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特開2024-111939照射ターゲット、及びターゲットカプセル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111939
(43)【公開日】2024-08-20
(54)【発明の名称】照射ターゲット、及びターゲットカプセル
(51)【国際特許分類】
   G21G 1/02 20060101AFI20240813BHJP
   G21F 5/00 20060101ALI20240813BHJP
   G21K 5/08 20060101ALI20240813BHJP
【FI】
G21G1/02
G21F5/00
G21K5/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023016685
(22)【出願日】2023-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】小林 高揚
(72)【発明者】
【氏名】高橋 静香
(72)【発明者】
【氏名】那須 拓哉
(57)【要約】
【課題】放射性同位体の製造コストを低減する。
【解決手段】照射ターゲットは、放射性同位体の原料であるRI(Radioisotope)原料からなり、内部に中空部が形成されたターゲット本体を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射性同位体の原料であるRI(Radioisotope)原料からなるとともに、内部に前記RI原料の配置されていない中央部が形成されたターゲット本体を備える照射ターゲット。
【請求項2】
前記ターゲット本体は、軸線に沿って延びる筒状に形成されている
請求項1に記載の照射ターゲット。
【請求項3】
前記ターゲット本体は、前記軸線に沿う軸方向の少なくとも一方側に形成され、前記中央部を塞ぐ閉塞部を有する
請求項2に記載の照射ターゲット。
【請求項4】
前記中央部は、前記ターゲット本体とは異なる材料から形成されている
請求項2又は3に記載の照射ターゲット。
【請求項5】
前記ターゲット本体は、焼結体からなる
請求項1又は2に記載の照射ターゲット。
【請求項6】
前記ターゲット本体を収容し、前記軸線に沿う軸方向に延びる筒部、及び前記筒部の前記軸方向の一方側を閉塞する底部を有する容器本体と、
前記筒部の径方向の内側に形成されて前記底部から前記軸方向の他方側に延び、前記ターゲット本体とは異なる材料から形成された前記中央部としての芯部と、
前記筒部の前記軸方向の他方側を閉塞する蓋体と、を有した容器を更に備える
請求項2に記載の照射ターゲット。
【請求項7】
前記ターゲット本体は、粉末状であり、前記筒部と前記芯部との間に充填されている
請求項6に記載の照射ターゲット。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の照射ターゲットと、
前記照射ターゲットを収容するカプセルと、を備える
ターゲットカプセル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、照射ターゲット、及びターゲットカプセルに関する。
【背景技術】
【0002】
医療用や工業用等の用途に、放射性同位体を用いることが知られている。放射性同位体は、例えば、放射性同位体の原料を原子炉の計装管に挿入して、原料に中性子を照射させることで製造される。
特許文献1には、放射性同位体の原料を原子炉の計装管に挿入する際に用いるカプセルユニットが開示されている。このカプセルユニットは、放射性同位体の原料であるRI(Radioisotope)原料がカプセルに収納された構成を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-73336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の構成では、原子炉内で中性子を照射する際、半減期が短く、中性子の照射期間が短い場合には、カプセルを透過した中性子が、カプセル内の中心部に到達しないことがある。中性子は、カプセル内の外周部分に位置する原料にのみ照射され、カプセル内の中心部に位置する原料には、中性子が照射されない。その結果、カプセル内の中心部に位置する原料が、放射性同位体の形成に寄与しないことになる。放射性同位体の原料は、高価であるため、製造コスト低減の余地がある。
【0005】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、放射性同位体の製造コストを低減することができる照射ターゲット、及びターゲットカプセルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示に係る照射ターゲットは、ターゲット本体を有する。前記ターゲット本体は、放射性同位体の原料であるRI原料からなる。前記ターゲット本体には、内部に前記RI原料の配置されていない中央部が形成されている。
【0007】
本開示に係るターゲットカプセルは、上記したような照射ターゲットと、カプセルと、を備える。前記カプセルは、前記照射ターゲットを収容する。
【発明の効果】
【0008】
本開示の照射ターゲット、及びターゲットカプセルによれば、放射性同位体の製造コストを低減することができることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の第一実施形態に係る照射ターゲットを示す斜視図である。
図2】本開示の第一実施形態に係る照射ターゲットを製造する際に形成される成形体の一例を示す斜視図である。
図3】本開示の第一実施形態に係る照射ターゲット、及びターゲットカプセルを示す断面図である。
図4】本開示の実施形態に係る照射ターゲットに中性子を照射する原子炉の概略構成を示す図である。
図5】本開示の実施形態に係るターゲットカプセルを計装管に挿入した状態を示す図である。
図6】本開示の第一実施形態の変形例に係る照射ターゲットを収容したターゲットカプセルを示す断面図である。
図7】本開示の第二実施形態に係る照射ターゲットを示す斜視図である。
図8】本開示の第二実施形態に係る照射ターゲットの断面図である。
図9】本開示の第二実施形態に係る照射ターゲットを製造する際に用いる成形型の一例を示す断面図である。
図10】本開示の第二実施形態に係る照射ターゲットを製造する際、成形型と芯体との隙間にRI原料を充填した状態を示す断面図である。
図11】本開示の第二実施形態に係る照射ターゲットを収容したターゲットカプセルを示す断面図である。
図12】本開示の第三実施形態に係る照射ターゲットを示す斜視図である。
図13】本開示の第三実施形態に係る照射ターゲットの断面図である。
図14】本開示の第三実施形態に係る照射ターゲットを収容したターゲットカプセルを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態に係る照射ターゲット、及びターゲットカプセルについて、図1図14を参照して説明する。
<第一実施形態>
(照射ターゲットの構成)
図1に示すように、この第一実施形態の照射ターゲット1Aは、ターゲット本体2Aを有する。ターゲット本体2Aは、放射性同位体の原料であるRI(Radioisotope)原料から形成されている。この第一実施形態におけるターゲット本体2Aは、粉末状のRI原料を焼結させることで形成された焼結体である。ターゲット本体2Aの外径は、例えば、数mm~1000mmにすることができる。なお、第一実施形態における照射ターゲット1Aは、ターゲット本体2Aのみにより形成されている。
【0011】
照射ターゲット1Aは、後述する原子炉容器101内で中性子束に曝露されることで、放射性同位体に変換される。RI原料は、例えば、モリブデン‐98を用いることができる。RI原料は、中性子束が照射されることで、放射性同位体として、モリブデン‐99となる。
【0012】
RI原料は、モリブデンを例示するが、これに限定されない。RI原料は、例えば、クロム‐50、銅‐63、ジスプロシウム‐164、エルビウム‐168、ホルミウム‐165、ヨウ素‐130、イリジウム‐191、鉄‐58、ルテチウム‐176、パラジウム‐102、リン‐31、カリウム‐41、レニウム‐185、サマリウム‐152、セレン‐74、ナトリウム‐23、ストロンチウム‐88、イッテルビウム‐168、イッテルビウム‐176、イットリウム‐89、のうち少なくとも1つであってよい。
【0013】
上記のRI原料に中性子束が照射されることで、放射性同位体として、それぞれ、クロム‐51、銅‐64、ジスプロシウム‐165、エルビウム‐169、ホルミウム‐166、ヨウ素‐131、イリジウム‐192、鉄‐59、ルテチウム‐177、パラジウム‐103、リン‐32、カリウム‐42、レニウム‐186、サマリウム‐153、セレン‐75、ナトリウム‐24、ストロンチウム‐89、イッテルビウム‐169、イッテルビウム‐177、イットリウム‐90、が製造される。
【0014】
この実施形態では、放射性同位体が得られるまでの中性子束の照射期間が、1年以内、好ましくは照射期間が100日以内であるRI原料により、ターゲット本体2Aを形成している。得られる放射性同位体の半減期の場合、半減期が1年以内、好ましくは半減期が100日以内としてもよい。
【0015】
ターゲット本体2Aは、軸線Oに沿う軸方向Daに延びる筒状に形成されている。この実施形態において、ターゲット本体2Aは、軸線Oを中心として軸方向Daに延びる円筒状に形成されている。すなわち、本実施形態のターゲット本体2Aは、軸線Oを中心として軸方向Daに延びる断面円形の内周面2hを有している。この内周面2hの内側は、RI原料の配置されていない中空部3A(中央部)とされている。第二実施形態で例示するターゲット本体2Aの直径、及び内周面2hの直径は、軸方向Daの全域で一定の場合を示しているが、これらターゲット本体2Aの直径、及び内周面2hの直径は、軸方向Daで変化してもよい。
【0016】
ターゲット本体2Aにおいて、ターゲット本体2Aの外径D2に対する中空部3A(中央部)の内径D3の比率(D3/D2)は、
10%≦D3/D2<100%
となるように設定することができる。
さらに、上記比率(D3/D2)は、
30%≦D3/D2≦99%
とすることができる。さらに、上記比率(D3/D2)は、
50%≦D3/D2≦99%
としてもよい。
【0017】
ここで、後述の原子炉容器101内で中性子束に曝露されることで、放射性同位体の形成に寄与するRI原料は、ターゲット本体2Aにおいて、軸線Oを中心とした径方向Drの外側Droを向く外周面2fから、径方向Drの内側Driに向かった一部の領域のみである。つまり、ターゲット本体2Aは、外周面2fから径方向Drの内側Driに向かって中性子束が到達するだけの径方向Drの厚さtを少なくとも有していればよい。この厚さtの最小値は、実質的に、RI原料の原子サイズに近似する。このため、上記の比率(D3/D2)は、なるべく大きくするのが好ましい。
【0018】
図2は、本開示の第一実施形態に係る照射ターゲットを製造する際に形成される成形体の一例を示す斜視図である。
上記のような照射ターゲット1Aを製造するには、例えば、図2に示すように、粉末状のRI原料を焼結することによって、円柱状の成形体4を形成する。その後、成形体4の中心部を切削等により削ることで、図1に示すように、内周面2hを形成することができる。これにより、内周面2hの径方向Drの内側Driに中空部3Aが配置された表皮構造物のターゲット本体2A(照射ターゲット1A)となる。
【0019】
図3は、本開示の第一実施形態に係る照射ターゲット、及びターゲットカプセルを示す断面図である。
上記照射ターゲット1Aは、原子炉容器101内に挿入される際、例えば、図3に示すようなターゲットカプセル10Aのカプセル11内に収容される。ターゲットカプセル10Aは、上記照射ターゲット1Aと、照射ターゲット1Aを収容するカプセル11と、を備えている。
【0020】
カプセル11は、例えば、ターゲット本体2Aが収納される収納空間11sが内部に形成される中空の部材である。カプセル11は、筒部12と、蓋部13とを一体に有している。筒部12は、軸線O方向に延びる円筒状に形成されている。筒部12の内周面に囲われる空間が、収納空間11sとなる。蓋部13は、筒部12の軸方向Daの両端部に設けられている。蓋部13は、筒部12の軸方向Daの両端部の開口を塞いでいる。収納空間11sは、カプセル11内で、筒部12と、軸方向Da両端部の蓋部13とに囲まれて形成されている。カプセル11は、例えば、アルミニウム、ケイ素、ステンレス鋼等、ターゲット本体2Aとは異なる材料で、かつある程度の強度を有する材料で形成されている。
【0021】
図4は、本開示の実施形態に係る照射ターゲットに中性子を照射する原子炉の概略構成を示す図である。
ターゲットカプセル10Aは、図4に示すような原子炉容器101内で中性子束に曝露される。この実施形態において、原子炉容器101は、例えば、原子力発電プラントの加圧水型原子炉(PWR:PressurizedWaterReactor)に設けられている。なお、原子炉容器101は、加圧水型原子炉に限らず、例えば沸騰水型原子炉に備えられたものであってもよい。原子炉容器101は、原子炉容器本体102と、計装管105と、を少なくとも備えている。
【0022】
原子炉容器本体102は、その内部の炉心に、燃料集合体103を含む炉内構造物を収容している。また、原子炉容器本体102は、(炉内構造物の一部として、)炉内計装管104を備えている。炉内計装管104は、燃料集合体103を構成する複数の燃料棒と干渉しない位置に配置されている。なお、この実施形態では、原子炉容器本体102の具体的な構成について、何ら限定するものではない。
【0023】
計装管105は、原子炉容器本体102の下部に複数接続されている。各計装管105の一端部105aは、原子炉容器本体102の外部に配置されている。各計装管105の他端部105bは、原子炉容器本体102の底部を貫通して、炉内計装管104に接続されている。なお、この実施形態では、計装管105の具体的な構成、配置等について、何ら限定するものではなく、いかなる構成、配置であってもよい。
【0024】
複数の計装管105の一部には、中性子束を計測可能な中性子束検出器(図示せず)が挿入されている。計装管105に挿入された中性子束検出器は、原子炉容器本体102内の炉心で中性子束に晒されることで、中性子束を検出する。
【0025】
図5は、本開示の実施形態に係るターゲットカプセルを計装管に挿入した状態を示す図である。
図5に示すように、ターゲットカプセル10Aは、複数の計装管105のうち、中性子束検出器(図示せず)が挿入されていないものに挿入される。ターゲットカプセル10Aは、計装管105の一端部105aから計装管105内に挿入される。ターゲットカプセル10Aは、適宜のターゲット挿抜機構120により、計装管105内を一端部105aから他端部105bに向けて移動し、炉内計装管104内に挿入される。この実施形態では、ターゲット挿抜機構120として、例えば、ワイヤ121が用いられている。
【0026】
炉内計装管104内に挿入されて原子炉容器本体102内の炉心に配置されたターゲットカプセル10Aは、中性子束に晒される。これにより、ターゲットカプセル10A内のターゲット本体2Aを形成するRI原料から、放射性同位体が製造される。
【0027】
放射性同位体の製造後、ターゲットカプセル10Aは、ターゲット挿抜機構120により、炉内計装管104から、計装管105の他端部105bを介して一端部105aに向けて引き出される。ターゲットカプセル10Aは、計装管105の一端部105aから計装管105外に取り出される。
ここで、ターゲット挿抜機構120としては、ワイヤ121に限らず、例えば、押し棒、二酸化炭素ガス等の気体の圧力を用いた圧送及び吸引等が採用可能である。
【0028】
(作用効果)
上記第一実施形態では、照射ターゲット1Aは、放射性同位体の原料であるRI原料からなるとともに、内部にRI原料の配置されていない中空部3Aが形成されたターゲット本体2Aを有している。
このような照射ターゲット1Aでは、中性子束の届きにくいターゲット本体2Aの内部にRI原料が配されていないため、放射線同位体の形成に寄与しないRI原料を削減して、ターゲット本体2Aを形成するのに必要なRI原料の量を抑えることができる。したがって、放射性同位体の製造コストを低減することができる。
【0029】
また、上記第一実施形態のターゲット本体2Aは、軸線Oに沿って延びる筒状に形成されている。
これにより、内部に中空部3Aが形成されたターゲット本体2Aを容易に形成することができる。
【0030】
上記第一実施形態のターゲット本体2Aは、更に、焼結体からなっている。
これにより、中空部3Aが形成されたターゲット本体2Aの形状を容易に維持できるため、ターゲット本体2Aを容易に取り扱うことが可能となる。
【0031】
上記第一実施形態のターゲットカプセル10Aは、更に、照射ターゲット1Aと、カプセル11と、を備えている。
これにより、内部に中空部3Aが形成されたターゲット本体2Aをカプセル11に収容して、原子炉容器101内に挿入することができるため、中空部3Aが形成されたターゲット本体2Aを容易に原子炉容器101内に挿入することができる。その結果、放射性同位体の製造コストを低減することができる。
【0032】
(第一実施形態の変形例)
上記第一実施形態では、ターゲット本体2Aを軸方向Daに延びる筒状としたが、これに限られない。
図6は、本開示の第一実施形態の変形例に係る照射ターゲットを収容したターゲットカプセルを示す断面図である。
図6に示すように、照射ターゲット1Bのターゲット本体2Bは、中空部(中央部)3Bを有した筒状部21と、閉塞部22Bと、を一体に有する。筒状部21は、上記第一実施形態で示したターゲット本体2Aと同様、軸方向Daに延びる円筒状に形成されている。筒状部21の径方向Drの内側Driには、RI原料の配置されていない中空部3Bが形成されている。
【0033】
閉塞部22Bは、中空部3Bを軸方向Daから塞いでいる。閉塞部22Bは、筒状部21に対し、軸方向Daの少なくとも一方側に形成されている。この実施形態の変形例では、閉塞部22Bは、軸方向Daの一方側にのみ形成されている場合を例示しているが、閉塞部22Bは、筒状部21に対し、軸方向Daの両側に形成されるようにしてもよい。
【0034】
このような照射ターゲット1Bは、原子炉容器101内に挿入される際、ターゲットカプセル10Bのカプセル11内に収容される。ターゲットカプセル10Bは、上記照射ターゲット1Bと、照射ターゲット1Bを収容するカプセル11と、を備えている。
【0035】
上記第一実施形態の変形例では、ターゲット本体2Bの軸方向Daの少なくとも一方側に閉塞部22Bを有することで、中性子束を照射した際、中性子束が閉塞部22Bにも照射される。これにより、閉塞部22Bも放射性同位体の形成に寄与することができる。
【0036】
<第二実施形態>
次に、本開示の第二実施形態に係る照射ターゲット、及びターゲットカプセルについて説明する。この第二実施形態は、第一実施形態と、芯体を備える構成のみが異なるので、第一実施形態と同一部分に同一符号を付して説明するとともに、重複説明を省略する。
【0037】
図7は、本開示の第二実施形態に係る照射ターゲットを示す斜視図である。図8は、本開示の第二実施形態に係る照射ターゲットの断面図である。
図7図8に示すように、この第二実施形態の照射ターゲット1Cは、ターゲット本体2Cと、芯体(中央部)3Cと、を有する。ターゲット本体2Cは、放射性同位体の原料であるRI原料から形成されている。この第二実施形態において、ターゲット本体2Cは、粉末状のRI原料を焼結させることで形成された焼結体である。
【0038】
ターゲット本体2Cは、軸線Oに沿う軸方向Daに延びる筒状に形成されている。この第二実施形態で例示するターゲット本体2Cは、軸方向Daに延びる円筒状に形成されている。ターゲット本体2Cは、軸方向Daに延びる内周面2hを有している。
【0039】
芯体3Cは、内周面2hの内側に設けられている。換言すると、芯体3Cは、内周面2hの内周面の全周に密接するように配置されている。更に換言すると、芯体3Cの径方向Drの外側Droで芯体3Cを取り囲んで上記ターゲット本体2Cが形成されている。芯体3Cは、ターゲット本体2Cとは異なる材料から形成されている。つまり、ターゲット本体2Cの径方向Drの内側Driには芯体3Cが形成されているため放射性同位体の原料であるRI原料が配置されていない。芯体3Cは、例えば、アルミニウム、ケイ素、ステンレス鋼等から形成することができる。
【0040】
図9は、本開示の第二実施形態に係る照射ターゲットを製造する際に用いる成形型の一例を示す断面図である。図10は、本開示の第二実施形態に係る照射ターゲットを製造する際、成形型と芯体との隙間にRI原料を充填した状態を示す断面図である。
照射ターゲット1Cを製造するには、例えば、図9に示すように、有底円筒状の成形型300内に芯体3Cを配置する。成形型300の内周面と芯体3Cとの間には、ターゲット本体2Cを形成するための隙間301が形成されている。そして、図10に示すように、成形型300の内周面と芯体3Cとの隙間301に、粉末状のRI原料1xを充填し、焼結する。これにより、芯体3Cの径方向Drの外側に、筒状のターゲット本体2Cが形成される。成形型300からターゲット本体2C及び芯体3Cを取り出すことにより、図7図8に示すような照射ターゲット1Cが製造される。この際、芯体3Cは、ターゲット本体2C内に配置された状態で、成形型300から取り出される。
【0041】
図11は、本開示の第二実施形態に係る照射ターゲットを収容したターゲットカプセルを示す断面図である。
第二実施形態の照射ターゲット1Cは、原子炉容器101内に挿入される際、例えば、図11に示すようなターゲットカプセル10Cのカプセル11内に収容される。ターゲットカプセル10Cは、上記照射ターゲット1Cと、照射ターゲット1Cを収容するカプセル11と、を備えている。
【0042】
(作用効果)
上記第二実施形態の照射ターゲット、及びターゲットカプセルでは、上記第一実施形態と同様、ターゲット本体2Cの内側にRI原料を含まない中央部としての芯体3Cを有することで、RI原料の使用量を低減し放射性同位体の製造コストを低減することができる。
【0043】
上記第二実施形態では、更に、照射ターゲット1Cが、ターゲット本体2Cの径方向Drの内側Driに芯体3Cをさらに有しているため、ターゲット本体2Cが、芯体3Cの径方向Drの外側Droに形成されることになる。これにより、ターゲット本体2Cを芯体3Cによって補強することができ、照射ターゲット1Cの強度を高めることができる。また、照射ターゲット1Cを製造する際、芯体3Cの径方向Drの外側DroにRI原料を配した状態で、ターゲット本体2Cを形成することができる。したがって、照射ターゲット1Cを容易に形成することができる。
【0044】
<第三実施形態>
次に、本開示の第三実施形態に係る照射ターゲット、及びターゲットカプセルについて説明する。この第三実施形態は、第一実施形態と、容器7を備える構成のみが異なるので、第一実施形態と同一部分に同一符号を付して説明するとともに、重複説明を省略する。
【0045】
図12は、本開示の第三実施形態に係る照射ターゲットを示す斜視図である。図13は、本開示の第三実施形態に係る照射ターゲットの断面図である。
図12図13に示すように、この第三実施形態の照射ターゲット1Dは、容器7と、ターゲット本体2Dと、を有する。
【0046】
容器7は、容器本体71と、芯部(中央部)3Dと、蓋体73と、を有している。容器本体71は、有底筒状で、筒部71cと、底部71dとを一体に有している。筒部71cは、軸方向Daに延びる円筒状に形成されている。筒部71cは、その径方向Drの内側Driに、ターゲット本体2Dを収容している。底部71dは、筒部71cの軸方向Daの一方側を閉塞している。
【0047】
芯部3Dは、筒部71cの径方向Drの内側Driに形成されている。芯部3Dは、底部71dから軸方向Daの他方側に延びている。芯部3Dは、容器本体71と一体に形成されている。容器本体71及び芯部3Dは、ターゲット本体2Dとは異なる材料から形成されている。つまり、ターゲット本体2Dの径方向Drの内側Driには芯部3Dが形成されているため放射性同位体の原料であるRI原料が配置されていない。容器本体71及び芯部3Dは、例えば、アルミニウム、ケイ素、ステンレス鋼等から形成することができる。
【0048】
蓋体73は、筒部71cの軸方向Daの他方側の開口を閉塞する。蓋体73は、ターゲット本体2Dとは異なる材料から形成されている。蓋体73は、例えば、容器本体71及び芯部3Dと同材料により形成することができる。蓋体73は、溶接等により、容器本体71の筒部71cに接合されている。
【0049】
ターゲット本体2Dは、放射性同位体の原料であるRI原料から形成されている。この第三実施形態において、ターゲット本体2Dは、粉末状である。粉末状のRI原料1zは、筒部71cと芯部3Dとの間に充填されている。これにより、ターゲット本体2Dは、筒部71cと芯部3Dとの間で、軸方向Daに延びる筒状に形成されている。この第三実施形態のターゲット本体2Dは、軸方向Daに延びる円筒状に形成されている場合を例示している。ターゲット本体2Dは、軸方向Daに延びる内周面2h(図13参照)を有している。
【0050】
図14は、本開示の第三実施形態に係る照射ターゲットを収容したターゲットカプセルを示す断面図である。
このような照射ターゲット1Dは、原子炉容器101内に挿入される際、例えば、図14に示すようなターゲットカプセル10Dのカプセル11内に、容器7ごと収容可能とされている。ターゲットカプセル10Dは、上記照射ターゲット1Dと、照射ターゲット1Dを収容するカプセル11と、を備えている。
【0051】
(作用効果)
上記第三実施形態の照射ターゲット、及びターゲットカプセルでは、上記第一、第二実施形態と同様、ターゲット本体2Dの内側にRI原料の配置されていない中央部としての芯部3Dが形成されているため、RI原料の使用量を低減し放射性同位体の製造コストを低減することができる。
【0052】
また、上記第三実施形態では、容器本体71の筒部71c、及び底部71dと、芯部3Dと、蓋体73とに囲まれた容器7内に、ターゲット本体2Dが収容される。このようにして、容器7にターゲット本体2Dが収容された照射ターゲット1Dを提供することができる。
【0053】
また、上記第三実施形態では、ターゲット本体2Dは、粉末状であり、筒部71cと芯部3Dとの間に充填されている。これにより、RI原料を粉末状のまま容器7に収容することができるため、ターゲット本体2Dを容易に形成することができる。
【0054】
(第三実施形態の変形例)
上記第三実施形態では、ターゲット本体2Dを粉末状としたが、これに限るものではなく、容器7に充填したRI原料を焼結することによって、ターゲット本体2Dを焼結体とすることもできる。この場合、ターゲット本体2Dを、容器7に収容したまま取り扱うことで、ターゲット本体2Dの厚さtを小さくした場合であっても、ターゲット本体2Dが損傷することが抑えられる。
【0055】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
例えば、上記第一実施形態の変形例で、閉塞部22Bを備えるようにしたが、上記第二実施形態、第三実施形態においても、上記第一実施形態の変形例と同様、軸方向Daの少なくとも一方に、閉塞部22Bを備えるようにしてもよい。
【0056】
また、上記各実施形態では、ターゲット本体2A~2Dを、円筒状としたが、これに限るものではなく、中空部を有した多角形状の筒状、中空部を有した球形状等としてもよい。
さらに、上記第二実施形態及び第三実施形態では、芯体3C、芯部3Dが軸方向Daに延びる柱状に形成される場合を例示したが、芯体3C、芯部3Dは、軸方向Daに延びる筒状であってもよい。
また、上記各実施形態では、加圧水型原子炉、沸騰水型原子炉を例示したが、研究炉であってもよい。研究炉の場合は、計装管に代えて照射孔等を用いればよい。
【0057】
<付記>
各実施形態に記載の照射ターゲット1A~1D、ターゲットカプセル10A~10Dは、例えば以下のように把握される。
【0058】
(1)第1の態様に係る照射ターゲット1A~1Dは、放射性同位体の原料であるRI原料からなるとともに、内部に前記RI原料の配置されていない中央部3A~3Dが形成されたターゲット本体2A~2Dを有する。
RI原料の例としては、モリブデン‐98、クロム‐50、銅‐63、ジスプロシウム‐164、エルビウム‐168、ホルミウム‐165、ヨウ素-130、イリジウム-191、鉄‐58、ルテチウム‐176、パラジウム‐102、リン‐31、カリウム‐41、レニウム‐185、サマリウム‐152、セレン‐74、ナトリウム‐23、ストロンチウム‐88、イッテルビウム‐168、イッテルビウム‐176、イットリウム‐89が挙げられる。
放射性同位体としては、モリブデン‐99、クロム‐51、銅‐64、ジスプロシウム‐165、エルビウム‐169、ホルミウム‐166、ヨウ素-131、イリジウム-192、鉄‐59、ルテチウム‐177、パラジウム‐103、リン‐32、カリウム‐42、レニウム‐186、サマリウム‐153、セレン‐75、ナトリウム‐24、ストロンチウム‐89、イッテルビウム‐169、イッテルビウム‐177、イットリウム‐90が挙げられる。
【0059】
この照射ターゲット1A~1Dは、RI原料からなるターゲット本体2A~2Dに中性子が照射されることで、放射性同位体が形成される。ここで、中性子は、ターゲット本体2A~2Dの外周面に照射される。中性子は、ターゲット本体2A~2Dの内部にまで届きにくい。ターゲット本体2A~2Dの内部には中空部3A~3Dが形成されている。したがって、中性子が届きにくく、放射性同位体の形成に寄与しないターゲット本体2A~2Dの内部には、RI原料が配されていない。このように、放射線同位体を得るのに十分なRI原料を有しつつ、ターゲット本体2A~2Dを形成するのに必要なRI原料の量を抑えることができる。その結果、放射性同位体の製造コストを低減することができる。
【0060】
(2)第2の態様に係る照射ターゲット1A~1Dは、(1)の照射ターゲット1A~1Dであって、前記ターゲット本体2A~2Dは、軸線Oに沿って延びる筒状に形成されている。
【0061】
これにより、内部に中空部3A~3Dが形成されたターゲット本体2A~2Dを容易に形成することができる。
【0062】
(3)第2の態様に係る照射ターゲット1Bは、(1)又は2の照射ターゲット1Bであって、前記ターゲット本体2Bは、前記軸線Oに沿う軸方向Daの少なくとも一方側に形成され、前記中空部3Bを塞ぐ閉塞部22Bを有する。
【0063】
これにより、ターゲット本体2Bの軸方向Daの少なくとも一方側に閉塞部22Bを有することで、中性子を照射した際、中性子が閉塞部22Bにも照射され、放射性同位体の形成に寄与することができる。
【0064】
(4)第4の態様に係る照射ターゲット1Cは、(1)から(3)の何れか一つの照射ターゲット1Cであって、前記ターゲット本体2Cとは異なる材料から形成され、前記中空部3Cに設けられた芯体3Cをさらに有する。
【0065】
このような構成によれば、中空部3Cを有したターゲット本体2Cは、芯体3Cの径方向Drの外側Droに形成されることになる。これにより、ターゲット本体2Cを芯体3Cによって補強することができ、照射ターゲット1Cの強度を高めることができる。また、照射ターゲット1Cを製造する際、芯体3Cの径方向Drの外側DroにRI原料を配した状態で、ターゲット本体2Cを形成することができる。したがって、照射ターゲット1Cを容易に形成することができる。
【0066】
(5)第5の態様に係る照射ターゲット1A~1Cは、(1)から(4)の何れか一つの照射ターゲット1A~1Cであって、前記ターゲット本体2A~2Cは、焼結体からなる。
【0067】
これにより、ターゲット本体2A~2Cは、中空部3A~3Cを有した形状を容易に維持することができる。
【0068】
(6)第6の態様に係る照射ターゲット1Dは、(1)又は(2)の照射ターゲット1Dであって、前記ターゲット本体2Dを収容し、前記軸線Oに沿う軸方向Daに延びる筒部71c、及び前記筒部71cの前記軸方向Daの一方側を閉塞する底部71dを有する容器本体71と、前記筒部71cの径方向の内側に形成されて前記底部71dから前記軸方向Daの他方側に延び、前記ターゲット本体2Dとは異なる材料から形成された芯部3Dと、前記筒部71cの前記軸方向Daの他方側を閉塞する蓋体73と、を有した容器7を更に備える。
【0069】
これにより、容器本体71の筒部71c、及び底部71dと、芯部3Dと、蓋体73とに囲まれた容器7内に、ターゲット本体2Dが収容される。このようにして、容器7にターゲット本体2Dが収容された照射ターゲット1Dを提供することができる。
【0070】
(7)第7の態様に係る照射ターゲット1Dは、(6)の照射ターゲット1Dであって、前記ターゲット本体2Dは、粉末状であり、前記筒部71cと前記芯部3Dとの間に充填されている。
【0071】
これにより、RI原料を粉末状のまま、ターゲット本体2Dとすることができる。
【0072】
(8)第8の態様に係るターゲットカプセル10A~10Dは、(1)から(7)の何れか一つの照射ターゲット1A~1Dと、前記照射ターゲット1A~1Dを収容するカプセル11と、を備える。
【0073】
これにより、内部に中空部3A~3Dが形成されたターゲット本体2A~2Dを備える照射ターゲット1A~1Dを用いてターゲットカプセル10A~10Dを構成することにより、放射線同位体を得るのに十分なRI原料を有しつつ、ターゲット本体2A~2Dを形成するのに必要なRI原料の量を抑えることができる。その結果、放射性同位体の製造コストを低減することができる。
【符号の説明】
【0074】
1A~1D…照射ターゲット 2A~2D…ターゲット本体 2f…外周面 2h…内周面 3A,3B…中空部(中央部) 3C…芯体(中央部) 3C…芯部(中央部) 4…成形体 7…容器 10A~10D…ターゲットカプセル 11…カプセル 11s…収納空間 12…筒部 13…蓋部 21…筒状部 22B…閉塞部 71…容器本体 71c…筒部 71d…底部 73…蓋体 101…原子炉容器 102…原子炉容器本体 103…燃料集合体 104…炉内計装管 105…計装管 105a…一端部 105b…他端部 120…ターゲット挿抜機構 121…ワイヤ 300…成形型 D2…外径 D3…内径 Da…軸方向 Dr…径方向 Dri…内側 Dro…外側 O…軸線 t…厚さ
図1
図2
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図6
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図10
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