IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ニッタ・ハース株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-研磨布 図1
  • 特開-研磨布 図2
  • 特開-研磨布 図3
  • 特開-研磨布 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111933
(43)【公開日】2024-08-20
(54)【発明の名称】研磨布
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20240813BHJP
   B24B 37/20 20120101ALI20240813BHJP
【FI】
H01L21/304 622F
B24B37/20
H01L21/304 621E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023016674
(22)【出願日】2023-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】000116127
【氏名又は名称】ニッタ・デュポン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】川端 丈
【テーマコード(参考)】
3C158
5F057
【Fターム(参考)】
3C158AA07
3C158CA01
3C158CB03
3C158EB05
3C158ED00
5F057AA24
5F057BA12
5F057BB03
5F057CA22
5F057DA02
5F057EB04
5F057EB05
(57)【要約】
【課題】本発明は、シリコンウェーハのノッチ部を研磨する際、比較的短い状態で髭状体を脱落させることができる研磨布を提供する。
【解決手段】本発明に係る研磨布1は、シリコンウェーハのノッチ部を研磨するために用いられ、不織布と、該不織布に含侵された樹脂と、を備えた円環板状の研磨布1であって、第1面3aと、該第1面3aとは反対面となる第2面3bと、回転させて前記ノッチ部に摺接させる外周縁部2と、を備え、第1面3a及び第2面3bには、それぞれ複数の穴4が形成され、複数の穴4が、前記回転における移動方向に対して交差する方向に長く延びた形状を有している。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコンウェーハのノッチ部を研磨するために用いられ、不織布と、該不織布に含侵された樹脂と、を備えた円環板状の研磨布であって、
第1面と、該第1面とは反対面となる第2面と、回転させて前記ノッチ部に摺接させる外周縁部と、を備え、
前記第1面及び前記第2面には、それぞれ複数の穴が形成され、
前記複数の穴が、前記回転における移動方向に対して交差する方向に長く延びた形状を有している、研磨布。
【請求項2】
前記複数の穴が、2以上の異なる方向に沿って延びる、請求項1に記載の研磨布。
【請求項3】
厚み方向の断面において、前記第1面及び前記第2面には、径方向に連続して、対となる位置に前記穴が形成されていない、請求項1又は2に記載の研磨布。
【請求項4】
前記穴の深さが、前記研磨布の厚みに対して、0.1%以上50%以下である、請求項1又は2に記載の研磨布。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨布に関する。
【背景技術】
【0002】
IC(Integrated Circuit)、LSI(Large Scale Integration)、VLSI(Very Large Scale Integration)等の半導体を用いた集積回路の原材料となるシリコンウェーハは、極めて高い平面度及び平行度が要求される板状材料である。そのため、シリコンウェーハは、その製造工程において、回転可能な定盤、又は、表面に研磨パッドを貼付した回転可能な定盤によるラッピング加工機又はポリシング加工機を用いて平面加工が行われている。
【0003】
単結晶であるシリコンウェーハには、その結晶方位を示すため、オリエンテーションフラット、又は、ノッチ部が必ず形成されている。近年では、製品の収率、歩留まり等を向上させるため、ウェーハ表面積の損失がオリエンテーションフラットよりも少ないノッチ部を形成することが多い。なお、ノッチ部は、シリコンウェーハの外周縁に形成される小さい切り欠きであり、V字状、U字状等の形状を有する。
【0004】
シリコンウェーハの加工では、シリコンウェーハのパターン形成面と同様に、ノッチ部においても、チッピング防止、ダストの巻き込み防止等を目的として鏡面加工が施される。ノッチ部の鏡面加工には、ノッチ部専用の研磨パッドが用いられていて、例えば、不織布と、該不織布に含侵された樹脂と、を備えた環状の研磨布が知られている。
【0005】
このような研磨布は、ノッチ部の形状に対応した形状を有する外周縁部を備える。研磨時には、スラリーを供給すると共に、該外周縁部をシリコンウェーハのノッチ部に押し当てることにより、加工が行われる。ところが、研磨加工を進めるうちに、ノッチ部によって繊維及び樹脂の一部が掻き取られて、研磨布の外周縁部に毛羽が発生しやすくなる。この毛羽は、繊維が長く、繊維同士の結びつきが強いことに加え、樹脂によってその結びつきが強化されるため、研磨中に取れづらく、また、研磨が進むにつれて髭が伸びたような髭状体を形成する。この髭状体は、研磨布全体の形を崩すだけでなく、研磨布の回転によって鞭のようにしなり、シリコンウェーハの表面や端面に接触する。その結果、本来磨きたくない部位まで研磨がなされ、シリコンウェーハの歩留まりを悪化させてしまうという問題があった。
【0006】
そのため、近年では、この髭状体を除去するための技術が種々提案されている。例えば、特許文献1では、研磨パッドの外周縁部の近傍で、研磨パッドの両側面に形成され、研磨パッドの外周と実質的に同心の、連続あるいは断続した切り込み部を備えた研磨パッドが開示されている。特許文献1の研磨パッドでは、発生した髭状体の根本が前記切り込み部に達することで、該髭状体が研磨パッドから剥がれ落ちる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010-82754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の研磨パッドでは、該研磨パッドの外周と実質的に同心の、連続あるいは断続した切り込み部を備えるため、発生した髭状体が、該髭状体よりも内周側に形成された切り込み部に到達するまで脱落せずに成長が進み、比較的長い髭状体が形成される虞があった。
【0009】
本発明は、このような現状に鑑み、シリコンウェーハのノッチ部を研磨する際、比較的短い状態で髭状体を脱落させることができる研磨布を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る研磨布は、シリコンウェーハのノッチ部を研磨するために用いられ、不織布と、該不織布に含侵された樹脂と、を備えた円環板状の研磨布であって、第1面と、該第1面とは反対面となる第2面と、回転させて前記ノッチ部に摺接させる外周縁部と、を備え、前記第1面及び前記第2面には、それぞれ複数の穴が形成され、前記複数の穴が、前記回転における移動方向に対して交差する方向に長く延びた形状を有している。
【0011】
前記研磨布は、前記回転における移動方向に対して交差する方向に長く延びた形状を有する複数の穴が形成されていることにより、該研磨布を回転させてシリコンウェーハのノッチ部を研磨する際、発生した髭状体の根本が該穴に達すると、該髭状体の根本に応力が集中しやすくなるため、比較的短い状態で髭状体を脱落させることができる。
【発明の効果】
【0012】
以上より、本発明によれば、シリコンウェーハのノッチ部を研磨する際、比較的短い状態で髭状体を脱落させることができる研磨布を提供し得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本実施形態に係る研磨布1の正面図である。
図2図2は、図1における領域IIの拡大図である。
図3図3は、図1におけるIII-III線の断面図である。
図4図4は、本実施形態に係る研磨布1を用いて、シリコンウェーハ5のノッチ部6を研磨する工程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本実施形態に係る研磨布について説明する。なお、以下の図面において同一又は相当する部分には同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0015】
図1は、本実施形態に係る研磨布1の正面図である。図2は、図1における領域IIの拡大図である。図3は、図1におけるIII-III線の断面図である。なお、図1では、複数の穴4(後述)を図示していない。
【0016】
図1~3に示すように、本実施形態に係る研磨布1は、所定の厚みを有する板状に構成され、平面視(図1中のXY平面視)において円形の環状(ドーナツ状)に形成されている。すなわち、本実施形態に係る研磨布1は、円環板状である。
【0017】
研磨布1は、回転させてシリコンウェーハのノッチ部(後述)に摺接させる外周縁部2を備える。外周縁部2は、前記ノッチ部の形状に対応した形状を有する。すなわち、研磨布1の外周縁部2は、研磨布1の厚み方向(図3中のZ方向)の断面において、シリコンウェーハのノッチ部の輪郭とほぼ一致する形状を有する。外周縁部2は、研磨布1の平面(図1中のXY平面)に沿う方向の最も外方に位置する先端部を有する。外周縁部2の先端部は、厚み方向(図3中のZ方向)の断面形状が鋭角のV字状に形成されている。
【0018】
また、研磨布1は、第1面3aと、該第1面3aとは反対面となる第2面3bと、を備える。
【0019】
第1面3a及び第2面3bのうち少なくとも外周縁部2の近傍には、それぞれ、回転における移動方向(すなわち、研磨布1の周方向)に対して交差する方向に長く延びた形状を有する複数の穴4が形成されている。そして、複数の穴4は、2以上の異なる方向に沿って延びている。穴4は、有底の穴であり、厚み方向から見て、長方形状である。また、図3に示すように、厚み方向(図3中のZ方向)の断面において、第1面3a及び第2面3bには、厚み方向のズレを小さくする観点から、径方向に連続して、対となる位置に穴4が形成されていない。すなわち、第1面3a及び第2面3bには、対となる位置に穴4が形成されていてもよいが、この一対の穴4と隣り合う一の穴4は、対となる位置に他の穴4が形成されていない。なお、径方向とは、研磨布1の回転軸を中心とした半径に沿う方向である。
【0020】
穴4の深さは、短い状態で髭状体を脱落させる観点から、研磨布1の厚みに対して、好ましくは0.1%以上であり、より好ましくは0.5%以上であり、さらに好ましくは1%以上である。穴4の深さは、剛性を高めて厚み方向のズレを小さくする観点から、研磨布1の厚みに対して、好ましくは50%以下であり、より好ましくは40%以下であり、さらに好ましくは30%以下である。穴4の深さは、例えば、0.04mm以上2.25mm以下とすることができる。
【0021】
側面3において穴4が形成される密度は、短い状態で髭状体を脱落させる観点から、好ましくは1個/cm以上であり、より好ましくは2個/cm以上であり、さらに好ましくは3個/cm以上である。また、厚み方向(図3中のZ方向)から見て、側面3に形成された穴4の面積は、剛性を保ち厚み方向のズレを小さくする観点から、側面3全体に対して、好ましくは20%以下であり、より好ましくは10%以下であり、さらに好ましくは5%以下である。
【0022】
穴4の形状は、図3に示すように、奥行き方向に向かって縮径する錐体状に形成されている。
【0023】
研磨布1の厚みは、例えば、3mm以上6mm以下とすることができる。
【0024】
研磨布1の見掛け密度は、好ましくは0.30g/cm以上0.55g/cm以下であり、より好ましくは0.35g/cm以上0.50g/cm以下であり、さらに好ましくは0.35g/cm以上0.45g/cm以下である。なお、見掛け密度は、JIS K7222:2005に基づいて測定できる。
【0025】
研磨布1は、不織布と、該不織布に含侵された樹脂と、を備える。
【0026】
研磨布1を構成する不織布としては、シリコンウェーハの種類、望まれる研磨特性等によって適宜選択すればよく、例えば、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリアミド繊維で構成される不織布を好適に用いることができる。
【0027】
不織布に含浸させる樹脂としては、シリコンウェーハの種類、望まれる研磨特性等によって適宜選択すればよく、例えば、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等の合成樹脂を好適に用いることができる。
【0028】
本実施形態に係る研磨布は、上記のように構成されているので、以下の利点を有するものである。
【0029】
即ち、本実施形態に係る研磨布1は、前記回転における移動方向に対して交差する方向に長く延びた形状を有する複数の穴4が形成されていることにより、該研磨布1を回転させてシリコンウェーハのノッチ部を研磨する際、発生した髭状体の根本が該穴4に達すると、該髭状体の根本に応力が集中しやすくなるため、比較的短い状態で髭状体を脱落させることができる。
【0030】
また、本実施形態に係る研磨布1は、複数の穴4が、2以上の異なる方向に沿って延びることにより、発生した髭状体の根本により応力を集中させやすくなるため、より短い状態で髭状体を脱落させることができる。
【0031】
また、本実施形態に係る研磨布1は、厚み方向の断面において、第1面3a及び第2面3bには、径方向に連続して、対となる位置に穴4形成されていないため、剛性が高く、シリコンウェーハのノッチ部を研磨する際、厚み方向のズレが比較的小さい。
【0032】
また、本実施形態に係る研磨布1は、穴4の深さが、研磨布1の厚みに対して0.1%以上50%以下であることにより、比較的短い状態で髭状体を脱落させることができると共に、厚み方向のズレを比較的小さくすることができる。
【0033】
次に、本実施形態に係る研磨布の製造方法の一例について説明する。
【0034】
まず、ウレタン樹脂を溶媒に溶解させて含浸溶液を調製する。湿式のウレタン樹脂を、ジメチルホルムアミド(DMF)等の溶媒に混合して、ウレタン樹脂を溶解させて、含浸溶液としてのウレタン樹脂溶液を調製する。
【0035】
含浸溶液としてのウレタン樹脂としては、ポリエステル系、ポリエーテル系、ポリカーボネート系等のウレタン樹脂を用いることができ、異なる2種類のウレタン樹脂を併用してもよい。
【0036】
ウレタン樹脂を溶解させる溶媒としては、上述のジメチルホルムアミドの他、例えば、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、ジメチルアセトアミド等の溶媒を用いることができる。
【0037】
続いて、研磨布1の基材としてフェルト等の不織布を用い、含浸溶液調製工程で調製したウレタン樹脂含浸溶液に基材を含浸させる。
【0038】
容器内に満たしたウレタン樹脂含浸溶液に不織布を浸漬させ、所定時間経過後に引き上げ、マングル等の絞り装置で余分な含浸溶液を除去する。
【0039】
次に、含浸溶液を適量含浸させた不織布を凝固水中で凝固して、ウレタン樹脂を湿式凝固させる。
【0040】
その後、水で洗浄して含浸溶液の溶媒を除去した後、乾燥させる。そして、ウレタン樹脂が含浸、凝固した不織布について、厚み方向の両側に位置する一対の側面を平面研削(バフ)、又は、熱プレスして多孔質体の研磨布を得る。凝固水は、不織布である基材にウレタン樹脂を固化させ、定着させるための液体であり、特に制限はないが、半導体デバイス等の製造工程での使用を考慮すると、例えば、純水、超純水、イオン交換水、蒸留水等が好ましく、必要に応じて、DMF等を加えてもよい。
【0041】
続いて、第1面3a及び第2面3bにそれぞれ複数の穴4を形成する。穴4は、例えば、ステンレス刃が出ているニードルローラーを用いて、側面3に圧力を掛けながら這わせることにより形成することができる。また、他の方法として、例えば、金型を用いた両面プレス、エンボス、レーザー等により穴4を形成することができる。
【0042】
次に、本実施形態に係る研磨布を用いて、シリコンウェーハのノッチ部を研磨する方法の一例について説明する。図4は、本実施形態に係る研磨布1を用いて、シリコンウェーハ5のノッチ部6を研磨する工程を示す説明図である。
【0043】
シリコンウェーハ5は、板厚の薄い円盤形状を有する。図4に示すように、シリコンウェーハ5の外周縁部には、その結晶方位を示すため、V字状のノッチ部6が形成されている。なお、ノッチ部6の形状は、U字状等であってもよい。
【0044】
まず、図4に示すように、研磨布1の外周縁部2をシリコンウェーハ5のノッチ部6に嵌合させ、研磨粒子を分散させたスラリーを供給する。そして、研磨布1の外周縁部2をノッチ部6に押し当て、研磨布1を回転させることにより研磨加工が行われる。研磨加工を進めるうちに、ノッチ部6によって繊維及び樹脂の一部が掻き取られて、研磨布1の外周縁部2に髭状体7が発生する。この髭状体7は、根本が側面3に形成された穴4に到達することで脱落する。
【0045】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明に係る研磨布は本実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えることができる。また、上記及び下記の複数の実施形態の構成等を任意に採用して組み合わせてもよい(1つの実施形態に係る構成等を他の実施形態に係る構成等に適用してもよい)ことは勿論である。また、本発明に係る研磨布は、上記した作用効果によっても限定されるものでもない。
【0046】
本実施形態に係る研磨布1において、外周縁部2の先端部は、厚み方向の断面形状が鋭角のV字状に形成されている。しかしながら、本発明は当該構成に限定されるものではなく、外周縁部2の先端部は、シリコンウェーハのノッチ部の形状に対応した形状であれば、厚み方向の断面形状が鈍角のV字状に形成されていてもよいし、U字状に形成されていてもよい。
【0047】
本実施形態に係る研磨布1において、複数の穴4は、第1面3a及び第2面3bのうち少なくとも外周縁部2の近傍に形成されている。しかしながら、本発明は当該構成に限定されるものではなく、例えば、複数の穴4が、第1面3a及び第2面3bの全体に亘って形成されていてもよい。
【0048】
本実施形態に係る研磨布1において、厚み方向から見た穴4の形状は、長方形状である。しかしながら、本発明は当該構成に限定されるものではなく、厚み方向から見た穴4の形状は、例えば、楕円形状、長方形以外の多角形状等であってもよい。
【0049】
本実施形態に係る研磨布1において、複数の穴4は、厚み方向(図3中のZ方向)から見て、2以上の異なる方向に沿って延びている。しかしながら、本発明は当該構成に限定されるものではなく、複数の穴4は、回転における移動方向に対して交差する方向延びていれば、同一の方向に沿って延びていてもよい。
【0050】
本実施形態に係る研磨布1において、穴4の形状は、奥行き方向に向かって縮径する錐体状に形成されている。しかしながら、本発明は当該構成に限定されるものではなく、穴4の形状は、例えば、柱体状に形成されていてもよい。
【0051】
本開示は、以下の態様を含む。
[1]シリコンウェーハのノッチ部を研磨するために用いられ、不織布と、該不織布に含侵された樹脂と、を備えた円環板状の研磨布であって、
第1面と、該第1面とは反対面となる第2面と、回転させて前記ノッチ部に摺接させる外周縁部と、を備え、
前記第1面及び前記第2面には、それぞれ複数の穴が形成され、
前記複数の穴が、前記回転における移動方向に対して交差する方向に長く延びた形状を有している、研磨布。
[2]前記複数の穴が、2以上の異なる方向に沿って延びる、[1]に記載の研磨布。
[3]厚み方向の断面において、前記第1面及び前記第2面には、径方向に連続して、対となる位置に前記穴が形成されていない、[1]又は[2]に記載の研磨布。
[4]前記穴の深さが、前記研磨布の厚みに対して、0.1%以上50%以下である、[1]~[3]のいずれか一つに記載の研磨布。
【実施例0052】
次に、実施例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。
【0053】
(実施例1)
ポリエステル繊維で構成される不織布に、ウレタン樹脂を含浸させた研磨布を用いた。研磨布の厚みは、4.5mmであり、平面視における大きさは、外径が200mm、内径が152mmであった。また、研磨布の見掛け密度は、0.41g/cmであった。
【0054】
該研磨布の第1面及び第2面には、ニードルローラーを用いて、圧力を掛けながら這わせることにより、回転における移動方向に対して交差する方向に沿って延びる複数の穴を形成した。ニードルローラーとしては、直径43mm、幅60mmのローラーに、複数のステンレス刃が飛び出るように設計されたものを用いた。ステンレス刃は、高さ1.5mm、幅0.6mmであり、隣り合う刃との間隔が5mmであった。このようにして形成された穴は、平面視において、長さ0.3~1.2mm(n=3における平均値:0.5mm)×幅0.1~0.4mm(n=3における平均値:0.2mm)の長方形状であった。また、穴は、奥行き方向に向かって縮径する錐体状に形成されていて、その深さが0.1~0.7mmであった。すなわち、穴の深さは、研磨布の厚みに対して、2~16%であった。さらに、側面に形成された穴の面積は、側面全体に対して、1%であった。以上により、実施例1の研磨布を作製した。
【0055】
(穴の大きさ及び形状の測定)
穴の大きさ及び形状は、下記条件において、CCD測定を行うことにより得た。
測定器:VHX-5000 ver 1.3.2.4 System Ver 1.04
カメラユニット:VHX-5100
レンズ:Keyence VH-Z100UR
スタンド:VHX-S500(フリーアングル観測システム)
倍率:×100倍
傾斜角度:0度
撮影サイズ:標準1600×1200
測定視野角:約10000um×10000um
画像連結により→5枚×7枚を連結して撮影(約11mm角)
但し、画像端の500um程度のデータは暗い領域と判定されるため、使用しない。
【0056】
撮影時の設定は、下記条件において行った。
シャッタースピード:オート 70
ゲイン:プレセット:0dB
ホワイトバランス:プッシュセット
落射照明:ON
ステージ等価照明:OFF
照明切り替え:リング照明
エッジ協調:ON
ガンマ:OFF
オフセット:OFF
モノクロ:OFF
鮮鋭画像モード:OFF
視野補正:OFF
【0057】
CCD測定は、下記の手順で行った。
(1)サンプルを撮影台に両面テープを使用し、固定する。
(2)VHXのアプリケーションから“画像改善”を選択し、表示される9つのから二行、三列を選択。この選択により上記の設営時の設定に反映される。
(3)“画像連結”を選択し、3D連結測定を選択。“範囲を指定して連結する”から、撮影枚数を5×7で設定する(11mm角程度の視野角)。Z方向の合成範囲は厚みにより異なるが、ピントが合う位置から±500~1000μm程度で設定する。表面の状態によりこの限りではない。その後、連結開始を選択。
(4)画像が連結されていることを確認し、撮影ボタンにより、画像を撮影する。
(5)“アルバム”を選択し、撮影した画像を開く。
(6)“計測スケール”から、“最大面積取得”を選択。
(7)Step1:領域の抽出では抽出対象を“暗い領域”を選択。加工された部位を手動で選択する。
(8)Step2:計測結果の表示にて、“外接矩形”を選択。選択した範囲の加工形状が表示される。
【0058】
(穴の深さの測定)
穴の深さは、X線CT測定を行うことにより得た。CT装置としては、ヤマト科学株式会社製の三次元計測X線CT装置(TDM1000H-1)を用いることができる。また、CT画像処理ソフトとしては、日本ビジュアルサイエンスボリュームグラフィックス株式会社製の画像処理ソフトVGStudio Max 2.1を用いることができる。
【0059】
前記測定においては、以下の視野の大きさで、研磨布の第1面及び第2面でそれぞれ5か所の測定領域を連続測定した。視野の大きさ(縦×横×高さ)は、11,777μm×11,777μm×11,823029μmであった。
【0060】
測定条件は、以下の通りである。
1回転あたりのビュー数 : 1500
フレーム数/ビュー : 10
X線管電圧[KV] : 33.000
X線管電流[mA] : 0.092
拡大軸位置[mm] : 100.000
再構成画素サイズX[mm]:0.023002
再構成画素サイズY[mm]:0.023002
再構成画素サイズZ[mm]:0.023002
【0061】
なお、穴深さの測定においては、VGStudio Max 2.1の“インスツルメント”より、“距離”を選択し、穴の深さを測定した。
【0062】
実施例1の研磨布は、回転における移動方向に対して交差する方向に長く延びた形状を有する複数の穴が形成されているため、該研磨布を回転させてシリコンウェーハのノッチ部を研磨する際、発生した髭状体の根本が該穴に達すると、該髭状体の根本に応力が集中しやすくなり、比較的短い状態で髭状体を脱落させることができると言える。
【符号の説明】
【0063】
1 研磨布
2 外周縁部
3a 第1面
3b 第2面
4 穴
5 シリコンウェーハ
6 ノッチ部
7 髭状体
図1
図2
図3
図4