した固定状態が得られるリールシート、及び、そのようなリールシートに適した魚釣用リールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するために、本発明は、釣竿のグリップに設けられ、魚釣用リールの脚部を着脱可能にするリールシートであって、前記リールシートの本体は、前記リール脚の軸方向前側、及び、後側の少なくとも一部を固定する固定フードと、前記固定フードに形成され、前記リール脚をスライドして、前記リール脚を所定の設置位置に案内する案内部と、前記本体の表面、及び、前記本体の表面に対向する前記リール脚の対向面に形成され、前記リール脚を前記案内部に案内させると共に、前記設置位置に案内されたリール脚の移動を規制する係止構造と、前記係止構造によって移動が規制されたリール脚の固定状態を解除する係脱機構と、を有することを特徴とする。
【0008】
上記した構成のリールシートは、着脱される魚釣用リールのリール脚の軸方向前側、及び、後側の少なくとも一部を固定する固定フードが設けられており、この固定フードには、前記リール脚をスライドして所定の設置位置に案内する案内部が形成されている。前記リール脚は、前記案内部を介してスライド移動(直進的なスライド移動、回転方向のスライド移動、これらの組み合わせの移動)して所定の設置位置に案内される。この場合、前記リール脚は、前記固定フード、係止構造、係脱機構で移動が規制されて固定状態になることから、ガタ付くことがなくなり、リールシートに対して安定して固定することが可能となる。また、魚釣用リールの取り外しに際しては、前記係脱機構で固定状態を解除し、固定フードに形成された前記案内部を介してリール脚をスライドさせる構成であるため、ワンタッチ操作(簡単な操作)でリールシートに魚釣用リールを着脱することが可能となる。
【0009】
また、本発明は、上記したようなリールシートに着脱される魚釣用リールを提供するのであり、前記魚釣用リールのリール脚の対向面には、中央位置に前記係止構造が設けられ、端部位置に前記係脱機構が設けられていることを特徴とする。
【0010】
このような魚釣用リールによれば、簡単な操作でリールシートに着脱することができ、安定した固定状態が得られるようになる。
なお、魚釣用リールは、リール脚を備えていれば良く、スピニングリール、両軸受け型リール、片軸受けリール、電動リールなど、各種の形態の魚釣用リールが該当する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、魚釣用リールを簡単な操作でリールシートに着脱することができ、安定した固定状態が得られるリールシート、及び、そのようなリールシートに適した魚釣用リールが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係るリールシートを備えた釣竿、及び、魚釣用リールの一例(スピニングリール)を示す図。
【
図3】
図2に示す魚釣用リールのリール脚の主要部を示す図。
【
図4】
図1に示すリールシートの全体構成を示す斜視図。
【
図5】図(a)は
図4に示すリールシートの平面図、図(b)は
図4に示すリールシートの側面図。
【
図7】リールシートに対してリール脚を固定する操作を説明する図(1)。
【
図8】リールシートに対してリール脚を固定する操作を説明する図(2)。
【
図9】リールシートに対してリール脚を固定する操作を説明する図(3)。
【
図10】リールシートの第2の実施形態を示す図であり、軸方向に沿った断面図。
【
図11】リールシートの第3の実施形態を示す図(後側の固定フード部分を拡大して示す図)であり、図(a)は、リール脚を回動する前の状態を示す図、図(b)は、リール脚を回動して固定した状態を示す図。
【
図12】リールシートの第4の実施形態を示す図であり、図(a)は、リールシートの軸方向に沿った断面図、図(b)は、図(a)のA-A線に沿った断面図、図(c)は、リール脚の主要部の構成を示す図。
【
図13】リールシートの第5の実施形態を示す断面図(後側の固定フード部分を拡大して示す図)であり、図(a)は、リール脚を軸方向にスライドさせる前の状態を示す図、図(b)は、リール脚を軸方向にスライドして固定した状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明に係るリールシートを備えた釣竿、及び、魚釣用リールであるスピニングリールの一例を示す図である。
図に示す釣竿1は、元竿杆5に、複数の竿杆7A,7B,7C,7Dを収納し、これを順次振り出して継合される振出式に構成されている。この場合、前記元竿杆5の内部に収納される竿杆の本数(継合本数)については任意であり、図に示す構成では、最も小径の竿杆7Dが穂先竿杆となっている。
なお、以下の説明では、竿先側を前方(前)、竿尻側を後方(後)で定義する。
【0014】
前記元複数の竿杆7A,7B,7C,7Dには、釣糸を案内する釣糸ガイド8A~8Fが装着されている。これらの釣糸ガイドは、竿杆の先端に糸止め等によって固定されるもの、及び、竿杆に沿って摺動し、所定の位置で固定されるもの(遊動ガイド)が含まれている。更に、竿杆7D(穂先竿杆)の先端には、トップガイド9が装着されている。
【0015】
本実施形態の釣竿1は、元竿杆5にグリップ10を装着しており、前記竿杆7A~7Dを順次収納した元竿杆5をグリップ10に対して着脱できるように構成している。すなわち、釣場での使用態様や装着される魚釣用リールの形態等に応じて、好ましい形態の竿杆を選択して、グリップ10に対して着脱できるように構成されている。この場合、グリップ10に対する竿杆の着脱については、螺合にする等、その構造については限定されることはない。
【0016】
図2及び
図3は、
図1に示したスピニングリールの構成を示す図であり、
図2は斜視図、
図3はリール脚の主要部を示す図である。
本実施形態に係るスピニングリール(以下、リールと称する)80のリール本体81には、公知のように、リールシートに装着されるリール脚90が一体形成されている。リール本体81の前方には、回転可能に支持されたロータ82と、ロータ82の回転運動と同期して前後動可能に支持されたスプール84とが配設されている。また、リール本体81には、巻き取り操作されるハンドル87が設けられている。
【0017】
前記ロータ82は、スプール84の周囲を回転する一対の腕部82aを備えており、各腕部82aの夫々の前端部には、ベール85の基端部を取り付けたベール支持部材83bが釣糸巻き取り位置と釣糸放出位置との間で回動自在に支持されている。この場合、ベール85の一方の基端部は、ベール支持部材83bに一体的に設けられた釣糸案内部(ラインローラ)86に取り付けられている。
【0018】
上記した構成により、ハンドル87を巻き取り操作すると、リール本体内に収容された公知の駆動力伝達機構を介してロータ82が回転駆動される共に、オシレート機構を介してスプール84が前後方向に往復動される。したがって、釣竿1の釣糸ガイド8A~8F及びトップガイド9に挿通された釣糸は、ハンドル87を巻き取り操作すると、回転駆動されるロータ82の釣糸案内部86を介してスプール84に均等に巻回される。
【0019】
前記リール脚90の先端には、釣竿(グリップ)の中心軸方向に沿って延出する取付部91が一体形成されている。本実施形態のリール脚90(取付部91)は、後述するリールシートのリール脚載置部と対向する対向面91aを備えており、その対向面91aの中央には、後述する係止構造を構成する円柱状の凸部91bが設けられ、端部(本実施形態では後端側)に、後述する係脱機構が設けられている。
【0020】
図4から
図6は、前記リールシートの構成を示す図であり、
図4は全体構成を示す斜視図、
図5(a)は平面図、
図5(b)は側面図、そして、
図6はリールシートの軸方向に沿った断面図である。
【0021】
前記グリップ10は、リール80が着脱されるリールシート12を備えている。なお、本実施形態のリールシート12は、着脱されるリール80のリール脚90(取付部91)を平面内で回動させて、リールシートに設けられた一対の固定フード間で固定するように構成されている。
【0022】
前記リールシート12の本体12Aは、リール80のリール脚90(取付部91)が載置されるリール脚載置部13を備えている。この場合、本実施形態のリールシート12(リールシートの本体12A)は、グリップ10と一体形成されているが、グリップ10とは別体に形成されてグリップ10と一体化される構成であっても良い。また、グリップ10及びリールシート12は、金属、硬質の樹脂(繊維強化樹脂)、木材等によって形成することが可能であり、その構成材料については限定されることはない。
【0023】
前記リールシート12の軸方向の前後には、前記リール脚の軸方向前側、及び、後側の少なくとも一部を固定するための固定フードが設けられている。固定フードについては、公知の釣竿のリールシートのように、リール脚の前側及び後側(少なくとも一部であれば良い)の表面を覆って、リールを固定する機能を備えたものであれば良い。本実施形態では、前記リール脚載置部13に載置されるリール脚90の前後を締め付け固定する一対の固定フード15,16で構成されており、リール脚90の取付部91を、前側及び後側で固定するようにしている。なお、本実施形態の固定フード15,16は、
図4に示すように、グリップ10の表面と面一状に構成されているが、取付部91の形状に合わせて膨出するような形状であっても良い。
【0024】
前記各固定フード15,16は、リール脚載置部13に向けて開口する受入穴15a,16aを備えている。これらの受入穴15a,16aは、軸方向の端部にそれぞれ底部となる壁部15b,16bを備えている。この場合、これら壁部間の軸方向長さについては、前記リール脚90の取付部91を収容して軸方向にガタ付かないように、取付部91の軸方向長さと略同じ長さに形成することが好ましい。
【0025】
前記一対の固定フード15,16には、それぞれ前記リール脚90をスライドして、取付部91を一対の固定フード間の所定の設置位置に案内する案内部15A,16Aが形成されている。本実施形態の案内部15A,16Aは、一対の固定フード15,16の夫々に、リールシート12の本体12Aの中心軸Xに対して反対の側面に開口する開口部として構成されている(以下、挿通開口部15A,16Aとも称する)。
【0026】
このように、挿通開口部15A,16Aを、本体の中心軸Xに対して、各固定フード15,16の反対の側面に形成することで、リール脚90の取付部91をリール脚載置部13に当接(載置)させて、そのまま回動操作(スライド操作)するだけで、簡単に固定操作が行なえるようになる。
【0027】
前記リールシート12の本体12Aの表面(ここではリール脚載置部13の表面13a)、及び、前記本体の表面13aに対向するリール脚90の対向面91aには、所定の位置に移動したリール脚の移動を規制する(固定状態にする)係止構造13Aが設けられている。本実施形態の係止構造13Aは、前記本体の表面13aに形成され、凹部となる断面円形の嵌合穴13bと、リール脚90の対向面91aに形成され、凸部となる断面円形の円柱状の凸部91b(
図2参照)とを備えている。このため、前記挿通開口部15A,16Aを介して案内されるリール脚は、係止構造13Aを構成する凹凸部の嵌合によって、スライド操作した後に移動が規制された状態となる。
【0028】
このような凹凸による係止構造13Aによれば、両者が嵌合してリール脚90が所定の設置位置に案内されると、360°に亘ってリール脚90の変動が規制され、ガタ付きを無くすことが可能となる。この場合、前記凸部91bは、リール脚90の取付部91の中央(軸方向及び幅方向の中央)に形成することが好ましく、これにより、リール全体がガタ付くことなく安定した固定状態を得ることが可能となる。また、このようなリール脚90の設置位置では、リール脚の取付部91の前後端が、前記固定フード15,16のそれぞれの受入穴15a,16aの各壁部15b,16bと略隙間なく対向するように設定しておくことで、より確実に軸方向のガタ付きを抑制することが可能となる。
【0029】
前記リールシート12には、前記リール脚90が設置位置に移動した(収容された)際、規制状態にあるリール脚90を固定すると共に、その固定状態を解除する係脱機構20が設けられている。
本実施形態の係脱機構20は、前記リール脚90を、本体12Aの表面13aに形成された嵌合穴13bに嵌合させ、そのまま回動操作して設置位置に移動させることから、その設置位置になったときに固定状態となり、かつ
、ユーザの操作によって固定状態の解除が可能となるように構成されている。この係脱機構20については、リールシート12(取付部91)の端部側に設けておくことが好ましく、これにより、中心部分に設けられた係止構造13Aと、端部側に設けられた係脱機構20による各規制によって、安定した固定状態が得られるようになる。
【0030】
本実施形態の係脱機構20は、リールシート12側と、これに対応するリール脚90の対向面91a側の両方に設けられている。具体的に係脱機構20は、本体12Aの表面13aに突没可能に設けられ、バネ22によって付勢される突起23aと、前記リール脚90の対向面91aに形成され、突起23aが嵌合する嵌合穴95と、前記本体12Aに設けられ、前記突起23と嵌合穴95が前記バネ22の付勢力によって嵌合している状態を解除する解除機構40とを備えている。
なお、前記突起23aは、前記固定フード15の内部に位置しており、外部に対して閉塞された位置に設けられている。
【0031】
前記係脱機構20は、
図6に示すように、リールシートの本体12A(グリップ10)のリール脚載置部13と反対側に形成された凹所12Bに、主要構成部を保持したブロック体20Aを嵌合、固定して構成されている。前記ブロック体20Aは、止めビス25によって前記凹所12Bに着脱可能に構成されており、ブロック体20Aを取り付けた際、本体12A(グリップ10)の表面とブロック体20Aの表面は面一状になり、グリップ性に影響を与えないようにしている。
なお、着脱機構20は、ブロック体に保持することなく、リールシートの本体12A(グリップ10)と共に一体的に形成しても良い。
【0032】
前記ブロック体20Aの内側には、有底の保持穴20aが形成されており、この保持穴20a内に、係合操作部材23の基部23cが前記バネ22を巻き付けた状態で嵌合されている。前記係合操作部材23には、前記解除機構40を構成する操作ボタン41が一体形成されており、前記基部23cと同軸上に伸びて、その端部がリールシートの本体12Aの表面(固定フード15の表面)から突出している。
【0033】
前記係合操作部材23には、その中間位置で分岐して、前記本体12Aの表面13aに突没可能な突起23aが一体形成されている。この突起23aと前記操作ボタン41は、略平行状に延出しており、一体的に上下動できるようになっている(
図6のD1,D2方向)。このため、リールシートの本体12A内には、係合操作部材23の上下動が可能となるように空隙Sが形成されている。
【0034】
前記リール脚90の取付部91には、
図2及び
図3に示すように、前記嵌合穴95を係脱機構20の突起23aに向けて案内する溝(案内部)97を形成しておくことが好ましい。上記したように、リール80をリールシート12に装着する際、リール脚90を、リールシート12のリール脚載置部13の表面13aに対して、凸部91bを中心にして回動させることから、凸部91bを中心とした円弧状の溝97を形成しておくことで、リール脚90の嵌合穴95は、溝97によって、突起23aの位置(所定位置)に向けてスムーズに案内される。
【0035】
この場合、前記溝97は、前記バネ22によって弾性付勢されている突起23aとの接触部分(底面97a)が、リール脚90の回動に伴って突起23aが次第に没するように傾斜状に形成されていることが好ましい。このような案内形状にすることで、突起23aと一体形成されている操作ボタン41は、リール脚90が設置位置に向けて移動するにつれて次第に引っ込むため、この状態を目視することができる。更に、突起23aが嵌合穴95に嵌まり込んだ際に節度音が生じて操作ボタン41が突出するので、リール脚の固定状態を感覚的に把握し易くすることが可能となる。
【0036】
次に、
図7から
図9を参照して、リールシート12に対してリール脚90を固定する操作を説明する。
最初、
図7に示すように、リール脚90の取付部91を、リールシート12のリール脚載置部13に対して、斜め方向(中心軸Xに対して斜め)に配置し、取付部91の凸部91bをリールシートの嵌合穴13bに嵌合させる。この嵌合操作によって、リール脚載置部13の表面13aとリール脚90の取付部91の対向面91aは面接して係止状態となる。
【0037】
この状態で、リール脚90を、
図8に示すように、凸部91bを中心にして回動操作(スライド操作)すると、リール脚90の取付部91の両側は、固定フード15,16の挿通開口部15A,16Aを通過し、
図9に示すように、所定の設置位置に移動する。
【0038】
この回動操作の際、リール脚90は、前記突起23aが溝97によってスムーズに案内され、所定位置に向けて移動すると共に、突起23aは、溝97の底面97aによって次第に没する。したがって、突起23aと一体形成されている操作ボタン41も同じように次第に引っ込むことから(
図6のD1方向)、この操作ボタン41の動作によって適正な係合状態を目視することができる。また、操作ボタン41は、リール脚90が設置位置に向けて移動するに従って次第に引っ込み、突起23aが嵌合穴95に完全に嵌まり込むと、バネ22の付勢力によって復帰する(
図6のD2方向)ことから節度音が生じる。これによりリール脚90の固定状態を感覚的に把握し易くすることが可能となる。
【0039】
なお、魚釣用リールをリールシート12から取り外す場合、前記解除機構40を構成する操作ボタン41をバネ22の付勢力に抗して押圧すれば良い。操作ボタン41をバネ22の付勢力に抗して押圧すると、前記突起23aと嵌合穴95との嵌合が解除されるので、リール脚90を逆向きに回動することで、リール80をリールシート12から容易に取り外すことが可能となる。
【0040】
以上のように、魚釣用リール80は、リール脚載置部13と同一の面内で回動操作(スライド操作)するだけの簡単な操作でリールシート12に対して容易に着脱することができる。また、リール脚90の取付部91の凸部91bとリールシート12の嵌合穴13bは、嵌合状態になるため、リール80(リール脚90)の軸方向及び幅方向の移動が規制される。また、この規制状態では、固定フード15,16がリール脚90の取付部91を押さえ付けているため、上下方向においてもガタ付きが抑制され、リール脚の安定した固定状態が得られるようになる。
【0041】
更に、上記した係脱機構20及び解除機構40は、その構成部材の動作方向が前記リール脚のスライド操作する方向と直交する方向、すなわち、リール脚載置部13に対して直交する方向となっているため、リール脚90が固定された状態になると、リールが軸方向にガタ付くことなく規制され、安定した固定状態が得られるようになる。
【0042】
次に、本発明の別の実施形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態では、上記した第1の実施形態と同様な機能を有する部分については、同一の参照符号を付し、詳細な説明については省略する。
【0043】
図10は、リールシートの第2の実施形態を示す図であり、軸方向に沿った断面図である。
本発明に係るリールシートの固定フードは、上記した実施形態のように、リール脚の軸方向前側、及び、後側の両側を固定しても良いが、いずれか一方を固定する構成であっても良い。
図10に示す実施形態では、リール脚90の後方側を、第1の実施形態と同様、固定フード15で固定し、リール脚90の前方側を係止構造13Aによって固定している。
【0044】
本実施形態の係止構造13Aは、リール脚90の取付部91の前端側に設けられており、第1の実施形態と同様、リールシートの本体の表面13aに形成され、凹部となる断面円形の嵌合穴13bと、リール脚90の対向面91aに形成され、凸部となる断面円形の円柱状の凸部91bとを備え、これらが嵌合することで係止構造13Aを構成している。
【0045】
また、係脱機構20については、上記した第1の実施形態(
図6に示した構成と同様)、有底の保持穴20a内に、係合操作部材23の基部23cがバネ22を巻き付けた状態で嵌合することで構成されている。前記係合操作部材23には、解除機構40を構成する操作ボタン41が一体形成されており、前記基部23cと同軸上に伸びて、その端部がリールシートの本体12Aの表面(固定フード15の表面)から突出している。
【0046】
このように、固定フードについては、取付部91のいずれか一方の端部(第2実施形態では後端としたが、前端であっても良い)に設けておき、その反対側に係止構造を設けても、第1実施形態と同様な作用効果を得ることが可能となる。また、本実施形態では、前側に固定フードを設ける必要がないので、リールシートの構成を簡略化することができる。
【0047】
図11は、リールシートの第3の実施形態を示す図(後側の固定フード部分を拡大して示す図)であり、図(a)は、リールシートを回動する前の状態を示す図、図(b)は、リール脚を回動して固定した状態を示す図である。
【0048】
この実施形態では、上述した係脱機構20の構成を変形している。
前記係脱機構については、リール脚90がリール脚載置部13の所定位置に案内されて収容された際、そのリール脚を固定することができ、かつ、その固定状態を解除できる構成であれば良い。
【0049】
本実施形態の係脱機構20Bは、固定フード15の受入穴15aの先端縁に弾性変形可能な係止突部15dを設けると共に、リール脚90の取付部91の表面に、リール脚を所定の設置位置に回動した際、前記係止突部15dと係合状態となる突部91dを設けた構成となっている。また、固定フード15に形成される案内部については、上記した実施形態と同様、固定フートの側面に形成される挿通開口部で構成される。
【0050】
このような係脱機構20Bでは、リール脚を所定の設置位置に向けて回動すると、係止突部15dと突部91dが係合状態となり、リール脚の軸方向の移動を規制することが可能となる。また、軸方向と直交する方向においても、固定フードに同様な機能を有する係止突部を設けると共に、リール脚の取付部にも同様な機能を有する突部を設けることで、幅方向の移動を規制することが可能となる。
【0051】
このような係脱機構20Bによれば、構造をより簡略化することができる。
なお、係止構造については、上述した第1の実施形態、及び、第2の実施形態と同様に構成することが可能である。
【0052】
図12は、リールシートの第4の実施形態を示す図であり、図(a)は、リールシートの軸方向に沿った断面図、図(b)は、図(a)のA-A線に沿った断面図、図(c)は、リール脚の主要部の構成を示す図である。
この実施形態では、第1の実施形態と同様、リールシートに一対の固定フード15,16が設けられており、同一の側面に形成された案内部(挿通開口部)15A,16Aを介して、リール脚を軸方向と直交する方向にスライドさせるようにしている。
【0053】
前記固定フード15,16の間には、リールシートの本体12の表面、及び、本体の表面に対向するリール脚の対向面にリール脚を係止状態にする係止構造13Cが設けられている。
この係止構造13Cは、前記本体の表面13aに、軸方向と直交する方向に延在するように形成され、凹部となる断面逆三角形状の嵌合溝13eと、リール脚90の対向面91aに形成され、凸部となる断面逆三角形状の凸部91eとを備えており、これらがスライド可能に嵌合することで係止構造13Cを構成している。
【0054】
また、本実施形態の係脱機構20は、バネ付勢された状態の突起23aが、リール脚90の取付部91の側面91fに当て付くことでリール脚90を固定するようになっている。この場合、リール脚90の取付部91が固定フード15の挿通開口部15Aを介して挿入された際、取付部91の反対側の側面91gが固定フード15の側壁の内面15Dに当て付き、かつ、取付部91の側面91fが前記係脱機構20のバネ付勢されている突起23aに当て付くことで、取付部91は軸方向と直交する方向にも規制された状態となり、リールの取付状態が安定する。
このように、リール脚90を同一面内でスライドさせるだけでも、容易にリールシート12の所定の設置位置に装着することが可能であり、係止構造や係脱機構の構成については、種々、変形することが可能である。
【0055】
図13は、リールシートの第5の実施形態を示す断面図(後側の固定フード部分を拡大して示す図)である。
本実施形態では、リール脚90を、リールシート12の本体12Aの中心軸X方向に沿ってスライド操作することでリールシート12に固定するように構成されている。
【0056】
本実施形態の係脱機構20Cは、固定フード15の受入穴15aの先端縁に弾性変形可能な係止突部15gを設けると共に、前記係止突部15gと係合状態となる凹部91gをリール脚の取付部91に設けた構成となっている。リールシートの本体12の表面、及び、本体の表面に対向するリール脚の対向面には、例えば、
図12に示したような凹凸部13e,91eを軸方向に沿って形成することで構成した係止構造が設けられている。
【0057】
このような構成によれば、リール脚90の取付部91を、係止構造に沿って矢印で示す軸方向Xに沿ってスライド操作して、所定の設置位置に移動させると、前記係止突部15gと凹部91gが係合してリール脚90を固定状態にすることが可能となる。この場合、固定フード15に形成され、リール脚をスライドして、リール脚を所定の設置位置に案内する案内部は、固定フード15の受入穴15aで構成される。
【0058】
このように、リール脚とリールシートについては、軸方向にスライドすることで着脱することも可能であり、構造をより簡略化することができる。
【0059】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記した実施形態に限定されることはなく、種々変形することが可能である。
上記した係止構造は、リール脚90をリールシート12に固定する際、リール脚を案内部に案内する機能を備え、案内部を介して所定の設置位置に移動したリール脚の移動を規制できれば、その構成については適宜変形することが可能である。また、係脱機構は、リール脚90がリール脚載置部13の所定位置に案内(収容)された際、そのリール脚を固定することができ、かつ、その固定状態を解除できる構成であれば種々変形することが可能である。また、固定フードについては、リール脚の軸方向前側、及び、後側の少なくとも一部を固定する機能を備えたものであれば良く、その形状については、リール脚を部分的に覆ったり、グリップと面一構造にする等、適宜変形することが可能である。
【0060】
さらに、上記した構成では、両者の接点、例えば、
図6に示す前記凹凸部13b,91bを電気的に接続し、リール側と釣竿側(釣竿と信号の送受信が可能な外部装置を含む)との間で電力を供給したり、各種の信号が送受信できるように構成しても良い。
【符号の説明】
【0061】
1 釣竿
10 グリップ
12 リールシート
13 リール脚載置部
13b 凹部(嵌合穴)
15,16 固定フード
20,20B,20C 係脱機構
23a 突起
40 解除機構
80 スピニングリール(魚釣用リール)
90 リール脚
91 取付部
91b 凸部