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特開2024-111946底盤コンクリート施工システムおよび底盤コンクリートの施工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111946
(43)【公開日】2024-08-20
(54)【発明の名称】底盤コンクリート施工システムおよび底盤コンクリートの施工方法
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/10 20060101AFI20240813BHJP
   E04G 21/02 20060101ALI20240813BHJP
【FI】
E21D11/10 Z
E04G21/02 103A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023016695
(22)【出願日】2023-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000158725
【氏名又は名称】岐阜工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】井手 康夫
(72)【発明者】
【氏名】三枝 修平
(72)【発明者】
【氏名】高橋 勇貴
(72)【発明者】
【氏名】鷲見 大介
(72)【発明者】
【氏名】守屋 毅
(72)【発明者】
【氏名】金子 真治
(72)【発明者】
【氏名】林 大輔
【テーマコード(参考)】
2D155
2E172
【Fターム(参考)】
2D155CA08
2D155GB11
2D155KC01
2D155KC06
2E172AA05
2E172DB07
2E172DB13
2E172DE00
(57)【要約】
【課題】計画的な人員配置を行うことができ、施工コストを低減でき、施工効率を向上できる。
【解決手段】下方に施工スペースSを開けた状態で路盤コンクリート11より上方に配置され、ステージ上で工事用車両が走行可能な移動式作業ステージ20と、トンネル側壁に設けられる移動用レール30と、移動式作業ステージ20に固定され、移動用レール30に沿って移動する走行部40と、を備え、移動式作業ステージ20は、鉄筋組立ステージ21、型枠組立ステージ22、コンクリート打設ステージ23、およびコンクリート養生ステージ24を有し、複数のステージ22~24は、それぞれのステージ下方の施工スペースS1~S4で行われる各作業の終了時に同時に移動可能に設けられている構成の底盤コンクリート施工システムを提供する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネルの底盤コンクリートを施工するための底盤コンクリート施工システムであって、
下方に前記底盤コンクリートの施工スペースを確保した状態で配置され、ステージ上で工事用車両が走行可能な移動式作業ステージと、
トンネル側壁に設けられる移動用レールと、
前記移動式作業ステージに固定され、前記移動用レールに沿って移動する走行部と、を備え、
前記移動式作業ステージは、前記底盤コンクリートを施工するための複数の作業工程に対応する複数のステージが設けられ、
前記複数のステージは、それぞれのステージ下方の前記施工スペースで行われる各作業の終了時に同時に移動可能に設けられていることを特徴とする底盤コンクリート施工システム。
【請求項2】
前記移動式作業ステージは、鉄筋組立ステージ、型枠組立ステージ、コンクリート打設ステージ、およびコンクリート養生ステージを有することを特徴とする請求項1に記載の底盤コンクリート施工システム。
【請求項3】
前記鉄筋組立ステージにおけるトンネル横断方向の片側の一部には、資材を前記施工スペースに搬入するための資材搬入口が配置されていることを特徴とする請求項2に記載の底盤コンクリート施工システム。
【請求項4】
前記移動式作業ステージの下面には、前記鉄筋組立ステージから前記コンクリート養生ステージまで延在する資材搬送レールが設けられ、
前記資材搬送レールに対して走行可能、かつ着脱可能な資材吊り具が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の底盤コンクリート施工システム。
【請求項5】
前記資材吊り具には、前記底盤コンクリートのコンクリート打設時にコンクリート内に埋設される配管を吊った状態で保持する配管固定架台が連結されていることを特徴とする請求項4に記載の底盤コンクリート施工システム。
【請求項6】
前記底盤コンクリートは、トンネルの路盤を構成する路盤コンクリートであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の底盤コンクリート施工システム。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の底盤コンクリート施工システムを用いた底盤コンクリートの施工方法であって、
前記移動式作業ステージの前記複数のステージにおけるそれぞれの下方の前記施工スペースで同時に作業が行われ、
前記複数のステージにおける全ての作業が完了した後、トンネル側壁に設けられる前記移動用レールに沿って、前記移動式作業ステージに固定された走行部を移動させることで、前記移動式作業ステージを1作業ステージ分だけ前進移動させることを特徴とする底盤コンクリートの施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、底盤コンクリート施工システムおよび底盤コンクリートの施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トンネル工事におけるインバートコンクリート(トンネル路盤部)の施工は、切羽で発生するズリの搬出や、切羽の支保工、吹付工に係る工事車両がインバート工の施工区間を通行できないため、全体工期に与える影響が大きい。このため、インバート工の施工区間を跨いで工事車両を通行させるため、架台と昇降用の斜路を備え、トンネルの幅方向へ移動可能なインバート桟橋を使用することが知られている(例えば、特許文献1参照)。
このようなインバート桟橋では、インバートコンクリートの施工を左右に分割し、単位ブロックごとに鉄筋・型枠組立工程、路盤コンクリート打設工程、レイタンス除去・走行路鉄筋型枠組立工程、走行路コンクリート打設工程のそれぞれを片側が先行する形で施工を行っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-7305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の場合には、路盤コンクリート打設の際に、先行打設箇所が十分な養生期間が経過していない弱材齢の状態で、コンクリートミキサー車が乗り上げることになり、コンクリートの品質に問題があった。
また、従来の場合には、トンネル断面の左右に分割する半線施工となるため、複数の工種が錯綜する施工となり、計画的に人員配置を行うことが難しく、施工効率が低下することから、その点で改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、計画的な人員配置を行うことができ、施工コストを低減でき、施工効率を向上できる底盤コンクリート施工システムおよび底盤コンクリートの施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る底盤コンクリート施工システムは、トンネルの底盤コンクリートを施工するための底盤コンクリート施工システムであって、下方に前記底盤コンクリートの施工スペースを確保した状態で配置され、ステージ上で工事用車両が走行可能な移動式作業ステージと、トンネル側壁に設けられる移動用レールと、前記移動式作業ステージに固定され、前記移動用レールに沿って移動する走行部と、を備え、前記移動式作業ステージは、前記底盤コンクリートを施工するための複数の作業工程に対応する複数のステージが設けられ、前記複数のステージは、それぞれのステージ下方の前記施工スペースで行われる各作業の終了時に同時に移動可能に設けられていることを特徴としている。
【0007】
また、本発明に係る底盤コンクリートの施工方法は、上述した底盤コンクリート施工システムを用いた底盤コンクリートの施工方法であって、前記移動式作業ステージの前記複数のステージにおけるそれぞれの下方の前記施工スペースで同時に作業が行われ、前記複数のステージにおける全ての作業が完了した後、トンネル側壁に設けられる前記移動用レールに沿って、前記移動式作業ステージに固定された走行部を移動させることで、前記移動式作業ステージを1作業ステージ分だけ前進移動させることを特徴としている。
【0008】
本発明では、移動式作業ステージで行われる作業工程を同時に行うことができる。そのため、底盤コンクリートの打設にあたり、半線施工を行うことなくすべての複数の作業を移動式作業ステージによって効率よく行うことができる。このように本発明では、従来のように左右に分割して施工を行う必要がなく、複数工種が錯綜する形での施工となることがなく、施工速度を高めることができる。しかも、常に施工業者を固定できるため、労務費を抑えることができる。
また、移動式作業ステージでは、移動用レールと走行部を使用して移動し、移動用レールの脚部分は鉄筋位置を回避した場所に設置し、移動・脚撤去後に同配合のコンクリートを充填することができる。
【0009】
また、本発明に係る底盤コンクリート施工システムは、前記移動式作業ステージは、鉄筋組立ステージ、型枠組立ステージ、コンクリート打設ステージ、およびコンクリート養生ステージを有することが好ましい。
【0010】
この場合には、移動式作業ステージが鉄筋組立ステージ、型枠組立ステージ、コンクリート打設ステージ、およびコンクリート養生ステージの4つを含み、これらすべての作業ステージで行われる作業工程を同時に進めていくことが可能である。そのため、底盤コンクリートの打設にあたり、半線施工をすることなく鉄筋設置からコンクリート養生までを移動式作業ステージによって効率よく行うことができる。
【0011】
また、本発明に係る底盤コンクリート施工システムは、前記鉄筋組立ステージにおけるトンネル横断方向の片側の一部には、資材を前記施工スペースに搬入するための資材搬入口が配置されていることが好ましい。
【0012】
本発明では、鉄筋組立ステージの一部に設けられる資材搬入口を使用して、ステージ下部の施工スペースに資材を効率よく搬入することができる。
【0013】
また、本発明に係る底盤コンクリート施工システムは、前記移動式作業ステージの下面には、前記鉄筋組立ステージから前記コンクリート養生ステージまで延在する資材搬送レールが設けられ、前記資材搬送レールに対して走行可能、かつ着脱可能な資材吊り具が設けられていることが好ましい。
【0014】
本発明では、資材搬入口からステージ下部に搬入させた資材を資材搬送レールに設けられる資材吊り具を使用して、ステージ下部の所定の施工スペースに資材を容易に搬送することができる。
【0015】
また、本発明に係る底盤コンクリート施工システムは、前記底盤コンクリートは、トンネルの路盤を構成する路盤コンクリートであることが好ましい。
【0016】
本発明では、移動式作業ステージを使用して路盤コンクリートを効率よく構築することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の底盤コンクリート施工システムおよび底盤コンクリートの施工方法によれば、計画的な人員配置を行うことができ、施工コストを低減でき、施工効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態による底盤コンクリート施工システムの構成を示す平面図である。
図2】底盤コンクリート施工システムの構成を示す側面図である。
図3図1及び図2に示すA-A線断面図であって、鉄筋組立ステージの断面図である。
図4図1及び図2に示すB-B線断面図であって、鉄筋組立ステージの断面図である。
図5図1及び図2に示すC-C線断面図であって、コンクリート打設ステージの断面図である。
図6】コンクリート打設ステージの側面図である。
図7】鉄筋組立ステージ及び資材搬入口の平面図である。
図8】鉄筋組立ステージの側面図である。
図9】盛替え部の正面図であって、移動式作業ステージの移動時の状態を示す図である。
図10】盛替え部の正面図であって、移動式作業ステージの固定時の状態を示す図である。
図11】移動式作業ステージを示した平面図であって、(a)はトンネル直線部に配置された状態を示す図、(b)はトンネル曲線部に配置された図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態による底盤コンクリート施工システムおよび底盤コンクリートの施工方法について、図面に基づいて説明する。
【0020】
図1及び図2に示すように、本実施形態の底盤コンクリート施工システム1は、トンネル10の路盤コンクリート11(底盤コンクリート)を構築するための施工システムである。底盤コンクリート施工システム1では、先行して施工されているインバートコンクリート12上に路盤コンクリート11を施工する際に適用される。
ここで、以下の説明では、トンネル延長方向Xから見た水平方向をトンネル横断方向Zという。トンネル延長方向Xで施工終点側を符号X1、施工起点側を符号X2としている。
【0021】
底盤コンクリート施工システム1は、下方に路盤コンクリート11の施工スペースSを確保した状態で配置され、ステージ上で工事用車両が走行可能な移動式作業ステージ20と、トンネル側壁に設けられる移動用レール30と、移動式作業ステージ20に固定され、移動用レール30に沿って移動する走行部40と、を備える(図3参照)。
【0022】
移動式作業ステージ20は、施工終点側X1のインバートコンクリート12と施工起点側X2の路盤コンクリート11との間を架け渡す桟橋であり、上部にはダンプトラックやコンクリートミキサー車55等の工事車両の走行路を確保しつつ、下部には前述した施工スペースSが確保されている。
【0023】
移動式作業ステージ20は、路盤コンクリート11を施工するための複数の作業工程に対応する複数(ここでは4つ)のステージ21~24が設けられている。具体的に移動式作業ステージ20は、鉄筋組立ステージ21(図4参照)、型枠組立ステージ22、コンクリート打設ステージ23(図5及び図6参照)およびコンクリート養生ステージ24を有している。これら複数のステージ21~24は、それぞれのステージ下方の施工スペースS(S1~S4)で行われる各作業の終了時に同時に移動可能に設けられている。
【0024】
移動式作業ステージ20の各ステージ21~24は、トンネル横断方向Zの全体にわたって配置されている。移動式作業ステージ20では、鉄筋組立ステージ21、型枠組立ステージ22、コンクリート打設ステージ23、およびンクリート養生ステージ24のそれぞれの施工スペースS(S1~S4)での作業を同時に行うことができる。
ここで、鉄筋組立ステージ21の下方を第1施工スペースS1、型枠組立ステージ22の下方を第2施工スペースS2、コンクリート打設ステージ23の下方を第3施工スペースS3、コンクリート養生ステージ24の下方を第4施工スペースS4という。
【0025】
移動式作業ステージ20の各ステージ21~24は、それぞれトンネル延長方向Xの長さが例えば12.6mの1ユニットをトンネル延長方向Xに配列させて設置されている。移動式作業ステージ20のトンネル延長方向Xの両側(施工終点側X1および施工起点側X2)には、それぞれ斜路25、26が設けられている。鉄筋組立ステージ21の施工終点側X1には、片側一車線となる施工終点側斜路25が接続されている。コンクリート養生ステージ24の施工起点側X2にはトンネル横断方向Z全体の両側二車線となる施工起点側斜路26が接続されている。移動式作業ステージ20の全長の一例として、図1及び図2の場合において、施工終点側斜路25から施工起点側斜路26までの全長が略140mとなる。
【0026】
底盤コンクリート施工システム1による路盤コンクリート11の施工は、掘進中のトンネル工事において、施工終点側X1で掘進作業に影響が生じないエリアで行われる。移動式作業ステージ20では、施工終点側X1に向けて1ステージ分の長さで順次移動させながら路盤コンクリート11の施工が行われる。
【0027】
各ステージ21~24は、図1に示すように、平面視して矩形状をなす複数の鋼製の覆工板20Aを縦横に配列させて構成されている。覆工板20Aは、図3及び図4に示すように、トンネル横断方向Zに延在する複数の桁受け材20B上に固定されている。桁受け材20Bは、例えばH鋼材等が使用され、トンネル延長方向Xに所定の間隔をあけて配置されている。移動式作業ステージ20は、自走式であっても牽引式であってもよく、要はトンネル延長方向Xに移動される手段を備えていればよい。
【0028】
図1図3図5に示すように、各ステージ21~24のトンネル横断方向Zの幅は、少なくとも2車線が確保される寸法となっている。各ステージ21~24におけるトンネル横断方向Zの一方側のスペースには、風管13が配置されている。また、他方側には、作業員用の通路14が設けられている。すなわち、各ステージ21~24の幅は、コンクリートミキサー車55やダンプトラック等の工事用車両がすれ違いで走行でき、かつ風管13および通路14が確保できる十分な幅とされる。とくに、コンクリート打設ステージ23上では、コンクリート打設時、コンクリートミキサー車55が停車してコンクリートをステージ下部の第3施工スペースS3に投入する際に、コンクリートミキサー車55の側方をダンプトラックが通過可能な幅が確保されている。
【0029】
図1及び図2に示すように、施工終点側斜路25は、鉄筋組立ステージ21とインバートコンクリート12との間に架け渡された工事車両の昇降路である。施工起点側斜路26は、コンクリート養生ステージ24と打設して養生した直後の路盤コンクリート11との間に架け渡された工事車両の昇降路である。施工終点側斜路25及び施工起点側斜路26は、鋼製の面材が採用されている。施工終点側斜路25及び施工起点側斜路26は、作業ステージ21~24とともに移動可能である。本実施形態では、施工終点側斜路25は、上記の移動用レール30とは異なり、インバートコンクリート12上に盛替え可能に設置されるレール251上を移動する。
【0030】
図1及び図7に示すように、施工終点側斜路25の幅は、鉄筋組立ステージ21の片側車線部21Bの幅と同様である。すなわち施工終点側斜路25の側方には、鉄筋組立ステージ21の資材搬入口21Aに繋がる通路25Aが確保されている。
【0031】
図3図5図8に示すように、移動用レール30は、インバートコンクリート12の上面のトンネル横断方向Zの両側の位置で盛替え可能に設けられる。移動用レール30は、トンネル延長方向Xに延びる支持脚31上に固定されている。移動用レール30は、移動式作業ステージ20が配置される範囲に配置され、移動式作業ステージ20の移動に伴って順次、施工終点側X1に盛り替えられる。
【0032】
支持脚31は、移動用レール30を介して移動式作業ステージ20を下方から支持する鋼製の部材である。図8図9及び図10に示すように、支持脚31の近傍には、油圧ジャッキ等の昇降自在な昇降ジャッキ32が複数設けられている。昇降ジャッキ32も移動式作業ステージ20の移動と共に施工終点側X1に順次盛り替えられ、移動式作業ステージ20の桁受け材20Bの下方となる位置に配置される。底盤コンクリート施工システム1では、移動式作業ステージ20を所定の位置に移動させた後、昇降ジャッキ32を上昇させて桁受け材20Bを上昇させ、走行部40の車輪41を移動用レール30から浮かせて昇降ジャッキ32で移動式作業ステージ20の荷重を受けた状態にする。
これにより、各ステージ21~24が所定位置で固定され、各施工スペースSにおいて路盤コンクリート11を構築する作業を行うことができる。
【0033】
走行部40は、桁受け材20Bの幅方向両側の下方に支持される車輪41と、桁受け材20Bの両側に設けられ車輪41を回転可能に支持する車輪支持部42と、を備えている。1箇所の車輪支持部42には、2つの車輪41が設けられている。車輪41は、移動用レール30上を転動可能である。
【0034】
図5及び図6に示すように、移動式作業ステージ20の下面20aには、鉄筋組立ステージ21からコンクリート養生ステージ24までトンネル延長方向Xに沿って延在する資材搬送レール50が設けられている。資材搬送レール50は、トンネル横断方向Zに間隔をあけて4本が配置されている。資材搬送レール50には、資材搬送レール50に沿って移動可能で、かつ資材を上下移動可能に吊る資材吊り具50Aが設けられている。
【0035】
図1に示すように、鉄筋組立ステージ21は、施工終点側X1のトンネル横断方向Zの片側に資材等を施工スペースSに搬入するための資材搬入口21Aが設けられている。なお、型枠組立ステージ22、コンクリート打設ステージ23およびコンクリート養生ステージ24は、トンネル横断方向Z全体にわたって配置されている。
【0036】
図4図7及び図8に示すように、鉄筋組立ステージ21では、第1施工スペースS1において、路盤コンクリート11内に埋設される鉄筋が組み立てられる。鉄筋組立ステージ21では、鉄筋組み立て中も資材搬入口21Aを使用して施工起点側X2の作業に必要な資材を搬入することが可能となっている。鉄筋組立ステージ21には、資材搬入口21Aに対して吊り下ろし可能な資材搬入用の揚重装置211が設けられている。
【0037】
図1及び図2に示すように、型枠組立ステージ22は、第2施工スペースS2においてコンクリート打設用の型枠(図示省略)が組み立てられる。型枠は、資材搬入口21Aから資材搬送レール50を使用して第2施工スペースS2に搬入される。
【0038】
図5及び図6に示すように、型枠組立ステージ22では、型枠の組み立て作業の他に、路盤コンクリート11内に埋設するシース管53(配管)が型枠の内側に設置される。シース管53は、例えば、本トンネルの用途が鉄道トンネルの場合には、施工後の路盤コンクリート11の上面に取り付けられる本設レールの設備を固定するために使用される。シース管53は、資材搬送レール50に対して走行可能、かつ着脱可能な配管固定架台54によって吊り下げられた状態で設けられ、コンクリート養生が完了するまで、型枠内で所定位置となるように保持される。
【0039】
配管固定架台54は、路盤コンクリート11のコンクリート打設時にコンクリートC内に埋設されるシース管53を上方から吊った状態で保持する。配管固定架台54は、型枠組立ステージ22の第2施工スペースS2で型枠の組み立てとともに資材搬送レール50に資材吊り具50Aを介して設置され、型枠内の所定位置にシース管53を吊り支持するように構成されている。
配管固定架台54の移動機構は、資材搬送レール50に沿って転動可能なガイドローラ(図示略)を有し、シース管53を支持させて資材搬送レール50に沿って移動させることが可能である。
【0040】
図5及び図6に示すように、コンクリート打設ステージ23は、第3施工スペースS3において、路盤コンクリート11のコンクリートCが打設される。コンクリート打設ステージ23には、コンクリート打設用の打設口231と、ステージ下面に打設口231に連通するホッパーシュート232が設けられている。ステージ上にコンクリートミキサー車55を配置し、コンクリートミキサー車55からコンクリートCを打設口231を介してホッパーシュート232に落とし込み、型枠内にコンクリートCを打設する。ホッパーシュート232は、上下方向を中心にして旋回可能であり、旋回領域にコンクリートCを打設することができる。
【0041】
コンクリート養生ステージ24では、第4施工スペースS4において、打設したコンクリートCの養生が行われる。
【0042】
次に、上述した底盤コンクリート施工システム1を用いた路盤コンクリート11の施工方法について、図面に基づいて詳細に説明する。
図1及び図2に示すように、路盤コンクリート11の施工方法は、鉄筋組立ステージ21の下方の第1施工スペースS1で鉄筋を組み立てる第1工程P1と、型枠組立ステージ22の下方の第2施工スペースS2で型枠を組み立てる第2工程P2と、コンクリート打設ステージ23の下方の第3施工スペースS3で型枠内にコンクリートCを打設する第3工程P3と、コンクリート養生ステージ24の下方の第4施工スペースS4で打設後のコンクリートCを養生して型枠を脱型する第4工程P4と、を有する。
第1工程P1~第4工程P4は同時に行われる。第1工程P1~第4工程P4の全ての作業が完了した後、移動式作業ステージ20を1作業ステージ分だけ前側(施工終点側X1)に移動させる。
【0043】
先ず、路盤コンクリート11の施工前に、先行してインバートコンクリート12が施工される。すなわち、移動式作業ステージ20の施工終点側X1には、インバートコンクリート12が設置された状態である。そして、移動式作業ステージ20は、施工終点側斜路25が配置される一端部が施工されたインバートコンクリート12上に載置され、施工起点側斜路26が配置される他端部が直近で養生された路盤コンクリート11上に載置され、インバートコンクリート12と路盤コンクリート11との間で架け渡される。
【0044】
移動式作業ステージ20を所定位置で固定した後、各作業ステージ21~24において、第1工程P1~第4工程P4を同時に行う。このとき、移動式作業ステージ20上では、工事車両の通行が可能である。すなわち、これら第1工程P1~第4工程P4の作業は、例えば施工起点側X2となる切羽で行われるトンネルの掘削作業と同時に行うことができる。
次に、図10に示すように、ステージ前後の昇降ジャッキ32を上昇させることにより、桁受け材20Bとともに走行部40を上昇させ、車輪41を移動用レール30から浮かせる。これにより移動式作業ステージ20が所定位置で固定される。
【0045】
ここで、図11は、移動式作業ステージ20を示した平面図であって、(a)はトンネル直線部T1に配置された状態を示す図、(b)はトンネル曲線部T2に配置された図である。図11(a)、(b)に示すように、トンネル直線部T1からトンネル曲線部T2に移動式作業ステージ20を配置する場合には、作業ステージ20の移動に合わせて個々の作業ステージ20の前後部に設けられる伸縮ジャッキ60を伸長させ、前後の作業ステージ20同士間のトンネル横断方向Zに前後方向の寸法差をつけることで前後の作業ステージ20同士間に角度もたせることができる。すなわち、トンネル曲線部T2の外周側に配置される伸縮ジャッキ60Aを伸張させ、内周側の伸縮ジャッキ60Bを収縮させる。このように伸縮ジャッキ60の伸張長さを調整することで、トンネル曲線部T2の曲率に合わせて移動式作業ステージ20を移動させることができる。
【0046】
鉄筋組立ステージ21では、第1施工スペースS1において、鉄筋が組み立てられる(第1工程P1)。
型枠組立ステージ22では、第2施工スペースS2において、予め防水シート、補強材等の覆工材28が配設された路盤コンクリート11の打設領域につま型枠などの型枠を設置する(第2工程P2)。
また、型枠組立ステージ22では、複数のシース管53を保持した配管固定架台54を資材搬送レール50に案内させて所定位置に配置し、型枠内の打設空間の所定位置にシース管53を配置する。
【0047】
コンクリート打設ステージ23で行われる第3工程P3では、第2工程P2で組み立てた型枠内に、コンクリート打設ステージ23上に停止させたコンクリートミキサー車55からステージ下方へホッパーシュート232を使用してコンクリートCを投入する。
具体的には、コンクリート打設ステージ23の車両通行部に、コンクリートミキサー車55を移動させる。次に、車両通行部の両側下部のホッパーシュート232を、コンクリートミキサー車55の対応位置へ移動させる。この際、トンネル全幅を一度に施工する場合には、車両通行部の両側にコンクリートミキサー車55を配置し、両側のホッパーシュート232を使用する。トンネル全幅を二度に分けてコンクリート打設をする場合には、片側ののみにコンクリートミキサー車55を配置し、片側のホッパーシュート232のみを使用する。その後、コンクリートミキサー車55のシュートを、ホッパーシュート232へ案内する。この際、コンクリートミキサー車55のシュートが展開、伸縮可能な場合にはそのままシュートを展開、伸長させて行い、シュートが短尺な場合には、補助シュート(図示略)を介して案内する。次に、コンクリートミキサー車55からコンクリートCを、ホッパーシュート232を介して型枠内の路盤コンクリート11の打設領域へ打設する。
【0048】
このようにステージの両側部に、その長さ方向に移動自在にホッパーシュート232を配設させることにより、コンクリートミキサー車55の対応位置へホッパーシュート232を移動させた後、コンクリートミキサー車55から路盤コンクリート11をホッパーシュート232を介して、ステージ下部へ直接打設することができるため、打設位置を容易に変更することができ、作業性が向上する。
【0049】
コンクリート打設ステージ23においてコンクリートCの打設後には、コンクリートC中に埋設した複数のシース管53から配管固定架台54を離脱させる。そして、空の状態になった配管固定架台54は、資材搬送レール50を使用して型枠組立ステージ22に移動され、次の打設で配置する複数のシース管53を装着して保持する。
【0050】
コンクリート養生ステージ24では、施工サイクルの路盤コンクリート11の養生を行う(第4工程P4)。
第4工程P4の養生後には、型枠、妻板を脱型する。さらに、路盤コンクリート11の所定の強度を確認後、移動式作業ステージ20を施工終点側X1に1スパン分前進させる
移動式作業ステージ20を施工終点側X1に移動する際には、昇降ジャッキ32を下降させることにより、桁受け材20Bとともに走行部40を下降させ、走行部40の車輪41を移動用レール30に接地させ、移動式作業ステージ20を施工終点側X1へ移動させる。
【0051】
以上の第1工程から第4工程を1サイクルとして、これを順次繰り返しながら移動式作業ステージ20を施工終点側X1に移動させることで、インバートコンクリート12上に路盤コンクリート11が構築される。
【0052】
上述したように本実施形態の路盤コンクリート11の施工方法は、鉄筋、型枠、シース管53の組み立てから、路盤コンクリート11の打設、養生までの作業をトンネル延長方向Xの前後で併行して行うことができる。そのため、路盤コンクリート11の施工効率が著しく高い。
【0053】
本実施形態では、上記の4工程(第1工程P1から第4工程P4)を同時に行うことによって、施工時間を圧縮することができる。すなわち、本実施形態による移動式作業ステージ20では、鉄筋組立ステージ21からコンクリート養生ステージ24の4つのエリアに分かれており、各ステージで2ユニット分(1ユニットが12.6m)、合計8ユニットの同時施工が可能となる。そのため、常に施工業者を固定することができ、労務費を抑えることができる。施工スピードとしては、1日で2ユニットずつ施工できることから、25.2m/日の進捗が得られる。すなわち、従来比で30%の工程短縮が可能となる。
【0054】
次に、上述した底盤コンクリート施工システム1および路盤コンクリート11の施工方法の作用について、図面に基づいて詳細に説明する。
【0055】
図1及び図2に示すように、本実施形態による底盤コンクリート施工システム1および路盤コンクリート11の施工方法では、移動式作業ステージ20で行われる作業工程(第1工程P1~第4工程P4)を同時に行うことができる。そのため、路盤コンクリート11の打設にあたり、半線施工を行うことなくすべての複数の作業を移動式作業ステージ20によって効率よく行うことができる。このように本実施形態では、従来のように左右に分割して施工を行う必要がなく、複数工種が錯綜する形での施工となることがなく、施工速度を高めることができる。しかも、常に施工業者を固定できるため、労務費を抑えることができる。
【0056】
また、移動式作業ステージ20では、移動用レール30と走行部40を使用して移動し、移動用レール30の脚部分は鉄筋位置を回避した場所に設置し、移動・脚撤去後に同配合のコンクリートCを充填することができる。
【0057】
また、本実施形態では、移動式作業ステージ20が鉄筋組立ステージ21、型枠組立ステージ22、コンクリート打設ステージ23、およびコンクリート養生ステージ24の4つを含み、これらすべての作業ステージ21~24で行われる作業工程を同時に進めていくことが可能である。そのため、路盤コンクリート11の打設にあたり、半線施工をすることなく鉄筋設置からコンクリート養生までを移動式作業ステージ20によって効率よく行うことができる。
【0058】
さらに、本実施形態では、鉄筋組立ステージ21におけるトンネル横断方向Zの片側の一部に資材を施工スペースSに搬入するための資材搬入口21Aが配置されている。このため、鉄筋組立ステージ21の一部に設けられる資材搬入口21Aを使用して、ステージ下部の施工スペースSに資材を効率よく搬入することができる。
【0059】
また、本実施形態では、移動式作業ステージ20の下面に鉄筋組立ステージ21からコンクリート養生ステージ24まで延在する資材搬送レール50が設けられ、資材搬送レール50に対して走行可能、かつ着脱可能な資材吊り具50Aが設けられている。これにより、資材搬入口21Aからステージ下部に搬入させた資材を資材搬送レール50に設けられる資材吊り具50Aを使用して、ステージ下部の所定の施工スペースSに資材を容易に搬送することができる。
【0060】
また、本実施形態では、底盤コンクリートがトンネルの路盤を構成する路盤コンクリート11であるので、移動式作業ステージ20を使用して路盤コンクリート11を効率よく構築することができる。
【0061】
上述のように本実施形態による底盤コンクリート施工システム1および路盤コンクリート11の施工方法では、計画的な人員配置を行うことができ、施工コストを低減でき、施工効率を向上できる。
【0062】
以上、本発明による底盤コンクリート施工システムおよび底盤コンクリートの施工方法の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0063】
例えば、上述した実施形態では、底盤コンクリート施工システム1はインバートコンクリート12上に施工される路盤コンクリート11の施工を対象としているが、底盤コンクリートであればよく、例えば、路盤コンクリート11に代えてインバートコンクリート12の施工を対象とすることも可能である。
【0064】
また、本実施形態では、移動式作業ステージ20の下面には、鉄筋組立ステージ21からコンクリート養生ステージ24まで延在する資材搬送レール50が設けられ、資材搬送レール50に対して走行可能、かつ着脱可能な資材吊り具50Aが設けられているが、このような構成に限定されることはない。資材搬送レール50や資材吊り具50Aを省略することも可能である。
【0065】
なお、シース管53(配管)の数量、位置、形状等は路盤コンクリート11上のレール等の設備に合わせて適宜変更可能であるし、レール等の設備が設けられない場合にはシース管53(配管)を省略することも可能である。そのため、配管が省略されるケースでは、配管固定架台54も省略してもよい。
【0066】
また、本実施形態では、移動式作業ステージ20として、鉄筋組立ステージ21、型枠組立ステージ22、コンクリート打設ステージ23、およびコンクリート養生ステージ24を有する構成としているが、これら4つの作業ステージであることに限定されることはなく、他の工程を行う作業ステージであってもよいし、4つに限らず、3つ、あるいは5つ以上の作業ステージを有する移動式作業ステージを採用することができる。要は、複数の作業ステージを備えた移動式作業ステージによって底盤コンクリートのコンクリート打設、養生までの工程が行えるものであればよいのである。
【0067】
また、本実施形態では、ステージ下方の施工スペースSに資材を搬入するための資材搬入口21Aが鉄筋組立ステージ21の一部に設けられた構成となっているが、資材搬入口の位置や大きさ等は変更可能である。また、移動式作業ステージ20に資材搬入口を設ける必要が無い場合には、この資材搬入口を省略することも可能である。
【0068】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。
【符号の説明】
【0069】
1 底盤コンクリート施工システム
11 路盤コンクリート(底盤コンクリート)
12 インバートコンクリート
20 移動式作業ステージ
21 鉄筋組立ステージ
21A 資材搬入口
22 型枠組立ステージ
23 コンクリート打設ステージ
24 コンクリート養生ステージ
25 施工終点側斜路
26 施工起点側斜路
30 移動用レール
32 昇降ジャッキ
40 走行部
41 車輪
50 資材搬送レール
50A 資材吊り具
53 シース管(配管)
54 配管固定架台
55 コンクリートミキサー車
S 施工スペース
S1 第1施工スペース
S2 第2施工スペース
S3 第3施工スペース
S4 第4施工スペース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11