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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111929
(43)【公開日】2024-08-20
(54)【発明の名称】車両用シート装置
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/12 20060101AFI20240813BHJP
   B60N 2/14 20060101ALI20240813BHJP
【FI】
B60N2/12
B60N2/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023016662
(22)【出願日】2023-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河合 剛志
(72)【発明者】
【氏名】北島 啓一郎
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087BA07
3B087BA13
3B087BB19
(57)【要約】
【課題】シート本体を、より安定的にスライド移動させながら、所望の姿勢に変えられるようにすることにある。
【解決手段】支持部12には、スライド移動時のシート本体13をガイドする一対のガイド部31,32が設けられていると共に、一対のガイド部31,32が所定のシート上下方向の距離で配置された基準部位40と、一対のガイド部31,32が基準部位40とは異なるシート上下方向の距離で配置されたチルト部位41,42とが設けられており、シート本体13と連動して傾くリンク部51が設けられていると共に、シート上下方向に延びるリンク部51が、一対のガイド部31,32間に渡された状態とされて、一対のガイド部31,32の双方に沿って移動可能に取付けられている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持部に支持されたシート本体を、前記支持部に対してスライド移動させて、基本姿勢から傾かせた状態とする車両用シート装置において、
前記支持部には、スライド移動時の前記シート本体をガイドする一対のガイド部が設けられていると共に、前記一対のガイド部が所定のシート上下方向の距離で配置された基準部位と、前記一対のガイド部が前記基準部位とは異なるシート上下方向の距離で配置されたチルト部位とが設けられており、
前記シート本体と連動して傾くリンク部が設けられていると共に、シート上下方向に延びる前記リンク部が、前記一対のガイド部間に渡された状態とされて、前記一対のガイド部の双方に沿って移動可能に取付けられている車両用シート装置。
【請求項2】
前記チルト部位では、前記一対のガイド部の少なくとも一方が、前記一方とは異なる他方に対してシート上下方向の距離を変えるように交差する方向に延びている請求項1に記載の車両用シート装置。
【請求項3】
前記チルト部位では、前記一対のガイド部のいずれか一方が、前記シート本体のスライド移動方向に沿って延びていると共に、前記一方とは異なる前記一対のガイド部のいずれか他方が前記交差する方向に延びている請求項2に記載の車両用シート装置。
【請求項4】
前記シート本体を車両前向きの一般位置とドア開口部を向く乗降位置間を回転させる回転装置を備えると共に、
前記一般位置を基準として、シート前端部側に設定された前記チルト部位では、前記一対のガイド部のシート上下方向の距離が、シート前端に向かうにつれて次第に大きくなっている請求項1~3のいずれか一項に記載の車両用シート装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持部に支持されたシート本体を、支持部に対してスライド移動させて、基本姿勢から傾かせた状態とする車両用シート装置に関する。
【背景技術】
【0002】
これに関連する車両用シート装置が特許文献1に開示されている。この車両用シート装置10Xは、図11に示すように、車両フロア側に設置されたベース部材70と、ベース部材70上に配設された回転部材71(支持部に相当)とを有している。このベース部材70と回転部材71との間には回転装置(図示省略)が設けられている。また回転部材71上には、シート本体73に固定されたスライド部材72が配設されている。そしてスライド部材72は、回転部材71側に設けられたガイドレール74に沿って前後スライドできるように構成されている。上記した構成では、ベース部材70に対して回転部材71を回転させることで、この回転部材71上のスライド部材72を、車両前向きの一般位置からドア開口部側を向く乗降位置に回転移動させることができる。さらに回転部材71に対してスライド部材72をシート前側にスライド移動させる。これにより、スライド部材72に固定されたシート本体73を、シート前側、即ち、乗降位置ではドア開口部側に向けて移動させられるようになる。
【0003】
ここで図11の二点破線の状態を参照して、車両前向きの一般位置に配置されたシート本体73は、その後部側が下側に傾いた後下がり姿勢とされている。そして車両用シート装置10Xでは、後下がり姿勢のシート本体73を、ドア開口部側にスライド移動させることで、水平な姿勢(図中、実線で示す状態)にチルトさせられるように構成されている。即ち、スライド部材72には、シート前後方向に延びるガイドプレート75が設けられている。このガイドプレート75は、シート前側に向かうに従って次第にシート下側に曲げられている。また回転部材71の前端部には、ガイドプレート75の上下面を摺動するガイド部材76が設けられている。上記した構成では、スライド部材72がシート前側にスライド移動することで、このスライド部材72の前端側がガイドプレート75に沿ってシート下側に回動する。これにより、スライド部材72に固定されたシート本体73は、ドア開口部側にスライド移動するに従って次第に水平な姿勢に変位するようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-88438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで図11に示す車両用シート装置10Xでは、シート本体73を、意図しない動き(上下のガタつき等)を抑制しつつスライド移動させられることが望ましい。しかし上記した構成では、ガイドレール74とガイドプレート75が、別個の部材(回転部材71とスライド部材72)に設けられて、シート上下方向に離間して配置されている。このため回転部材71に対してスライド部材72をスライド移動させる際に、両ガイド74,75間の距離が原因となってシート本体73がガタつくおそれがあった。本発明は上述の点に鑑みて創案されたものであり、本発明が解決しようとする課題は、シート本体を、より安定的にスライド移動させながら、所望の姿勢に変えられるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段として、第1発明の車両用シート装置では、支持部に支持されたシート本体を、支持部に対してスライド移動させて、基本姿勢から傾かせた状態とする。この種の構成では、シート本体を、より安定的にスライド移動させながら、所望の姿勢に変えられるようにすることが望ましい。そこで本発明の支持部には、スライド移動時のシート本体をガイドする一対のガイド部が設けられていると共に、一対のガイド部が所定のシート上下方向の距離で配置された基準部位と、一対のガイド部が基準部位とは異なるシート上下方向の距離で配置されたチルト部位とが設けられている。そしてシート本体と連動して傾くリンク部が設けられていると共に、シート上下方向に延びるリンク部が、一対のガイド部間に渡された状態とされて、一対のガイド部の双方に沿って移動可能に取付けられている。
【0007】
本発明では、シート上下方向に延びるリンク部が、両ガイド部間に渡された状態で各ガイド部に沿って移動するため、このリンク部と連動するシート本体を、より安定的にスライド移動させられるようになる。そして支持部では、基準部位とチルト部位とで両ガイド部間のシート上下の距離が異なっている。これにより、シート本体を両部位間でスライド移動させることにより、特定の部位(所望の位置)でリンク部が傾くようになり、このリンク部に連動するシート本体を、基本姿勢から傾かせた状態にすることができる。
【0008】
第2発明の車両用シート装置は、第1発明の車両用シート装置において、チルト部位では、一対のガイド部の少なくとも一方が、一方とは異なる他方に対してシート上下方向の距離を変えるように交差する方向に延びている。本発明のチルト部位では、一対のガイド部の一方又は双方の方向を適切に設定して両ガイド部間の距離を変えることにより、リンク部に連動するシート本体を所望の位置で傾かせることができる。
【0009】
第3発明の車両用シート装置は、第2発明の車両用シート装置において、チルト部位では、一対のガイド部のいずれか一方が、シート本体のスライド移動方向に沿って延びていると共に、一方とは異なる一対のガイド部のいずれか他方が交差する方向に延びている。本発明のチルト部位では、一対のガイド部のいずれか一方がスライド移動方向に沿って延びているため、この一方のガイド部にガイドされたシート本体を、更に安定的にスライド移動させられるようになる。そして一対のガイド部のいずれか他方の方向を適切に設定することで、両ガイド部間の距離を変えられるようになる。
【0010】
第4発明の車両用シート装置は、第1発明~第3発明のいずれかの車両用シート装置において、シート本体を、車両前向きの一般位置とドア開口部を向く乗降位置間を回転させる回転装置を備えている。そして一般位置を基準として、シート前端部側に設定されたチルト部位では、一対のガイド部のシート上下方向の距離が、シート前端に向かうにつれて次第に大きくなっている。本発明では、シート前端側のガイド部間の距離を次第に大きくしている。これにより、シート本体が、支持部のシート前端側、即ち、乗降位置ではドア開口部側で大きく傾くようになり、乗降性の確保に資する構成となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る第1発明によれば、シート本体を、より安定的にスライド移動させながら、所望の姿勢に変えられるようになる。また第2発明によれば、シート本体を、より確実に所望の姿勢に変えられるようになる。また第3発明によれば、シート本体を、更に安定的にスライド移動させながら、より確実に所望の姿勢に変えられるようになる。そして第4発明によれば、シート本体を、その乗降性を確保すべく、より安定的にスライド移動させながら、適切な位置で所望の姿勢に変えられるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】車両用シート装置を示す車両の斜視図である。
図2】一般位置の車両用シート装置の概略側面図である。
図3】ガイド部とチルト機構を示す車両用シート装置の概略透視側面図である。
図4】乗降位置の車両用シート装置の概略透視側面図である。
図5】回転装置の概略断面図である。
図6】ガイド部とチルト機構を示す車両用シート装置の概略透視斜視図である。
図7】車両用シート装置の概略透視上面図である。
図8】リンク部を示す車両用シート装置の概略拡大視斜視図である。
図9】摺動部を示す車両用シート装置の概略拡大透視側面図である。
図10】スライド移動時のシート本体を示す概略透視側面図である。
図11】従来の車両用シート装置の概略透視側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態を、図1図10を参照して説明する。各図には、便宜上、一般位置の車両用シート装置を基準として、その前後方向と左右方向と上下方向を示す矢線を適宜図示する。また各図では、車両用シート装置の主構成を図示し、他の構成を簡略化又は省略して図示する。また図3(一般位置の図)では、図4(乗降位置の図)との比較を容易とするため、支持部を斜めに図示している。そして図3図4及び図10では、便宜上、シート本体と支持部間の上下の距離(連結部の長さ寸法)を大きくして図示する。
【0014】
図1に示す車両用シート装置10は、車両2に搭載されるシート装置であり、車室2Rの前部左側の車両フロア3上に設置されている。また車両2では、車両用シート装置10の車両前側にフロントガラス4が設けられている。また車両用シート装置10の車両左側にドア開口部5が設けられており、このドア開口部5は、図示しないドアによって開閉可能に構成されている。そして車両用シート装置10は、図2に示すように、車両フロア3側に配設される基部11と、この基部11の上側位置でシート本体13を支持する支持部12とを備えている。
【0015】
ここで図2に示す基部11は、左右の前後スライド機構6を介して車両フロア3側に設置されている(図2では、便宜上、左側の前後スライド機構のみ図示する)。この前後スライド機構6は、車両フロア3上で車両前後方向に延びるロアレール7と、ロアレール7に沿って前後スライドするアッパレール8とを備えている。そしてアッパレール8上に基部11が配設されることで、この基部11が、ロアレール7に沿って車両前後方向に移動できるようになる。なおアッパレール8は、多段式ロック機構(図示省略)にて、ロアレール7に対して多段階でスライドロックできるように構成されている。そして基部11は、左右の前後スライド機構6に固定されることで、後述するシート本体13の回転移動に追従しないようになっている。
【0016】
また図2に示す支持部12は、基部11の上側位置に配設された状態で、シート本体13を支持している。ここでシート本体13は、座部となるシートクッション14と、背凭れとなるシートバック15とを備えている。シートクッション14は、側面視で前後に長い矩形に形成されており、支持部12上に配設されている。またシートクッション14の後部には、シートバック15が車両上側に向けて起立している。またシートクッション14とシートバック15との連結位置には、シートバック15の傾斜角度(リクライニング角度)を調整するリクライナ16が設けられている。そして支持部12の直上に配設されたシート本体13は、そのシートクッション14が支持部12の上面に沿うように配置されており、このときのシート本体13の姿勢が基本姿勢に相当する(図3参照)。
【0017】
また図2に示す基部11と支持部12間には、シート本体13を回転移動させる回転装置20(詳細後述)が配設されている。そして車両用シート装置10では、支持部12に支持されたシート本体13を、回転装置20の働きで、図1の二点破線で示す車両前向きの一般位置と、図1の実線で示すドア開口部5側を向く乗降位置間で回転移動させられるように構成されている(図1中、符号12Aで示す方向を参照)。
【0018】
また図3及び図4を参照して、支持部12とシート本体13とは、一対のガイド部31,32とチルト機構50(共に詳細後述)を介して連結されている。そして車両用シート装置10では、後述するように、乗降位置のシート本体13を、一対のガイド部31,32にガイドさせながらドア開口部5側にスライド移動させる。さらにチルト機構50の働きで、スライド移動したシート本体13を、その前部側が下側に傾いた前下がりのチルト姿勢に変位させる。この種のシート構成では、シート本体13を安定的にスライド移動させて、このシート本体13の意図しない動き(ガタつき等)を抑制できることが望ましい。そこで本実施例では、後述する一対のガイド部31,32(基準部位40とチルト部位41,42)及びチルト機構50によって、シート本体13を、より安定的にスライド移動させながら、所望の姿勢に変えられるようにした。以下、車両用シート装置10の各構成を、回転装置20、一対のガイド部31,32、チルト機構50、基準部位40及びチルト部位41,42の順に詳述する。
【0019】
[回転装置]
先ず、図2に示す回転装置20は、支持部12に支持されたシート本体13を一般位置と乗降位置間で回転移動させる装置である。この回転装置20は、図5に示すように、基部11上に固定された内輪21と、内輪21(外周側)に対して回転可能に支持された外輪22とを備え、この外輪22の上に支持部12が固定されている。また基部11又は支持部12には、内輪21に対して外輪22を回転させる駆動部(図示省略)が設けられている。そして支持部12に支持されたシート本体13を、内輪21及び外輪22の軸心回りに回転させることで、上方視で略90°基部11に対して回転させられるようになっている(図1中、符号12Aで示す方向を参照)。更に回転装置20では、基部11に対して内輪21の軸心が左側(ドア開口部側)に傾くように取付けられており、内輪21と外輪22とが回転するに従って支持部12が次第に前傾(チルト)するようになっている。これにより、支持部12を乗降位置に向けて回転移動させることで、この支持部12のシート前側が低くなるように傾斜させることができる(図4参照)。なお回転装置20による支持部12の回転移動は、図示しない回転ロック装置にてロックすることができる。
【0020】
[一対のガイド部]
次に、図3に示す支持部12には、スライド移動時のシート本体13をガイドする一対のガイド部(第一ガイド部31、第二ガイド部32)が設けられている。この第一ガイド部31と第二ガイド部32とは、図6及び図7に示すように支持部12のシート幅方向両側(左右)にそれぞれ設けられている(各図では、便宜上、右側の各部材に対応する符号を括弧付きで付す)。そして左右の各ガイド部31,32は、概ね同一の基本構成を有するため、以下に、シート左側の各ガイド部31,32を一例にその基本的な構成を説明する。第一ガイド部31は、シート本体13のスライド移動方向に沿うように、支持部12の上面に概ね沿った状態でシート前後方向に直線的に延びている。
【0021】
また図6及び図7に示す第二ガイド部32は、第一ガイド部31の車幅方向外側(左側)に配設された状態で、第一ガイド部31と概ね同方向に延びている。そして第二ガイド部32は、図3に示すようにシート上側に向けて山なりに曲げられることで、複数の曲げ部位(第一曲げ部位321,第二曲げ部位322)が形成されている。第一曲げ部位321は、第二ガイド部32の後端部からシート前側に延びていると共に、シート前側に向かうにつれて次第にシート上側に緩やかに曲げられている。また第二曲げ部位322は、第一曲げ部位321のシート前側に連続しており、支持部12のシート前端側に向かうように延びている。この第二曲げ部位322では、第二ガイド部32がシート前端に向かうにつれて次第にシート下側に曲げられており、この第二曲げ部位322の曲げ度合いは第一曲げ部位321よりも急である。
【0022】
[チルト機構]
次に、図3及び図4に示すチルト機構50は、上記したシート本体13を、基本姿勢と、基本姿勢から傾いたチルト姿勢間で変位させる機構である。このチルト機構50は、シート上下方向に延びる帯板状のリンク部51と、スライダ部52と、リンク部51とシート本体13とを連結する連結部53とから構成することができる。ここで図3に示す連結部53は、シート上下方向に延びるように形成されており、リンク部51とシート本体13とを連結している。即ち、連結部53の上部側は、シートクッション14の側部骨格を構成するクッションフレーム14Fの後部に締結や溶接などの手法で固定されている。また連結部53の下部側は、締結や溶接などの手法でリンク部51に固定されている。そして上記した構成によれば、シート本体13が、後述するリンク部51の傾き(傾動等)に連動するようになる。
【0023】
[リンク部]
また図3に示すリンク部51は、クッションフレーム14Fの後部側に連結されることで、基本姿勢のシート本体13が一般位置にある場合に、支持部12のシート後端部側に配置されている。そしてリンク部51は、その上端部510に向かうにつれて次第にシート後側に傾いた基本姿勢とされて、両ガイド部31,32間に渡されるように配設されている。ここでリンク部51は、各ガイド部31,32間に渡されればよく、その上下の寸法を過度に大きくしなくともよい。即ち、上記した構成では、支持部12とシート本体13とをリンク部材で連結する場合に比して、リンク部51の上下の寸法を小さくしてコンパクト化することができる。
【0024】
また図3に示すリンク部51の上端部510は、第一ガイド部31を摺動するスライダ部52に軸連結されることで、この第一ガイド部31に沿って移動できるようになっている。ここでスライダ部52は、図6及び図7に示すようにシート幅方向(左右)に延びる板状に形成されることで、左右の第一ガイド部31間に渡されている。また図8を参照して、スライダ部52には、その左右の位置に摺動脚部54aがシート下側に突出するように設けられており、この摺動脚部54aに設けられた摺動溝部540に、第一ガイド部31が摺動可能に嵌められている。またスライダ部52には、その左右の位置に受け部54bがシート上側に突出するように設けられており、この受け部54bの嵌込凹部541に、シート幅方向に延びる上軸材55が嵌装されている。そして上軸材55の端部側にリンク部51の上端部510が上下回動可能に軸支されることで、このリンク部51の上端部510が、スライダ部52と共に第一ガイド部31に沿って移動できるようになる。なおスライダ部52は、支持部12側に設けられた駆動部(図示省略)を作動させることでスライド移動するように構成できる。
【0025】
また図3に示すリンク部51の下端部511には、第二ガイド部32に沿って摺動する上下一対の摺動部56,57が設けられている。ここで図8及び図9を参照して、第二ガイド部32は、断面略逆L字形に形成されており、横壁状の上壁部32aと、この上壁部32aの右縁から直角に曲げられた縦壁状の側壁部32bとを有している。またリンク部51の下端部511には上下一対の摺動部56,57が軸支されている。この上側の摺動部56は、第二ガイド部32の上壁部32aの上面に摺動可能に配置され、下側の摺動部57は、上壁部32aの下面に摺動可能に配置されている。そして上下の摺動部56,57が第二ガイド部32に沿って摺動することで、各摺動部56,57の設けられたリンク部51の下端部511が第二ガイド部32に沿って移動できるようになる。
【0026】
こうして図3に示す支持部12では、上記したように、リンク部51が両ガイド部31,32に沿って移動できるように構成されている。このとき第一ガイド部31をシート前後方向(スライド移動方向)に直線的に延設することで、リンク部51とシート本体13とを安定的に移動させられるようになる。一方、第二ガイド部32は、その適宜の位置で第一ガイド部31との上下の距離を変えられるように交差する方向、即ち、シート前後方向且つ上下方向に曲げられている。これにより、支持部12には、両ガイド部31,32が所定のシート上下方向の距離で配置する基準部位40と、両ガイド部31,32が基準部位40とは異なる距離で配置するチルト部位(41,42)を設定できるようになる。
【0027】
[基準部位]
そこで図3に示す支持部12では、基本姿勢のシート本体13が一般位置にある場合を基準として、リンク部51が配置された支持部12のシート後端部側に基準部位40を設定する。そして基準部位40では、リンク部51の上端部510が位置する第一ガイド部31部分と、リンク部51の下端部511が位置する第二ガイド部32部分とが、所定の上下の距離(100)をあけて配置されている。
【0028】
[チルト部位]
また図3に示す支持部12では、第二ガイド部32が山なりに曲げられることで、複数のチルト部位(中間チルト部位41,前端チルト部位42)を形成できる。中間チルト部位41は、一般位置を基準として、基準部位40からシート前側に延びるように形成されている。そして中間チルト部位41では、第一曲げ部位321に位置する第二ガイド部32がシート前側且つシート上側に曲げられている。これにより、中間チルト部位41では、基準部位40に対して両ガイド部31,32間の上下の距離がシート前側に向かうにつれて次第に小さくなる。また前端チルト部位42は、中間チルト部位41のシート前側、即ち、支持部12の前端側に形成されている。そして前端チルト部位42では、第二曲げ部位322の前部側に位置する第二ガイド部32がシート前側且つシート下側に曲げられている。これにより、前端チルト部位42では、基準部位40に対して両ガイド部31,32間の上下の距離がシート前側に向かうにつれて次第に大きくなる。そして前端チルト部位42では、第二ガイド部32が相対的に急に曲げられることで、そのシート前端位置で両ガイド部31,32間の上下の距離(101)が最大となっている。
【0029】
[シート本体の位置変位]
図1及び図2を参照して、一般位置の車両用シート装置10では、そのシート本体13が、車両前向きの基本姿勢とされて、フロントガラス4を臨むように配置されている。そこで一般位置のシート本体13を、回転装置20の働きで乗降位置に回転移動させることにより、このシート本体13がドア開口部5側に向けられる。この状態でシート本体13を、支持部12のシート前側、即ち、ドア開口部5側にスライド移動させながら、基本姿勢から前下がりのチルト姿勢に変位させる(図4参照)。上記した構成では、シート本体13を、より安定的にスライド移動させることで、その意図しない動き(ガタつき等)を抑制できることが望ましい。
【0030】
そこで図3に示す車両用シート装置10では、その支持部12に、一対のガイド部31,32が所定のシート上下方向の距離で配置された基準部位40と、一対のガイド部31,32が基準部位40とは異なるシート上下方向の距離で配置されたチルト部位41、42とが設けられている。そしてシート本体13と連動して傾くリンク部51が、一対のガイド部31,32間に渡された状態とされて、一対のガイド部31,32の双方に沿って移動可能に取付けられている。上記した構成では、両ガイド部31,32の双方に沿ってリンク部51が移動する。これにより、リンク部51に連動するシート本体13を、両ガイド部31,32間の上下の距離にかかわらず、安定的にスライド移動させられるようになる。さらにシート本体13に連動するリンク部51を、基準部位40と各チルト部位41、42間で移動させることにより、各チルト部位41,42で、シート本体13を所望の向きに傾かせることが可能になる。そこで以下に、スライド移動時におけるシート本体13の挙動と、リンク部51の働きをより具体的に説明する。
【0031】
[シート本体の挙動とリンク部の働き]
上記した構成では、図3に示す基本姿勢のシート本体13をシート前側にスライド移動させることで、リンク部51が、基準部位40から中間チルト部位41に移動する。この中間チルト部位41では、上記したように第二ガイド部32がシート前側且つ上側に緩やかに曲げられることで、第一ガイド部31と第二ガイド部32間の上下の距離がシート前側に向かうにつれて次第に小さくなっている。このため図10に示すように、リンク部51が中間チルト部位41に沿ってシート前側に移動することで、そのリンク部51の下端部511が第二ガイド部32に沿って次第にシート上側に上昇するようになる。これにより、リンク部51は、その上端部510に対して下端部511がシート上側に上げられることで、シート後側に傾いた状態となる。またシート本体13は、連動するリンク部51がシート後側に傾くことで、次第に前部側が上側に上げられたチルト姿勢に変位するようになる。そしてシート本体13の前部側が上げられることで、乗降位置の支持部12が前傾した(チルトした)としても、シート本体13上の乗員を安定的に着座させておけるようになる。また上記した構成によると、シートクッション14の前部に位置する乗員の脚部が持ち上げられるため、乗員の脚部が車両フロア側に干渉し難くなる。
【0032】
次に、図4及び図10を参照して、シート本体13を更にスライド移動させることで、リンク部51が中間チルト部位41と前端チルト部位42の間の部位を移動するようになる。この両チルト部位41、42の間の部位には、図4に示すように、第二ガイド部32がシート前側且つ下側に曲げられた第二曲げ部位322の後部側が配置されている。このためリンク部51は、その下端部511が第二ガイド部32に沿って下側に下降することで次第に元の基本姿勢に戻り、またリンク部51に連動するシート本体13も基本姿勢に一担復帰する(図3中、二点破線で示す状態を参照)。
【0033】
つづいてシート本体13を、図4に示すように支持部12のシート前端部側にスライド移動させることで、リンク部51が前端チルト部位42を移動するようになる。この前端チルト部位42では、上記したように第二ガイド部32がシート前側且つ下側に曲げられることで、第一ガイド部31と第二ガイド部32間の上下の距離がシート前側に向かうにつれて次第に大きくなっている。このためリンク部51が前端チルト部位42に沿ってシート前側に移動することで、そのリンク部51の下端部511が第二ガイド部32に沿って次第にシート下側に下降するようになる。これにより、リンク部51は、その上端部510に対して下端部511が相対的にシート下側に下げられることで、シート前側に傾いた(起こし上げられた)状態となる。またシート本体13は、連動するリンク部51がシート前側に傾くことで、前部側が下側に傾いたチルト姿勢に変位するようになる。そしてシート本体13は、支持部12のシート前端部側において、最も前部が下降した前下がりのチルト姿勢となる。こうしてシート本体13を前下がりのチルト姿勢としてドア開口部5側に振り出すことで、乗降時の乗員の脚部を地上側に近づけられるようになり、優れた乗降性能の確保に資する構成となる。そして乗員が着座したシート本体13は、上記した動きと逆の動きで、元の基本姿勢(図3参照)に復帰するようになる。
【0034】
以上説明した通り本実施例では、シート上下方向に延びるリンク部51が、両ガイド部31,32間に渡された状態で各ガイド部31,32に沿って移動する。このためリンク部51と連動するシート本体13を、より安定的にスライド移動させられるようになる。そして支持部12では、基準部位40とチルト部位41,42とで両ガイド部31,32間のシート上下の距離が異なっている。これにより、シート本体13を両部位間でスライド移動させることにより、特定のチルト部位41,42(所望の位置)でリンク部51が傾くようになり、このリンク部51に連動するシート本体13を、基本姿勢から傾かせた状態にすることができる。このため本実施例によれば、シート本体13を、より安定的にスライド移動させながら、所望の姿勢に変えられるようになる。そして上記した構成では、支持部12とシート本体13とをリンク部材で連結する場合に比して、リンク部51をコンパクト化することができ、車両上下方向におけるスペースの確保が容易となる。
【0035】
更に本実施例のチルト部位41,42では、一対のガイド部31,32の一方の方向を適切に設定して両ガイド部31,32間の距離を変えることにより、リンク部51に連動するシート本体13を所望の位置で傾かせることができる。特に、本実施例のチルト部位41,42では、第一ガイド部31(一対のガイド部のいずれか一方)がスライド移動方向に沿って延びているため、この第一ガイド部31にガイドされたシート本体13を、更に安定的にスライド移動させられるようになる。そして第二ガイド部32(一対のガイド部のいずれか他方)の方向を適切に設定することで、両ガイド部31,32間の距離を変えられるようになる。そして本実施例では、シート前端側のガイド部31,32間の距離を次第に大きくしている。これにより、シート本体13が、支持部12のシート前端側、即ち、乗降位置ではドア開口部5側で大きく傾くようになり、乗降性の確保に資する構成となる。
【0036】
本実施形態の車両用シート装置は、上述した実施形態に限定されるものではなく、その他各種の実施形態を取り得る。本実施形態では、リンク部、各ガイド部、基準部位及びチルト部位の構成を例示したが、各部位の構成を限定する趣旨ではない。例えばリンク部は、第一ガイド部と第二ガイド部に直接的に摺動する(例えば摺動部を備えた)構成を有していてもよく、両ガイド部に間接的に摺動する(例えばスライダ部を介する)構成を有していてもよい。また基準部位におけるリンク部及びシート本体の姿勢(基本姿勢)は、車両用シート装置の構成に応じて適宜設定することができる。例えばシート本体の基本姿勢として、乗員の着座が可能な姿勢を挙げることができ、当該姿勢として、シート後部又はシート前部がやや下側に傾いた姿勢のほか、略水平な姿勢を例示できる。
【0037】
また基準部位とチルト部位とは、支持部の適宜の位置に設定することが可能である。そして支持部には、複数又は単数のチルト部位を設けることができ、例えば図3に示す前端チルト部位と中間チルト部位のいずれか一方のみを設けることもできる。またチルト部位は、第一ガイド部と第二ガイド部の少なくとも一方の方向を変えることでも形成できる。即ち、チルト部位では、第二ガイド部(例えばスライド移動方向に沿って延びる第二ガイド部)に対して第一ガイド部を交差する方向に延設することができる。また第一ガイド部と第二ガイド部とを、シート上下方向において互いに離れる方向(交差する方向)に延設することもできる。そして両ガイド部の少なくとも一方は、シート前後方向且つ上下方向に連続的(傾斜状)に曲げられていてもよく、段階的に(複数の傾斜角度で)曲げられていてもよく、段差的(階段状)に曲げられていてもよい。
【0038】
また本実施形態では、車両用シート装置の構成を例示したが、車両用シート装置の構成を限定する趣旨ではない。例えば回転装置の機構として、支持部をチルトさせない機構や、基部と着座部とをリンクを介して回転移動させる機構を採用することができる。また回転装置を備えた車両用シート装置を説明したが、その他の構成を備えた車両用シート装置にも本実施例の構成を適用することができる。例えば車両用シート装置では、シートクッションに対してシートバックを前倒しした状態として、車両の適宜の位置に移動させた(例えば車幅方向端部にスライド移動させた)のちに、シート本体を起こし上げることがある。このような場合にも、本実施例の構成を適用して、シート本体を、適宜の位置で起こし上げるようにチルトさせることができる。そして車両用シート装置は、車室内の適宜の位置に設置でき、一人用や複数人用のシート本体を有していてもよい。
【符号の説明】
【0039】
2 車両
2R 車室
3 車両フロア
4 フロントガラス
5 ドア開口部
6 前後スライド機構
7 ロアレール
8 アッパレール
10 車両用シート装置
11 基部
12 支持部
13 シート本体
14 シートクッション
14F クッションフレーム
15 シートバック
16 リクライナ
20 回転装置
21 内輪
22 外輪
31 第一ガイド部(本発明の一対のガイド部の一方)
32 第二ガイド部(本発明の一対のガイド部の他方)
32a 上壁部
32b 側壁部
321 第一曲げ部位
322 第二曲げ部位
40 基準部位
41 中間チルト部位
42 前端チルト部位
50 チルト機構
51 リンク部
510 (リンク部の)上端部
511 (リンク部の)下端部
52 スライダ部
53 連結部
54a 摺動脚部
540 摺動溝部
54b 受け部
541 嵌込凹部
55 上軸材
56 上側の摺動部
57 下側の摺動部
10X (従来の)車両用シート装置
70 ベース部材
71 回転部材
72 スライド部材
73 シート本体
74 ガイドレール
75 ガイドプレート
76 ガイド部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11