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特開2024-111943化粧紙および化粧板並びに化粧紙および化粧板の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111943
(43)【公開日】2024-08-20
(54)【発明の名称】化粧紙および化粧板並びに化粧紙および化粧板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 33/00 20060101AFI20240813BHJP
   B41M 1/18 20060101ALI20240813BHJP
【FI】
B32B33/00
B41M1/18
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023016690
(22)【出願日】2023-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】原田 千穂
【テーマコード(参考)】
2H113
4F100
【Fターム(参考)】
2H113AA01
2H113AA04
2H113AA06
2H113BA00
2H113BA01
2H113BA03
2H113BA05
2H113BA09
2H113BB02
2H113BB10
2H113BB18
2H113BC01
2H113DA43
2H113DA50
2H113DA52
2H113DA53
2H113DA57
2H113DA60
2H113DA62
2H113DA63
2H113EA05
2H113FA28
2H113FA29
2H113FA42
4F100AG00A
4F100AK01C
4F100AK01D
4F100AK36D
4F100AT00A
4F100BA03
4F100BA04
4F100DC11C
4F100DG10A
4F100DG15A
4F100EJ08D
4F100EJ17
4F100EJ82D
4F100HB00B
4F100HB31B
4F100JA13C
4F100JB13C
4F100JB14C
4F100YY00C
(57)【要約】
【課題】意匠性と、含浸樹脂を含浸させる工程における加工適性とに優れた化粧紙および化粧板並びに化粧紙および化粧板の製造方法を提供する。
【解決手段】化粧紙10は、原反層1と、前記原反層1の上側UPに設けられた絵柄印刷層2と、3.0g/m以上15.0g/m未満の塗工量で塗工された塗工部3aと、前記塗工部3aに挟まれて配置され、塗工されていない微細孔3bと、を有し、前記絵柄印刷層2の前記上側UPに設けられた高意匠樹脂層3と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原反層と、
前記原反層の上側に設けられた絵柄印刷層と、
3.0g/m以上15.0g/m未満の塗工量で塗工された塗工部と、前記塗工部に挟まれて配置され、塗工されていない微細孔と、を有し、前記絵柄印刷層の前記上側に設けられた高意匠樹脂層と、
を備える、
化粧紙。
【請求項2】
前記高意匠樹脂層は、熱硬化型樹脂、紫外線硬化型樹脂または電離放射線硬化性樹脂を含む、
請求項1に記載の化粧紙。
【請求項3】
前記高意匠樹脂層は、前記絵柄印刷層の絵柄と同調して配置されている、
請求項2に記載の化粧紙。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の化粧紙と、
前記化粧紙に含浸して硬化した含浸樹脂と、
を備える、
化粧板。
【請求項5】
絵柄印刷層を形成する絵柄印刷工程と、
塗工部の塗工量が3.0g/m以上15.0g/m未満である高意匠樹脂層を形成する高意匠樹脂塗工工程と、
を備える、
化粧紙の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の化粧紙の製造方法と、
前記化粧紙に含浸樹脂を含浸させる樹脂含浸工程と、
前記含浸樹脂を硬化させるプレス工程と、
を備える、
化粧板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧紙および化粧板並びに化粧紙および化粧板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、化粧紙にメラミン樹脂等の熱硬化性樹脂を含浸させ、含浸した熱硬化性樹脂を硬化させた化粧板は、表面硬度が高く、耐汚染性、耐摩耗性、耐熱性および耐水性等に優れた化粧板である。そのため、化粧紙に熱硬化性樹脂を含浸させた化粧板は、机等の家具の表面材又は店舗のカウンター等の什器の表面材として使用される。また、化粧紙および化粧板の表面に視覚的な立体感を付与するため、艶消し剤等により表面の樹脂層における光沢を調整した化粧紙および化粧板がある。
【0003】
光沢調整が施された化粧紙と、その化粧紙に樹脂を含浸させた化粧板として、特許文献1に記載のある樹脂含浸化粧板用化粧紙および樹脂含浸化粧板がある。特許文献1に記載のある樹脂含浸化粧板用化粧紙および樹脂含浸化粧板は、原紙と、原紙の上に絵柄模様を印刷して形成された絵柄模様層と、絵柄模様層の上に設けられた撥液性硬化膜と、を備える。撥液性硬化膜は、絵柄模様層の全体を覆う第1撥液性硬化膜と、第1撥液性硬化膜の上の一部に設けられた第2撥液性硬化膜とからなり、第1撥液性硬化膜と第2撥液性硬化膜とが異なる艶性(光沢)を有し、特許文献1に記載のある樹脂含浸化粧板用化粧紙および樹脂含浸化粧板は、光沢調整が施された意匠を有する。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のある樹脂含浸化粧板用化粧紙および樹脂含浸化粧板は、撥液性硬化膜が原紙に染み込む虞がある。その結果、化粧紙に含浸させる含浸樹脂の含浸性が劣り、化粧紙に含浸樹脂を含浸させる工程にかかる時間が増加して加工適性が劣る虞がある。また、含浸樹脂を含浸させる工程における加工適性を向上させる場合、撥液性硬化膜が原紙に染み込む量を減らすために撥液性硬化膜の塗工量を減らす必要があり、撥液性硬化膜を配置する範囲の自由度が減り、意匠が劣る虞がある。
【0005】
また、特許文献2に記載のある化粧シート並びに該化粧シートを備える化粧板は、紙質基材の上に設けられた装飾層と、装飾層の上に設けられ、装飾層が有する絵柄模様の低光沢としたい領域と同調して形成された離型層と、離型層に隣接する領域に形成されて高光沢な表面層と、を備える。離型層と表面層とが光沢の差を有し、特許文献2に記載のある化粧シート並びに該化粧シートを備える化粧板は、光沢調整が施された意匠を有する。また、表面層は、化粧シートに含浸させて硬化させたメラミン樹脂によって形成されている。
【0006】
さらに、特許文献2に記載のある化粧シート並びに該化粧シートを備える化粧板は、表面層および離型層と、装飾層との間に被覆層を有し、被覆層によって紙質基材に対する離型層の浸透を抑制することで、意匠性を保持する。しかしながら、被覆層によって、離型層の紙質基材への染み込みだけでなく含浸樹脂の含浸も阻害される虞があり、化粧紙に含浸樹脂を含浸させる工程にかかる時間が増加し、加工適性が劣る虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2018-176484号公報
【特許文献2】特開2019-64120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記事情を踏まえ、本発明は、意匠性と、含浸樹脂を含浸させる工程における加工適性とに優れた化粧紙および化粧板並びに化粧紙および化粧板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の化粧紙は、原反層と、前記原反層の上側に設けられた絵柄印刷層と、3.0g/m以上15.0g/m未満の塗工量で塗工された塗工部と、前記塗工部に挟まれて配置され、塗工されていない微細孔と、を有し、前記絵柄印刷層の前記上側に設けられた高意匠樹脂層と、を備える。
【0010】
上記化粧紙では、前記高意匠樹脂層は、熱硬化型樹脂、紫外線硬化型樹脂または電離放射線硬化性樹脂を含んでいてもよい。
【0011】
上記化粧紙では、前記高意匠樹脂層は、前記絵柄印刷層の絵柄と同調して配置されていてもよい。
【0012】
本発明の化粧板は、上記に記載のいずれかの化粧紙と、前記化粧紙に含浸して硬化した含浸樹脂と、を備える。
【0013】
本発明の化粧紙の製造方法は、絵柄印刷層を形成する絵柄印刷工程と、塗工部の塗工量が3.0g/m以上15.0g/m未満である高意匠樹脂層を形成する高意匠樹脂塗工工程と、を備える。
【0014】
本発明の化粧板の製造方法は、上記に記載の化粧紙の製造方法と、前記化粧紙に含浸樹脂を含浸させる樹脂含浸工程と、前記含浸樹脂を硬化させるプレス工程と、を備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明の化粧紙および化粧板並びに化粧紙および化粧板の製造方法によれば、意匠性と、含浸樹脂を含浸させる工程における加工適性とに優れた化粧紙および化粧板並びに化粧紙および化粧板の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態に係る化粧紙の構成を模式的に示す断面図である。
図2】本実施形態に係る化粧板の構成を模式的に示す断面図である。
図3】同化粧板の製造方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0018】
図1は、本実施形態に係る化粧紙10の構成を模式的に示す断面図である。図2は、化粧紙10に含浸樹脂4を含浸させた化粧板100の構成を模式的に示す断面図である。
【0019】
本実施形態では、図1および図2に示すように、化粧紙10および化粧板100の厚さ方向を「上下方向V」、化粧紙10の原反層1が設けられる側を上下方向Vにおける「下側LO」、下側LOと反対側を上下方向Vにおける「上側UP」と定義する。
【0020】
化粧板100は、化粧紙10と、含浸樹脂4と、を備える。化粧板100は、化粧紙10に含浸樹脂4を含浸させ、含浸させた含浸樹脂4を硬化させて形成されている。化粧紙10に含浸樹脂4を含浸させることで、含浸樹脂4が化粧紙10の内部へ浸透し、また、図2に示すように、含浸樹脂4が化粧紙10の表面を覆って硬化する。含浸樹脂4を含浸させて硬化させた化粧板100は、高い表面硬度、耐汚染性、耐摩耗性、耐熱性および耐水性等の優れた特性を有する。
【0021】
含浸樹脂4は、樹脂含浸化粧板に用いられる公知の熱硬化型樹脂である。含浸樹脂4として、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、ジアリルフタレート系樹脂、ベンゾグアナミン系樹脂、ウレタン系樹脂、アルキド系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、フェノール系樹脂又は尿素系樹脂等を採用できる。含浸樹脂4は、水中に溶解又は分散した水系含浸液として化粧紙10に含浸される。含浸樹脂4として、高強度で、耐汚染性、耐摩耗性、耐熱性および耐水性に優れたメラミン樹脂を採用するのが望ましい。
【0022】
化粧紙10は、原反層1と、絵柄印刷層2と、高意匠樹脂層3と、を備える。
原反層1は、化粧紙10の下側LOに設けられた層である。原反層1は、含浸樹脂4の含浸が可能な公知の繊維質シートである。原反層1としては、例えば、チタン紙、薄葉紙、上質紙、未晒クラフト紙又は晒クラフト紙等を採用できる。原反層1として、印刷適性および樹脂含浸適性に優れたチタン紙を採用するのが望ましい。原反層1の厚さには制約はなく、一般的に、坪量20g/m以上200g/m以下のものが使用される。
【0023】
絵柄印刷層2は、原反層1の上側UPに設けられた層であり、例えば、木目、石目又は砂目等の印刷を施すことで形成される。絵柄印刷層2の印刷方法としては、例えば、グラビア印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、シルクスクリーン印刷又はインクジェット印刷等の公知の印刷方法を採用できる。また、絵柄印刷層2には、採用する印刷方法に適した公知の印刷インキを採用できるが、水性インキを採用するのが望ましい。水性インキは、油性インキと比較して含浸樹脂4の水溶液と馴染みやすく、化粧紙10に含浸樹脂4を含浸させる際、迅速、かつ、均一に含浸でき、さらに、含浸樹脂4と一体化することで優れた強度を有することができる。
【0024】
また、絵柄印刷層2に採用する水性インキとして、バインダ樹脂がカゼイン又はエマルジョン樹脂を主成分とするものを採用するのが望ましい。カゼイン又はエマルジョン樹脂を主成分とするバインダ樹脂は、インキの印刷後に乾燥工程を経ることによって難水溶化する性質を有しており、含浸樹脂4を含浸させる工程において、含浸樹脂4の水溶液に再溶解しにくく、絵柄印刷層2が有する絵柄模様を損ないにくく、かつ、溶解した絵柄印刷層2に含浸樹脂4が汚染されるのを抑制できる。
【0025】
バインダ樹脂に含まれるエマルジョン樹脂としては、例えば、アクリル系、酢酸ビニル系、スチレン系、ウレタン系等を採用できる。また、バインダ樹脂としては、カゼイン又はエマルジョン樹脂の他に、インキの安定性の向上を目的として、例えば、ポリビニルアルコール又はポリアクリルアミド等の水溶性樹脂、多糖類、セルロース誘導体等の水溶性高分子等を併用したものを採用してもよい。
【0026】
高意匠樹脂層3は、絵柄印刷層2の上側UPに設けられた層である。高意匠樹脂層3には、絵柄印刷層2の絵柄を透視できる程度に透明又は半透明な材質を採用するのが望ましい。高意匠樹脂層3として、熱硬化型樹脂、紫外線硬化型樹脂、電離放射線硬化性樹脂又はそれらの混合物等を採用できる。高意匠樹脂層3として、例えば、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、尿素系樹脂、フェノール系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ジアリルフタレート系樹脂、ベンゾグアナミン系樹脂、ウレタン系樹脂、アミノアルキド系樹脂、シリコーン系樹脂等の熱硬化型樹脂や、(メタ)アクリレート系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂等の電離放射線硬化性樹脂等を採用できる。
【0027】
高意匠樹脂層3を形成する方法として、グラビア印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、シルクスクリーン印刷又はインクジェット印刷等の公知の印刷方法を採用できる。また、高意匠樹脂層3は、公知のコーティング装置を用いて形成されてもよい。
【0028】
高意匠樹脂層3に光沢調整を施し、化粧紙10および化粧板100にグロス表現又はマット表現を付与してもよい。高意匠樹脂層3に光沢調整を施す方法として、高意匠樹脂層3に艶消材を添加する方法がある。艶消材を添加することで、高意匠樹脂層3が低光沢(マット表現)になるように光沢調整することができる。また、艶消材を添加せず、高光沢(グロス表現)になるように光沢調整してもよい。
【0029】
また、高意匠樹脂層3は、絵柄印刷層2の上側UPの一部に設けられて、絵柄印刷層2の絵柄と同調して配置されてもよい。例えば、絵柄印刷層2の絵柄が木目の場合、高意匠樹脂層3は、木目の導管部分の上側UPに設けられる。その結果、高意匠樹脂層3の上下方向Vにおける厚さによって、木目の導管部分に触感による立体感を付与することができる。また、高意匠樹脂層3に艶消材を添加して低光沢とすることで、絵柄印刷層2の上側UPの面において、高意匠樹脂層3が配置されている部分と、配置されていない部分とに異なる光沢(光沢差)を付与することができる。その結果、高意匠樹脂層3が配置された木目の導管部分は、高意匠樹脂層3が配置されていない部分と比較して光沢が低くなり、人間の目の錯覚を利用して、視覚的に立体感を感じさせることができる。
【0030】
高意匠樹脂層3によって触感による立体感又は視覚的な立体感を付与することで、優れた意匠性を有する化粧紙10および化粧板100を提供することができる。例えば、木目柄の導管部分に高意匠樹脂層3によって立体感を付与した場合、より天然木材の見た目に近い化粧紙10および化粧板100を提供できる。
【0031】
また、高意匠樹脂層3は、塗工部3aと、微細孔3bと、を備える。図1および図2に示すように、高意匠樹脂層3を塗工する塗工範囲A1に対して、実際に塗工されて高意匠樹脂層3を形成する樹脂が配置された塗工部3aと、樹脂が配置されておらず、塗工されていない微細孔3bがある。図1および図2に示すように、化粧紙10又は化粧板100の断面図において、微細孔3bは、板面方向において塗工部3aに挟まれて配置されている。
【0032】
例えば、木目柄の導管部分に高意匠樹脂層3を配置する場合、導管部分の範囲が、塗工範囲A1である。通常、塗工範囲A1に対して、すべての範囲に樹脂が配置されるように塗工するが、高意匠樹脂層3は、樹脂が配置されない微小な孔である微細孔3bを有している。微細孔3bの形状に制約はなく、上側UPから化粧紙10および化粧板100を見たときの微細孔3bの形状は、点状でもよいし、連続した線状でもよい。また、塗工範囲A1内に配置される微細孔3bは、規則的に配置されてもよいし、不規則に配置されてもよい。そのため、高意匠樹脂層3が化粧紙10および化粧板100に付与する意匠への影響が最小限となるように微細孔3bを配置するのが望ましい。
【0033】
このとき、塗工部3aの塗工量は、3.0g/m以上15.0g/m未満である。塗工部3aの塗工量が3.0g/mより小さいと、化粧紙10および化粧板100において、高意匠樹脂層3を形成する樹脂の量が少なく、意匠性が劣る。塗工量を3.0g/m以上とすることで、高意匠樹脂層3を形成する樹脂を十分に配置でき、化粧紙10および化粧板100は優れた意匠を有することができる。
【0034】
また、高意匠樹脂層3が絵柄印刷層2の上側UPに形成されるとき、高意匠樹脂層3を形成する樹脂の一部は、絵柄印刷層2および原反層1に浸透して染み込む。高意匠樹脂層3を形成する樹脂が絵柄印刷層2および原反層1に染み込むと、化粧板100において、化粧紙10への含浸樹脂4の含浸が阻害される。含浸樹脂4の含浸が阻害されると、含浸樹脂4を化粧紙10の全体へ含浸させるのに時間がかかり、含浸樹脂4を含浸させる工程における加工適性が劣る。
【0035】
ここで、塗工部3aの塗工量を15.0g/m未満とすることで、高意匠樹脂層3を形成する樹脂が絵柄印刷層2および原反層1に染み込むのを抑制して、含浸樹脂4を化粧紙10に十分に含浸させることができる。すなわち、塗工部3aの塗工量を3.0g/m以上15.0g/m未満とすることで、意匠性と、含浸樹脂4を含浸させる工程における加工適性とに優れた化粧紙10および化粧板100を得ることができる。
【0036】
例えば、木目柄の導管部分のような高意匠樹脂層3を塗工する塗工範囲A1に対して、高意匠樹脂層3は、微細孔3bを設けることで高意匠樹脂層3を形成する樹脂の量が抑制されている。そのため、塗工範囲A1において、意匠を大幅に変更することなく高意匠樹脂層3を形成する樹脂の量を減らすことができる。その結果、化粧板100における意匠性への影響を最小限に抑えて、含浸樹脂4を含浸させる工程における加工適性を向上させることができ、意匠性と、含浸樹脂4を含浸させる工程における加工適性とを両立させることができる。
【0037】
次に、化粧紙10および化粧板100の製造方法について説明する。図3は、本実施形態に係る化粧紙10および化粧板100を化粧板製造システムにより製造する工程を示すフローチャートである。ここで、化粧板製造システムとは、本実施形態に係る化粧紙10および化粧板100の製造を実行するシステムである。
【0038】
まず、化粧板製造システムは、ステップS1(絵柄印刷工程)を実施する。ステップS1において、原反層1の上側UPに絵柄を印刷して、絵柄印刷層2を形成する。
【0039】
次に、化粧板製造システムは、ステップS2(高意匠樹脂塗工工程)を実施する。ステップS2において、絵柄印刷層2の上側UPに高意匠樹脂層3を形成して、化粧紙10を得る。このとき、高意匠樹脂層3を形成する樹脂を配置(塗工)する塗工部3aの塗工量は、3.0g/m以上15.0g/m未満となるようにする。高意匠樹脂層3を配置したい塗工範囲A1に対して、高意匠樹脂層3を形成する樹脂を配置(塗工)しない微細孔3bを設けることで、高意匠樹脂層3によって付与される意匠性への影響を最小限にしつつ、高意匠樹脂層3を形成する樹脂の量を抑制できる。また、絵柄印刷層2に対する塗工部3aの塗工量を3.0g/m以上としているため、高意匠樹脂層3は十分に意匠性を有することができる。その結果、高意匠樹脂層3によって付与される意匠性を十分に保持しつつ、高意匠樹脂層3を形成する樹脂の量を抑制できる。
【0040】
次に、化粧板製造システムは、ステップS3(樹脂含浸工程)を実施する。ステップS3において、ステップS2で得た化粧紙10に、含浸樹脂4を含浸させる。このとき、化粧紙10の上側UPから含浸樹脂4を含浸させてもよいし、下側LOから含浸させてもよい。また、上側UP又は下側LOから複数回に分けて含浸させてもよいし、上側UPおよび下側LOから同時に含浸させてもよい。
【0041】
ステップS2において、塗工部3aの塗工量が15.0g/m未満となるように高意匠樹脂層3を形成しているため、高意匠樹脂層3を形成する樹脂が絵柄印刷層2および原反層1に染み込むのを抑制し、ステップS3において含浸樹脂4を十分に化粧紙10に含浸させることができる。
【0042】
次に、化粧板製造システムは、ステップS4(プレス工程)を実施する。ステップS4において、ステップS3で含浸樹脂4を含浸させた化粧紙10を上側UPおよび下側LOから金属板等のプレスプレートで挟み、化粧紙10を上側UPおよび下側LOから加圧および加熱する。加圧および加熱することで含浸樹脂4を形成する熱硬化型樹脂が硬化し、化粧板100が形成される。化粧紙10を加熱および加圧する方法として、金属板を当接して平圧プレスする方法や、円圧式の連続ラミネート方式等を採用することができる。
【0043】
ステップS4にて得られた化粧板100は、塗工部3aの塗工量が3.0g/m以上15.0g/m未満であるため、意匠性と、含浸樹脂4を含浸させる工程(樹脂含浸工程S3)における加工適性に優れている。
【0044】
本実施形態の化粧紙10および化粧板100並びに化粧紙10および化粧板100の製造方法によれば、絵柄印刷層2の上側UPに設けられた高意匠樹脂層3は、高意匠樹脂層3を配置する塗工範囲A1において、高意匠樹脂層3を形成する樹脂が3.0g/m以上15.0g/m未満の塗工量で塗工された塗工部3aと、塗工部3aに挟まれて配置され、塗工されていない微細孔3bとを有する。
【0045】
そのため、高意匠樹脂層3によって付与される意匠性を十分に保持しつつ、高意匠樹脂層3を形成する樹脂の量を抑制できるため、高意匠樹脂層3によって付与される意匠性への影響を最小限にしつつ、高意匠樹脂層3を形成する樹脂が、絵柄印刷層2と、絵柄印刷層2の下側LOに設けられた原反層1とに染み込むのを抑制できる。その結果、意匠性と、含浸樹脂4を含浸させる工程(樹脂含浸工程S3)における加工適性とに優れた化粧紙10および化粧板100並びに化粧紙10および化粧板100の製造方法を提供することができる。
【0046】
以上、本発明の一実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上述の一実施形態および以下で示す変形例において示した構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
【0047】
(変形例1)
上記実施形態において、化粧板100は、化粧紙10と含浸樹脂4とを備えるが、化粧板の態様はこれに限定されない。化粧板は、化粧紙10の下側LOに、コア紙又は基材を備えてもよい。
【0048】
化粧紙10の下側LOに積層するコア紙として、例えば、チタン紙、晒クラフト紙、未晒クラフト紙、ガラス繊維不織布等を採用できる。また、熱硬化型樹脂を含浸させたコア紙を化粧紙10の下側LOに積層して加圧および加熱してもよい。コア紙に含浸させる熱硬化型樹脂として、例えば、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、ジアリルフタレート系樹脂、ベンゾグアナミン系樹脂、ウレタン系樹脂、アルキド系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、フェノール系樹脂、尿素系樹脂等が採用できる。
【0049】
また、化粧紙10の下側LOに積層する基材として、パーチクルボード又は中密度繊維板(MDF)等の木質基材、アルミニウム又はステンレス等の金属系の板状の部材、ポリエチレン等の樹脂からなる芯材の両側にアルミニウム等の金属を貼り付けた複合板等を採用できる。化粧紙10の下側LOにコア紙又は基材を積層する場合、接着剤を介して積層してもよい。化粧紙10の下側LOにコア紙又は基材を積層して化粧板を形成することで、剛性の向上や厚さの調整等の任意の機能を化粧板に付与することができる。
【0050】
以下実施例により、本発明を詳細に説明する。本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0051】
(実施例1)
原反層1として、坪量80g/mのチタン紙を準備した。原反層1の上側UPに、絵柄を有する絵柄印刷層2を形成した。また、紫外線硬化型樹脂を絵柄印刷層2の上側UPにおける絵柄と同調した位置に塗工し、高意匠樹脂層3を形成した。このとき、高意匠樹脂層3において、塗工部3aの塗工量が11g/mとなるようにした。また、高意匠樹脂層3における微細孔3bは点状とした。紫外線照射を施して高意匠樹脂層3を形成する紫外線硬化型樹脂を硬化させ、実施例1の化粧紙10を形成した。
【0052】
(実施例2)
高意匠樹脂層3として熱硬化型樹脂を用いた以外は実施例1と同様の方法により、実施例2の化粧紙10を形成した。
【0053】
(実施例3)
塗工部3aの塗工量が6.0g/mとなるようにした以外は実施例1と同様の方法により、実施例3の化粧紙10を形成した。
【0054】
(実施例4)
塗工部3aの塗工量が12.5g/mとなるようにした以外は実施例1と同様の方法により、実施例4の化粧紙10を形成した。
【0055】
(比較例1)
塗工部の塗工量が3.0g/mとなるようにした以外は実施例1と同様の方法により、比較例1の化粧紙を形成した。
【0056】
(比較例2)
塗工部の塗工量が15.0g/mとなるようにした以外は実施例1と同様の方法により、比較例2の化粧紙を形成した。
【0057】
(比較例3)
絵柄印刷層と高意匠樹脂層の間に、特許文献2の実施例1に記載のある被覆層を形成した以外は実施例1と同様の方法により、比較例3の化粧紙を形成した。
【0058】
(試験1)
実施例1-4および比較例1-3の化粧紙に意匠性評価試験を実施した。意匠性評価試験では、10人の試験員で化粧紙の意匠性についての官能試験を実施し、高意匠樹脂層の塗工量を変化させたことによる意匠性への影響に着目して、意匠の見た目の程度について評価した。
評価基準は4段階とし、×以外を合格とした。
◎(Excellent):意匠の見た目が良いと評価した人が10人である。
〇(Good):意匠の見た目が良いと評価した人が7人以上9人以下である。
△(Fair):意匠の見た目が良いと評価した人が4人以上6人以下である。
×(Poor):意匠の見た目が良いと評価した人が3人以下である。
【0059】
(試験2)
実施例1-4および比較例1-3の化粧紙に含浸性評価試験を実施した。含浸性評価試験では、5cm角にカットした化粧紙において、高意匠樹脂層が積層された側を下にして液状のメラミン樹脂に浮かべ、原反層が積層された側の面の全体にメラミン樹脂が染み込むのにかかった時間を評価した。
評価基準は3段階とし、×以外を合格とした。
〇(Good):20秒未満。
△(Fair):20秒以上45秒未満。
×(Poor):45秒以上。
【0060】
(試験3)
実施例1-4および比較例1-3の化粧紙に表面物性評価試験を実施した。表面物性評価試験では、化粧紙に含浸樹脂としてメラミン樹脂を含浸させて、高圧プレス機で加圧および加熱して化粧板を形成した。形成した化粧板の高意匠樹脂層が積層された側の面に対して、メチルエチルケトン(MEK)を浸したコットンを10回往復させ、絵柄印刷層の絵柄の落ち具合を評価した。
評価基準は3段階とし、×以外を合格とした。
〇(Good):絵柄落ちが無い。
△(Fair):コットンへの色移りはあるが化粧板の絵柄落ちは無い。
×(Poor):化粧板の絵柄落ちが目立つ。
【0061】
(試験結果)
試験1-3の結果を表1に示す。
塗工部の塗工量が3.0g/m以上15.0g/m未満である実施例1-4は、すべての試験において良好な結果を示した。塗工部の塗工量が3.0g/m未満である比較例1は、試験1において不合格であった。また、塗工部の塗工量が15.0g/m以上である比較例2は、試験2-3において不合格であった。また、絵柄印刷層と高意匠樹脂層の間に特許文献2の実施例1に記載のある被覆層を形成した比較例3は、試験2-3において不合格であった。
【0062】
【表1】
【符号の説明】
【0063】
100 化粧板
10 化粧紙
1 原反層
2 絵柄印刷層
3 高意匠樹脂層
3a 塗工部
3b 微細孔
4 含浸樹脂
A1 塗工範囲
S1 絵柄印刷工程
S2 高意匠樹脂塗工工程
S3 樹脂含浸工程
S4 プレス工程
V 上下方向
UP 上側
LO 下側
図1
図2
図3